(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070383
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】回路装置及び発振器
(51)【国際特許分類】
H03L 1/00 20060101AFI20240516BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H03L1/00
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180838
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】加納 新之助
【テーマコード(参考)】
2G035
5J106
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC01
2G035AD26
2G035AD29
2G035AD51
5J106AA01
5J106BB05
5J106CC01
5J106DD17
5J106DD44
5J106EE03
5J106GG01
5J106HH03
5J106KK05
5J106LL01
(57)【要約】
【課題】検出精度の低下を抑制した回路装置及び発振器の提供。
【解決手段】本実施形態の回路装置1は、発振回路20と電流供給回路10とカウンター回路30と演算回路40を含む。発振回路20は、供給電流IBnに応じて発振周波数が変化する。電流供給回路10は、検出対象電圧に応じて変化する第1電流IB1を発振回路20に供給する。カウンター回路30は、発振回路20の出力信号を所与の期間においてカウントするカウント処理を行う。演算回路40は、発振回路20に第1電流IB1が供給される状態におけるカウント処理で得られた第1カウント値CT1に基づいて、検出対象電圧に対応する検出電圧データを演算する電圧演算処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電流に応じて発振周波数が変化する発振回路と、
検出対象電圧に応じて変化する第1電流を前記供給電流として前記発振回路に供給する電流供給回路と、
前記発振回路の出力信号を所与の期間においてカウントするカウント処理を行うカウンター回路と、
前記発振回路に前記第1電流が供給される状態における前記カウント処理で得られた第1カウント値に基づいて、前記検出対象電圧に対応する検出電圧データを演算する電圧演算処理を行う演算回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記電流供給回路は、
前記第1電流を生成する第1電流生成回路と、
温度に応じて変化する第2電流を生成する第2電流生成回路と、
前記第1電流又は前記第2電流を前記供給電流として前記発振回路に供給する電流セレクターと、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回路装置において、
前記演算回路は、
前記発振回路に前記第2電流が供給される状態における前記カウント処理で得られた第2カウント値に基づいて、前記温度に対応する温度データを演算する温度演算処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回路装置において、
前記演算回路は、
前記電圧演算処理において前記温度データに基づく補正処理を行うことで、前記検出電圧データを求めることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路装置において、
前記演算回路は、
前記電圧演算処理において前記検出対象電圧に対する前記検出電圧データの温度ばらつきを前記温度データに基づいて補正することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回路装置において、
前記温度ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶する記憶部を含み、
前記演算回路は、
前記記憶部に記憶された前記温度補正係数に基づいて前記検出電圧データを補正することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項4に記載の回路装置において、
前記第1カウント値をDFVとし、DFVを前記検出対象電圧の1次式で表したときの傾き値をαとし、前記1次式の切片をβとしたとき、
前記演算回路は、
前記温度データと、前記温度に対するα及びβの依存性を近似する情報とに基づいて、α及びβを求め、
前記検出電圧データをVcalc=(DFV-β)/αにより求めることで、前記補正処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項3に記載の回路装置において、
前記演算回路は、
前記温度演算処理において前記温度に対する前記温度データの個体ばらつきを補正することを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回路装置において、
前記回路装置は、
前記個体ばらつきを補正するための個体ばらつき補正係数を記憶する記憶部を含み、
前記演算回路は、
前記記憶部に記憶された前記個体ばらつき補正係数に基づいて前記温度データを補正することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項8に記載の回路装置において、
前記第2カウント値をDFTとし、DFTを前記温度の1次式で表したときの傾き値をAとし、前記1次式の切片をBとし、目標傾き値をaとし、目標切片をbとしたとき、
前記演算回路は、
補正カウント値をDFTcalc=(a/A)×(DFT-B)+bにより求め、前記温度データをTcalc=(DFTcalc-b)/aにより求めることで、前記個体ばらつきを補正することを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項1に記載の回路装置において、
前記演算回路は、
基準電圧に対応する基準電圧データと前記検出電圧データとを比較することで、前記検出対象電圧が前記基準電圧になったか否かを判定することを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1に記載の回路装置において、
前記電流供給回路は、
第1電源電圧と第2電源電圧を含む複数の電圧の中から、前記検出対象電圧を選択して出力するセレクターを含むことを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1に記載の回路装置において、
前記発振回路は、リングオシレーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記所与の期間の設定用のクロック信号を生成するための振動子と、
を含むことを特徴とする発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び発振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源切替回路及びリアルタイムクロック装置が開示されている。当該電源切替回路等では、電源監視回路の判定結果に基づいて電源の切替が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電源切替回路等は、電源電圧を分圧して基準電圧と比較することで電源電圧の変化の検出を行う。このため、検出精度がアナログ回路の性能に制約されてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、供給電流に応じて発振周波数が変化する発振回路と、検出対象電圧に応じて変化する第1電流を前記供給電流として前記発振回路に供給する電流供給回路と、前記発振回路の出力信号を所与の期間においてカウントするカウント処理を行うカウンター回路と、前記発振回路に前記第1電流が供給される状態における前記カウント処理で得られた第1カウント値に基づいて、前記検出対象電圧に対応する検出電圧データを演算する電圧演算処理を行う演算回路と、を含む回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記に記載の回路装置と、前記所与の期間の設定用のクロック信号を生成するための振動子と、を含む発振器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本実施形態の回路装置における発振回路の回路図の一例。
【
図4】パルス数のカウント処理の手法を説明する図。
【
図7】検出対象電圧についてのセレクターの回路図の一例。
【
図8】供給電流についてのセレクターの回路図の一例。
【
図9】本実施形態の詳細な構成例の動作の概要を示す信号波形図。
【
図10】本実施形態の補正アルゴリズムを説明するフローチャート。
【
図11】検出対象電圧と温度センサー出力周波数の理想的な関係の一例を示す図。
【
図12】温度センサー出力周波数の測定データと理想値を比較した図。
【
図13】補正後の温度センサー出力周波数と理想直線を示す図。
【
図14】各温度での検出対象電圧と電圧センサー出力周波数の測定データの一例を示す図。
【
図15】傾きαと切片βの温度依存性の一例を示す図。
【
図16】各温度における検出対象電圧と絶対電圧の関係の一例を示す図。
【
図17】検出電圧データと基準電圧データを比較する手法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置1の構成例を示す。本実施形態の回路装置1は、電流供給回路10と発振回路20とカウンター回路30と演算回路40を含む。回路装置1は、IC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置1は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。回路装置1は、後述の
図4に示すように、例えばリングオシレーター等の発振周波数が温度依存性、電圧依存性を有することを利用した電圧検出回路として動作する。
【0010】
電流供給回路10は、検出対象電圧VSENに応じて変化する第1電流を供給電流IBnとして発振回路20に供給する。
【0011】
発振回路20は、供給電流IBnに応じて発振周波数が変化する発振回路である。例えば発振回路20は、供給電流IBnに応じて周波数が変化するクロック信号RCKを出力する。クロック信号RCKは発振クロック信号である。発振回路20としては、例えばリングオシレーター等を用いることができる。
【0012】
カウンター回路30は、発振回路20が出力するクロック信号RCKについて、所与の期間、クロック数をカウントするカウント処理を行う。ここで所与の期間は、任意に設定することができる。
【0013】
演算回路40は種々の演算処理を行う。演算回路40は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。演算回路40は、発振回路20に第1電流IB1が供給される状態におけるカウント処理で得られた第1カウント値CT1に基づいて、検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを演算する電圧演算処理を行う。第1カウント値CT1は、第1電流IB1に対応するカウント値である。また検出電圧データDTVは、検出対象電圧VSENの値を表すデジタルデータである。
【0014】
このように本実施形態の回路装置1は、検出対象電圧VSENを入力信号として、電流供給回路10、発振回路20、カウンター回路30での処理によって当該電圧に対応した第1カウント値CT1を求め、第1カウント値CT1から検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを求めて出力する。
【0015】
即ち、本実施形態の回路装置1は、発振回路20と電流供給回路10とカウンター回路30と演算回路40を含む。発振回路20は、供給電流IBnに応じて発振周波数が変化する。電流供給回路10は、検出対象電圧VSENに応じて変化する第1電流を供給電流IBnとして発振回路20に供給する。カウンター回路30は、発振回路20の出力信号を所与の期間においてカウントするカウント処理を行う。演算回路40は、発振回路20に第1電流が供給される状態におけるカウント処理で得られた第1カウント値に基づいて、検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを演算する電圧演算処理を行う。
【0016】
このようにすれば、検出対象電圧VSENに応じて変化する第1電流を発振回路20に供給し、第1電流に応じて発振周波数が変化する発振回路20の出力信号を所与の期間においてカウント処理し、得られた第1カウント値に基づいて演算処理を行うことで、検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを演算できるようになる。例えば検出対象電圧VSENと基準電圧をコンパレーターにより比較する電圧検出回路では、検出精度を調整したり、検出電圧範囲を広げるのが難しいという問題がある。これに対して本実施形態の回路装置1によれば、例えばカウント処理が行われる所与の期間の長さの設定や演算回路での演算処理のアルゴリズムの変更などにより、検出対象電圧VSENの検出精度を調整できるようになる。また上述の電圧検出回路に比べて、検出電圧範囲を広げることも可能になる。また検出精度がアナログ回路の性能に制約されないという利点もある。
【0017】
2.詳細な構成例
図2に本実施形態の詳細な構成例を示す。
図2に示す詳細な構成例では、電流供給回路10は、第1電流生成回路11、第2電流生成回路12、セレクター51、電流セレクター52を含む。また演算回路40は、第1演算器41、第2演算器42、記憶部44、判定部46、レジスター47、出力部48を含む。また回路装置1にはレギュレーター60も設けられている。
【0018】
図3は発振回路20の構成例である。この発振回路20は、リングオシレーターにより実現され、レギュレーター60からのレギュレート電圧であるVREGを電源電圧として動作する。発振回路20は、ループ状に接続されたNAND回路NAA、インバーター回路IVA1、IVA2と、バッファー回路であるインバーター回路IVA3を含む。これらの奇数個の信号反転回路であるNAA、IVA1、IVA2がループ状に接続されることで、出力信号として発振クロック信号であるクロック信号RCKを生成できる。NAND回路NAAには、リングオシレーターの動作をイネーブルにしたりディスエーブルにするためのイネーブル信号ENが入力されている。このイネーブル信号ENをアクティブ又は非アクティブに制御することで、リングオシレーターの動作を制御できるようになっている。NAND回路NAA、インバーター回路IVA1、IVA2のVREG側には、動作電流を流すためのP型のトランジスターTC4、TC5、TC6が設けられ、GND側には、N型のトランジスターTA7、TA8、TA9が設けられている。そしてトランジスターTC4、TC5、TC6のゲートには、電流供給回路10から出力される供給電流IBnに対応するP側のバイアス電圧が入力され、トランジスターTC7、TC8、TC9のゲートには、N側のバイアス電圧が入力される。これにより発振回路20の各信号反転回路に流れる動作電流が制御され、供給電流IBnに応じた周波数の正弦波の発振信号を生成される。そしてインバーター回路IVA3は、発振回路20のループ21のインバーター回路IVA2から出力された正弦波の発振信号をバッファリングして、矩形波のクロック信号RCKを出力する。このようにして発振回路20は、供給電流IBnに基づいて周波数が変化するクロック信号RCKを出力する。
図3に示すように、3段構成の信号反転回路のループ21を含む発振回路20の場合、NAND回路NAA、インバーター回路IVA1、IVA2の各入力容量をCINとすると、発振回路20のクロック信号RCKの周波数FOUTは{IBn/(CIN×VREG)}/3になる。
【0019】
レギュレーター60は、外部電源電圧である電源電圧VDDのレギュレートを行って、レギュレート電圧VREGを発振回路20の電源電圧として供給する。電源電圧VDDは例えば1.5~3.6Vの電圧である。
【0020】
図4に示すように、カウンター回路30は、クロック信号OSCにより規定されるカウント期間TSENSにおいて、発振回路20から出力されるクロック信号RCKをカウントし、そのカウント値を温度データとして出力する。このカウント期間TSENSが、カウント処理が行われる上述の所与の期間である。カウンター回路30は、
図18で説明する振動子210の発振回路100が出力するクロック信号OSCを用いて、発振回路20が出力するクロック信号RCKのパルス数のカウント処理を行う。例えば
図4の上段に示す信号波形は、発振回路20が出力するクロック信号RCKの信号波形を示す。同図の下段には、
図18の発振回路100が出力するクロック信号OSCの信号波形が示されている。例えば
図4に示すように、カウンター回路30は、発振回路100が出力するクロック信号OSCにより規定されるカウント期間TSENSにおけるクロック信号RCKのパルス数をカウントした第1カウント値CT1を出力する。
【0021】
また上述したように、
図2に示す詳細な構成例では、電流供給回路10は第1電流生成回路11と第2電流生成回路12を含む。
図5に第1電流生成回路11の構成例を示す。
図5に示すように第1電流生成回路11は、トランジスターTA1、TA2、TA3、TA4、TA5、TA6と抵抗R1を含む。TA1、TA2、TA5、TA6はN型のトランジスターであり、TA3、TA4はP型のトランジスターである。抵抗R1は、一端に検出対象電圧VSENが供給され、他端がトランジスターTA1のドレインに接続されている。トランジスターTA1はドレインとゲートが接続されたダイオード接続のトランジスターとなっている。トランジスターTA2のゲートはトランジスターTA1のゲートに接続されている。トランジスターTA3とトランジスターTA4はカレントミラー回路を構成しており、トランジスターTA2に流れる電流がトランジスターTA3に流れ、この電流がトランジスターTA4にミラーされる。トランジスターTA5とトランジスターTA6はカレントミラー回路を構成しており、トランジスターTA4に流れる電流がトランジスターTA5に流れ、この電流がトランジスターTA6にミラーされる。これにより、第1電流IB1が供給電流IBnとして第1電流生成回路11から発振回路20に供給されるようになる。
【0022】
例えばダイオード接続されるトランジスターTA1のゲート・ソース間電圧をVthn+Vodとすると、抵抗R1とトランジスターTA1の接続ノードであるノードNA1の電圧はVthn+Vodになる。ここでVthnは、N型のトランジスターの閾値電圧である。従って、抵抗R1の両端には、VSEN-(Vthn+Vod)が印加され、IB1={VSEN-(Vthn+Vod)}/R1の電流が抵抗R1に流れ、この第1電流IB1が発振回路20に供給されるようになる。これにより検出対象電圧VSENに応じて変化する第1電流IB1={VSEN-(Vthn+Vod)}/R1が供給電流IBnとして発振回路20に供給されるようになる。
【0023】
図6に第2電流生成回路12の構成例を示す。
図6に示すように第2電流生成回路12は、トランジスターTB1、TB2、TB3、TB4、TB5と抵抗R2を含む。TB1、TB2はP型のトランジスターであり、TB3、TB4、TB5はN型のトランジスターである。トランジスターTB1とトランジスターTB2はカレントミラー回路を構成している。トランジスターTB3は、ドレインとゲートが接続されたダイオード接続のトランジスターとなっており、トランジスターTB3のドレインは、トランジスターTB1のドレインに接続されている。またトランジスターTB4は、ドレインがトランジスターTB2のドレインに接続され、ゲートがトランジスターTB3のゲートに接続され、ソースが抵抗R2の一端に接続される。抵抗R2の他端はGNDノードに接続される。GNDノードはグランドノードであり、低電位側電源ノードである。例えばトランジスターTB4のサイズであるW/Lは、トランジスターTB3のW/Lよりも大きなサイズに設定されている。またトランジスターTB3とトランジスターTB5はカレントミラー回路を構成しており、トランジスターTB5に流れる第2電流IB2が、供給電流IBnとして第2電流生成回路12から発振回路20に供給されるようになる。
【0024】
そしてダイオード接続されるトランジスターTB3のゲート・ソース間電圧をVthn+Vodとすると、トランジスターTB4のドレイン・ソース間電圧はVodになり、トランジスターTB4のソースノードであるノードNB3の電圧はVthnになる。VthnはN型トランジスターの閾値電圧である。従って、抵抗R2にはIB2=Vthn/R2の電流が流れ、この第2電流IB2がトランジスターTB5に流れるようになる。閾値電圧であるVthnは例えば負の温度特性を有しており、温度によって変化する温度依存性電圧となっている。これにより温度に応じて変化する第2電流IB2=Vthn/R2を供給電流IBnとして発振回路20に供給できるようになる。
【0025】
図7は、セレクター51の回路構成例を示す。セレクター51は、トランジスターTD1~TD9を含む。そして、トランジスターTD1、TD2は、トランスファーゲートTT1を構成し、トランジスターTD3、TD4は、トランスファーゲートTT2を構成し、トランジスターTD5、TD6は、トランスファーゲートTT3を構成する。セレクター51の入力信号は、
図7に示すように、例えば電源電圧VDD、バッテリー電圧VBAT、出力電圧VOUTになっている。例えば、電源電圧VDDについては、トランスファーゲートTT1がオンされることで、ノードND1の電源電圧VDDはノードND4に伝達される。そしてトランジスターTD7がオンすると、ノードND7の電圧は電源電圧VDDになり、セレクター51から出力される検出対象電圧VSENは電源電圧VDDになる。入力信号がバッテリー電圧VBATや出力電圧VOUTであった場合も同様である。例えば、入力信号がバッテリー電圧VBATであった場合、トランスファーゲートTT2、トランジスターTD8がそれぞれオンすることで、ノードND2のバッテリー電圧VBATはノードND8まで転送され、出力信号として出力される。このように選択したい電圧に対応するトランスファーゲートやトランジスターをオンすることで、セレクター51から出力される検出対象電圧VSENの電圧が決定される。
図7のトランジスターのオン、オフはスイッチ制御信号SD1~SD6により制御される。
【0026】
図8は、電流セレクター52の回路構成例を示す。電流セレクター52は、電流供給回路10から出力される第1電流IB1、第2電流IB2のうち、いずれかを選択し、供給電流IBnとして出力する。電流セレクター52は、トランジスターTE1~TE4を有し、トランジスターTE1、TE2はトランスファーゲートTT4を構成し、トランジスターTE3、TE4はトランスファーゲートTT5を構成する。電流セレクター52において、電流供給回路10から出力される第1電流IB1はトランスファーゲートTT4に入力され、第2電流IB2はトランスファーゲートTT5に入力される。そして、
図6に示すセレクター51で説明したのと同様に、トランスファーゲートTT4、TT5のいずれかをオンすることで、第1電流IB1、第2電流IB2のいずれかの電流が選択され、供給電流IBnとして出力される。
図8のトランジスターのオン、オフはスイッチ制御信号SE1、SE2により制御される。
【0027】
以上のように本実施形態では電流供給回路10は、第1電流生成回路11と第2電流生成回路12と電流セレクター52を含む。第1電流生成回路11は、検出対象電圧VSEENに応じて変化する第1電流IB1を生成する。
図5を例にとれば、例えばIB1={VSEN-(Vthn+Vod)}/R1というように、検出対象電圧VSENの変化に応じて変化する第1電流IB1を生成する。第2電流生成回路12は、温度に応じて変化する第2電流IB2を生成する。
図6を例にとれば、閾値電圧Vthnが温度依存性を有し温度に応じて変化する場合に、例えばIB2=Vthn/R2というように、温度の変化に応じて変化する第2電流IB2を生成する。そして電流セレクター52は、第1電流IV1又は第2電流IB2を供給電流IBnとして発振回路20に供給する。例えば
図2の回路装置1が電圧検出回路として動作して、検出対象電圧VSENを検出する場合には、電流セレクター52が第1電流生成回路11からの第1電流IB1を選択して、発振回路20に供給する。そしてカウンター回路30が、発振回路20の出力信号であるクロック信号RCKを所与の期間においてカウントする処理を行うことで、第1カウント値CT1を求め、演算回路40が、第1カウント値CT1に基づいて検出対象電圧VSENの検出電圧データを演算する。また回路装置1が温度検出回路として動作して、温度を検出する場合には、電流セレクター52が第2電流生成回路12からの第2電流IB2を選択して、発振回路20に供給する。そしてカウンター回路30が、発振回路20のクロック信号RCKを所与の期間においてカウントする処理を行うことで、第2カウント値CT2を求め、演算回路40が、第2カウント値CT2に基づいて温度に対応する温度データDTTを求める。このようにすれば、検出対象電圧VSENを検出する場合には、電流セレクター52が第1電流IB1を選択することで、検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを求め、温度を検出する場合には、電流セレクター52が第2電流IB2を選択することで、温度に対応する温度データDTTを求めることが可能になる。従って、電流セレクター52の電流の選択の切り替えだけで、回路装置1を電圧検出回路と温度検出回路の両方の回路として動作させることが可能になる。
【0028】
例えば通常の回路装置では、電圧検出回路と温度検出回路とが別個に設けられる。例えば電圧検出回路は、検出対象電圧と、基準電圧であるBGR(Band Gap Reference)電圧とをコンパレーターにより比較することで電圧検出を行う。また温度検出回路は、例えば温度センサーからの検出電圧VFと、BGR電圧をDAC回路により分圧した電圧VDACとを、コンパレーターにより比較する。検出電圧VFは、例えば温度センサーにおいてダイオードを定電流駆動することで生成される。そしてロジック回路が、コンパレーターの出力に基づいてDAC回路のDAC調整コードを制御し、このDAC調整コードをレジスターに保持する回路構成により、温度が検出される。このように通常の回路装置では、トポロジーが異なる電圧検出回路と温度検出回路とが別々に設けられているため、回路規模が増加してしまう。また電圧検出回路の検出精度が、BGR電圧の精度や分圧された電圧VDACを生成する際の分解能により制約されてしまう。更に検出電圧範囲もハードウェアで設定した電圧に限定される。
【0029】
この点、本実施形態によれば、検出対象電圧VSENに対応する第1電流IB1又は温度に対応する第2電流IB2を、共通の発振回路20に入力し、発振回路20が出力するクロック信号RCKのクロック数をカウントすることによって、電圧検出又は温度検出を行うことが可能になる。従って、トポロジーの異なる電圧検出回路と温度検出回路を別個に設ける必要がないため、回路規模の増加を抑制できる。また電圧の検出精度が、カウント時間の変更や検出アルゴリズムの変更により任意に調整できる。そして、検出する際の基準の検出レベルを、レジスターの記憶値の変更で任意に選択できるようになる。このように、ハードウェアにより固定されていた検出精度をソフトウェアで設定することが可能になる。また本実施形態によれば、電圧の検出精度が、アナログ回路の分解能等の性能に制約されてしまうのを抑制できると共に、検出電圧範囲も広くできる。例えば従来の電圧検出回路では、検出電圧の範囲は3.0V~3.2Vの範囲に限られるが、本実施形態のようなリングオシレーター等の発振回路20を用いた温度検出回路によれば、2.0~3.5Vの範囲で電圧の検出が可能になり、使用可能な電池なども増やすことができる。また温度検出結果による個体差によるばらつきを低減できるため、電圧検出回路の検出精度も向上できる。
【0030】
また
図2に示すように電流供給回路10は、第1電源電圧と第2電源電圧を含む複数の電圧の中から、検出対象電圧VSENを選択して出力するセレクター51を含む。例えばセレクター51は、複数の電圧の中から選択した電圧を、検出対象電圧VSENとして第1電流生成回路11に出力する。例えば
図2において第1電源電圧はVDD、VBAT、VREGの1つであり、第2電源電圧はVDD、VBAT、VREGの他の1つである。このようにすれば、複数の電圧の中から検出したい電圧を、検出対象電圧VSENとしてセレクター51により選択できるようになる。そして電流供給回路10が、選択された検出対象電圧VSENに応じて変化する第1電流IB1を発振回路20に供給することで、選択された検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDTVを求めることが可能になる。
【0031】
また発振回路20は、例えば
図3に示すようにリングオシレーターである。このようにすれば、リングオシレーターの発振周波数が、電流供給回路10からの供給電流IBnにより制御されることで、供給電流IBnに対応するカウント値をカウンター回路30から出力して、検出電圧データDTV等を求めることが可能になる。
【0032】
次に演算回路40の詳細について説明する。前述のように演算回路40は、第1演算器41、第2演算器42、記憶部44、判定部46、レジスター47、出力部48を含む。そして演算回路40は、発振回路20に第2電流IB2が供給される状態におけるカウント処理で得られた第2カウント値CT2に基づいて、温度データDTTを演算する温度演算処理を行う。この温度演算処理は第2演算器42が行う。発振回路20に第2電流IB2が供給される状態におけるカウント処理とは、電流セレクター52が第2電流IB2を選択して発振回路20に供給している状態でのカウント処理である。このようにすれば、カウンター回路30は、温度に応じて変化する第2カウント値CT2を演算回路40に出力できるようになり、演算回路40は、温度に応じて変化する第2カウント値CT2に基づく温度演算処理を行って、温度に対応する温度データDTTを演算できるようになる。従って、回路装置1を温度検出回路として動作させて温度データDTTを求めることが可能になる。なおこのようにして求められた温度データDTTは、出力部48により外部に出力される。
【0033】
また演算回路40は、電圧演算処理において温度データDTTに基づく補正処理を行うことで、検出電圧データDTVを求める。この補正処理は第1演算器41が行う。例えば演算回路40は、電流セレクター52が第2電流IB2を選択したときにカウンター回路30から出力される第2カウント値CT2に基づいて、温度データDTTを求める温度演算処理を行う。この温度演算処理は第2演算器42が行う。そして演算回路40は、このようにして求められた温度データDTTに基づく補正処理を電圧演算処理において行って、検出電圧データDTVを求める。このようにすれば、演算回路40が第2カウント値CT2に基づき求められた温度データDTTを有効利用して、検出電圧データDTVの補正処理を行うことが可能になる。
【0034】
また
図2ではレジスター47は、基準電圧データDRFを記憶しており、判定部46は、基準電圧データDRFと、第1演算器41が演算した検出電圧データDTVとを比較し、判定結果DTQを出力する。このように演算回路40は、基準電圧に対応する基準電圧データDRFと検出電圧データDTVとを比較することで、検出対象電圧VSENが基準電圧になったか否かを判定する。このようにすれば、検出対象電圧VSENが、基準電圧データDRFに対応する基準電圧を超えたか又は下回ったかなどを、判定結果DTQとして出力できるようになる。これにより例えば
図2のVDD、VBAT、VREGが、検出の閾値電圧である基準電圧を超えたか又は下回ったかなどを検出できるようになる。
【0035】
また演算回路40は、電圧演算処理において検出対象電圧VSENに対する検出電圧データDTVの温度ばらつきを温度データDTTに基づいて補正する。例えば
図5等で説明した第1電流生成回路11が出力する第1電流IB1には温度ばらつきがあり、温度に応じて変化する。そこで、第2カウント値CT2に基づき求められた温度データDTTを用いて、検出電圧データDTVの温度補償処理である補正処理を行えば、このような温度ばらつきをなくした検出電圧データDTVを求めることが可能になる。従って、演算回路40が第2カウント値CT2に基づき求められた温度データDTTを有効利用して、検出電圧データDTVの温度ばらつきを補償する補正処理を実現できる。
【0036】
また
図2の記憶部44は、温度ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶する。この補正係数は、後述する
図10のステップS1で求められた補正係数に対応する。そして演算回路40は、記憶部44に記憶された温度補正係数に基づいて検出電圧データDTVを補正する。このようにすれば、温度ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶部44に記憶しておき、この記憶された温度補正係数を用いて、検出電圧データDTVの温度ばらつきを補正できるようになる。例えば回路装置1の製造時又は検査時に、温度補正係数を記憶部44に書き込むことで、検出電圧データDTVの温度ばらつきを適正に補正できるようになる。
【0037】
なお記憶部44は、例えば不揮発性メモリー等の半導体メモリーにより実現できる。不揮発性メモリーは、電源を供給しなくても情報の記憶を保持するメモリーである。例えば不揮発性メモリーは、電源を供給しなくても情報を保持できると共に、情報の書き換えが可能なメモリーである。不揮発性メモリーは、FAMOSメモリー(Floating gate Avalanche injection MOS memory)又はMONOSメモリー(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon memory)により実現されるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等により実現できる。
【0038】
また演算回路40は、温度演算処理において温度に対する温度データDTTの個体ばらつきを補正する。この温度データDTTの個体ばらつきの補正は例えば第2演算器42が行う。例えば電流供給回路10が温度に応じた第2電流IB2を発振回路20に供給することで、カウンター回路30が出力した第2カウント値CT2により温度データDTTを求めると、この温度データDTTにはデバイスごとに異なる個体ばらつきが発生する。この場合に演算回路40が、温度データDTTの個体ばらつきを補正すれば、個体ばらつきをなくした絶対温度としての温度データDTTを求めることが可能になる。
【0039】
また記憶部44は、個体ばらつきを補正するための個体ばらつき補正係数を記憶する。この補正係数は、後述する
図10のステップS1で求められた補正係数に対応する。そして演算回路40は、記憶部44に記憶された温度補正係数に基づいて温度データDTTを補正する。このようにすれば、個体ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶部44に記憶しておき、この記憶された温度補正係数を用いて、温度データDTTの個体ばらつきを補正できるようになる。例えば回路装置1の製造時又は検査時に、温度補正係数を記憶部44に書き込むことで、温度データDTTのデバイスごとの個体ばらつきを適正に補正できるようになる。
【0040】
図9は、
図2に示す詳細な構成例の動作の概要を示す信号波形図である。
図9の上段には、後述の
図18で説明するクロック信号CKの波形が示されている。まず、初めにレギュレーター60の動作がイネーブルになり、これにより外部電源がレギュレートされ、電流供給回路10、発振回路20等に電源として、安定したレギュレート電圧VREGが供給される。そして、レギュレーター60の動作がイネーブルになった後に第2電流生成回路12と発振回路20の動作がイネーブルになり、第2電流生成回路12から温度に対応した第2電流IB2が供給電流IBnとして発振回路20に供給され、発振回路20で供給電流IBnに対応した周波数のクロック信号RCKが生成されるようになる。この第2電流生成回路12と発振回路20が動作イネーブルになっている期間に、回路装置1による温度検出が行われ、温度データDTTを求める処理が実行される。このように
図9においてAで示した部分は温度データDTTの検出に関する動作に対応している。
【0041】
次に、レギュレーター60が動作イネーブルの状態で第1電流生成回路11と発振回路20の動作がイネーブルになり、第1電流生成回路11から電圧に対応した第1電流IB1が供給電流IBnとして発振回路20に供給され、発振回路20で供給電流IBnに対応した周波数のクロック信号RCKが生成されるようになる。この第1電流生成回路11と発振回路20が動作イネーブルになっている期間に、回路装置1による電圧検出が行われ、検出電圧データDTVを求める処理が実行される。このように
図9のBで示した部分は検出電圧データDTVの検出動作に関する処理に対応している。
【0042】
そして温度検出、電圧検出が終わった後に、Cに示す判定演算が行われる。この判定演算では、例えばAに示す温度検出で求められた温度データDTTに基づいて、Cに示す電圧検出で求められた検出電圧データDTVの補正処理などが行われて、温度ばらつきや個体ばらつきを除去した検出電圧データDTVなどが求められる。
【0043】
3.補正アルゴリズム
次に本実施形態に用いられる補正アルゴリズムについて説明する。前述したように、本実施形態の回路装置1では、温度を検出する際にはデバイスごとの個体差によるばらつきの影響を受け、そして電圧を検出する際にはデバイスごとの個体差の他、温度によるばらつきによる影響を受けることになる。本実施形態の補正アルゴリズムは、このようなばらつきを補正して、個体差の影響をなくした絶対温度を算出したり、個体差及び温度によるばらつきを無くした絶対電圧を算出する手法として用いることができる。
【0044】
図10は本実施形態の補正アルゴリズムを説明するフローチャートである。本実施形態の補正アルゴリズムの概要としては、まず、ステップS1で温度ばらつき補正を行う。具体的には、ステップS1では個体に依らない絶対温度に換算する補正式の算出を行う。次に、ステップS2で電圧ばらつき補正を行う。具体的には、ステップS2では温度に依らない絶対電圧に換算する補正式を算出する。ここで、ステップS1、S2は例えば検査工程で行われる。そして、ステップS3a~ステップS3dまでの処理で、ステップS1、S2での補正式を用いて絶対電圧を算出し、絶対電圧と基準電圧の比較を行う。ステップS3a~ステップS3dまでの処理については、IC内で処理を行うことができる。
【0045】
前述したように、回路装置1を搭載する個々のデバイスは、同じ検出対象温度であっても、デバイスごとに検出された温度にはばらつきが発生する。ステップS1は、このようなデバイス毎の個体差によるばらつきを補正し、個体差によらない絶対温度を求める。
【0046】
具体的には、まず検出対象温度Taと、温度センサー出力周波数の理想的な関係を定義する。ここで、温度センサー出力周波数とは、ある検出対象温度Taにおいて発振回路20のクロック信号RCKのクロック数を所定のカウント期間TSENSの間カウントしたカウント値であり、DFTという。DFTは、
図2等で説明した第2カウント値CT2である。検出対象温度TaとDFTの理想値をそれぞれ、Tideal、DFTidealとすると、検出対象温度TaとDFTの理想的な対応関係は、補正後の狙い値になる理想直線の傾きをa、切片をbとして、DFTideal=a×Tideal+bと表すことができる。ここで、理想直線の傾きのaは目標傾き値であり、理想直線の切片のbは目標切片である。そして補正後のDFTであるDFTidealを補正カウント値という。
図11は、横軸が検出対象温度Ta、縦軸がDFT、即ち温度センサー出力周波数のグラフに理想直線をプロットした例である。
図11に示す例では、理想直線は傾きのaが正の右上がりの直線になっている。この理想直線は、目標値であり、任意に決めることができ、複数のサンプルを実際に図って決めてもよい。ステップS1では、検査により、検出対象温度Taと温度センサー出力周波数であるDFTを2組以上測定する。ここで検出対象温度Taは恒温槽などの温度を用いてもよい。あるサンプルmについて異なるn点の温度で測定した場合、(Tm1、DFTm1)、(Tm2、DFTm2)、・・・、(Tmn、DFTmn)という実測値が得られる。そして、このn組の実測値から、サンプルmにおける温度とDFTの関係式を求めることができる。サンプルmにおける温度とDFTの関係式は、例えば、DFTmn=A×Tmn+Bのように表すことができる。ここで、傾き値のAや切片のBは、サンプルごとに異なる値になり、例えば、Aは(DFTm2-DFTm1)/(Tm2-Tm1)により求められ、BはDFTm1-A×Tm1により求めることができる。
図12は、検出対象温度TaとDFTの理想直線と実測から得られた直線とを重ねてプロットし、比較した図である。
図12では、3つのサンプルについて、検出対象温度TaとDFTを測定し、それぞれの測定データを実測値1、2、3としてグラフにプロットした例である。そして、実測値1は三角のマークで示され、その上に近似直線が併せて表示されている。実測値2については四角のマークで、実測値3については×のマークで示されており、同様に近似直線が併せて表示されている。
図12に示すように、各サンプルにおけるDFTと検出対象温度Taの依存性は右上がりの直線で概ね共通しているが、サンプルごとにずれが生じている。そして、理想直線の目標傾き値のa、目標切片のbと、各サンプルのA、Bをメモリーに書き込む。そして、これらのデータから個体ばらつき補正を行った絶対温度Tcalcを求めることができる。まずサンプルmについての近似直線の傾きをA、切片をBとすると、理想直線に補正した後の温度センサー出力周波数であるDFTcalc、絶対温度Tcalcはそれぞれ、式(1)、式(2)のように表される。このようにして、各サンプルについて得られた温度を、サンプルに依存しない絶対温度Tcalcに補正することができる。
【0047】
【0048】
【0049】
図13は、サンプルごとにこのような補正を行い、各補正後の直線と、理想直線を重ねてグラフにプロットした例である。
図13に示すように、各サンプルの補正後の直線は、理想直線と重なり、サンプルごとの温度依存性のばらつきが無くなっている。
【0050】
次にステップS2について説明する。ステップS2は、電圧ばらつき補正を行い、絶対電圧に変換する補正式を算出する。まず、検出対象温度Taと検出対象電圧VSENと電圧センサー出力周波数を9組以上測定する。電圧センサー出力周波数とは、例えば発振器20のクロック信号RCKのクロック数を所定のカウント期間TSENSの間カウントしたカウント数であり、DFVという。DFVは、
図1、
図2等で説明した第1カウント値CT1である。例えば、サンプルmについて、温度Tm1、Tm2、Tm3、・・・、Tmnについて測定したとすると、温度Tm1では、(Vm11、DFVm11)、(Vm12、DFVm12)、(Vm13、DFVm13)となる。ここで、例えばDFVm11は、サンプルmの温度T1におけるDFVであることを示す。そして温度Tm2では、(Vm21、DFVm21)、(Vm22、DFVm22)、(Vm23、DFVm23)、温度Tm3では、(Vm31、DFVm31)、(Vm32、DFVm32)、(Vm33、DFVm33)のようになり、温度Tmnでは、(Vmn1、DFVmn1)、(Vmn2、DFVmn2)、(Vmn3、DFVmn3)のようになる。なお、ステップS2では上記のようにサンプルmについて、検出対象電圧VSENとDFVmの測定を行う際に、ステップS1で求められた個体ばらつきを補正した絶対温度Tcalcを用いることができる。
【0051】
そして上記で測定した結果をグラフにプロットし、各温度についてサンプルmについてのDFVmの電圧依存性の近似直線を算出する。
図14に、各温度でのDFVmと電圧の測定データをプロットしたときの例を示す。
図14は、-40度から110度までの4つの温度での測定データをプロットしたときの例であり、高温になるほど直線の傾きは大きくなっている。温度Tm1、Tm2、Tm3、Tm4のそれぞれについて、DFVmと電圧Vmの関係式は式(3)~(6)のように表すことができる。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
また各温度での電圧センサー出力周波数であるDFVmは、傾きがα、切片がβの1次直線として表すことができる。ここで、傾きのαと切片のβは、温度により決まる関数になる。
図14では、例えばTm1が-40度、Tm2が25度、Tm3が90度、Tm4が110度に対応している。式(3)~(6)の各式のα、βの理想的な値であるαcalc、βcalcは、横軸を温度として、縦軸にα、βをプロットしたときの近似式から求めることができる。
図15の上図は横軸を検出対象温度Ta、縦軸をαとしてプロットしたときのαと検出対象温度Taの関係を示す。そして、同図の下図は横軸を検出対象温度Ta、縦軸をβとしてプロットしたときのβと検出対象温度Taの関係を示す。
図15の上図では、各温度でのデータの近似式から、αは、式(7)のように求められる。
【0057】
【0058】
ここで、式(7)のα2、α1、α0は
図15のデータの近似式から求められ、横軸のTaはステップS1で算出した個体ばらつきを補正した絶対温度Tcalcを用いる。切片のβについても、αの算出と同様に横軸を検出対象温度Taとし、縦軸をβとしたときの各温度でのデータの近似式から、式(8)のように求めることができる。
【0059】
【0060】
αの場合と同様に、式(8)のβ2、β1、β0は
図15のデータの近似式から求められ、横軸のTaには絶対温度Tcalcを用いる。
【0061】
このようにしてステップS1で算出したTcalcと、ステップS2で算出したα(Tcalc)、β(Tcalc)と、DFVから絶対電圧Vcalcを求めることができる。具体的には、DFVmeasを、α(Tcalc)×Vcalc+β(Tcalc)とすると、絶対電圧Vcalcは式(9)のように表される。
【0062】
【0063】
図16は、各温度での測定データについて、検出対象電圧VSENに対して、絶対電圧Vcalcの値をプロットした例である。
図16に示すように、ステップS2により絶対電圧Vcalcに補正すると、ある検出対象電圧VSENに対して検出される電圧は、温度に依存しない絶対電圧Vcalcになる。
【0064】
次にステップS3a~ステップS3dまでについて説明する。まず、ステップS3aで複数のサンプルについて検出対象温度Taと温度センサー出力周波数であるDFTの測定を行う。そして、ステップ3Sbで、あるサンプルmについて、温度ごとに検出対象電圧VSENと当該検出対象電圧VSENにおけるDFVの測定を行う。ステップS3cでは、ステップS1で算出した個体ばらつきを補正するための補正式や、ステップS2で算出した絶対電圧に補正するための補正式を用いて、絶対電圧Vcalcを算出する。そして、ステップS3dで、検出対象電圧VSENと基準電圧の比較を行う。検出対象電圧VSENは、絶対電圧Vcalcに補正された後の電圧である。検出対象電圧VSENと基準電圧Vdetの比較は、検出対象電圧VSENに対応する検出電圧データDVcalcと、基準電圧Vdetに対応する基準電圧データDVdetの比較を行うことにより行う。例えば
図17に示すようにコンパレーターに検出電圧データDVcalcと、基準電圧データDVdetを入力し、判定を行うことができる。このようにして、本実施形態の補正アルゴリズムにより、回路装置1を搭載したデバイスごとのサンプルばらつきや電圧ばらつきを補正した絶対電圧を求めることができる。
【0065】
即ち本実施形態では、演算回路40は補正処理を行う。第1カウント値CT1をDFVとし、DFVを検出対象電圧の1次式で表したときの傾き値をαとし、1次式の切片をβとしたとき、補正処理は検出電圧データをVcalc=(DFV-β)/αにより求めることで行う。α及びβは温度データと、温度に対するα及びβの依存性を近似する情報とに基づいて求める。
【0066】
このようにすれば、第1カウント値CT1と、検出対象電圧VSENの理想的な対応関係をα、βの2つのパラメーターで決めることができる。そして、αとβは実測データの近似曲線から求めることができるため、電圧ばらつきを補正した後の絶対電圧Vcalcを求めることができる。
【0067】
また本実施形態では、第2カウント値をDFTとし、DFTを温度の1次式で表したときの傾き値をAとし、1次式の切片をBとし、目標傾き値をaとし、目標切片をbとしたとき、演算回路40は、補正カウント値をDFTcalc=(a/A)×(DFT-B)+bにより求め、温度データをTcalc=(DFTcalc-b)/aにより求めることで、個体ばらつきを補正する。
【0068】
このようにすれば、第2カウント値のDFTと検出対象温度Taの理想的な対応関係をa、bの2つのパラメーターで決めることができ、補正カウント値のDFTcalcを、a、bと、実測データから求められるA、Bを用いて算出することができ、これに基づいて個体ばらつきを補正した温度データを求めることができる。
【0069】
また本実施形態では、演算回路40は、基準電圧Vdetに対応する基準電圧データDVdetと検出電圧データDVcalcとを比較することで、検出対象電圧VSENが基準電圧Vdetになったか否かを判定する。
【0070】
このようにすれば、基準電圧Vdetと検出対象電圧VSENとを、基準電圧データDVdetと検出電圧データDVcalcを比較することにより大きさの比較を行うことができる。
【0071】
4.発振器
図18は、本実施形態の発振器200の構成例である。本実施形態の発振器200は、回路装置1と振動子210を含み、外部端子として電源端子TEVDD、グランド端子TEGND、出力イネーブル端子TEOE、クロック端子TECKを有する。また本実施形態の発振器200において、回路装置1は、電源回路90、発振回路100、温度検出回路110、電圧検出回路120、ロジック回路130、出力バッファー回路140を含み、電源パッドTVDD、グランドパッドTGND、出力イネーブルパッドTOE、クロックパッドTCK、振動子接続用のパッドTX1、TX2を有する。
【0072】
温度検出回路110と電圧検出回路120は、
図1、
図2で説明した電流供給回路10、発振回路20、カウンター回路30、演算回路40により実現される。例えば電流供給回路10が第2電流IB2を発振回路20に供給し、発振回路20からのクロック信号RCKに基づきカウンター回路30が第2カウント値CT2を出力し、演算回路40が第2カウント値CT2に基づき温度データDTTを求める演算を行うことで、
図18の温度検出回路110が実現される。また電流供給回路10が第1電流IB1を発振回路20に供給し、発振回路20からのクロック信号RCKに基づきカウンター回路30が第1カウント値CT1を出力し、演算回路40が第1カウント値CT1に基づき検出電圧データDTVを求める演算を行うことで、
図18の電圧検出回路120が実現される。なおカウンター回路30、演算回路40は実際には
図18のロジック回路130に設けられる。
【0073】
振動子210は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子であり、例えば音叉型水晶振動片、双音叉型水晶振動片などの水晶振動片により実現できる。
【0074】
電源回路90は、電源パッドTVDDから電源電圧VDDが供給されて、回路装置1の内部回路に種々の電源電圧を供給する。電源電圧VDDは例えば1.5~3.6Vの電圧であり、前述したレギュレート電圧VREGは、電源電圧VDDを降圧して生成される。
【0075】
回路装置1の電源パッドTVDDは、電源電圧VDDが供給されるパッドである。例えば外部の電源供給デバイスからの電源電圧VDDが電源パッドTVDDに供給される。グランドパッドTGNDは、グランド電圧であるGNDが供給されるパッドである。GNDはVSSと呼ぶこともでき、グランド電圧は例えば接地電位である。クロックパッドTCKは、回路装置1の出力信号が出力されるパッドである。出力イネーブルパッドTOEは、回路装置1の出力のイネーブル、ディスエーブルを制御するためのパッドである。回路装置1の各パッドは、例えば、絶縁層であるパシベーション膜から金属層が露出したパッドにより構成される。そして、電源パッドTVDD、グランドパッドTGND、クロックパッドTCK、出力イネーブルパッドTOEは、各々、発振器200の外部接続用の外部端子である電源端子TEVDD、グランド端子TEGND、クロック端子TECK、出力イネーブル端子TEOEに電気的に接続される。回路装置1と振動子210は、例えば、これら収納するパッケージの内部配線、ボンディグワイヤー又は金属バンプ等を用いて、電気的に接続されている。
【0076】
発振回路100は、振動子210の発振を制御し、所定の周波数の発振クロック信号を出力する。
図18のクロック信号CKはこの発振クロック信号に対応するクロック信号である。発振回路100は、可変容量回路101を有し、可変容量回路101により振動子210に印加される電圧が制御され、振動子210の振動を制御できるようになっている。発振回路100は、パッドTX1、TX2に電気的に接続され、振動子210を発振させることで発振クロック信号を生成する。発振回路100の生成する発振クロック信号の周波数は例えば64kHzである。本実施形態の回路装置1では、発振回路100の可変容量回路101にスイッチアレイとキャパシタアレイが設けられている。そして、スイッチアレイのスイッチを、ロジック回路130からの周波数調整データに基づいてオン、オフすることで可変容量回路101の容量が変化して、発振周波数が調整される。周波数調整データは、例えば温度補償を行う際に用いられるデータである。そして、外部の温度が変動した際に、周波数調整データに基づいて、温度変動による振動子210の振動数の変動を補償し、発振回路100が常時一定の周波数の発振クロック信号を生成できるようにする。ロジック回路130の温度補償回路131は、温度検出回路110からの温度データに基づいて、周波数調整データを出力する。温度補償回路131からの周波数調整データに基づいて可変容量回路101の容量が調整されることで、発振回路100は一定の周波数の発振クロック信号を生成することができる。例えば温度補償回路131は、温度データを入力とし、周波数調整データを出力とするルックアップテーブルを有し、このルックアップテーブルからの周波数調整データが、発振回路100に出力される。このようにして発振回路100の発振周波数が調整されて、温度補償処理が実現される。
【0077】
出力バッファー回路140は、発振クロック信号に対応するクロック信号CKに基づいて、出力クロック信号CKQを出力する。例えば出力バッファー回路140は、クロック信号CKをバッファリングして、出力クロック信号CKQとしてクロックパッドTCKに出力する。そして、この出力クロック信号CKQが発振器200のクロック端子TECKを介して外部に出力される。
【0078】
このように本実施形態の発振器200は、回路装置1と、所与の期間の設定用のクロック信号CKを生成するための振動子210と、を含んでいる。
【0079】
以上に説明したように本実施形態の回路装置は、発振回路と電流供給回路とカウンター回路と演算回路を含む。発振回路は、供給電流に応じて発振周波数が変化する。電流供給回路は、検出対象電圧に応じて変化する第1電流を供給電流として発振回路に供給する。カウンター回路は、発振回路の出力信号を所与の期間においてカウントするカウント処理を行う。演算回路は、発振回路に第1電流が供給される状態におけるカウント処理で得られた第1カウント値に基づいて、検出対象電圧に対応する検出電圧データを演算する電圧演算処理を行う。
【0080】
このようにすれば、検出対象電圧に応じて変化する第1電流を発振回路に供給し、第1電流に応じて発振周波数が変化する発振回路の出力信号を所与の期間においてカウント処理し、得られた第1カウント値に基づいて演算処理を行うことで、検出対象電圧に対応する検出電圧データを演算できるようになる。これにより、例えばカウント処理が行われる所与の期間の長さの設定や演算回路での演算処理のアルゴリズムの変更などにより、検出対象電圧の検出精度を調整することも可能になる。また検出精度がアナログ回路の性能に制約されないようにすることも可能になる。
【0081】
また本実施形態では、電流供給回路は、第1電流を生成する第1電流生成回路と、温度に応じて変化する第2電流を生成する第2電流生成回路と、第1電流又は第2電流を供給電流として発振回路に供給する電流セレクターと、を含んでもよい。
【0082】
このようにすれば、検出対象電圧を検出する場合には、電流セレクターが第1電流を選択することで、検出対象電圧に対応する検出電圧データを求め、温度を検出する場合には、電流セレクターが第2電流を選択することで、温度に対応する温度データを求めることが可能になる。
【0083】
また本実施形態では、演算回路は、発振回路に第2電流が供給される状態におけるカウント処理で得られた第2カウント値に基づいて、温度に対応する温度データを演算する温度演算処理を行ってもよい。
【0084】
このようにすれば、カウンター回路は、温度に応じて変化する第2カウント値を演算回路に出力できるようになり、演算回路は、温度に応じて変化する第2カウント値に基づく温度演算処理を行って、温度に対応する温度データを演算できるようになる。
【0085】
また本実施形態では、演算回路は、電圧演算処理において温度データに基づく補正処理を行うことで、検出電圧データを求めてもよい。
【0086】
このようにすれば、演算回路が第2カウント値に基づき求められた温度データを有効利用して、検出電圧データの補正処理を行うことが可能になる。
【0087】
また本実施形態では、演算回路は、電圧演算処理において検出対象電圧に対する検出電圧データの温度ばらつきを温度データに基づいて補正してもよい。
【0088】
このようにすれば、演算回路が第2カウント値に基づき求められた温度データを有効利用して、検出電圧データの温度ばらつきを補償する補正処理を実現できる。
【0089】
また本実施形態では、温度ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶する記憶部を含み、演算回路は、記憶部に記憶された温度補正係数に基づいて検出電圧データを補正してもよい。
【0090】
このようにすれば、温度ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶部に記憶しておき、この記憶された温度補正係数を用いて、検出電圧データの温度ばらつきを補正できるようになる。
【0091】
また第1カウント値をDFVとし、DFVを検出対象電圧の1次式で表したときの傾き値をαとし、一次式の切片をβとしたとする。このとき、演算回路は、検出電圧データをVcalc=(DFV-β)/αにより求め、α及びβは温度データと、温度に対するα及びβの依存性を近似する情報とに基づいて求めてもよい。
【0092】
このようにすれば、第1カウント値のDFVと、検出対象電圧の理想的な対応関係をα、βの2つのパラメーターで決めることができる。そして、αとβは実測データの近似曲線から求めることができるので、電圧ばらつきを補正した後の絶対電圧Vcalcを求めることができる。
【0093】
また本実施形態では、演算回路は、温度演算処理において温度に対する温度データの個体ばらつきを補正してもよい。
【0094】
このように温度データの個体ばらつきを補正すれば、個体ばらつきをなくした絶対温度としての温度データを求めることが可能になる。
【0095】
また本実施形態では、回路装置は、個体ばらつきを補正するための個体ばらつき補正係数を記憶する記憶部を含み、演算回路は、記憶部に記憶された個体ばらつき補正係数に基づいて温度データを補正してもよい。
【0096】
このようにすれば、個体ばらつきを補正するための温度補正係数を記憶部に記憶しておき、この記憶された温度補正係数を用いて、温度データの個体ばらつきを補正できるようになる。
【0097】
また本実施形態では、第2カウント値をDFTとし、DFTを温度の1次式で表したときの傾き値をAとし、1次式の切片をBとし、目標傾き値をaとし、目標切片をbとしたとき、演算回路40は、補正カウント値をDFTcalc=(a/A)×(DFT-B)+bにより求め、温度データをTcalc=(DFTcalc-b)/aにより求めることで、個体ばらつきを補正してもよい。
【0098】
このようにすれば、第2カウント値であるDFTと検出対象温度の理想的な対応関係をa、bの2つのパラメーターで決めることができ、補正カウント値を、a、bと、実測データから求められるA、Bを用いて算出することができ、これに基づいて個体ばらつきを無くした絶対温度を求めることができる。
【0099】
また本実施形態では、演算回路は、基準電圧に対応する基準電圧データと検出電圧データとを比較することで、検出対象電圧が基準電圧になったか否かを判定してもよい。
【0100】
このようにすれば、検出対象電圧が、基準電圧データに対応する基準電圧を超えたか又は下回ったかなどを、判定結果として出力できるようになる。
【0101】
また本実施形態では、電流供給回路は、第1電源電圧と第2電源電圧を含む複数の電圧の中から、検出対象電圧を選択して出力するセレクターを含んでもよい。
【0102】
このようにすれば、複数の電圧の中から検出したい電圧を、検出対象電圧としてセレクターにより選択できるようになる。
【0103】
また本実施形態では、発振回路は、リングオシレーターであってもよい。
【0104】
このようにすれば、リングオシレーターの発振周波数が、電流供給回路からの供給電流により制御されることで、供給電流に対応するカウント値をカウンター回路から出力して、検出電圧データ等を求めることが可能になる。
【0105】
また本実施形態は、回路装置と、所与の期間の設定用のクロック信号を生成するための振動子と、を含む発振器に関係する。
【0106】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、発振器の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…回路装置、10…電流供給回路、11…第1電流生成回路、12…第2電流生成回路、20…発振回路、21…ループ、30…カウンター回路、40…演算回路、41…第1演算器、42…第2演算器、44…記憶部、46…判定部、47…レジスター、48…出力部、51…セレクター、52…電流セレクター、60…レギュレーター、81…第1出力回路、82…第2出力回路、90…電源回路、100…発振回路、101…可変容量回路、110…温度検出回路、120…電圧検出回路、130…ロジック回路、131…温度補償回路、140…出力バッファー回路、200…発振器、210…振動子、CK…クロック信号、CT1…第1カウント値、CT2…第2カウント値、DTT…温度データ、DTV…検出電圧データ、DVcalc…検出電圧データ、DVdet…基準電圧データ、EN…イネーブル信号、FOUT…周波数、IB1…第1電流、IB2…第2電流、IBn…供給電流、IVA1、IVA2、IVA3…インバーター回路、NAA…NAND回路、R1、R2…抵抗、RCK…クロック信号、S1、S2、S3a、S3c、S3d…ステップ、TECK…クロック端子、TEGND…グランド端子、TEOE…出力イネーブル端子、TEVDD…電源端子、TGND…グランドパッド、TOE…出力イネーブルパッド、TSENS…カウント期間、TT1、TT2、TT3、TT4、TT5…トランスファーゲート、TVDD…電源パッド、TX1、TX2…パッド、Ta…検出対象温度、Tcalc…絶対温度、Tm1、Tm2、Tm3、Tmn…温度、VBAT…バッテリー電圧、VDD…電源電圧、VF…電圧、VOUT…出力電圧、VREG…レギュレート電圧、VSEN…検出対象電圧、Vcalc…絶対電圧、Vdet…基準電圧、Vm…電圧