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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070345
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】扉用ロックハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 9/18 20060101AFI20240516BHJP
   E05C 9/08 20060101ALI20240516BHJP
   E05B 5/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E05C9/18
E05C9/08
E05B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180770
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川中 勝男
(57)【要約】
【課題】イレギュラーな操作によって、操作レバーをロック解除状態としないまま扉を閉めた場合であっても、掛金や受金が破損することを防止することができる扉用ロックハンドル装置の提供を目的とする。
【解決手段】操作レバー12を備え、操作レバー12を開放側に移動したときに、掛金21がロック解除状態となり、操作レバー12を閉鎖側に移動したときに、掛金21がロック状態となる扉用ロックハンドル装置10であって、受金22は、扉1を扉枠体5に対して閉じる際に掛金21が当接した場合に掛金21から逃げる方向へ移動可能に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠体に対して開閉可能に設けられる扉に配置された操作レバーと、
前記操作レバーを軸支する回転軸と、
前記回転軸を中心として前記操作レバーを移動させたときに、前記回転軸に連動して回動する掛金と、
前記掛金と係脱可能に前記扉枠体に配置される受金とを備え、
前記操作レバーを開放側に移動したときに、前記掛金がロック解除状態となり、
前記操作レバーを閉鎖側に移動したときに、前記掛金がロック状態となる扉用ロックハンドル装置であって、
前記受金は、前記扉を前記扉枠体に対して閉じる際に前記掛金が当接した場合に前記掛金から逃げる方向へ移動可能に配置される、
扉用ロックハンドル装置。
【請求項2】
前記掛金がロック解除状態であるときに、前記操作レバーは、閉鎖側と開放側との間の半開放位置に移動するように付勢される、
請求項1に記載の扉用ロックハンドル装置。
【請求項3】
前記操作レバーが半開放位置にある状態で、前記扉を前記扉枠体に対して閉じる際に、前記受金は、前記掛金と当接して前記掛金から一旦逃げる方向へ移動し、更に前記扉が前記扉枠体に接近するのに伴い、前記掛金と係合する方向へ移動可能に配置される、
請求項1または請求項2に記載の扉用ロックハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扉用ロックハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保冷車のコンテナや冷凍冷蔵庫等の扉に用いられる扉用ロックハンドル装置として、扉枠体に対して開閉可能に設けられる扉に配置された操作レバーと、操作レバーの基端部を軸支する回転軸と、回転軸を中心として操作レバーを移動したときに、連動して回転軸を中心として回動する掛金と、掛金と係脱可能に前記扉枠体に配置される受金とを備え、操作レバーを開放側に移動したときに、掛金がロック解除状態となり、操作レバーを閉鎖位置に移動したときに、掛金がロック状態となる構成が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成は、扉を閉鎖したあとに操作レバーを閉鎖位置に移動したときは、掛金は受金に係合しロック状態となる。一方、掛金がロック解除状態の姿勢で扉を閉鎖しても、掛金は受金に当接しない。このように構成した扉用ロックハンドル装置では、扉が閉鎖する前に操作レバーを閉鎖位置に移動してしまうと、掛金はロック状態の姿勢にあるので、掛金は受金と当接する。
【0004】
操作レバーはバネ力によって常時閉鎖方向に付勢されているため、扉が開放状態にあっても掛金はロック状態の姿勢となる。そのため扉を閉める際には、扉を扉枠体に対してゆっくりと接近させて、掛金と受金とが接触する頃合いで、バネ力に抗して操作レバーを一旦開放側に移動させつつ、掛金が受金に掛かるように扉を扉枠体に対して押しつけながら、操作レバーを再度閉鎖位置に移動させる必要がある。ところが、操作者のヒューマンエラーによって、操作レバーを閉鎖状態としたまま勢いよく扉を閉めてしまうと、ロック状態の姿勢にある掛金と受金とが衝突し、受金や掛金の破損が生じ、掛金が受金で係止されず扉が跳ね返ってしまうおそれがあった。また、操作者が荷物の積み下ろしのために手を離した隙に突風によって扉があおられて勢いよく扉が閉まってしまい、同様に受金や掛金が破損してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-341255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、イレギュラーな操作等によって、例えば操作レバーを閉鎖状態としたまま扉を閉めた場合であっても、掛金や受金が破損することを防止することができる扉用ロックハンドル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、この発明は、扉枠体に対して開閉可能に設けられる扉に配置された操作レバーと、
前記操作レバーを軸支する回転軸と、
前記回転軸を中心として前記操作レバーを移動させたときに、前記回転軸に連動して回動する掛金と、
前記掛金と係脱可能に前記扉枠体に配置される受金とを備え、
前記操作レバーを開放側に移動したときに、前記掛金がロック解除状態となり、
前記操作レバーを閉鎖側に移動したときに、前記掛金がロック状態となる扉用ロックハンドル装置であって、
前記受金は、前記扉を前記扉枠体に対して閉じる際に、前記掛金が当接した場合に前記掛金から逃げる方向へ移動可能に配置されるものである。
【0008】
また、この発明は、前記掛金がロック解除状態であるときに、前記操作レバーは、閉鎖側と開放側との間の半開放位置に移動するように付勢されるものである。
【0009】
また、この発明は、前記操作レバーが半開放位置にある状態で、前記扉を前記扉枠体に対して閉じる際に、前記受金は、前記掛金と当接して前記掛金から一旦逃げる方向へ移動し、更に前記扉が前記扉枠体に接近するのに伴い、前記掛金と係合する方向へ移動可能に配置されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イレギュラーな操作等によって、扉を閉めた場合であっても、掛金や受金が破損することを防止することができる。
【0011】
また、本発明によれば、扉が開いた状態では操作レバーは半開放位置に自動的に移動し、イレギュラーな操作を未然に防ぐことができる。
【0012】
また、本発明によれば、扉を勢いよく閉めても、掛金と受金とがスムーズに係合し、扉が跳ね返らずに仮保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態にかかる扉用ロックハンドル装置が設けられた扉の全体構成を示す正面図。
図2】同じく、扉用ロックハンドル装置を示す正面図。
図3】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置の閉鎖状態を示す断面図、(B)扉用ロックハンドル装置の半開放状態を示す断面図、(C)扉用ロックハンドル装置の開放状態を示す断面図。
図4】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置の開放状態における受金および掛金を示す平面図、(B)扉用ロックハンドル装置の閉鎖途中状態における受金および掛金を示す平面図、(C)扉用ロックハンドル装置の仮係合状態を示す平面図。
図5】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置の閉鎖状態における受金および掛金を示す平面図、(B)扉用ロックハンドル装置の閉鎖状態を示す断面図、(C)扉用ロックハンドル装置の開放途中(第1段階)を示す断面図。
図6】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置の開放途中(第1段階)における受金および掛金を示す平面図、(B)扉用ロックハンドル装置の開放途中(第2段階)における受金および掛金を示す平面図、(C)扉用ロックハンドル装置の開放状態における受金および掛金を示す平面図。
図7】同じく、扉用ロックハンドル装置のイレギュラーな閉鎖途中における受金および掛金を示す平面図。
図8】第二実施形態にかかる扉用ロックハンドル装置の閉鎖状態を示す平面図。
図9】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置の開放状態における受金および掛金を示す平面図、(B)扉用ロックハンドル装置の閉鎖途中状態における受金および掛金を示す平面図、(C)扉用ロックハンドル装置の仮係合状態を示す平面図。
図10】同じく、(A)扉用ロックハンドル装置のイレギュラーな閉鎖途中における受金および掛金を示す平面図、(B)扉用ロックハンドル装置の開放状態における受金および掛金を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下に、図1を用いて、第一実施形態に係る扉用ロックハンドル装置10を備えた扉1について説明する。なお、以下の説明において、図1の紙面上下方向を上下方向と定義し、紙面奥行方向を前後方向と定義し、紙面左右方向を左右方向として定義する。すなわち、扉1に向かって手前側を前方、奥側を後方とする。
【0015】
扉1は、コンテナや冷凍冷蔵庫等に用いられる扉であり、例えば、二枚の扉1、1を開口部2の左右両端に設けられた回動軸3を中心として回動させる両開きタイプの扉で構成される。扉1は開口部2の周囲に配設された扉枠体5に対して開閉可能に配置される。
【0016】
すなわち、正面視長方形型の開口部2の左右両辺近傍に設けられた回動軸3に対して左右の扉1が回動することにより、扉枠体5に対して開閉可能に配置される。なお、扉枠体5には弾性部材で構成されたシール部材6が設けられており、扉1が閉状態となるときには、内部空間がシール部材6によって密閉される構成となっている。
【0017】
扉1の上下方向中央側であって、左右方向一端部には、扉用ロックハンドル装置10が設けられている。
図2に示すように、扉用ロックハンドル装置10は、扉1の一部に埋め込まれたケース11と、操作レバー12と、を備える。ケース11は、扉1の前面に埋め込んで配置され、前面が開放されており、操作レバー12が格納される凹部からなる格納部11aを有している。
【0018】
図2に示すように、操作レバー12は、ケース11に支持され、扉1の前面に平行に配置された連動軸13を中心として、そのレバー基端部12aが扉1の前方に回動可能な部材である。前方とは、扉1が閉鎖位置から開放位置へ移動する方向であり、連動軸13を中心とした円に沿った方向である。操作レバー12は、ケース11内に格納された閉鎖位置と、前方に回動された開放位置と、その途中の状態である半開放位置とに、移動可能に構成されている。
【0019】
図3(A)に示すように、操作レバー12は、扉1の閉鎖状態においては、格納部11aの前面開口面と前後方向において同一の位置に前面が配置されるように構成されている。これにより、扉1の閉鎖状態においては、操作レバー12全体が格納部11aに格納されるように構成される。
【0020】
操作レバー12は、左右方向中途部において、レバー先端部12bとレバー基端部12aとに分割されており、レバー先端部12bと、レバー基端部12aとは、回動支軸12cによって回動可能に連結されている。すなわち、レバー先端部12bは、レバー基端部12aに対して回動支軸12cを中心として前方に回動可能に構成される。
【0021】
連動軸13は、図示せぬ軸受を介してケース11に軸支されており、操作レバー12の連動軸13を中心とした回動に連動して自身も軸方向に回転する。連動軸13は扉1の上下方向とほぼ同じ長さを有する円柱であり、連動軸13の上下には、切欠き面13aが形成されている。切欠き面13aは円柱状の連動軸13の側面に二か所ずつ設けられている。
【0022】
切欠き面13aは、扉1の上下に配置された掛金21に設けられた小判型のカム駆動孔21aに貫入される。これにより、連動軸13の回転が掛金21に伝達されて掛金21が回動する。
【0023】
図3にケース11の平面断面が示される。格納部11aには、操作レバー12を図3(B)に示す半開放位置に移動するように付勢して保持するための弾性部材15および付勢片16が設けられている。弾性部材15は格納部11aに設けられた弾性部材支持板17によって支持されており、他端側に付勢片16が取り付けられている。付勢片16は樹脂によって形成されている。
【0024】
付勢片16の付勢面16aはレバー基端部12aの当接面12dと当接する。レバー基端部12aの当接面12dは、操作レバー12が閉鎖位置に移動したときに付勢片16の付勢面16aに対して傾斜するように配置されている。
【0025】
また、レバー基端部12aの当接面12dは、操作レバー12が半開放位置に移動したときに付勢片16の付勢面16aに対して平行になるように配置されている。
【0026】
また、レバー基端部12aの当接面12dは、付勢片16からの付勢力に抗して、操作レバー12を図3(C)に示す開放位置に移動したときに付勢片16の付勢面16aに対して傾斜するように配置されている。
【0027】
図5(B)に示すように、レバー先端部12bには、閉鎖状態の際に、格納部11aに配置された状態で操作レバー12を固定するための係合片12eが設けられている。格納部11aには、係合片12eと係合可能な位置に受け部11bが設けられている。係合片12eは、レバー先端部12bの回動支軸12cを中心とした回動と連動して移動可能に設けられている。レバー先端部12bが、回動支軸12cを中心として前方に移動した場合には、図5(C)に示すように、係合片12eが受け部11bから離間して非係合状態となる。また、操作レバー12を半開放状態(図3(B)参照)から閉鎖状態(図3(A)参照)へ移動させた場合には、図5(B)に示すように、係合片12eが受け部11bと係合して、格納部11aに格納され、閉鎖状態で操作レバー12がケース11に固定される。
【0028】
また、レバー基端部12aには、閉鎖状態において操作レバー12の回動を禁止し施錠するためのシリンダー機構18が設けられている。
【0029】
一方、扉枠体5には、掛金21と係脱可能な位置に受金22が設けられている。受金22は、扉枠体5に設けられた受金回動機構23に回動支持されている。
受金回動機構23は、受金22を支持する支軸24と、支軸24を固定する受金ケース25と、受金ケース25に用いられた弾性部材26とを備える。
受金22は、上板と下板からなる受金ケース25に配置されており、通常時においては、受金ケース25から受金係合部22aが突出するように配置されている。また、受金22は弾性部材26によって常に受金係合部22aが突出する方向に付勢されている。
【0030】
次に、操作レバー12の閉鎖状態、半開放状態、開放状態における動作について説明する。
【0031】
図5(B)に示すように、閉鎖状態においては、レバー先端部12bの係合片12eのコ字状カギ部は、受け部11bに係合している。ここで係合片12eは、付勢受け部12fにおいて、弾性部材14より図の反時計方向回りの付勢力を受ける。これにより、図3(A)に示すように、操作レバー12全体が格納部11aに格納され、ケース11に固定されている。付勢片16は閉鎖状態におけるレバー基端部12aの当接面12dに押圧されて弾性部材支持板17側に移動している。
【0032】
閉鎖状態において、レバー先端部12bが、図6(A)に示すように、回動支軸12cを中心として前方に移動した場合には、係合片12eのコ字状カギ部が受け部11bから離間して非係合状態となる。係合片12eが非係合状態となると、付勢片16が、レバー基端部12aの当接面12dに対して付勢力を与えることにより、レバー基端部12aは、半開放状態まで移動する。
【0033】
図3(B)に示すように、半開放状態においては、閉鎖状態から操作レバー12が、例えば20°前方へ移動した状態となる。半開放状態まで移動したレバー基端部12aの当接面12dは、付勢片16の付勢面16aと平行となるため、操作レバー12は、半開放状態で維持される。
【0034】
半開放状態において、操作レバー12をさらに前方へ移動させると、開放状態となる。すなわち、操作レバー12を半開放状態からさらに前方へ移動させると、付勢片16の付勢力に抗して、レバー基端部12aの当接面12dが付勢片16の付勢面16aに対して傾斜する位置へ移動する。
【0035】
図3(C)に示すように、開放状態においては、閉鎖状態から操作レバー12が、例えば40°前方へ移動した状態となる。ここで、操作レバー12を前方に回動する力を解除すると、付勢片16の付勢力によって、操作レバー12は図3(B)に示す半開放状態まで移動する。半開放状態まで移動したレバー基端部12aの当接面12dは、付勢片16の付勢面16aと平行となるため、操作レバー12は、半開放状態で維持される。
【0036】
このように構成することにより、閉鎖状態から、操作レバー12を操作することで、半開放状態まで移動し、さらに操作することで開放状態とすることができる。また、開放状態において操作をやめると、操作レバー12は、半開放状態で維持される。
【0037】
次に、操作レバー12の動作に連動する受金22及び掛金21の動作について図4図6を用いて説明する。ここでは、扉1の上部に設けられた受金22及び掛金21の動作について説明する。なお、扉1の下部に設けられた受金22及び掛金21の動作についても同様であるため説明を省略する。
【0038】
図4(A)に示すように、操作レバー12を半開放状態にした状態で扉1を閉じるとき、掛金21の先端部の軌跡は、扉1の回動軸3を中心とする円弧21mを描く。ここで円弧21mは、受金係合部22aに干渉するように設定されているため、操作レバー12を半開放状態のまま、扉用ロックハンドル装置10以外の扉1の前面を押しながら扉1を閉めると、掛金21が受金22の受金係合部22aと当接する。さらに扉1を閉じると当接した掛金21から受金22へ力がかかる。力を受けた受金22の受金係合部22aは、支軸24を中心に後方へ向けて回動する。これにより、受金22は、力を逃がしつつ掛金21と摺動してC1方向へ回動する(図4(B)参照)。
【0039】
さらに、扉1を閉めると、受金22は弾性部材26の付勢力によって支軸24を中心にC2方向へ回動して元の位置に戻る(図4(C)参照)。ここで受金22の回動規制部22bと受金ケース25の係止部とが当接することにより、受金22のC2方向へのさらなる回動は規制される。こうして、受金22と掛金21は係合して仮ロック状態となり、扉1は扉枠体5に対して係止される。ただし、操作レバー12は半回動位置にあり、扉枠体5に設けたシール部材6に対して大きな弾性変形が加えられていない仮保持状態である。なおこのときの扉1と扉枠体5の間隔G0は、シール部材6が圧縮されていない状態の厚みとほぼ等しい。
【0040】
次に、図5(B)に示すように、操作レバー12をB1方向に回動して閉鎖側に移動させる。閉鎖側に移動させることで、レバー先端部12bが、回動支軸12cを中心として後方に移動して、係合片12eのコ字状カギ部が受け部11bに係合して係合状態となる。操作レバー12を閉鎖状態に回動したことにより、連動軸13が回動して、図5(A)に示すように、掛金21がさらにD1方向に回動して受金22とより深く係合し、掛金21はロック状態となる。このとき、扉1と扉枠体5の間隔G1は、仮保持状態のG0より小さくなり、シール部材6を圧縮することで、内部空間を密閉する。なお、シリンダー機構18を回動させることにより、施錠状態とすることもできる。
【0041】
このように構成することにより、操作レバー12を半開放状態にしたまま扉1を閉じた場合であっても、掛金21や受金22を損傷させることなく、扉1を閉じることができ、その後、操作レバー12を閉鎖状態とすることで、受金22と掛金21を係合させて、扉1と扉枠体5を密着したロック状態とすることができる。
【0042】
扉1を開放する際は、格納部11aとレバー先端部12bの間に指を入れて、前方に引く。すると、レバー先端部12bがレバー基端部12aに対して回動支軸12cを中心として前方に回動することで、図5(C)に示すように、係合片12eが受け部11bから離間して非係合状態となる。
【0043】
ここで、シール部材6の圧縮が解除されることで、図6(B)に示すように、扉1は扉枠体5から離間しようとしてA2の方向に回動し、その際に掛金21は受金係合部22aに姿勢を規制されることによってD2方向に回動する。同時に、付勢片16とレバー基端部12aの当接面12dの作用により、操作レバー12のレバー基端部12aが半開放位置に移動する。そして、さらに操作レバー12を開放状態(B2方向)に移動することによって、図6(C)に示すように、受金係合部22aと掛金21の係合が外れてロック解除状態となり、扉1は扉枠体5から離間し、開放側に移動させることが可能となる。
【0044】
また、操作レバー12を半開放状態から開放状態へ回動させる際には、図3(C)に示すように、レバー基端部12aの後側に設けられた回転止め部12gが格納部11aの一部と当接するまで移動して停止する。回転止め部12gは、他のレバー基端部12aよりも連動軸13の径方向に突出した部分であり、回転止め部12gが格納部11aの一部と当接することにより、操作レバー12のそれ以上の開放側への回転を抑制している。
【0045】
なお、扉1が開放状態にあるときは、図3(B)に示すように、操作レバー12は半開放位置に移動するように付勢され、この状態で保持される。このように構成することにより、例えば操作者が荷物の積み下ろしのために手を離した隙に突風によって扉1があおられて勢いよく閉まっても、操作レバー12は半開放位置にあるため、掛金21と受金22とがスムーズに係合し、扉1が跳ね返らずに仮保持できる。
【0046】
また、扉1が開放状態にあるにもかかわらず、間違って操作レバー12を閉鎖位置に強制的に移動させて、そのまま扉1を閉じた場合であっても、図7に示すように、掛金21が受金22と当接すると、受金22は掛金21から逃げる方向(C1方向)に移動することができるので、掛金21や受金22が破損することはない。
【0047】
以上のように、扉枠体5に対して開閉可能に設けられる扉1に埋め込んで配置されるケース11と、ケース11内に配置された操作レバー12と、操作レバー12のレバー基端部12aを軸支する回転軸である連動軸13と、連動軸13を中心として操作レバー12を移動させたときに、連動して連動軸13を中心として回動する掛金21と、掛金21と係脱可能に扉枠体5に配置される受金22とを備え、操作レバー12を開放側に移動したときに、掛金21がロック解除状態となり、操作レバー12を閉鎖側に移動したときに、掛金21がロック状態となる扉用ロックハンドル装置10であって、受金22は、掛金21が当接した場合に逃げる方向へ移動可能に配置されるものである。
このように構成することにより、操作レバー12の操作を行わず半開放状態のまま扉1を閉じた場合や、扉1が開放状態にあるにもかかわらず、間違って操作レバー12を閉鎖位置に強制的に移動させて、そのまま扉1を閉じた場合であっても、受金22が逃げ方向へ移動することができる。したがって、イレギュラーな操作等によって、扉1を閉めた場合であっても、掛金21や受金22が破損することを防止することができる。
【0048】
また、操作レバー12は、ロック状態を解除する際に、閉鎖状態と開放状態との間の半開放位置に移動するように付勢され、操作レバー12が半開放状態にある状態で、扉1を閉めた際に、受金22は掛金21と当接し、掛金21から一旦逃げる方向へ移動し、更に扉1が扉枠体5に接近するのに伴い、掛金21と係合する方向へ移動可能に配置されるものである。
このように構成することにより、操作レバー12の操作を行わない場合には、付勢力により半開放状態で保持されるので、操作レバー12の操作を行わず半開放状態のまま扉1を閉じた場合であっても、受金22が逃げ方向へ移動し、その後、掛金21と係合することができる。したがって、イレギュラーな操作を未然に防ぐことができ、さらに扉1を勢いよく閉めても、掛金21と受金22とがスムーズに係合し、扉1が跳ね返らずに扉枠体5に仮保持することができる。
【0049】
なお、本実施形態において、連動軸13は、操作レバー12の回転軸としたが本発明はこれに限られず、例えばギヤ、カム、リンク機構など適宜の手段を介して連結する構成として、操作レバーの回転軸と掛金の回動中心とが必ずしも同軸上でなくともよい。
【0050】
[第二実施形態]
図8は本発明の第二の実施形態における扉用ロックハンドル装置110の閉鎖状態を示す平面図である。第二の実施形態においては、扉1の前面に正面形状が略コ字状の軸受部127が固定されている。この軸受部127には連動軸113が支承され、連動軸113の中央部には操作レバー112が連結され、回動自在に支承されている。なお、第一の実施形態と異なり、本実施形態において操作レバー112は扉1に埋め込まれる構成ではなく、扉1の前面に配設された構成となっている。
【0051】
連動軸113は軸受部127の上下に所定量突出しており、ここに湾曲した掛金121が固定されている。第一の実施形態と同様に、操作レバー112を開放側に移動したときに、掛金121がロック解除状態となり、操作レバー112を閉鎖側に移動したときに、掛金121がロック状態となる。
【0052】
また、掛金121がロック解除状態であるときに、操作レバー112は、閉鎖側と開放側との間の半開放位置に移動するように、第一の実施形態と同様の機構(図示せず)によって付勢される。
【0053】
一方、扉枠体5には、掛金121に対応する位置に、受金回動機構123が固定されている。受金回動機構123には、支軸124を回動中心として受金122が支承されている。受金122の先端部には係合ローラ122aが回動自在に軸支されている。また受金122は図示しない弾性部材によって、図8において反時計方向に回動付勢され、係止部125aによって係止されている。
【0054】
次に、操作レバー112の動作に連動する受金122及び掛金121の動作について説明する。ここでは、扉1の上部に設けられた受金122及び掛金121の動作について説明する。なお、扉1の下部に設けられた受金122及び掛金121の動作についても同様であるため説明を省略する。
【0055】
図9(A)に示すように、扉1が閉鎖状態へ回動する(矢印A1方向)途中で、掛金121の背面部121cが受金122の係合ローラ122aに当接する。
【0056】
図9(B)に示すように、さらに扉1が閉鎖状態へ回動すると、受金122は掛金121から逃げる方向(C1方向)に移動しながら、掛金121の先端部121eが受金122の係合ローラ122aに当接する。
【0057】
さらに扉1が閉鎖状態へ回動すると、図9(C)に示すように、受金122は図示しない弾性部材の付勢力によって支軸124を中心にC2方向へ回動して元の位置に戻る。ここで受金122の側端部と受金ケース125の係止部125aとが当接することにより、受金122のC2方向へのさらなる回動は規制される。そして、仮保持部121bが受金122の係合ローラ122aと係合し、仮ロック状態となり、扉1は扉枠体5に対して係止される。ただし、操作レバー112は半回動位置にあり、扉枠体5に設けたシール部材6に対して大きな弾性変形が加えられていない仮保持状態である。なおこのときの扉1と扉枠体5の間隔G0は、シール部材6が圧縮されていない状態の厚みとほぼ等しい。
【0058】
ここで、操作レバー112を図8におけるB1方向に回動して閉鎖側に移動させることで、操作レバー112の回動に連動して、掛金121は図8において反時計方向に回動する。このとき、掛金121の引き寄せ部121fが、相対的に係合ローラ122aを引き寄せる。このとき、扉1と扉枠体5の間隔G1は、仮保持状態のG0より小さくなり、扉1が扉枠体5側へ引き寄せられ、シール部材6を圧縮して密閉する。これにより、受金122と掛金121は係合してロック状態となる。
【0059】
本実施形態においては、操作レバー112が扉1の前面と平行な状態となったとき、支軸124の回動中心と係合ローラ122aの回動中心を結ぶ直線122bは、連動軸113の回動中心を通り、かつ、扉1の閉鎖状態における扉枠体5に対する当接方向(本実施形態においては、前後方向に相当)と平行になるように構成している。また掛金121と係合ローラ122aが係合する位置には、クリック部121dを形成している。このように構成したことにより、係合ローラ122aがクリック部121dに係合した状態では、掛金121は受金122から、連動軸113の回動中心回りのモーメントを受けず、受金122によって後方への引張り力を受けるため、掛金121は係合ローラ122aがクリック部121dに係合した状態を保つことができる。したがって、第一の実施形態において操作レバー12を格納部11aに格納した状態を保つための受け部11bや係合片12eを備えなくともよい。
【0060】
このように構成することにより、例えば操作者が荷物の積み下ろしのために手を離した隙に突風によって扉1があおられて勢いよく閉まっても、操作レバー112は半開放位置にあるため、掛金121と受金122とがスムーズに係合し、扉1が跳ね返らずに仮保持できる。
【0061】
また、扉1が開放状態にあるにもかかわらず、間違って操作レバー112を閉鎖位置に強制的に移動させて、そのまま扉1を閉じるといったイレギュラーな操作をした場合であっても、図10(A)に示すように、掛金121の背面部121cが係合ローラ122aと当接すると、受金122は掛金121から逃げる方向(C1方向)に移動することができるので、掛金121や受金122が破損することはない。
【0062】
次に、操作レバー12を閉鎖状態から開放状態へ回動させる際には、操作レバー112を半開放状態へ回動すると、係合ローラ122aとクリック部121dの係合が外れ、またシール部材6の圧縮力の解放により、容易に扉1を開くことができる。操作レバー112を半開放状態とした場合は、図9(c)と同様な仮保持状態となる。さらに操作レバー112を開放状態にすることで、図10(B)に示すように、受金122と掛金121が外れてロック解除状態となるので、扉1を開放側に移動させることが可能となる。なお扉1が開放された後に操作レバー112から手を離すことにより、操作レバー112は半開放状態に自動的に戻る。
【0063】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、本発明は開き戸のみに適用されるものではなく、引戸等にも適用可能である。また扉1の高さ寸法が小さい場合等では、受金回動機構23を扉1の上下に設けなくとも良く、どちらか一方だけまたは操作レバー12と略同一高さに1箇所のみ設ける構成としても良い。さらには、受金は支軸回りに回動する構成に代えて、スライドする構成等であっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 扉
2 開口部
3 回動軸
5 扉枠体
10,110 ロックハンドル装置
11 ケース
11a 格納部
11b 受け部
12,112 操作レバー
12a レバー基端部
12b レバー先端部
12c 回動支軸
12d 当接面
12e 係合片
12f 付勢受け部
12g 回転止め部
13,113 連動軸
13a 切欠き面
14,15 弾性部材
16 付勢片
16a 付勢面
17 弾性部材支持板
18 シリンダー機構
21,121 掛金
21a カム駆動孔
121b 仮保持部
121c 背面部
121d クリック部
121e 先端部
121f 引き寄せ部
22,122 受金
22a 受金係合部
22b 回動規制部
122a 係合ローラ
23,123 受金回動機構
24,124 支軸
25,125 受金ケース
25a,125a 係止部
26 弾性部材
127 軸受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10