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特開2024-70316光学装置、及びそれを用いたガス分析計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070316
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光学装置、及びそれを用いたガス分析計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240516BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180713
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 直希
(72)【発明者】
【氏名】大登 正敬
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA01
2G057DA03
2G057DA11
2G057DB05
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059JJ13
2G059JJ14
2G059LL03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に、ヘリオット型セルを備えた光学装置であって、拡散光に適用できる光学装置、及びそれを用いたガス分析計を提供すること。
【解決手段】本発明は、拡散光を出射する光源ユニット(4)と、拡散光を集光するための集光用凹面ミラー(5)と、集光用凹面ミラーで反射した光線を多重反射させる多重反射セル(8)と、を有し、多重反射セルは、第1の凹面ミラー(12)と、第2の凹面ミラー(13)と、光線を入射し同じ位置から外部へ出射する光入出射口(14)と、を備え、第1の凹面ミラー及び第2の凹面ミラーは、同じ曲率半径であり、第1の凹面ミラーと第2の凹面ミラーとの間のミラー間距離は、曲率半径に等しく、あるいは、曲率半径の半分であり、光源ユニットから集光用凹面ミラーまでの距離(D2)は、集光用凹面ミラーの曲率半径に一致し、集光用凹面ミラーから光入出射口までの距離(D3)は、集光用凹面ミラーの焦点距離に一致する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散光を出射する光源ユニットと、
前記拡散光を集光するための集光用凹面ミラーと、
前記集光用凹面ミラーで反射した光線を多重反射させる多重反射セルと、を有し、
前記多重反射セルは、第1の凹面ミラーと、第2の凹面ミラーと、前記光線を入射し同じ位置から外部へ出射する光入出射口と、を備え、前記第1の凹面ミラー及び前記第2の凹面ミラーは、同じ曲率半径であり、前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーとの間のミラー間距離は、前記曲率半径に等しく、あるいは、前記曲率半径の半分であり、
前記光源ユニットから前記集光用凹面ミラーまでの距離は、前記集光用凹面ミラーの曲率半径に一致し、前記集光用凹面ミラーから前記光入出射口までの距離は、前記集光用凹面ミラーの焦点距離に一致する、ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記集光用凹面ミラーには、前記多重反射セルから出射した光線を通すための穴が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記集光用凹面ミラーと前記多重反射セルとの間に、光線方向を変える1つ又は複数の平面ミラーを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記平面ミラーのいずれか1つに、前記多重反射セルから出射した光線を通すための穴が設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記光源ユニットは、光源と、前記光源からの光を集光するための軸外放物面ミラーとを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記多重反射セルの内部空間を、測定対象ガスで満たすことが可能な請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学装置と、
前記測定対象ガスで満たされた前記内部空間を多重反射して出射された光線を受光し、前記測定対象ガスのガス濃度を算出する受光装置と、
を有することを特徴とするガス分析計。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重反射セルを有する光学装置、及びそれを用いたガス分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析計では、測定対象ガスが吸収する特定の波長の光線を当て、その減衰量(検波波形の振幅比)を測定することで測定対象ガスのガス濃度を計測している。
【0003】
ガスの吸収強度は、ランベルト・ベールの法則に従うことが知られており、感度は、光路長に依存する。したがって、長い光路長を確保することで、ガス分析を高感度で行うことができる。
【0004】
光路長を確保するための手段として、多重反射セルを用いる構成が知られている。多重反射セルには、ホワイト型セル及び、ヘリオット型セルが一般的に知られている。ヘリオット型セルは、ホワイト型セルと比較して、同じ光路長を確保するにあたって、セル容量を小さくできる。セル容量は、多重反射セル内に導入する測定対象ガスのガス交換速度に影響し、セル容量が小さいほど応答速度を改善できる。したがって、多重反射セルとして、ヘリオット型セルを使用することが有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-243270号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. R. Herriot, H. Kogelnik, and R. Kompfner, “Off-axis paths in spherical mirror interferometers,” Appl. Opt. 3, 523-526 (1964).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス分析計では、多波長光源(連続光)を用いることで多種のガス種を取り扱うことができるが、多波長光源は、ランプ光やフィラメント光などの拡散光である。
【0008】
このため、拡散光を、多重反射セル内に精度よく入射するとともに多重反射させて外部に取り出すことが難しく、ヘリオット型セルを適用できない問題があった。
【0009】
非特許文献1には、ヘリオット型セルにおける多重反射の条件として、一対の凹面ミラー間の距離と曲率半径との関係を適正化することが開示されている。
【0010】
しかしながら、光源とヘリオット型セルとの間の光学系は開示されておらず、たとえ、非特許文献1に開示の多重反射条件を満たしても、拡散光を発する光源に対しヘリオット型セルを適用できず、該ヘリオット型セルを、ガス分析計に適切に組み込むことができない。
【0011】
また、特許文献1には、光源にフィラメント光源を用いることができるとの記載があるものの、非特許文献1と同様に、光源とヘリオット型セルとの間の光学系は開示されておらず、拡散光に対しヘリオット型セルを適用できない。
【0012】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、特に、ヘリオット型セルを備えた光学装置であって、拡散光に適用できる光学装置、及びそれを用いたガス分析計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における光学装置は、拡散光を出射する光源ユニットと、前記拡散光を集光するための集光用凹面ミラーと、前記集光用凹面ミラーで反射した光線を多重反射させる多重反射セルと、を有し、前記多重反射セルは、第1の凹面ミラーと、第2の凹面ミラーと、前記光線を入射し同じ位置から外部へ出射する光入出射口と、を備え、前記第1の凹面ミラー及び前記第2の凹面ミラーは、同じ曲率半径であり、前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーとの間のミラー間距離は、前記曲率半径に等しく、あるいは、前記曲率半径の半分であり、前記光源ユニットから前記集光用凹面ミラーまでの距離は、前記集光用凹面ミラーの曲率半径に一致し、前記集光用凹面ミラーから前記光入出射口までの距離は、前記集光用凹面ミラーの焦点距離に一致する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、前記集光用凹面ミラーには、前記多重反射セルから出射した光線を通すための穴が設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様は、前記集光用凹面ミラーと前記多重反射セルとの間に、光線方向を変える1つ又は複数の平面ミラーを有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様は、前記平面ミラーのいずれか1つに、前記多重反射セルから出射した光線を通すための穴が設けられている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様は、前記光源ユニットは、光源と、前記光源からの光を集光するための軸外放物面ミラーとを有する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明におけるガス分析計は、前記多重反射セルの内部空間を、測定対象ガスで満たすことが可能な上記に記載の光学装置と、前記測定対象ガスで満たされた前記内部空間を多重反射して出射された光線を受光し、前記測定対象ガスのガス濃度を算出する受光装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光源ユニットと多重反射セルとの間の光学系、及び多重反射セルの構成を適正化したことで、拡散光に適用でき、本発明の光学装置をガス分析計に適切に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るガス分析計の全体構成図である。
図2】(a)は、光源ユニットの構成図であり、(b)は、光源ユニットから出射される光線の強度分布図である。
図3】ミラー間距離と曲率半径との関係に基づく多重反射の例を示す模式図である。
図4】多重反射セルに対する光線の入射点、出射点及び反射点を示す模式図である。
図5】本実施の形態の光学装置における光学系配置の一例を示す模式図である。
図6】本実施の形態の光学装置における光学系配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る光学装置及びそれを用いたガス分析計について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るガス分析計1の全体構成図である。図1に示すように、ガス分析計1は、光学装置2と、受光装置3と、を有して構成される。光学装置2の構成について詳述する。
【0023】
[光学装置2の全体構造の説明]
図1に示すように、光学装置2は、光源ユニット4と、集光用凹面ミラー5と、第1の平面ミラー6と、第2の平面ミラー7と、多重反射セル8と、を有して構成される。
【0024】
図2(a)は、光源ユニット4の内部構造の模式図である。光源ユニット4は、筐体内に、光源9と軸外放物面ミラー10とを有して構成される。光源9を限定するものではないが、例えば、赤外光源を使用できる。
【0025】
光源9から発せられた光線は、軸外放物面ミラー10で反射し、光源ユニット4の窓11から外部に出射される。なお、窓11はなくてもよい。光源9と軸外放物面ミラー10との間の距離D1(中心間距離)は、軸外放物面ミラー10の焦点距離である。軸外放物面ミラー10は、平行光を得るべく光源9から発せられた拡散光を集光するために設けられるが、実際には、光源ユニット4の窓11から出射される光線は、図2(b)に示すように、ある程度の半値全幅を有しており、拡散光となって外部に出射される。
【0026】
図2(b)に示すように、本実施の形態においては、50%光量となる角度の合計を半値全幅と規定し、図2(b)に示すα(°)+β(°)を半値全幅として示すことができる。半値全幅が0°であると平行光であるが、実際には0°とはならず、数°~十数°程度の半値全幅をもつ拡散光として出射される。
【0027】
図1に示すように、光源ユニット4から発せられた光線(拡散光)L1は、集光用凹面ミラー5に入射される。集光用凹面ミラー5は、集光を目的として設置されたものであり、光源ユニット4から集光用凹面ミラー5までの距離D2は、集光用凹面ミラー5の曲率半径と同じである。光源ユニット4から集光用凹面ミラー5までの距離D2は、光線L1の光軸の長さ、あるいは、光源ユニット4の窓11(図2(a))の中心と、集光用凹面ミラー5の中心との間の直線距離に一致する。なお、図面に現れる曲率半径や焦点距離は正確に図示したものでなく、見やすいように、適宜変更した。
【0028】
図1に示すように、集光用凹面ミラー5で反射した光線L2は、第1の平面ミラー6に入射して光線方向を変える。さらに、第1の平面ミラー6で反射した光線L3は、第2の平面ミラー7に入射して、もう一度、光線方向を変え、第2の平面ミラー7で反射した光線L4は、多重反射セル8に入射される。
【0029】
図1に示すように、多重反射セル8は、第1の凹面ミラー12と、第1の凹面ミラー12に対向して配置される第2の凹面ミラー13と、光入出射口14と、を有して構成される。光入出射口14は、第1の凹面ミラー12に形成された貫通穴である。
【0030】
本実施の形態では、集光用凹面ミラー5から多重反射セル8の光入出射口14までの距離D3は、集光用凹面ミラー5の焦点距離(曲率半径の1/2)に一致する。集光用凹面ミラー5から光入出射口14までの距離D3は、各光線L2~L4の光軸の合計長さ、あるいは、集光用凹面ミラー5の中心と、光入出射口14の中心との間を各平面ミラー6、7を介して直線で結んだ距離に一致する。
【0031】
多重反射セル8の内部に入射した光線L5は、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間を1回以上反射した後、光入出射口14から多重反射セル8の外部へ出射される。
【0032】
なお、図1に示すように、光源ユニット4から多重反射セル8までの光線L1~L4に関しては集光していく様子を示すために、光線の上線及び下線で示し、多重反射セル8内で多重反射する光線L5及び、多重反射セル8から出射された光線L6は、光軸で示した。
【0033】
図1に示すように、光入出射口14の手前に位置する第2の平面ミラー7には、光線L6を通すための穴7aが設けられる。本実施の形態では、多重反射セル8に入射される光線L4の入射角と、多重反射セル8から出射される光線L6の出射角は異なるため、穴7aを有する第2の平面ミラー7により、多重反射セル8への入射光と出射光との分離を適切に行うことができる。
【0034】
図1に示す実施の形態では、光源ユニット4と多重反射セル8との間に、集光用凹面ミラー5、第1の平面ミラー6、及び第2の平面ミラー7からなる光学系を備える。ただし、この実施の形態は、一例であり、集光用凹面ミラー5は必須の構成要素であるが、第1の平面ミラー6、及び第2の平面ミラー7を用いなくてもよい。この場合、図1の第2の平面ミラー7に設けた穴7aを、集光用凹面ミラー5に設けることが好ましい。あるいは、第1の平面ミラー6及び第2の平面ミラー7の一方のみ配置してもよい。この場合、出射光を通す穴7aを有する第2の平面ミラーを残すことが好ましい。
【0035】
[ガス分析計1の説明]
図1に示すように、光学装置2は、ガス分析計1の発光装置として配置される。図1に示すように、多重反射セル8には、ガス導入部15とガス排気部16が設けられ、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間の内部空間8aは、ガス導入部15から導入され、ガス排気部16から排気される測定対象ガスで満たされる。
【0036】
このため、多重反射セル8内で多重反射した光線は、測定対象ガスの吸収強度により、光量が変化する。
多重反射セル8から外部に出射された光線L6は、第2の平面ミラー7の穴7aを介して受光装置3に入射される。
【0037】
受光装置3は、受光素子と信号処理回路を備える。受光素子は、光線L6の放射スペクトルを取得する。受光素子が取得した光線の放射スペクトルは、受光信号として信号処理回路に送信される。
【0038】
信号処理回路は、受光素子の受光信号を処理する。信号処理回路は、受光素子の受光信号に基づいて、測定対象ガスの濃度を測定する。信号処理回路は、測定対象ガスの吸収波長における光線の強度変化を取得することにより、測定対象ガスの濃度を測定できる。なお、本実施の形態においては、受光装置3には既存の構成、及び既存の分析方法を適用でき、限定を加えるものではない。
【0039】
[従来における光学装置の課題と、本願発明に至る経緯]
多重反射セルを備えた光学装置をガス分析計の発光装置として用いることで、長い光路長を確保でき、ガス分析を高感度で行うことができ有益とされる。特に、多重反射セルとしてヘリオット型セルを用いることで、ホワイト型セルと比較して、同じ光路長の場合のセル容積で優位性がある。すなわち、ヘリオット型セルを用いることで、セル容積を小さくでき、ガス分析の応答速度を速くできる。
【0040】
したがって、本実施の形態では、多重反射セルとしてヘリオット型セルを用いる。しかしながら、ヘリオット型セルを用いた光学装置において、図2で説明したように、光学装置の光源ユニットから発せられる光線は拡散光であるがゆえ、光源ユニットとヘリオット型セルの間の光学系、及び、ヘリオット型セルの構成を適正化しなければ、ヘリオット型セルへの光線の入射と出射がうまくいかず、拡散光に適用できない問題が生じた。
【0041】
[本実施の形態の特徴的構成についての説明]
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、光源ユニット4から多重反射セル8に至る光学系を以下のように調整した。
【0042】
(A)光源ユニット4から出射する拡散光(図1に示す光線L1)を集光するための集光用凹面ミラー5を備える。
(B)光源ユニット4から集光用凹面ミラー5までの距離D2は、集光用凹面ミラー5の曲率半径に一致する。
(C)集光用凹面ミラー5から光入出射口14までの距離D3は、集光用凹面ミラー5の焦点距離に一致する。
【0043】
上記(A)~(C)は、必須の構成要素である。以下の(D)(E)は、(A)~(C)と組み合わせた際の好ましい構成要素である。
【0044】
(D)集光用凹面ミラー5と多重反射セル8との間に、光線方向を変える平面ミラー6、7を有する。平面ミラー6、7は、図1に示すように複数であってもよいし、一つであってもよい。平面ミラーの数を限定するものではない。
(E)図1に示す第2の平面ミラー7には、多重反射セル8から出射した光線L6を通すための穴7aが設けられている。平面ミラー6、7を排除して、光源ユニット4と多重反射セル8との間に集光用凹面ミラー5のみを配置した構成では、集光用凹面ミラー5に、多重反射セル8から出射した光線L6を通すための穴を設けることが好ましい。
【0045】
本実施の形態では、上記(A)~(C)を有することで、光源ユニット4から出射する拡散光が、ちょうど光入出射口14の位置で集光するように調整できる。ここで、図1に示す光線L4の焦点Fが、光入出射口14の貫通長さの中心付近に位置するように調整することが好ましい。このように、光源ユニット4から発せられた拡散光を適切に光入出射口14の位置で集光させて、多重反射セル8へ的確に導入できる。
【0046】
(D)に示した平面ミラー6、7を、集光用凹面ミラー5と多重反射セル8の間に配置することで、光源ユニット4から多重反射セル8に至る光路長を折り返すことができ、コンパクトな光学装置2を実現できる。
【0047】
また、多重反射セル8で多重反射した光線を適切に外部へ取り出す光学系が必要である。このとき、多重反射セル8への光の入射角と出射角とが異なることを利用し、多重反射セル8の手前に位置する第2の平面ミラー7に穴7aを設け、この穴7aを介して出射光を適切に取り出すことができる。これにより、部品点数を増やすことなく、光学装置2の小型化を実現できる。
【0048】
本実施の形態では、上記(A)~(C)、あるいは、(A)~(C)と(D)(E)の少なくとも一方からなる光学系とともに、多重反射セル8は、以下の特徴的構成を有している。
【0049】
(F)多重反射セル8は、第1の凹面ミラー12と、第2の凹面ミラー13と、光線を入射し同じ位置から外部へ出射する光入出射口14と、を備える。
(G)第1の凹面ミラー12及び第2の凹面ミラー13は、同じ曲率半径Rであり、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間のミラー間距離dは、該曲率半径Rに等しく、あるいは、該曲率半径Rの半分(=焦点距離f)である。
【0050】
本実施の形態における多重反射セル8は、ヘリオット型セルであり、以下の式を満たすことで、光線が入射した位置と同じ位置に多重反射した光線を戻して外部へ出射できる。
d=R[1-cos{2π・(M/N)}] (1)
ここで、dは、ミラー間距離であり、Rは、凹面ミラー12、13の曲率半径であり、Mは、任意の自然数であり、Nは、反射回数である。ミラー間距離dは、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13の中心間距離である。
【0051】
多重反射セル8に入射される光線が平行光である場合、結像条件に合致する必要が無いため、上記式(1)の範囲において、曲率半径Rが決まっていれば、任意のミラー間距離dを設定することにより、光路長を決めることができる。
【0052】
これに対し、拡散光の場合は、上記(G)で示すように、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間のミラー間距離dを、曲率半径Rに等しく、あるいは、曲率半径Rの半分(=焦点距離f)とする必要がある。すなわち、上記式(1)を満たすが、ミラー間距離dが、曲率半径RまたはR/2でない場合、(A)~(C)に基づいて、多重反射セル8への入射光を、光入出射口14の位置に的確に集光させても、セル内部では、ミラー面で適切に集光しないまま多重反射を繰り返すことで、セル内部で横断する複数の光が混同し分離できなくなり、多重反射セル8の光入出射口14から出射光を適切に取り出すことができなくなる。
【0053】
図3(a)は、ミラー間距離dを曲率半径R(=2f)と等しくした場合の集光状態を示す模式図であり、図3(b)は、ミラー間距離dをR/2(=f)とした場合の集光状態を示す模式図である。図3(a)(b)では、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間で反射する光線の各光路が紙面横方向に一直線上となるように展開した。図3(a)(b)に示す最も左側に図示した点aは入射点を示し、最も右側に図示した点bは出射点を示す。光路を一直線上に図示したことで入射点aと出射点bは図面上離れて図示されているが、実際には、光入出射口14の略中心位置で一致する。
【0054】
図3(a)に示すように、ミラー間距離dを曲率半径R(=2f)と等しく設定すると、第2の凹面ミラー13で1回反射して集光する。一方、図3(b)に示すように、ミラー間距離dを曲率半径R(=2f)の半分に設定すると、第1の凹面ミラー12と第2の凹面ミラー13との間を5回反射して集光する。
【0055】
また、上記式(1)によると、ミラー間距離d=焦点距離fであるとき(図3(b))、光線は、60°(cos{2π・(M/N)}=1/2)ずつ回転しながら多重反射する。これにより、多重反射セル8の光入出射口14から入射された光線は、図3(b)に示すように、反射を繰り返して第1の光路から第6の光路まで延び、入射位置と同じ光入出射口14から出射される。
【0056】
図4には、ミラー間距離d=焦点距離fとした場合の、第1の凹面ミラー12及び第2の凹面ミラー13の各ミラー面上での入射点、出射点及び反射点を(1)~(7)で示した。なお、説明をしやすくするために、図4では、第1の凹面ミラー12及び第2の凹面ミラー13を互いに正面に向け、各凹面ミラー12、13が重ならないように離して図示し、ミラー面上の入射点、出射点及び反射点を丸印で示した。また、各凹面ミラー12、13の中心点(光軸)から円周方向に30°ごとに点線を引いた。
【0057】
第1の凹面ミラー12の光入出射口14から入射した光線は、入射点(1)から第2の凹面ミラー13の反射点(2)の位置で反射する。入射点(1)と反射点(2)とは60°ずれていることがわかる。図4に示す第1の凹面ミラー12及び第2の凹面ミラー13の各反射点(3)~(6)にて60°ずつ回転しながら反射を繰り返し、最後に、光線は、入射点(1)と同じ位置の出射点(7)から外部に出射される。
【0058】
図3(a)のミラー間距離d=曲率半径Rの場合、反射は一回だけであるため、180°回転して、入射光と同じ光入出射口から出射される。
【0059】
平行光である場合、入射点(1)と出射点(7)を一致させるための上記式(1)を満たす解は多数存在するが、拡散光である場合は、図3(a)(b)に示すように、出射点(7)で集光することが条件になるため、解が絞られる。
【0060】
すなわち、上記(G)で示したように、ミラー間距離dを、凹面ミラー12、13の曲率半径に一致させ、あるいは曲路半径の半分に設定したとき、幾何光学的に、入射位置と同じ光入出射口14に光線を集光させることができる。この結果、光線を受光装置3へ容易に導くことができるとともに、目的の横断回数の光線を、迷光なく導くことが可能になる。
【0061】
[実施例]
図5は、第1の実施の形態に係る光学系配置の具体例である。図5では、図1と同様に、光源ユニット4と多重反射セル8との間に、集光用凹面ミラー5、及び複数の平面ミラー6、7を配置した。
【0062】
一例として、光源ユニット4に用いられる光源9(図2参照)には、JSIR350-5-BL-R-D3.6-0-0(MicroHybrid社製:半値全幅30°)を用いた。
また、軸外放物面ミラー10(図2参照)には、MPD00M9-F01(焦点距離15mm、ソーラボ社製)を用いた。
【0063】
光源ユニット4からは、半値全幅10°の光線(拡散光)が出射される。光線は、迷光防止用のアパーチャ17(直径25mm)を通過し、集光用凹面ミラー5に入射する。
【0064】
集光用凹面ミラー5の曲率半径は300mm、直径は25mmであった。光源ユニット4は、集光用凹面ミラー5の曲率半径に合わせて、集光用凹面ミラー5から300mm離して設置した。
一般的に、凹面ミラーは、焦点距離fの2倍の位置(曲率半径の位置)にある光源を焦点距離fの位置で集光させることができる。
【0065】
すなわち、集光用凹面ミラー5で反射した光線は、焦点距離fである150mm離れた位置で集光するため、多重反射セル(ヘリオット型セル)8の光入出射口を、150mm離れた位置に設定した。
【0066】
図5に示す第1の実施の形態では、2枚の平面ミラー6、7を用いた。そして、集光用凹面ミラー5と第1の平面ミラー6との間、第1の平面ミラー6と第2の平面ミラー76との間、及び第2の平面ミラー7と多重反射セル8との間の距離を、それぞれ50mmとし、これにより、集光用凹面ミラー5から多重反射セル8の光入出射口14までの距離を150mmに設定した。
【0067】
また、多重反射セル8の手前に位置する第2の平面ミラー7には、多重反射セル8から出射された光線を通すための穴を設けた。
【0068】
多重反射セル8は、ヘリオット型セルの条件式に従って設置した。一対の凹面ミラー12、13は、曲率半径を635mm、直径を25mmとした。第1の凹面ミラー12には、光入出射口14として、第1の凹面ミラー12の中心から上方に9.45mmの位置に、直径6mmの穴を設けた。
【0069】
なお、光線が6回、多重反射セル内を横断するように、ミラー間距離dは、凹面ミラー12、13の焦点距離(317.5mm)に設定した。
【0070】
第2の平面ミラー7には、中心から上方に1.2mmの位置に、幅が4.25mm、高さが4mmとなる四角形状の穴を設けた。これにより、多重反射セル8からの出射光は、第2の平面ミラー7に設けた穴を通り、受光素子に到達できるようにした。なお、上記した数値は、あくまでも一例であって変更及び微調整が可能である。
【0071】
図6は、第2の実施の形態の光学系配置を示す模式図である。図6では、平面ミラー6、7を用いていない。この実施の形態でも、図5で説明した光源ユニット4、集光用凹面ミラー5、多重反射セル8、及びアパーチャ17を用いた。
【0072】
図6に示すように、光源ユニット4と集光用凹面ミラー5との間の距離は、集光用凹面ミラー5の曲率半径である300mmと一致させ、集光用凹面ミラー5から多重反射セル8の光入出射口までの距離を、集光用凹面ミラー5の焦点距離fに一致させた。
【0073】
集光用凹面ミラー5には、多重反射セル8からの出射光を通すための穴を設けた。この穴を、集光用凹面ミラー5の中心から上方に4mmの位置に、幅10mm及び高さ6mmの四角形状で形成した。
【0074】
本実施の形態のヘリオット型セルでは、上記したように、凹面ミラー12、13の直径が25mm、凹面ミラー12、13の曲率半径が635mmであり、凹面ミラー12、13のミラー間距離dを、317.5mmに設定した。このように、ミラー間距離dを、焦点距離(曲率半径Rの半分)に設定した。このときセル容量は約125mlであり、光路長は1905mmであった。凹面ミラー12、13の内部空間に測定対象ガスを、1L/minで流通させると、7.5msecで、ガスを入れ替えることが可能になった。
【0075】
一方、ほぼ同様の光路長(2m)でホワイト型セルを適用する場合、ガスの入れ替え時間は、30秒程度になった。このことから、ヘリオット型セルを用いることで、応答速度を速くできることがわかった。
【0076】
さらに光量シミュレーションを実施したところ、光源光量の3.5%を受光素子に導くことができるとわかった。なお、光源として上記の通り、JSIR350-5-BL-R-D3.6-0-0(MicroHybrid社製)を用い、受光素子として、InAsSb光起電力素子(P13243-022MS(浜松ホトニクス社製))を用いた場合、10kΩ程度のI/V変換抵抗により、ガス分析計として構成できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の光学装置は、ヘリオット型セルを有しており、長い光路長を確保でき、種々の発光装置に適用できる。特に、本発明では、光源から発せられる光線が拡散光であっても、ヘリオット型セルを適用でき、ガス分析計の発光装置に好ましく使用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 :ガス分析計
2 :光学装置
3 :受光装置
4 :光源ユニット
5 :集光用凹面ミラー
6 :第1の平面ミラー
7 :第2の平面ミラー
7a :穴
8 :多重反射セル
8a :内部空間
9 :光源
10 :軸外放物面ミラー
11 :窓
12 :第1の凹面ミラー
13 :第2の凹面ミラー
14 :光入出射口
15 :ガス導入部
16 :ガス排気部
17 :アパーチャ
L1~L6 :光線
a :入射点
b :出射点


図1
図2
図3
図4
図5
図6