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特開2024-70381超音波駆動装置、およびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070381
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】超音波駆動装置、およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/12 20060101AFI20240516BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H02N2/12
H02N2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180836
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 良一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智明
(72)【発明者】
【氏名】露木 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 豊
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA12
5H681BB02
5H681BC08
5H681DD22
5H681DD92
(57)【要約】
【課題】摩耗粉を効率良く排出でき、安定駆動が可能な超音波駆動装置を提供すること。
【解決手段】超音波駆動装置は、振動素子を有する振動体と、前記振動体に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を備え、前記凸部は、前記被駆動部との接触部において開口するとともに、非接触部に連通する孔を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子を有する振動体と、
前記振動体に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を備え、
前記凸部は、前記被駆動部との接触部において開口するとともに、非接触部に連通する孔を有する、
超音波駆動装置。
【請求項2】
前記孔と接続して直線状に延びる凹部を、さらに有し、
前記凹部は、前記被駆動部との前記非接触部において開口する、
請求項1に記載の超音波駆動装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記凸部の振動方向に沿って配置される、
請求項2に記載の超音波駆動装置。
【請求項4】
前記孔が伸びる方向、および、前記凹部が伸びる方向にそれぞれ直交する方向において、前記凹部の幅は、前記孔の径より大きい、
請求項3に記載の超音波駆動装置。
【請求項5】
前記孔は、前記接触部から前記振動体に向かう方向において径が漸増する、
請求項1に記載の超音波駆動装置。
【請求項6】
前記接触部から前記振動体に向かう方向の平面視において、
前記孔は、前記凸部の振動方向に沿って短軸を有する楕円形状である、
請求項1に記載の超音波駆動装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記凸部に設けられた孔である、
請求項2に記載の超音波駆動装置。
【請求項8】
振動素子を有する超音波駆動装置により駆動される移動ステージと、
前記移動ステージに取り付けられる工具と、を有する、
ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波駆動装置、および当該超音波駆動装置を備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の圧電素子を備え、弾性体からなる振動体に楕円振動を生じさせて被駆動体を駆動する超音波駆動装置が知られている。
例えば、特許文献1には、被駆動体と接触する突起部の接触面に、凹凸形状を設けた超音波駆動装置が開示されている。当該文献によれば、突起部の弾性体若しくは移動部との接触面を凹凸形状と成したことによって、突起部の弾性体若しくは移動部との接触面が摩耗したとしても、圧着部に摩耗した粉材が挟まることがなくなる、としている。また、凹凸形状は、板幅方向に平行で、且つ所定の間隔で設けられたスリット溝によって形成されて成る、という記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-169582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の超音波駆動装置では、突起部と被駆動面との間に摩耗粉が介在してしまい、駆動が不安定になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る一態様の超音波駆動装置は、振動素子を有する振動体と、前記振動体に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を備え、前記凸部は、前記被駆動部との接触部において開口するとともに、非接触部に連通する孔を有する。
【0006】
本願に係る一態様のロボットシステムは、振動素子を有する超音波駆動装置により駆動される移動ステージと、前記移動ステージに取り付けられる工具と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る超音波駆動装置の概要を示す平面図。
図2】超音波駆動装置の斜視図。
図3】圧電アクチュエーターの平面図。
図4】振動体の駆動時における動作態様図。
図5】比較例の凸部を用いて所定長さの駆動を行った際の摩耗粉の発生態様図。
図6】比較例の凸部を用いて狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様図。
図7図6の移動軌跡の拡大図。
図8】実施形態1の凸部の正面図。
図9図8のb-b断面における断面図。
図10】凸部の背面図。
図11】凸部により狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様図。
図12】実施形態2に係る凸部の断面図。
図13】凸部の背面図。
図14】実施形態3に係る凸部の正面図。
図15】凸部の断面図。
図16】凸部の背面図。
図17】実施形態3の凸部により狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様図。
図18】実施形態4に係る凸部の正面図。
図19】凸部の断面図。
図20】実施形態5に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図。
図21】移動ステージの概略構成を示す透過平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
***超音波駆動装置の概要***
図1は、実施形態1の超音波駆動装置の概要を示す平面図である。図2は、超音波駆動装置の斜視図である。まず、図1図2を用いて、超音波駆動装置100の概略構成について説明する。
【0009】
本実施形態の超音波駆動装置100は、Y軸方向に延在する角柱状の被駆動体160を、振動体20の凸部71によって押圧することにより、Yプラス方向、Yマイナス方向に移動させる圧電駆動型のモーターである。なお、図1は基本構成の説明図であるため、1つの超音波駆動装置100による駆動態様を図示しているが、実際に用いる際には、被駆動体160の延在方向に沿って、複数の超音波駆動装置100を連ねて駆動力を高める多連構成とすることが多い。また、被駆動体160は、被駆動部であり、円板状のローターであっても良い。ローターの場合は、超音波駆動装置100をローターの円周に沿って配置することにより、ローターを回転駆動する。
【0010】
超音波駆動装置100は、圧電アクチュエーター28、付勢部45、固定部50などから構成される。
圧電アクチュエーター28は、振動源となる圧電素子を有する振動体20や、振動体20を保持する保持部10などから構成される。振動体20は、長方形状をなしており、その長辺方向をX軸、短辺方向をY軸としている。また、振動体20の厚さ方向をZ軸としている。振動体20のXマイナス方向の短辺には、被駆動体160に駆動力を伝達する突起部である凸部71が設けられている。なお、圧電アクチュエーター28の詳細は後述する。
【0011】
付勢部45は、圧電アクチュエーター28の厚み方向における上下に配置された、一対の平行バネ44a,44b(図2)から構成される。
図1に示すように、平行バネ44aの一端は、固定部50と一体となっており、平行バネ44aの他端は、圧電アクチュエーター28の保持部10と接続している。
平行バネ44aには、Y軸プラス方向に延在する板バネ41,42が設けられており、被駆動体160に対して凸部71を押し付ける方向に圧電アクチュエーター28を付勢する。板バネ41は、振動体20の後端側に設けられた複数本の板バネであり、板バネ42は、振動体20の先端側に設けられた複数本の板バネである。なお、圧電アクチュエーター28の背面に設けられる平行バネ44bも、平行バネ44aと同じ構成である。
【0012】
図2に示すように、平行バネ44a,44bは、圧電アクチュエーター28を上下から挟み込んで設けられている。これにより、圧電アクチュエーター28は、上下の平行バネ44a,44bによりXマイナス方向に付勢され、凸部71が被駆動体160に押付けられる。
固定部50は、基材48、および、平行バネ44a,44bなどから構成される。固定部50は、ベースとなる基材48の上下に、平行バネ44aと、平行バネ44bとを重ね合わせて一体化されている。そして、2ヶ所のネジ穴38で、被装着部(図示省略)にネジ止め固定される。また、圧電アクチュエーター28における固定部50とは反対側の端部は、保持部10の上下に、平行バネ44aと、平行バネ44bとが重ね合わせて一体化されている。
【0013】
図1に戻る。
このような構成の超音波駆動装置100は、複数本の板バネ41,42の復元力により、凸部71が被駆動体160を押圧した状態で、振動体20の屈曲運動による回転力を印加する。なお、振動体20の駆動時における凸部71の振動方向は、Y軸の延在方向に沿った方向となる。Y軸の延在方向に沿った方向を、Yプラス/マイナス方向ともいう。
【0014】
***圧電アクチュエーターの概要***
図3は、圧電アクチュエーターの平面図である。
図3に示すように、保持部10は略矩形状をなしており、好適例として、シリコン基板を用いている。なお、好適例では、付勢部45、固定部50もシリコン基板を用いるが、これに限定するものではなく、同等の物性を有する材質であれば良く、例えば、金属を用いても良い。
振動体20は、保持部10内において長方形状に区画された部位であり、表面側には、駆動用の振動素子である圧電素子1~5が配置されている。詳しくは、振動体20は、略矩形をなした保持部10に設けられた3つの切欠き部24~26により、略長方形に区画されている。そして、長方形の長辺の略中央に残された一対の支持腕21a,21bにより、保持部10と接続している。また、支持腕21a,21bを通り、Yプラス方向に延在する線分を中心線27とする。
【0015】
振動体20の一方の長辺に沿って、長方形の圧電素子1,2が配置されている。圧電素子1と圧電素子2とは、中心線27に対して線対称の配置となっている。
同様に、振動体20の他方の長辺に沿って、長方形の圧電素子3,4が配置されている。圧電素子3と圧電素子4とは、中心線27に対して線対称の配置となっている。
そして、振動体20の中央には、圧電素子1と圧電素子2とを繋げた長さの長方形の圧電素子5が設けられている。換言すれば、振動体20は、振動素子としての圧電素子1~5を有する。
【0016】
図3では、図示を省略しているが、圧電素子1~5の上面には、圧電素子に駆動信号を供給するための電極、及び、配線が設けられている。振動体20において対角に位置する、圧電素子1と圧電素子4には、電気的に同じ配線が接続される。同様に、対角に位置する、圧電素子2と圧電素子3にも、電気的に同じ配線が接続される。
圧電素子5には、上記配線とは異なる配線が接続される。なお、圧電素子1~5の下層側には、共通の共通配線が設けられている。共通配線は、好適例において、グランド電位に接続している。
【0017】
図4は、振動体の駆動時における動作態様の一例を示す図であり、図3に対応している。まず、圧電素子1,4に供給される交流の駆動信号を第1駆動信号とする。圧電素子2,3には、第1駆動信号と180度位相を異ならせた第2駆動信号が供給される。そして、圧電素子5には、第1駆動信号、第2駆動信号のいずれとも位相を異ならせた第3駆動信号が供給される。例えば、第3駆動信号として、第1駆動信号から90度位相を異ならせた信号が供給される。
【0018】
圧電素子1~5に対して、それぞれ上記駆動信号を供給することにより、図4に示すように、振動体20が長辺方向に伸縮振動しつつ、短辺方向に屈曲振動する。換言すれば、圧電素子1~5は、基板の面において面内振動する。そして、これらの振動が合成されると、例えば、凸部71の先端が矢印で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動をする。このような凸部71の楕円運動によって、被駆動体160がYプラス方向に移動する。換言すれば、凸部71は、振動体20に配置され、被駆動体160に駆動力を伝達する。なお、上記の第1~第3駆動信号を用いた駆動方法に限定するものではなく、凸部71の先端が楕円運動可能な駆動方法であれば良い。
また、時計回りと、反時計回りの楕円運動を周期的に繰り返すことにより、被駆動体160をYプラス/マイナス方向に交互に微移動させて、狭い移動範囲で高速微動させることもできる。この微動は、例えば、ロボットのアーム部にインクジェット印刷ヘッドを装着し、対象物に印刷するロボットシステムにおける移動ステージに用いることができる。具体的には、移動ステージにより印刷軌道のズレを補正することができる。なお、移動ステージの詳細は、後述する。
【0019】
また、振動体20は、複数枚のシリコン基板を積層した構成であっても良い。例えば、圧電素子1~5を備えたもう1枚のシリコン基板を備え、当該シリコン基板を、図3の振動体20の背面に貼り合せた2枚構成とすることであっても良い。この際、2枚が積層された振動体の表裏面に、それぞれの圧電素子1~5が配置されることが好ましい。これによれば、駆動力の増加に加えて、積層された振動体において、圧電素子の屈曲に伴う反りを相殺することができる。また、2枚積層構成の振動体を、複数枚積層しても良い。
【0020】
***比較例の突起部の構成と課題***
図5は、比較例の凸部を用いて所定長さの駆動を行った際の摩耗粉の発生態様を示す図である。図6は、比較例の凸部を用いて狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様を示す図である。図7は、図6の移動軌跡の拡大図である。
【0021】
まず、図5に示す振動体20には、比較例の凸部90が取付けられている。凸部90は、アルミナ製の半球状の突起部を用いる。凸部90のサイズは、例えば、約φ1mmとする。なお、これに限定するものではない。
図5は、凸部90を備えた振動体20により、被駆動体160を長さd1の範囲で繰返し移動させた場合における摩耗粉の発生態様を示している。長さd1は、例えば、数mmから数cmの長さである。
【0022】
図5の下段は、上段の被駆動体160をXプラス方向から観察したP視における被駆動体160を示しており、凸部90の先端の接触部91の移動軌跡を示している。接触部91は、駆動時において凸部90が被駆動体160と接触する当接部である。
接触部91の移動軌跡は、図5の下段に示すように、長さd1に沿った長円状となる。ここで、往復移動により生じた摩耗粉98は、長円の外周縁に沿って発生する。
【0023】
図6は、凸部90を備えた振動体20により、被駆動体160を長さd2の範囲で繰返し移動させた場合における摩耗粉の発生態様を示している。長さd2は、例えば、数μmから数百μmの長さである。なお、このような1mmに満たない狭い所を往復移動させる駆動を狭所微動ともいう。
図7は、図6における接触部91の移動軌跡の拡大図である。図7に示すように、狭所微動においては、常に接触部91が被駆動体160と接触する重複部92が発生する。このため、狭所微動では、長円の外周縁に沿って発生する摩耗粉98に加えて、重複部92で発生し、その場に留まる摩耗粉99が生じる。
【0024】
この接触部91で発生した摩耗粉99は、常に接触部91で押しつぶされて擦り続けられる。この摩耗粉99を接触部91の外に排出できない場合、摩擦熱や押圧力によって摩耗粉99が変質して摩擦力が上下したり、鏡面のように磨かれて摩擦力が低下するなど、摩擦駆動力の変動因子となってしまい、駆動力や、位置精度などに影響を与える虞があった。また、特許文献1のように接触部にスリット溝を設けた場合、溝が埋まってしまうと突起部と被駆動面との間に摩耗粉が介在してしまい、駆動が不安定になる虞があった。
【0025】
***本実施形態の突起部の構成***
図8は、実施形態1の凸部の正面図である。図9は、図8のb-b断面における断面図である。図10は、凸部の背面図である。
ここでは、本実施形態の凸部71の構成について、図8図10を用いて説明する。
【0026】
図8は、凸部71をXマイナス側(被駆動体160側)から見たときの平面図であり、その輪郭は円形である。図9に示すように、凸部71は、側面視において半球状をなしている。つまり、好適例において、凸部71は半球状の突起体である。
図8に示すように、凸部71の頂部には接触部11が形成されており、その中央には、孔12が設けられている。接触部11は、孔12の同心円状に形成される。
図9に示すように、接触部11は平坦な部位であり、被駆動体160と当接する部分である。なお、図8図9では、説明を容易にするために、接触部11を設けた図面としているが、凸部71の初期状態は、図9において点線で示すように、円弧が連続した半球形状であっても良い。この構成であっても、被駆動体160の駆動に伴ない、凸部71の頂部が摩耗して接触部11が形成される。また、凸部71において、接触部11以外の側面を含む部分を非接触部18という。
【0027】
図9に示すように、孔12は、接触部11から凸部71の底部19に向かって貫通している。図10に示すように、凸部71の底部19には、Y軸の延在方向に沿った方向に沿った溝である凹部15が設けられている。換言すれば、凹部15は、凸部71の振動方向に沿って配置されている。凹部15には、孔12が連通している。凹部15の両端は、凸部71の側面の非接触部18に開口している。
換言すれば、凸部71は、被駆動体160との接触部11において開口するとともに、非接触部18に連通する孔12を有する。そして、凸部71は、孔12と接続して直線状に延びる凹部15を、さらに有する。また、凹部15は、被駆動体160との非接触部18において開口する。
【0028】
図10に示すように、凹部15の幅Wは、孔12の直径より大きくなっている。幅Wは、凹部15のZ軸プラス方向における長さであり、孔12が伸びるXプラス方向、および、凹部15が伸びるYプラス方向と直交している。換言すれば、孔12が伸びる方向、および、凹部15が伸びる方向にそれぞれ直交する方向において、凹部15の幅Wは、孔12の径より大きい。
【0029】
好適例において、凸部71の材料は、半球状のアルミナを用いる。なお、これに限定するものではなく、他の硬質のセラミックや、硬質の金属を用いても良く、例えば、ジルコニアや、ステンレスなどを用いても良い。
凸部71のサイズは、例えば、約φ1mmで、突出高さは約0.5mmである。この場合、孔12の直径は約100μmで、凹部15の幅Wは約300μmとする。なお、これに限定するものではなく、凸部71のサイズ、孔12の直径、凹部15の幅Wは、被駆動体160の材質、質量、駆動長さなどの駆動条件に応じて適宜設定すれば良い。
【0030】
なお、上記では、凸部71の形状を半球状として説明したが、これに限定するものではなく、接触部11側が底部19よりも小さくなる形状であれば良く、例えば、円錐台や、台形であっても良い。または、円柱や、角柱の先端に凸部71を備えた形状であっても良い。
【0031】
***本実施形態の突起部による摩耗粉の発生態様***
図11は、本実施形態の凸部により狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様を示す図であり、図7と対応している。
【0032】
図11は、本実施形態の凸部71を備えた振動体20により、被駆動体160を長さd2の範囲で繰返し移動させた場合における摩耗粉の発生態様を示しており、図7と対応している。図11に示すように、凸部71によれば、接触部11に孔12を備えているため、狭所微動において、孔12がある部分の摩耗粉99は、孔12内に入るため、駆動の妨げにならない。また、孔12の移動軌跡の上下に、常に接触部11が被駆動体160と接触する重複部93が残り、摩耗粉99が生じるが、実際は、狭所微動にともない摩耗粉99の大半は孔12内に入る。孔12内に入った摩耗粉99は、凹部15を介して、順次、開口部から非接触部18周辺に排出される。
【0033】
つまり、突起部と被駆動面との間に摩耗粉が介在してしまい、駆動が不安定になる虞があった従来の超音波駆動装置と異なり、本実施形態の凸部71を備えた超音波駆動装置100によれば、摩耗粉99を孔12から効率良く排出できるため、狭所微動を行う際でも、安定した駆動を行うことができる。
さらに、凸部71の頂部に孔12を設けても、凸部71の強度は殆ど損なわれず、突起部としての機能を果たすことができる。換言すれば、凸部71の頂部に孔12を設ける構成により、凸部71の強度を損なうことなく、摩耗粉99の排出機能を確保することができる。
【0034】
以上、述べた通り、本実施形態の超音波駆動装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
超音波駆動装置100は、圧電素子1~5を有する振動体20と、振動体20に配置され、被駆動体160に駆動力を伝達する凸部71とを備え、凸部71は、被駆動体160との接触部11において開口するとともに、非接触部18に連通する孔12を有する。
【0035】
これによれば、凸部71は、接触部11において開口し、非接触部18に連通する孔12を備えている。よって、突起部と被駆動面との間に摩耗粉が介在してしまい、駆動が不安定になる虞があった従来の超音波駆動装置と異なり、本実施形態の凸部71を備えた超音波駆動装置100によれば、摩耗粉99を孔12から効率良く排出でき、安定した駆動を行うことができる。
従って、摩耗粉を効率良く排出でき、安定駆動が可能な超音波駆動装置100を提供することができる。
【0036】
また、凸部71は、孔12と接続して直線状に延びる凹部15をさらに有し、凹部15は、被駆動体160との非接触部18において開口する。
これによれば、孔12に入った摩耗粉99は、凹部15を介して、順次、開口部から非接触部18周辺に排出されるため、摩耗粉99による孔12の詰まりを防止することができる。
【0037】
また、凹部15は、凸部71の振動方向に沿って配置されている。
これによれば、凹部15において摩耗粉99が振動方向に動かされるため、摩耗粉99を効率的に凹部15の両端の開口部に送り出すことができる。
【0038】
また、孔12が伸びる方向、および、凹部15が伸びる方向にそれぞれ直交する方向において、凹部15の幅Wは、孔12の径より大きい。
これによれば、孔12内の摩耗粉99は、孔12よりも広い凹部15に排出され易くなり、孔12の詰まりを防止することができる。
【0039】
実施形態2
***異なる突起部の構成-1***
図12は、実施形態2に係る凸部の断面図であり、図9に対応している。図13は、凸部の背面図であり、図10に対応している。
上記実施形態では、凸部71に設けられた孔12は円柱状の真っ直ぐな貫通孔として説明したが、この構成に限定するものではなく、貫通孔であれば良く、例えば、上下で孔径が異なっていても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図12に示すように、本実施形態の凸部72に設けられる孔13は、接触部11側の直径よりも、凹部15側の直径の方が大きくなっている。孔13は、円錐台状の孔であり、接触部11から凹部15に向かって直径が漸増している。また、凸部72の平面図は、図8と同じであり、孔13の形状以外は、実施形態1での説明と同じである。換言すれば、孔13は、接触部11から振動体20に向かう方向において径が漸増する。
【0041】
以上、述べた通り、本実施形態の凸部72を備えた超音波駆動装置100によれば、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
孔13は、接触部11から振動体20に向かう方向において径が漸増する。
【0042】
これによれば、孔13に入った摩耗粉99は、より広い凹部15側に排出され易くなり、孔13の詰まりを防止することができる。よって、摩耗粉99の排出効率をより高めることができる。
従って、摩耗粉をより効率良く排出でき、安定駆動が可能な超音波駆動装置100を提供することができる。
【0043】
実施形態3
***異なる突起部の構成-2***
図14は、実施形態3に係る凸部の正面図であり、図8に対応している。図15は、凸部の断面図であり、図9に対応している。図16は、凸部の背面図であり、図10に対応している。
上記実施形態では、凸部71に設けられた孔12は円形の孔として説明したが、この構成に限定するものではなく、貫通孔であれば良く、例えば、楕円の孔であっても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
図14に示すように、本実施形態の凸部73に設けられる孔14は、Zプラス方向に長軸を有する楕円である。図16に示すように、孔14の長軸方向は、凹部15の幅Wに収まる長さとなっており、短軸方向は凸部73の振動方向に沿っている。また、孔14の形状以外は、実施形態1での説明と同じである。換言すれば、接触部11から振動体20に向かう方向の平面視において、孔14は、凸部73の振動方向に沿って短軸を有する楕円形状である。
なお、孔14の平面形状は、長円であっても良い。また、孔14の短軸方向の径が、接触部11から底部19に向かう方向において漸増する構成であっても良い。
【0045】
図17は、本実施形態の凸部により狭所微動を行った際の摩耗粉の発生態様を示す図であり、図11図7と対応している。
図17に示すように、本実施形態の凸部73を備えた振動体20により、狭所微動を行った場合、楕円の孔14の長軸方向により、接触部11が常に被駆動体160と接触する重複部が発生しないため、微動において孔14と重なる部分の摩耗粉99は、孔14内に入り、排出される。つまり、孔14を楕円としたことにより、図11で生じていた重複部93をなくすことができる。
【0046】
以上、述べた通り、本実施形態の凸部73を備えた超音波駆動装置100によれば、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
接触部11から振動体20に向かう方向の平面視において、孔14は、凸部73の振動方向に沿って短軸を有する楕円形状である。
【0047】
これによれば、孔14を楕円としたことにより、図11で生じていた重複部93をなくすことができる。よって、摩耗粉99の排出効率をより高めることができる。
従って、摩耗粉をより効率良く排出でき、安定駆動が可能な超音波駆動装置100を提供することができる。
【0048】
実施形態4
***異なる突起部の構成-3***
図18は、実施形態4に係る凸部の正面図であり、図8に対応している。図19は、凸部の断面図であり、図9に対応している。
上記実施形態では、凹部15は、凸部71の底部19に設けられるとして説明したが、この構成に限定するものではなく、非接触部18に開口するように設けられれば良く、例えば、凸部71の側面に設けられた孔であっても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図19に示すように、本実施形態の凸部74に設けられる凹部16は、凸部74の側面に設けられた貫通孔である。凹部16は、凸部74の底部19と平行に、凸部74の側面を貫通して設けられている。凹部16は、側面から見ると円形の孔である。また、凹部16の構成以外は、実施形態1での説明と同じである。換言すれば、凹部16は、凸部74に設けられた孔である。
図18に示すように、孔12の径が凹部16の幅に収まる寸法設定となっており、孔12に入った摩耗粉は、より広い凹部16に排出される。そして、凹部16内の摩耗粉は、振動方向に動かされて、凹部16の両端の開口部から排出される。なお、孔12の径が、接触部11から底部19に向かう方向において漸増する構成であっても良い。
【0050】
ここで、本実施形態の凸部74の底部19には、凹部が設けられていないため、平坦な面となっている。好適例では、この平坦な底部19に接着剤を塗布して、振動体20に接着固定する。底部19に凹部がある場合、接着剤のはみ出しなどにより、凹部の一部が塞がれてしまう虞がある。凹部の一部が塞がれてしまうと、摩耗粉の排出が阻害されてしまう。これに対して、本実施形態の凸部74によれば、底部19に凹部が設けられていないため、底部19に接着剤を塗布して振動体20に接着固定する場合でも、側面に設けられた凹部16が接着剤で塞がれることを防止できる。
【0051】
以上、述べた通り、本実施形態の凸部74を備えた超音波駆動装置100によれば、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
凹部16は、凸部74に設けられた孔である。
【0052】
これによれば、底部19に接着剤を塗布して振動体20に接着固定する場合でも、側面に設けられた凹部16が接着剤で塞がれることを防止できる。よって、凸部74を接着剤で振動体20にしっかり固定することができるとともに、摩耗粉を効率良く排出することができる。
従って、摩耗粉を効率良く排出でき、安定駆動が可能な超音波駆動装置100を提供することができる。
【0053】
実施形態5
***ロボットシステム***
図20は、実施形態5に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図である。図21は、移動ステージの概略構成を示す透過平面図である。
【0054】
図20に示す、本実施形態のロボットシステム500は、上記各実施形態の超音波駆動装置100を駆動源とした移動ステージ300を備えている。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
図20に示すロボットシステム500は、ロボット200、ロボット200の駆動を制御するロボット制御装置900、対象物Qを支持および固定する固定部材700などから構成される。
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に移動ステージ300を介して接続された工具400と、を有する。
【0056】
ロボットアーム220は、複数のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。また、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6には、それぞれ、駆動源であるモーターMと、モーターMの回転量(アームの回動角)を検出するエンコーダーEとが設置されている。
【0057】
そして、アーム226の先端部に移動ステージ300を介して工具400が接続されている。すなわち、移動ステージ300はアーム226に保持され、工具400は移動ステージ300に取り付けられている。工具400としては、特に限定されず、目的の作業に応じて適宜設定することができるが、本実施形態では、プリンターヘッド、その中でも特にインクジェットヘッド410が用いられている。インクジェットヘッド410は、図示しないインク室およびインク室の壁面に配置された振動板と、インク室に繋がるインク吐出孔411と、を有し、振動板が振動することによりインク室内のインクがインク吐出孔411から吐出する構成となっている。ただし、インクジェットヘッド410の構成としては、特に限定されない。また、プリンターヘッドとしては、インクジェットヘッド410に限定されない。
【0058】
図21に示すように、インクジェットヘッド410とロボットアーム220とを接続する移動ステージ300は、アーム226に接続された基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を移動させる移動機構330とを有する。図21では、互いに直交する3軸をa軸、b軸およびc軸としている。
ステージ320は、基部310に対してc軸まわりに回転可能なθステージ320θと、θステージ320θに対してb軸に沿う方向に移動可能なbステージ320bと、bステージ320bに対してa軸に沿う方向に移動可能なaステージ320aと、を有し、aステージ320aにインクジェットヘッド410が装着されている。aステージ320aとbステージ320bは、リニアガイドによってそれぞれa軸方向およびb軸方向に直動案内されており、リニアガイドのレール方向において滑らかにガタ無く移動することができる。なお、3つのステージは、c軸方向において、θステージ320θ、bステージ320b、aステージ320aの順番で重ねられた積層構造となっている。
【0059】
移動機構330は、θステージ320θを基部310に対してc軸まわりに移動させるθ移動機構330θと、bステージ320bをθステージ320θに対してb軸に沿う方向に移動させるb移動機構330bと、aステージ320aをbステージ320bに対してa軸に沿う方向に移動させるa移動機構330aと、を有する。
そして、θ移動機構330θ、b移動機構330b、および、a移動機構330aは、それぞれが駆動源として上記実施形態の超音波駆動装置100を備えている。なお、図21では、各ステージに1つずつの超音波駆動装置100を図示しているが、各ステージに複数個の超音波駆動装置100を並べて多連駆動する構成であっても良い。
これにより、移動ステージ300の小型化および軽量化を図ることができる。減速機を用いずにダイレクト駆動を行えるので、更なる軽量化および小型化を図ることができる。
換言すれば、ロボットシステム500は、振動素子を有する超音波駆動装置100により駆動される移動ステージ300と、移動ステージ300に取り付けられる工具400と、を有する。
【0060】
また、ロボットアーム220を駆動して、対象物Qに対して印刷を行う際に、移動ステージ300により、印刷軌道のズレを補正することができる。詳しくは、移動ステージ300により、インクジェットヘッド410を印刷軌道がズレている方向とは反対側に狭所微動させて補正する。
【0061】
以上、述べた通り、本実施形態のロボットシステム500によれば、以下の効果を得ることができる。
ロボットシステム500は、振動素子を有する超音波駆動装置100により駆動される移動ステージ300と、移動ステージ300に取り付けられる工具400と、を有する。
【0062】
これによれば、ロボットシステム500は、上記各実施形態の超音波駆動装置100を駆動源とした移動ステージ300を備えている。よって、移動ステージ300は、精度良く安定した駆動を行うことができる。
従って、精度良く安定した駆動が可能なロボットシステム500を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1~5…圧電素子、10…保持部、11…接触部、12~14…孔、15,16…凹部、18…非接触部、19…底部、20…振動体、21a,21b…支持腕、24~26…切欠き部、27…中心線、28…圧電アクチュエーター、38…ネジ穴、41,42…板バネ、44a,44b…平行バネ、45…付勢部、48…基材、50…固定部、71~74…凸部、90…比較例の凸部、91…接触部、92…重複部、93…重複部、98…摩耗粉、99…摩耗粉、100…超音波駆動装置、160…被駆動体、200…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221~226…アーム、300…移動ステージ、310…基部、320…ステージ、320a…aステージ、320b…bステージ、330…θ移動機構、330a…a移動機構、330b…b移動機構、400…工具、410…インクジェットヘッド、411…インク吐出孔、500…ロボットシステム、700…固定部材、900…ロボット制御装置、d1…長さ、d2…長さ、J1~J6…関節。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図21