(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007037
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】スダチ飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/02 20060101AFI20240111BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20240111BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240111BHJP
【FI】
A23L2/02 B
C12P1/00
A23L2/38 J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108200
(22)【出願日】2022-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】302069882
【氏名又は名称】土屋 章
(71)【出願人】
【識別番号】512178259
【氏名又は名称】マニス・コスメティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143096
【弁理士】
【氏名又は名称】山岸 忠義
(72)【発明者】
【氏名】土屋 章
(72)【発明者】
【氏名】北尾 一聖
【テーマコード(参考)】
4B064
4B117
【Fターム(参考)】
4B064DA10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LG15
4B117LG24
4B117LP05
4B117LP11
4B117LP13
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】スダチの果皮を利用した新しい飲料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
スダチ飲料の製造方法は、スダチの果皮をもみ殻とともに発酵させることにより、第1液状物質を得るA工程と、第1液状物質に水および米ぬかを混合して、曝気および攪拌を実施することにより、第2液状物質を得るB工程と、第2液状物質の上澄み液を採取するC工程とを順に備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スダチの果皮をもみ殻とともに発酵させることにより、第1液状物質を得るA工程と、
前記第1液状物質に水および米ぬかを混合して、曝気および攪拌を実施することにより、第2液状物質を得るB工程と、
前記第2液状物質の上澄み液を採取するC工程と
を順に備える、スダチ飲料の製造方法。
【請求項2】
前記C工程の前に、前記第2液状物質に対してオゾン殺菌処理を施す工程をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記A工程にかける時間が、30日以上であり、
前記B工程にかける時間が、10日以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記C工程の後に、果汁を添加する工程をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
スダチの果皮を発酵させてなる液状物質の上澄み液を含有する、スダチ飲料。
【請求項6】
スダチの果汁をさらに含有する、請求項5に記載のスダチ飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スダチ飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スダチの果皮に含まれるスダチチンには、血糖上昇抑制作用や血中脂質改善作用、肥満抑制作用などがあると報告されており、スダチの果皮を有効活用した健康飲食品が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、スダチの果皮や果汁搾り粕を凍結乾燥および粉末化した健康食品やサプリメントが記載されている。
【0003】
しかしながら、スダチの果皮は、一般的には、まだまだ廃棄されることが多く、スダチの果皮の再利用が進んでいない。そこで、特許文献1に記載の粉末状の健康食品以外にも、スダチの果皮を利用した新たな健康商品の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スダチの果皮を利用した新しい飲料およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、下記項の発明を含む。
項[1]の発明は、スダチの果皮をもみ殻とともに発酵させることにより、第1液状物質を得るA工程と、前記第1液状物質に水および米ぬかを混合して、曝気および攪拌を実施することにより、第2液状物質を得るB工程と、前記第2液状物質の上澄み液を採取するC工程とを順に備えるスダチ飲料の製造方法を含む。
項[2]の発明は、項[1]に加えて、前記C工程の前に、前記第2液状物質に対してオゾン殺菌処理を施す工程をさらに備える製造方法を含む。
項[3]の発明は、項[1]または[2]に加えて、前記A工程にかける時間が、30日以上であり、前記B工程にかける時間が、10日以上である、製造方法を含む。
項[4]の発明は、項[1]~[3]のいずれか一項に加えて、前記C工程の後に、果汁を添加する工程をさらに備える製造方法を含む。
項[5]の発明は、スダチの果皮を発酵させてなる液状物質の上澄み液を含有するスダチ飲料を含む。
項[6]の発明は、項[5]に加えて、スダチの果汁をさらに含有するスダチ飲料を含む。
【発明の効果】
【0007】
スダチの果皮を利用した新しい飲料(スダチ果皮発酵飲料)およびその製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
本発明の第1の実施形態にかかるスダチ飲料の製造方法は、スダチ果皮発酵飲料を製造する方法であって、第1発酵工程(A工程)と、第2発酵工程(B工程)と、殺菌工程と、採取工程(C工程)とを順に備える。以下、各工程を説明する。
【0009】
[第1発酵工程]
第1発酵工程では、スダチの果皮をもみ殻とともに発酵させる。
【0010】
発酵は、好ましくは、自然発酵である。具体的には、スダチ果皮ともみ殻との混合物を所定の容器(タンクなど)に入れて、室外または室内において所定時間放置する。これにより、もみ殻に含まれる好熱性細菌(例えば、納豆菌)によって、種菌の増殖やスダチ果皮の発酵が生じる。なお、自然発酵を促進するために、発酵前の混合物に対して、例えば70~80℃で数時間加熱を実施してもよい。
【0011】
第1発酵工程にかける時間は、例えば、30日以上、好ましくは、90日以上である。第1発酵工程の時間が上記下限を下回ると、発酵が十分でなく、後述する第2発酵工程が機能しなくなるおそれが生じる。第1発酵工程の時間の上限に制限はないが、発酵の飽和具合および製造効率の観点から、例えば、2年以下とすればよい。
【0012】
スダチ果皮ともみ殻との混合割合は限定的でなく、スダチ果皮1kgに対して、もみ殻を、例えば、0.1リットル以上、好ましくは、1リットル以上、また、例えば、100リットル以下、好ましくは、10リットル以下混合すればよい。
【0013】
スダチ果皮およびもみ殻は、発酵を促進させるために、必要に応じて細かく破砕していてもよい。また、スダチ果皮およびもみ殻以外にも、例えば、他の果皮の機能性成分を追加するために、他の柑橘類の果皮をさらに添加していてもよい。
【0014】
また、スダチ果皮に加えて、スダチの砂じょうを添加してもよいが、砂じょうは通常そのまま食品となるため、破棄されるスダチ果皮を有効利用する観点から、砂じょう部分は含まないことが好ましい。
【0015】
第1発酵工程により、第1液状物質が得られる。第1液状物質は、非透明の茶色の半固形状(ペースト状)である。
【0016】
[第2発酵工程]
第2発酵工程では、第1液状物質に水および米ぬかを混合し、続いて、曝気および攪拌する。
【0017】
第1液状物質と水との混合割合は限定的でないが、第1液状物質1kgに対して、水の量は、例えば、1リットル以上、好ましくは、5リットル以上であり、また、例えば、100リットル以下、好ましくは、50リットル以下である。第1液状物質と米ぬかとの混合割合は限定的でないが、第1液状物質1kgに対して、米ぬかの量は、例えば、0.11リットル以上、好ましくは、0.5リットル以上であり、また、例えば、10リットル以下、好ましくは、5リットル以下である。
【0018】
第2発酵工程では、第1液状物質、水および米ぬかの混合物に対して、曝気および攪拌を所定時間実施する。曝気および攪拌は、連続的に所定時間実施してもよく、また、断続的に実施してもよいが、均一なスダチ果皮発酵飲料を得るため、連続して実施することが好ましい。
【0019】
第2発酵工程にかける時間、すなわち、曝気および攪拌の開始から終了までの期間は、例えば、10日以上、好ましくは、20日以上である。第2発酵工程の時間が上記下限を下回ると、発酵が十分でなく、飲料として不適格になるおそれがある。第2発酵工程の時間の上限に制限はないが、発酵の飽和具合および製造効率の観点から、例えば、100日以下、好ましくは、50日以下とすればよい。
【0020】
第2発酵工程では、上記混合物以外にも、例えば、発酵を促進するために、おからなどの添加物をさらに混合してもよい。本発明では、おからなどの添加物を混合すると、匂いなどが発生するおそれがあるため、第1液状物質に対して、水および米ぬかのみを混合することが好ましい。
【0021】
第2発酵工程により、第2液状物質が得られる。第2液状物質は、有色透明の液状物質である。
【0022】
[殺菌工程]
殺菌工程では、第2液状物質に対してオゾン殺菌処理を実施する。
【0023】
オゾン殺菌処理は、例えば、公知または市販のオゾン殺菌装置を用い、当該オゾン殺菌装置から発生するオゾンが第2液状物質の液面に接触するように、第2液状物質の近傍に配置すればよい。これにより、加熱処理による殺菌と比較して、第2液状物質の変質を抑制しながら、雑菌を減少させることができる。
【0024】
[採取工程]
採取工程では、第2液状物質の上澄み液を採取する。
【0025】
例えば、殺菌工程の後、第2液状物質を他の容器に移し替え、所定時間(例えば、7日以上)静置する。これにより、澱や不純物などの固形物が第2液状物質の底に沈殿する。その後、第2液状物質の上澄み液を採取する。また、その他、遠心分離などで不要物を沈殿させて、採取してもよい。上澄み液は、例えば、全量に対して90体積%以上の量を採取することができる。
【0026】
これにより、スダチ由来の飲料として、スダチ果皮発酵飲料(スダチ果皮酵素飲料)が製造される。スダチ果皮発酵飲料は、ほぼ無味無臭である。
【0027】
本発明の製造方法によれば、スダチ果皮を発酵させて得られる新しい飲料を製造することができる。この飲料は、スダチ果皮を発酵ないし分解して得られるため、スダチ果皮に含まれるスダチチンなどを多量に含んでおり、スダチチンによる効能(例えば、体重増加抑制作用など)を有することができる。また、本来であれば破棄される果皮、もみ殻、米ぬかなどを有効利用できるため、環境に良い。このスダチ果皮発酵飲料は、そのまま飲料として使用してもよく、また、他の飲食料への添加物として使用してもよい。
【0028】
2.第2実施形態
第2実施形態の製造方法では、第1実施形態の製造方法に加えて、採取工程の後に、スダチ果皮発酵飲料に果汁を添加する果汁添加工程をさらに備える。
【0029】
果汁としては、味付けしたい果汁に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは、スダチ果汁を添加することが好ましい。これにより、スダチ果皮発酵飲料が、スダチの味わいおよび香りを有することになり、スダチ果皮発酵飲料に対して消費者がイメージする飲料(スダチ味の飲料)の味わいと合致させることができる。
【0030】
これにより、果汁入りのスダチ果皮発酵飲料が製造される。具体的には、この飲料は、スダチ果皮発酵飲料(すなわち、スダチの果皮を発酵させてなる液状物質の上澄み液)おおよび果汁を含有しており、好ましくは、スダチ果皮発酵飲料およびスダチ果汁を含有する。果汁の含有割合は、飲料全量に対して、例えば、1体積%以上、20体積%以下である。
【実施例0031】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されない。
【0032】
<実施例1>
スダチ果皮をもみ殻と混合して、3カ月間自然発酵させて、茶色の半固形状の液状物質(第1液状物質)を得た。次いで、第1液状物質10kgに対して、水100Lおよび米ぬか4Lを混合した後、エアポンプによる曝気および攪拌を3週間実施した。これにより、茶色透明の液状物質(第2液状物質)を得た。第2液状物質を、貯蓄タンクに移し替えてオゾン殺菌を2週間実施した。次いで、別の貯蓄タンクに移し替えて、2週間静置した後、全体の90体積%の上積み液を採取して、スダチ果皮発酵飲料を得た。
【0033】
得られたスダチ果皮発酵飲料を、金魚がいる水槽に0.5体積%となるように滴下して、7日間観察したところ、金魚に異常は観察されなかった。また、スダチ果皮発酵飲料を口に含んでみたところ、無味無臭であった。
【0034】
<比較例1>
曝気をしなかった以外は、実施例1と同様に実施して、比較例1のスダチ飲料を得た。このスダチ飲料は、土っぽい匂いを発しており、口に含んでみたところ、えぐ味を感じたため、飲料として不適格であった。