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  • 特開-有機汚泥処理装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070378
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】有機汚泥処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/13 20190101AFI20240516BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180827
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000185961
【氏名又は名称】太平洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】梶 芳寿
(72)【発明者】
【氏名】宮野 哲行
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕太
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA07
4D059AA30
4D059BD13
4D059BJ14
4D059CA14
4D059CB06
4D059CB09
4D059CB19
4D059CC04
4D059DA66
4D059EA06
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】有機汚泥処理装置を安定的に自動制御する。
【解決手段】セメント焼成装置1から予熱原料R1を分取する分取装置5と、有機汚泥Sを分取装置で分取された予熱原料R2と混合し、予熱原料の顕熱を用いて有機汚泥を乾燥させる混合装置8とを備える有機汚泥処理装置の制御方法であって、混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物Mの温度を温度計10により測定し、その温度が一定となるように、分取装置5による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥Sの供給量を制御する。混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度の目標値と測定値の偏差に応じ、分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥Sの供給量をステップ状に変化させてもよい。分取装置としてケーシングの上半分が除去されたスクリューコンベヤを用い、スクリューコンベヤの回転数を変化させることによって予熱原料分取量を変化させてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成装置から予熱原料を分取する分取装置と、有機汚泥供給装置から供給される有機汚泥を前記分取装置で分取された予熱原料と混合し、該予熱原料の顕熱を用いて前記有機汚泥を乾燥させる混合装置とを備える有機汚泥処理装置の制御方法であって、
前記混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度を温度計により測定し、その温度が一定となるように、前記分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥供給量を制御することを特徴とする有機汚泥処理装置の制御方法。
【請求項2】
前記混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度の目標値と温度計により測定した測定値の偏差に応じ、前記分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥供給量をステップ状に変化させることを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥処理装置の制御方法。
【請求項3】
前記分取装置は、ケーシングの上半分が除去されたスクリューコンベヤであって、該スクリューコンベヤの回転数を変化させることによって前記予熱原料分取量を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機汚泥処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の有機汚泥を処理する装置の制御方法に関し、特に有機汚泥処理装置を安定的に自動制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場から排出される下水汚泥等の有機汚泥は、陸上での埋め立て等が困難になりつつあるため、燃料として有効利用する方法が種々提案されている。そこで、本出願人は、特許文献1において、セメント焼成装置の最下段サイクロンを除くプレヒータサイクロンから予熱原料を分取し、有機汚泥を分取した予熱原料と混合し、予熱原料の顕熱を用いて乾燥させてセメント焼成装置の仮焼炉又はセメントキルンの窯尻部から仮焼炉までの間のダクトに供給する有機汚泥の処理方法等を提案した。
【0003】
特許文献1に記載の発明によれば、有機汚泥を予熱原料の顕熱を用いて乾燥させ、乾燥汚泥を予熱原料と共に仮焼炉又はセメントキルンの窯尻部から仮焼炉までの間のダクトに供給することで、乾燥汚泥を燃料代替として有効利用できる。また、乾燥汚泥の熱量は仮焼炉等でセメント原料の脱炭酸用熱量として効率的に寄与するため、設備コスト、並びにセメント生産効率やクリンカ生産量の低下を最小限に抑えながら有機汚泥を処理することができる。
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、比較的低温である乾燥汚泥を、高温部である仮焼炉又はセメントキルンの窯尻部から仮焼炉までの間のダクトに戻すため若干の熱ロスが発生する問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、さらに、セメント焼成装置の仮焼炉から予熱原料を分取する分取装置と、有機汚泥を分取装置で分取された予熱原料と混合し、この予熱原料の顕熱を用いて有機汚泥を100℃以上で乾燥させる混合装置と、混合装置から排出された乾燥汚泥と予熱原料の混合物をセメント原料工程に供給する供給装置とを備える有機汚泥の処理装置を発明した(国際特許出願No.PCT/JP2022/016013)。
【0006】
上記発明によれば、有機汚泥の乾燥物と分取した予熱原料の混合物は120℃以上となり臭気の問題がないためセメント焼成装置の原料供給系統に戻すことができる。よって、前記混合物をセメントキルンの窯尻部から仮焼炉までの間のダクトに戻した場合に発生する熱ロスを削減することができると共に、仮焼炉から分取した800℃程度の高温の予熱原料によって有機汚泥を乾燥させるため、乾燥に使用する予熱原料の量も削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2019/193938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記国際特許出願No.PCT/JP2022/016013に記載の発明においても、有機汚泥の水分がばらつくなどの理由で混合装置の安定運転を維持することが容易でない場合があり、オペレータが混合装置を監視する必要があるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記文献に記載の有機汚泥処理装置を安定的に自動制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、セメント焼成装置から予熱原料を分取する分取装置と、有機汚泥供給装置から供給される有機汚泥を前記分取装置で分取された予熱原料と混合し、該予熱原料の顕熱を用いて前記有機汚泥を乾燥させる混合装置とを備える有機汚泥処理装置の制御方法であって、前記混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度を温度計により測定し、その温度が一定となるように、前記分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥供給量を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度が一定となるように分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥供給量を制御することで、乾燥後の予熱原料と有機汚泥の混合物の水分がばらつくことがなく、略々一定で推移する。そのため、混合装置の安定運転を維持することが可能となり、オペレータが混合装置を常時監視する必要がなくなり、省力化が実現できる。
【0012】
上記制御方法において好適なのは、前記混合装置から排出された予熱原料と有機汚泥の混合物の温度の目標値と温度計により測定した測定値の偏差に応じ、前記分取装置による予熱原料分取量又は/及び有機汚泥供給量をステップ状に変化させる方法である。
【0013】
また、前記予熱原料分取量は、前記分取装置としてケーシングの上半分が除去されたスクリューコンベヤを用い、該スクリューコンベヤの回転数を変化させることによって変化させることができる。また、前記有機汚泥供給量は、例えば有機汚泥供給装置のポンプ回転数を変化させることなどで変化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、有機汚泥処理装置を安定的に自動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る制御方法を適用する有機汚泥処理装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明に係る有機汚泥処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明に係る制御方法におけるステップ制御に用いるグラフである。
図4】本発明に係る制御方法の試験例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための一形態として、有機汚泥供給装置から供給される有機汚泥の供給量を一定とし、分取装置によって分取される予熱原料の分取量を変化させる場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る制御方法を適用する有機汚泥の処理装置を備えたセメント焼成装置を示し、このセメント焼成装置1は、セメントキルン2、仮焼炉3、プレヒータ4等の一般的なセメント焼成装置の構成要素に加え、仮焼炉3を下降する予熱原料R1からその一部を分取する分取装置5と、分取した予熱原料R2を有機汚泥供給装置6から供給される有機汚泥Sに混合しながら有機汚泥Sを乾燥させる混合装置8等を備える。分取装置5と混合装置8で有機汚泥Sの処理装置が構成される。尚、プレヒータ4は、4段又は5段のサイクロンを有するが、図1では、上から3段目又は4段目のサイクロン4C1、4C2の上方に存在する装置の図示を省略している。有機汚泥Sとは、下水汚泥、製紙汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等をいう。
【0018】
分取装置5は、例えば、仮焼炉3を水平方向に貫通し、ケーシングの上半分(円筒状ケーシングの上側半分)が除去されて上方が開放されたスクリューコンベヤを用いることができる。
【0019】
混合装置8は、水平軸8aに多数のブレード8bが取り付けられ、水平軸8aを回転させることでブレード8bも回転するパグミル等であって、有機汚泥Sと分取した予熱原料R2の混合乾燥と搬送を同時に行う。この混合装置8は上述のものに限定されず、有機汚泥Sを分取した予熱原料R2の顕熱で有機汚泥Sを乾燥させることができる他の種類の装置を用いることもできる。混合装置8の出口シュートにはロータリーバルブ9が設けられる。
【0020】
図示を省略するが、分取装置5と混合装置8との間には、スクリューコンベヤ等の輸送機やダンパが設けられる。また、混合装置8には、混合装置8からのダスト、臭気及び水蒸気を含む排ガスGを最下段サイクロン(図示例では最下段サイクロン4A2)のガス出口部に導入する導入装置が設けられる。
【0021】
次に、上記セメント焼成装置1における有機汚泥処理方法及び有機汚泥処理装置の制御方法について、図1及び図2を中心に参照しながら説明する。
【0022】
セメント焼成装置1の運転時に、有機汚泥供給装置6を介して有機汚泥Sを混合装置8に供給すると共に、仮焼炉3を下降する予熱原料R1の一部を分取装置5で分取し、分取した予熱原料R2を混合装置8に導入して有機汚泥Sを乾燥させる。
【0023】
混合装置8における有機汚泥Sと分取した予熱原料R2の混合割合を、有機汚泥S(水分を除いた固形分):分取した予熱原料R2=1:3~1:4(重量比)に調整することが好ましい。これによって、安定的かつ短時間に水分を蒸発させることができる。また、有機汚泥Sの可燃分を不燃物である予熱原料R2で希釈することで粉じん爆発の危険性を低減し、さらに、粘性の高い有機汚泥のハンドリング性を改善することができる。
【0024】
混合装置8において、有機汚泥Sと予熱原料R2を好ましくは1~5分間程度混合撹拌しながら搬送し、分取した予熱原料R2の顕熱によって有機汚泥Sを加熱して乾燥させる。有機汚泥Sの乾燥物と分取した予熱原料R2の混合物Mをセメント焼成装置1の原料供給系統に戻す。尚、分取されなかった予熱原料R1は、通常通り仮焼炉3、最下段サイクロン4A1、4A2で脱炭酸された後、セメントキルン2で焼成されてセメントクリンカが生成する。
【0025】
予熱原料R1の分取量は、分取装置5のスクリューコンベヤの回転数を変更することで即時に調整することができ、有機汚泥Sの供給量が変化した場合等にも予熱原料R1の分取量を即時に調整して対応することができる。具体的には以下のように制御することで混合装置8を安定的に自動制御することができる。
【0026】
本実施形態では、混合装置8の出口シュートのロータリーバルブ9から排出された有機汚泥Sと予熱原料R2の混合物Mの温度Tpを温度計(熱電対温度計等)10により測定し、温度Tpが一定(例えば120℃)になるように制御装置11で分取装置5の回転数をステップ制御にて調整する。分取装置5の回転数はインバータ制御によって可変速で変更される。
【0027】
図2のステップS1において、ロータリーバルブ9から排出された混合物Mの温度の測定値Tpと目標値Tsの偏差DVを算出し、ステップS2において、図3に示すグラフを用い、偏差DVから分取装置5の回転数変更量Hzを求める。例えば、偏差DVが「15℃」の場合には回転数変更量Hzは「-2Hz」となる。
【0028】
次に、ステップS3において、現在回転数Hzpに上記回転数変更量「-2Hz」を加え、新たな分取装置5の回転数Hznを算出し、算出された回転数Hznで分取装置5を運転する。ステップS4において、T1=15分が経過したか否かを判断し、15分が経過した場合にはステップS1に戻り、上記動作を繰り返す。
【0029】
次に、上記制御方法の試験例について説明する。
【0030】
混合装置8の出口シュートのロータリーバルブ9から排出された有機汚泥Sと予熱原料R2の混合物Mの温度Tsを120℃に設定し、上記要領で分取装置5の回転数を制御した。
【0031】
図4は、上記制御を行った際のロータリーバルブ9から排出された混合物Mの温度の測定値Tpと分取装置(スクリューコンベヤ)5の回転数の推移を示す。測定値Tpのスケールは左側、分取装置5の回転数のスケールは右側に示す。
【0032】
同図より、混合物Mの温度の測定値Tpと目標値Tsの偏差DVに応じて分取装置5の回転数がステップ状に変化し、混合物Mの温度の測定値Tpが目標値Tsの近くを推移していることが判る。
【0033】
尚、上記実施形態では、混合装置8から排出された予熱原料R2と有機汚泥Sの混合物Mの温度の目標値Tsと測定値Tpの偏差DVに応じて分取装置5による予熱原料R1の分取量をステップ状に変化させたが、混合装置8から排出された予熱原料R2と有機汚泥Sの混合物Mの温度が一定となるように分取装置5による予熱原料R1の分取量を制御するのであれば他の方法を用いることができる。
【0034】
また、上記実施形態では分取装置5による予熱原料R1の分取量を変化させたが、混合物Mの温度が一定となるように有機汚泥供給装置6による有機汚泥Sの供給量を変化させてもよい。さらに、前記予熱原料R1の分取量と前記有機汚泥Sの供給量の両方を変化させてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では仮焼炉3を下降する予熱原料R1の一部を分取したが、プレヒータ4のいずれかのサイクロンから予熱原料を分取して有機汚泥Sの乾燥に用いることもできる。
【0036】
さらに、分取装置5としてケーシングの上半分が除去されたスクリューコンベヤを用いたが、ダンパ等を利用した他の装置を用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 セメント焼成装置
2 セメントキルン
3 仮焼炉
4 プレヒータ
5 分取装置
6 有機汚泥供給装置
8 混合装置
9 ロータリーバルブ
10 温度計
11 制御装置
G 排ガス
M 混合物
R1、R2 予熱原料
S 有機汚泥
図1
図2
図3
図4