IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図1
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図2
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図3
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図4
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図5
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図6
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図7
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図8
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図9
  • 特開-タイヤ用モールドの製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070349
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】タイヤ用モールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20240516BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20240516BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20240516BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B22C9/08 E
B22C9/06 F
B22C9/02 101G
B22C9/02 103H
B22C9/08 B
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180775
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】中田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】蓮香 正人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤(中塚) 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 達也
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB07
4E093PA06
4F202AH20
4F202CA21
4F202CU01
4F202CU14
(57)【要約】
【課題】湯道が繰り返し使用されうる、タイヤ用モールドのための鋳造装置40の提供。
【解決手段】タイヤ用モールドのための鋳造装置40は、湯道48、この湯道48に装着された湯口46、湯道48の上にあるスタンド50、このスタンド50の上にある鋳型54、及びこの鋳型54を覆う外枠56を有する。湯道48の材質は、キャスタブル耐火物である。湯口46の材質は、石膏である。湯口46の熱伝導率は、湯道48の熱伝導率よりも小さい。湯口46は、湯道48に対して易分離性である。スタンド50の材質は、石膏である。このスタンド50は、易破砕性である。スタンド50は、湯道48に対して易分離性である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その材質がキャスタブル耐火物である湯道、
上記湯道の上にあるスタンド、
上記スタンドの上にある鋳型、
及び
上記鋳型を覆う外枠
を備えた、タイヤ用モールドのための鋳造装置。
【請求項2】
上記湯道に装着された湯口をさらに備えており、
上記湯口の熱伝導率が上記湯道の熱伝導率よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記湯口の材質が石膏である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
上記湯口が上記湯道に対して易分離性である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
上記スタンドが上記湯道に対して易分離性である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
上記スタンドが易破砕性である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
上記スタンドの材質が石膏である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記湯道の圧縮強度が60MPa以上である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
(1)溶湯を準備する工程、
(2)その材質がキャスタブル耐火物である湯道、上記湯道の上にあるスタンド、上記スタンドの上にある鋳型、及び上記鋳型を覆う外枠を有する鋳造装置に、上記溶湯を注入する工程、
(3)上記溶湯を凝固させ、インゴットを得る工程、
(4)上記インゴットを切断又は切削し、セグメントを得る工程、
並びに
(5)上記セグメントを他のモールド部品とアッセンブリーする工程
を備えた、タイヤ用モールド製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、タイヤの加硫工程に用いられるモールドの製造方法を開示する。本明細書はさらに、このモールドのための改良された鋳造装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、ローカバー(未架橋タイヤ)がモールド内で加圧及び加熱されて得られる。このモールドは、セグメントを有している。このセグメントから、タイヤのトレッドが形成される。セグメントは、低圧鋳造法、重力鋳造法等によって得られうる。
【0003】
低圧鋳造法では、装置に溶湯が注入される。この溶湯は、湯道を通過し、キャビティに流入する。この溶湯がキャビティにて凝固し、インゴットが得られる。このインゴットに切断加工及び切削加工が施され、セグメントが得られる。低圧鋳造法の一例が、特開2007-144480公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-144480公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湯道の一般的な材質は、石膏である。溶湯が凝固した後、この湯道は、破壊されることでインゴットと分離される。この低圧鋳造法では、溶湯の1つのキャストごとに、1つの湯道が準備される。この鋳造法では、溶湯の1つのキャストのたびに、石膏の廃棄物が発生する。さらに、石膏の破壊に起因して、鋳造装置の周辺に石膏カスが発生する。この石膏カスは、次のキャストにおいて溶湯に混入し、キャビティへの侵入しうる。この侵入は、セグメントの品質を阻害する。
【0006】
本出願人の意図するところは、その材質が石膏である湯道が有する前述の問題を、解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、タイヤ用モールドのための鋳造装置を開示する。この鋳造装置は、
その材質がキャスタブル耐火物である湯道、
この湯道の上にあるスタンド、
このスタンドの上にある鋳型、
及び
この鋳型を覆う外枠
を有する。
【発明の効果】
【0008】
この鋳造装置の湯道の材質は、キャスタブル耐火物である。この湯道は、高強度である。この湯道は、繰り返しの使用に耐えうる。この鋳造装置では、湯道の頻繁な作り直しは、不要である。この装置により、石膏の廃棄物が抑制されうる。この装置では、石膏カスの混入に起因するセグメントの品質阻害が、生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る製造方法で得られたタイヤ用モールドの一部が示された概略図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った拡大断面図である。
図3図3は、図2のモールドのセグメントが示された正面図である。
図4図4は、図3のセグメントが示された平面図である。
図5図5は、図3のセグメントが示された左側面図である。
図6図6は、図3のセグメントのための鋳造装置が示された断面図である。
図7図7は、図6の鋳造装置の一部が示された分解斜視図である。
図8図8(A)は図6の鋳造装置の湯口が示された拡大平面図であり、図8(B)は図8(A)の湯口が示された正面図であり、図8(C)は図8(A)の湯口が示された底面図であり、図8(D)は図8(A)のD-D線に沿った断面図である。
図9図9(A)は図6の鋳造装置の湯道が示された平面図であり、図9(B)は図9(A)の湯道が示された正面図であり、図9(C)は図9(A)のC-C線に沿った断面図である。
図10図10(A)は図6の鋳造装置のスタンドが示された拡大平面図であり、図10(B)は図10(A)のスタンドが示された底面図であり、図10(C)は図10(A)のC-C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、タイヤ用モールド製造方法の好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0011】
図1及び2に、タイヤ用モールド2が示されている。図2において、矢印Xはモールド2の径方向を表し、矢印Yはモールド2の軸方向を表す。このモールド2は、下プレート4、上プレート6、一対のサイドウォールプレート8、コンテナリング10、複数のセクターシュー12及び複数のセグメント14を有している。図1では、便宜上、上プレート6の図示が省略されている。下プレート4は、リング状の形状を有する。上プレート6は、ディスク状の形状を有する。それぞれのサイドウォールプレート8は、実質的にリング状の形状を有する。
【0012】
図1に示されるように、コンテナリング10は、筒状である。図2に示されるように、コンテナリング10は、内周面16を有している。この内周面16は、軸方向に対して傾斜している。内周面16は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。内周面16は、複数のレール18を有している。
【0013】
図1に示されるように、セクターシュー12の平面形状は、実質的に扇形である。図2に示されるように、セクターシュー12は、内周面20及び外周面22を有している。図1では、複数のセクターシュー12が周方向に沿って並んでいる。セクターシュー12の数は、通常3以上20以下である。本実施形態では、セクターシュー12の数は、9である。
【0014】
外周面22は、軸方向に対して傾斜している。外周面22は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。図2に示されるように、外周面22は溝24を有している。図示は省略されるが、この溝24は、いわゆる蟻溝である。この蟻溝24は、アンダーカット形状を有している。外周面22は、コンテナリング10の内周面16と当接している。蟻溝24には、レール18が嵌まっている。蟻溝24とレール18との引っかかりにより、セクターシュー12のコンテナリング10からの離脱が阻止されている。蟻溝24は、レール18に対して擦動可能である。従ってセクターシュー12は、コンテナリング10に対して擦動可能である。
【0015】
図1では、複数のセグメント14がリング状に配置されている。これらのセグメント14により、キャビティが形成されている。セグメント14の数は、通常3以上20以下である。セグメント14の数は、セクターシュー12の数と一致している。従って本実施形態では、セグメント14の数は、9である。モールド2が、互いにサイズの異なる複数種のセグメント14を有してもよい。
【0016】
それぞれのセグメント14の平面形状は、実質的に扇形である。図2に示されるように、セグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。背面28は、セクターシュー12の内周面20に当接している。セグメント14は、セクターシュー12に固定されている。固定は、ボルト等の図示されない手段によって達成されている。セクターシュー12とセグメント14との間に、他の部材(ホルダー等)が介在してもよい。
【0017】
モールド2が開かれた状態では、セクターシュー12は図2に示された位置よりも径方向外側にあり、コンテナリング10は図2に示された位置よりも上方にある。モールド2の閉動作では、コンテナリング10が、徐々に下降する。コンテナリング10の内周面16にその外周面22が押されたセクターシュー12は、径方向内側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に小さくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向内側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に小さくなる。コンテナリング10の下降が終了した時点で、セグメント14が隣接するセグメント14と当接し、キャビティが形成される。セグメント14が隣接するセグメント14と当接したときが、モールド2が閉じたときである。
【0018】
閉じているモールド2が開かれるとき、コンテナリング10が徐々に上昇する。蟻溝24とレール18とは引っかかっているが、セクターシュー12には重力がかかっているので、このセクターシュー12は上昇しない。セクターシュー12は、コンテナリング10と擦動しつつ、径方向外側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に大きくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向外側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に大きくなる。
【0019】
図3-5に、セグメント14が示されている。図3において、矢印Yはモールド2の軸方向を表し、矢印Zはモールド2の周方向を表す。前述の通りセグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。セグメント14はさらに、一対の側面30及び一対の端面32を有している。セグメント14の材質は、金属である。典型的な金属は、アルミニウム合金である。
【0020】
図3に示されるように、キャビティ面26は、4つのメインリッジ34と、多数のサブリッジ36とを有している。それぞれのメインリッジ34は、周方向に延在している。このメインリッジ34は、タイヤのトレッドの周方向溝に対応する。それぞれのサブリッジ36は、周方向に対して傾斜している。このサブリッジ36は、タイヤのトレッドの横溝に対応する。これらのメインリッジ34及びサブリッジ36により、キャビティ面26に多数のリセス38が形成されている。それぞれのリセス38は、タイヤのトレッドのブロックに対応する。リセス38は雌であり、ブロックは雄である。タイヤのブロックには、セグメント14のリセス38の形状が転写される。
【0021】
図6及び7に、セグメント14のための鋳造装置40が示されている。この装置40は、ベース42、パイプ44、湯口46、湯道48、複数のスタンド50、スペーサー52、鋳型54及び外枠56を有している。図7では、ベース42、スペーサー52、外枠56等の図示が省略されている。
【0022】
ベース42は、メインプレート58とクランプ60とを有している。メインプレート58は、開口62を有している。この開口62から、パイプ44が下方に向かって延びている。図示されていないが、この装置40はさらに、槽及びチャンバーを有している。槽には、アルミニウム合金の溶湯が蓄えられている。パイプ44は、この溶湯にまで至っている。槽は、チャンバーに収容されている。このチャンバーでは、内圧の調整が可能である。チャンバーに気体が送られることで、このチャンバーの内圧が大気圧よりも大きくなり得る。
【0023】
図8A-Dに、湯口46が示されている。この湯口46は、概してリング状である。湯口46は、トップ面64、ボトム面66、第一サイド面68、第二サイド面70及びホール72を有している。第一サイド面68は、図8Bの上に向かってテーパーである。第二サイド面70の外径は、第一サイド面68の外径よりも小さい。ホール72は、トップ面64からボトム面66まで、貫通している。図6に示されるように、湯口46の一部はベース42の開口62に嵌まっている。第二サイド面70は、開口62の内周面と接触している。
【0024】
図9A-Cに、湯道48が示されている。この湯道48は、概して碗状である。湯道48は、トップ面74、ボトム面76、凹面78及びホール80を有している。凹面78は、フラットゾーン82を有している。ホール80は、凹面78からボトム面76まで、貫通している。ホール80の内径は、図9Cの上に向かうに従って徐々に小さくなっている。図6に示されるように、湯道48には、湯口46が装着されている。湯道48のホール80には、湯口46の第一サイド面68が接している。湯口46は、湯道48に固定されてはいない。
【0025】
湯道48は、キャスタブル耐火物によって形成されている。キャスタブル耐火物は、耐火性に優れる材料(骨材、微粉及びバインダー)を含んでいる。粘土質、アルミナ質、シリカ質、ジルコン質等の骨材及び微粉が、キャスタブル耐火物に適している。典型的なバインダーとして、アルミナセメント、シリカゾル、リン酸アルミニウム及びケイ酸ナトリウムが例示される。キャスタブル耐火物の具体例として、三石ハイセラム社の商品名「SLR-S-1」が例示される。
【0026】
図10A-Cに、スタンド50が示されている。このスタンド50は、塊状である。スタンド50は、トップ面84、ボトム面86及びサイド面88を有している。トップ面84は、フラットである。ボトム面86も、フラットである。ボトム面86は、トップ面84と平行である。本実施形態では、トップ面84及びボトム面86のそれぞれは、概して三角形である。トップ面84又はボトム面86が、他の形状を有してもよい。図7に示されるように、鋳造装置40は4つのスタンド50を有している。スタンド50の数が3以下であってもよく、5以上であってもよい。図6に示されるように、それぞれのスタンド50は、湯道48の上にある。具体的には、スタンド50は、フラットゾーン82の上に置かれている。スタンド50は、湯道48に固定されてはいない。図9Aには、スタンド50が仮想線(二点鎖線)で示されている。
【0027】
図6に示されるように、鋳型54は、スペーサー52を介してスタンド50の上に置かれている。鋳型54の典型的な材質は、石膏である。鋳型54は、
(1)マスターモデルの製作
(2)このマスターモデルの形状が転写されたゴム型の製作
(3)このゴム型の形状が転写された石膏型の製作
を経て得られる。複数の石膏型のアッセンブリーにより、鋳型54が得られる。鋳型54が、他の方法で得られてもよい。鋳型54は、その表面に凹凸を有している。この凹凸の形状は、概して、タイヤのドレッド面の凹凸の形状と同じである。
【0028】
外枠56は、鋳型54を覆っている。外枠56は、クランプ60に固定されている。鋳型54は、スペーサー52と外枠56とに挟まれている。外枠56と鋳型54とにより、キャビティ90が形成されている。外枠56の好ましい材質は鋳鉄であり、典型的にはねずみ鋳鉄である。
【0029】
この装置40は、低圧鋳造法に適している。この装置40が用いられたモールド製造方法では、まず、槽に溶湯が蓄えられる。前述の通り、槽はチャンバーに収容されている。このチャンバーに気体が送られ、チャンバーの内圧が大気圧よりも大きくなる。この圧力に押された溶湯は、図6において矢印A1で示されるように、パイプ44の中を上昇する。溶湯は、湯口46を通過し、湯道48とスタンド50とで形成されたスペースを通過し、キャビティ90に至る。溶湯は、キャビティ90を満たす。この溶湯の温度が下がり、溶湯が徐々に凝固する。凝固収縮によるひけの抑制の観点から、凝固中も槽の溶湯が押され、キャビティ90に溶湯が補給される(押湯)。
【0030】
凝固の完了により、インゴットが得られる。外枠56がクランプ60から外され、インゴットが鋳造装置40から取り出される。インゴットは、概して筒形状を有する。インゴットは、その内周面に凹凸を有する。この凹凸の形状は、鋳型54の外周面の形状が反転した形状である。このインゴットが切削され、所定数に分割される。さらに、このインゴットに切削加工が施され、図3-5に示されたセグメント14が得られる。このセグメント14がセクターシュー12、下プレート4、上プレート6、サイドウォールプレート8等とアッセンブリーされて、図1及び2に示されたタイヤ用モールド2が完成する。
【0031】
鋳造装置40からのインゴットの取り出しのとき、湯道48には力がかかる。前述の通り、湯道48の材質は、キャスタブル耐火物である。この湯道48は、強度に優れる。この湯道48の圧縮強度は、従来の石膏湯道の圧縮強度よりも大きい。この湯道48に力がかかっても、破損しにくい。この湯道48は、繰り返し使用されうる。この湯道48が用いられた低圧鋳造法は、経済的である。この湯道48は、廃棄物の抑制に寄与しうる。この鋳造法では、カスの巻き込みが生じにくい。この鋳造法から、高品質なセグメント14が得られうる。
【0032】
湯道48の圧縮強度は、60MPa以上が好ましく、65Mpa以上がより好ましく、70MPa以上が特に好ましい。圧縮強度は、「JIS R 2553」の規定に準拠して測定される。キャスタブル耐火物の湯道48から得られたテストピースが、圧縮強度の試験に供される。
【0033】
湯道48の線変化率は-0.3%以上が好ましく、-0.2%以上がより好ましく、-0.1%以上が特に好ましい。線変化率がこの範囲である湯道48では、加熱及び冷却によるクラックが抑制されうる。線変化率の試験では、テストピースが1000℃の温度下に3時間保持され、室温まで冷却される。加熱前のテストピースのサイズと、冷却後のテストピースのサイズとが対比され、その変化量に基づき、線変化率が算出される。キャスタブル耐火物の湯道48から得られたテストピースが、線変化率の試験に供される。
【0034】
溶湯の凝固収縮により、スタンド50はインゴットにくるまれる。前述の通り、スタンド50は湯道48に固定されていない。スタンド50は、湯道48と一体ではない。換言すれば、スタンド50は、湯道48に対して易分離性である。スタンド50は、取り出されたインゴットに付随する。従って、インゴットの取り出し時に、湯道48に過剰の力はかからない。この鋳造装置40では、湯道48の破損が抑制されうる。
【0035】
インゴットにくるまれたスタンド50は、インゴットから除去される。典型的には、スタンド50が破壊されて、除去がなされる。除去の容易の観点から、易破砕性であるスタンド50が好ましい。スタンド50の好ましい材質は、石膏である。
【0036】
除去の容易の観点から、スタンド50の圧縮強度は10MPa以下が好ましく、8MPa以下がより好ましく、6Mpa以下が特に好ましい。
【0037】
高さの異なる複数種のスタンド50が、準備されてもよい。スタンド50の選択により、鋳型54の位置が調整されうる。
【0038】
前述の通り、湯口46は湯道48に固定されていない。湯口46は、湯道48と一体ではない。換言すれば、湯口46は、湯道48に対して易分離性である。従って、熱衝撃等に起因して湯口46が破損しても、湯道48の再利用は妨げられない。湯道48と一体でないにもかかわらず、第一サイド面68がテーパーな湯口46は、湯口46と湯道48との間からの溶湯が漏れ出しを抑制しうる。
【0039】
湯口46のサイズは湯道48のサイズよりも小さいので、この湯口46において溶湯の温度が下がりやすく、従って溶湯が凝固しやすい。押湯の途中で凝固によって湯口46が閉塞すると、キャビティ90へ溶湯が補給されえない。その熱伝導率が湯道48の熱伝導率よりも小さい湯口46が採用されれば、湯口46の閉塞が抑制されうる。閉塞の抑制の観点から、湯口46の好ましい材質は、石膏である。
【0040】
閉塞の抑制の観点から、湯道48の熱伝導率に対する湯口46の熱伝導率の比は0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。湯口46の熱伝導率は、1.0W/m・K以下が好ましく、0.7W/m・K以下がより好ましく、0.5W/m・K以下が特に好ましい。熱伝導率は、「JIS R 2251-1」の規定に準拠して、非定常熱線法熱伝導率測定装置にて測定される。キャスタブル耐火物から得られたテストピースが、熱伝導率の測定に供される。
【0041】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0042】
[項目1]
その材質がキャスタブル耐火物である湯道、
上記湯道の上にあるスタンド、
上記スタンドの上にある鋳型、
及び
上記鋳型を覆う外枠
を備えた、タイヤ用モールドのための鋳造装置。
【0043】
[項目2]
上記湯道に装着された湯口をさらに備えており、
上記湯口の熱伝導率が上記湯道の熱伝導率よりも小さい、項目1に記載の装置。
【0044】
[項目3]
上記湯口の材質が石膏である、項目2に記載の装置。
【0045】
[項目4]
上記湯口が上記湯道に対して易分離性である、項目1から3のいずれかに記載の装置。
【0046】
[項目5]
上記スタンドが上記湯道に対して易分離性である、項目1から4のいずれかに記載の装置。
【0047】
[項目6]
上記スタンドが易破砕性である、項目5に記載の装置。
【0048】
[項目7]
上記スタンドの材質が石膏である、項目6に記載の装置。
【0049】
[項目8]
上記湯道の圧縮強度が60MPa以上である、項目1から7のいずれかに記載の装置。
【0050】
[項目9]
(1)溶湯を準備する工程、
(2)その材質がキャスタブル耐火物である湯道、上記湯道の上にあるスタンド、上記スタンドの上にある鋳型、及び上記鋳型を覆う外枠を有する鋳造装置に、上記溶湯を注入する工程、
(3)上記溶湯を凝固させ、インゴットを得る工程、
(4)上記インゴットを切断又は切削し、セグメントを得る工程、
並びに
(5)上記セグメントを他のモールド部品とアッセンブリーする工程
を備えた、タイヤ用モールド製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明された製造方法により、種々のタイヤのためのモールドが製造されうる。
【符号の説明】
【0052】
2・・・タイヤ用モールド
14・・・セグメント
26・・・キャビティ面
40・・・鋳造装置
42・・・ベース
44・・・パイプ
46・・・湯口
48・・・湯道
50・・・スタンド
52・・・スペーサー
54・・・鋳型
56・・・外枠
58・・・メインプレート
60・・・クランプ
62・・・開口
64・・・湯口のトップ面
66・・・湯口のボトム面
68・・・第一サイド面
70・・・第二サイド面
72・・・湯口のホール
74・・・湯道のトップ面
76・・・湯道のボトム面
78・・・凹面
80・・・湯道のホール
82・・・フラットゾーン
84・・・スタンドのトップ面
86・・・スタンドのボトム面
88・・・サイド面
90・・・キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10