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  • 特開-車両用内燃機関の制御方法および装置 図1
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  • 特開-車両用内燃機関の制御方法および装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070395
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】車両用内燃機関の制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20240516BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F02D29/02 321C
F02D17/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180856
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕志
【テーマコード(参考)】
3G092
3G093
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA11
3G092AC03
3G092BA01
3G092BA03
3G092BA04
3G092DA08
3G092FA24
3G092FA30
3G092FA32
3G092GA04
3G092HA01Z
3G092HA04Z
3G092HD05Z
3G092HE01Z
3G092HE08Z
3G092HF02Z
3G092HF07Z
3G092HF08Z
3G092HF21Z
3G093AA01
3G093BA19
3G093BA20
3G093BA22
3G093CA04
3G093DA01
3G093DA05
3G093DA06
3G093DA09
3G093DA11
3G093DB05
3G093DB09
3G093DB15
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB25
(57)【要約】
【課題】吸気温度が低いときにアイドルストップが実行されると、再始動時の燃料壁流の増加によりPNが悪化する。
【解決手段】吸気温度センサによって吸気通路内における吸気温度を検出する。吸気温度がT1よりも高い場合は、アイドルストップ許可水温は、水温TW1であり、吸気温度がT2以下では、水温TW2となる。吸気温度がT1とT2の間では、吸気温度が低いほどアイドルストップ許可水温が高くなるように連続的に変化する。車両の運転開始から運転終了までの間、吸気温度に応じたアイドルストップ許可水温に基づいて、アイドルストップの禁止の判定を行う
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両停止時にアイドルストップを実行するとともに、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下である場合には上記アイドルストップを禁止する車両用内燃機関の制御方法において、
吸気通路内における吸気温度を検出し、
この吸気温度が低いほど上記アイドルストップ許可水温が高くなるように上記吸気温度に応じて上記アイドルストップ許可水温を設定し、
車両の運転開始から運転終了までの間、上記吸気温度に応じた上記アイドルストップ許可水温に基づいて、アイドルストップの禁止の判定を行う、
車両用内燃機関の制御方法。
【請求項2】
内燃機関の初回始動時における吸気温度と冷却水温度とを比較し、
両者が所定温度以上乖離しているときに、検出した吸気温度を、乖離を相殺する方向に補正し、この補正後の吸気温度を用いて上記アイドルストップ許可水温を設定する、
請求項1に記載の車両用内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記内燃機関は、ポート噴射式内燃機関である、
請求項1に記載の車両用内燃機関の制御方法。
【請求項4】
車両停止時にアイドルストップを実行するとともに、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下である場合には上記アイドルストップを禁止する車両用内燃機関の制御装置において、
吸気通路内における吸気温度を検出する吸気温度センサを備え、
この制御装置は、
上記吸気温度が低いほど上記アイドルストップ許可水温が高くなるように上記吸気温度に応じて上記アイドルストップ許可水温を設定し、
車両の運転開始から運転終了までの間、上記吸気温度に応じた上記アイドルストップ許可水温に基づいて、アイドルストップの禁止の判定を行う、
車両用内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両停止時にアイドルストップを実行するとともに、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下である場合にはアイドルストップを禁止する車両用内燃機関の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関の燃費低減技術の一つとして、交差点等での車両停止時に内燃機関の燃焼運転を一時的に自動停止するアイドルストップが知られている。このアイドルストップは、低水温時の再始動性や暖機性能等の種々の観点から、一般に、冷却水温度があるアイドルストップ許可水温以下である場合には禁止される。つまり、冷却水温度がアイドルストップ許可水温よりも低いと、車両が交差点等で停止しても、アイドルストップは実行されない。
【0003】
特許文献1には、車両のイグニッションスイッチがONとなった直後の外気温度や車室内温度が低い場合に、暖房性能を確保するために、アイドルストップ制御を許可するアイドリングストップ開始冷却水温度をより高く設定することが開示されている。冷却水温度がアイドリングストップ開始冷却水温度以上となると許可フラグがONとなり、その後は、外気温度が考慮されることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-263123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アイドルストップからの再始動時には、始動のために比較的に多くの燃料が噴射される。例えばポート噴射式の燃料噴射装置の場合、冷却水温度に相関する吸気ポート壁温が低いと、付着した燃料が液状のまま筒内に流入し、いわゆる「PN」をパラメータとして評価される排気微粒子性能の悪化が生じる。このような再始動時のPNの良否は、冷却水温度のみならず、吸気ポート内で燃料噴霧と混合する新気の温度つまり吸気温度に大きく影響される。吸気温度が低いほど燃料の気化が進まずに壁流が増えるため、PNが悪化する。
【0006】
特許文献1は、暖房要求の判定のために外気温度を考慮する技術であり、再始動時のPNの抑制のために吸気ポートを流れる新気の状態を把握しようとするものではない。特に、特許文献1の技術では、イグニッションスイッチON直後の外気温度のみが考慮されるに過ぎず、その後の車両の運転中の外気温度は一切考慮されない。
【0007】
また、特許文献1では、車両のエンジンルーム内に配置された外気温度センサによって外気温度が測定されるのであるが、例えば車庫内に停車していたような場合に、イグニッションスイッチON直後の検出温度に比較して、走行開始後に実際に内燃機関に取り込まれる空気の温度が低温であるようなことがあり得る。このような場合に、イグニッションスイッチON直後の検出温度に基づいて許可フラグがONとなってしまうと、実際の吸気温度ないし外気温度が考慮されないこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両停止時にアイドルストップを実行するとともに、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下である場合には上記アイドルストップを禁止する車両用内燃機関の制御方法において、
吸気通路内における吸気温度を検出し、
この吸気温度が低いほど上記アイドルストップ許可水温が高くなるように上記吸気温度に応じて上記アイドルストップ許可水温を設定し、
車両の運転開始から運転終了までの間、上記吸気温度に応じた上記アイドルストップ許可水温に基づいて、アイドルストップの禁止の判定を行う。
【0009】
ここで、吸気温度に対応して設定されるアイドルストップ許可水温は、再始動時のPN性能を考慮して設定される。つまり、互いに対応する吸気温度と冷却水温度との組み合わせの下で、再始動時のPNが許容レベル内となるように設定されている。
【0010】
この発明では、例えば、車庫内に停車していた車両が走り出したような場合に、実際に吸気系に取り込まれる吸気の吸気温度に応じてアイドルストップ許可水温が設定される。そのため、吸気温度が低いにも拘わらずアイドルストップが実行されることがない。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、常に吸気温度に応じてアイドルストップ許可水温が設定され、冷却水温度がこのアイドルストップ許可水温以下である場合にアイドルストップが禁止されるので、PN悪化が生じるような条件の下での再始動が回避され、排気微粒子の排出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施例の内燃機関の構成を概略的に示す説明図。
図2】アイドルストップ制御の機能ブロック図。
図3】一実施例のアイドルストップ制御のフローチャート。
図4】吸気温度に対するアイドルストップ許可水温の特性を示す特性図。
図5】初回始動時における吸気温度と冷却水温度とが乖離しているときの吸気温度補正の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、アイドルストップ制御が可能な車両用内燃機関1のシステム構成を示している。この内燃機関1は、車両のエンジンルーム内に搭載され、図示しない変速機を介して車両の駆動輪を駆動する一般的な内燃機関であって、4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関いわゆるガソリン機関である。図示するように、燃焼室3の天井壁面に、一対の吸気弁4および一対の排気弁5が配置されているとともに、これらの吸気弁4および排気弁5に囲まれた中央部に点火プラグ6が配置されている。図示はしていないが、吸気弁4および排気弁5の動弁機構が、バルブタイミングを可変制御し得る可変バルブタイミング機構を備えた構成であってもよい。
【0014】
上記吸気弁4によって開閉される吸気ポート15には、吸気弁4側へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁16が配置されている。燃料噴射弁16は、ソレノイドもしくは圧電素子等を介して弁体が開作動することで燃料噴射を行う構成のものであり、燃料噴射量は、基本的に、燃料噴射時間(噴射パルス幅)に比例したものとなる。点火プラグ6の点火時期および燃料噴射弁16による燃料の噴射時期ならびに噴射量はエンジンコントローラ8によって制御される。
【0015】
上記吸気ポート15に接続された吸気通路14のコレクタ部18上流側には、エンジンコントローラ8からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ19が配設されている。スロットルバルブ19の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ20が配設されており、さらに上流側に、エアクリーナ22が配設されている。ここで、エアフロメータ20は、吸気温度センサ(便宜上、符号21を付す)が内蔵されたホットワイヤ式エアフロメータであり、付属する吸気温度センサ21によって吸気通路14内における吸気温度の検出が可能である。なお、エアフロメータ20とは別に吸気温度センサ21を設けるようにしてもよい。
【0016】
排気ポート17に接続された排気通路25には、三元触媒からなる触媒装置26が介装されており、その上流側に、空燃比を検出する空燃比センサ28が配置されている。
【0017】
また内燃機関1は、シリンダヘッド9およびシリンダブロック10のウォータジャケット11内を冷却水が流れるように構成されており、この冷却水の温度を検出する水温センサ12が、シリンダブロック10等の適当な位置に設けられている。
【0018】
上記エンジンコントローラ8には、上記のエアフロメータ20、吸気温度センサ21、空燃比センサ28、水温センサ12、のほか、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ32等の多数のセンサ類の検出信号が入力されている。さらに、運転者が操作するアクセルペダルの開度を示すアクセルペダル開度信号、ブレーキペダルの踏込操作を示すブレーキスイッチ信号、車速信号、空調装置からの始動要求信号、バッテリ電圧信号、等の種々の信号が、エンジンコントローラ8に、直接にあるいは他のコントローラを介して間接に、入力されている。エンジンコントローラ8は、これらの入力信号に基づき、内燃機関1を最適に制御している。
【0019】
エンジンコントローラ8は、交差点等で車両が停止したとき、つまりアイドルストップ条件が成立したときに、アイドルストップを実行し、内燃機関1を停止する。そして、その後再始動条件が成立したときに、図示しないスタータモータ(あるいはモータジェネレータ)を介して内燃機関1の再始動を行う。アイドルストップ条件は、例えば、車速がほぼ0、ブレーキスイッチON、冷却水温度がアイドルストップ許可水温よりも高い、バッテリ電圧が所定レベル以上、等のいくつかの条件(要素)のAND条件である。再始動条件は、ブレーキスイッチOFF、空調装置からの始動要求、バッテリ電圧の低下、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下、といったいくつかの条件(要素)のOR条件である。
【0020】
ここで、アイドルストップ許可水温は、吸気温度センサ21が検出した吸気温度に応じて設定される。そして、エンジンコントローラ8は、車両の運転開始から運転終了までの間、この吸気温度に応じて設定されるアイドルストップ許可水温に基づいて、アイドルストップの禁止の判定を行う。
【0021】
図2は、アイドルストップ制御の機能ブロック図を示している。図示する各部は、ハードウェアないしソフトウェアによって実現されるものであり、図示するように、吸気温度演算部51と、水温演算部52と、アイドルストップ制御部53と、アイドルストップ状態マネジメント部54と、を含む。吸気温度演算部51は、吸気温度センサ21の検出信号に基づいて吸気温度を求め、この吸気温度の値をアイドルストップ制御部53に出力する。一実施例では、後述するように、吸気温度演算部51において吸気温度の検出値に補正が加えられることがあり、この場合は補正後の吸気温度が出力される。水温演算部52は、水温センサ12の検出信号に基づいて冷却水温度を求め、アイドルストップ制御部53に出力する。アイドルストップ状態マネジメント部54は、アイドルストップつまり内燃機関1の自動停止を行うオートストップ部54aと、内燃機関1の自動再始動を行うオートスタート部54bと、を含む。
【0022】
アイドルストップ制御部53は、アイドルストップ状態マネジメント部54にアイドルストップの実行/禁止およびアイドルストップ後の再始動を指示するもので、ブレーキ操作等の運転者の操作に関連した条件を判定するドライバ条件部55と、水温条件判定部56aを含む複数のシステム上の条件を判定するシステム条件部56と、を含む。水温条件判定部56aは、吸気温度演算部51から入力される吸気温度信号に基づいてアイドルストップ許可水温を設定し、水温演算部52から入力される冷却水温度をこのアイドルストップ許可水温と比較して、冷却水温度がアイドルストップ許可水温以下である場合には、アイドルストップ状態マネジメント部54にアイドルストップ禁止を指示する。
【0023】
吸気温度に応じたアイドルストップ許可水温の値は、例えばエンジンコントローラ8内に吸気温度をパラメータとしたテーブルの形で予め与えられている。図4は、吸気温度に対するアイドルストップ許可水温の特性を示した特性図である。図示例では、吸気温度が温度T1よりも高い場合は、アイドルストップ許可水温は、水温TW1であり、吸気温度が温度T1よりも低い温度T2以下では、アイドルストップ許可水温は、水温TW1よりも高い水温TW2となる。吸気温度がT1とT2の間では、吸気温度が低いほどアイドルストップ許可水温が高くなるように連続的に変化する。前述したように、これらの吸気温度とアイドルストップ許可水温との関係は、再始動時のPN性能を考慮して、再始動時のPNが許容レベル内となるように設定されている。
【0024】
すなわち、アイドルストップ後の再始動時のPNの良否は、冷却水温度のみならず、吸気ポート15内で燃料噴霧と混合する新気の温度つまり吸気温度に大きく影響される。吸気温度が低いほど燃料の気化が進まずに壁流が増えるため、PNが悪化する。上記実施例では、吸気温度が低いときにアイドルストップ許可水温が高く設定され、アイドルストップの実行が抑制されるので、内燃機関1からの排気微粒子の排出が抑制される。
【0025】
また、上記実施例では、吸気温度が常に監視され、運転中の吸気温度に対応してアイドルストップ許可水温が可変的に設定される。例えば、車庫に停車していた車両が外へ走り出したような場合に、走行開始後に実際に吸気系に取り込まれる吸気の吸気温度に応じてアイドルストップ許可水温が設定される。そのため、吸気温度が低いにも拘わらずアイドルストップが実行されることがない。
【0026】
ここで、上記の吸気温度としては、基本的には吸気温度センサ21が検出した値が用いられるが、本実施例では、内燃機関1の初回始動時(換言すれば車両のイグニッションスイッチON時)における吸気温度と冷却水温度とを比較し、両者が所定温度以上乖離しているときには、その乖離を相殺する方向に吸気温度を補正し、この補正後の吸気温度を用いてアイドルストップ許可水温を設定するようにしている。
【0027】
図5は、縦軸を初回始動時に検出された吸気温度とし横軸を初回始動時に検出された冷却水温度とした説明図である。斜めの線L1は、初回始動時における吸気温度と冷却水温度とが互いに等しい特性線を示している。例えば、内燃機関1が十分な時間放置されていると、吸気温度と冷却水温度とが平衡し、互いにほぼ等しい温度となり得る。線L1と平行な線L2および線L3は、冷却水温度に等しい吸気温度に対し±ΔTの許容範囲を与えた場合の特性線を示している。初回始動時における吸気温度が線L2~線L3の範囲内にあれば、初回始動時における吸気温度と冷却水温度との乖離が許容範囲内であるものとして、初回始動直後から吸気温度センサ21で検出した吸気温度の値をそのまま用いてアイドルストップ許可水温の設定が行われる。
【0028】
これに対し、例えば点P1で例示するように、初回始動時における吸気温度が冷却水温度から許容範囲(ΔT)以上高い場合は、所定の補正量(-TH)を検出値に加え、点P1’で示す補正後の吸気温度を算出する。逆に、点P2で例示するように、初回始動時における吸気温度が線L3よりも低い場合は、所定の補正量(+TH)を検出値に加え、点P2’で示す補正後の吸気温度を求める。
【0029】
なお、一実施例においては、制御の簡略化のために、補正量THは許容範囲ΔTよりも僅かに大きい固定値に設定されている。従って、補正後の吸気温度は、線L1から離れたものとなり得る。補正後の吸気温度が線L1上に得られるように、初回始動時における吸気温度と冷却水温度との差分に等しい補正量THを与えるようにしてもよい。
【0030】
内燃機関1の初回始動直後の吸気温度は、例えば、短距離走行後キーオフし、かつすぐに再度始動したような場合に、外気温度に比較して高くなり得る。このとき、冷却水温度は、外気温度に近いままとなる。従って、両者に乖離が生じる。このような乖離に対し上述したような補正を行うことで、補正後の吸気温度は、外気温度に近い温度となる。夏期に車庫に停車していた車両の走行を開始するような場合にも、同様に、吸気温度のみが高く検出されることがあり、上述した補正を行うことで、外気温度に近い補正後の吸気温度が得られる。
【0031】
従って、上記のように初回始動時における吸気温度と冷却水温度との乖離が大きい場合に吸気温度の補正を行うことで、初回始動直後から適正なアイドルストップ許可水温が得られることとなる。
【0032】
図3は、エンジンコントローラ8において実行されるアイドルストップ制御の処理の流れを示したフローチャートである。最初にステップ1において、初回始動直後であるか否かを判定する。車両のイグニッションスイッチONから適当な時間が経過していれば、ステップ2へ進み、吸気温度センサ21が検出した吸気温度の値をそのまま用いてアイドルストップ許可水温を設定する。
【0033】
初回始動直後であれば、ステップ3へ進み、始動時の冷却水温度と吸気温度との間に所定の乖離があるか否かを判定する。例えば上述した許容範囲(±ΔT)よりも大きな乖離がなければ、ステップ3からステップ2へ進み、吸気温度センサ21が検出した吸気温度の値をそのまま用いてアイドルストップ許可水温を設定する。
【0034】
許容範囲(±ΔT)よりも大きく乖離している場合は、ステップ3からステップ4へ進み、検出した吸気温度の値に所定の補正量(±TH)を加える。つまり、所定量のオフセット補正を行い、補正後の吸気温度を得る。そして、ステップ5において、補正後の吸気温度に応じてアイドルストップ許可水温を設定する。
【0035】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0036】
なお、本発明は、筒内に燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関にも適用が可能であるが、ポート噴射式内燃機関の方が再始動時のPNに関する吸気温度の影響が大であるので、上記実施例のようにポート噴射式内燃機関に適用することがより有益である。
【符号の説明】
【0037】
1…内燃機関
8…エンジンコントローラ
12…水温センサ
15…吸気ポート
16…燃料噴射弁
21…吸気温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5