(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070396
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240516BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240516BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240516BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240516BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240516BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240516BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240516BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240516BHJP
C08G 18/69 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08K3/04
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
B60C1/00 A
C08G18/65 076
C08G18/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180858
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】清水 克典
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 涼平
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB11
3D131BC02
3D131BC12
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3D131BC19
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC031
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4J002FD016
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4J034BA08
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4J034KE02
4J034QA03
4J034QC04
4J034QC05
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、タイヤとしたとき、優れた低燃費性能を維持したままウェット性能及び氷上摩擦性能が優れる、タイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有するゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する充填剤を30~100質量部と、微粒子0.1~30質量部とを含有し、上記微粒子が、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子である、タイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有するゴム成分100質量部に対して、
カーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する充填剤を30~100質量部と、
微粒子0.1~30質量部とを含有し、
前記微粒子が、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子である、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記一次粒子の平均粒子径が0.01~20μmであり、
前記微粒子の平均粒子径が0.1~200μmである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン系ポリマーが更に、ウレア結合を有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記微粒子が、数平均分子量が1,000~100,000であり、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体中に、分散した分散体である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記微粒子が、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含有する鎖延長剤と、界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する分散系に、
イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物を混合し、
前記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、前記鎖延長剤と、前記ポリイソシアネート化合物とを重合させて得られる、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが、天然ゴムを含有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含有し、前記ポリブタジエンゴムの含有量が前記ジエン系ゴム全量中の30質量%以上100質量%未満である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記イオン性基が、カルボン酸塩を形成する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
前記イオン性基が、カルボキシレートイオンと第3級アミン由来のN+との塩を形成する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子を含有するタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、タイヤ用ゴム組成物に含有される微粒子して、水酸基末端液状ポリブタジエンと、ポリブテンと、m-キシリレンジジイソシアネートと、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物とを混合して、白濁したペースト状生成物を調製し、このペースト状生成物において、粒子径5~10μmの微粒子(骨格:ポリブタジエン,架橋:ウレタン結合)が生成し、加水分解性シリル基末端ポリエーテル中に分散していること等が記載されている(段落[0080])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、車が氷雪路面を走行する場合、氷雪路面では乾燥した路面に比べて摩擦係数が低下しタイヤが滑りやすくなるので、安全面の観点からスタッドレスタイヤには優れた氷上摩擦性能が求められている。また、環境面の観点からタイヤには低燃費性能が求めれる。
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にしてゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物は、従来の優れた低燃費性能を維持したままウェット性能及び氷上摩擦性能を向上させることについて改善の余地があると考えた。
【0005】
そこで、本発明は、タイヤとしたとき、優れた低燃費性能を維持したままウェット性能及び氷上摩擦性能が優れるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有するゴム成分100質量部に対して、
カーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する充填剤を30~100質量部と
微粒子0.1~30質量部とを含有し、
上記微粒子が、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子である、ゴム組成物によれば所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有するゴム成分100質量部に対して、
カーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する充填剤を30~100質量部と、
微粒子0.1~30質量部とを含有し、
上記微粒子が、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子である、タイヤ用ゴム組成物。
[2] 上記一次粒子の平均粒子径が0.01~20μmであり、
上記微粒子の平均粒子径が0.1~200μmである、[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[3] 上記ポリウレタン系ポリマーが更に、ウレア結合を有する、[1]又は[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[4] 上記微粒子が、数平均分子量が1,000~100,000であり、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体中に、分散した分散体である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[5] 上記微粒子が、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含有する鎖延長剤と、界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する分散系に、
イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物を混合し、
上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、上記鎖延長剤と、上記ポリイソシアネート化合物とを重合させて得られる、[1]~[4]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[6] 上記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[7] 上記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが、天然ゴムを含有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[8] 上記ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含有し、上記ポリブタジエンゴムの含有量が上記ジエン系ゴム全量中の30質量%以上100質量%未満である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[9] 上記イオン性基が、カルボン酸塩を形成する、[1]~[8]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[10] 上記イオン性基が、カルボキシレートイオンと第3級アミン由来のN+との塩を形成する、[1]~[9]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[11] [1]~[10]のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤとしたとき、優れた低燃費性能を維持したままウェット性能及び氷上摩擦性能が優れる。
本発明によれば、優れた低燃費性能を維持したままウェット性能及び氷上摩擦性能が優れるスタッドレスタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施例で製造された微粒子1を走査型電子顕微鏡で観察して撮影した写真である。
【
図2】
図2は、本発明のタイヤの実施態様の一例の部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、氷上摩擦性能、ウェット性能及び低燃費性能のうちの少なくとも1つがより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ということがある。
本明細書において、本発明のゴム組成物に含有される微粒子を「特定微粒子」と称する場合がある。
【0011】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有するゴム成分100質量部に対して、
カーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する充填剤を30~100質量部と
微粒子0.1~30質量部とを含有し、
上記微粒子が、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子である、タイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
本発明のゴム組成物に含有される特定微粒子は、特定微粒子(及び一次粒子)を形成するポリウレタン系ポリマーがイオン性基を有し、上記イオン性基の作用によって上記一次粒子が3つ以上集合し特定微粒子を形成すると推測できる。
ここで、添付の図面を参照して特定微粒子を説明する。なお本発明は添付の図面に限定されない。
図1は、本実施例で製造された微粒子1を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して撮影した写真である(倍率16,000倍)。
図1において、一次粒子12が3つ以上集合して微粒子10を形成している。微粒子10は一次粒子12による複数の凸部を有する。
一般的に、同じ材料の一次粒子同士が凝集した微粒子は表面が滑らかな真球状になりやすい。
一方、本発明では、上述のとおり、イオン性基が一次粒子に導入されているので、上記イオン性基の作用によって一次粒子同士が凝集し、このため、特定微粒子は、一体的に凝集し表面が滑らかな真球状にならずに、上記のように一次粒子による凸部を複数有することができると考えられる。
そして、本発明において特定微粒子は、上記のように、一次粒子による凸部を複数有し、タイヤの表面粗さを向上させるため、特定微粒子を含有することによって本発明のゴム組成物はタイヤとしたときの優れた低燃費性能を維持したまま氷上摩擦性能及びウェット性能が優れると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
[ゴム成分]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含有し、上記ゴム成分はガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有する。
【0014】
[ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴム]
本発明のゴム組成物に含有される、ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムが挙げられる。
天然ゴムはガラス転移温度が-50℃以下であること以外は特に制限されない。ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムも同様である。
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムは、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、天然ゴムを含有することがより好ましい。
【0015】
[ガラス転移温度]
本発明のゴム組成物は、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以下であるジエン系ゴムを含有する。
上記ジエン系ゴムのTgは、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、-120~-55℃であることが好ましい。
ここで、ガラス転移温度は、デュポン社製の示差熱分析計(DSC)を用い、ASTM D3418-82に従い、昇温速度10℃/minで測定した値である。
【0016】
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムは、本発明の効果(特にウェット性能)がより優れるという観点から、天然ゴムを含有することが好ましい。
【0017】
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れ、氷上摩擦性能とウェット性能との両立という観点から、天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含有することが好ましい。
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムが天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含有する場合、ポリブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、ジエン系ゴム全量(又はゴム成分全量)中の30質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40~80質量%であることが好ましい。上記ジエン系ゴム全量(又はゴム成分全量)においてポリブタジエンゴムの上記含有量の残部の少なくとも一部又は全部を天然ゴムの量とすることができる。
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムがポリブタジエンゴムを含有する場合、上記ポリブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、上記ジエン系ゴム全量中の30質量%以上100質量%未満であることが好ましい。
【0018】
(その他のゴム)
ゴム成分は、ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴム以外のゴム(その他のゴム)を更に含有することができる。その他のゴムは、ガラス転移温度が-50℃を超えるゴムであれば特に制限されない。
その他のゴム(ただしガラス転移温度が-50℃を超える)としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)が挙げられる。
【0019】
(ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムの含有量)
ガラス転移温度が-50℃以下であるジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、ゴム成分全量中の50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
【0020】
(ゴム成分の平均ガラス転移温度)
ゴム成分の平均ガラス転移温度(平均Tg)は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、-100~-50℃であることが好ましい。
ここで、ゴム成分の平均ガラス転移温度とは、ゴム成分が1種類のゴムのみを含有する場合には、1種類のゴムのガラス転移温度そのものを指し、ゴム成分が2種類以上のゴムを含有する場合には、各ゴムのガラス転移温度と、ゴム成分中の各ゴムの含有割合(質量基準)と、を掛け合わせて得られる値を足し合わせたものである。各ゴムのガラス転移温度は、デュポン社製の示差熱分析計(DSC)を用い、ASTM D3418-82に従い、昇温速度10℃/minで測定できる。
【0021】
[充填剤]
本発明のゴム組成物は、充填剤を含有し、上記充填剤はカーボンブラック及び白色充填剤のうちの少なくとも一方を含有する。充填剤は、カーボンブラック及び白色充填剤を含んでもよい。
【0022】
(カーボンブラック)
カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRFが挙げられる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されない。カーボンブラックは、本発明の効果がより優れる理由から、N2SAが50~200m2/gであるカーボンブラックを含むことが好ましく、N2SAが70~150m2/gであるカーボンブラックを含むことがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0023】
(白色充填剤)
白色充填剤は特に制限されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、シリカを含むことが好ましい。
【0024】
(シリカ)
シリカは、特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。シリカのとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)が挙げられる。
【0025】
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されない。シリカは、本発明の効果がより優れる理由から、CTAB吸着比表面積(CTABと以下略す)が100~400m2/gであるシリカを含むことが好ましく、CTABが150~300m2/gであるシリカを含むことがより好ましく、CTABが160~250m2/gであるシリカを含むことがさらに好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0026】
[充填剤の含有量]
本発明のゴム組成物において、充填剤の含有量(充填剤がカーボンブラック及び白色充填剤を併用する場合はこれらの合計量)は、上記ゴム成分100質量部に対して30~100質量部である。
【0027】
[微粒子]
本発明のゴム組成物は、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている微粒子を含有する。また、本発明において、上記微粒子の平均粒子径は0.01~200μmである。
本明細書において、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子を「特定微粒子」と称する場合がある。
【0028】
[ポリウレタン系ポリマー]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子は、イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている。つまり、一次粒子及び特定微粒子は上記ポリウレタン系ポリマーで形成されている。
【0029】
[イオン性基]
本発明のゴム組成物において、ポリウレタン系ポリマーはイオン性基を有する。
イオン性基としては、例えば、カルボキシレートイオン(-COO-)のようなアニオン;第3級アミン由来のN+のような有機カチオン;ナトリウムイオンのような金属カチオンが挙げられる。
【0030】
上記イオン性基において、上記アニオンと、上記有機カチオン又は上記金属カチオンとが、塩(対イオンの組合せとしての塩)を形成してもよい。上記対イオンの組合せとしては、例えば、カルボキシレートイオンと上記カチオンとの組合せが挙げられ、具体的には例えば、カルボキシレートイオンと有機カチオンとの組合せ、カルボキシレートイオンと金属カチオンとの組合せが挙げられる。上記対イオンの組合わせは、カルボン酸塩となり得る。
イオン性基は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、塩(対イオンの組合せとしての塩)を形成することが好ましく、カルボン酸塩(対イオンの組合せとしてのカルボン酸塩)を形成することがより好ましい。
上記塩は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、カルボキシレートイオンと上記カチオンとの組合せ(カルボン酸塩)が好ましく、カルボキシレートイオンと有機カチオン(例えば第3級アミン由来のNH+)との組合せ、又は、カルボキシレートイオンとナトリウムイオンとの組合せがより好ましく、カルボキシレートイオンと有機カチオン(例えば第3級アミン由来のNH+)との組合せが更に好ましく、カルボキシレートイオンと第3級アミン由来のNH+との組合せが特に好ましい。
【0031】
上記イオン性基は、例えば、特定微粒子を製造する際に使用できるイオン性鎖延長剤によって上記ポリウレタン系ポリマーに導入することができる。
【0032】
[ウレタン結合]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子を構成するポリウレタン系ポリマーはウレタン結合を有する。ポリウレタン系ポリマーはウレタン結合をポリウレタン系ポリマーの骨格の一部に有することができる。
上記ポリウレタン系ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含有する鎖延長剤と、ポリイソシアネート化合物とを重合させて得られるポリマーであることが好ましい態様として挙げられる。
上記ウレタン結合は、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体とポリイソシアネート化合物との反応によって上記ポリウレタン系ポリマーに導入されうる。
【0033】
上記ポリウレタン系ポリマーは、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、更に、ウレア結合を有することが好ましい。
上記ウレア結合は、特定微粒子を製造する際、例えばジアミン系化合物を更に使用する場合、上記ジアミン系化合物とポリイソシアネート化合物との反応によって上記ポリウレタン系ポリマーに更に導入することができる。
【0034】
[骨格の一部のジエン系重合体]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子を構成するポリウレタン系ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーの骨格の一部にジエン系重合体を有する。
上記骨格の一部としてのジエン系重合体としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。なかでも、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという理由から、上記骨格の一部としてのジエン系重合体は、ポリブタジエン及び/又はポリイソプレンを有することが好ましい。
ポリウレタン系ポリマーの骨格の一部としてのジエン系重合体は、例えば上記のヒドロキシ基含有ジエン系重合体によってポリウレタン系ポリマーに導入することができる。
【0035】
[一次粒子が3つ以上集合して形成されている]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子は、一次粒子が3つ以上集合して形成されている。
特定微粒子が1分子当たり有する一次粒子の数の上限は、特定微粒子の平均粒子径が0.01~200μmであれば、特に制限されない。
【0036】
(凸部)
特定微粒子は、一次粒子による凸部を複数有することができる。
なお、特定微粒子が有することができる、一次粒子による複数の凸部は具体的態様が多様であり上記具体的態様を包括的に表現できないため、特定微粒子を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的である場合に該当し、したがって本発明のゴム組成物における特定微粒子を製造方法を伴って規定することには「不可能・非実際的事情」の存在が認められうると考えられる。
【0037】
[微粒子の平均粒子径]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子の平均粒子径は0.01~200μmである。
特定微粒子(全体)の平均粒子径は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、0.1~200μmであることが好ましい。
【0038】
(一次粒子の平均粒子径)
特定微粒子を形成する一次粒子の平均粒子径は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、0.01~20μmであることが好ましい。
特定微粒子(全体)の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM。倍率500~16,000倍)で観察した写真において任意の特定微粒子5個の粒子径から求められた平均値である。
特定微粒子を構成する一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM。倍率500~16,000倍)で観察した写真において任意の一次粒子10個の粒子径から求められた平均値である。
【0039】
(分散体)
特定微粒子は、特定微粒子が分散媒中に分散する分散体として使用されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0040】
(分散体中の特定微粒子の含有量)
特定微粒子が分散媒中に分散する分散体である場合、特定微粒子の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記分散体中の5~60質量%であることが好ましい。
【0041】
(分散媒)
上記分散体は、分散媒として、例えば、未変性又は架橋性基を有するポリマーが挙げられる。上記架橋性基としては、例えば、加水分解性シリル基が挙げられる。
分散媒は、ゴム成分としてのジエン系ゴムと相溶しやすく、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、未変性又は架橋性基を有するポリマーを含むことが好ましく、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体を含むことがより好ましく、未変性のジエン系重合体を含むことが更に好ましい。
【0042】
特定微粒子は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体中に分散した分散体であること(上記分散体の状態であること)が好ましく、数平均分子量が1,000~100,000である未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体中に分散した分散体であること(上記分散体の状態であること)がより好ましい。
【0043】
((未変性のジエン系重合体))
上記分散媒としての未変性のジエン系重合体は、共役ジエン系モノマーを含むモノマーによって主鎖が形成された、未変性のポリマーであればよい。
【0044】
未変性のジエン系重合体としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリブタジエン又はポリイソプレンを含むことが好ましく、ポリブタジエンを含むことがより好ましい。
【0045】
(分散媒の数平均分子量)
分散媒(なかでも、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体)の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、1,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましい。
本発明において、上記Mnは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とできる。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0046】
(分散媒の量)
特定微粒子が特定微粒子と分散媒とを含有する分散体として使用される場合、分散媒(例えば未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体)の量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、後述するヒドロキシ基含有ジエン系重合体100質量部に対して、200~5000質量部であることが好ましい。
【0047】
上記分散体は、特定微粒子、分散媒の他、更に、界面活性剤等を含有することができる。
【0048】
[特定微粒子の含有量]
本発明のゴム組成物において、特定微粒子の含有量(正味の特定微粒子の含有量)は、上記ゴム成分100質量部に対して0.1~30質量部である。なお、「上記ゴム成分100質量部」は、本発明のゴム組成物で配合される上記ゴム成分100質量部を意味する。上記「ゴム成分100質量部」には、特定微粒子が分散体である場合の分散媒としての未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体は含まれない。
特定微粒子の含有量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、上記ゴム成分100質量部に対して5.0~20質量部であることが好ましい。
【0049】
(特定微粒子の製造方法)
特定微粒子の製造方法としては、例えば、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含有する鎖延長剤と、界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する分散系に、
イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物を混合し、
上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、上記鎖延長剤と、上記ポリイソシアネート化合物とを重合させて、特定微粒子を製造する製造方法が挙げられる。
【0050】
((未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体))
特定微粒子の製造方法に使用できる、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体は、上記分散媒としての、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体と同様である。
特定微粒子の製造方法に使用できる、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、未変性ジエン系重合体を含有することが好ましく、ポリブタジエン又はポリイソプレンを含むことがより好ましく、ポリブタジエンを含むことが更に好ましい。
特定微粒子の製造方法に使用できる、未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体の数平均分子量は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましい。
【0051】
((ヒドロキシ基含有ジエン系重合体))
特定微粒子の製造方法に使用できる、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体は、骨格がジエン系重合体であり、ヒドロキシ基を有するポリマーである。
ヒドロキシ基含有ジエン系重合体は、後述するポリイソシアネート化合物と反応することができる。
【0052】
・骨格
ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有する骨格としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。なかでも、上記骨格は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリブタジエン又はポリイソプレンであることが好ましい。
【0053】
・ヒドロキシ基
ヒドロキシ基含有ジエン系重合体は、活性水素含有基としてヒドロキシ基を有する。
ヒドロキシ基含有ジエン系重合体は、1分子当たりヒドロキシ基を1個以上有すればよく、本発明の効果がより優れるという観点から、1分子当たりヒドロキシ基を複数有することが好ましい。
【0054】
・数平均分子量
ヒドロキシ基含有ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1000~3000であることが好ましく、2000~3000がより好ましい。
本発明において、上記Mnは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とできる。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0055】
(鎖延長剤)
特定微粒子の製造方法に使用できる鎖延長剤は本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、イオン性鎖延長剤を含むことが好ましい。
鎖延長剤は、活性水素基含有基を1分子当たり複数有する化合物である。
鎖延長剤は、上記活性水素基含有基において、後述するポリイソシアネート化合物等が有するイソシアネート基と反応することができる。
活性水素基含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられる。
【0056】
(イオン性鎖延長剤)
特定微粒子の製造方法に使用できるイオン性鎖延長剤は、上記活性水素基含有基の他に、イオン性基を有する化合物である。イオン性鎖延長剤において、イオン性基は、活性水素基含有基とは異なる基である。
イオン性鎖延長剤を使用することによって、特定微粒子(特定微粒子を形成するポリウレタン系ポリマー)にイオン性基を導入することができる。
イオン性鎖延長剤は、活性水素基含有基としてヒドロキシ基を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0057】
(イオン性基)
イオン性鎖延長剤が有するイオン性基は、ポリウレタン系ポリマーが有するイオン性基と同様である。
【0058】
イオン性基鎖延長剤としては、アニオン性基を有する化合物とカチオン性基を有する化合物が挙げられる。なお、アニオン性基を有する化合物は、アニオン性基以外に、1分子当たり複数の活性水素基含有基を有する。カチオン性基を有する化合物も同様である。
【0059】
・アニオン性基を有する化合物の原料
アニオン性基を有する化合物の原料(アニオン性基を形成しうる化合物)としては、例えば、複数の活性水素基含有基及びカルボキシ基(-COOH)を有する化合物が挙げられる。具体的には例えば、ビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸が挙げられる。ビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸においてヒドロキシアルキル部分のアルキル基の炭素数は1~10とできる。ビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸において、ヒドロキシアルキル基及びカルボキシ基が結合する炭化水素基の炭素数は1~10とできる。
アニオン性基を形成しうる化合物は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸のようなビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸を含むことが好ましい。
【0060】
・カチオン性基を有する化合物の原料
カチオン性基を有する化合物の原料(カチオン性基を形成しうる化合物)としては、例えば、活性水素基含有基を複数有する第3級アミンが挙げられる。
カチオン性基を形成しうる化合物は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、活性水素基含有基を複数有する第3級アミンを含むことが好ましい。
【0061】
・・活性水素基含有基を有する第3級アミン
活性水素基含有基を有する第3級アミンは、活性水素基含有基と第3級アミンを形成する窒素原子(第3級窒素原子)とを有する化合物である。活性水素基含有基及び上記窒素原子が結合する炭化水素基は特に制限されない。
活性水素基含有基を有する第3級アミンは、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、ヒドロキシ基を3個有する第3級アミンを含むことが好ましく、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基3個が1つの窒素原子に結合する第3級アミンを含むことがより好ましく、トリエタノールアミンを含むことが更に好ましい。
【0062】
イオン性鎖延長剤としては、例えば、複数の活性水素基含有基及びカルボキシ基(-COOH)を有する化合物と活性水素基含有基を複数有する第3級アミンとの組合せによる、イオン性基を有する化合物;複数の活性水素基含有基及びカルボキシ基(-COOH)を有する化合物と金属カチオン(例えばナトリウムイオン)との組合せによる、イオン性基を有する化合物が挙げられる。上記金属カチオンの原料としては、例えば、水酸化ナトリウムのような金属水酸化物が挙げられる。
【0063】
・イオン性鎖延長剤の好適態様
イオン性鎖延長剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、複数の活性水素基含有基及びカルボキシ基(-COOH)を有する化合物と活性水素基含有基を複数有する第3級アミンとの組合せによる、イオン性基を有する化合物を含むことが好ましく、ビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸と活性水素基含有基を複数有する第3級アミンとの組合せによる、イオン性基を有する化合物を含むことがより好ましく、ビス(ヒドロキシアルキル)カルボン酸と炭素数1~10のヒドロキシアルキル基3個が1つの窒素原子に結合する第3級アミンとの組合せによる、イオン性基を有する化合物を含むことが更に好ましい。
【0064】
イオン性基を有する化合物が、複数の活性水素基含有基及びカルボキシ基(-COOH)を有する化合物(カルボキシ化合物)と活性水素基含有基を複数有する第3級アミンとの組合せによる場合、上記カルボキシ化合物及び上記第3級アミンの一方又は両方が上記ポリウレタン系ポリマーに組み込まれればよい。
【0065】
(イオン性鎖延長剤の調製方法)
イオン性鎖延長剤の調製方法としては、例えば、アニオン性基を形成しうる化合物及びアニオン性基を形成しうる化合物を水中で混合する方法が挙げられる。
【0066】
アニオン性基を形成しうる化合物として例えば2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸が挙げられるが、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸は高融点を有し、室温(23℃)条件下では固体である。
このように、アニオン性基を形成しうる化合物及び/カチオン性基を形成しうる化合物が、高融点を有する、又は、室温(23℃)条件下では固体である場合、アニオン性基を形成しうる化合物及びカチオン性基を形成しうる化合物を水中で混合して得た混合物として使用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記混合物は、水の他に、アニオン性基を形成しうる化合物及びカチオン性基を形成しうる化合物によって形成された塩(例えば、上述の、活性水素基含有基を1分子当たり複数有するカルボン酸塩)をイオン性鎖延長剤として含むことができる。イオン性鎖延長剤を上記のような混合物として使用する場合、イオン性鎖延長剤を未変性のジエン系重合体に分散させ、イオン性鎖延長剤をポリイソシアネート化合物と効率よく反応させることができるので好ましい。
イオン性鎖延長剤の調製において水を使用する場合、アニオン性基を形成しうる化合物及びカチオン性基を形成しうる化合物が溶解しうる量で水を使用すればよい。
【0067】
アニオン性基を形成しうる化合物とカチオン性基を形成しうる化合物とのモル比(アニオン性基を形成しうる化合物:カチオン性基を形成しうる化合物)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1:0.9~1.1であることが好ましく、1:1がより好ましい。
【0068】
(非イオン性鎖延長剤)
鎖延長剤は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、イオン性鎖延長剤の他に更に非イオン性鎖延長剤を含むことが好ましい。
非イオン性鎖延長剤は、活性水素基含有基としてアミノ基を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
非イオン性鎖延長剤としては、例えば、ジメチルチオトルエンジアミンのようなジアミン系の非イオン性鎖延長剤が挙げられる。
イオン性鎖延長剤と非イオン性鎖延長剤とのモル比(イオン性鎖延長剤:非イオン性鎖延長剤)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1:0.5~2.0であることが更に好ましい。
【0069】
(鎖延長剤の量)
鎖延長剤の量(鎖延長剤が更に非イオン性鎖延長剤を含む場合、イオン性鎖延長剤と非イオン性鎖延長剤との合計量)は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
【0070】
(界面活性剤)
特定微粒子の製造方法に使用することができる界面活性剤としては、例えば、非イオン系又はシリコーン系界面活性剤が挙げられる。非イオン系又はシリコーン系界面活性剤は、非イオン系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を意味する。
上記界面活性剤を使用することによって、製造時のヒドロキシ基含有ジエン系重合体を、又は、製造後の特定微粒子を、分散媒(例えば未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体)中に分散させやすくできる。
特定微粒子の製造方法において非イオン系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を併用してもよい。
【0071】
・非イオン系界面活性剤
非イオン性界面活性剤は特に制限されない。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン系脂肪酸エステル型、ソルビタン系脂肪酸エステル型、ソルビトール系脂肪酸エステル型が挙げられる。
【0072】
・シリコーン系界面活性剤
シリコーン系界面活性剤は、シリコーンポリマーに基づく界面活性剤である。なお、シリコーン系界面活性剤は非イオン性界面活性剤を含まない。
【0073】
上記界面活性剤は、本発明の効果がより優れる理由から、シリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。
【0074】
(界面活性剤の量)
界面活性剤の量(非イオン系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を併用した場合、両者の合計量)は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましい。
【0075】
(触媒)
特定微粒子の製造方法において使用することができる触媒は、イソシアネート基と活性水素含有基との反応を促進しうる化合物である。触媒は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、反応性触媒を含有することが好ましい。
反応性触媒は、イソシアネート基又は活性水素含有基と反応しつつ、両者の反応を促進しうる化合物である。
反応性触媒は、本発明の効果がより優れる理由から、活性水素基含有基を複数有する第3級アミンを含むことが好ましい。
【0076】
(活性水素基含有基を有する第3級アミン)
活性水素基含有基を有する第3級アミンは、活性水素基含有基と第3級アミンを形成する窒素原子とを有する化合物である。活性水素基含有基及び上記窒素原子が結合する炭化水素基は特に制限されない。
活性水素基含有基を有する第3級アミンは、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れるという観点から、ヒドロキシ基を3個有する第3級アミンを含むことが好ましく、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基3個が1つの窒素原子に結合する第3級アミンを含むことがより好ましく、トリエタノールアミンを含むことが更に好ましい。
なお、触媒は、イオン性基を有さない。特定微粒子の製造方法において、触媒(例えば活性水素基含有基を有する第3級アミンのような反応性触媒)を使用する場合、触媒をそのまま使用するので、触媒はイオン性基を有さず、したがって、本発明において触媒はイオン性鎖延長剤に該当しない。
【0077】
(触媒の量)
特定微粒子の製造方法において触媒を使用する場合、触媒の量は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体100質量部に対して、1.0~20.0質量部であることが好ましい。
【0078】
(ポリイソシアネート化合物)
特定微粒子の製造方法に使用できるポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を複数有する化合物である。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0079】
ポリイソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDI、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDIのようなMDI系芳香族ポリイソシアネートを含むことがより好ましく、ポリメリックMDIを含むことが更に好ましい。
【0080】
ポリメリックMDIは、一般的に、モノメリックMDI及びその多核体の混合物である。
【0081】
カルボニル変性MDIは、カルボジイミドで変性されたMDIである。
【0082】
ポリイソシアネート化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、平均官能基数2.1以上のポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。上記平均官能基数における官能基はNCO基である。ポリイソシアネート化合物は、平均官能基数2.1以上のポリイソシアネート化合物であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0083】
(ポリイソシアネート化合物の量)
ポリイソシアネート化合物の量は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体100質量部に対して、100~500質量部であることが好ましい。
【0084】
(ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量に対する、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比)
特定微粒子の製造方法において、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量に対する、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比[NCO基/(OH基+活性水素含有基)]は、本発明の効果(特に氷上摩擦性能)がより優れる理由から、1.5~6.0であることが好ましく、1.8~4.0がより好ましく、2.0~2.5が更に好ましい。
鎖延長剤が更に非イオン性鎖延長剤を含有する場合、鎖延長剤が有する活性水素含有基の量には、非イオン性鎖延長剤が有する活性水素含有基の量が含まれる。
特定微粒子の製造方法において更に触媒を使用し、触媒が活性水素基含有基を有する場合、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量[上記式における(OH基+活性水素含有基)]には、触媒が有する活性水素含有基の量が追加される。
なお、上記モル比の算出において上記のとおり触媒が有する活性水素含有基の量が追加された場合に得られるモル比の数値範囲及びその好適範囲は、上記モル比の数値範囲(1.5~6.0)及び後述するその好適範囲と同様である。
なお、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量には水による活性水素基の量は含まれない。
また、イオン性鎖延長剤を調製する際に金属カチオンの原料として金属水酸化物を使用した場合、上記金属水酸化物に由来するOH基は、鎖延長剤が有する活性水素含有基に含まれない。
【0085】
(特定微粒子の製造方法)
特定微粒子の製造方法において、分散媒(例えば未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体)と、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含む鎖延長剤と、上記界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する分散系に、上記ポリイソシアネート化合物を混合することができる。
イオン性鎖延長剤は上述のとおり予め調製されたものを使用できる。
特定微粒子の製造方法において更に反応性触媒を使用する場合、上記分散系に反応性触媒を加えることが好ましい。
【0086】
・分散系の調製
分散媒(未変性又は架橋性基を有するジエン系重合体)と、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含む鎖延長剤と、上記界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する分散系の調製としては、これらを撹拌して混合することが好ましい。上記分散系を調製する際の温度は10~60℃の条件下であることが好ましい。
上記調製で得られる分散系としては、例えば、上記分散媒中、上記界面活性剤及び触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下に、上記ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含む鎖延長剤とが分散した分散系が挙げられる。
【0087】
・分散系に上記ポリイソシアネート化合物を混合する
次に、上記分散系に上記ポリイソシアネート化合物を混合する。上記分散系に上記ポリイソシアネート化合物を混合する方法は特に制限されない。上記混合は撹拌しながら行うことが好ましい。
上記分散系に上記ポリイソシアネート化合物を混合する際の温度は10~60℃の条件下であることが好ましい。
【0088】
上記の製造方法によれば、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体と、イオン性鎖延長剤を含有する鎖延長剤と、ポリイソシアネート化合物との反応(重合)によって、特定微粒子(イオン性基及びウレタン結合を有し、並びに、骨格の一部にジエン系重合体を有するポリウレタン系ポリマーで形成されている一次粒子が3つ以上集合して形成されている、平均粒子径が0.01~200μmである微粒子)を製造することができる。
【0089】
(任意成分)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を更に含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、硫黄、加硫促進剤などが挙げられる。
【0090】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混合する方法などが挙げられる。本発明のゴム組成物が硫黄又は加硫促進剤を更に含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫することができる。
【0091】
本発明のゴム組成物は、例えばタイヤ、より具体的には例えばスタッドレスタイヤに使用することができる。
本発明のゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いることが好適に挙げられる。
【0092】
[スタッドレスタイヤ]
本発明のスタッドレスタイヤ(本発明のタイヤ)は、本発明のゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤである。
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて製造されたこと以外は特に制限されない。
【0093】
本発明のタイヤとしては例えば空気入りタイヤが挙げられる。
本発明のゴム組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備えるタイヤであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0094】
図2に、本発明のタイヤの実施態様の一例の部分断面概略図を示す。なお、本発明のタイヤは添付の図面に限定されない。
図2において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
タイヤトレッド部3は本発明のゴム組成物を用いて形成されていることが好ましい。
【0095】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。
本発明のタイヤが空気入りタイヤである場合、空気入りタイヤに充填する気体としては、例えば、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例0096】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
[微粒子の製造]
(微粒子1)
ヒドロキシ基を含むジエン系重合体(出光興産製Poly bd R-45HT。両末端にヒドロキシ基を有する液状ポリブタジエン。数平均分子量2,800。水酸基含有量が0.83mol/kg)50.0gと、ジメチルチオトルエンジアミン(非イオン性鎖延長剤。クミアイ化学社製ハートキュア30)7.5gと、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(4.7g、0.035モル。東京化成製)及びトリエタノールアミン(5.3g、0.035モル。東京化成製)によって形成された塩10gと水10gとの混合物(上記混合物は、予め、上記2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.035モル)とトリエタノールアミン(0.035モル)とを水10gに溶解させて得られた)と、トリエタノールアミン(反応性触媒)5gと、液状イソプレン重合体(クラレ社製LIR-30、未変性のイソプレン重合体、数平均分子量28000)212.0gと、Niax silicone L-5111(シリコーン系界面活性剤。モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク製)2.5gとを自転公転攪拌機で室温の条件下で2分間攪拌して、分散系を調製した。なお、上記2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と上記トリエタノールアミンとの塩(カルボン酸塩)が、本発明におけるイオン性鎖延長剤に対応する。
次いで上記分散系に、ポリメリックMDI(東ソー社製ミリオネートMR-400、NCO%が30.4%、平均官能基数3.0)125.0gを投入し、室温の条件下で2分間攪拌することで、微粒子1(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO
-及びN
+が微粒子1を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体1を製造した。上記分散体1全体中の微粒子1の含有率は50質量%であった。
微粒子1を走査型電子顕微鏡(SEM。倍率16,000倍)で観察したところ、平均粒子径が0.5μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径3μmの凝集体が生成していることが確認された。上記観察結果の写真を
図1に示す。
図1において、一次粒子12が複数集合して微粒子10を形成している。微粒子10は一次粒子12による複数の凸部を有する。
【0097】
(モル比*)
微粒子1を製造した際の、ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量に対する、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比を、第1表の分散体1欄の「モル比*」に示す。微粒子1の製造では、上述のとおり、非イオン性鎖延長剤及び反応性触媒が使用されたので、上記モル比*の算出において「ヒドロキシ基含有ジエン系重合体が有するヒドロキシ基と鎖延長剤が有する活性水素含有基との全量」に、上記非イオン性鎖延長剤が有する及び反応性触媒が有する活性水素含有基のモル数が加算された。
比較微粒子1以外の微粒子を製造する際の上記モル比を、第1表の各分散体欄の「モル比*」に示す。
【0098】
(微粒子2)
ヒドロキシ基を含むジエン系重合体として、Poly bd R-45HTの代わりに出光興産製Poly ip(末端にヒドロキシ基を有する液状ポリイソプレン。数平均分子量2500。水酸基含有量が0.83mol/kg)50.0gを用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子2(骨格:ポリイソプレン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体2を製造した。上記分散体2全体中の微粒子2の含有率は50質量%であった。
微粒子2を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.4μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径5μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0099】
(微粒子3)
イオン性鎖延長剤として、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)とトリエタノールアミン(東京化成製)によって形成された塩と水との混合物の代わりに、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.035モル。東京化成製)及び水酸化ナトリウム(0.035モル。東京化成製)によって形成された塩と水との混合物(上記混合物は、予め、上記2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.035モル)と上記水酸化ナトリウム(0.035モル)とを水10gに溶解させて得られた)を用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子3(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-Na+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体3を製造した。上記分散体3全体中の微粒子3の含有率は50質量%であった。
微粒子3を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が2μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径20μmの凝集体が生成していることが確認された。
なお、実施例3において上記イオン性鎖延長剤を調製する際に使用された水酸化ナトリウムに由来するOH基は、分散体3欄の「モル比*」を算出するにあたり、鎖延長剤が有する活性水素含有基に含まれない。
【0100】
(微粒子4)
ジメチルチオトルエンジアミンを加えなかったこと以外は微粒子1と同様の方法で微粒子4(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体4を製造した。上記分散体4全体中の微粒子4の含有率は50質量%であった。
微粒子4を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が10μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径120μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0101】
(微粒子5)
ポリイソシアネートとして、ポリメリックMDIの代わりにカルボジイミド変性MDI(東ソー社製ミリオネートMTL、NCO%が29.0%、平均官能基数2.0)125.0gを用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子5(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体5を製造した。上記分散体5全体中の微粒子5の含有率は50質量%であった。
微粒子5を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.1μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径0.8μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0102】
(微粒子6)
未変性のジエン系重合体として、液状イソプレン重合体の代わりに液状ブタジエン重合体(未変性のブタジエン重合体。クラレ社製LBR-305、数平均分子量26000)を用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子6(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状ブタジエン重合体を含む分散媒)に分散した分散体6を製造した。上記分散体全体6中の微粒子6の含有率は50質量%であった。
微粒子6を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.4μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径2μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0103】
(比較微粒子2)
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及びトリエタノールアミンによって形成された塩(イオン性鎖延長剤)と水との混合物を加えず、ジメチルチオトルエンジアミンの量を15gに変更し、ポリメリックMDIの量を35gに変更し、液状イソプレン重合体の量を107.5gに変更した以外は、微粒子1と同様の方法で比較微粒子2(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性鎖延長剤によるイオンの導入なし)が液状物(上記液状ブタジエン重合体を含む分散媒)に分散した比較分散体2を製造した。上記比較分散体2全体中の比較微粒子2の含有率は50質量%であった。
比較微粒子2を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径20μmの真球状微粒子が生成していることが確認された。
【0104】
(微粒子7)
イオン性鎖延長剤として、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.0175モル。東京化成製)及びトリエタノールアミン(0.0175モル。東京化成製)によって形成された塩5gと水5gとの混合物(上記混合物は、予め、上記2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.0175モル)とトリエタノールアミン(0.0175モル)とを水5gに溶解させて得られた)を用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子7(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体7を製造した。上記分散体7全体中の微粒子7の含有率は50質量%であった。
微粒子7を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.5μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径2μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0105】
(微粒子8)
イオン性鎖延長剤として、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.0525モル。東京化成製)及びトリエタノールアミン(0.0525モル。東京化成製)によって形成された塩15g(上記塩15gは、予め、上記2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(0.0525モル)とトリエタノールアミン(0.0525モル)とを水15gに溶解させて得られた)を用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子8(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体8を製造した。上記分散体8全体中の微粒子8の含有率は50質量%であった。
微粒子8を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.5μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径20μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0106】
(微粒子9)
Niax silicone L-5111(シリコーン系界面活性剤)の代わりに非イオン系界面活性剤として、レオドールTW-O320V(花王社製)を用いた以外は微粒子1と同様の方法で微粒子9(骨格:ポリブタジエン、架橋:ウレタン結合及びウレア結合、イオン性基:COO-及びN+が本微粒子を構成するポリマーに導入されている)が液状物(上記液状イソプレン重合体を含む分散媒)に分散した分散体9を製造した。上記分散体9全体中の微粒子9の含有率は50質量%であった。
微粒子9を走査型電子顕微鏡で上記と同様に観察したところ、平均粒子径が0.8μmである一次粒子が3つ以上集合し、複数の凸部を形成した平均粒子径6μmの凝集体が生成していることが確認された。
【0107】
[ゴム組成物の製造]
上記実施例で製造された各微粒子を、分散体の状態でゴム組成物に使用した。
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各ゴム組成物を製造した。第1表の各分散体欄に示す量は、微粒子を含む分散体全体の量である。上記で製造された各分散体において、微粒子の含有量はいずれも分散体全体中の50質量%であった。
【0108】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
(加硫ゴムシートの作製)
上記のとおり製造された各ゴム組成物を金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)中で加硫して(170℃、15分間)、加硫ゴムシートを作製した。
【0109】
(0℃および60℃のtanδ)
上記のとおり得られた各加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、温度0℃および60℃におけるtanδを求めた。
温度60℃におけるtanδの結果は測定値の逆数を用いて標準例1の値を100とする指数で示した(「低転がり性能 tanδ(60℃)」欄参照)。
温度0℃におけるtanδの結果を標準例1の値を100とする指数で示した(「ウェット性能 tanδ(0℃)」欄参照)。
【0110】
(低燃費性能及びウェット性能の評価基準)
・低燃費性能
本発明において、tanδ(60℃)の指数が98以上であった場合、低転がり性能が優れ、優れた低燃費性能を維持できたと評価した。上記指数が98より大きい程低燃費性能がより優れることを意味する。
一方、tanδ(60℃)の指数が98未満であった場合、低転がり性能が悪く、優れた低燃費性能を維持でなかったと評価した。
【0111】
・ウェット性能
本発明において、tanδ(0℃)の指数が100超であった場合、tanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときのウェット性能が優れることを意味する。また、上記指数が100より大きいほどウェット性能がより優れることを意味する。
一方、tanδ(0℃)の指数が100以下であった場合、ウェット性能が悪かったと評価した。
【0112】
(氷上摩擦性能)
上記のように得られた各加硫ゴムシートを偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は-1.5℃とし、荷重5.5g/cm3、ドラム回転速度25km/時とした。
氷上摩擦係数の結果を標準例1を100とする指数で表した。
(氷上摩擦性能の評価基準)
上記指数が100超であった場合、氷上摩擦力が大きく、氷上摩擦性能に優れることを意味する。また、上記指数が100より大きいほど氷上摩擦性能がより優れることを意味する。
【0113】
【0114】
【0115】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ジエン系ゴム)
・NR:天然ゴム(STR20、ガラス転移温度:-65℃、ボンバンディット社製)
・BR:ポリブタジエンゴム(Nipol BR1220、ガラス転移温度:-110℃、日本ゼオン社製)
(白色充填剤)
・シリカ:ULTRASIL VN3(エボニック・デグッサ社製)
(カーボンブラック)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
【0116】
・シランカップリング剤:ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製Si69
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸YR
・老化防止剤:アミン系老化防止剤。フレキシス社製サントフレックス6PPD
・ワックス:パラフィンワックス(大内新興化学社製)
・オイル:アロマオイル(エクストラクト4号S、昭和シェル石油社製)
・硫黄:油処理硫黄(細井化学社製)
・加硫促進剤:スルフェンアミド系加硫促進剤(サンセラーCM-G、三新化学社製)
【0117】
(微粒子)
・分散体1~9:上述のとおり製造した分散体1~9
・比較微粒子1:ダイナミックビーズ(大日精化工業製)。平均粒子径200μmのウレタンビーズ。凹凸なし。比較微粒子1はイオン性基を有さない。
・比較分散体2:上述のとおり製造した比較分散体2。比較分散体2に含有される比較微粒子2は、これを製造する際イオン性鎖延長剤が使用されていないので、イオン性基を有さない。比較微粒子2は真球
【0118】
・液状イソプレン重合体:未変性のイソプレン重合体。クラレ社製LIR-30、数平均分子量28000
【0119】
第1表に示す結果から、微粒子を構成するポリウレタン系ポリマーがイオン性基を有さない比較例1は、低燃費性能を維持できず、ウエット性能及び氷上摩擦性能が悪かった。
イオン性基を有さない比較微粒子2を含有する比較例2は、低燃費性能を維持できず、ウエット性能が悪かった。
【0120】
これらに対して、本発明のゴム組成物は、タイヤとしたときの優れた低燃費性を維持しつつウェット性能及び氷上摩擦能性が優れた。