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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070324
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】配線基板補強用ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20240516BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20240516BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C13/00
H05K1/03 610T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180728
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】林 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】川本 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良太
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆
(72)【発明者】
【氏名】奥長 清行
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA05
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA07
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
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4G062EE03
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4G062FA10
4G062FB01
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4G062FD01
4G062FE01
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4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM27
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】低誘電損失特性に優れた配線基板補強用ガラス基板を提供する。
【解決手段】ガラス組成として、モル%でSiO+Al+Bの含有量が87%以上であり、且つ、厚みtが、5μm以上、500μm以下である板ガラスからなる、配線基板補強用ガラス基板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、モル%でSiO+Al+Bの含有量が87%以上であり、且つ、厚みtが、5μm以上、500μm以下である板ガラスからなる、配線基板補強用ガラス基板。
【請求項2】
前記板ガラスの仮想温度がガラス転移点Tg+300℃以下である請求項1に記載の配線基板補強用ガラス基板。
【請求項3】
前記板ガラスの板幅Lが、5mm以上、1000mm以下である、請求項1または2に記載の配線基板補強用ガラス基板。
【請求項4】
前記板ガラスの厚みtと板幅Lの比率t/Lの値が、0.01×10-3以上、20×10-3以下である、請求項1または2に記載の配線基板補強用ガラス基板。
【請求項5】
前記板ガラスは、25℃、周波数40GHzにおいて、誘電損失が0.025以下である、請求項1または2に記載の配線基板補強用ガラス基板。
【請求項6】
配線基板用のプリプレグまたはコア材として使用される、請求項1または2に記載の配線基板補強用ガラス基板。
【請求項7】
請求項1または2に記載の板ガラス、及び、
前記板ガラスの少なくとも一方の主面上に設けられた樹脂層、
を備える、プリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板用のプリプレグやコア材に用いられるガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代通信部材として低誘電損失なプリント配線基板等の配線基板が求められている。従来、プリント配線基板用のプリプレグやコア材には、ガラスファイバーを織り込んだ布であるガラスクロスに樹脂を含浸させた基材が使用されている。これまではEガラスを用いたクロスが一般的であったが、特に高周波用途では誘電損失が高いという欠点がある。そのため、特許文献1では、より誘電損失が少ない石英ガラスのファイバーを用いたクロスが使用される。高周波になると配線の表面付近に電流が流れ易くなる表皮効果が顕著になり易くなり、基板表面の凹凸が大きいと信号伝達に時間を要するため、伝送損失が大きくなり易い。
【0003】
ガラスクロスに樹脂を含浸させた基板は、局所的にガラス/樹脂の比率が異なる傾向がある。当該比率が異なると伝送損失も異なるため、信号波形の変化や信号伝播遅延の要因となり得る。基板の高性能化や軽量化も重要であり、そのためにはプリプレグやコア材の厚みを薄くすることが有効である。そのため径が小さいファイバーを用いたガラスクロス等が提案されている。しかし、ファイバーの小径化はプリプレグ及びコア材の剛性を低下させ、同時にガラス/樹脂界面も増加する傾向がある。異種材質間の界面に空隙や異物が存在すると、回路の断線等を引き起こす可能性があるため、ガラス/樹脂界面の面積はできるだけ小さい方が好ましい。そこで、特許文献2では、クロスの代わりに表面粗さを規制した板ガラスを使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6999487号公報
【特許文献2】特開2011-225777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線基板用のプリプレグやコア材として板ガラスを使用する場合、当該板ガラスの誘電損失が大きく所望の低誘電特性が得られないという問題がある。特に板ガラスを薄型化した際は、その傾向が顕著である。
【0006】
以上に鑑み、本発明の目的は、低誘電損失特性に優れた配線基板補強用ガラス基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、所定のガラス組成を有するガラス基板により上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
【0008】
(1)即ち、本発明の配線基板補強用ガラス基板は、ガラス組成として、モル%でSiO+Al+Bの含有量が87%以上であり、且つ、厚みtが、5μm以上、500μm以下である板ガラスからなることを特徴とする。なお、「SiO+Al+B」はSiO、Al及びBの合量を意味する。
【0009】
(2)本発明の配線基板補強用ガラス基板は、上記(1)において、前記ガラスの仮想温度がガラス転移点Tg+300℃以下であることが好ましい。
【0010】
次世代通信用部材として用いられる配線用基板は、容量を多くするために積層され高密度実装が施されることがある。そのため補強材であるガラス基板は薄肉化が求められる傾向にある。ガラス基板を薄肉化すると冷却速度が速くなって仮想温度が高くなり易く、結果として誘電損失が大きくなる傾向にある。本発明者等はこの点に着目し、ガラス基板の仮想温度を上記の通り極力低く制御することにより、低誘電損失特性を達成できることを見出した。
【0011】
(3)本発明の配線基板補強用ガラス基板は、上記(1)または(2)において、前記板ガラスの板幅Lが、5mm以上、1000mm以下であることが好ましい。
【0012】
(4)本発明の配線基板補強用ガラス基板は、上記(1)~(3)のいずれかにおいて、前記板ガラスの厚みtと板幅Lの比率t/Lの値が、0.01×10-3以上、20×10-3以下であることが好ましい。
【0013】
(5)本発明の配線基板補強用ガラス基板は、上記(1)~(4)のいずれかにおいて、前記板ガラスは、25℃、周波数40GHzにおいて、誘電損失が0.027以下であることが好ましい。
【0014】
(6)本発明の配線基板補強用ガラス基板は、上記(1)~(5)のいずれかにおいて、配線基板用のプリプレグまたはコア材として使用されることが好ましい。
【0015】
(7)本発明のプリプレグは、上記(1)~(6)のいずれかの板ガラス、及び、前記板ガラスの少なくとも一方の主面上に設けられた樹脂層、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低誘電損失特性に優れた配線基板補強用ガラス基板を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の配線基板補強用ガラス基板(以下、単に「ガラス基板」とも言う)について詳細に説明する。
【0018】
本発明のガラス基板は、所定の仮想温度を有する板ガラスからなる。ガラスの仮想温度とは、ガラス構造が凍結された温度を示し、溶融温度、冷却速度、アニールの温度と時間により変化する。仮想温度が高いと構造が疎になり、誘電損失が大きくなり易い。したがって、好適な板ガラスの仮想温度は、ガラス転移点Tg+300℃以下、Tg+290℃以下、Tg+250℃以下、Tg+230℃以下、Tg+200℃以下、Tg+180℃以下、Tg+160℃以下、Tg+150℃以下、Tg+130℃以下、Tg+100℃以下、Tg+80℃以下、Tg+50℃以下、特にTg+30℃以下であることが好ましい。一方、仮想温度を低くするためには溶融温度を下げたり、冷却速度を下げたり、アニール時間を長くする必要があり、生産性が低下し易くなる。そのため好適な仮想温度は、Tg-200℃、Tg-150℃、Tg-100℃以上、特にTg-75℃以上であることが好ましい。
【0019】
板ガラスの仮想温度は以下の方法で測定することができる。まず板ガラスの密度(密度1)をアルキメデス法にて測定する。その後、ガラス転移点Tg+300℃の範囲付近で板ガラスを1時間熱処理し、水冷後、アルキメデス法にて密度(密度2)を測定する。この測定を複数の熱処理温度で繰り返す。特に、密度2が密度1を上回る値及び下回る値が得られるように熱処理温度を設定することが好ましい。これにより、熱処理温度に対する密度の相関を示すグラフを得ることができる。得られたグラフにおいて、密度1に対応する温度が仮想温度となる。試料が少量である場合は、重液法による密度測定で行うことも可能である。もし、板ガラスに樹脂や金属配線がなされている場合は、塩化第二鉄液溶液を用いて配線を除去し、300℃~500℃で数時間熱処理を行うことで樹脂層を除去することができる。その後、上記の方法で板ガラスの仮想温度を測定することができる。
【0020】
板ガラスの仮想温度における粘度は109.0dPa・s以上、109.3dPa・s以上、109.5dPa・s以上、1010.0dPa・s以上、特に1010.5dPa・s以上であることが好ましい。一方、仮想温度における粘度を高くするためには溶融温度を下げたり、冷却速度を下げたり、アニール時間を長くする必要があり、生産性が低下し易くなる。そのため、板ガラスの仮想温度における粘度の上限は、1014.0dPa・s以下、1013.5dPa・s以下、特に1013.0dPa・s以下であることが好ましい。
【0021】
板ガラスの厚みtは薄すぎると、本発明のガラス基板を用いてプリプレグ等を製造する際に、ハンドリングが難しくなり破損し易くなる。また、板ガラスの肉厚が薄すぎるとガラスの冷却速度が速くなり、仮想温度が高くなる傾向があるため、結果として誘電損失が大きくなり易い。一方、板ガラスの厚みtが厚すぎると、例えば本発明のガラス基板をプレプリグに使用した際に、当該プリプレグ中のガラス含有率が高くなるため、プレプリグ全体での誘電損失が大きくなる虞がある。したがって、板ガラスの厚みtの下限は、5μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、18μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、特に50μm以上であることが好ましい。一方、板ガラスの厚みtの上限は、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、特に150μm以下が好ましい。
【0022】
板ガラスの板幅Lが狭すぎると、配線基板における実装工程が困難になる。また、ガラスの冷却速度が速くなり、仮想温度が高くなる傾向があり、結果として誘電損失が大きくなり易い。一方、板ガラスの板幅Lが広すぎると、偏肉や反り等による平滑な板が得られにくくなる。したがって、板幅Lの下限は、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、30mm以上、35mm以上、40mm以上、45mm以上、特に50mm以上であることが好ましい。一方、板幅Lの上限は、1000mm以下、900mm以下、800mm以下、700mm以下、600mm以下、500mm以下、400mm以下、350mm以下、特に300mm以下であることが好ましい。
【0023】
板ガラスの厚みtと板幅Lの比率t/Lの値が小さすぎると、ガラスの冷却速度が速くなり、仮想温度が高くなる傾向があるため、誘電損失が大きくなり易い。一方、t/Lの値が大きすぎると、例えば本発明のガラス基板をプレプリグに使用した際に、当該プリプレグ中のガラス含有率が高くなるため、プレプリグ全体での誘電損失が大きくなる虞がある。したがって、t/Lの値の下限は、0.01×10-3以上、0.02×10-3以上、0.03×10-3以上、特に0.04×10-3以上であることが好ましい。一方、t/Lの値の上限は、40×10-3以下、35×10-3以下、30×10-3以下、25×10-3以下、特に20×10-3以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の配線基板補強用ガラス基板において、板ガラスのガラス組成が、モル%でSiO+Al+Bの含有量が87%以上であり、87.5%以上、特に88%以上であることが好ましい。SiO+Al+Bの含有量が少なすぎると、ガラス中の網目形成酸化物が少なくなって非架橋酸素が多くなる。その結果、仮想温度が高くなるにつれてガラス構造が乱れ易くなり、誘電率や誘電正接が大きくなる傾向がある。一方、SiO+Al+Bの含有量の上限は特に限定されず100%以下であるが、多すぎるとガラスの粘度が高くなり、生産性が低くなる虞がある。そのため、SiO+Al+Bの含有量の上限は、99%以下、98%以下、97%以下、96.8%以下、96.5%以下、特に96%以下としてもよい。
【0025】
SiOはガラス中において網目状構造の骨格を形成する成分であり、また誘電率及び誘電正接を低下させる成分である。SiOの含有量が少なすぎると、前記効果が得られ難い。一方、SiOの含有量が多すぎると、原料の溶解性が低下し均質なガラスが得られ難くなる。また成形温度が高くなり生産性が低下する傾向がある。そのため、SiOの好適な下限範囲は、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、64%以上であり、好適な上限範囲は80%以下、80%未満、79%以下、最も好ましくは78%以下である。
【0026】
Alはガラスの骨格を形成するとともに、ガラスの分相を抑制し安定化させる成分である。ただし、Alの含有量が多すぎると誘電率及び誘電正接が高くなり易い。そのため、好適な上限範囲は、20%以下、19%以下、18以下、17%以下、16%以下、15%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、特に5%以下である。なお、Alの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、特に0.015%以上であることが好ましい。
【0027】
はSiOと同様に、ガラスの骨格を形成する成分であり、また誘電率及び誘電正接を低下させる成分である。Bの含有量が少なすぎると、前記効果が得られ難い。一方、Bの含有量が多すぎるとガラスが分相し易くなり、生産性が低下する虞がある。そのため、Bの好適な下限範囲は、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、15%以上、特に16%以上であり、好適な上限範囲は、30%以下、28%以下、特に27%以下である。
【0028】
板ガラスを構成するガラス成分として、SiO、Al及びB以外に以下の成分を含有させることができる。
【0029】
MgOはガラスの粘度を低下させる成分であり、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分よりも誘電率及び誘電正接を上昇させ難い成分である。なお、MgOはアルカリ金属元素と共存させることで、アルカリ金属イオンの移動による誘電損失を抑制する効果がある。ただし、MgOの含有量が多すぎると、分相を促進させる虞がある。当該傾向は、特にAl含有量が少ないガラス組成系で顕著である。従って、MgO含有量の好適な上限範囲は、15%以下、13%以下、10%以下、9%以下、8%以下、特に7%以下である。なお、MgOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.07%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0030】
CaOはMgOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分よりは誘電率及び誘電正接を上昇させ難い成分である。なお、CaOはアルカリ金属元素と共存させることでアルカリ金属イオンの移動を抑制する効果がある。ただし、CaOの含有量が多すぎると、分相を促進させる虞がある。当該傾向は、特にAl含有量が少ないガラス組成系で顕著である。従って、CaO含有量の好適な上限範囲は、15%以下、13%以下、10%以下、9%以下、特に8%以下である。なお、CaOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.07%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0031】
SrOはMgOやCaOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分よりは誘電率及び誘電正接を上昇させ難い成分である。なお、SrOはアルカリ金属元素と共存させることでアルカリ金属イオンの移動を抑制する効果がある。ただし、SrOの含有量が多すぎると、分相を促進させる虞がある。当該傾向は、特にAl含有量が少ないガラス組成系で顕著である。従って、SrO含有量の好適な上限範囲は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、特に0.1%未満である。なお、SrOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、特に0.07%以上であることが好ましい。
【0032】
BaOはMgOやCaOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分よりは誘電率及び誘電正接を上昇させ難い成分である。なお、BaOはアルカリ金属元素と共存させることでアルカリ金属イオンの移動を抑制する効果がある。ただし、BaOの含有量が多すぎると、分相を促進させる虞がある。当該傾向は、特にAl含有量が少ないガラス組成系で顕著である。従って、BaO含有量の好適な上限範囲は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、特に1%以下、更には0.1%未満である。なお、BaOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.07%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0033】
ZnOはMgOやCaOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分よりは誘電率及び誘電正接を上昇させ難い成分である。なお、ZnOはアルカリ金属元素と共存させることでアルカリ金属イオンの移動を抑制する効果がある。ただし、ZnOの含有量が多すぎると、分相を促進させる虞がある。当該傾向は、特にAl含有量が少ないガラス組成系で顕著である。従って、ZnO含有量の好適な上限範囲は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、特に1%以下である。なお、ZnOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.07%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0034】
LiOはガラスの粘度を低下させる成分であり、ガラスの製造を容易にして製造コストを低減できる成分であるが、その含有量が多すぎると誘電率及び誘電正接が高くなり易い。また、本発明のガラス基板を配線基板として使用した場合に、当該配線基板が高温・高湿の環境下に晒されると、ガラス中からLiO成分が溶出する場合があり、当該LiO成分が配線基板内の配線箇所に析出すると、電気信号を阻害する虞がある。そのため、好適な上限範囲は3%以下、2.5%以下、2.3%以下、2.1%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.4%以下、特に1.3%以下である。一方、LiOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.02%以上、特に0.05%以上であることが好ましい。
【0035】
NaOはLiOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、ガラスの製造を容易にして製造コストを低減できる成分であるが、その含有量が多すぎると誘電率及び誘電正接が高くなり易い。また、本発明のガラス基板を配線基板として使用した場合に、当該配線基板が高温・高湿の環境下に晒されると、ガラス中からNaO成分が溶出する場合があり、当該NaO成分が配線基板内の配線箇所に析出すると、電気信号を阻害する虞がある。そのため、好適な上限範囲は3%以下、2.4%以下、特に2.3%以下である。一方、NaOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.08%以上、0.1%以上、0.5%以上、0.8%以上、特に1%以上であることが好ましい。
【0036】
OはLiOやNaOと同様にガラスの粘度を低下させる成分であり、ガラスの製造を容易にして製造コストを低減できる成分であるが、その含有量が多すぎると誘電率及び誘電正接が高くなり易い。また、本発明のガラス基板を配線基板として使用した場合に、当該配線基板が高温・高湿の環境下に晒されると、ガラス中からKO成分が溶出する場合があり、当該KO成分が配線基板内の配線箇所に析出すると、電気信号を阻害する虞がある。そのため、好適な上限範囲は3%以下、2.4%以下、特に2.3%以下である。一方、KOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.05%以上、0.08%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0037】
LiO+NaO+KO(LiO、NaO及びKOの合量)が多すぎると、誘電率及び誘電正接が高くなり易い。また、本発明のガラス基板を配線基板として使用した場合に、当該配線基板が高温・高湿の環境下に晒されると、ガラス中からNaO成分、LiO成分及び/またはKO成分が溶出する場合があり、これらの成分が配線基板内の配線箇所に析出すると、電気信号を阻害する虞がある。そのため、好適な上限範囲は、6%以下、5.5%以下、5%以下である。一方、LiO+NaO+KOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましい。なお、LiO、NaO及びKOはガラス中から溶出し易い成分であるが、共存させることで互いにガラス内での移動を阻害し、溶出を抑制することができる。よって、これらの成分のうち2種または3種を混合して含有させることが好ましい。
【0038】
ZrOはガラスの化学的耐久性を向上させる成分である。ただし、ZrOの含有量が多すぎると、液相温度が高くなり、成形時に失透が発生し生産効率を低下させる虞がある。そのため、好適な上限範囲は、1.5%以下、1.3%以下、1.2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下、特に0.03%以下である。一方、ZrOの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.001%以上、0.003%以上、特に0.005%以上であることが好ましい。
【0039】
Feは清澄作用を有する成分である。ただし、Feの含有量が多すぎると、誘電率及び誘電正接が上昇する虞がある。そのため、好適な上限範囲は、0.15%以下、0.1%以下、0.09%以下、特に0.08%以下である。一方、Feの下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.0001%以上、0.0005%以上、0.001%以上、0.005%以上、0.006%以上、0.007%以上、0.008%以上、0.009%以上、0.010%以上0.011%以上、0.012%以上、特に0.013%以上であることが好ましい。
【0040】
SnOも清澄作用を有する成分である。具体的には、溶融ガラスの温度に応じてSnの価数が変化することにより、1500℃以上で酸素ガスを放出する。ただし、その含有量が多いと、可視域での光吸収が大きくなりガラスが着色する虞がある。そのため、好適な上限範囲は、0.5%以下、0.45%以下、0.4%以下、0.35%以下、特に0.3%以下である。一方、SnOの含有量の下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.02%以上、特に0.05%以上であることが好ましい。なお、LiO、NaO及びKO等のアルカリ金属成分の含有量が少ない場合は、溶融温度が高くなり易い。同じく清澄作用を有するSOは1400℃以上で分解し、SOガスを放出するが、溶融ガラスの粘度が高い状態でガスが放出されると、十分な泡切れが期待できない。そのような場合には、SnOを清澄剤として使用することが好ましい。
【0041】
Fも清澄作用を有する成分である。また、溶融ガラスの粘度を下げる効果も有する。ただし、その含有量が多いと、環境負荷が増大したり溶融設備が腐食する虞がある。そのため、好適な上限範囲は、0.5%以下、0.3%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。一方、Fの含有量の下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.02%以上、特に0.05%以上であることが好ましい。
【0042】
Clも清澄作用を有する成分である。また、溶融ガラスの粘度を下げる効果も有する。ただし、その含有量が多いと、環境負荷が増大したり溶融設備が腐食する虞がある。そのため、好適な上限範囲は、0.5%以下、0.3%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。一方、Clの含有量の下限範囲は特に限定されず、0%以上であるが、上記効果を得るためには、0.01%以上、0.02%以上、特に0.05%以上であることが好ましい。
【0043】
なおB含有量が多い組成を燃焼加熱で溶融すると、ガラス融液からのBの蒸発量が多くなる。そのため、通電加熱を用いることもできる。通電用電極として例えばMoOが使用されるが、MoOはガラス融液中に溶解する可能性がある。MoOと、FeやSnO等の多価酸化物が共存すると、多価酸化物間で酸化還元反応が生じ、ガラスが着色する恐れがある。そのため、ガラス中のMoOの好適な上限範囲は、1000ppm以下、900ppm以下、700ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、特に200ppm以下である。一方、MoOの含有量の下限範囲は特に限定されず、0ppm以上であるが、0.01ppm以上、0.02ppm以上、特に0.03ppm以上の範囲で含有していてもよい。
【0044】
また、上記成分以外にもTiOを5%以下、1%以下、特に0.2%未満の範囲で含有させてもよい。
【0045】
誘電正接は電荷の偏りに影響され易いため、各成分の構成元素(酸素原子以外の構成元素)と酸素原子との電気陰性度の差が影響し易い。具体的には、SiO、Al、Bといった網目形成酸化物が多いと、電場の変化に対してガラス構造が変形し難く、誘電正接が小さくなり易い。一方、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaOといった修飾酸化物が多いと、電場の変化に対してガラス構造や局所的な電荷の偏りが変化し易いため、誘電正接が大きくなり易い。また、修飾酸化物が多いとガラス構造が弱くなるため、特に仮想温度が高い場合は、ガラス構造が乱れた状態で凍結されることになるため、誘電正接が大きくなり易い。以上に鑑み、網目形成酸化物の電気陰性度と修飾酸化物の電気陰性度の比率であるNWF/NWMの値が5以上、7以上、8以上、9以上、10以上、12以上、12.5以上、13以上、13.5以上、14以上、14.5以上、14.8以上、14.9以上、特に15以上であることが好ましい。一方、NWF/NWMの値が高くなると溶融温度が高くなるため、生産性が低下する。そのため、NWF/NWMの上限は160以下、155以下、150以下、145以下、100以下、50以下、40以下、30以下、特に20以下が好ましい。
【0046】
NWF及びNWMの値は、各成分の含有量(モル%)と、各元素と酸素原子との電気陰性度の差を用いて、下記式により算出することができる。なお電気陰性度は、表1に示すPaulingの電気陰性度の値を用いて計算する。
【0047】
NWF=Σ(網目形成酸化物の含有量×網目形成酸化物の構成元素の係数×網目形成酸化物の構成元素と酸素原子との電気陰性度の差ΔX)
NWM=Σ(修飾酸化物の含有量×修飾酸化物の構成元素の係数×修飾酸化物の構成元素と酸素原子との電気陰性度の差ΔX)
【表1】
【0048】
(ガラス基板の特性)
本発明の配線基板補強用ガラス基板は、25℃、周波数40GHzにおいて、誘電率が5以下であることが好ましく、誘電正接は0.005以下であることが好ましい。誘電率や誘電正接が高すぎると、誘電損失が大きくなり電波波形の減衰を引き起こす可能性がある。特に高周波用途の場合はその傾向が顕著である。そのため、好適な誘電率の上限範囲は5以下、4.9以下、4.8以下、4.6以下、4.5以下、4.4以下、4.3以下、4.2以下である。誘電率は低いほうが好ましいが、ガラスの場合、現実的には3程度が下限となる。また、好適な誘電正接の上限範囲は、0.005以下、0.0045以下、0.004以下である。誘電正接も低い方が好ましいが、ガラスの場合、現実的には0.001程度が下限となる。また、誘電率と誘電正接を乗算した値である誘電損失の好適な上限範囲は0.025以下、0.024以下、0.023以下、0.022以下、0.021以下、0.020以下が好ましい。誘電損失は低い方が好ましいが、ガラスの場合、現実的には0.003程度が下限となる。
【0049】
(ガラス基板の製造方法)
まず所望の組成になるようガラス原料を調合し、溶融窯や溶融ポットで溶融する。ガラス原料としては天然原料や化成原料、カレット等を使用することができる。水酸化物等の含水原料を用いることで、ガラス中の水分量を調整することも可能である。加熱方法としては、水素燃焼、酸素燃焼、通電加熱が挙げられる。これらのうち2種以上の方法を組み合わせもよい。
【0050】
溶融ガラスを成形し、必要に応じて所望の形状となるように切断等の加工を施すことによりガラス基板を得る。成形方法としては、ロールアウト成形、オーバーフロー成形、スリットダウンドロー成形、リドロー成形、フロート成形等が挙げられる。なお成形後のガラスに対し、化学研磨、機械研磨、エッチング等を施すことにより薄肉化してもよい。
【0051】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、上記の板ガラスと、その少なくとも一方の主面上に設けられた樹脂層とを備えてなる。ここで、板ガラスと樹脂層との密着性を向上させるために、板ガラスと樹脂層の間にシランカップリング剤層を設けることが好ましい。具体的には、板ガラスの表面にシランカップリング剤を塗布し、得られたシランカップリング剤層の上に樹脂層を設けることが好ましい。
【0052】
シランカップリング剤は、スピンコートやディップコート、スプレーコート、噴霧コート等の方法により塗布することができる。なお、板ガラスを製造した直後にシランカップリング剤を塗布し、アニーラー内で徐冷しながら、シランカップリング剤の硬化処理を行ってもよい。また、溶融ガラスを板ガラスに成形しながらシランカップリング剤を塗布してもよい。
【0053】
シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。形成する樹脂層の種類に応じて、これらを適宜選択することが好ましい。
【0054】
樹脂層に使用する樹脂としては、熱硬化樹脂が挙げられる。熱硬化樹脂の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂;メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂(BT樹脂)、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。1種類の樹脂を用いる場合において、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよい。上記樹脂とともに、そのプレポリマーを併用することもできる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
表2~5に本発明の実施例1~16及び比較例1を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
表2~5に記載の各試料は、次のように作製した。
【0062】
まず、天然原料や化成原料等の各種ガラス原料を合計500gになるように秤量し、溶融後に得られるガラス組成が、表1、2に示すガラス組成となるように原料バッチを調製した。得られた原料バッチを20分間擂潰混合し、300ccの白金ロジウム製坩堝内に投入した後、間接加熱電気炉内にて大気雰囲気中約1450~1680℃で6時間加熱して溶融ガラスとした。得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、肉厚が5mmになるよう金属ローラーでロール成形を行い室温まで放冷することによりガラス試料を得た。得られた試料を、表に記載の各仮想温度に設定したアニーラー内で1時間保持した後、アニーラーからサンプルを素早く取り出し、水中(20℃)に浸漬させて急冷した。これにより試料(板ガラス)を得た。
【0063】
得られた各試料について以下の特性を測定した。
【0064】
歪点、徐冷点、軟化点は、ファイバーエロンゲーション法により測定した。
【0065】
ガラス転移点Tgは、Dilatometerを用いて測定した。なお、試料の分量が少ない場合にはDTA(示差熱分析装置)を用いて測定することも可能である。
【0066】
高温粘度10dPa・sにおける温度、高温粘度10dPa・sにおける温度、及び高温粘度102.5dPa・sにおける温度(表中にはそれぞれ「10^4」、「10^3」及び「10^2.5」と表記)の測定は、上記の方法で得たガラス試料の一部を予め適正なサイズとなるように破砕し、それを白金製坩堝に投入して溶融状態にまで再加熱した後に、白金球引き上げ法により測定した。
【0067】
仮想温度における粘度は、上記方法で測定した歪点、徐冷点、軟化点、高温粘度10dPa・sにおける温度、高温粘度10dPa・sにおける温度、及び高温粘度102.5dPa・sにおける温度から粘度曲線を作成し、当該粘度曲線から仮想温度に相当する粘度を算出した。
【0068】
周波数40GHzにおける誘電率ε及び誘電正接tanδは以下のようにして測定した。上記の方法で得たガラス試料を30mm×40mm×0.15mmtの寸法に加工した。両主面はポリッシュ研磨で鏡面仕上げとした。得られた試料を、表に記載の仮想温度に設定したアニーラー内で1時間保持した後。アニーラーから試料を素早く取り出し、水中(20℃)に浸漬させて急冷した。測定は、40GHz用の共振器とベクトルアナライザーを用いて、スプリットシリンダー法により行った。また測定は室温(25℃)で行った。
【0069】
ヤング率は、上記の方法で得たガラス試料から40×20×2mmに加工した試料片を用いて行った。なお、このガラス試料片の厚さ2mmの両表面は、1200番のアルミナ粉を水で溶いた研磨液で研磨した。サンプルに金を蒸着させ(1500Å以上)、サンプルの幅、長さ、厚み、重量を測定した。測定は自由共振式弾性率測定装置 日本テクノプラス(株)製 JE-RT3を用いて行った。
【0070】
表に示すように、実施例1~16はSiO+Al+Bの含有量が93.7モル%以上であり、誘電損失が0.0182以下と低かった。一方、比較例1はSiO+Al+Bの含有量が85.7モル%と少ないため誘電損失が0.0283と高かった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のガラス基板は、10GHz以上の高周波帯で使用されるプリント配線基板、多層配線基板、高密度半導体パッケージ用基板等の配線基板補強用として好適である。