(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070387
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、印刷装置、及び、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/401 20060101AFI20240516BHJP
H04N 1/405 20060101ALI20240516BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240516BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240516BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H04N1/401
H04N1/405 510A
B41J2/525
B41J2/01 201
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180842
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C262
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC71
2C056ED05
2C056EE08
2C056FA10
2C262AA02
2C262AA05
2C262AA16
2C262AA18
2C262AB01
2C262BB03
2C262BB08
2C262BC01
2C262DA16
2C262EA06
5C077LL19
5C077MP01
5C077MP08
5C077NN13
5C077PP33
5C077PQ08
5C077PQ12
5C077SS02
5C077TT03
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】画像の解像度比に合わせて粒状性の向上に寄与する技術を提供する。
【解決手段】各配分先画素に設定されている配分比に、該配分先画素の変換対象画素を基準とした第一方向における相対位置を乗じた総和を第一方向総和であるとし、該第一方向総和は0でなく、各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした第二方向における相対位置を乗じた総和を第二方向総和であるとし、該第二方向総和は0でなく、前記第一方向総和に対する前記第二方向総和の比を総和比とし、第一方向解像度に対する第二方向解像度の比を解像度比とし、前記解像度比が第一解像度比である場合の前記総和比を第一総和比とし、前記解像度比が前記第一解像度比よりも大きい第二解像度比である場合の前記総和比を第二総和比として、各前記配分比は、前記第二総和比が前記第一総和比よりも大きくなるように前記配分先画素に設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向における第一方向解像度、及び、前記第一方向と交差する第二方向における第二方向解像度が設定されている画像データを誤差拡散法によりドットの形成状態が表されたドットデータに変換可能な画像処理装置であって、
前記画像データを構成する複数の画素に含まれる変換対象画素において、画素値及び配分された誤差に基づいて前記ドットの形成状態を決定する変換部と、
前記変換対象画素において生じた誤差を未変換である複数の配分先画素のそれぞれに設定されている配分比に従って前記複数の配分先画素に拡散させる拡散部と、を備え、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第一方向における相対位置を乗じた総和を第一方向総和であるとし、該第一方向総和は0でなく、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第二方向における相対位置を乗じた総和を第二方向総和であるとし、該第二方向総和は0でなく、
前記第一方向総和に対する前記第二方向総和の比を総和比とし、
前記第一方向解像度に対する前記第二方向解像度の比を解像度比とし、
前記解像度比が第一解像度比である場合の前記総和比を第一総和比とし、
前記解像度比が前記第一解像度比よりも大きい第二解像度比である場合の前記総和比を第二総和比として、
各前記配分比は、前記第二総和比が前記第一総和比よりも大きくなるように前記配分先画素に設定されている、画像処理装置。
【請求項2】
各前記配分比は、前記総和比が前記解像度比に一致するように前記配分先画素に設定されている、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像データは、各前記画素に少なくともシアン、マゼンタ、及び、イエローの前記画素値を有し、
前記イエローを背景として前記シアンと前記マゼンタの少なくとも一方の前記ドットが形成される際に前記画像データを前記誤差拡散法により前記ドットデータに変換する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第一方向解像度が前記第二方向解像度よりも大きい場合、前記第一方向において前記複数の配分先画素が配置されている範囲は、前記第二方向において前記複数の配分先画素が配置されている範囲よりも広く、
前記第二方向解像度が前記第一方向解像度よりも大きい場合、前記第二方向において前記複数の配分先画素が配置されている範囲は、前記第一方向において前記複数の配分先画素が配置されている範囲よりも広い、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記第一方向において前記第一方向解像度であって前記第二方向において前記第二方向解像度である印刷画像を前記ドットデータに従って媒体に形成する印刷部と、を備える印刷装置。
【請求項6】
第一方向における第一方向解像度、及び、前記第一方向と交差する第二方向における第二方向解像度が設定されている画像データを誤差拡散法によりドットの形成状態が表されたドットデータに変換する画像処理方法であって、
前記画像データを構成する複数の画素に含まれる変換対象画素において、画素値及び配分された誤差に基づいて前記ドットの形成状態を決定する変換工程と、
前記変換対象画素において生じた誤差を未変換である複数の配分先画素のそれぞれに設定されている配分比に従って前記複数の配分先画素に拡散させる拡散工程と、を含み、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第一方向における相対位置を乗じた総和を第一方向総和であるとし、該第一方向総和は0でなく、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第二方向における相対位置を乗じた総和を第二方向総和であるとし、該第二方向総和は0でなく、
前記第一方向総和に対する前記第二方向総和の比を総和比とし、
前記第一方向解像度に対する前記第二方向解像度の比を解像度比とし、
前記解像度比が第一解像度比である場合の前記総和比を第一総和比とし、
前記解像度比が前記第一解像度比よりも大きい第二解像度比である場合の前記総和比を第二総和比として、
各前記配分比は、前記第二総和比が前記第一総和比よりも大きくなるように前記配分先画素に設定されている、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤差拡散法によるハーフトーン処理を実行可能な画像処理装置、印刷装置、及び、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷画像を形成するために多階調の画像データの階調数を減らすことによりドットの形成状態を表すドットデータを生成するハーフトーン処理を行う画像処理装置が知られている。誤差拡散法によるハーフトーン処理は、高画質出力が得られる手法として知られている。特許文献1には、誤差拡散法によりハーフトーン処理を行う画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷画像には、横方向の解像度と縦方向の解像度とが異なる場合がある。この場合、誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われると、ドットの配置に偏りが生じることがあり、特に画像中の低階調部において粒状性の低下として現れることがある。このように、誤差拡散法によるハーフトーン処理において、粒状性の観点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理装置は、第一方向における第一方向解像度、及び、前記第一方向と交差する第二方向における第二方向解像度が設定されている画像データを誤差拡散法によりドットの形成状態が表されたドットデータに変換可能な画像処理装置であって、
前記画像データを構成する複数の画素に含まれる変換対象画素において、画素値及び配分された誤差に基づいて前記ドットの形成状態を決定する変換部と、
前記変換対象画素において生じた誤差を未変換である複数の配分先画素のそれぞれに設定されている配分比に従って前記複数の配分先画素に拡散させる拡散部と、を備え、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第一方向における相対位置を乗じた総和を第一方向総和であるとし、該第一方向総和は0でなく、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第二方向における相対位置を乗じた総和を第二方向総和であるとし、該第二方向総和は0でなく、
前記第一方向総和に対する前記第二方向総和の比を総和比とし、
前記第一方向解像度に対する前記第二方向解像度の比を解像度比とし、
前記解像度比が第一解像度比である場合の前記総和比を第一総和比とし、
前記解像度比が前記第一解像度比よりも大きい第二解像度比である場合の前記総和比を第二総和比として、
各前記配分比は、前記第二総和比が前記第一総和比よりも大きくなるように前記配分先画素に設定されている、態様を有する。
【0006】
また、本発明の印刷装置は、
前記画像処理装置と、
前記第一方向において前記第一方向解像度であって前記第二方向において前記第二方向解像度である印刷画像を前記ドットデータに従って媒体に形成する印刷部と、を備える、態様を有する。
【0007】
さらに、本発明の画像処理方法は、第一方向における第一方向解像度、及び、前記第一方向と交差する第二方向における第二方向解像度が設定されている画像データを誤差拡散法によりドットの形成状態が表されたドットデータに変換する画像処理方法であって、
前記画像データを構成する複数の画素に含まれる変換対象画素において、画素値及び配分された誤差に基づいて前記ドットの形成状態を決定する変換工程と、
前記変換対象画素において生じた誤差を未変換である複数の配分先画素のそれぞれに設定されている配分比に従って前記複数の配分先画素に拡散させる拡散工程と、を含み、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第一方向における相対位置を乗じた総和を第一方向総和であるとし、該第一方向総和は0でなく、
各前記配分先画素に設定されている前記配分比に、該配分先画素の前記変換対象画素を基準とした前記第二方向における相対位置を乗じた総和を第二方向総和であるとし、該第二方向総和は0でなく、
前記第一方向総和に対する前記第二方向総和の比を総和比とし、
前記第一方向解像度に対する前記第二方向解像度の比を解像度比とし、
前記解像度比が第一解像度比である場合の前記総和比を第一総和比とし、
前記解像度比が前記第一解像度比よりも大きい第二解像度比である場合の前記総和比を第二総和比として、
各前記配分比は、前記第二総和比が前記第一総和比よりも大きくなるように前記配分先画素に設定されている、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】印刷ヘッドのノズル面と媒体上のドットパターンの例を模式的に示す図。
【
図3】誤差拡散法によるハーフトーン処理の例を模式的に示す図。
【
図5】解像度比に応じた配分比テーブルの例を模式的に示す図。
【
図6】配分比テーブルから算出される角度θsを解像度比Ry/Rxに基づいた角度θrに合わせる例を模式的に示す図。
【
図7】配分比テーブルから算出される角度θsを解像度比Ry/Rxに基づいた角度θrに合わせる例を模式的に示す図。
【
図8】印刷制御処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図9】ハーフトーン処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図10】配分比から算出される総和比を解像度比に近付けることによりドットが均等に分散するように配置される例を模式的に示す図。
【
図11】印刷制御処理の別の例を模式的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~11に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0011】
[態様1]
図1,3,9に例示するように、本技術の一態様に係る画像処理装置U0は、第一方向(例えばX方向)における第一方向解像度(例えば解像度Rx)、及び、前記第一方向と交差する第二方向(例えばY方向)における第二方向解像度(例えば解像度Ry)が設定されている画像データ(例えばインク量データDA2)を誤差拡散法によりドット38の形成状態が表されたドットデータDA3に変換可能な画像処理装置U0であって、変換部U1と拡散部U2を備える。前記変換部U1は、前記画像データ(DA2)を構成する複数の画素PX0に含まれる変換対象画素P0において、画素値MP0及び配分された誤差EP0に基づいて前記ドット38の形成状態を決定する。前記拡散部U2は、前記変換対象画素P0において生じた誤差E0を未変換である複数の配分先画素Qiのそれぞれに設定されている配分比Riに従って前記複数の配分先画素Qiに拡散させる。ここで、
図4,5に例示するように、各前記配分先画素Qiに設定されている前記配分比Riに該配分先画素Qiの前記変換対象画素P0を基準とした前記第一方向における相対位置(例えばΔxi)を乗じた総和が0でない第一方向総和(例えば総和Sx)であるとし、各前記配分先画素Qiに設定されている前記配分比Riに該配分先画素Qiの前記変換対象画素P0を基準とした前記第二方向における相対位置(例えばΔyi)を乗じた総和が0でない第二方向総和(例えば総和Sy)であるとし、前記第一方向総和(Sx)に対する前記第二方向総和(Sy)の比を総和比(例えばSy/Sx)とし、前記第一方向解像度(Rx)に対する前記第二方向解像度(Ry)の比を解像度比(例えばRy/Rx)とし、前記解像度比(Ry/Rx)が第一解像度比RR1である場合の前記総和比(Sy/Sx)を第一総和比SR1とし、前記解像度比(Ry/Rx)が前記第一解像度比RR1よりも大きい第二解像度比RR2である場合の前記総和比(Sy/Sx)を第二総和比SR2とする。各前記配分比Riは、前記第二総和比SR2が前記第一総和比SR1よりも大きくなるように前記配分先画素Qiに設定されている。
【0012】
以上より、画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がより均等に分散するように配置されるドットデータDA3が生成される。従って、上記態様は、画像の解像度比に合わせて粒状性の向上に寄与する画像処理装置を提供することができる。
【0013】
ここで、本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。例えば、画像データの複数の画素がX方向及びY方向に並んでいる場合、X方向が第一方向に当て嵌められるとY方向が第二方向に当て嵌まり、Y方向が第一方向に当て嵌められるとX方向が第二方向に当て嵌まる。
ドットデータは、ドットの形成有無を表す2値データでもよいし、ドットのサイズを含む3値以上のデータでもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
[態様2]
図5~7に例示するように、各前記配分比Riは、前記総和比(Sy/Sx)が前記解像度比(Ry/Rx)に一致するように前記配分先画素Qiに設定されてもよい。
以上の場合、画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がさらに均等に分散するように配置される。従って、上記態様は、粒状性の点で画質を向上させる好適な例を提供することができる。
【0015】
[態様3]
図3に例示するように、前記画像データ(DA2)は、各前記画素PX0に少なくともシアン、マゼンタ、及び、イエローの前記画素値を有していてもよい。本画像処理装置は、
図11に例示するように、前記イエローを背景として前記シアンと前記マゼンタの少なくとも一方の前記ドット38が形成される際に前記画像データ(DA2)を前記誤差拡散法により前記ドットデータDA3に変換してもよい。
イエローを背景としてシアンとマゼンタの少なくとも一方のドット38がまばらに形成される場合、当該ドット38の配置に偏りが生じると、違和感を憶えることがある。上記態様は、イエローを背景としてシアンとマゼンタの少なくとも一方のドット38が形成される際に画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてより均等に分散するように配置されるので、出力画像の画質を向上させることができる。
【0016】
[態様4]
図5に例示するように、前記第一方向解像度(Rx)が前記第二方向解像度(Ry)よりも大きい場合、前記第一方向において前記複数の配分先画素Qiが配置されている範囲は、前記第二方向において前記複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広くてもよい。前記第二方向解像度(Ry)が前記第一方向解像度(Rx)よりも大きい場合、前記第二方向において前記複数の配分先画素Qiが配置されている範囲は、前記第一方向において前記複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広くてもよい。
第一方向解像度(Rx)が第二方向解像度(Ry)よりも大きい場合、第一方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲が第二方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広いことにより、誤差が拡散される範囲は第二方向よりも第一方向の方が広くなる。これにより、画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がさらに均等に分散するように配置される。一方、第二方向解像度(Ry)が第一方向解像度(Rx)よりも大きい場合、第二方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲が第一方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広いことにより、誤差が拡散される範囲は第一方向よりも第二方向の方が広くなる。これにより、画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がさらに均等に分散するように配置される。従って、上記態様は、粒状性の点で画質を向上させる好適な例を提供することができる。
【0017】
[態様5]
ところで、本技術の一態様に係る印刷装置1は、
図1に例示するように、上述した画像処理装置U0と、前記第一方向において前記第一方向解像度(Rx)であって前記第二方向において前記第二方向解像度(Ry)である印刷画像IM0を前記ドットデータDA3に従って媒体ME0に形成する印刷部U3と、を備える。
以上より、印刷画像IM0の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がより均等に分散するように配置される。従って、上記態様は、印刷画像の解像度比に合わせて粒状性の向上に寄与する印刷装置を提供することができる。
【0018】
[態様6]
また、本技術の一態様に係る画像処理方法は、第一方向における第一方向解像度(Rx)、及び、前記第一方向と交差する第二方向における第二方向解像度(Ry)が設定されている画像データ(DA2)を誤差拡散法によりドット38の形成状態が表されたドットデータDA3に変換する画像処理方法であって、以下の工程を含む。
(A1)前記画像データ(DA2)を構成する複数の画素PX0に含まれる変換対象画素P0において、画素値MP0及び配分された誤差EP0に基づいて前記ドット38の形成状態を決定する変換工程ST1。
(A2)前記変換対象画素P0において生じた誤差E0を未変換である複数の配分先画素Qiのそれぞれに設定されている配分比Riに従って前記複数の配分先画素Qiに拡散させる拡散工程ST2。
ここで、
図4,5に例示するように、各前記配分先画素Qiに設定されている前記配分比Riに該配分先画素Qiの前記変換対象画素P0を基準とした前記第一方向における相対位置(Δxi)を乗じた総和が0でない第一方向総和(Sx)であるとし、各前記配分先画素Qiに設定されている前記配分比Riに該配分先画素Qiの前記変換対象画素P0を基準とした前記第二方向における相対位置(Δyi)を乗じた総和が0でない第二方向総和(Sy)であるとし、前記第一方向総和(Sx)に対する前記第二方向総和(Sy)の比を総和比(Sy/Sx)とし、前記第一方向解像度(Rx)に対する前記第二方向解像度(Ry)の比を解像度比(Ry/Rx)とし、前記解像度比(Ry/Rx)が第一解像度比RR1である場合の前記総和比(Sy/Sx)を第一総和比SR1とし、前記解像度比(Ry/Rx)が前記第一解像度比RR1よりも大きい第二解像度比RR2である場合の前記総和比(Sy/Sx)を第二総和比SR2とする。各前記配分比Riは、前記第二総和比SR2が前記第一総和比SR1よりも大きくなるように前記配分先画素Qiに設定されている。
【0019】
以上より、画像の解像度比(Ry/Rx)に応じてドット38がより均等に分散するように配置されるドットデータDA3が生成される。従って、上記態様は、画像の解像度比に合わせて粒状性の向上に寄与する画像処理方法を提供することができる。
【0020】
さらに、本技術は、上述した画像処理装置を含む印刷システム、上述した画像処理装置の制御方法、前述の印刷システムの制御方法、上述した画像処理装置の制御プログラム、前述の印刷システムの制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等に適用可能である。また、上述した画像処理装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0021】
(2)画像処理装置を含む印刷装置の具体例:
図1は、画像処理装置U0を含む印刷装置1を模式的に例示している。本具体例の印刷装置1はプリンター2自体であるものとするが、印刷装置1はプリンター2とホスト装置HO1との組合せでもよい。尚、プリンター2は
図1に示されていない追加要素を含んでいてもよい。
図2は、印刷ヘッド30のノズル面30aと媒体ME0上のドットパターンを模式的に例示している。
【0022】
図1に示すプリンター2は、インクジェットプリンターの一種であるシリアルプリンターである。むろん、本技術を適用可能なプリンターは、媒体の幅方向のほぼ全体にわたってノズルが並べられたノズル列を有するラインプリンター、色材としてトナーを使用するレーザープリンターといった電子写真方式のプリンター、等でもよい。
インクジェット方式であるプリンター2は、コントローラー10、半導体メモリーであるRAM21、通信I/F22、記憶部23、操作パネル24、印刷ヘッド30、駆動部50、等を備える。ここで、RAMはRandom Access Memoryの略称であり、I/Fはインターフェイスの略称である。コントローラー10、RAM21、通信I/F22、記憶部23、及び、操作パネル24は、バスに接続され、互いに情報を入出力可能とされている。
【0023】
コントローラー10は、プロセッサーであるCPU11、色変換部12、ハーフトーン処理部13、ラスタライズ処理部14、駆動信号送信部15、等を備えている。ここで、CPUは、Central Processing Unitの略称である。ハーフトーン処理部13は、変換部U1と拡散部U2を備える画像処理装置U0の例である。コントローラー10は、ホスト装置HO1、不図示のメモリーカード、等のいずれかから取得した元画像データDA1に基づいて、駆動部50による主走査及び副走査、並びに、印刷ヘッド30によるインク滴37の吐出を制御する。元画像データDA1には、例えば、各画素にR、G、及び、Bの28階調や216階調の整数値を有するRGBデータを適用することができる。ここで、Rは赤を意味し、Gは緑を意味し、Bは青を意味する。
コントローラー10は、SoC等により構成することができる。ここで、SoCは、System on a Chipの略称である。
【0024】
CPU11は、プリンター2における情報処理や制御を中心的に行う装置である。
色変換部12は、例えば、R、G、及び、Bの階調値とC、M、Y、及び、Kの階調値との対応関係が規定された色変換LUTを参照し、RGBデータを各画素にC、M、Y、及び、Kの2
8階調や2
16階調の整数値を有するインク量データDA2に変換する。ここで、Cはシアンを意味し、Mはマゼンタを意味し、Yはイエローを意味し、Kはブラックを意味し、LUTはルックアップテーブルの略称である。インク量データDA2は、画素PX0(
図2参照)の単位でC、M、Y、及び、Kのインク36の使用量を表している。また、RGBデータの解像度が出力解像度Rx,Ry(
図4参照)とは異なる場合、色変換部12は、先にRGBデータの解像度を出力解像度Rx,Ryに変換するか、又は、インク量データDA2の解像度を出力解像度Rx,Ryに変換する。出力解像度Rx,Ryのインク量データDA2は、出力解像度Rx,Ryが設定されている画像データの例である。
【0025】
ハーフトーン処理部13は、インク量データDA2を構成する各画素PX0の階調値に対して誤差拡散法によるハーフトーン処理を行うことにより前記階調値の階調数を減らし、ドットデータDA3を生成する。ドットデータDA3は、画素PX0の単位でドット38の形成状態を表している。ドットデータDA3は、ドットの形成有無を表す2値データでもよいし、小中大の各ドットといった異なるサイズのドットに対応可能な3階調以上の多値データでもよい。
ラスタライズ処理部14は、駆動部50でドット38が形成される順番にドットデータDA3を並べ換えるラスタライズ処理を行うことによりラスターデータRA0を生成する。
【0026】
駆動信号送信部15は、印刷ヘッド30の駆動回路31に対して、印刷ヘッド30の駆動素子32に印加する電圧信号に対応した駆動信号SG1をラスターデータRA0から生成して出力する。例えば、ラスターデータRA0が「ドット形成」であれば、駆動信号送信部15はドット形成用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。また、ラスターデータRA0が4値データである場合、駆動信号送信部15は、ラスターデータRA0が「大ドット形成」であれば大ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ラスターデータRA0が「中ドット形成」であれば中ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ラスターデータRA0が「小ドット形成」であれば小ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。
尚、プリンター2がラインプリンターである場合、コントローラー10にラスタライズ処理部14が無くてもよく、駆動信号送信部15がドットデータDA3から駆動信号SG1を生成してもよい。
【0027】
上記各部11~15は、ASICで構成されてもよく、RAM21から処理対象のデータを直接読み込んだりRAM21に処理後のデータを直接書き込んだりしてもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
【0028】
コントローラー10に制御される駆動部50は、キャリッジ駆動部51とローラー駆動部55を備える。駆動部50は、キャリッジ駆動部51の駆動によりキャリッジ52を主走査方向D1に沿って往復動作させ、ローラー駆動部55の駆動により媒体ME0を搬送経路59に沿って送り方向D3へ送る。
図2に示すように、主走査方向D1は、ノズル34の並び方向D4と交差する方向であり、例えば、並び方向D4に直交する方向である。送り方向D3は、主走査方向D1と交差する方向であり、例えば、主走査方向D1に直交する方向である。
図1において、送り方向D3は右方向であり、左側を上流側と呼び、右側を下流側と呼ぶことにする。
図2に示す副走査方向D2は、送り方向D3とは逆の方向である。キャリッジ駆動部51は、コントローラー10の制御に従って、キャリッジ52を主走査方向D1に沿って往復移動させる。キャリッジ駆動部51は、主走査方向D1に沿って印刷ヘッド30と媒体ME0との相対的な位置関係を変化させる主走査を行うといえる。ローラー駆動部55は、搬送ローラー対56と排出ローラー対57を含んでいる。ローラー駆動部55は、コントローラー10の制御に従って、搬送ローラー対56の駆動搬送ローラーと排出ローラー対57の駆動排出ローラーを回転させることにより媒体ME0を送り方向D3へ送る副走査を行う。ローラー駆動部55は、主走査方向D1と交差する副走査方向D2に沿って印刷ヘッド30と媒体ME0との相対的な位置関係を変化させる副走査を行うといえる。媒体ME0は、印刷画像を保持する素材のことであり、紙、樹脂、金属、等で形成される。媒体ME0の材質は、特に限定されず、樹脂、金属、紙、等、様々な材質が考えられる。媒体ME0の形状も、特に限定されず、長方形、ロール状、等、様々な形状が考えられ、立体形状でもよい。
【0029】
キャリッジ52には、印刷ヘッド30が搭載されている。キャリッジ52には、インク滴37として吐出されるインク36が印刷ヘッド30に供給されるインクカートリッジ35が搭載されてもよい。むろん、キャリッジ52外に設置されたインクカートリッジ35からチューブを介して印刷ヘッド30にインク36が供給されてもよい。キャリッジ52は、図示しない無端ベルトに固定され、ガイド53に沿って、主走査方向D1へ移動可能である。ガイド53は、長手方向を主走査方向D1に向けた長尺な部材である。キャリッジ駆動部51は、サーボモーターで構成され、コントローラー10からの指令に従ってキャリッジ52を主走査方向D1に沿って往復移動させる。
【0030】
印刷ヘッド30から上流側にある搬送ローラー対56は、副走査時、ニップしている媒体ME0を駆動搬送ローラーの回転により印刷ヘッド30の方へ送る。印刷ヘッド30から下流側にある排出ローラー対57は、副走査時、ニップしている媒体ME0を駆動排出ローラーの回転により不図示の媒体排出部の方へ搬送する。ローラー駆動部55は、サーボモーターで構成され、コントローラー10からの指令に従って搬送ローラー対56と排出ローラー対57を動作させ、媒体ME0を送り方向D3へ送る。
【0031】
プラテン58は、搬送経路59の下側にあり、搬送経路59にある媒体ME0に接することにより媒体ME0を支持する。コントローラー10に制御される印刷ヘッド30は、プラテン58に支持されている媒体ME0に向けてインク滴37を吐出することにより媒体ME0にインク36を付着させる。
【0032】
駆動回路31や駆動素子32等を備える印刷ヘッド30は、インク滴37を吐出する複数のノズル34をノズル面30aに有し、プラテン58上の媒体ME0にインク滴37を吐出することにより印刷を行う。ここで、ノズルはインク滴が噴射する小孔を意味し、ノズル列は複数のノズルの並びを意味する。ノズル面30aは、インク滴37の吐出面である。駆動回路31は、駆動信号送信部15から入力される駆動信号SG1に従って駆動素子32に電圧信号を印加する。駆動素子32には、ノズル34に連通する圧力室内のインク36に圧力を加える圧電素子、熱により圧力室内に気泡を発生させてノズル34からインク滴37を吐出させる駆動素子、等を用いることができる。印刷ヘッド30の圧力室には、インクカートリッジ35からインク36が供給される。圧力室内のインク36は、駆動素子32によってノズル34から媒体ME0に向かってインク滴37として吐出される。これにより、媒体ME0にインク滴37のドット38が形成される。印刷ヘッド30が主走査方向D1へ移動する間にラスターデータRA0に従ったドット38が形成され、媒体ME0が送り方向D3へ副走査1回分、送られることが繰り返されることにより、媒体ME0に印刷画像IM0が形成される。
ラスタライズ処理部14と駆動信号送信部15を含むコントローラー10、印刷ヘッド30、及び、駆動部50は、出力解像度Rx,Ryの印刷画像IM0をドットデータDA3に従って媒体ME0に形成する印刷部U3の例である。
【0033】
RAM21は、ホスト装置HO1や不図示のメモリー等から受け入れた元画像データDA1等を格納する。通信I/F22は、ホスト装置HO1に有線又は無線で接続され、ホスト装置HO1に対して情報を入出力する。ホスト装置HO1には、パーソナルコンピューターやタブレット端末といったコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、等が含まれる。記憶部23には、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気記憶装置、等を用いることができる。操作パネル24は、情報を表示する液晶パネルといった出力部25、表示画面への操作を受け付けるタッチパネルといった入力部26、等を備えている。
【0034】
図2に示す印刷ヘッド30は、並び方向D4へ所定のノズルピッチの間隔で並んでいる複数のノズル34を含むノズル列33を複数、ノズル面30aに有している。複数のノズル列33は、Cのインク滴37を吐出するシアンノズル列33C、Mのインク滴37を吐出するマゼンタノズル列33M、Yのインク滴37を吐出するイエローノズル列33Y、及び、Kのインク滴37を吐出するブラックノズル列33Kを含んでいる。各インク滴37は、媒体ME0の画素PX0を目標にしてノズル34から吐出される。むろん、Cのインク滴37から媒体ME0にCのドット38が形成され、Mのインク滴37から媒体ME0にMのドット38が形成され、Yのインク滴37から媒体ME0にYのドット38が形成され、Kのインク滴37から媒体ME0にKのドット38が形成される。各ノズル列33は、インク滴37を媒体ME0に向けて吐出する。各ノズル列33に含まれる複数のノズル34は、一列に並べられてもよいし、千鳥状すなわち2列に並べられてもよい。
【0035】
図3は、インク量データDA2をドットデータDA3に変換するハーフトーン処理部13で行われるハーフトーン処理を模式的に例示している。
図3中、インク量データDA2及びドットデータDA3の各画素PX0が正方形で示され、変換対象画素P0が太線で示されている。インク量データDA2が256階調である場合、インク量データDA2は、各画素PX0に、Cの階調値C
256、Mの階調値M
256、Yの階調値Y
256、及び、Kの階調値K
256を有している。ドットデータDA3は、各画素PX0に、Cのドット値C
d、Mのドット値M
d、Yのドット値Y
d、及び、Kのドット値K
dを有している。変換対象画素P0において、該変換対象画素P0の画素値MP0が上段に示され、生じた誤差E0が下段に示されている。配分比R1~R6に従って誤差E0が配分される複数の配分先画素Q1~Q6において、該配分先画素Q1~Q6の画素値M1~M6が上段に示され、変換対象画素P0から配分された誤差E1~E6が下段に示されている。ここで、配分先画素Q1~Q6を配分先画素Qiと総称し、配分比R1~R6を配分比Riと総称し、画素値M1~M6を画素値Mi(不図示)と総称し、誤差E1~E6を誤差Eiと総称する。変換済画素PX2には、便宜上、ドット値に対応する階調値として256階調のインク量データDA2を基準とした階調値が示されている。
【0036】
インク量データDA2及びドットデータDA3は、
図3において横方向であるX方向、及び、
図3において縦方向であるY方向へ整然と並べられた複数の画素PX0を有している。ここで、X方向は第一方向の例であり、Y方向は第二方向の例である。X方向とY方向は、互いに交差し、
図3において直交している。
図3において、X-Y座標の原点は左上にあり、右側となるほどX座標が大きくなり、下側となるほどY座標が大きくなるものとする。変換対象画素P0の設定順序は、
図3の上部に示す矢印のように、左上角の原点画素からX座標が大きくなる順に右上角の画素までの設定順から始まり、その一つずつ下の左端の画素からX座標が大きくなる順に右端の画素までの設定順を繰り返し、最後に右下角の画素で終わる順序である。この設定順序によると、変換済画素PX2は、変換対象画素P0よりもY座標が小さい上側の画素、及び、変換対象画素P0とY座標が同じであって変換対象画素P0よりもX座標が小さい左方の画素となる。また、未変換画素PX1は、変換対象画素P0とY座標が同じであって変換対象画素P0よりもX座標が大きい右方の画素、及び、変換対象画素P0よりもY座標が大きい下側の画素となる。配分先画素Qiは、変換対象画素P0の右方又は下側に存在する未変換画素PX1から選ばれる。
尚、インク量データDA2は色別に用意されるため、ドットデータDA3は色別に生成される。例えば、C、M、Y、及び、Kのインク量データDA2が用意される場合、C、M、Y、及び、KのドットデータDA3が生成される。
【0037】
ハーフトーン処理部13に含まれる変換部U1は、変換対象画素P0において、画素値MP0及び配分された誤差EP0に基づいてドット38の形成状態を決定する。例えば、ドットデータDA3がドット38の形成有無を表す2値データである場合、変換部U1は、変換対象画素P0のドット値を、「ドット無し」に対応する0、又は、「ドット形成」に対応する1に決定する。
図3には、ドット値0に対応する256階調の階調値0、又は、ドット値1に対応する256階調の階調値255が各変換済画素PX2に示されている。
【0038】
ハーフトーン処理部13に含まれる拡散部U2は、変換対象画素P0において、ドット値決定に伴う誤差E0を算出し、生じた誤差E0を未変換である複数の配分先画素Qiのそれぞれに設定されている配分比Riに従って複数の配分先画素Qiに拡散させる。拡散部U2は、
図3の下部に示すような配分比テーブルTA0から定まる配分比Riを誤差E0に乗じることにより各配分先画素Qiに配分する誤差Eiを決定する。例えば、
図3に示す配分比テーブルTA0には、変換対象画素P0を基準として、配分先画素Q1,Q4に重み4が割り当てられ、配分先画素Q2に重み3が割り当てられ、配分先画素Q3,Q5に重み2が割り当てられ、配分先画素Q6に重み1が割り当てられている。配分先画素Q1~Q6に割り当てられた重みの合計は16なので、配分比R1,R4は4/16であり、配分比R2は3/16であり、配分比R3,R5は2/16であり、配分比R6は1/16である。
尚、各配分先画素Qiに配分される誤差は、複数の変換済画素PX2に由来することがあるため、
図3に示す誤差E1~E6とは別の誤差も含まれることがある。
【0039】
印刷画像IM0には、
図4に例示するように、様々な解像度Rx,Ryが設定され得る。
図4は、印刷画像IM0の様々な解像度を模式的に例示している。ここで、X方向の解像度Rxは第一方向における第一方向解像度の例であり、Y方向の解像度Ryは第二方向における第二方向解像度の例であり、解像度比Ry/Rxは第一方向解像度に対する第二方向解像度の比の例である。
例えば、解像度Rxが2400dpiである場合、X方向において印刷画像IM0に含まれる複数の画素PX0が1インチ当たり2400個の密度で配置されることを意味する。解像度Ryが600dpiである場合、Y方向において印刷画像IM0に含まれる複数の画素PX0が1インチ当たり600個の密度で配置されることを意味する。従って、Rx×Ry=2400×600dpiである場合、印刷画像IM0上では、X方向における画素PX0の間隔はY方向における画素PX0の間隔の1/4となり、X方向とY方向とにおける画素PX0の間隔が異なる。逆に、Rx×Ry=600×2400dpiである場合、印刷画像IM0上では、X方向における画素PX0の間隔はY方向における画素PX0の間隔の4倍となり、X方向とY方向とにおける画素PX0の間隔が異なる。むろん、解像度Rx,Ryがともに600dpiであれば、X方向とY方向とにおける画素PX0の間隔は同じである。
【0040】
様々な解像度比Ry/Rxにおいて共通の配分比テーブルに従って誤差拡散法によるハーフトーン処理を行ったところ、解像度比Ry/Rxによってはドットの配置に偏りが生じることが判った。例えば、Ry=Rxを前提に設計された配分比テーブルを使用してY方向の解像度RyがX方向の解像度Rxとは異なる印刷画像を形成したところ、ワームと呼ばれるドットの非所望な連続が低階調部において発生することがあった。このように、解像度比Ry/Rxによってはドットの配置に偏りが生じ、特に印刷画像中の低階調部において粒状性の低下として現れることがある。
本具体例では、解像度比Ry/Rxに応じて配分比テーブルTA0を切り替えることにより、ドット38をより均等に分散させ、粒状性の点で印刷画像IM0の画質を向上させることにしている。
【0041】
尚、説明の都合上、複数段階の解像度比Ry/Rxの内、いずれか一つを第一解像度比RR1と呼び、該第一解像度比RR1よりも大きい解像度比を第二解像度比RR2を呼ぶことにする。
図4では、Ry/Rx=1/4が第一解像度比RR1に当て嵌められ、Ry/Rx=1/2が第二解像度比RR2に当て嵌められていることが示されている。むろん、第一解像度比RR1及び第二解像度比RR2の当て嵌めは様々に可能であるため、例えば、Ry/Rx=1/2が第一解像度比RR1に当て嵌められてRy/Rx=1が第二解像度比RR2に当て嵌められてもよい。
【0042】
図5は、解像度比Ry/Rxに応じた配分比テーブルTA0を模式的に例示している。
図5に示すように、解像度比Ry/Rxに応じて異なる配分比テーブルTA0が用意されている。
図1に示すコントローラー10は、解像度比Ry/Rxに応じた複数の配分比テーブルTA0を保持している。
図5には、解像度比1/4、1/2、1、2、4にそれぞれ紐付けられている配分比テーブルTA1,TA2,TA3,TA4,TA5が示されている。各配分比テーブルTA0は、変換対象画素P0を基準として配分先画素Qiに割り当てられている配分比Riを表す値を有している。例えば、配分比テーブルTA1は、n=9個の配分先画素Qiを識別する変数をiとして、i=1~9の順に、それぞれ、3、2、2、2、1、1、1、3、1の値を有している。これらの値の合計は16であるので、配分比Riは、i=1~9の順に、それぞれ、3/16、2/16、2/16、2/16、1/16、1/16、1/16、3/16、1/16となる。
【0043】
ここで、各配分先画素Qiに設定されている配分比Riに該配分先画素Qiの変換対象画素P0を基準としたX方向における相対位置Δxiを乗じた総和を第一方向総和Sxとする。また、各配分先画素Qiに設定されている配分比Riに該配分先画素Qiの変換対象画素P0を基準としたY方向における相対位置Δyiを乗じた総和を第二方向総和Syとする。総和Sx,Syは、以下の式により表される。
【数1】
各配分比Riは、Sx>0且つSy>0となるように設定される。
【0044】
例えば、配分比テーブルTA1において、第一方向総和Sx及び第二方向総和Syは、以下の通りとなる。
Sx=(3×1+2×2+2×3+2×4+1×5-1×2-1×1+3×0+1×1)/16
=24/16
Sy=(3×0+2×0+2×0+2×0+1×0+1×1+1×1+3×1+1×1)/16
=6/16
【0045】
さらに、第一方向総和Sxに対する第二方向総和Syの比を総和比Sy/Sxとする。各配分比テーブルTA0において、各配分比Riは、総和比Sy/Sxが解像度比Ry/Rxに一致するように配分先画素Qiに設定されている。
例えば、配分比テーブルTA1における総和比Sy/Sxは、1/4であり、解像度比Ry/Rx=1/4に一致している。配分比テーブルTA2における総和比Sy/Sxは、1/2であり、解像度比Ry/Rx=1/2に一致している。配分比テーブルTA3における総和比Sy/Sxは、1であり、解像度比Ry/Rx=1に一致している。配分比テーブルTA4における総和比Sy/Sxは、2であり、解像度比Ry/Rx=2に一致している。配分比テーブルTA5における総和比Sy/Sxは、4であり、解像度比Ry/Rx=4に一致している。
【0046】
また、解像度比Ry/Rxが第一解像度比RR1である場合の総和比Sy/Sxを第一総和比SR1とし、解像度比Ry/Rxが第一解像度比RR1よりも大きい第二解像度比RR2である場合の総和比Sy/Sxを第二総和比SR2とする。例えば、
図4に示すように、解像度比Ry/Rx=1/4が第一解像度比RR1に当て嵌められ、解像度比Ry/Rx=1/2が第二解像度比RR2に当て嵌められるとする。この場合、
図5に示すように、総和比Sy/Sx=1/4が第一総和比SR1に当て嵌まり、総和比Sy/Sx=1/2が第二総和比SR2に当て嵌まる。各配分比Riは、第二総和比SR2が第一総和比SR1よりも大きくなるように配分先画素Qiに設定されている。むろん、第一総和比SR1及び第二総和比SR2の当て嵌めは様々に可能であるため、例えば、Sy/Sx=Ry/Rx=1/2が第一総和比SR1に当て嵌まるようにされてSy/Sx=Ry/Rx=1が第二総和比SR2に当て嵌まるようにされてもよい。
【0047】
図6,7に例示するように、総和比Sy/Sxを解像度比Ry/Rxに一致させることは、総和比Sy/Sxに基づいた角度θs=tan
-1(Sy/Sx)を解像度比Ry/Rxに基づいた角度θr=tan
-1(Ry/Rx)に合わせることと等価である。
図6は、解像度比Ry/Rx=1/2に紐付けられている配分比テーブルTA2から算出される角度θsを解像度比Ry/Rxに基づいた角度θrに合わせる例を模式的に示している。
図7は、解像度比Ry/Rx=2に紐付けられている配分比テーブルTA4から算出される角度θsを解像度比Ry/Rxに基づいた角度θrに合わせる例を模式的に示している。
【0048】
解像度比Ry/Rxに基づいた角度θrは、隣辺の長さを解像度Rxとし、対辺の長さを解像度Ryとした直角三角形の内角を意味し、解像度比Ry/Rxの逆正接値で表される。
θr=tan
-1(Ry/Rx) …(3)
図4に示す例において、解像度比Ry/Rxが1/4である場合の角度θrは14.04°であり、解像度比Ry/Rxが1/2である場合の角度θrは26.57°であり、解像度比Ry/Rxが1である場合の角度θrは45.00°であり、解像度比Ry/Rxが2である場合の角度θrは63.43°であり、解像度比Ry/Rxが2である場合の角度θrは75.96°である。
総和比Sy/Sxに基づいた角度θsは、隣辺の長さを第一方向総和Sxとし、対辺の長さを第二方向総和Syとした直角三角形の内角を意味し、総和比Sy/Sxの逆正接値で表される。
θs=tan
-1(Sy/Sx) …(4)
図5に示す例において、総和比Sy/Sxが1/4である場合の角度θsは14.04°であり、総和比Sy/Sxが1/2である場合の角度θsは26.57°であり、総和比Sy/Sxが1である場合の角度θsは45.00°であり、総和比Sy/Sxが2である場合の角度θsは63.43°であり、総和比Sy/Sxが2である場合の角度θsは75.96°である。
【0049】
角度θsが角度θrに等しい場合、以下の関係が成り立つ。
tan-1(Sy/Sx)=tan-1(Ry/Rx) …(4)
Sy/Sx=Ry/Rx …(5)
従って、角度θsを角度θrに合わせることは、総和比Sy/Sxを解像度比Ry/Rxに一致させることと等価である。
【0050】
図6に示すように解像度比Ry/Rxが1/2である場合、印刷画像IM0において、X方向におけるRx個分の画素PX0の長さはY方向におけるRy個分の画素PX0の長さに等しい。このことから、印刷画像IM0において、隣辺の長さをRx個分の画素PX0の長さとし、対辺の長さをRy個分の画素PX0の長さとした直角三角形の内角θpは、45°となる。従って、印刷画像IM0において解像度比Ry/Rxに合わせてドット38がX方向とY方向の両方に均等に分散するように誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われる。
図7に示すように解像度比Ry/Rxが2である場合も、印刷画像IM0において、X方向におけるRx個分の画素PX0の長さはY方向におけるRy個分の画素PX0の長さに等しい。このことから、印刷画像IM0において、隣辺の長さをRx個分の画素PX0の長さとし、対辺の長さをRy個分の画素PX0の長さとした直角三角形の内角θpは、45°となる。従って、印刷画像IM0において解像度比Ry/Rxに合わせてドット38がX方向とY方向の両方へ均等に分散するように誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われる。
【0051】
また、
図5に示す配分比テーブルTA1,TA2のように、X方向の解像度RxがY方向の解像度Ryよりも大きい場合、X方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲は、Y方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広い。これにより、誤差が拡散される範囲はY方向よりもX方向の方が広くなり、印刷画像IM0において解像度比Ry/Rxに合わせてドット38がX方向とY方向の両方へさらに均等に分散するように誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われる。
一方、
図5に示す配分比テーブルTA4,TA5のように、Y方向の解像度RyがX方向の解像度Rxよりも大きい場合、Y方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲は、X方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広い。これにより、誤差が拡散される範囲はX方向よりもY方向の方が広くなり、印刷画像IM0において解像度比Ry/Rxに合わせてドット38がX方向とY方向の両方へさらに均等に分散するように誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われる。
【0052】
尚、
図5に示す配分比テーブルTA3のように、X方向の解像度RxがY方向の解像度Ryと同じである場合、X方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲は、Y方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲と同じでもよい。この場合、印刷画像IM0において解像度比Ry/Rx=1に合わせてドット38がX方向とY方向の両方へ均等に分散するように誤差拡散法によるハーフトーン処理が行われる。
【0053】
(3)誤差拡散法によるハーフトーン処理を含む印刷制御処理の具体例:
図8は、誤差拡散法によるハーフトーン処理を含む印刷制御処理を模式的に例示している。
図8に示す印刷制御処理は、
図1に示すコントローラー10により行われる。コントローラー10は、例えば、元画像データDA1となる印刷ジョブJ1をホスト装置HO1から受信すると、印刷制御処理を開始させる。印刷ジョブJ1は、例えば、RAM21に格納される。
図9は、コントローラー10により行われるハーフトーン処理を模式的に例示している。ここで、ステップS204~S206は変換部U1及び変換工程ST1に対応し、ステップS208~S210は拡散部U2及び拡散工程ST2に対応している。以下、「ステップ」の記載を省略し、括弧内にステップの符号を示すことがある。また、
図1~7も参照して、説明する。
【0054】
印刷ジョブJ1は、ヘッダーHE1、本体データBO1、等を含んでいる。ヘッダーHE1は、印刷解像度Rx,Ryを含んでいる。本体データBO1は、元画像データDA1に対応し、元画像データDA1そのもの、例えば、ビットマップ形式のRGBデータでもよいし、解釈により元画像データDA1に変換される描画データでもよい。
【0055】
印刷制御処理が開始すると、コントローラー10は、印刷ジョブJ1から印刷解像度Rx,Ryを取得する(S102)。尚、コントローラー10は、操作パネル24で印刷解像度Rx,Ryの設定を受け付けることにより印刷解像度Rx,Ryを取得してもよい。この場合、コントローラー10は、不図示のメモリーカード等から元画像データDA1を取得してもよい。
印刷解像度Rx,Ryの取得後、コントローラー10は、印刷ジョブJ1又はメモリーカード等から元画像データDA1を取得し、元画像データDA1の解像度が印刷解像度Rx,Ryとは異なる場合に元画像データDA1の解像度を印刷解像度Rx,Ryに変換する。その上で、コントローラー10は、色変換部12において、元画像データDA1をインク量データDA2に変換する色変換処理を行う(S104)。元画像データDA1がRGBデータであって、インク量データDA2がC、M、Y、及び、Kの例えば256階調の画素値を有するCMKデータである場合、コントローラー10は、RGBデータをCMYKデータに変換する公知の色変換処理を行う。
【0056】
色変換処理後、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、複数の配分比テーブルTA0の中から解像度比Ry/Rxに紐付けられている配分比テーブルを選択する(S106)。例えば、
図5に示す配分比テーブルTA1~TA5をコントローラー10が保持している場合、複数の配分比テーブルTA0のうち解像度比Ry/Rxに一致する総和比Sy/Sxとなる配分比Riを有する配分比テーブルが選択される。ここで、第二解像度比RR2が第一解像度比RR1よりも大きく、第一総和比SR1が第一解像度比RR1に対応し、第二総和比SR2が第二解像度比RR2に対応するものとする。解像度比Ry/Rxが第一解像度比RR1である場合には第一総和比SR1となる配分比テーブルTA0が選択され、解像度比Ry/Rxが第二解像度比RR2である場合には第一総和比SR1よりも大きい第二総和比SR2となる配分比テーブルTA0が選択される。
図4,5に示す例では、解像度比Ry/Rxが1/4である場合には総和比Sy/Sxが1/4となる配分比テーブルTA1が選択され、解像度比Ry/Rxが1/2である場合には総和比Sy/Sxが1/2となる配分比テーブルTA2が選択される。
配分比テーブルTA0の選択後、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、誤差拡散法によるハーフトーン処理を行う(S108)。
【0057】
図9は、S108で行われるハーフトーン処理を例示している。
図9に示すハーフトーン処理は、C、M、Y、及び、Kの色別に行われる。
ハーフトーン処理が開始すると、ハーフトーン処理部13は、
図3に示すように変換対象画素P0の位置を設定する(S202)。S202の処理は、インク量データDA2を構成する複数の画素PX0の中から階調数を減らす変換の対象画素を選択する処理ともいえる。
【0058】
変換対象画素P0の位置の設定後、ハーフトーン処理部13は、変換対象画素P0において画素値MP0に受取誤差EP0を加算することにより補正値CP0を算出する(S204)。受取誤差EP0は、変換対象画素P0に配分された誤差であり、複数の画素から誤差が配分された場合には配分された合計の誤差となる。
補正値CP0の算出後、ハーフトーン処理部13は、補正値CP0と閾値TH0とを比較し、変換対象画素P0におけるドット38の形成状態を表すドット値DT0を比較結果に基づいて決定する(S206)。
【0059】
例えば、画素値MP0が0~255の階調値であり、ドット値DT0が0又は1の2値であり、閾値TH0が1よりも大きく255よりも小さいものとする。補正値CP0が閾値TH0以上である場合、ハーフトーン処理部13は、ドット形成を意味する1にドット値DT0を決定することができる。補正値CP0が閾値TH0未満である場合、ハーフトーン処理部13は、ドット無しを意味する0にドット値DT0を決定することができる。
以上のようにして、変換部U1は、インク量データDA2を構成する複数の画素PX0に含まれる変換対象画素P0において、画素値MP0及び配分された誤差EP0に基づいてドット38の形成状態を決定する。
【0060】
また、ハーフトーン処理部13は、ドット値DT0の決定に伴って生じた誤差E0を算出する(S208)。上述した例において、ドット値DT0が1に決定された場合、ハーフトーン処理部13は、補正値CP0から255を差し引いた値を誤差E0に決定することができる。ドット値DT0が0に決定された場合、ハーフトーン処理部13は、補正値CP0を誤差E0に決定することができる。
誤差E0の算出後、ハーフトーン処理部13は、解像度比Ry/Rxに合わせて選択された配分比テーブルTA0に従って各配分先画素Qiに誤差Eiを拡散させる(S210)。ハーフトーン処理部13は、
図3の下部に示すように配分比テーブルTA0から定まる配分比Riを誤差E0に乗じることにより各配分先画素Qiに配分する誤差Eiを決定する。
【0061】
以上のようにして、拡散部U2は、変換対象画素P0において生じた誤差E0を未変換である複数の配分先画素Qiのそれぞれに設定されている配分比Riに従って複数の配分先画素Qiに拡散させる。
誤差Eiの拡散後、ハーフトーン処理部13は、インク量データDA2に含まれる全ての画素PX0を変換対象画素P0としてS202~S210の処理を行ったか否かを判断する(S212)。
図3に示すように未変換画素PX1が残っている場合、ハーフトーン処理部13は、S202~S212の処理を繰り返す。未変換画素PX1が残っていない場合、ハーフトーン処理部13は、
図9に示すハーフトーン処理を終了させる。これにより、ドット38の形成状態を表すドット値DT0を各画素PX0に有するドットデータDA3が得られる。
【0062】
尚、ドット値DT0は、3値以上でもよい。例えば、ドット値DT0が4値である場合、0よりも大きく253よりも小さい第一の閾値(TH1とする。)、第一の閾値TH1よりも大きく254よりも小さい第二の閾値(TH2とする。)、及び、第二の閾値TH2よりも大きく255よりも小さい第三の閾値(TH3とする。)が用意されてもよい。ハーフトーン処理部13は、補正値CP0が閾値TH3以上である場合、大ドット形成を意味する3にドット値DT0を決定し、補正値CP0から例えば255を差し引いた値を誤差E0に決定してもよい。ハーフトーン処理部13は、補正値CP0が閾値TH2以上且つ閾値TH3未満である場合、中ドット形成を意味する2にドット値DT0を決定し、補正値CP0から例えば128を差し引いた値を誤差E0に決定してもよい。ハーフトーン処理部13は、補正値CP0が閾値TH1以上且つ閾値TH2未満である場合、小ドット形成を意味する1にドット値DT0を決定し、補正値CP0から例えば64を差し引いた値を誤差E0に決定してもよい。ハーフトーン処理部13は、補正値CP0が閾値TH1未満である場合、ドット無しを意味する0にドット値DT0を決定し、補正値CP0を誤差E0に決定してもよい。
【0063】
図9に示すハーフトーン処理の後、コントローラー10は、ラスタライズ処理部14において、駆動部50でドット38が形成される順番にドットデータDA3を並べ換えるラスタライズ処理を行うことによりラスターデータRA0を生成する(S110)。尚、ラスタライズ処理は、任意の処理であり、例えばプリンター2がラインプリンターである場合には行われない。
ラスタライズ処理後、コントローラー10は、駆動信号送信部15において、駆動素子32に印加する電圧信号に対応した駆動信号SG1をラスターデータRA0から生成し、印刷ヘッド30の駆動回路31に駆動信号SG1を出力する(S112)。これにより、プリンター2は、印刷ヘッド30及び駆動部50の駆動により、出力解像度Rx,Ryの印刷画像IM0をドットデータDA3に従って媒体ME0に形成する。S110のラスタライズ処理が行われない場合、コントローラー10は、駆動信号送信部15において、駆動素子32に印加する電圧信号に対応した駆動信号SG1をドットデータDA3から生成し、印刷ヘッド30の駆動回路31に駆動信号SG1を出力してもよい。S112の処理後、コントローラー10は、印刷制御処理を終了させる。
【0064】
(4)具体例に係る作用及び効果:
図10は、配分比Riから算出される総和比Sy/Sxを解像度比Ry/Rxに近付けることによりドット38が均等に分散するように配置される例を模式的に示している。
図10は、解像度比Ry/Rxと総和比Sy/Sxに応じて印刷画像中の低階調部に現れる可能性がある部分的なドット配置111,112,121,122を模式的に示している。むろん、実際のドット配置は、
図10に示すドット配置111,112,121,122になるとは限らない。
【0065】
解像度比Ry/Rxが1/4とX方向の解像度RxがY方向の解像度Ryよりも大きい場合であって、総和比Sy/Sxが1と配分比Riの重みがX方向とY方向とで同じである場合、例えばドット配置111のようにドットの配置が偏ることがある。低階調部のドット配置の偏りは、ワームと呼ばれるドットの非所望な連続として現れることがある。
ここで、規則的なドット配置を実現させるベイヤーマスクを用いてディザ法によるハーフトーン処理が画像の低階調部に行われると、必ずどこかの階調で周期的な模様が発生する。このような周期的な模様は、目立つため、印刷画像の画質が低下する。周期的な模様になる階調を除くように閾値が配置されたディザマスクを用いてディザ法によるハーフトーン処理が画像の低階調部に行われると、階調性が確保されない。
【0066】
本具体例では、誤差拡散法によるハーフトーン処理を行うことにより階調性を確保しながら、配分比テーブルTA0における総和比Sy/Sxを解像度比Ry/Rxに近付けることにより、X方向とY方向の両方に均等なドット配置を実現させている。
例えば、解像度比Ry/Rxが1/4である場合に総和比Sy/Sxが1/4に合わせられると、ドット配置112のようにドットがX方向とY方向の両方に均等に分散する。従って、階調性と均等なドット配置が両立した高画質の印刷画像IM0が形成される。
【0067】
解像度比Ry/Rxが4とY方向の解像度RyがX方向の解像度Rxよりも大きい場合であって、総和比Sy/Sxが1と配分比Riの重みがX方向とY方向とで同じである場合、例えばドット配置121のようにドットの配置が偏ることがある。低階調部のドット配置の偏りは、ワームと呼ばれるドットの非所望な連続として現れることがある。
例えば、解像度比Ry/Rxが4である場合に総和比Sy/Sxが4に合わせられると、ドット配置122のようにドットがX方向とY方向の両方に均等に分散する。従って、階調性と均等なドット配置が両立した高画質の印刷画像IM0が形成される。
【0068】
以上説明したように、X方向の解像度RxとY方向の解像度Ryとが異なっていても、ドット38がX方向とY方向の両方に均等に分散するように配置される。従って、本具体例は、特に低階調部において粒状性の点で印刷画像IM0の画質を向上させることができ、印刷画像IM0の解像度比Ry/Rxに合わせて粒状性の向上に寄与することができる。
【0069】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、媒体に印刷画像を形成する色材の種類は、C、M、Y、及び、Kに限定されず、C、M、Y、及び、Kに加えて、オレンジ、グリーン、Cよりも低濃度のライトシアン、Mよりも低濃度のライトマゼンタ、Yよりも高濃度のダークイエロー、Kよりも低濃度のライトブラック、画質向上用の無着色の色材、等を含んでもよい。また、C、M、Y、及び、Kの一部の色材を使用しない場合にも、本技術を適用可能である。
【0070】
上述した処理を行う主体は、CPUに限定されず、ASIC等といったCPU以外の電子部品でもよい。むろん、複数のCPUが協働して上述した処理を行ってもよいし、CPUと他の電子部品(例えばASIC)とが協働して上述した処理を行ってもよい。
上述した処理は、順番を入れ替える等、適宜、変更可能である。例えば、
図8に示す印刷制御処理において、S106の配分比テーブル選択処理は、S104の色変換処理の直前に行うことが可能である。
上述した処理の一部は、ホスト装置HO1が行ってもよい。この場合、コントローラー10とホスト装置HO1の組合せが印刷装置1の例となる。ホスト装置HO1が誤差拡散法によるハーフトーン処理を行う場合、ホスト装置HO1が画像処理装置U0の例となる。
【0071】
上述した具体例では総和比Sy/Sxを解像度比Ry/Rxに一致させることが示されていたが、解像度比(RR1,RR2)と総和比(SR1,SR2)の関係が満たされる限り、総和比Sy/Sxが解像度比Ry/Rxからずれてもよい。例えば、第一解像度比RR1が1/4であって第二解像度比RR2が1/2であるとする。この場合、第一総和比SR1が10%増しの11/40であって第二総和比が10%増しの11/20でもよいし、第一総和比SR1が10%減の9/40であって第二総和比が10%減の9/20でもよい。むろん、増減の程度は、15%増し、5%増し、5%減、15%減、等、様々に変更可能である。第一解像度比RR1が1/2であって第二解像度比RR2が1である場合、第一解像度比RR1が1であって第二解像度比RR2が2である場合、第一解像度比RR1が2であって第二解像度比RR2が4である場合、等の場合も、同様である。
【0072】
ところで、印刷画像IM0の低階調部において、ドット38の粒状感は、単色でドット38が形成される場合よりも、複数の色でドット38が形成されて滲みが生じる場合の方が目立つ。特に、Yを背景としてCとMの少なくとも一方のドット38がまばらに形成される場合、当該ドット38の配置に偏りが生じると、違和感を憶えることがある。そこで、上述した誤差拡散法によるハーフトーン処理は、Yを背景としてCとMの少なくとも一方のドット38がまばらに形成される場合に限定して行われてもよい。
【0073】
図11は、
図1に示すコントローラー10により行われる印刷制御処理の別の例を模式的に示している。尚、
図11に示す印刷制御処理において、
図8に示す印刷制御処理と同じ処理が行われる箇所には、
図8に示す符号を付して詳しい説明を省略する。
図11に示す印刷制御処理が開始すると、コントローラー10は、印刷解像度Rx,Ryを取得し(S102)、元画像データDA1をインク量データDA2に変換する色変換処理を行う(S104)。インク量データDA2は、各画素PX0にC、M、Y、及び、Kの画素値を有している。ここで、インク量データDA2は、各画素PX0に少なくともC、M、及び、Yの画素値を有していればよく、Kの画素値が有していなくてもよい。
【0074】
色変換処理後、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、インク量データDA2に基づいて、Yを背景としてCとMの少なくとも一方のドット38が形成されるか否かを判断する(S302)。例えば、インク量データDA2の画素値が0~255の階調値であり、Yの背景を判別するための閾値(THYとする。)が128よりも大きく255よりも小さいとする。また、Y以外のドット38がまばらに形成されることを判別するための閾値(THZとする。)が0よりも大きく127よりも小さいとする。すなわち、0<THZ<THY<255が成り立つ。インク量データDA2を構成する複数の画素PX0に、Yの画素値が閾値THY以上であってCとMの少なくとも一方の画素値が閾値THZ以下である画素が存在する場合、コントローラー10は、S302において条件成立と判断することができる。一方、インク量データDA2を構成する複数の画素PX0に、Yの画素値が閾値THY以上であってCとMの少なくとも一方の画素値が閾値THZ以下である画素が存在しない場合、コントローラー10は、S302において条件不成立と判断することができる。
【0075】
コントローラー10は、S302において条件成立と判断すると、ハーフトーン処理部13において、解像度比Ry/Rxに紐付けられている配分比テーブルTA0を選択し(S106)、
図9に示される誤差拡散法によるハーフトーン処理を行う(S108)。一方、コントローラー10は、S302において条件不成立と判断すると、ハーフトーン処理部13において、S108とは別のハーフトーン処理、例えば、ディザ法によるハーフトーン処理を行う(S304)。
S108のハーフトーン処理、又は、S304のハーフトーン処理の後、コントローラー10は、任意のラスタライズ処理を行い(S110)、印刷ヘッド30の駆動回路31に駆動信号SG1を出力する(S112)。これにより、プリンター2は、印刷ヘッド30及び駆動部50の駆動により、出力解像度Rx,Ryの印刷画像IM0をドットデータDA3に従って媒体ME0に形成する。
【0076】
図11に示す例は、Yを背景としてCとMの少なくとも一方のドット38が形成される際に印刷画像IM0の解像度比Ry/Rxに応じてより均等に分散するように配置されるので、印刷画像IM0の画質を向上させることができる。
【0077】
尚、Ry>Rxである場合であってY方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲がX方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広くない場合でも、画像の解像度比Ry/Rxに合わせて粒状性の向上に寄与する基本的な効果が得られる。
Rx>Ryである場合であってX方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲がY方向において複数の配分先画素Qiが配置されている範囲よりも広くない場合でも、画像の解像度比Ry/Rxに合わせて粒状性の向上に寄与する基本的な効果が得られる。
【0078】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、画像の解像度比に合わせて粒状性の向上に寄与する技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…印刷装置、2…プリンター、10…コントローラー、13…ハーフトーン処理部、24…操作パネル、30…印刷ヘッド、38…ドット、50…駆動部、111,112,121,122…ドット配置、DA1…元画像データ、DA2…インク量データ、DA3…ドットデータ、E0,Ei,EP0…誤差、HO1…ホスト装置、IM0…印刷画像、MP0…画素値、ME0…媒体、P0…変換対象画素、PX0…画素、PX1…未変換画素、PX2…変換済画素、Qi…配分先画素、Ri…配分比、RR1…第一解像度比、RR2…第二解像度比、Rx,Ry…解像度、SR1…第一総和比、SR2…第二総和比、ST1…変換工程、ST2…拡散工程、Sx,Sy…総和、TA0,TA1~TA5…配分比テーブル、U0…画像処理装置、U1…変換部、U2…拡散部、U3…印刷部。