(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070309
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ロール制御システム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20240516BHJP
B60G 3/14 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B60G17/015 A
B60G3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180702
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】野原 淳
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AB02
3D301AB21
3D301CA03
3D301CA04
3D301DA33
3D301DA38
3D301DA51
3D301DA66
3D301EA03
3D301EA14
3D301EA21
3D301EA31
3D301EA35
3D301EA43
3D301EB13
3D301EB16
3D301EC01
3D301EC06
(57)【要約】
【課題】従来よりも汎用性が向上することが可能な車両用ロール制御システムを得る。
【解決手段】本発明に係るロール制御システムは、車体と右側車輪とを連結する右側連結装置に連結される第1部品と、前記車体と左側車輪とを連結する左側連結装置に連結される第2部品と、ダンパーと、を備え、前記ダンパーは、互いに往復動可能に連結された第1ダンパー部品及び第2ダンパー部品を備え、前記第1部品は、前記車体に回転自在に保持される第1ベース部と、前記右側連結装置に回転自在に連結される第1車輪側アーム部と、前記第1ダンパー部品に回転自在に連結される第1ダンパー側アーム部と、を備え、前記第2部品は、前記車体に回転自在に保持される第2ベース部と、前記左側連結装置に回転自在に連結される第2車輪側アーム部と、前記第2ダンパー部品に回転自在に連結される第2ダンパー側アーム部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右輪を有する車両(100)のロール挙動を制御するロール制御システム(1)であって、
前記車両(100)の車体(101)と右側車輪(111)とを連結する右側連結装置(102)に連結される第1部品(10)と、
前記車体(101)と左側車輪(112)とを連結する左側連結装置(103)に連結される第2部品(20)と、
前記第1部品(10)と前記第2部品(20)とに連結されるダンパー(30)と、
を備え、
前記ダンパー(30)は、第1ダンパー部品(31)と、該第1ダンパー部品(31)と往復動可能に連結された第2ダンパー部品(32)と、を備え、
前記第1部品(10)は、
前記車体(101)に回転自在に保持される第1ベース部(11)と、
前記第1ベース部(11)から延び、前記右側連結装置(102)に回転自在に連結される第1車輪側アーム部(12)と、
前記第1ベース部(11)から延び、前記第1ダンパー部品(31)に回転自在に連結される第1ダンパー側アーム部(13)と、
を備え、
前記第2部品(20)は、
前記車体(101)に回転自在に保持される第2ベース部(21)と、
前記第2ベース部(21)から延び、前記左側連結装置(103)に回転自在に連結される第2車輪側アーム部(22)と、
前記第2ベース部(21)から延び、前記第2ダンパー部品(32)に回転自在に連結される第2ダンパー側アーム部(23)と、
を備えている
ロール制御システム(1)。
【請求項2】
前記車両(100)のロール角が大きくなるにしたがって、前記ダンパー(30)が縮む構成である
請求項1に記載のロール制御システム(1)。
【請求項3】
前記車両(100)のロール角が大きくなるにしたがって、前記ダンパー(30)が伸びる構成である
請求項1に記載のロール制御システム(1)。
【請求項4】
前記第1ダンパー部品(31)に対する前記第2ダンパー部品(32)の第1方向(X1)への動きが第1状態になる第1ダンパー状態と、前記動きが前記第1状態と異なる第2状態になる第2ダンパー状態と、を切り換える制御装置(40)を備えている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のロール制御システム(1)。
【請求項5】
前記制御装置(40)は、
前記車両(100)の車速情報を取得する取得部(41)を備え、
前記車速情報の値に応じて前記第1状態と前記第2状態とを切り換える構成である
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項6】
前記制御装置(40)は、
前記車両(100)のロール情報を取得する取得部(41)を備え、
前記ロール情報の値に応じて前記第1状態と前記第2状態とを切り換える構成である
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項7】
前記制御装置(40)は、
前記車両(100)の舵角情報を取得する取得部(41)を備え、
前記舵角情報の値に応じて前記第1状態と前記第2状態とを切り換える構成である
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項8】
前記制御装置(40)は、
前記車体(101)と前記右側車輪(111)との間の距離、及び、前記車体(101)と前記左側車輪(112)との間の距離に応じて、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える構成である
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項9】
前記第1ダンパー状態と前記第2ダンパー状態とで、前記第1ダンパー部品(31)に対する前記第2ダンパー部品(32)の前記第1方向(X1)と反対の第2方向(X2)への動きが不変である
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項10】
前記制御装置(40)は、前記第1ダンパー状態と前記第2ダンパー状態とで、減衰力を変化させる
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項11】
前記制御装置(40)は、前記第1ダンパー状態と前記第2ダンパー状態とで、前記第1方向(X1)への前記動きの初期状態及び終了状態の少なくとも一方における前記第1ダンパー部品(31)に対する前記第2ダンパー部品(32)の位置を変化させる
請求項4に記載のロール制御システム(1)。
【請求項12】
前記第1ダンパー部品(31)に対する前記第2ダンパー部品(32)の第1方向(X1)への動きが第1状態になる第1ダンパー状態と、前記動きが前記第1状態と異なる第2状態になる第2ダンパー状態と、の手動による切換操作を受け付ける切換操作部(45)を備えている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のロール制御システム(1)。
【請求項13】
前記ダンパー(30)は、伸びるときの減衰力と縮むときの減衰力とが異なっている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のロール制御システム(1)。
【請求項14】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のロール制御システム(1)を備えている
車両(100)。
【請求項15】
前記車両(100)はオフロード車両である
請求項14に記載の車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のロール挙動を制御するロール制御システム、及び、該ロール制御システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右輪を有する車両には、該車両のロール挙動を制御するロール制御システムとして、左右輪を1本のバー部材で連結したロール制御システムを備えたものが存在する(例えば、特許文献1参照)。左右輪を連結する1本のバー部材は、スタビライザーバーとも称される。スタビライザーバーの一端は、車体と右側車輪とを連結するサスペンション等の右側連結装置に連結される。また、スタビライザーバーの他端は、車体と左側車輪とを連結するサスペンション等の左側連結装置に連結される。スタビライザーバーを備えた従来のロール制御システムが搭載された車両においては、スタビライザーバーによって、右側車輪と左側車輪とが独立して上下動することが規制される。このため、スタビライザーバーを備えた従来のロール制御システムが搭載された車両は、平坦な路面を高速走行する際等に、車体挙動が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、スタビライザーバーを備えた従来のロール制御システムが搭載された車両は、平坦な路面を高速走行する際等に、車体挙動が安定する。一方、スタビライザーバーを備えた従来のロール制御システムが搭載された車両は、凹凸の大きな路面等を走行する場合には、スタビライザーバーによって、右側車輪及び左側車輪が路面に追従しながら上下動することが困難になる。このため、スタビライザーバーを備えた従来のロール制御システムが搭載された車両は、凹凸の大きな路面等を走行する場合には、車体挙動が不安定になる場合がある。このように、左右輪を連結する従来のロール制御システムには、汎用性の向上が求められる場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車両のロール挙動を制御するロール制御システムであって、従来よりも汎用性が向上することが可能なロール制御システムを得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このようなロール制御システムを備えた車両を得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロール制御システムは、左右輪を有する車両のロール挙動を制御するロール制御システムであって、前記車両の車体と右側車輪とを連結する右側連結装置に連結される第1部品と、前記車体と左側車輪とを連結する左側連結装置に連結される第2部品と、前記第1部品と前記第2部品とに連結されるダンパーと、を備え、前記ダンパーは、第1ダンパー部品と、該第1ダンパー部品と往復動可能に連結された第2ダンパー部品と、を備え、前記第1部品は、前記車体に回転自在に保持される第1ベース部と、前記第1ベース部から延び、前記右側連結装置に回転自在に連結される第1車輪側アーム部と、前記第1ベース部から延び、前記第1ダンパー部品に回転自在に連結される第1ダンパー側アーム部と、を備え、前記第2部品は、前記車体に回転自在に保持される第2ベース部と、前記第2ベース部から延び、前記左側連結装置に回転自在に連結される第2車輪側アーム部と、前記第2ベース部から延び、前記第2ダンパー部品に回転自在に連結される第2ダンパー側アーム部と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係る車両は、本発明に係るロール制御システムを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るロール制御システムは、第1部品と第2部品とに連結されるダンパーの特性を変更することにより、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムが搭載される車両を右側から観察した図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの制御装置を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの変形例を示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの別の変形例を示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係るロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
【
図9】本発明の実施の形態2に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。
【
図10】本発明の実施の形態2に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るロール制御システム及び車両の一例について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下では、本発明が採用される車両の一例として自動四輪車を説明するが、本発明が採用される車両は、左右輪を有していれば、車輪数は限定されない。本発明が採用される車両は、例えば、自動三輪車であってもよい。また、以下では、本発明が採用される車両の一例としてオフロード車両(舗装路以外の路面を走行することもある車両)を説明するが、本発明が採用される車両は、オンロード車両(舗装路を走行する車両)であってもよい。また、以下では、本発明が採用される車両の駆動源は特に限定されず、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする車両であってもよく、左右輪を有する自転車であってもよい。なお、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0012】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0013】
実施の形態1.
以下に、本実施の形態1に係るロール制御システム及び車両について、図面を用いて説明する。
【0014】
<ロール制御システムが搭載される車両、及びロール制御システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムが搭載される車両を右側から観察した図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。なお、
図1及び
図2では、紙面右側が、車両100の前側となる。また、
図3及び
図4は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。換言すると、
図3及び
図4は、
図2の紙面下側から、本実施の形態1に係るロール制御システム1を観察した図となっている。なお、
図3は、車両100がロールしていない状態のロール制御システム1を示している。また、
図4は、車両100が右側にロールしている状態のロール制御システム1を示している。
【0015】
例えばオフロード車両である車両100は、車体101を備えている。また、車両100は、4つの車輪を備えている。具体的には、車両100は、右側の前輪と、左側の前輪と、右側の後輪と、左側の後輪とを備えている。以下、右側の前輪を、右側車輪111と称する。また、左側の前輪を、左側車輪112と称する。4つの車輪のそれぞれは、サスペンション等の連結装置で、車体101と連結されている。以下、車体101と右側車輪111とを連結する連結装置を、右側連結装置102と称する。また、車体101と左側車輪112とを連結する連結装置を、左側連結装置103と称する。
【0016】
この車両100には、車両100のロール挙動を制御するロール制御システム1が搭載されている。換言すると、車両100は、ロール制御システム1を備えている。ロール制御システム1は、右側車輪111と左側車輪112とに連結されている。具体的には、ロール制御システム1は、右側連結装置102を介して右側車輪111と連結されており、左側連結装置103を介して左側車輪112と連結されている。なお、ロール制御システム1は、右側の後輪と左側の後輪とに連結されていてもよい。また、車両100は、右側車輪111と左側車輪112とに連結されているロール制御システム1と、右側の後輪と左側の後輪とに連結されているロール制御システム1と、の双方を備えていてもよい。
【0017】
このロール制御システム1は、右側連結装置102に連結される第1部品10と、左側連結装置103に連結される第2部品20と、第1部品10と第2部品20とに連結されるダンパー30と、を備えている。
【0018】
ダンパー30は、流体が充填されている筒部を有する部品と、該筒部内を往復動するピストン及び該ピストンに連結されているロッドを有する部品と、を備えている。これらの部品のうち、第1部品10に連結されている部品を第1ダンパー部品31と称する。また、これらの部品のうち、第2部品20に連結されている部品を第2ダンパー部品32と称する。すなわち、ダンパー30は、第1ダンパー部品31と、該第1ダンパー部品31と往復動可能に連結された第2ダンパー部品32と、を備えている。
【0019】
第1部品10は、第1ベース部11、第1車輪側アーム部12、及び第1ダンパー側アーム部13を備えている。第1ベース部11は、車両100の車体101に、回転自在に保持されるものである。本実施の形態1では、第1ベース部11は、車体101の備える保持部131に、回転自在に保持されている。第1車輪側アーム部12は、第1ベース部11から延び、右側連結装置102に回転自在に連結されるものである。例えば、第1車輪側アーム部12は、車体101と右側車輪111とを連結するサスペンションの構成部品であるサスペンションアームに、回転自在に連結される。本実施の形態1では、第1車輪側アーム部12は、連結部132によって、右側連結装置102に回転自在に連結されている。第1ダンパー側アーム部13は、第1ベース部11から延び、第1ダンパー部品31に回転自在に連結されるものである。本実施の形態1では、第1ダンパー側アーム部13は、連結部133によって、第1ダンパー部品31に回転自在に連結されている。
【0020】
第2部品20は、第2ベース部21、第2車輪側アーム部22、及び第2ダンパー側アーム部23を備えている。
【0021】
第2ベース部21は、車両100の車体101に、回転自在に保持されるものである。本実施の形態1では、第2ベース部21は、車体101の備える保持部134に、回転自在に保持されている。ここで、本実施の形態1においては、車両100に搭載されたロール制御システム1を、該車両100の側方からの視線で観察した際、第2ベース部21は、第1部品10の第1ベース部11と同位置となっている。このため、
図3及び
図4では、第2ベース部21と第1ベース部11とが重なり合い、第1ベース部11のみが示されている。したがって、
図3及び
図4を参照する際には、第2ベース部21の位置は第1ベース部11と同位置であると認識していただきたい。なお、車両100に搭載されたロール制御システム1を、該車両100の側方からの視線で観察した際、第2ベース部21は、第1ベース部11と同位置となっていることが好ましいが、第1ベース部11とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0022】
第2車輪側アーム部22は、第2ベース部21から延び、左側連結装置103に回転自在に連結されるものである。例えば、第2車輪側アーム部22は、車体101と左側車輪112とを連結するサスペンションの構成部品であるサスペンションアームに、回転自在に連結される。本実施の形態1では、第2車輪側アーム部22は、連結部135によって、左側連結装置103に回転自在に連結されている。
【0023】
ここで、本実施の形態1では、車両100に搭載されたロール制御システム1を、該車両100の側方からの視線で観察した際、車両100がロールしていない状態においては、第2車輪側アーム部22は、第1部品10の第1車輪側アーム部12と重なりあっている。このため、
図3では、第2車輪側アーム部22と第1車輪側アーム部12とが重なり合い、第1車輪側アーム部12のみが示されている。したがって、
図3を参照する際には、第2車輪側アーム部22の位置は、第1車輪側アーム部12と同位置であると認識していただきたい。同様に、本実施の形態1では、車両100に搭載されたロール制御システム1を、該車両100の側方からの視線で観察した際、車両100がロールしていない状態においては、連結部135の位置は、連結部132と同位置となっている。このため、
図3では、連結部135と連結部132とが重なり合い、連結部132のみが示されている。したがって、
図3を参照する際には、連結部135の位置は、連結部132と同位置であると認識していただきたい。なお、車両100に搭載されたロール制御システム1を、該車両100の側方からの視線で観察した際、車両100がロールしていない状態においては、連結部135は、連結部132と同位置となっていることが好ましいが、連結部132とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0024】
第2ダンパー側アーム部23は、第2ベース部21から延び、第2ダンパー部品32に回転自在に連結されるものである。本実施の形態1では、第2ダンパー側アーム部23は、連結部136によって、第2ダンパー部品32に回転自在に連結されている。
【0025】
このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の側方からの視線で観察した際、車両100がロールした際、次のように動作する。
まず、車両100がロールしていない状態では、
図3に示すように、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13と第2部品20の第2ダンパー側アーム部23とは、第1ベース部11及び第2ベース部21を基準として、略反対方向に延びている。そして、第1ダンパー側アーム部13及び第2ダンパー側アーム部23は、ダンパー30と重なり合うように配置されている。
【0026】
車両100が右側にロールした際、右側車輪111は、車体101に近づく。すなわち、第1部品10の第1車輪側アーム部12と右側連結装置102とを連結する連結部132も、車体101に近づく。これにより、第1部品10は、第1ベース部11を回転中心として回転し、
図3に示す状態から
図4に示す状態となる。具体的には、第1部品10の第1車輪側アーム部12は、第1ベース部11を回転中心として、連結部132が車体101に近づく方向(
図4の上方向)に回転する。また、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13は、第1ベース部11を回転中心として、第1ダンパー側アーム部13と第1ダンパー部品31とを連結する連結部133が第2ダンパー部品32に近づく方向に回転する。
【0027】
一方、車両100が右側にロールした際、左側車輪112は、車体101から遠ざかる。すなわち、第2部品20の第2車輪側アーム部22と左側連結装置103とを連結する連結部135も、車体101から遠ざかる。これにより、第2部品20は、第2ベース部21を回転中心として回転し、
図3に示す状態から
図4に示す状態となる。具体的には、第2部品20の第2車輪側アーム部22は、第2ベース部21を回転中心として、連結部135が車体101から遠ざかる方向(
図4の下方向)に回転する。また、第2部品20の第2ダンパー側アーム部23は、第2ベース部21を回転中心として、第2ダンパー側アーム部23と第2ダンパー部品32とを連結する連結部136が第1ダンパー部品31に近づく方向に回転する。
【0028】
すなわち、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の右側へのロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっている。また、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の右側へのロール角が小さくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっている。そして、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100がロールしていないとき、ダンパー30は最も伸びた状態となる。なお、車両100が左側にロールした際も、ダンパー30は、同様の動きとなる。
【0029】
具体的には、車両100が左側にロールした際、右側車輪111は、車体101から遠ざかる。すなわち、第1部品10の第1車輪側アーム部12と右側連結装置102とを連結する連結部132も、車体101から遠ざかる。これにより、第1部品10の第1車輪側アーム部12は、第1ベース部11を回転中心として、連結部132が車体101から遠ざかる方向に回転する。また、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13は、第1ベース部11を回転中心として、第1ダンパー側アーム部13と第1ダンパー部品31とを連結する連結部133が第2ダンパー部品32に近づく方向に回転する。
【0030】
一方、車両100が左側にロールした際、左側車輪112は、車体101に近づく。すなわち、第2部品20の第2車輪側アーム部22と左側連結装置103とを連結する連結部135も、車体101に近づく。これにより、第2部品20の第2車輪側アーム部22は、第2ベース部21を回転中心として、連結部135が車体101に近づく方向に回転する。また、第2部品20の第2ダンパー側アーム部23は、第2ベース部21を回転中心として、第2ダンパー側アーム部23と第2ダンパー部品32とを連結する連結部136が第1ダンパー部品31に近づく方向に回転する。
【0031】
このように、本実施の形態1に係るロール制御システム1においては、車両100の左側へのロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっている。また、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の左側へのロール角が小さくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっている。すなわち、本実施の形態1に係るロール制御システム1においては、車両100のロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっている。以下、車両100のロール角が大きくなって行く際に、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が相対的に動く方向を、第1方向X1と称する。また、第1方向X1と反対側の方向を、第2方向X2と称する。すなわち、第1方向X1は、車両100がロールしていく際に、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が相対的に動く方向である。また、第2方向X2は、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていく際に、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が相対的に動く方向である。
【0032】
このように構成されたロール制御システム1は、ダンパー30の特性を変更することにより、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。ダンパー30の特性とは、ダンパー30の減衰力等である。本実施の形態1では、ロール制御システム1が制御装置40を備えており、制御装置40がダンパー30の特性を変更する。この制御装置40は、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等を含んで構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なものを含んで構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等を含んで構成されてもよい。
【0033】
なお、ダンパー30としては、減衰力が可変な公知のダンパーを用いることができる。例えば、筒部内をピストンが移動する際に該筒部内に充填されている流体が流れる流路に、該流路の開度を変更するバルブが設けられているダンパーが存在する。このようなダンパーには、該ダンパーが縮むときにバルブによって流路の開度を変更するもの、該ダンパーが伸びるときにバルブによって流路の開度を変更するもの、及び、該ダンパーが縮むときと伸びるときとの双方でバルブによって流路の開度を変更するものがある。また、このようなダンパーには、バルブによって流路の開度を変更する際、流路の開閉のみが変更可能なものもあるし、開状態の流路の開度を変更可能なものもあし、双方が可能なものもある。また、このようなダンパーにおいては、該ダンパーが縮もうとするときに流路が閉状態になっている場合、流体が流路を流れることができず、ピストンからの圧力で流体が圧縮される分しか、ダンパーが縮まない。すなわち、実質的に、ダンパーは縮まない。また、このようなダンパーにおいては、該ダンパーが伸びようとするときに流路が閉状態になっている場合、流体が流路を流れることができず、ピストンからの圧力で流体が圧縮される分しか、ダンパーが伸びない。すなわち、実質的に、ダンパーは伸びない。また、このようなダンパーにおいては、該ダンパーが伸びようとするとき及び縮もうとするときの双方で流路が閉状態になっている場合、ピストンからの圧力で流体が圧縮される分しか、ダンパーが伸縮しない。すなわち、実質的に、ダンパーは伸縮しない。このようなダンパーのいずれも、ダンパー30として用いることができる。制御装置40が実行しようとしているダンパー30の特性の変更を実現可能なダンパーを、ダンパー30として適宜採用すればよい。
【0034】
本実施の形態1では、制御装置40は、次のように、ダンパー30の特性を変更する。制御装置40は、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換える。第1ダンパー状態とは、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第1方向X1への動きが第1状態になる状態である。第2ダンパー状態とは、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第1方向X1への動きが第1状態と異なる第2状態になる状態である。
【0035】
例えば、制御装置40は、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、ダンパー30の減衰力を変化させる。換言すると、制御装置40は、第1状態と第2状態とで、ダンパー30の減衰力を変化させる。
【0036】
車両100のロール角が大きくなって行く際、すなわち車両100がロールしていく際、第2ダンパー部品32は、第1ダンパー部品31に対して第1方向X1へ動く。この際、ダンパー30の減衰力が小さくなるほど、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が動く際の抵抗が小さくなる。このため、ダンパー30の減衰力が小さくなるほど、第1部品10及び第2部品20のうちの一方が回転した際、当該回転力が第1部品10及び第2部品20のうちの他方へ伝達されにくくなる。したがって、ダンパー30の減衰力が小さくなるほど、右側車輪111及び左側車輪112のうちの一方が上下動した際、右側車輪111及び左側車輪112のうちの他方は、ロール制御システム1によって上下動が規制されにくくなる。すなわち、ダンパー30の減衰力が小さくなるほど、右側車輪111及び左側車輪112は、スタビライザーバーを備えていない従来の車両の左右輪に近い動作を行うことができる。
【0037】
一方、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が動く際の抵抗が大きくなる。このため、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、第1部品10及び第2部品20のうちの一方が回転した際、当該回転力が第1部品10及び第2部品20のうちの他方へ伝達されやすくなる。したがって、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、右側車輪111及び左側車輪112は、ロール制御システム1によって、互いに独立した上下動の規制が大きくなる。すなわち、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、車両100は、ロール挙動が抑制される。
【0038】
このように、制御装置40が第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とでダンパー30の減衰力を変化させることにより、車両100のロール挙動特性を複数の挙動特性に設定できる。したがって、ロール制御システム1は、ダンパー30の特性を変更することにより、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。なお、第1ダンパー状態におけるダンパー30の減衰力は1つの値に固定される必要はなく、第2ダンパー状態におけるダンパー30の減衰力も1つの値に固定される必要はない。制御装置40は、第1ダンパー状態及び第2ダンパー状態のうちの少なくとも一方の状態において、ダンパー30の減衰力を複数の値に変更してもよい。これにより、より多くの挙動特性に車両100のロール挙動特性を設定でき、ロール制御システム1の汎用性がさらに向上する。
【0039】
また、制御装置40がダンパー30の状態を第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とに切り換える場合、制御装置40は、第1ダンパー状態又は第2ダンパー状態においてダンパー30を次のような状態にしてもよい。制御装置40は、第1ダンパー状態又は第2ダンパー状態において、第2ダンパー部品32が第1ダンパー部品31に対して第1方向X1へ動こうとする際にダンパー30内の流体が流れる流路を、閉状態としてもよい。該流路を閉状態とすることにより、ピストンからの圧力で流体が圧縮される分しか、ダンパー30が縮まない。このため、制御装置40が第1ダンパー状態又は第2ダンパー状態においてダンパー30の状態をこのように設定することにより、ロール制御システム1に、従来のスタビライザーバーに近い働きをさせることができる。
【0040】
ここで、本実施の形態1では、制御装置40は、次のように、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換える構成となっている。換言すると、制御装置40は、次のように、第1状態と第2状態とを切り換える構成となっている。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの制御装置を示すブロック図である。
制御装置40は、機能部として取得部41及び制御部42を備えている。取得部41は、第1状態と第2状態との切り換えの判定基準となる情報を取得する機能部である。制御部42は、取得部41が取得した情報に応じて、第1状態と第2状態とを切り換える機能部である。
【0042】
例えば、取得部41は、車両100の車速情報を取得する。本実施の形態1では、
図1に示すように、車両100は、速度メーター121を備えている。このため、本実施の形態1では、
図5に示すように、取得部41は、車両100の車速情報として、速度メーター121から、車両100の車速を取得している。そして、制御部42は、取得部41が取得した車速情報の値に応じて、第1状態と第2状態とを切り換える。例えば、制御部42は、車両100の車速が既定値以上であるか否かによって、第1状態と第2状態とを切り換える。
【0043】
例えば、オフロード車両は、低速で凹凸の大きな路面等を走行する場合、左右輪が独立して上下動できる方が、車体挙動が安定する。しかしながら、このようなオフロード車両であっても、平坦な路面を高速で走行する場合には、左右輪が独立して上下動することを規制し、ロール挙動を抑制した方が、車体挙動が安定する。このように、車両100は、該車両100の車速によって、右側車輪111及び左側車輪112の独立した上下動の好適な規制度合いが異なる場合がある。このような場合、車両100の車速情報に応じて第1状態と第2状態とを切り換えることにより、車両100の安全性が向上する。
【0044】
なお、車両100の車速情報は、車両100の車速に限定されない。車両100の車速情報は、例えば、車両100の車速に換算可能な他の物理量であってもよい。また、車両100の車速情報の取得先は、速度メーター121に限定されない。取得部41は、例えば、車両100の車輪の回転速度を検出する車輪速センサ等、速度メーター121以外の構成から車両100の車速情報を取得してもよい。
【0045】
また、例えば、取得部41は、車両100のロール情報を取得する。本実施の形態1では、
図1に示すように、車両100は、慣性計測装置122を備えている。このため、本実施の形態1では、
図5に示すように、取得部41は、車両100のロール情報として、慣性計測装置122から、車両100の横方向の加速度又はヨーレートを取得している。そして、制御部42は、取得部41が取得したロール情報の値に応じて、第1状態と第2状態とを切り換える。例えば、制御部42は、車両100の車両100の横方向の加速度又はヨーレートが既定値以上であるか否かによって、第1状態と第2状態とを切り換える。
【0046】
例えば、車両100が急速にロールしようとしている場合には、右側車輪111及び左側車輪112が独立して上下動することを規制し、ロール挙動を抑制した方が、車体挙動が安定する。このような場合、車両100のロール情報に応じて第1状態と第2状態とを切り換えることにより、車両100の安全性が向上する。
【0047】
なお、車両100のロール情報は、車両100の横方向の加速度及びヨーレートに限定されない。車両100のロール情報は、例えば、車両100のロール挙動を把握することが可能な物理量であれば、車両100の横方向の加速度及びヨーレート以外の他の物理量であってもよい。また、車両100のロール情報の取得先は、慣性計測装置122に限定されない。取得部41は、例えば、慣性計測装置122以外の構成から車両100のロール情報を取得してもよい。
【0048】
また、例えば、取得部41は、車両100の舵角情報を取得する。本実施の形態1では、
図1に示すように、車両100は、ステアリング104の舵角を検出する舵角検出センサ123を備えている。このため、本実施の形態1では、
図5に示すように、取得部41は、車両100の舵角情報として、舵角検出センサ123から、ステアリング104の舵角を取得している。そして、制御部42は、取得部41が取得した舵角情報の値に応じて、第1状態と第2状態とを切り換える。例えば、制御部42は、ステアリング104の舵角が既定値以上であるか否かによって、第1状態と第2状態とを切り換える。
【0049】
例えば、車両100の舵角が大きいほど、その後の車両100はロールしやすくなる。このため、車両100の舵角が大きい場合には、右側車輪111及び左側車輪112が独立して上下動することを規制し、ロール挙動を抑制した方が、車体挙動が安定する。車両100の舵角情報に応じて第1状態と第2状態とを切り換えることにより、車両100のロール角が大きくなる前に、車両100のロール挙動を抑制でき、車両100の安全性が向上する。
【0050】
なお、車両100の舵角情報は、ステアリング104の舵角に限定されない。車両100の舵角情報は、例えば、車両100の舵角に換算可能な他の物理量であってもよい。また、車両100の舵角情報の取得先は、舵角検出センサ123に限定されない。取得部41は、例えば、舵角検出センサ123以外の構成から車両100の舵角情報を取得してもよい。
【0051】
また、例えば、制御装置40は、車体101と右側車輪111との間の距離、及び、車体101と左側車輪112との間の距離に応じて、第1状態と第2状態とを切り換えてもよい。本実施の形態1では、
図1及び
図2に示すように、車両100は、101と右側車輪111との間の距離を検出するストロークセンサ124、及び、車体101と左側車輪112との間の距離を検出するストロークセンサ125を備えている。そして、制御装置40の取得部41は、ストロークセンサ124から車体101と右側車輪111との間の距離を取得し、ストロークセンサ125から車体101と左側車輪112との間の距離を取得する。そして、制御装置40の制御部42は、車体101と右側車輪111との間の距離、及び、車体101と左側車輪112との間の距離に応じて、第1状態と第2状態とを切り換える。具体的には、車体101と右側車輪111との間の距離を第1距離とし、車体101と左側車輪112との間の距離を第2距離とする。制御部42は、例えば、第1距離と第2距離との差の絶対値が既定値以上であるか否かによって、第1状態と第2状態とを切り換える。
【0052】
第1距離と第2距離との差の絶対値が既定値以上である場合、車両100は、凹凸の大きな路面を走行していることとなる。このような場合、右側車輪111及び左側車輪112は、なるべく独立して上下動できたほうが、車両100の挙動が安定する。このため、車体101と左側車輪112との間の距離、及び、車体101と左側車輪112との間の距離に応じて、第1状態と第2状態とを切り換えることにより、車両100の安全性が向上する。なお、車体101と右側車輪111との間の距離はストロークセンサ124以外の構成から取得されてもよく、車体101と左側車輪112との間の距離はストロークセンサ125以外の構成から取得されてもよい。
【0053】
ここで、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換える際、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第2方向X2への動きを不変としてもよい。具体的には、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対して第2ダンパー部品32が第2方向X2へ動くときのダンパー30の減衰力等を不変としてもよい。すなわち、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていく際のダンパー30の減衰力等を不変としてもよい。なお、本実施の形態1でいう不変とは、厳密に不変という意味ではなく、実質的に不変であればよい。すなわち、本実施の形態1でいう不変とは、微少な変化を許容する表現である。
【0054】
上述のように、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、右側車輪111及び左側車輪112が独立して上下動することが規制される。すなわち、ダンパー30の減衰力が大きくなるほど、ロール制御システム1の剛性が高くなる。ここで、車両100がロールしていく際のロール挙動を抑制するためには、ロール制御システム1の剛性は高い方が好ましい。一方、ロール制御システム1の剛性が高すぎる場合、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていく際、ロール制御システム1の反力により、車両100の車体101が水平に戻っていく方向の加速度が大きくなりすぎ、車両100の挙動が不安定になる場合がある。しかしながら、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第2方向X2への動きを不変とすることにより、車両100がロールしていくときのダンパー30の減衰力等を変更しても、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていく際のダンパー30の減衰力が過度に大きくなりすぎることを抑制できる。このため、車両100がロールしていくときのダンパー30の減衰力等を変更しても、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていく際、車両100の挙動が不安定になることを抑制できる。
【0055】
また、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換える際、制御装置40は、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第1方向X1への動きの初期状態及び終了状態の少なくとも一方において、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の位置を変化させてもよい。
【0056】
例えば、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第1方向X1への動きの初期状態において、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の位置を変化させるとする。この場合、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、ロールしていた車両100がロール状態から復帰した際、車体101の横方向の傾きが異なることとなる。また、例えば、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の第1方向X1への動きの終了状態において、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の位置を変化させるとする。この場合、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とで、ロール状態の車両100において、車体101の横方向の傾きが異なることとなる。このように、第1ダンパー部品31に対する第2ダンパー部品32の位置を変化させることにより、車両100が走行又は停止している路面の傾き等に応じて第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換えることにより、車体101の横方向の傾きを変更することができる。これにより、車両100の快適性が向上する。
【0057】
<変形例>
図6は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの変形例を示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
図1~
図5を用いて説明したロール制御システム1は、制御装置40によって第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換える構成となっていた。しかしながら、制御装置40は、ロール制御システム1の必須の構成ではない。例えば、
図6に示すように、ロール制御システム1は、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態との手動による切換操作を受け付ける切換操作部45を備えていてもよい。そして、ロール制御システム1は、車両100の運転手等が切換操作部45を手動で操作することにより、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とが切り換えられてもよい。このような構成のロール制御システム1においても、第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換えることにより、上述の効果を得ることができる。なお、切換操作部45の構成は、特に限定されない。例えば、切換操作部45として、機械的構成で第1ダンパー状態と第2ダンパー状態とを切り換えるスイッチを用いてもよい。また、例えば、切換操作部45として、タッチパネル等に設けられた静電容量式スイッチ等のスイッチを用いてもよい。
【0058】
図7は、本発明の実施の形態1に係るロール制御システムの別の変形例を示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。
図6で示した切換操作部45も、制御装置40と同様に、ロール制御システム1の必須の構成ではない。例えば、
図7に示すように、ロール制御システム1は、制御装置40及び切換操作部45を備えていない構成であってもよい。このような構成のロール制御システム1のダンパー30は、予め、伸びるときの減衰力と縮むときの減衰力とが異なるように設定される。換言すると、
図7に示すロール制御システム1のダンパー30は、伸びるときの減衰力と縮むときの減衰力とが異なっている。このような構成のロール制御システム1においては、車両100がロールしていくときのロール制御システム1の剛性と、ロールしている車両100の車体101が水平に戻っていくときのロール制御システム1の剛性とを、異ならせることができる。したがって、このような構成のロール制御システム1も、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。
【0059】
<ロール制御システム1の効果>
本実施の形態1に係るロール制御システムの効果について説明する。
【0060】
本実施の形態1に係るロール制御システム1は、左右輪を有する車両100のロール挙動を制御するロール制御システムである。ロール制御システム1は、車両100の車体101と右側車輪111とを連結する右側連結装置102に連結される第1部品10と、車体101と左側車輪112とを連結する左側連結装置103に連結される第2部品20と、第1部品10と第2部品20とに連結されるダンパー30と、を備えている。ダンパー30は、第1ダンパー部品31と、該第1ダンパー部品31と往復動可能に連結された第2ダンパー部品32と、を備えている。第1部品10は、車体101に回転自在に保持される第1ベース部11と、第1ベース部11から延び、右側連結装置102に回転自在に連結される第1車輪側アーム部12と、第1ベース部11から延び、第1ダンパー部品31に回転自在に連結される第1ダンパー側アーム部13と、を備えている。第2部品20は、車体101に回転自在に保持される第2ベース部21と、第2ベース部21から延び、左側連結装置103に回転自在に連結される第2車輪側アーム部22と、第2ベース部21から延び、第2ダンパー部品32に回転自在に連結される第2ダンパー側アーム部23と、を備えている。
このように構成されたロール制御システム1は、ダンパー30の特性を変更することにより、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。
【0061】
好ましくは、車両100はオフロード車両である。オフロード車両は、平坦な路面のみならず、凹凸の大きな路面を走行する場合も多い。このため、オフロード車両に搭載されるロール制御システムは、オンロード車両に搭載されるロール制御システムと比べ、汎用性の向上がより求められる。このため、本実施の形態1に係るロール制御システム1は、オンロード車両に搭載されることが好ましい。
【0062】
実施の形態2.
実施の形態1で示したロール制御システム1は、車両100のロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっていた。これに限らず、本実施の形態2で示すように、ロール制御システム1は、車両100のロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっていてもよい。なお、本実施の形態2において記述していない項目については、実施の形態1と同様とする。
【0063】
図8は、本発明の実施の形態2に係るロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の上方からの視線で観察した図である。なお、
図8では、紙面右側が、車両100の前側となる。また、
図9及び
図10は、本発明の実施の形態2に係るロール制御システムを示す図であり、該ロール制御システムが車両に搭載された状態を、該車両の右側からの視線で観察した図である。換言すると、
図9及び
図10は、
図8の紙面下側から、本実施の形態2に係るロール制御システム1を観察した図となっている。ここで、
図9は、車両100がロールしていない状態のロール制御システム1を示している。また、
図10は、車両100が左側にロールしている状態のロール制御システム1を示している。
【0064】
なお、
図9及び
図10では、第2部品20の第2ベース部21と第1部品10の第1ベース部11とが重なり合い、第1ベース部11のみが示されている。したがって、
図9及び
図10を参照する際には、第2ベース部21の位置は第1ベース部11と同位置であると認識していただきたい。また、
図9では、第2部品20の第2車輪側アーム部22と第1部品10の第1車輪側アーム部12とが重なり合い、第1車輪側アーム部12のみが示されている。したがって、
図9を参照する際には、第2車輪側アーム部22の位置は、第1車輪側アーム部12と同位置であると認識していただきたい。また、
図9では、第2車輪側アーム部22と左側連結装置103とを連結する連結部135は、第1車輪側アーム部12と右側連結装置102とを連結する連結部132に重なっている。このため、
図9では、連結部132のみが示されている。したがって、
図9を参照する際には、連結部135の位置は、連結部132と同位置であると認識していただきたい。
【0065】
車両100の側方からの視線で観察した際、
図9に示すように、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、車両100がロールしていない状態では、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13と第2部品20の第2ダンパー側アーム部23とは、第1ベース部11及び第2ベース部21を基準として、略同方向に延びている。そして、第1ダンパー側アーム部13及び第2ダンパー側アーム部23は、ダンパー30と重なり合うように配置されている。なお、本実施の形態2では、第1ダンパー側アーム部13が、第2ダンパー側アーム部23と比べて長い構成となっている。これに限らず、第2ダンパー側アーム部23が、第1ダンパー側アーム部13と比べて長い構成であってもよい。
【0066】
車両100が左側にロールした際、右側車輪111は、車体101から遠ざかる。すなわち、第1部品10の第1車輪側アーム部12と右側連結装置102とを連結する連結部132も、車体101から遠ざかる。これにより、第1部品10は、第1ベース部11を回転中心として回転し、
図9に示す状態から
図10に示す状態となる。具体的には、第1部品10の第1車輪側アーム部12は、第1ベース部11を回転中心として、連結部132が車体101から遠ざかる方向(
図10の下方向)に回転する。また、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13は、第1ベース部11を回転中心として、第1ダンパー側アーム部13と第1ダンパー部品31とを連結する連結部133が第2ダンパー部品32から遠ざかる方向に回転する。
【0067】
一方、車両100が左側にロールした際、左側車輪112は、車体101に近づく。すなわち、第2部品20の第2車輪側アーム部22と左側連結装置103とを連結する連結部135も、車体101に近づく。これにより、第2部品20は、第2ベース部21を回転中心として回転し、
図9に示す状態から
図10に示す状態となる。具体的には、第2部品20の第2車輪側アーム部22は、第2ベース部21を回転中心として、連結部135が車体101に近づく方向(
図10の上方向)に回転する。また、第2部品20の第2ダンパー側アーム部23は、第2ベース部21を回転中心として、第2ダンパー側アーム部23と第2ダンパー部品32とを連結する連結部136が第1ダンパー部品31から遠ざかる方向に回転する。
【0068】
すなわち、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、車両100の左側へのロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっている。また、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の左側へのロール角が小さくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっている。そして、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100がロールしていないとき、ダンパー30は最も縮んだ状態となる。車両100が右側にロールした際も、ダンパー30は、同様の動きとなる。
【0069】
具体的には、車両100が右側にロールした際、右側車輪111は、車体101に近づく。すなわち、第1部品10の第1車輪側アーム部12と右側連結装置102とを連結する連結部132も、車体101に近づく。これにより、第1部品10の第1車輪側アーム部12は、第1ベース部11を回転中心として、連結部132が車体101に近づく方向に回転する。また、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13は、第1ベース部11を回転中心として、第1ダンパー側アーム部13と第1ダンパー部品31とを連結する連結部133が第2ダンパー部品32から遠ざかる方向に回転する。
【0070】
一方、車両100が右側にロールした際、左側車輪112は、車体101から遠ざかる。すなわち、第2部品20の第2車輪側アーム部22と左側連結装置103とを連結する連結部135も、車体101から遠ざかる。これにより、第2部品20の第2車輪側アーム部22は、第2ベース部21を回転中心として、連結部135が車体101から遠ざかる方向に回転する。また、第2部品20の第2ダンパー側アーム部23は、第2ベース部21を回転中心として、第2ダンパー側アーム部23と第2ダンパー部品32とを連結する連結部136が第1ダンパー部品31から遠ざかる方向に回転する。
【0071】
このように、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、車両100の右側へのロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっている。また、このように構成されたロール制御システム1においては、車両100の右側へのロール角が小さくなるにしたがって、ダンパー30が縮む構成となっている。すなわち、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、車両100のロール角が大きくなるにしたがって、ダンパー30が伸びる構成となっている。
【0072】
このように構成されたロール制御システム1においても、実施の形態1で示したロール制御システム1と同様に、ダンパー30の特性を変更することにより、従来よりも汎用性が向上するロール制御システムになり得る。
【0073】
なお、実施の形態1で示したロール制御システム1と本実施の形態2に係るロール制御システム1とでは、以下に示すように、互いに異なる効果を得ることもできる。
【0074】
第1部品10及び第2部品20が回転し、ダンパー30を伸縮しようとした際、第1部品10及び第2部品20には、ダンパー30から略同じ大きさの反力が作用する。ここで、
図3に示すように、実施の形態1で示したロール制御システム1は、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13と第2部品20の第2ダンパー側アーム部23とが略反対方向に延びている。したがって、実施の形態1で示したロール制御システム1は、第1ダンパー側アーム部13と第2ダンパー側アーム部23とを、略同じ長さにできる。このため、実施の形態1で示したロール制御システム1においては、第1部品10及び第2部品20は、ダンパー30からの反力によって発生する回転モーメントが略同じとなる。したがって、実施の形態1で示したロール制御システム1においては、右側車輪111のロール制御システム1による上下動の規制度合いと、左側車輪112のロール制御システム1による上下動の規制度合いとを、略同じにすることができる。このため、左右方向の略中央付近にエンジン等の重量物を配置できる車両に対して、実施の形態1で示したロール制御システム1を採用することにより、当該車両の左右方向のロール挙動を略同じにでき、当該車両の快適性が向上する。
【0075】
一方、
図9に示すように、本実施の形態2に係るロール制御システム1は、第1部品10の第1ダンパー側アーム部13と第2部品20の第2ダンパー側アーム部23とが略同方向に延びている。したがって、本実施の形態2に係るロール制御システム1は、第1ダンパー側アーム部13と第2ダンパー側アーム部23との長さが異なることとなる。以下、第1ダンパー側アーム部13及び第2ダンパー側アーム部23のうち、長い方のダンパー側アーム部を、長寸法側アーム部と称する。このため、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、第1部品10と第2部品20とでは、ダンパー30からの反力によって発生する回転モーメントが異なる。具体的には、第1部品10と第2部品20のうち、長寸法側アーム部を備えた部品に発生する回転モーメントが大きくなる。以下、第1部品10と第2部品20のうち、長寸法側アーム部を備えた部品を、長寸法側アーム部具備部品と称する。したがって、本実施の形態2に係るロール制御システム1においては、右側車輪111及び左側車輪112のうち、長寸法側アーム部具備部品に接続された方の車輪の上下動が大きく規制される。
【0076】
従来の車両には、クレーン車等、左右方向の一方の側に比べて、左右方向の他方の側の方が重くなる車両が存在する。以下、このような車両を、左右重量アンバランス車両と称する。従来の左右重量アンバランス車両は、左右方向のうちの重い側に配置された車輪と車体とを連結する連結装置として、該重い側に過度なロールが発生しない連結装置を備えていた。また、従来の左右重量アンバランス車両は、左右方向のうちの軽い側に配置された車輪と車体とを連結する連結装置にも、重い側に配置された車輪と車体とを連結する連結装置と同じものを採用していた。このため、従来の左右重量アンバランス車両は、左右方向のうちの軽い側にロールすることが過度に抑制されていた。したがって、従来の左右重量アンバランス車両は、快適性が低下していた。一方、左右重量アンバランス車両に本実施の形態2に係るロール制御システム1を搭載することにより、当該課題を解決することができる。具体的には、左右方向のうちの重い側に配置された車輪に、長寸法側アーム部具備部品を連結すればよい。これにより、本実施の形態2に係るロール制御システム1が搭載された左右重量アンバランス車両は、左右方向のうちの重い側に過度なロールが発生することを抑制でき、左右方向のうちの軽い側へのロールが過度に抑制されることも低減できる。このため、本実施の形態2に係るロール制御システム1が搭載された左右重量アンバランス車両は、快適性が向上する。
【0077】
以上、各実施の形態において本発明に係るロール制御システムの一例について説明したが、本発明に係るロール制御システムは実施の形態の説明に限定されない。例えば、本発明に係るロール制御システムは、各実施の形態の説明の一部のみが実施されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 ロール制御システム、10 第1部品、11 第1ベース部、12 第1車輪側アーム部、13 第1ダンパー側アーム部、20 第2部品、21 第2ベース部、22 第2車輪側アーム部、23 第2ダンパー側アーム部、30 ダンパー、31 第1ダンパー部品、32 第2ダンパー部品、40 制御装置、41 取得部、42 制御部、45 切換操作部、100 車両、101 車体、102 右側連結装置、103 左側連結装置、104 ステアリング、111 右側車輪、112 左側車輪、121 速度メーター、122 慣性計測装置、123 舵角検出センサ、124 ストロークセンサ、125 ストロークセンサ、131 保持部、132 連結部、133 連結部、134 保持部、135 連結部、136 連結部、X1 第1方向、X2 第2方向。