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特開2024-70360情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070360
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05B23/02 P
G05B23/02 V
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180793
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 樹
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB06
3C223BB12
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF35
3C223FF45
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】通信時のデータ量を減らすことで、効率的な消費電力の削減を行う。
【解決手段】情報処理装置100は、フィールド機器の稼働に関する情報を取得し、フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出し、モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定を行い、判定部133の所定の判定の結果に基づき、モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器の稼働に関する情報を取得する取得部と、
前記フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出する算出部と、
前記モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定をする判定部と、
前記判定部の前記所定の判定の結果に基づき、前記モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する抽出部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記フィールド機器の稼働に関する情報として、前記フィールド機器の運転データを取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記モデルと判定用モデルの比較を行い前記モデルが所定の差異条件を満たす場合に、前記所定の判定として異常有りの判定をし、
前記判定部により前記所定の判定として異常有りの判定がされた場合、運転データを送信し、
前記所定の判定として異常無しの判定がされた場合、前記多項式係数に関する情報を送信する、送信部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記抽出部により抽出された前記多項式係数に関する情報に所定の変化が生じている場合に、前記所定の判定として変化有りという判定を行い、
前記送信部は、前記判定部により前記所定の判定として異常無し、かつ変化有りの判定がされた場合に前記多項式係数に関する情報を送信する、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記判定部により前記所定の判定として、異常無しおよび変化無しの判定がされ更に所定の通信周期である場合に、前記多項式係数に関する情報を送信する、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記運転データを用いて、シグモイド関数に基づき前記モデルを算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
フィールド機器の稼働に関する情報を取得する工程と、
前記フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出する工程と、
前記モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定をする工程と、
判定部の前記所定の判定の結果に基づき、前記モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
フィールド機器の稼働に関する情報を取得する手順と、
前記フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出する手順と、
前記モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定をする手順と、
判定部の前記所定の判定の結果に基づき、前記モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや工場等の設備の診断は、フィールド機器(例えば、バルブ等の開度、圧力、流量等を測定する機器類で、以降は単に「フィールド機器」と表記)が取得する計測値や稼動状況に関する情報等に基づいて行われる。なお、フィールド機器には、その他にも様々な種類が存在し、例えば、温度、湿度、所定のガス濃度、差圧、機械振動等のデータを取得するフィールド機器が知られている。
【0003】
近年では、前述した情報に基づき設備等が故障に至る不具合を未然に検出し、些細な予兆の捕捉が求められるようになってきている。そのため、例えば、フィールド機器であるバルブ等の運転データに基づいて各種診断を行う技術として、「調節弁メンテナンスサポートシステム PLUG-IN Valstaff」が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。また、クラウドベースの診断形態として、クラウド型診断による診断項目やアルゴリズムの拡張を提供する「Dx Valve Cloud Service」が知られている(例えば、非特許文献2を参照)。さらに、フィールド機器によるデータの取得および送信のために、電池で駆動する無線センサ(例えば、スマート・バルブ・ポジショナ等)等の設備監視デバイスが知られている(例えば、非特許文献3を参照)。
【0004】
そして、より高精度かつ高分解能な状態監視の結果、これまでより多くのデータが取得とされ、通信データ量が増大する傾向がある。さらに、診断や保全のニーズは昨今急速に高まってきたことから、既存設備に対して後から設備監視のデバイス等が設置されるケースが増えており、低負荷(例えば、工事の工数が少ない、工事期間が短い等)な工事で設置可能な無線センサのニーズが高まっている。しかしながら、前述の無線センサ等においては、内蔵の電池で駆動するものが多く、データ量の増大に伴い無線通信量や無線通信の所要時間が増加する。そして、それに伴い消費電力が増加することで電池が短寿命することが問題となっている。
【0005】
そのため、従来技術では、電池寿命延長を目的とした通信周期調整として、規定時間内の動作回数または動作時間を測定し、動作周期が下限値を下回るような短い動作周期に設定されないように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、設定値の変更と動作回数に基づいて、動作モードの変更が必要な時に、動作周期が短い高速送信モードに切り替える技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-166151号公報
【特許文献2】特開2010-220005号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】調節弁メンテナンスサポートシステム PLUG-IN Valstaff(CA1-VMS200-07.pdf),[令和4年9月1日検索], インターネット<URL:https://www.azbil.com/jp/product/factory/download/catalog-spec/CA1-VMS200-07.pdf>
【非特許文献2】Dx Valve Cloud Service,[令和4年9月1日検索], インターネット<URL:https://www.azbil.com/jp/product/factory/support-training/lifecycle-support/control-valve-solution/services/dx-valve-cloud-service.html>
【非特許文献3】スマート・バルブ・ポジショナ(CA1-AVP700-04.pdf),[令和4年9月1日検索], インターネット<URL:https://www.azbil.com/jp/product/factory/download/catalog-spec/CA1-AVP700-04.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、通信時のデータ量を減らすことができず、効率的な消費電力の削減が難しい場合があった。
【0009】
例えば、フィールド機器であるバルブの動作診断を行うためにバルブの開度を測定し、測定データを無線で送信する電池駆動型デバイスでは、一般的に計測動作自体よりも無線送信の占める消費電力量が大きく、通信データ量の増加が電池寿命に与える影響が大きい場合があった。しかしながら、従来技術では、通信動作の回数に上下限を設ける技術や、急変に対する応答性を改善のために測定や通信頻度を調整する技術であるため、データ量そのものに作用しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記の課題を解決し目的を達成するために、本発明の情報処理装置は、フィールド機器の稼働に関する情報を取得する取得部と、前記フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出する算出部と、前記モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定をする判定部と、前記判定部の前記所定の判定の結果に基づき、前記モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する抽出部とを、備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、通信時のデータ量を減らすことで、効率的な消費電力の削減を容易とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る情報処理の概要の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理装置の装置構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るシグモイド関数のモデルの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るシグモイド関数に基づくバルブの動作モデルの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る判定用モデルの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るバルブの動作モデルと判定用モデルの比較の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るバルブの動作モデルと判定用モデルの比較の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係るバルブの動作モデルと判定用モデルの比較の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係るバルブの動作モデルと判定用モデルの比較の一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態の前提技術に係る情報処理手順についてのフローチャートである。
図11図11は、本実施形態に係る情報処理手順についてのフローチャートである。
図12図12は、本実施形態の応用例1に係る情報処理手順についてのフローチャートである。
図13図13は、本実施形態の応用例2に係る情報処理手順についてのフローチャートである。
図14図14は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここから、実施の形態(以降、「実施形態」)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、この実施形態の説明は、本発明に係る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを限定するものではない。
【0014】
〔1.情報処理方法の概要〕
情報処理装置100の取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。次に、情報処理装置の算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する。
【0015】
情報処理装置100の判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルの比較を行い、フィールド機器に異常が発生しているか否かを判定する。続けて、情報処理装置100の抽出部134は、判定部133の判定結果に基づき、モデルから多項式係数に関する情報を抽出する。さらに、情報処理装置100の送信部135は、判定結果に基づき送信するデータ(例えば、運転データ、抽出された多項式係数等のデータ等)を送信する。
【0016】
ここから、図1を用いて、情報処理装置100が行うフィールド機器の異常発生の判定と、運転データのモデル化と、について説明を行う。なお、以降の項目で断りの無い場合、フィールド機器の稼働に関する情報は「運転データ(バルブの単調動作に関するデータ等)」とし、バルブの動作データを取得する機器が行う情報処理(例えば、運転データの取得や、モデル化や、判定等)は情報処理装置100が行う、という前提で説明する。ただし、本実施形態における前述の項目はあくまで一例であり、限定されるものではない。
【0017】
図1では、本実施形態の情報処理装置100が取得するバルブの代表的なON/OFFの弁動作の開度に関するグラフが示されている(図1の(1)を参照)。前述のグラフは、バルブの動作と連動してバルブ開度が0%から100%まで変動する様子を表している(図1の(2)を参照)。そして、情報処理装置100は、バルブのON/OFFの弁動作に関する情報(以降、「運転データ」と表記)を、取得する(図1の(3)を参照)。
【0018】
情報処理装置100が運転データの取得対象とするバルブは、空気圧やバネ等の力で開閉し、問題等が発生していない場合はスムーズな動作が確認できる(図1の(4)および(5)を参照)。しかしながら、経年劣化等によりバルブに異常もしくは異常を予見する事象が発生した場合には、バルブの動作にも異常が発生する。
【0019】
例えば、情報処理装置100は、ある時点まではスムーズな動作を示す運転データを取得しているが(図1の(6)を参照)、バルブに何らかの異常が発生(図1の(7)を参照)すると、異常を含む運転データを取得する。具体的には、情報処理装置100は、図1の(8)に示すようなグラフを取得する。図1の(8)では、情報処理装置100が取得する運転データが、図1の(5)と形状が異なっている。このような異常発生について、情報処理装置100は、運転データをモデル化して、判定用モデルと比較を行い、異常の発生有無を判定する。そして、情報処理装置100は、判定結果に基づき送信するデータ(例えば、運転データ、抽出された多項式係数等のデータ等)を切り替えて、データ送信を行う。
【0020】
〔2.情報処理装置の構成〕
ここから、実施形態に係る情報処理装置100の構成について、図2を用いて説明する。図2に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、電源部140と、を有する。なお、図2に図示していないが、情報処理装置100は、各種操作を受け付ける入力部(例えば、タッチパネルや、キーボードや、マウス等)を備えてもよい。
【0021】
また、実施形態に係る情報処理装置100は、フィールド機器の中に実装され動作することを前提に説明を行うが、情報処理装置としての形態は限定されず、デスクトップ型パーソナルコンピュータ(Personal Computer)や、ノート型PC、仮想PC、スマートフォンやタブレット、PDA(Personal Digital Assistant)等であってよい。続いて、以下に各部の詳細な機能について記載する。
【0022】
(通信部110)
通信部110は、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、必要に応じてネットワークと有線または無線で接続され、双方向に情報の送受信を行うことができる。なお、本実施形態においては、無線通信を前提に説明を行う。
【0023】
(記憶部120)
記憶部120は、稼働情報記憶部121と、モデル記憶部122と、送信情報記憶部123と、を有する。なお、記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0024】
(稼働情報記憶部121)
稼働情報記憶部121は、取得部131により取得されたフィールド機器の稼働に関する情報(運転データ等)を記憶する。例えば、稼働情報記憶部121は、運転データとして図1の(3)に示すようなバルブの単調動作に関する情報を記憶する。なお、稼働情報記憶部121は、前述した運転データ等以外にも、フィールド機器の稼働に関する情報の範疇であれば、記憶してよい。
【0025】
(モデル記憶部122)
モデル記憶部122は、運転データ等を用いて算出部132により算出されたモデルに関する情報を記憶する。例えば、モデル記憶部122は、前述の運転データを用いてシグモイド関数に基づき算出されるモデルを記憶する。さらに、モデル記憶部122は、判定部133が判定を実施する際に用いる判定用モデルを記憶する。
【0026】
なお、モデル記憶部122は、前述した情報に限定されず、本実施形態におけるモデルの範疇の情報について、記憶してよい。例えば、モデル記憶部122は、シグモイド関数以外の数式に基づいて算出されるモデルや判定部133の判定用の情報を記憶してよい。
【0027】
(送信情報記憶部123)
送信情報記憶部123は、送信情報として、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を記憶する。なお、送信情報記憶部123は、前述した情報に限定されず、例えば、送信対象のデータの範疇に含まれる情報を、送信情報として記憶してよい。
【0028】
(制御部130)
制御部130は、取得部131と、算出部132と、判定部133と、抽出部134と、送信部135と、を有する。なお、制御部130は、プロセッサ(Processor)や、MPU(Micro Processing Unit)や、CPU(Central Processing Unit)等が、記憶部120に記憶されている各種プログラムについて、RAMを作業領域として実行することにより、実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のIC(Integrated Circuit)により実現される。
【0029】
(取得部131)
取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報を取得する。具体的には、取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。
【0030】
(算出部132)
算出部132は、フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出する。例えば、算出部132は、取得部131により取得された運転データ(例えば、バルブのON/OFFの弁動作における開度に関するデータ)を用いて、判定部133の判定のために用いるモデルを算出する。
【0031】
ここから、図3および図4を用いて、算出部132がモデルを算出する方法の一例を説明する。本事例においては、算出部132は、運転データを用いて、シグモイド関数に基づきモデルを算出する、ことを前提に説明する。そして、本事例では、バルブの開閉動作のカーブへの適合度からシグモイド関数を用いることとしている。なお、本実施形態における算出部132が運転データのモデル化に用いる手法は、前述のシグモイド関数に限定されず、モデル化対象の運転データの種別に応じて、その他モデル化に利用できる方法は利用してよい。例えば、算出部132は、-180°から180°までのSIN波等をモデルとして用いてよい。
【0032】
まず、図3を用いてシグモイド関数について説明を行う。シグモイド関数は、一般的には下記の式(1)で表現される関数である。
【0033】
【数1】
【0034】
前提として、バルブのON/OFFの弁動作は、バルブ開(ON)またはバルブ閉(OFF)の動作指示に基づくステップ応答に近い挙動を示すことが知られている。そのため、このような挙動を模すためにシグモイド関数が用いられることがある。図3に示すように、シグモイド関数に基づき算出されるモデルC1とモデルC2について、モデルC1では値が0から1に逓増していき、モデルC2では値が1から0に逓減していく。そして、モデルC1およびモデルC2の各曲線は、数式内の変数によって変動することから、モデルをバルブのON/OFFの弁動作へとフィッティングできる。
【0035】
次に、図4を用いて、シグモイド関数を用いてバルブのON/OFFの弁動作をモデル化する適用例を説明する。なお、図4のモデルC3と、モデルC4と、モデルC5と、は下記の式(2)を用いて表現できる。
【0036】
【数2】
【0037】
図4に示す各モデルは、変数がそれぞれ、モデルC3は「G=100,Offset=0,a=0.02」と、モデルC4は「G=108,Offset=3,a=0.03」と、モデルC5は「G=94,Offset=4,a=0.05」と、である。このように、関数内の変数によってモデルが変化することから、算出部132は、シグモイド関数を用いてバルブの開および閉における開度値、すなわちバルブのON/OFFの弁動作を表現することができる。
【0038】
(判定部133)
ここで、図2に戻り説明を続ける。判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定をする。具体的には、判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルの比較を行いモデルが所定の差異条件を満たす場合に、所定の判定として異常有りの判定をする。例えば、判定部133は、運転データを用いて算出部132により算出されたモデルと、予め用意する判定用モデルの比較を行い、それぞれのモデル間の乖離や誤差等を指標として、異常の発生有無を判定する。なお、乖離や誤差の判定方法について特に限定されず、前述のモデルの乖離や誤差が判定できる手法であれば、判定部133は使用してよい。例えば、判定部133は、平均二乗偏差や、平均絶対誤差等を用いて判定してよい。
【0039】
次に、判定用モデルについて、図5を用いて説明を行う。図5に示される判定用モデルC6は、バルブの理想的なON/OFFの弁動作を、前述のシグモイド関数に基づいてモデル化した判定用モデルである。判定用モデルC6は、「全開度」と、「全閉度」と、「中間開度」と、「動作時間」と、「中心時間」と、の情報を含む。なお、図5では、バルブのON/OFFの弁動作のうち、OFFの弁動作のみの判定用モデルを説明したが、判定部133は、その他の動作のモデルとして、例えば、バルブのONの弁動作の判定用モデルを用いることができる。
【0040】
判定部133は、取得部131により取得された運転データに基づき算出されるモデルがどの程度乖離するかについて、前述の指標に基づき判定する。なお、本実施形態における判定部133は、前述の判定用モデルC6に限定されず、その他の判定用モデルを用いることができる。例えば、判定部133は、フィールド機器の種類、使用期間、使用頻度、使用強度、周囲の環境等に基づいて、必要に応じて判定用モデルを作成して判定を行ってよい。
【0041】
ここから、図6から図9を用いて、バルブのON/OFFの弁動作の異常と対応するモデルの一例について、判定用モデルと比較を行いながら説明する。なお、図6から図9では、一例としてバルブのOFFの弁動作のケースを説明する。さらに、図6から図9に示すモデルについてはあくまで一例であり、実際のバルブのON/OFFの弁動作に基づくモデルは、以降に示すモデルC7からモデルC10以外の挙動を示してもよい。
【0042】
図6では、「バルブが所定の位置まで閉まらない」といった異常が発生している状況を表している。図6のモデルC7は、判定用モデルC6と比較して、バルブ開度が高い値を示している(図6の(1)を参照)。そのため、判定部133は、「バルブが所定の位置まで閉まらない」、すなわちバルブに異常有りという判定をする。なお、判定部133は、「バルブが所定の位置まで開かない」という判定についても、バルブ開度に基づいて判定を行う。
【0043】
図7では、「バルブが所定の時間内で動作しない」といった異常が発生している状況を表している。図7のモデルC8は、判定用モデルC6と比較して、バルブの中間開度に達するまでの時間である中心時間が、時系列方向に遅延していることを示している(図7の(2)を参照)。そのため、判定部133は、「バルブが所定の時間内で動作しない」、すなわちバルブに異常有りという判定をする。なお、判定部133は、「バルブが所定の時間よりも早く動作する」という異常についても、同様に中心時間の比較で判定を行う。
【0044】
図8では、「バルブ動作開始時に引っ掛かりが発生する」といった異常が発生している状況を表している。図8のモデルC9は、判定用モデルC6と比較して、動作時間の前半では高いバルブ開度を示し、その後急激にバルブ開度が低下していることを示している(図8の(3)を参照)。そのため、判定部133は、「バルブ動作開始時に引っ掛かりが発生する」、すなわちバルブに異常有りという判定をする。
【0045】
図9では、図8と同様に「バルブ動作の途中で引っ掛かりが発生する」といった異常が発生している状況を表している。図9のモデルC10は、判定用モデルC6と比較して、動作時間の途中まではバルブ開度の遁減を示し、途中からバルブ開度の低下速度が変化するという状態を示している(図8の(4)を参照)。そのため、判定部133は、「バルブ動作の途中で引っ掛かりが発生する」、すなわちバルブに異常有りという判定をする。
【0046】
さらに、判定部133は、後述の抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化が生じている場合に、所定の判定として変化有りという判定を行う。例えば、判定部133は、前述の多項式係数に関する情報に含まれる多項式係数、もしくは多項式係数と判定用データの間の誤差が、所定の範囲に無い場合や所定の閾値を超える場合等の条件を満たす場合に、所定の変化が生じていると判定する。
【0047】
(抽出部134)
ここで、図2に戻り説明を続ける。抽出部134は、判定部133の所定の判定の結果に基づき、モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する。例えば、抽出部134は、判定部133によりバルブの動作に異常無しと判定された場合には、前述のバルブの運転データを用いて算出部132により算出されたモデルから、多項式係数や次数等を抽出する。また、抽出部134は、判定部133によりバルブの動作に異常有りと判定された場合には、前述のバルブの運転データを用いて算出部132により算出されたモデルからの多項式係数や次数等の抽出を行わない。なお、抽出部134は、前述した多項式係数や次数等の抽出方法は特に限定されず、フィールド機器の種類や稼働状況等に応じて、抽出する情報を適宜設定し、抽出してよい。
【0048】
(送信部135)
送信部135は、判定部133により所定の判定として異常有りの判定がされた場合に、取得部131により取得された運転データをそのまま送信する。具体的には、送信部135は、判定部133によりバルブの動作について異常有りと判定された場合に、運転データ(例えば、バルブの稼働に関する情報等)を、多項式化等を行わず、そのまま送信する。他方、送信部135は、判定部133により所定の判定として異常無しの判定がされた場合、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報(例えば、多項式係数や次数等の情報等)を送信する。
【0049】
さらに、送信部135は、判定部133により所定の判定として異常無し、かつ変化有りの判定がされた場合に多項式係数に関する情報(例えば、多項式係数や次数等の情報等)を送信する。
【0050】
さらに、送信部135は、判定部133により所定の判定として、異常無しおよび変化無しの判定がされ更に所定の通信周期である場合に、多項式係数に関する情報(例えば、多項式係数や次数等の情報等)を送信する。
【0051】
なお、送信部135は、前述の「異常有無についての判定結果」と、「多項式係数に関する情報の変化有無についての判定結果」と、「所定の通信周期か否か」と、について、1つまたは複数を組み合わせて送信条件として用いてよい。また、本実施形態において送信部135は無線通信により各種データや情報を通信する前提で説明してきたが、有線通信により各種データや情報等を通信してもよい。
【0052】
(電源部140)
電源部140は、情報処理装置100が駆動するための電源である。電源部140は、電源として配線用差込接続器(コンセント等)から駆動電力を供給したり、電池等を用いて駆動電力を供給したりする。なお、本実施形態においては、電池等を用いて駆動電力の供給を行う前提とする。
【0053】
〔3.応用例〕
ここから、情報処理装置100が実現する応用例について説明する。なお、以下に記載する応用例は、本実施形態の情報処理装置100の有する機能で実現可能である。さらに、情報処理装置100は、必要に応じて各実施形態の機能を組み合わせて実施することができる。
【0054】
(前提技術)
前提技術は、情報処理装置100が本実施形態を実現するための前提であり、最も基本となる処理である。取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いてモデルを算出する。続けて、抽出部134は、モデルから多項式係数に関する情報を抽出する。そして、送信部135は、抽出した多項式係数に関する情報を送信する。
【0055】
(本実施形態:異常有無に基づく運転データの変換と送信)
「異常有無に基づく運転データの変換と送信」は、本実施形態における基本フローであり、異常有無の判定に基づいて送信対象のデータを変更して送信する実施形態である。取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する。そして、判定部133により異常有りと判定された場合、送信部135は、取得部131により取得されたフィールド機器の運転データ(測定データ)を、そのまま送信する。なお、判定部133により異常無しと判定された場合、送信部135は、抽出部134によりモデルから抽出された多項式係数に関する情報を送信する。
【0056】
(応用例1:異常有無および多項式係数に関する情報の変化に基づくデータ送信)
応用例1は、判定部133による異常有無の判定、および抽出された多項式係数に関する情報の変化有無の判定に基づいて、所定のデータ送信を行う実施形態(応用例1)である。まず、取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する。そして、判定部133により異常有りと判定された場合、送信部135は、運転データをそのまま送信する。
【0057】
他方、判定部133により異常無しと判定された場合、抽出部134は、モデルから多項式係数に関する情報を抽出する。さらに、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化が生じていると判定部133により判定された場合は、送信部135は、抽出した多項式係数に関する情報を送信する。一方、送信部135は、判定部133により異常無しかつ変化無しと判定された場合は、多項式係数に関する情報を送信しない。
【0058】
(応用例2:異常有無、多項式係数に関する情報の変化有無、および通信周期に基づくデータ送信)
応用例2は、異常有無、多項式係数に関する情報の変化有無、および通信周期に基づいて、所定のデータを送信する実施形態である。まず、取得部131は、フィールド機器の稼働に関する情報として、フィールド機器の運転データを取得する。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する。そして、判定部133は、算出部132により算出されたモデルに基づき、異常発生有無を判定する。そして、判定部133により異常有りと判定された場合、送信部135は、運転データをそのまま送信する。
【0059】
他方、判定部133により異常無しと判定された場合は、抽出部134は、モデルから多項式係数に関する情報を抽出する。そして、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化が生じていると判定部133により判定された場合は、送信部135は、抽出した多項式係数に関する情報を送信する。
【0060】
なお、判定部133により異常無しと判定された場合であっても、予め設定された所定の通信周期である場合には、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信する。他方で、送信部135は、判定部133により異常無しと判定された場合で、かつ所定の通信周期でも無い場合は、データ送信を行わない。
【0061】
〔4.処理手順〕
次に、各実施形態に係る情報処理装置100の情報処理手順を説明する。図10から図13は、実施形態に係る情報処理の手順についての一例を示すフローチャートである。なお、情報処理装置100の情報処理手順は、「フロー1:前提技術」と、「フロー2(本実施形態):異常有無に基づく運転データの変換と送信実施形態」と、「フロー3(応用例1):異常有無および多項式係数に関する情報の変化に基づくデータ送信」と、「フロー4(応用例2):異常有無、多項式係数に関する情報の変化有無、および通信周期に基づくデータ送信」とに分けられることから、手順についても4つに分けて説明する。
【0062】
まず、「フロー1:前提技術」について、図10を用いて説明する。取得部131は、運転データを取得する(工程S101)。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する(工程S102)。続けて、抽出部134は、算出部132により算出されたモデルから多項式係数に関する情報を抽出する(工程S103)。そして、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信し、工程を終了する(工程S104)。
【0063】
次に、「フロー2(本実施形態):異常有無に基づく運転データの変換と送信実施形態」について、図11を用いて説明する。取得部131は、運転データを取得する(工程S201)。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する(工程S202)。判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い、異常有りと判定する(工程203のYes)。その場合は、送信部135は、取得部131により取得されたフィールド機器の運転データをそのまま送信し(工程S204)、工程を終了する。
【0064】
他方、判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い異常無し、と判定する(工程203のNo)。その場合は、抽出部134は、算出部132により算出されたモデルから多項式係数に関する情報を抽出する(工程S205)。そして、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信し(工程S206)、工程を終了する。
【0065】
次に、「フロー3(応用例1):異常有無および多項式係数に関する情報の変化に基づくデータ送信」について、図12を用いて説明する。取得部131は、運転データを取得する(工程S301)。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する(工程S302)。判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い、異常有りと判定する(工程303のYes)。その場合は、送信部135は、取得部131により取得されたフィールド機器の運転データをそのまま送信し(工程S304)、工程を終了する。
【0066】
他方、判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い異常無し、と判定する(工程303のNo)。その場合は、抽出部134は、算出部132により算出されたモデルから多項式係数に関する情報を抽出する(工程S305)。さらに、判定部133は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化が生じていると判定する(工程S306のYes)。その場合は、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信し(工程S307)、工程を終了する。
【0067】
一方で、判定部133は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化が生じていないと判定する(工程S306のNo)。その場合は、送信部135は、多項式係数に関する情報の送信を行わず、工程を終了する。
【0068】
次に、「フロー4(応用例2):異常有無、多項式係数に関する情報の変化有無、および通信周期に基づくデータ送信」について、図13を用いて説明する。取得部131は、運転データを取得する(工程S401)。次に、算出部132は、取得部131により取得された運転データを用いて、モデルを算出する(工程S402)。判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い、異常有りと判定する(工程403のYes)。その場合は、送信部135は、取得部131により取得されたフィールド機器の運転データをそのまま送信し(工程S404)、工程を終了する。
【0069】
他方、判定部133は、算出部132により算出されたモデルと判定用モデルとの比較を行い異常無し、と判定する(工程S403のNo)。その場合は、抽出部134は、算出部132により算出されたモデルから多項式係数に関する情報を抽出する(工程S405)。
【0070】
さらに、判定部133は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化有りと判定する(工程S406のYes)。その場合は、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信し(工程S407)、工程を終了する。
【0071】
また、判定部133は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化無しと判定する(工程S406のNo)。そして、送信部135は、予め設定された所定の通信周期であると判定する(工程S408のYes)。その場合は、送信部135は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報を送信し(工程S407)、工程を終了する。
【0072】
他方で、判定部133は、抽出部134により抽出された多項式係数に関する情報に所定の変化無し判定する(工程S406のNo)。そして、送信部135は、所定の通信周期でないと判定する(工程S408のNo)。その場合は、送信部135は、多項式係数に関する情報の送信を行わず、工程を終了する。
【0073】
〔4.効果〕
従来技術では、設備類の動作は日常的に繰り返されるため、運用状況によっては膨大な動作回数にのぼり、経年劣化が進んでいく。そのため、早い段階で異常を予見または検知するために、フィールド機器の高品質な診断が求められるようになってきている。
【0074】
そして、設備類の診断において、動作に関するデータや時間等のデータに対し高い分解能を実現し、精密な動作トレンドを再現するために、データ量が増加する傾向がある。その結果、従来技術においては、フィールド機器において計測動作よりも無線送信の占める消費電力量が大きく、データ量の増加が寿命を圧迫する場合があった。しかしながら、データ量を削減するために計測や測定のサンプリング点数を減らすと診断の品質低下、誤診断のリスクが高まるという問題があった。
【0075】
そこで、情報処理装置100は、フィールド機器の稼働に関する情報を取得し、フィールド機器の稼働に関する情報を用いて、モデルを算出し、モデルと判定用モデルの比較に基づき、所定の判定を行い、判定部133の所定の判定の結果に基づき、モデルを用いて多項式係数に関する情報を抽出する。その結果、本実施形態によれば、通信時のデータ量を減らすことで、効率的な消費電力の削減を容易とする、という効果を奏する。
【0076】
情報処理装置100は、算出部132が運転データをモデル化し、抽出部134がモデルから多項式係数や次数を抽出することにより、データ量を圧縮する。それにより、情報処理装置100は、送信するデータ量の削減と、それに伴う消費電力量の削減により電源(電池)の寿命を延ばす、という効果を提供する。
【0077】
具体的には、フィールド機器が取得する大多数のデータは、正常に稼働した際の情報であるため、異常が発生していない場合、同様に稼働する状態を示すデータの繰り返しとなる。しかしながら、従来技術では、前述したようなデータについても転送されるため、結果としてデータ量および消費電力量が増大し、電源(電池)の寿命を短くする場合があった。そこで、情報処理装置100は、算出部132がモデル化したモデルに基づき、判定部133が異常の発生有無を判定して異常無しの場合、圧縮されたデータ(例えば、抽出された多項式係数等)を送信する。それにより、情報処理装置100は、送信するデータ量の削減と、それに伴う消費電力量の削減により電源(電池)の寿命を延ばす、という効果を提供する。
【0078】
反対に、情報処理装置100は、必要に応じてモデル化しない運転データ等を送信する。それにより、情報処理装置100は、異常発生時に正確な状況の把握を可能とする、という効果を提供する。具体的には、情報処理装置100は、異常有りと判定された場合に、取得された運転データをそのまま送信することにより、異常に関する情報損失を防ぎ、異常発生時に正確な状況の把握を可能とする、という効果を提供する。
【0079】
また、情報処理装置100は、異常が発生していない、もしくは多項式係数に関する情報に変化が無い場合においても所定の通信周期でデータ送信を行うことにより、デバイスの生存確認を可能とする、という効果を提供する。
【0080】
加えて、情報処理装置100は、設備類の異常発生についての知見を併せて提供できる。例えば、図8および図9に示すバルブの開閉動作の際のひっかかり事象の発生に関するモデルについては、同じひっかかり事象であってもモデルに現れるカーブは異なっている。そのため、特異的な異常であれば、モデル化した情報からも推定することができ、結果として送信するデータ量の削減と、それに伴う消費電力量の削減により、電源(電池)の寿命を延ばす、という効果を提供する。
【0081】
また、情報処理装置100が提供する送信データ量の削減は、無線通信のみならず有線通信にも適用可能である。近年、情報化の進展により、多様な装置類がデータを送受信しているため、通信のコスト等(例えば、通信時間、配線、処理能力等)が増大しているという問題がある。そのため、情報処理装置100は、算出部132の運転データのモデル化と、判定部133の異常有無の判定と、抽出部134の多項式係数や次数等の抽出、という機能を適用することで、有線通信であってもデータ量を削減することができる、という効果を提供する。
【0082】
〔5.ハードウェア構成〕
本実施形態に係る情報処理装置100は、例えば、図14に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図14は、情報処理装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、補助記憶装置1400、通信I/F(インタフェース)1500、入出力I/F(インタフェース)1600が、バス1800により接続された形態を有する。
【0083】
CPU1100は、ROM1300または補助記憶装置1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0084】
補助記憶装置1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信I/F1500は、所定の通信網NWを介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網NWを介して他の機器へ送信する。CPU1100は、入出力I/F1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、および、キーボードやマウス等の入出力装置1700を制御する。CPU1100は、入出力I/F1600を介して、入出力装置1700からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータについて入出力I/F1600を介して入出力装置1700へ出力する。
【0085】
例えば、コンピュータ1000が本実施形態に係る情報処理装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。
【0086】
〔6.その他〕
前述の実施形態および変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0087】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0088】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0089】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0090】
以上、実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で、本実施形態について実施をすることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 情報処理装置
110 通信部
120 記憶部
121 稼働情報記憶部
122 モデル記憶部
130 制御部
131 取得部
132 算出部
133 判定部
134 抽出部
135 送信部
140 電源部
1000 コンピュータ
1100 CPU
1200 RAM
1300 ROM
1400 補助記憶装置
1500 通信I/F
1600 入出力I/F
1700 入出力装置
1800 バス
C1,C2,C3,C4,C5,C7,C8,C9,C10 モデル
C6 判定用モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14