(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007036
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ロックウール質成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21J 7/00 20060101AFI20240111BHJP
D21J 3/00 20060101ALI20240111BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
D21J7/00
D21J3/00
D21H11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108196
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】591077645
【氏名又は名称】有限会社林製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】林 隆文
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF01
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG08
4L055AG18
4L055AG25
4L055AG47
4L055AG71
4L055AG97
4L055AH18
4L055AH37
4L055EA32
4L055FA13
4L055GA21
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】ドライ強度及びかさ密度に優れるロックウール質成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ロックウール質成形体は、ロックウール100質量部と、無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、を含み、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックウール100質量部と、
無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、
有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、
微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、を含み、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、
前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするロックウール質成形体。
【請求項2】
ロックウール100質量部と、
無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、
有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、
微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、
を水に分散させてスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを抄造機による脱水成形、又は型を用いて脱水成形する脱水成形工程と、を備えるロックウール質成形体の製造方法であって、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、
前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするロックウール質成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックウール質成形体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、ドライ強度に優れるロックウール質成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックウールは、天然鉱物、鉄炉スラグなどを高温で溶解して得られる比較的安価な人造鉱物繊維である。
ロックウールを用いて成形されるロックウール質成形体は、機械的強度、吸音性等に優れるため、産業機器用、住宅用などに用いられる(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、例えば、石油給湯器の吸音材、石膏ボード同士の接合部に生じる目地部に充填される目地材として好適に用いることができる。
ここで、ロックウール質成形体とは、ロックウールと、ロックウール同士を結合させるバインダーと、必要に応じて加えられる無機充填剤とを含むものである。従来のロックウール質成形体は、使用方法によっては、その取り扱い時に層間剥離、カケ、ちぎれ等が起きるものもあり、ドライ強度の高いロックウール質成形体が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するものであり、ドライ強度に優れるロックウール質成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
1.ロックウール100質量部と、
無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、
有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、
微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、を含み、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、
前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするロックウール質成形体。
2.ロックウール100質量部と、
無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、
有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、
微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、
を水に分散させてスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを抄造機による脱水成形、又は型を用いて脱水成形する脱水成形工程と、を備えるロックウール質成形体の製造方法であって、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、
前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするロックウール質成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のロックウール質成形体は、ドライ強度に優れる。また、本発明のロックウール質成形体の製造方法によれば、ドライ強度に優れるロックウール質成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】コロイダルシリカ及びデンプンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図2】コロイダルシリカと硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図3】ベントナイトと硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図4】コロイダルシリカ、ベントナイト及び硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図5】硫酸アルミニウムとアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図6】硫酸アルミニウムとラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフであ
【
図7】硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図8】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図9】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図10】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図11】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図12】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図13】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図14】硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、硫酸アルミニウムの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図15】微小繊維状セルロースの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図16】パルプの含有量がドライ強度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図17】コロイダルシリカ及びデンプンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図18】コロイダルシリカと硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図19】ベントナイトと硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図20】コロイダルシリカ、ベントナイト及び硫酸アルミニウムを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図21】硫酸アルミニウムとアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図22】硫酸アルミニウムとラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフであ
【
図23】硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図24】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図25】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図26】コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図27】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図28】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図29】コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンを含む場合の、微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図30】硫酸アルミニウム及びアクリル系樹脂を含む場合の、硫酸アルミニウムの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図31】微小繊維状セルロースの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図32】パルプの含有量がかさ密度に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。
[1]ロックウール質成形体
本発明の「ロックウール質成形体」は、ロックウールを主成分とした成形体であれば、特に形状は限定されず、例えば、30~50mm程度の厚さのマット、ボード、2~3mm程度の厚さのシート、0.4mm以下の厚さのペーパー、モールド品などの成形体とすることができる。
【0009】
本発明のロックウール質成形体の組成は、
ロックウール100質量部と、
無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、
有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、
微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、を含む。
【0010】
(1)ロックウール
前記ロックウールは、高炉スラグ、硅石、玄武岩等の岩石を主原料とし、これらを溶融し、繊維化して製造された人造鉱物繊維をいう。ロックウールの化学組成は原料により異なるが、一般的な化学成分は、SiO2を35~45質量%、Al2O3を10~20質量%、CaOを30~40質量%、MgOを4~8質量%、MnOを0~1質量%、Fe2O3を0~3質量%含有する。
本実施形態に係る「ロックウール」は、綿状又はマット状のロックウールを後述の方法で粉砕した粉砕品及び/又は未粉砕品からなる。
【0011】
ロックウールの平均繊維径は、特に限定はないが、1.5~10μmであることが好ましく、3~6μmであることがより好ましい。平均繊維径が、1.5μm未満であるとロックウールが破断しやすくなるので、得られるロックウール質成形体の強度が低くなりやすく、また10μmを超えると、ロックウール質成形体の密度が低くなるため得られるロックウール質成形体の強度が低くなりやすい。
【0012】
前記ロックウールの粉砕方法は特に限定はないが、以下の方法により行うことができる。
乾式の方法として、ロータリーカッター等のカッター、ピンミル、ハンマーミル等の粉砕ミル、ローラープレス等のプレス、ピッカーロールによる粉砕方法が例示され、乾式・湿式いずれでも使用できる方法として、ボールミルによる粉砕方法が例示され、湿式の方法として、パルパー、高速離解機による粉砕方法が例示される。これらの方法は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0013】
ロックウールの未粉砕品は、綿状又はマット状のロックウールをそのまま使用する。
更に、ロックウールは、気流分級、水篩等によりショットを除去したものであってもよい。ショット率については特に限定はないが、例えば、JIS-Z-8801の呼び寸法45μmの篩に残る45μm以上のショットが0.1%以下含有するものであってもよい。
【0014】
(2)無機バインダ―及び無機定着剤
無機バインダ―及び無機定着剤は、ロックウールを結合させる結合剤としての役割を果たす。
無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上である。
コロイダルシリカ、ベントナイトは、無機バインダ―として作用し、硫酸アルミニウムは、無機定着剤として作用する。
コロイダルシリカには、アルカリタイプコロイダルシリカ、酸性タイプコロイダルシリカ、カチオン性コロイダルシリカ、アニオン性コロイダルシリカ等がある。またベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分とした精製ベントナイトである。なお、コロイダルシリカ及びベントナイト以外に無機バインダーとして使用できるものにセピオライトなどが挙げられる。
硫酸アルミニウムは、コロイダルシリカ、ベントナイトの無機定着剤であり、後述の有機バインダーである、アニオン性のアクリル系樹脂、ラテックスエマルジョンの定着剤として用いることもできる。また、硫酸アルミニウムは粉末状として無水物と含水物があり、いずれも使用可能である。
更に、無機バインダ―であるコロイダルシリカは後述の有機バインダーであるデンプンとの組み合わせにより結合剤とすることもできる。
【0015】
ロックウール質成形体は、ロックウールを100質量部とした場合に、無機バインダ―及び無機定着剤を0.5~10質量部含む。
無機バインダーであるコロイダルシリカ及びベントナイトの含有量はロックウール100質量部に対して0.5~10質量部含むことが好ましく、1~10質量部含むことがさらに好ましく、2~10質量部含むことが特に好ましい。
この範囲であれば無機バインダーとしての効果は良好である。0.5質量部未満では無機バインダーとしての効果は不十分であり、10質量部を超えると無機バインダーとしての効果はあるが、10質量部含めば十分である。
無機定着剤である硫酸アルミニウムの含有量は、特に限定はないがロックウール100質量部に対して固形分換算(無水物)で0.5~2.7質量部含むことが好ましい(表55の実験例4~6参照)。
この範囲であれば、無機定着剤としての効果は良好である。0.5質量部未満では、無機定着剤としての効果は不十分であり、2.7質量部を超えても無機定着剤としての効果はあるが、2.7質量部含めば十分である。
【0016】
(3)有機バインダー及び高分子凝集剤
有機バインダー及び高分子凝集剤も無機バインダ―及び無機定着剤と同様、ロックウールを結合させる結合剤としての役割を果たす。
有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上である。
デンプンは、特に限定はないが、カチオンデンプン、アニオンデンプン、両性デンプン等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、特に限定はないが、カチオン性、アニオン性、両性のポリアクリルアミド系紙力剤等が挙げられる。また、ポリアミドポリアミン系等の湿潤紙力剤を含んでもよい。
ラテックスエマルジョンは、特に限定はないが、アクリレート系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、スチレン・ブタジエン系ラテックス等が挙げられる。
高分子凝集剤は、特に限定はないが、ポリアクリルアミド系高分子のカチオン系、アニオン系、ノニオン系等の各凝集剤が挙げられ、スラリーの凝集をさらに強くすることができる。
ロックウール質成形体は、ロックウールを100質量部とした場合に、有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部を含む。
有機バインダー及び高分子凝集剤の含有量は、ロックウール100質量部に対して0質量部でもよい。その理由としては、補強剤として微小繊維状セルロースをロックウール100質量部に対して0.25~5質量部含み、微小繊維状セルロースがロックウールを結合させる結合材としても作用することができるからである(表56の実験例8~12参照)。
また有機バインダー及び高分子凝集剤の含有量がロックウール100質量部に対して10.1質量部を超えると有機バインダー及び高分子凝集剤としての効果はあるが、10.1質量部含めば十分である。
【0017】
(4)補強剤
補強剤としては、微小繊維状セルロースである。微小繊維状セルロースは、セルロース繊維を機械的処理によって細長く微細化したものである。すなわち、パルプをパルパー等で解繊しただけのもの、ビーター等で粘状叩解したものとは異なり、ホモジナイザー等により処理されたミクロフィブリ化したセルロースファイバーである。微小繊維状セルロースは、繊維の交絡性が高く、繊維表面の水酸基によって繊維同士が強固に水素結合する。
微小繊維状セルロースはパルプをナノオーダーにまで微細化した、セルロースナノファイバー(繊維径 数ナノメートル~100ナノメートル)を含むものである。
微小繊維状セルロースの繊維径は特に限定はないが、0.5~50μmであることが好ましく、0.1~1.0μmであることが特に好ましい。また、繊維長も特に限定はないが、0.5~1.5mmであることが好ましく、0.25~0.45μmであることが特に好ましい。また微小繊維状セルロースは、ロックウールを結合させる結合材としても作用することができる(表56の実験例8~12参照)。
【0018】
ロックウール質成形体は、ロックウールを100質量部とした場合に、補強剤(微小繊維状セルロース)を0.25~5質量部含む。1~5質量部含むことが更に好ましく、3~5質量部含むことが特に好ましい。
0.25質量部未満では、補強剤としての効果が得られず、5質量部を超えると、成形時における濾水時間が長くなり生産性が悪くなる。
【0019】
[2]ロックウール質成形体の製造方法
本発明のロックウール質成形体の製造方法は、ロックウール100質量部と、無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、微小繊維状セルロース0.25~5質量部と、を水に分散させてスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを抄造機による脱水成形、又は型を用いて脱水成形する脱水成形工程と、を備え、
前記無機バインダ―及び無機定着剤は、コロイダルシリカ、ベントナイト、及び硫酸アルミニウムから選択される1種又は2種以上であり、前記有機バインダー及び高分子凝集剤は、デンプン、アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン、及び高分子凝集剤から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0020】
(1)スラリー調製工程
スラリー調製工程は、混合工程と濃度調整工程からなることができる。
(混合工程)
混合工程は、ロックウール100質量部と、無機バインダ―及び無機定着剤0.5~10質量部と、有機バインダー及び高分子凝集剤0~10.1質量部と、微小繊維状セルロース0.25~5質量部とからなる原料(以下、単に「原料」ともいう。)を水に分散させて混合する工程である。具体的には、パルパー(撹拌機)内に所定量の水を貯留し、前記原料を投入して攪拌混合する。
前記水としては、特に限定はなく、蒸留水、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。
原料の濃度は、特に限定はないが、原料固形分と水の合計を100質量%とした場合に、原料固形分1~5質量%であることが好ましく、2~4質量%であることが更に好ましい。
【0021】
(濃度調整工程)
濃度調整工程は、原料を混合して得られた混合液に、更に水を追加混合して濃度を調整して所定濃度のスラリーを得る工程である。具体的には、パルパーで攪拌した後の原料をチェストタンクにポンプで給送し、さらに水も投入し、これにより所定の濃度のスラリーが得られる。得られたスラリーは、スラリー貯留槽へと給送される。この場合において、さらに濃度を低くするために、さらに水を投入してスラリー貯留槽へと給送してもよい。
水は特に限定はなく、前述の水を使用することができる。スラリーの濃度は、特に限定はないが、スラリー全体を100質量%とした場合に、原料固形分が、0.1~5質量%、更に好ましくは、0.1~4質量%、特に好ましくは0.1~3質量%である。スラリー濃度が、0.1質量%未満の場合は、脱水成形工程で除去する水の量が多くなり過ぎるため、作業効率が悪くなり、5質量%を超えると、スラリーに固形分が均一に分散し難くなる。
【0022】
(2)脱水成形工程
脱水成形工程は、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを抄造機による脱水成形、又は型を用いた脱水成形をする工程である。
抄造機による脱水成形をするには、例えば、スラリー貯留槽において抄網によってスラリーを通過させると、大部分の水分は抄網を通過して、抄網上に抄造体が付着堆積される。
型を用いた脱水成形をするには、例えば、スラリー貯留槽において、網を設けた成形型にスラリーを流入させ網面から真空ポンプ等により水分を吸引して成形型に脱水体を形成させる。
上記により得られた抄造体又は、脱水体を乾燥させることにより、ロックウール質成形体が得られる。
乾燥温度は特に限定はないが、好ましくは50~150℃、更に好ましくは70~130℃、特に好ましくは、80~120℃である。
【0023】
本発明のロックウール質成形体の製造方法に係る、ロックウールと、無機バインダ―及び無機定着剤と、有機バインダー及び高分子凝集剤と、微小繊維状セルロースは、前記本発明のロックウール質成形体に係るロックウールと、無機バインダ―及び無機定着剤と、有機バインダー及び高分子凝集剤と、微小繊維状セルロースと同様である。
【実施例0024】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例は例示であって、本発明を限定するものではない。
[試験品の原料]
表1~54に示す実施例1~270、比較例1~54に係る原料を用意してスラリーを調製した。また、表55~57に示す実験例1~18に係る原料を用意してスラリーを調製した。
原料の各成分の詳細は以下の通りである。
ロックウールは、商品名:太平洋ミネラルファイバー粒状綿(太平洋マテリアル(株)社製)を使用した。
コロイダルシリカは、商品名:スノーテックス30(日産化学(株)社製)を使用した。
ベントナイトは、商品名:クニピア-G(クニミネ工業(株)社製)を使用した。
硫酸アルミニウムは、商品名:硫酸バンド(旭洋紙パルプ(株)社製)を使用した。
アクリル系樹脂は、商品名:ポリストロン117(荒川化学工業(株)社製)を使用した。
デンプンは、商品名:エースディンHP-150(大和化学工業(株)社製)を使用した。
ラテックスエマルジョンは、商品名:Nipol LX852(日本ゼオン(株)社製)を使用した。
微小繊維状セルロースは、繊維径0.1~1.0μm、繊維長0.25~0.45mm(商品名:セリッシュ:品番:KY100G(ダイセルミライズ(株)社製)を使用した。
高分子凝集剤としては、変性カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:パコール47(伯東(株)社製))を使用した。
パルプは、商品名:HINTON HI-BRITE PULP(Hinton Pulp a Division of West Fraser Mills Ltd.社製)を使用した。
【0025】
本実施例においては、微小繊維状セルロースの含有量がロックウール質成形体の物性に及ぼす影響について、無機バインダー及び無機定着剤並びに有機バインダー及び高分子凝集剤の種類及び添加量を変化させて試験をしたものである。
【0026】
[1]無機バインダ―及び有機バインダー並びに高分子凝集剤の影響
無機バインダー:コロイダルシリカ、有機バインダー:デンプン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表1~表6(実施例1~30、比較例1~6)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、コロイダルシリカ(3、6、10質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、デンプン(3、6、10質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表4~表6(実施例16~30、比較例4~6)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(5)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.265~0.313質量%のスラリーを得た。
(A-2)脱水成形工程
(1)前記(5)で得たスラリー18Lをステンレス製の網を設けた貯水槽付き成形型に投入して撹拌した。
(2)網面から真空ポンプにより水分を吸引して、成形型の網面状に平板状の脱水体を形成した。
(3)脱水体を乾燥機に移送し100℃で12時間乾燥させて、ロックウール質成形体(各厚さ×巾250mm×長さ250mm)を得た。
(4)得られたロックウール質成形体をカット加工し、ドライ強度測定用の試験品(各厚さ×幅15mm×長さ215mm)及びかさ密度測定用の試験品(各厚さ×巾100mm×長さ100mm)を得た。
【0027】
(B)試験品の評価
ドライ強度については、試験品の長手方向の引張強度を測定した。試験機は、SV-55CB-50R2型引張圧縮試験機((株)今田製作所 社製)を用いた。
かさ密度については、試験品の質量を外形寸法から求めた体積で除することにより、試験品のかさ密度を算出した。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表1~表6(実施例1~30、比較例1~6)及び
図1に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ及びデンプンの含有量に関わらず、ドライ強度41.12(N/15mm)以上となり、著しく向上することが判明した。また、一定量の微小繊維状セルロースに対しては、コロイダルシリカ及びデンプンの含有量が多いほど、ドライ強度が向上した。そして、この傾向は、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、更に強くなった。
なお、高分子凝集剤を添加することにより、全体的にドライ強度が向上する傾向が認められた。
(2)かさ密度
表1~表6(実施例1~30、比較例1~6)及び
図17に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従ってかさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ及びデンプンの含有量に関わらず、かさ密度201.0(kg/m
3)以上となり、かなり増大することが判明した。また、一定量の微小繊維状セルロースに対しては、コロイダルシリカ及びデンプンの含有量が多いほど、かさ密度が大きくなる傾向にあった。そして、この傾向は、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、強くなった。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められなかった。
【0035】
[2]無機バインダ―及び無機定着剤並びに高分子凝集剤の影響
[2-1]無機バインダ―及び無機定着剤:コロイダルシリカ、硫酸アルミニウム
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表7~表12(実施例31~60、比較例7~12)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、コロイダルシリカ(3、5、8質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表10~表12(実施例46~60、比較例10~12)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(5)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.262~0.288質量%のスラリーを得た。
【0036】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表7~表12(実施例31~60、比較例7~12)及び
図2に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、ドライ強度19.40(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。なお、
図1と比較すると、一定量の微小繊維状セルロースの下では、ドライ強度において、結合剤としてのコロイダルシリカとデンプンの組み合わせの方が、コロイダルシリカと硫酸アルミニウムの組み合わせより優れているといえる。
なお、一定量の微小繊維状セルロースに対しては、コロイダルシリカ及び硫酸アルミニウムの含有量と、ドライ強度の相関関係は特に認められなかった。
また、高分子凝集剤を添加すると、微小繊維状セルロース5質量部において顕著にドライ強度が向上する傾向が認められた。
(2)かさ密度
表7~表12(実施例31~60、比較例7~12)及び
図18に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が増大する傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、かさ密度209.3(kg/m
3)以上となり、かなり増大することが判明した。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度向上との相関関係は特に認められなかった。
【0044】
[2-2]無機バインダ―及び無機定着剤:ベントナイト、硫酸アルミニウム
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表13~表18(実施例61~90、比較例13~18)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらベントナイト(3、5、8質量部)添加した。
(2)攪拌しながら、ロックウール(100質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表16~表18(実施例76~90、比較例16~18)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(5)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.262~0.288質量%のスラリーを得た。
【0045】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表13~表18(実施例61~90、比較例13~18)及び
図3に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、ドライ強度28.83(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。なお、
図2と比較すると、一定量の微小繊維状セルロースの下では、ドライ強度において、結合剤としてのベントナイトと硫酸アルミニウムの組み合わせの方が、コロイダルシリカと硫酸アルミニウムの組み合わせより優れているといえる。
なお、一定量の微小繊維状セルロースに対しては、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量とドライ強度の相関関係は特に認められなかった。
また、高分子凝集剤を添加すると、ドライ強度が向上する傾向が認められた。特に、微小繊維状セルロース3質量部、5質量部においては、高分子凝集剤の添加により、顕著にドライ強度が向上する傾向が認められた。
(2)かさ密度
表13~表18(実施例61~90、比較例13~18)及び
図19に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が向上する傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、かさ密度223.3(kg/m
3)以上となり、かなり向上増大することが判明した。
なお、高分子凝集剤を添加と、かさ密度向上との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0053】
[2-3]無機バインダ―及び無機定着剤:コロイダルシリカ、ベントナイト、
硫酸アルミニウム
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表19~表24(実施例91~120、比較例19~24)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらベントナイト(2、4、7質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、ロックウール(100質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、コロイダルシリカ(1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表22~表24(実施例106~120、比較例22~24)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(6)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.262~0.288質量%のスラリーを得た。
【0054】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表19~表24(実施例91~120、比較例19~24)及び
図4に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、ドライ強度22.43(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。なお、
図3と比較すると、全体的にドライ強度の値が低い結果となっている。特に、微小繊維状セルロース3質量部及び5質量部において、差が顕著である。
すなわち、結合剤として、コロイダルシリカ、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの3成分の組み合わせよりも、ベントナイト及び硫酸アルミニウムのみの組み合わせの方が、ドライ強度の値が高い結果となった。無機バインダ―としては、ベントナイトの方がコロイダルシリカよりも、ドライ強度を高める効果が大きいといえる。
なお、一定量の微小繊維状セルロースに対しては、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量とドライ強度の相関関係は特に認められなかった。
また、高分子凝集剤を添加すると、ドライ強度が向上する傾向が認められた。特に、微小繊維状セルロース5質量部において、高分子凝集剤の添加により顕著にドライ強度が高くなる傾向が認められた。
(2)かさ密度
表19~表24(実施例91~120、比較例19~24)及び
図20に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、コロイダルシリカ、ベントナイト及び硫酸アルミニウムの含有量に関わらず、かさ密度222.6(kg/m
3)以上となり、かなり増大することが判明した。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められなかった。
【0062】
[3]無機バインダー及び無機定着剤並びに有機バインダー及び高分子凝集剤の影響
[3-1]無機バインダー及び無機定着剤:硫酸アルミニウム
[3-1-1]有機バインダー:アクリル系樹脂
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表25~表30(実施例121~150、比較例25~30)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、アクリル系樹脂(1、2、3質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表28~表30(実施例136~150、比較例28~30)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(5)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.257~0.275質量%のスラリーを得た。
【0063】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表25~表30(実施例121~150、比較例25~30)及び
図5に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度35.47(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
そして、一定の微小繊維状セルロースの下では、アクリル系樹脂の含有量が多いほど、ドライ強度も向上する傾向にあった。
また、高分子凝集剤を添加すると、ドライ強度が向上する傾向が明らかであった。
(2)かさ密度
表25~表30(実施例121~150、比較例25~30)及び
図21に示すように、微小繊維状セルロース1質量部以下では、微小繊維状セルロースの含有量とかさ密度との間には相関関係が認められない傾向にあった。一方、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度211.0(kg/m
3)以上となり、増加することが判明した。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0071】
[3-1-2]有機バインダー:ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表31~表36(実施例151~180、比較例31~36)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(3、5、8質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表34~表36(実施例166~180、比較例34~36)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(5)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.262~0.288質量%のスラリーを得た。
【0072】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表31~表36(実施例151~180、比較例31~36)及び
図6に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度23.96(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
そして、一定の微小繊維状セルロースの下では、ラテックスエマルジョンの含有量が多いほど、ドライ強度も向上する傾向にあった。
なお、
図5と比較すると、ドライ強度において、一定の微小繊維状セルロースの下で比較すると、全体として結合剤としての硫酸アルミニウムとアクリル系樹脂の組み合わせの方が、硫酸アルミニウムとラテックスエマルジョンの組み合わせより優れているといえる。
なお、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
(2)かさ密度
表31~表36(実施例151~180、比較例31~36)及び
図22に示すように、微小繊維状セルロース1質量部未満では、ラテックスエマルジョンの含有量とかさ密度との間にはさほど相関関係が認められなかった。一方、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度203.1(kg/m
3)以上となり、増加することが判明した。
なお、高分子凝集剤を添加しても、かさ密度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0080】
[3-1-3]有機バインダー:アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表37~表42(実施例181~210、比較例37~42)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、アクリル系樹脂(1質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(3、5、8質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表40~表42(実施例196~210、比較例40~42)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(6)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.265~0.290質量%のスラリーを得た。
【0081】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表37~表42(実施例181~210、比較例37~42)及び
図7に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度44.95(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
そして、一定の微小繊維状セルロースの下では、アクリル系樹脂及びラテックスエマルジョンの含有量が多いほど、ドライ強度も向上する傾向にあった。
なお、
図5、
図6と比較すると、一定の微小繊維状セルロースの下で比較すると、全体として結合剤としての硫酸アルミニウムとアクリル系樹脂に更にラテックスエマルジョンを加えた組み合わせの方が、硫酸アルミニウムとラテックスエマルジョンの組み合わせより優れているといえる。
また、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との関連性は明らかではなかった。
(2)かさ密度
表37~表42(実施例181~210、比較例37~42)及び
図23に示すように、微小繊維状セルロース1質量部未満では、含有量とかさ密度との間には相関関係が認められなかった。一方、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度225.1(kg/m
3)以上となり、増加することが判明した。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0089】
[3-2]無機バインダー及び無機定着剤:コロイダルシリカ、硫酸アルミニウ
ム
[3-2-1]有機バインダー:アクリル系樹脂
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表43、44(実施例211~220、比較例43、44)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、コロイダルシリカ(2質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、アクリル系樹脂(2質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表44(実施例216~220、比較例44)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(6)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.265~0.278質量%のスラリーを得た。
【0090】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0091】
【0092】
【表44】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表43~表44(実施例211~220、比較例43、44)及び
図8に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度51.65(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
また、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との関連性は明らかではなかった。
(2)かさ密度
表43~表44(実施例211~220、比較例43、44)及び
図24に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度226.9(kg/m
3)以上となり、増大する傾向が顕著であった。
なお、高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0093】
[3-2-2]有機バインダー:ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表45、表46(実施例221~230、比較例45、46)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、コロイダルシリカ(2質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(5質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表46(実施例226~230、比較例46)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(6)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.272~0.285質量%のスラリーを得た。
【0094】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0095】
【0096】
【0097】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表45、表46(実施例221~230、比較例45、46)及び
図9に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度31.12(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
ここで、
図8と比較すると、一定の微小繊維状セルロースの下で、有機バインダーとしては、アクリル樹脂の方がラテックスエマルジョンより優れているといえる。
なお、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との関連性は明らかではなかった。
(2)かさ密度
表45、表46(実施例221~230、比較例45、46)及び
図25に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度232.5(kg/m
3)以上となり、増大する傾向が顕著であった。
また、高分子凝集剤の添加により、かさ密度が増加することが明らかであった。
【0098】
[3-2-3]有機バインダー:アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表47、表48(実施例231~240、比較例47、48)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、コロイダルシリカ(2質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、アクリル系樹脂(1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(5質量部)を添加した。
(6)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表48(実施例236~240、比較例48)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(7)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.275~0.288質量%のスラリーを得た。
【0099】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0100】
【0101】
【0102】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表47、表48(実施例231~240、比較例47、48)及び
図10に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度50.68(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
ここで、
図8、
図9と比較すると、一定の微小繊維状セルロースの下で、有機バインダーとしては、アクリル系樹脂に更にラテックスエマルジョンを加えた組み合わせの方が、アクリル系樹脂のみ又はラテックスエマルジョンのみより優れているといえる。
また、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との関連性は明らかではなかった。
(2)かさ密度
表47、表48(実施例231~240、比較例47、48)及び
図26に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度256.3(kg/m
3)以上となり、増大する傾向が顕著であった。
なお高分子凝集剤の添加と、かさ密度との相関関係は特に認められない傾向にあった。
【0103】
[3-3]無機バインダー及び無機定着剤:コロイダルシリカ、ベントナイト、硫酸アルミニウム
[3-3-1]有機バインダー:アクリル系樹脂
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表49、50(実施例241~250、比較例49、50)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらベントナイト(3質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、ロックウール(100質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、コロイダルシリカ(1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら、アクリル系樹脂(2質量部)を添加した。
(6)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表50(実施例246~250、比較例50)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(7)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.270~0.283質量%のスラリーを得た。
【0104】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0105】
【0106】
【0107】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表49、表50(実施例241~250、比較例49、50)及び
図11に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度46.47(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
また、高分子凝集剤を添加により、すべての微小繊維状セルロース濃度に亘ってドライ強度が向上する結果が得られた。
(2)かさ密度
表49、表50(実施例241~250、比較例49、50)及び
図27に示すように微小繊維状セルロースの含有量1質量部以下では、微小繊維状セルロースの含有量とかさ密度との関連性は認められなかった。一方、微小繊維状セルロースの含有量3質量部以上では、かさ密度が大きくなる傾向にあった。
【0108】
[3-3-2]有機バインダー:ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表51、52(実施例251~260、比較例51、52)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらベントナイト(3質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、ロックウール(100質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、コロイダルシリカ(1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(5質量部)を添加した。
(6)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表52(実施例256~260、比較例52)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(7)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.278~0.290質量%のスラリーを得た。
【0109】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0110】
【0111】
【0112】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表51、52(実施例251~260、比較例51、52)及び
図12に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度40.28(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
ここで、
図11と比較すると、一定の微小繊維状セルロースの下で、有機バインダーとしては、アクリル樹脂の方がラテックスエマルジョンより優れているといえる。
また、高分子凝集剤の添加により、微小繊維状セルロース3質量部の場合を除き、ドライ強度が向上することが確認できた。
(2)かさ密度
表51、52(実施例251~260、比較例51、52)及び
図28に示すように微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース1質量部以上では、かさ密度207.3(kg/m
3)以上となり、増加傾向が認められた。
また、高分子凝集剤の添加により、微小繊維状セルロース1質量部の場合を除き、かさ密度が増加することが判明した。
【0113】
[3-3-3]有機バインダー:アクリル系樹脂、ラテックスエマルジョン
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表53、表54(実施例261~270、比較例53、54)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらベントナイト(3質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、ロックウール(100質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、コロイダルシリカ(1質量部)を添加した。
(4)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(1.1質量部)を添加した。
(5)攪拌しながら、アクリル系樹脂(1質量部)を添加した。
(6)攪拌しながら、ラテックスエマルジョン(5質量部)を添加した。
(7)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
※表54(実施例266~270、比較例54)については、更に攪拌しながら高分子凝集剤0.05質量部を添加した。
(8)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.280~0.292質量%のスラリーを得た。
【0114】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0115】
【0116】
【0117】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表53、表54(実施例261~270、比較例53、54)及び
図13に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度58.55(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
ここで、
図11、
図12と比較すると、一定の微小繊維状セルロースの下で、有機バインダーとしては、アクリル系樹脂に更にラテックスエマルジョンを加えた組み合わせの方が、アクリル系樹脂のみ又はラテックスエマルジョンのみより優れているといえる。
また、高分子凝集剤の添加と、ドライ強度との関連性は明らかではなかった。
(2)かさ密度
表53、表54(実施例261~270、比較例53、54)及び
図29に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が大きくなる傾向にあった。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度269.2(kg/m
3)以上となり、増大する傾向が顕著であった。
また、高分子凝集剤の添加によりかさ密度は、微小繊維状セルロース1質量部以下ではかさ密度が増加し、微小繊維状セルロース3質量部以上では減少することが判明した。
【0118】
[実験例]
以下、各成分がロックウール質成形体の物性に及ぼす影響について、試験を行った実験A~Cを示す。
【0119】
[実験A]
実験A(実験例1~6)においては、硫酸アルミニウムの含有量がロックウール質成形体の物性に及ぼす影響について、有機バインダーであるアクリル系樹脂の添加量を一定にして試験をしたものである。
【0120】
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表55(実験例1~6)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら、アクリル系樹脂(2質量部)を添加した。
(3)攪拌しながら、硫酸アルミニウム(0、0.13、0.27、0.53、1.59、2.65質量部)を添加した。
(4)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.255~0.268質量%のスラリーを得た。
【0121】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0122】
【0123】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表55(実験例1~6)及び
図14に示すように、硫酸アルミニウム0.27質量部以下では、ドライ強度に及ぼす影響が少ないが、硫酸アルミニウム0.53質量部添加すると、ドライ強度1.97(N/15mm)とその効果が生じはじめ、1.59質量部以上添加すると、17.12(N/15mm)以上とドライ強度向上に大きく寄与することが分かった。
(2)かさ密度
表55(実験例1~6)及び
図30に示すように、硫酸アルミニウム0.27質量部以下では、硫酸アルミニウムの添加量の増加に伴ってかさ密度が増大するが、硫酸アルミニウム0.53質量部以上では、かさ密度との関連性は特に認められなかった。
【0124】
[実験B]
実験B(実験例7~12)においては、微小繊維状セルロースの含有量がロックウール質成形体の物性に及ぼす影響について、試験をしたものである。
【0125】
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表56(実験例7~12)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながら微小繊維状セルロース(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。
(3)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.250~0.262質量%のスラリーを得た。
【0126】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0127】
【0128】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表56(実験例7~12)及び
図15に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、ドライ強度が向上することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、ドライ強度23.59(N/15mm)以上となり、急激に向上することが判明した。
(2)かさ密度
表56(実験例7~12)及び
図31に示すように、微小繊維状セルロースの含有量が多くなるに従って、かさ密度が増大することが判明した。特に、微小繊維状セルロース3質量部以上では、かさ密度194.9(kg/m
3)以上となり、増大する傾向が顕著であった。
【0129】
[実験C]
実験C(実験例13~18)においては、パルプの含有量がロックウール質成形体の物性に及ぼす影響について試験をしたものである。
【0130】
(A)試験品の作成
(A-1)スラリー調製工程
表57(実験例13~18)に示す原料を用いて、次の順及び方法でスラリーを調製した。
(1)10Lの水に攪拌しながらロックウール(100質量部)を添加した。
(2)攪拌しながらパルプ(0、0.25、0.5、1、3、5質量部)を添加した。尚パルプは、ジューサーミキサーに1Lの水を入れ、30秒間解繊したものを使用した。
(3)水を追加投入して全体を18Lとして、スラリー濃度0.250~0.262質量%のスラリーを得た。
【0131】
(A-2)脱水成形工程、(B)試験品の評価については、前記[1]と同様であり、前述した通りである。
【0132】
【0133】
<試験結果>
(1)ドライ強度
表57(実験例13~18)及び
図16に示すように、パルプの含有量が0.25質量部以下では、ドライ強度の測定が不可能であり、パルプの含有量が3~5質量部となってもドライ強度は、1.03~1.67(N/15mm)であり、パルプの添加によるドライ強度の向上は見込めない結果となった。
(2)かさ密度
表57(実験例13~18)及び
図32に示すように、パルプの含有量が0.25以下では、かさ密度の測定が不可能であり、パルプの含有量が0.5~5質量部となってもかさ密度の増加は微小であり、パルプの添加によるかさ密度の増大は見込めない結果となった。