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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070403
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】エレベータかご及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/16 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B66B5/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180869
(22)【出願日】2022-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
(72)【発明者】
【氏名】張 燕莉
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304DA33
3F304DA43
(57)【要約】
【課題】 回転部に加えられる第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部の第1回転方向への回転を阻止することができるエレベータかごを提供する。
【解決手段】 エレベータかごにおいては、停止装置は、かご枠に対して固定される固定子と、固定子と協働してエレベータかごをかごレールに停止させる停止位置と、停止位置よりも下方である待機位置と、の間で、固定子に対して可動である可動子と、かご枠に回転可能に接続され、かご枠に対して第1回転方向に回転することによって、可動子を上方へ移動させる回転部と、かご枠に接続され、回転部に加えられる第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部の第1回転方向への回転を阻止する回転阻止部と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごレールに案内されることによって上下方向に走行するエレベータかごであって、
かご枠と、
前記かご枠に取り付けられ、前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止装置と、を備え、
前記停止装置は、
前記かご枠に対して固定される固定子と、
前記固定子と協働して前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止位置と、前記停止位置よりも下方である待機位置と、の間で、前記固定子に対して可動である可動子と、
前記かご枠に回転可能に接続され、前記かご枠に対して第1回転方向に回転することによって、前記可動子を上方へ移動させる回転部と、
前記かご枠に接続され、前記回転部に加えられる前記第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、前記回転部の前記第1回転方向への回転を阻止する回転阻止部と、を備える、エレベータかご。
【請求項2】
前記回転阻止部は、前記回転部に加えられる前記第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに前記回転部の前記第1回転方向への回転を阻止するように、前記かご枠と前記回転部とを接続するトルクリミッタを備える、請求項1に記載のエレベータかご。
【請求項3】
前記トルクリミッタは、前記回転部が前記かご枠に対して前記第1回転方向へ回転するときに、前記かご枠及び前記回転部間の力の伝達を遮断する、請求項2に記載のエレベータかご。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかごを備える、エレベータ。
【請求項5】
前記エレベータかごの走行速度を検出する調速機を備え、
前記調速機は、
前記エレベータかごに接続される無端環状のガバナロープと、
前記ガバナロープが巻き掛けられるガバナ車と、
前記エレベータかごの走行速度が設定速度になった場合に、前記ガバナロープを把持する把持部と、を備え、
前記回転阻止部による前記阻止が解除された後に、前記回転部が前記第1回転方向へ回転するために必要なトルクは、前記設定トルクに対して、一定である又は減少する、請求項4に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記設定トルクは、前記エレベータかごが設定加速度で下方へ移動したときに前記回転部に前記第1回転方向へ加えられるトルクである、請求項5に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータかご及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータかごは、かご枠と、かごをかごレールに停止させる停止装置とを備えている。そして、停止装置は、かごに固定される固定子と、上方へ移動することによって、固定子と協働してかごをかごレールに停止させる可動子と、かご枠に対して第1回転方向へ回転することによって、可動子を上方へ移動させる回転部とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、特許文献1に係るエレベータかごは、回転部が第1回転方向に回転することを抑制するために、回転部に第1回転方向と反対方向に弾性復元力を加える弾性体を備えている。しかしながら、回転部に第1回転方向のトルクが少しでも加えられた場合に、回転部は、弾性体の弾性復元力に反して、第1回転方向に回転することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-219450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、回転部に加えられる第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部の第1回転方向への回転を阻止することができるエレベータかご及びエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エレベータかごは、かごレールに案内されることによって上下方向に走行するエレベータかごであって、かご枠と、前記かご枠に取り付けられ、前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止装置と、を備え、前記停止装置は、前記かご枠に対して固定される固定子と、前記固定子と協働して前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止位置と、前記停止位置よりも下方である待機位置と、の間で、前記固定子に対して可動である可動子と、前記かご枠に回転可能に接続され、前記かご枠に対して第1回転方向に回転することによって、前記可動子を上方へ移動させる回転部と、前記かご枠に接続され、前記回転部に加えられる前記第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、前記回転部の前記第1回転方向への回転を阻止する回転阻止部と、を備える。
【0007】
エレベータは、前記のエレベータかごを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るエレベータの概要図
図2】同実施形態に係るエレベータかごの要部正面図((a):可動子が待機位置に位置する図、(b):可動子が停止位置に位置する図)
図3】同実施形態に係るエレベータかごの要部斜視図
図4】調速機の把持部の把持力と可動子の位置との関係を示す図
図5】他の実施形態に係るエレベータかごの要部正面図((a):可動子が待機位置に位置する図、(b):可動子が停止位置に位置する図)
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図面において、構成要素の寸法は、例えば、理解を容易にするために、実際の寸法に対して拡大、縮小して示す場合があり、また、各図面の間での寸法比は、一致していない場合がある。なお、各図面において、例えば、理解を容易にするために、構成要素の一部を省略して示す場合がある。
【0010】
第1、第2等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、構成要素は、この用語によって特に限定されるものではない。なお、序数を含む構成要素の個数は、特に限定されず、例えば、一つでもよい場合がある。また、以下の明細書及び図面で用いられる序数は、特許請求の範囲に記載された序数と異なる場合がある。
【0011】
以下、エレベータ及びエレベータかごにおける一実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、エレベータ及びエレベータかごの構成等の理解を助けるために例示するものであり、エレベータ及びエレベータかごの構成を限定するものではない。
【0012】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、人(乗客)が乗るためのエレベータかご(以下、単に「かご」ともいう)2と、かご2を走行させるかご駆動部3と、かご2を案内するかごレール4と、かご2の走行速度を検出する調速機5と、エレベータ1の各部を制御する処理部6とを備えていてもよい。なお、かご駆動部3の駆動方式は、特に限定されない。
【0013】
例えば、本実施形態のように、エレベータ1は、第1端部がかご2に接続されるかごロープ7と、かごロープ7の第2端部に接続される釣合錘8と、釣合錘8を案内する錘レール9とを備え、かご駆動部3は、かごロープ7が巻き掛けられる綱車3aと、綱車3aを回転させる駆動源3b(例えば、モータ)と、綱車3aを制動する制動部3cとを備えている、という構成でもよい。
【0014】
即ち、かご駆動部3は、巻上機であって、エレベータ1は、ロープ式の駆動方式である、という構成でもよい。また、例えば、かご駆動部3は、油圧装置であり、エレベータ1は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよい。また、例えば、かご駆動部3は、リニアモータであって、エレベータ1は、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0015】
また、本実施形態においては、かごロープ7の第1端部がかご2に接続され、かごロープ7の第2端部が釣合錘8に接続されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ7の両端部がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ7がかご2のシーブ及び釣合錘8のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ7がかご2及び釣合錘8にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0016】
また、本実施形態に係るエレベータ1は、かご駆動部3である巻上機を機械室X2の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室X2が備えられておらず、エレベータ1は、巻上機を昇降路X1の内部に配置する、という構成でもよい。
【0017】
なお、各図において、第1方向D1は、第1横方向D1であり、第2方向D2は、第1横方向D1と直交する横方向である第2横方向D2であり、第3方向D3は、各横方向D1,D2とそれぞれ直交する上下方向D3であり、かご2及び釣合錘8が昇降する昇降方向である。
【0018】
調速機5は、例えば、本実施形態のように、かご2に接続される無端環状のガバナロープ5aと、かご2の速度を検出するために、ガバナロープ5aが巻き掛けられるガバナ車5bと、ガバナロープ5aに張力を付与するために、ガバナロープ5aに吊り下げられる張り車5cと、ガバナロープ5aを把持する把持部5dとを備えていてもよい。
【0019】
これにより、調速機5は、ガバナ車5bの回転速度に基づいて、かご2の走行速度を検出する。そして、例えば、かご2の走行速度が設定速度になった場合に、ガバナ車5bが設定回転速度で回転するため、起動部(図示していない)が起動することによって、把持部5dは、ガバナロープ5aを把持してもよい。なお、特に限定されないが、設定速度は、例えば、かご2の定格速度(通常運転時の最大速度)よりも大きくしてもよく、例えば、かご2の定格速度の110%~120%としてもよい。
【0020】
かご2は、例えば、本実施形態のように、人が乗るかご室2aと、かご室2aの周囲に配置され、かご室2aに固定されるかご枠2bと、かご枠2bに取り付けられてかご枠2bと共に移動し、かごレール4にかご2を停止させる停止装置10とを備えていてもよい。
【0021】
図2及び図3に示すように、停止装置10は、例えば、かご枠2bに対して固定される固定子11と、固定子11に対して可動な可動子12と、調速機5の動作が伝達されることよって、可動子12を動作させる動作部13とを備えていてもよい。可動子12は、例えば、固定子11と接触することによって固定子11と協働してかご2をかごレール4に停止させる停止位置(図2(b)参照)と、停止位置よりも下方の待機位置(図2(a)参照)との間で、固定子11に対して可動であってもよい。
【0022】
そして、把持部5dがガバナロープ5aを把持し、ガバナロープ5aの走行が停止し且つかご2が下方へ移動することによって、可動子12が待機位置から停止位置へ移動する、という構成でもよい。これにより、かご2の走行速度が設定速度になった場合に、可動子12が停止位置へ移動することによって、可動子12が、固定子11と協働してかごレール4に加圧して接触するため、かご2は、かごレール4に停止する。
【0023】
動作部13は、例えば、本実施形態のように、可動子12を上方へ移動させるために、かご枠2bに対して第1回転方向D4に回転する第1回転部14及び第2回転部15と、第1回転部14の回転と第2回転部15の回転とを連動させるために、第1回転部14及び第2回転部15を接続する連動部16と、かご枠2bに接続され、回転部14,15の第1回転方向D4への回転を阻止する回転阻止部17とを備えていてもよい。
【0024】
第1回転部14は、例えば、本実施形態のように、かご枠2bに回転可能に接続される回転軸14aと、回転軸14aに固定され、可動子12に回転可能に接続される可動接続部14bと、回転軸14aに固定され、連動部16に回転可能に接続される連動接続部14cと、回転軸14aに固定され、ガバナロープ5aに回転可能に接続されるロープ接続部14dとを備えていてもよい。これにより、第1回転部14の回転軸14a及び各接続部14b~14dは、一体となって回転する。
【0025】
第2回転部15は、例えば、本実施形態のように、かご枠2bに回転可能に接続される回転軸15aと、回転軸15aに固定され、可動子12に回転可能に接続される可動接続部15bと、回転軸15aに固定され、連動部16に回転可能に接続される連動接続部15cとを備えていてもよい。これにより、第2回転部15の回転軸15a及び各接続部15b,15cは、一体となって回転する。
【0026】
回転阻止部17は、例えば、本実施形態ように、第1回転部14とかご枠2bとを接続するトルクリミッタ17aを備えていてもよい。具体的には、トルクリミッタ17aは、例えば、本実施形態のように、第1回転部14の回転軸14aと、かご枠2bに固定される固定軸2cとを接続していてもよい。
【0027】
これにより、第1回転部14に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、トルクリミッタ17aは、第1回転部14の第1回転方向D4への回転を阻止する。したがって、例えば、ガバナロープ5aが揺動したり、かご2が加速して下方へ移動したりすることによって、第1回転部14に第1回転方向D4のトルクが加えられた場合でも、第1回転部14が回転することを抑制することができるため、可動子12が不必要に待機位置から移動することを抑制することができる。
【0028】
一方で、第1回転部14に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク以上であるときに、トルクリミッタ17aは、第1回転部14の第1回転方向D4へ回転を許容する。これにより、かご2の走行速度が設定速度になった場合や、かご2の走行加速度が設定加速度になった場合には、第1回転部14に設定トルク以上のトルクが加えられるため、第1回転部14が第1回転方向D4へ回転し、可動子12は、待機位置から停止位置へ移動する。
【0029】
例えば、かご2の下方への走行速度が設定速度になった場合には、把持部5dがガバナロープ5aを把持し、かご2が下方へ移動することによって、第1回転部14に設定トルク以上のトルクが加えられる。これにより、第1回転部14が第1回転方向D4へ回転し、可動子12は、待機位置から停止位置へ移動する。その結果、かご2は、かごレール4に停止する。
【0030】
また、例えば、かご2の下方への走行加速度が設定加速度になった場合には、ガバナロープ5aの上方への慣性力によって、第1回転部14に設定トルク以上のトルクが加えられる。これにより、第1回転部14が第1回転方向D4へ回転し、可動子12は、待機位置から停止位置へ移動する。その結果、かご2は、かごレール4に停止する。
【0031】
なお、特に限定されないが、設定加速度は、例えば、重力加速度の50%~90%としてもよい。また、設定トルクは、例えば、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、第1回転部14に第1回転方向D4へ加えられるトルクとしてもよい。
【0032】
トルクリミッタ17aの構成は、特に限定されない。例えば、トルクリミッタ17aは、本実施形態のように、第1回転部14に設定トルク以上のトルクが加えられ第1回転部14がかご枠2bに対して回転するときに、かご枠2b及び第1回転部14間の力の伝達を遮断するトルク遮断型のトルクリミッタ17aとしてもよい。これにより、かご枠2bに対して第1回転部14を第1回転方向D4へ円滑に回転させることができる。
【0033】
特に限定されないが、トルク遮断型のトルクリミッタ17aとして、例えば、ボール式、ローラ式、シャーピン式等が挙げられる。そして、トルク遮断型のトルクリミッタ17aにおいては、かご枠2b及び第1回転部14間の力の伝達を遮断した後に(即ち、第1回転部14の第1回転方向D4への回転の阻止が解除された後に)、第1回転部14を第1回転方向D4へ回転させるために必要となるトルクは、特に限定されないが、例えば、設定トルクの10%以下であってもよい。
【0034】
なお、トルクリミッタ17aは、トルク遮断型のトルクリミッタ17aだけでなく、例えば、第1回転部14がかご枠2bに対して回転するときに、かご枠2b及び第1回転部14間に設定トルク未満の力の伝達を維持するトルク維持型のトルクリミッタ17aとしてもよい。
【0035】
特に限定されないが、トルク維持型のトルクリミッタ17aとして、例えば、摩擦式、マグネット式等が挙げられる。そして、トルク維持型のトルクリミッタ17aにおいては、第1回転部14の第1回転方向D4への回転の阻止が解除された後に、第1回転部14を第1回転方向D4へ回転させるために必要となるトルクは、例えば、設定トルクの90%~100%となる。
【0036】
ところで、調速機5の把持部5dがガバナロープ5aを把持する力は、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクに関係する。具体的には、把持部5dの当該把持力が、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクに変換されるため、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが大きいほど、把持部5dの当該把持力は、大きくなる。
【0037】
それに対して、本実施形態に係るかご2においては、トルク遮断型のトルクリミッタ17aのみで、回転部14,15の第1回転方向D4の回転が阻止されている。これにより、当該阻止が解除された後に、回転部14,15が第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、設定トルクに対して、減少する。
【0038】
したがって、図4に示すように、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力f1は、回転部14,15の回転の阻止が解除された後に、減少する。具体的には、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力f1は、可動子12が待機位置から移動するときに最大の力F0となり、その後、減少して、小さい力F1となる。その結果、例えば、把持部5dに要求される把持力が大きくなることを抑制することができる。
【0039】
しかも、回転部14,15の回転の阻止が解除された後に、把持部5dの把持力f1が減少するため、可動子12は、待機位置から直ぐに停止位置へ移動することができる。これにより、例えば、かご2の速度や加速度がさらに大きくなる前に、可動子12が停止位置へ移動するため、例えば、かご2の空走距離及び制動距離を短くすることができる。したがって、例えば、かご2が昇降路X1の底部(緩衝材)に衝突することを抑制することができたり、かご2内の人への身体的負荷を軽減することができたりする。
【0040】
なお、空走距離とは、把持部5dがガバナロープ5aを把持してから、可動子12がかごレール4と接触するまでに、かご2が落下(下方へ走行)する距離のことである。また、制動距離とは、可動子12がかごレール4と接触してから、かご2の走行が完全に停止するまでの距離のことである。
【0041】
なお、トルク維持型のトルクリミッタ17aのみで、回転部14,15の第1回転方向D4の回転が阻止されている場合には、当該阻止が解除された後に、回転部14,15が第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、設定トルクに対して、一定(同じだけでなく、±10%の略同じも含む。以下同様。)となる。
【0042】
したがって、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力f2は、回転部14,15の回転の阻止が解除された後でも、一定となる。具体的には、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力f2は、可動子12が待機位置から移動するときの力F0のまま、一定の力F0となる。その結果、例えば、把持部5dに要求される把持力が大きくなることを抑制することができる。
【0043】
[1]
以上より、エレベータかご2は、本実施形態のように、かごレール4に案内されることによって上下方向D3に走行するエレベータかご2であって、かご枠2bと、前記かご枠2bに取り付けられ、前記エレベータかご2を前記かごレール4に停止させる停止装置10と、を備え、前記停止装置10は、前記かご枠2bに対して固定される固定子11と、前記固定子11と協働して前記エレベータかご2を前記かごレール4に停止させる停止位置と、前記停止位置よりも下方である待機位置と、の間で、前記固定子11に対して可動である可動子12と、前記かご枠2bに回転可能に接続され、前記かご枠2bに対して第1回転方向D4に回転することによって、前記可動子12を上方へ移動させる回転部14,15と、前記かご枠2bに接続され、前記回転部14,15に加えられる前記第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、前記回転部14,15の前記第1回転方向D4への回転を阻止する回転阻止部17と、を備える、という構成でもよい。
【0044】
斯かる構成によれば、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、回転阻止部17は、回転部14,15の第1回転方向D4への回転を阻止する。これにより、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部14,15の第1回転方向D4への回転を阻止することができる。
【0045】
[2]
また、上記[1]のエレベータかご2においては、本実施形態のように、前記回転阻止部17は、前記回転部14,15に加えられる前記第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに前記回転部14,15の前記第1回転方向D4への回転を阻止するように、前記かご枠2bと前記回転部(本実施形態においは、第1回転部)14とを接続するトルクリミッタ17aを備える、という構成でもよい。
【0046】
斯かる構成によれば、トルクリミッタ17aがかご枠2bと回転部(本実施形態においては、第1回転部)14とを接続しているため、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部14,15の第1回転方向D4への回転は、阻止される。そして、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク以上であるときに、回転部14,15は、第1回転方向D4へ回転する。
【0047】
[3]
また、上記[2]のエレベータかご2においては、本実施形態のように、前記トルクリミッタ17aは、前記回転部14,15が前記かご枠2bに対して前記第1回転方向D4へ回転するときに、前記かご枠2b及び前記回転部(本実施形態においては、第1回転部)14間の力の伝達を遮断する、という構成でもよい。
【0048】
斯かる構成によれば、回転部14,15がかご枠2bに対して第1回転方向D4へ回転するときに、かご枠2b及び回転部(本実施形態においては、第1回転部)14間の力の伝達が遮断されるため、かご枠2bに対して回転部14,15を第1回転方向D4へ円滑に回転させることができる。
【0049】
[4]
また、エレベータ1は、本実施形態のように、上記[1]~[3]の何れか一つのエレベータかご2を備える、という構成が好ましい。
【0050】
斯かる構成によれば、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、回転部14,15の第1回転方向D4への回転を阻止することができる。
【0051】
[5]
また、上記[4]のエレベータ1は、本実施形態のように、前記エレベータかご2の走行速度を検出する調速機5を備え、前記調速機5は、前記エレベータかご2に接続される無端環状のガバナロープ5aと、前記ガバナロープ5aが巻き掛けられるガバナ車5bと、前記エレベータかご2の走行速度が設定速度になった場合に、前記ガバナロープ5aを把持する把持部5dと、を備え、前記回転阻止部17による前記阻止が解除された後に、前記回転部14,15が前記第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、前記設定トルクに対して、一定である又は減少する(本実施形態においては、減少する)、という構成が好ましい。
【0052】
斯かる構成によれば、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力は、回転部14,15に加えられる第1回転方向D4のトルクに関係する。それに対して、回転部14,15が第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、設定トルクに対して、一定である又は減少する(本実施形態においては、減少する)。これにより、把持部5dがガバナロープ5aを把持する力f1,f2は、回転阻止部17による阻止が解除された後に、一定である又は減少する(本実施形態においては、減少する)。
【0053】
[6]
また、上記[5]のエレベータ1においては、本実施形態のように、前記設定トルクは、前記エレベータかご2が設定加速度で下方へ移動したときに前記回転部14,15に前記第1回転方向D4へ加えられるトルクである、という構成が好ましい。
【0054】
斯かる構成によれば、エレベータかご2が設定加速度で下方へ移動したときに、回転部14,15に第1回転方向D4へ加えられるトルクが、設定トルクとなるため、回転部14,15は、第1回転方向D4へ回転する。
【0055】
なお、エレベータ1及びエレベータかご2は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及びエレベータかご2は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0056】
(A)上記実施形態に係るエレベータかご2においては、回転阻止部17は、トルクリミッタ17aを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータかご2は、斯かる構成に限られない。
【0057】
例えば、図5に示すように、回転阻止部17は、回転部14に加えられる第1回転方向D4のトルクを検出する検出部17bと、回転部14の第1回転方向D4の回転を当て止めする当止部17cと、当止部17cによる当該当て止めを解除する解除部17dとを備えている、という構成でもよい。検出部17bは、特に限定されないが、例えば、圧力センサとしてもよく、また、解除部17dは、特に限定されないが、例えば、シリンダとしてもよい。
【0058】
図5(a)に示すように、検出部17bで検出するトルクが設定トルク値未満である場合には、当止部17cが回転部14を当て止めすることによって、回転部14の第1回転方向D4の回転が阻止されている。そして、図5(b)に示すように、検出部17bで検出するトルクが設定トルク値以上である場合には、解除部17dが当止部17cを移動させることによって、当止部17cによる当該当て止めが解除されるため、回転部14は、第1回転方向D4へ回転する。
【0059】
(B)また、上記実施形態に係るエレベータかご2においては、回転阻止部17による阻止が解除された後に、回転部14,15が第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、設定トルクに対して、減少する、という構成である。しかしながら、エレベータかご2は、斯かる構成に限られない。例えば、回転阻止部17による阻止が解除された後に、回転部14,15が第1回転方向D4へ回転するために必要なトルクは、設定トルクに対して、一定である又は増加する、という構成でもよい。
【0060】
(C)また、上記実施形態に係るエレベータかご2においては、回転阻止部17は、トルクリミッタ17aのみを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータかご2は、斯かる構成に限られない。例えば、回転阻止部17は、トルクリミッタ17aだけでなく、回転部14,15に対して第1回転方向D4と反対方向である第2回転方向へ弾性復元力を加える弾性体(例えば、弦巻バネ)も備えていてもよい、
【0061】
(D)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、調速機5は、ガバナロープ5aを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、調速機5は、ガバナロープ5aを備えておらず、例えば、ガバナ車5bは、昇降路X1に固定された構造物(例えば、かごレール4)に接することによって、エレベータかご2の走行に伴って回転する、という構成でもよい。即ち、調速機5は、ロープレス調速機である、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…エレベータ、2…エレベータかご、2a…かご室、2b…かご枠、2c…固定軸、3…かご駆動部、3a…綱車、3b…駆動源、3c…制動部、4…かごレール、5…調速機、5a…ガバナロープ、5b…ガバナ車、5c…張り車、5d…把持部、6…処理部、7…かごロープ、8…釣合錘、9…錘レール、10…停止装置、11…固定子、12…可動子、13…動作部、14…第1回転部、14a…回転軸、14b…可動接続部、14c…連動接続部、14d…ロープ接続部、15…第2回転部、15a…回転軸、15b…可動接続部、15c…連動接続部、16…連動部、17…回転阻止部、17a…トルクリミッタ、17b…検出部、17c…当止部、17d…解除部、D1…第1横方向、D2…第2横方向、D3…上下方向、D4…第1回転方向、X1…昇降路、X2…機械室
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごレールに案内されることによって上下方向に走行するエレベータかごであって、
かご枠と、
前記かご枠に取り付けられ、前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止装置と、を備え、
前記停止装置は、
前記かご枠に対して固定される固定子と、
前記固定子と協働して前記エレベータかごを前記かごレールに停止させる停止位置と、前記停止位置よりも下方である待機位置と、の間で、前記固定子に対して可動である可動子と、
前記かご枠に回転可能に接続され、前記かご枠に対して第1回転方向に回転することによって、前記可動子を上方へ移動させる回転部と、
前記かご枠に接続され、前記回転部に加えられる前記第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに、前記回転部の前記第1回転方向への回転を阻止する回転阻止部と、を備える、エレベータかごであって、
前記回転阻止部は、前記回転部が前記かご枠に対して前記第1回転方向への回転を開始するときに、前記回転部に対する前記第1回転方向への回転を阻止する力の伝達を遮断する、エレベータかご
【請求項2】
前記回転阻止部は、前記回転部に加えられる前記第1回転方向のトルクが設定トルク未満であるときに前記回転部の前記第1回転方向への回転を阻止するように、前記かご枠と前記回転部とを接続するトルクリミッタを備え
前記トルクリミッタは、前記回転部が前記かご枠に対して前記第1回転方向への回転を開始するときに、前記かご枠及び前記回転部間の力の伝達を遮断するトルク遮断型のトルクリミッタである、請求項1に記載のエレベータかご。
【請求項3】
前記トルクリミッタが前記かご枠及び前記回転部間の力の伝達を遮断した後に、前記回転部が前記かご枠に対して前記第1回転方向へ回転するために必要となる前記トルクリミッタへのトルクは、前記設定トルクの10%以下である、請求項2に記載のエレベータかご。
【請求項4】
前記トルクリミッタは、ボール式、ローラ式又はシャーピン式のトルクリミッタである、請求項2又は3に記載のエレベータかご。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかごを備える、エレベータ。
【請求項6】
前記エレベータかごの走行速度を検出する調速機を備え、
前記調速機は、
前記エレベータかごに接続される無端環状のガバナロープと、
前記ガバナロープが巻き掛けられるガバナ車と、
前記エレベータかごの走行速度が設定速度になった場合に、前記ガバナロープを把持する把持部と、を備え、
前記設定トルクは、前記エレベータかごが設定加速度で下方へ移動したときに前記ガバナロープの上方への慣性力によって前記回転部に前記第1回転方向へ加えられるトルクである、請求項5に記載のエレベータ。