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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007038
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】めっき治具
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
C25D17/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108210
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】594061403
【氏名又は名称】日本ラック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 宏行
(57)【要約】
【課題】電気めっき時における電気抵抗を小さくし、良好なめっきの実現に資するめっき治具を提供すること。
【解決手段】めっき対象であるワークWを一対のクランプアーム1,2によって挟持可能に構成しためっき治具Jであって、一対のクランプアーム1,2の一方は、導電ブロック10と、導電ブロック10を覆う絶縁ブロック11と、一対のクランプアーム1,2によってワークWを挟持する挟持状態のときにワークWの一面側に接触する一面側接触部4とを有し、一面側接触部4は前記導電ブロック10の一部を露出させて構成してある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき対象であるワークを一対のクランプアームによって挟持可能に構成しためっき治具であって、
一対のクランプアームの一方は、導電ブロックと、導電ブロックを覆う絶縁ブロックと、一対のクランプアームによってワークを挟持する挟持状態のときにワークの一面側に接触する一面側接触部とを有し、
一面側接触部は前記導電ブロックの一部を露出させて構成してあるめっき治具。
【請求項2】
前記絶縁ブロックを、インサート成形又は2色成形によって設けてあるか、複数の絶縁部材を接合して設けてある請求項1に記載のめっき治具。
【請求項3】
前記一対のクランプアームの他方に、前記挟持状態のときにワークの他面側に接触する他面側接触部を設けてあり、
他面側接触部は、少なくとも前記挟持状態のときに前記導電ブロックにおける前記一面側接触部以外の箇所に電気的に接続された状態となるように構成してある請求項1または2に記載のめっき治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリント基板等の板状やシート状を呈するワークをめっき液に浸漬し、電気めっきを施す際、そのワークを保持するために用いられるめっき治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているめっき装置は、図18(A)及び(B)に示すように、めっき治具110を構成する一対のクランプアーム120,130によって挟持した板状のワークWをめっき液中に浸漬し、通電バー101からめっき治具110を介してワークWに給電することによりワークWにめっき処理を行うように構成されている。
【0003】
めっき治具110の一対のクランプアーム120,130の先端部121,131は、ワークWに接触する通電板140を除き、樹脂コーティング122、132により絶縁される。これにより、めっき治具110自体が補助極として作用しなくなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-7396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記めっき治具110では、ワークWへの給電は、通電バー101よりめっき治具110のクランプアーム130、ボルト・ナット141、通電板140を介して行われるのであり、ボルト・ナット141や通電板140の断面積の小ささが電気抵抗を増大させる原因となる。
【0006】
また、上記めっき治具110では、その全体が露出する通電板140が補助極(補助陰極)として作用し、めっきに支障を来す懸念があり、この懸念は、通電板140の小型化、つまりは通電板140の断面積を大きくしないようにする動機付けともなる。
【0007】
さらに、上記めっき治具110では、絶縁のために樹脂コーティング122,132を行うが、一般に樹脂コーティング122、132の厚みは高々300ミクロン程度であり、めっき治具110の使用に伴って剥がれる等の破損が生じ易いと考えられ、このような破損が生じた場合も、その破損箇所から露出したクランプアーム120,130の先端部121,131が補助極として作用し、めっきに支障を来し得る。
【0008】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、電気めっき時における電気抵抗を小さくし、良好なめっきの実現に資するめっき治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るめっき治具は、めっき対象であるワークを一対のクランプアームによって挟持可能に構成しためっき治具であって、一対のクランプアームの一方は、導電ブロックと、導電ブロックを覆う絶縁ブロックと、一対のクランプアームによってワークを挟持する挟持状態のときにワークの一面側に接触する一面側接触部とを有し、一面側接触部は前記導電ブロックの一部を露出させて構成してある(請求項1)。
【0010】
上記めっき治具において、前記絶縁ブロックを、インサート成形又は2色成形によって設けてあるか、複数の絶縁部材を接合して設けてあってもよい(請求項2)。
【0011】
上記めっき治具において、前記一対のクランプアームの他方に、前記挟持状態のときにワークの他面側に接触する他面側接触部を設けてあり、他面側接触部は、少なくとも前記挟持状態のときに前記導電ブロックにおける前記一面側接触部以外の箇所に電気的に接続された状態となるように構成してあってもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、電気めっき時における電気抵抗を小さくし、良好なめっきの実現に資するめっき治具が得られる。
【0013】
すなわち、本願の各請求項に係る発明のめっき治具では、少なくとも一方のクランプアームを介してワークに給電することができ、絶縁ブロックで覆う導電ブロックの断面積を適宜に大きくすることにより、電気めっき時における電気抵抗を小さくすることが容易となる。
【0014】
また、本発明のめっき治具では、導電ブロックを絶縁ブロックで覆い、導電ブロックが露出する箇所を最小化することにより、導電ブロックが補助極として作用し難くすることが容易であり、ひいては良好なめっきの実現にも資するものとなる。
【0015】
請求項2に係る発明のめっき治具では、絶縁ブロックをコーティングによって形成するのではなくインサート成形、2色成形や複数の絶縁部材の接合によって設けるため、絶縁ブロックの一部又は全部に適宜の厚み(例えば300ミクロン超の厚み)や強度を持たせることは容易であり、絶縁ブロックに適宜の厚みや強度を持たせることにより絶縁ブロックの破損防止を図ることができる。ここで、絶縁ブロックが破損すると、その破損箇所から導電ブロックが露出して補助極として作用し、めっきに支障を来す恐れがあるが、本発明のめっき治具では絶縁ブロックの破損防止を図ることができるので、この点からも良好なめっきが実現されることになる。
【0016】
請求項3に係る発明のめっき治具では、一方のクランプアームの一面側接触部からだけでなく、他方のクランプアームの他面側接触部からもワークに給電でき、ワークの両面側から給電することにより、一層良好なめっきを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施の形態に係るめっき治具の一面側及び他面側からの斜視図である。
図2】前記めっき治具の正面図である。
図3】前記めっき治具を備えたラックの使用状態を示す正面図である。
図4】(A)及び(B)は、前記めっき治具の一方のクランプアームの一面側及び他面側からの斜視図である。
図5】前記一方のクランプアームの一面側からの分解斜視図である。
図6】前記一方のクランプアームの他面側からの分解斜視図である。
図7】(A)及び(B)は、前記めっき治具の他方のクランプアームの一面側及び他面側からの斜視図である。
図8】前記他方のクランプアームの分解斜視図である。
図9】(A)及び(B)は、閉状態及び開状態の一対のクランプアームの要部を示す説明図である。
図10】前記他方のクランプアームを付勢する構造を示す説明図である。
図11】(A)及び(B)は、前記一方のクランプアームの導電ブロックの分解斜視図及び斜視図である。
図12】(A)及び(B)は、前記一方のクランプアームの受け側複合ブロックの導電ブロックを実線で示し、これを覆う絶縁ブロックを半透明(灰色)で示す正面図及び平面図である。
図13】(A)及び(B)は、前記受け側複合ブロックの導電ブロックを実線で示し、これを覆う絶縁ブロックを半透明(灰色)で示す底面図及び斜視図である。
図14】(A)及び(B)は、前記他方のクランプアームの導電ブロックの分解斜視図及び斜視図である。
図15】(A)及び(B)は、前記他方のクランプアームの導電ブロックを実線で示し、これを覆う絶縁ブロックを半透明(灰色)で示す正面図及び底面図である。
図16】(A)及び(B)は、前記他方のクランプアームの導電ブロックを実線で示し、これを覆う絶縁ブロックを半透明(灰色)で示す平面図及び右側面図である。
図17】(A)及び(B)は、一面側接触部又は他面側接触部を含む給電ブロックと遮蔽サポートパーツとを示す分解斜視図及び斜視図である。
図18】(A)及び(B)は、従来のめっき治具を備えためっき装置の要部を示す斜視図及び縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0019】
図1(A)及び(B)、図2に示すめっき治具Jは、例えば、図3に示すように、フレーム状のラックR(図3にはその一部のみを概略的に示してある)に複数(図示例では8個)取り付けられ、板状やシート状を呈するワークWをその上下両側から挟持して保持するように構成してある。
【0020】
図2に示すように、めっき治具Jは一対のクランプアーム1,2を具備し、クランプアーム2はクランプアーム1に対して軸体3(図1(B)も参照)回りに回動可能であり、これら一対のクランプアーム1,2の開閉によってワークWを挟持可能としてある。なお、図2では、分かり易さのために、クランプアーム1を白色で、クランプアーム2を灰色で示してある。また、本例では、クランプアーム1はラックRに固定されて受け側となり、クランプアーム2はラックRに固定されずに回動する押さえ側となる。
【0021】
詳しくは、一方のクランプアーム1の一端側に、ワークWの一面側に接触可能な一面側接触部4(図4(A)も参照)を設け、他方のクランプアーム2の一端側であって一面側接触部4に対応する位置に、ワークWの他面側に接触可能な他面側接触部5(図7(B)も参照)を設けてある。そして、図9(B)に示すように、クランプアーム2を開方向に回動させて相互に離隔させた両接触部4,5の間にワークWを進入させ、この状態でクランプアーム2を閉方向(逆方向)に回動させて両接触部4,5を接近させ、その状態を維持することにより(図9(A)参照)、両接触部4,5によってワークWを挟持することができる。なお、図9(A)及び(B)では、便宜上、クランプアーム1,2の一部のみを示してある。
【0022】
また、本例のワークWは硫酸銅めっき(電気めっき)処理を行うプリント基板であり、ラックRは、めっき対象とするワークWをめっき治具Jによって上記のように保持した状態でめっき液に浸漬した際に、各めっき治具J(の接触部4,5)を介してワークWに給電可能に構成されている。
【0023】
以上がめっき治具Jの概略であり、その具体的な構造について以下に説明する。
【0024】
まず、クランプアーム1は、図4(A)及び(B)に示す構造を有し、図5図6にも示すように、クランプボディ6及び受け側複合ブロック7を具備する。
【0025】
クランプボディ6は、図5図6に示すように、略長板状の基部8と、基部8の二つの長辺から延びる二つの側壁部9とを有する縦断面略U型の例えば金属製の部材である。
【0026】
受け側複合ブロック7は、図11(B)に示す導電ブロック10の略全体を、絶縁材料(例えば合成樹脂)からなる絶縁ブロック11で覆って図5図6に示す構造を持つように構成してある(図12(A)及び(B)、図13(A)及び(B)参照)。
【0027】
導電ブロック10は、例えばステンレス等の導電材料からなり、図11(A)及び(B)に示すように、厚みが略一定のベースプレート12に、二つの貫通孔13aを有する略直方体状の第1給電ブロック13、段付きプレート状の第2給電ブロック14、細ブロック状の第3給電ブロック15を溶接等により接合し、各ブロック13~15がベースプレート12の一面側(図面では上面側)に突出した状態となるように構成してある。なお、ベースプレート12には、各給電ブロック13~15を適宜に接合可能とするために、その長手方向の一端側に取付穴12aを、他端側に取付用段部12bを、また、取付用段部12bから一端側寄りの位置に取付穴12cを設けてある。
【0028】
さらに、ベースプレート12には、取付穴12c(第3給電ブロック15)の位置付近から短手方向両側に突出する突出部12dを設けてある。
【0029】
対して、絶縁ブロック11は、導電ブロック10の各給電ブロック13~15(の一面側)と二つの突出部12dのみを露出させ、他の部位は完全に覆うように構成してある(図5図6図12及び図13参照)。斯かる絶縁ブロック11は、例えば金型内にインサート品としての導電ブロック10をセットし、その周りに樹脂の充填を行うインサート成形により、導電ブロック10の周囲に設けることが考えられる。しかし、これに限らず、例えば2色成形によって導電ブロック10を覆う絶縁ブロック11を設けるようにしてもよいし、切削加工等によって得られる複数の絶縁部材を接合することにより、導電ブロック10を覆う絶縁ブロック11を設けるようにしてもよい。
【0030】
ここで、突出部12dは、図3に示すように、隣り合う二つのめっき治具J間に配される補助陰極(補助極)Hが電気的に接続される部位であり、遮蔽カラー16(図1(A)、図5参照)によって着脱自在に(露出しないように)覆うことができる。遮蔽カラー16は、めっき治具Jの外部(外面)において、突出部12dに補助陰極Hを固定するためのボルト、ナット(図示していない)と突出部12dとが接触したり、突出部12dと補助陰極Hとが接触したりすると、その接触箇所にめっきが析出するので、こうした接触が生じないように遮蔽し、めっき析出を防止・軽減する目的で用いる部品であり、絶縁材料によって形成してある。
【0031】
そして、本例では、クランプボディ6と受け側複合ブロック7とを計八つのねじ部材17(図5図6参照)を用いた締結によって連結一体化するのであり、そのために、クランプボディ6の二つの側壁部9には、それぞれ長手方向に間隔をあけて四つのねじ穴9aを設けてある。これに対し、受け側複合ブロック7の絶縁ブロック11は、その他面側(絶縁ブロック11が内包する導電ブロック10から離れる方向)に突出する四つの突出脚11aを有し、各突出脚11aには貫通孔11bが二つずつ設けられ、計八つの貫通孔11bはクランプボディ6の計八つのねじ穴9aに対応する位置にある。
【0032】
つまり、クランプボディ6と受け側複合ブロック7とを連結一体化するに際しては、クランプボディ6の二つの側壁部9の外側に受け側複合ブロック7の絶縁ブロック11の四つの突出脚11aを配し、各貫通孔11bの外側から差し込んだねじ部材17をそれぞれねじ穴9aにねじ込めばよい。
【0033】
次に、クランプアーム2は、図7(A)及び(B)に示す構造を有し、図8にも示すように、クランプレバー18及び押さえ側複合ブロック19を具備する。
【0034】
押さえ側複合ブロック19は、図14(B)に示す導電ブロック20の略全体を、絶縁材料(例えば合成樹脂)からなる絶縁ブロック21で覆って図8に示す構造を持つように構成してある(図15(A)及び(B)、図16(A)及び(B)も参照)。
【0035】
導電ブロック20は、例えばステンレス等の導電材料からなり、図14(A)及び(B)に示すように、厚みが略一定のベースプレート22に、段付きプレート状の給電ブロック23を溶接等により接合し、給電ブロック23がベースプレート22の一面側(図面では下面側)に突出した状態となるように構成してある。
【0036】
また、ベースプレート22は、図14(A)に示すように、給電ブロック23が接合される略矩形板状の基部22aと、この基部22aの両端(長手方向両端)からそれぞれ延びる一対のブリッジ22bと、一対のブリッジ22b間に設けられた略円板状の通電部22cとを有する。
【0037】
対して、絶縁ブロック21は、導電ブロック20の給電ブロック23とベースプレート22の通電部22cのそれぞれ一面側の一部のみを露出させ、他の部位は一対のサポートパーツ24とで完全に覆うように構成してある(図7図8図15及び図16参照)。
【0038】
ここで、本例の絶縁ブロック21は、例えば金型内にインサート品としての導電ブロック20をセットし、その周りに樹脂の充填を行うインサート成形により、導電ブロック20の周囲に設けるのであるが、この際、導電ブロック20の周囲への樹脂の充填を適正に行うために、一対のブリッジ22bを宙に浮かせた状態にして支えることのできる一対のサポートパーツ24を用い、この絶縁材料よりなるサポートパーツ24ごとインサート成形するようにしてある。すなわち、樹脂で覆う必要のない給電ブロック23の一面側の部位(他面側接触部5)と、一対のサポートパーツ24のそれぞれ一面側に設けた突起24a(図7(B)参照)との計3点で導電ブロック20全体を支持し、導電ブロック20の他の部位は宙に浮かせた状態でインサート成形を行うことにより、導電ブロック20の周囲への樹脂の充填を適正に行うことができる。
【0039】
なお、前述の図11(B)に示す導電ブロック10では、絶縁ブロック11で覆わない給電ブロック13~15で導電ブロック10全体を支持し、導電ブロック10の他の部位を宙に浮かせた状態でインサート成形することにより、導電ブロック10の周囲への樹脂の充填を適正に行えるので、サポートパーツ24に相当する部材は不要である。
【0040】
また、絶縁ブロック21も、前述の絶縁ブロック11と同様に、例えば切削加工等によって得られる複数の絶縁部材を接合することにより、導電ブロック20を覆う状態となるように設けることが可能である。
【0041】
そして、本例では、図8に示すように、クランプレバー18と押さえ側複合ブロック19とをシャフト25によって連結一体化するのであり、そのために、クランプレバー18の一端側に貫通孔18aを設けてある。これに対し、押さえ側複合ブロック19の絶縁ブロック21において導電ブロック20のベースプレート22の基部22a(図14(A)参照)を覆う基部側ブロック部21Aは、ベースプレート22の一対のブリッジ22b及び通電部22c(図14(A)参照)を覆う先端側ブロック部21Bよりも肉厚としてあり、その他面側(他面側接触部5と反対側)に、間隔をおいて配した一対の軸受体21cの相互に対応する位置に貫通孔21dを設けてある。
【0042】
つまり、クランプレバー18と押さえ側複合ブロック19とを連結一体化するに際しては、押さえ側複合ブロック19の一対の軸受体21cの間にクランプレバー18の一端部を差し込んだ状態で、一対の軸受体21cの各貫通孔21d及びクランプレバー18の貫通孔18aにシャフト25を挿入し、シャフト25の両端側にある環状溝25aにそれぞれEリング26(抜け止め手段の一例)を係合させればよい。このとき、クランプレバー18において貫通孔18a付近に設けた突起18bが基部側ブロック部21Aに当接し(図2も参照)、クランプレバー18がシャフト25回りに回動することが制限される。
【0043】
上記のように構成される一対のクランプアーム1,2は、軸体3を用いて連結される(図2参照)。本例では、図10に示すように、クランプボディ6の基部8に設けた開口8aにクランプレバー18を通し、かつ、このクランプレバー18の外面とクランプボディ6の内面とにスプリング(付勢手段の一例)27を適宜に沿わせた状態で、クランプボディ6の一対の側壁部9のそれぞれ中央に設けた貫通孔9b(図5も参照)と、クランプレバー18の中央の貫通孔18cと、スプリング27とに軸体3を通し、軸体3の両端側にある環状溝3aにそれぞれEリング28(抜け止め手段の一例)を係合させることにより、一対のクランプアーム1,2を連結できるようにしてある。そして、このように構成した本例では、スプリング27によってクランプアーム2は接触部4,5(図2参照)が接近する閉方向に常時付勢され、これにより、接触部4,5によるワークWの挟持が可能となっている。
【0044】
ここで、本例では、図1(B)に示すように、クランプボディ6の基部8の外面側に固定レバー29を設けてあり、この固定レバー29と、クランプレバー18においてクランプボディ6の外側に突き抜けた部分である可動レバー18d(図10も参照)とに対し、両レバー29、18dを挟み持つ力を加え、スプリング27による付勢に抗して可動レバー18dを動かすことにより、クランプレバー2を回動させ、接触部4,5を離隔させることができる。
【0045】
以上の構成を有するめっき治具Jを、図3に示すようにラックRに取付け、かつ、めっき治具JによってワークWを保持した状態で電気めっきを行う際、ラックR側からワークWへの給電は、クランプアーム1の第1給電ブロック13(図1(A)、図11(B)参照)、ベースプレート22(図11(A)参照)、第2給電ブロック14(に形成される一面側接触部4)を介して行われる。すなわち、第1給電ブロック13の一面側(図1(A)では上面側)はラックR側に電気的に接続されるのであり、この際、第1給電ブロック13が補助陰極として機能しないように、その周囲に絶縁性シール部材(例えばシリコンゴム製のОリング)30(図1(A)参照)を設けてめっき液が第1給電ブロック13に接触しないようにしてある。
【0046】
また、図9(B)に示すように、接触部4,5が相互にある程度離隔していると、クランプアーム1の第3給電ブロック15はクランプアーム2の通電部22cから離隔しているが、接触部4,5が相互に近接してワークWを挟持するときには、図9(A)に示すように、第3給電ブロック15は通電部22c(図15(B)も参照)に接触する。つまり、上記の電気めっきを行う際、ラックR側からワークWへの給電は、クランプアーム1の第1給電ブロック13(図1(A)、図11(B)参照)、ベースプレート22(図11(A)参照)、第3給電ブロック15(図11(B)、図9参照)、通電部22c(図14(B)参照)、ベースプレート22(図14(B)参照)、給電ブロック23(に形成される他面側接触部5)を介しても行われる。
【0047】
ここで、ワークWの厚みが変わると、ワークWを挟持する接触部4,5間の距離も変わることになるが、これに伴い、第3給電ブロック15と通電部22cとの距離が大きく変わると、ワークWの厚みによっては接触部4,5がワークWを挟持するときに第3給電ブロック15と通電部22cとが接触せず、他面側接触部5からワークWへの給電が行われなくなってしまう。しかし、本例では、一対のブリッジ22bで通電部22cを支持し(図14(A)参照)、かつ、絶縁ブロック21における先端側ブロック部21Bを基部側ブロック部21Aよりも肉薄にして弾性変形し易くしてあるので(図8参照)、接触部4,5間の距離の変化をその弾性変形によって吸収し、ワークWの厚みがある程度変わっても第3給電ブロック15が通電部22cに接触する状態を維持するのが容易となっている。
【0048】
加えて、図12(A)及び(B)に示すように、第3給電ブロック15の先端の平面部15aを矩形状とし、その周囲に傾斜部15bを設け、傾斜部15bを通電部22cに接触可能としてあるので、接触部4,5間の距離が多少変化し、第3給電ブロック15に対する通電部22cの角度が多少変化しても、傾斜部15bと通電部22cとの接触面積を大きいままに維持することが容易となっている。
【0049】
ところで、図11(B)に示すように、一面側接触部4は第2給電ブロック14の一部によって構成してあり、具体的には、図17(A)に示すように、第2給電ブロック14の先端面側に一対の一面側接触部4を突設してある。ここで、一面側接触部4の側面が露出していると、その部分が補助陰極として機能する懸念がある。そのため、本例では、「日」の字型の絶縁材料からなる遮蔽サポートパーツ31で一対の一面側接触部4を囲むようにしてある(図17(A)及び(B)参照)。そして、この遮蔽サポートパーツ31を設置した状態で絶縁ブロック11をインサート成形することにより、一面側接触部4付近と絶縁ブロック11との一体性を高めることもできる。この一体性が高まるという効果は、一対の一面側接触部4を一繋ぎにした場合よりも、図示例のように離して設け、これらを囲むように遮蔽サポートパーツ31を設ける場合の方が高まることを本発明者らは確認している。このことは、図7(B)に示すように、給電ブロック23の一部によって構成した他面側接触部5についても同様である。
【0050】
以上説明したように、本例のめっき治具Jでは、導電ブロック10を覆う絶縁ブロック11と、一対のクランプアーム1,2によってワークWを挟持する挟持状態のときにワークWの一面側に接触する一面側接触部4とを有し、一面側接触部4は導電ブロック10の一部を露出させて構成してあるので、少なくとも一方のクランプアーム1を介してワークWに給電することができ、絶縁ブロック11で覆う導電ブロック10の断面積を適宜に大きくすることにより、電気めっき時における電気抵抗を小さくすることが容易となる。
【0051】
また、本例のめっき治具Jでは、導電ブロック10を絶縁ブロック11で覆い、導電ブロック10が露出する箇所を最小化することにより、導電ブロック10が補助極として作用し難くすることが容易であり、ひいては良好なめっきの実現にも資するものとなる。
【0052】
また、本例のめっき治具Jでは、絶縁ブロック11をコーティングによって形成するのではなくインサート成形や複数の絶縁部材の接合によって設けるため、絶縁ブロック11に適宜の厚みや強度を持たせることは容易であり、絶縁ブロック11に適宜の厚みや強度を持たせることにより絶縁ブロック11の破損防止を図ることができる。ここで、絶縁ブロック11が破損すると、その破損箇所から導電ブロック10が露出して補助極として作用し、めっきに支障を来す恐れがあるが、本例のめっき治具Jでは絶縁ブロック11の破損防止を図ることができるので、この点からも良好なめっきが実現されることになる。
【0053】
また、本例のめっき治具Jでは、他方のクランプアーム2に、前記挟持状態のときにワークWの他面側に接触する他面側接触部5を設けてあり、他面側接触部5は、少なくとも前記挟持状態のときに導電ブロック10における一面側接触部4以外の箇所に電気的に接続された状態となるように構成してあるので、一方のクランプアーム1の一面側接触部4からだけでなく、他方のクランプアーム2の他面側接触部5からもワークWに給電でき、ワークWの両面側から給電することにより、一層良好なめっきを実現することができる。
【0054】
また、電気めっきの際にめっき治具Jにめっきが析出すると、その析出箇所の近辺においてワークWのめっき厚にばらつきが生じ易くなるとともに、めっき治具Jに析出するめっきは無駄となり、結果的に排除する(薬品等で剥離させる)必要も生じるところ、本例のめっき治具Jでは、通電される導電部品(導電ブロック10、20)の露出を最小限に抑えつつ、外部に露出する他の部品は導電ブロック10と絶縁してあるか、絶縁材料によって構成してあることにより、めっき治具Jへのめっき析出を回避しているので、めっき効率が良好となり、ワークWにおけるめっきの面均性(めっき厚の均一性)の向上をも期待することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0056】
図1の例では、ワークWを上下両側から挟持するようにめっき治具Jを設けてあるが、これに限らず、例えばワークWを左右両側から挟持するようにめっき治具Jを設けてあってもよい。
【0057】
図11(A)及び(B)の例では、ベースプレート12とは別体に設けた第1~第3給電ブロック13~15をベースプレート12に接合一体化するようにしてあるが、これに限らず、例えばベースプレート12が当初から第1~第3給電ブロック13~15の一部または全部に相当する部位を有するように成形してあってもよい。
【0058】
図11(A)及び(B)に示すように、ベースプレート12の中央に大きな開口12eを設けてあるのは、上述の説明から明らかなように、クランプレバー18を通すためである。そして、例えば、クランプレバー18がベースプレート12を貫かないようにすることも考えられ、この場合、開口12eを設けないようにすることができる。
【0059】
電気めっきの際、クランプアーム1の第3給電ブロック15とクランプアーム2の通電部22cとが接触することは上述の通りであるが、上記の例では、図11(B)に示すように第3給電ブロック15を突出させ、図14(B)に示すように通電部22cは突出させていない。しかし、これに限らず、例えば、通電部22cを第3給電ブロック15に向かって延びるように突出させてもよく、この場合、第3給電ブロック15の突出量を小さくするか突出させないようにすることもでき、また、インサート成形のためのサポートパーツ24を不用とすることも考えられる。
【0060】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1 クランプアーム
2 クランプアーム
3 軸体
3a 環状溝
4 一面側接触部
5 他面側接触部
6 クランプボディ
7 受け側複合ブロック
8 基部
8a 開口
9 側壁部
9a ねじ穴
9b 貫通孔
10 導電ブロック
11 絶縁ブロック
11a 突出脚
11b 貫通孔
12 ベースプレート
12a 取付穴
12b 取付穴
12c 取付用段部
12d 突出部
12e 開口
13 第1給電ブロック
13a 貫通孔
14 第2給電ブロック
15 第3給電ブロック
15a 平面部
15b 傾斜部
16 遮蔽カラー
17 ねじ部材
18 クランプレバー
18a 貫通孔
18b 突起
18c 貫通孔
18d 可動レバー
19 押さえ側複合ブロック
20 導電ブロック
21 絶縁ブロック
21A 基部側ブロック部
21B 先端側ブロック部
21c 軸受体
21d 貫通孔
22 ベースプレート
22a 基部
22b ブリッジ
22c 通電部
23 給電ブロック
24 サポートパーツ
24a 突起
25 シャフト
25a 環状溝
26 Eリング
27 スプリング
28 Eリング
29 固定レバー
30 シール部材
31 遮蔽サポートパーツ
101 通電バー
110 めっき治具
120 クランプアーム
121 先端部
122 樹脂コーティング
130 クランプアーム
131 先端部
132 樹脂コーティング
140 通電板
141 ボルト・ナット
H 補助陰極
J めっき治具
R ラック
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18