(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070407
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】追加装入時期の判定装置及び溶解設備、並びに追加装入時期の判定方法
(51)【国際特許分類】
F27B 3/28 20060101AFI20240516BHJP
F27B 3/18 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F27B3/28
F27B3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180875
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卜 憲輝
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 憲
(72)【発明者】
【氏名】浜田 尚大
【テーマコード(参考)】
4K045
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA02
4K045DA02
4K045GB02
4K045GC01
4K045GC08
4K045RC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶解設備において金属原料の追加装入の時期を精度良く判定する装置および方法。
【解決手段】挿入された電極14から発生するアークで金属原料1を溶解する炉本体11と、金属原料を炉本体内に装入するバケット12と、電極に印加する電圧及び電流の値を測定可能に構成された電源装置を含む溶解設備において、バケット内の金属原料の高さを測定するバケット原料高さ測定装置20による測定の結果に基づいてバケット内の金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、前記電圧及び電流の値を用いて炉本体内の金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出し、エネルギー量で溶解される金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、これを用いて装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備え、金属原料を追加装入する時期を判定し結果を出力する演算装置を備えていることを特徴とする追加装入時期の判定装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定装置であって、
前記バケット内の前記金属原料の高さを測定するためのバケット原料高さ測定装置と、
前記バケット原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出し、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備え、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力するよう構成された演算装置と、
を備えていることを特徴とする追加装入時期の判定装置。
【請求項2】
前記バケット原料高さ測定装置が、前記バケット内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項3】
前記演算装置が、第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出し、前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記数理モデルを修正するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項4】
前記炉本体内の前記金属原料の高さを測定するための炉本体原料高さ測定装置を更に備え、
前記演算装置が、前記第1原料嵩体積と前記第2原料嵩体積のうち少なくとも前記第2原料嵩体積を、前記炉本体原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて算出するよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項5】
前記炉本体原料高さ測定装置が、前記炉本体内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項6】
前記炉本体原料高さ測定装置が、前記電極の下端の上下方向位置を測定するための電極位置測定装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項7】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、
前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、
前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、
請求項1~6のいずれか1項に記載の追加装入時期の判定装置と、を備えることを特徴とする溶解設備。
【請求項8】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定方法であって、
前記バケット内の前記金属原料の高さを測定することと、
前記高さの測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出することと、
少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出することと、
前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出することと、
前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出することと、
前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力することと、
を含むことを特徴とする追加装入時期の判定方法。
【請求項9】
第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出することと、
前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記数理モデルを修正することと、
を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の追加装入時期の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属原料をアークにより溶解する炉本体と、金属原料を搬送して炉本体内に装入するためのバケットを少なくとも含む溶解設備において、炉本体内に金属原料を追加装入する時期を判定するための追加装入時期の判定装置及び溶解設備、並びに追加装入時期の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属原料をアークにより溶解する溶解設備において連続的に操業を行う際、炉本体に装入された金属原料がある程度溶解した時点で、金属原料を追加で装入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属原料を追加で装入する時期は、例えば、炉本体に装入された金属原料の溶解(進捗)率に基づいて、オペレータ(作業者)により決定される。この金属原料の溶解率は、金属原料の全溶解に必要なエネルギー量に対する、溶解設備への投入済みエネルギー量の比率から推定することができる。ここで、金属原料の全溶解に必要なエネルギー量は、例えば、炉本体に装入された金属原料の配合重量とその基準エネルギー原単位とから算定され、溶解設備への投入済みエネルギー量は、例えば、炉本体に投入された電力とバーナーの燃焼熱のエネルギー効率等から算定される。
【0005】
熱効率の観点からは、金属原料が炉本体から溢れない限りできるだけ早く追加装入するのが望ましい。一方で、追加装入が早過ぎて金属原料が炉本体から溢れた場合、炉蓋が閉まらないことでその対処のために生産性を著しく損ねるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶解設備において金属原料の追加装入の時期を精度良く判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定装置であって、前記バケット内の前記金属原料の高さを測定するためのバケット原料高さ測定装置と、前記バケット原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出し、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備え、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力するよう構成された演算装置と、を備えていることを特徴とする追加装入時期の判定装置である。
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、上記記載の追加装入時期の判定装置と、を備えることを特徴とする溶解設備である。
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定方法であって、前記バケット内の前記金属原料の高さを測定することと、前記高さの測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出することと、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出することと、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出することと、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出することと、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力することと、を含むことを特徴とする追加装入時期の判定方法である。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶解設備において金属原料の追加装入の時期を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の溶解設備の一実施形態の説明図である。
【
図2】本実施形態の溶解設備における操業手順の一実施形態のフロー図である。
【
図3】本実施形態の溶解設備における装入可能嵩体積の算出処理のフロー図である。
【
図4】本実施形態の溶解設備における数理モデルの修正処理のフロー図である。
【
図5】本実施形態の溶解設備における数理モデルにおける各種パラメータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定装置であって、前記バケット内の前記金属原料の高さを測定するためのバケット原料高さ測定装置と、前記バケット原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出し、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備え、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力するよう構成された演算装置と、を備えていることを特徴とする追加装入時期の判定装置が明らかとなる。
【0015】
このような追加装入時期の判定装置によれば、溶解設備において金属原料の追加装入の時期を精度良く判定することができる。
【0016】
かかる追加装入時期の判定装置であって、前記バケット原料高さ測定装置が、前記バケット内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えることが望ましい。
【0017】
このような追加装入時期の判定装置によれば、バケット内の金属原料の高さを容易に測定することができる。
【0018】
かかる追加装入時期の判定装置であって、前記演算装置が、第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出し、前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記数理モデルを修正するよう構成されていることが望ましい。
【0019】
このような追加装入時期の判定装置によれば、装入可能嵩体積を算出するための数理モデルの精度を向上させることができる。
【0020】
かかる追加装入時期の判定装置であって、前記炉本体内の前記金属原料の高さを測定するための炉本体原料高さ測定装置を更に備え、前記演算装置が、前記第1原料嵩体積と前記第2原料嵩体積のうち少なくとも前記第2原料嵩体積を、前記炉本体原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて算出するよう構成されていることが望ましい。
【0021】
このような追加装入時期の判定装置によれば、実際溶解分嵩体積を高い精度で算出し、数理モデルの修正をより効率的に行うことができる。
【0022】
かかる追加装入時期の判定装置であって、前記炉本体原料高さ測定装置が、前記炉本体内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えていることが望ましい。
【0023】
このような追加装入時期の判定装置によれば、炉本体内の金属原料の高さを容易に測定することができる。
【0024】
かかる追加装入時期の判定装置であって、前記炉本体原料高さ測定装置が、前記電極の下端の上下方向位置を測定するための電極位置測定装置を備えていることが望ましい。
【0025】
このような追加装入時期の判定装置によれば、炉本体内の金属原料の高さを容易に測定することができる。
【0026】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、上記のいずれかの態様に記載の追加装入時期の判定装置と、を備えることを特徴とする溶解設備が明らかとなる。
【0027】
このような溶解設備によれば、金属原料の追加装入の時期を精度良く判定することができる。
【0028】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定方法であって、前記バケット内の前記金属原料の高さを測定することと、前記高さの測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出することと、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出することと、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出することと、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出することと、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力することと、を含むことを特徴とする追加装入時期の判定方法が明らかとなる。
【0029】
このような追加装入時期の判定方法によれば、溶解設備において金属原料の追加装入の時期を精度良く判定することができる。
【0030】
かかる追加装入時期の判定方法であって、第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出することと、前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記数理モデルを修正することと、を更に含むことが望ましい。
【0031】
このような追加装入時期の判定方法によれば、装入可能嵩体積を算出するための数理モデルの精度を向上させることができる。
【0032】
===本実施形態===
<<概要>>
図1は、本発明の溶解設備の一実施形態の説明図である。尚、
図1は、炉本体11(後述)の上方の開口が開放された状態(開放状態)を示している。
【0033】
以下では、
図1に示す方向に従って説明を行うことがある。金属原料1がバケット12(後述)によって搬送される方向を、「前後方向」とし、バケット12に対する炉本体11(後述)の側を「前側(前方向)」とし、前側の反対側(炉本体11に対するバケット12の側)を「後側(後方向)」とする。また、鉛直方向を「上下方向」とする。
【0034】
溶解設備10は、金属原料1を溶解する設備である。本実施形態では、金属原料1は、例えば、鉄スクラップである。但し、金属原料1は、鉄スクラップに限られず、還元鉄(DRI:Direct Reduced Iron)、ホット・ブリケット・アイアン(HBI:Hot Briquetted Iron)、冷銑(型銑)等であっても良い。以下の説明では、金属原料1を溶解して得られる溶融状態の金属を「溶融金属」又は「溶湯」と呼ぶことがある。
【0035】
溶解設備10は、アーク溶解設備である。アーク溶解設備では、炉本体11内に配置した電極14(後述)に通電することで、電極14からアークを発生させる。そして、電極14から発生したアークの熱(アーク熱)により金属原料1を加熱して溶解する。
【0036】
溶解設備10は、炉本体11と、バケット12と、電源装置13と、判定装置40とを有する。
【0037】
<炉本体11>
炉本体11は、金属原料1が装入され、アーク熱により金属原料1を溶解する溶解炉の本体である。
図1に示されるように、炉本体11において金属原料1が加熱して溶解され、溶融金属2と、スラグ3とが形成される。溶融金属2は、必要により脱炭等の精錬が行われ、不図示の出鋼口から溶湯として出湯(出鋼)される。スラグ3は、溶湯の出湯に先立って排滓される。尚、炉本体11に装入された金属原料1のうち、未だ溶解されない成分は、
図1に示されるように、溶け残り4として炉本体11に残存する。
【0038】
炉本体11は、電極14と、炉蓋16と、外殻17と、ライニング18と、を有する。
【0039】
電極14は、アークを発生させる電極(アーク電極)である。金属原料1が溶解される際、炉本体11の上方の開口が閉塞された状態(閉塞状態)となり、電極14は、炉蓋16の上方から炉蓋16を貫通して炉本体11の内部に挿入される状態となる。本実施形態では、電極14は、黒鉛電極であり、3本の電極14が、炉本体11の内部に挿入されている。したがって、炉本体11は、いわゆる三相交流アーク炉である。電極14は、電源装置13から交流電圧が印加されることにより通電される。これにより、炉本体11は、電極14からアークを発生させ、アーク熱により金属原料1を加熱し、溶解することができる(すなわち、溶融金属2が得られる)。但し、炉本体11は、三相交流アーク炉に限定されず、いわゆる直流アーク炉であっても良く、この場合、炉本体11には、1本の電極14と、炉本体11の底部に別の電極とが配置される。
【0040】
炉蓋16は、炉本体11の上部に設けられた蓋部材である。炉蓋16は、不図示の駆動装置により上下移動及び旋回移動を行うことができる。これにより、炉本体11の上方の開口を開放状態及び閉塞状態にすることができる。上述した3本の電極14は、炉蓋16の挿通孔を挿通して、炉本体11の内部においてアークを形成すべく配置される。
【0041】
外殻17は、炉蓋16以外の炉本体11の外部を構成する部材である。外殻17は、鉄製で形成されており、不図示の水冷構造を有する。水冷構造は、例えば水冷パネルであり、複数のブロック状の水冷箱で構成される。
【0042】
ライニング18は、炉本体11における溶融金属2の貯留部分である底部を構成する部材である。ライニング18は、耐火物で形成されており、金属原料1を溶かして得られた溶融金属2を溜めることができる。
【0043】
炉本体11は、上述した構成に加え、バーナー、酸素ガス吹き込みランス、及び炭材吹き込みランスの少なくともいずれか1つをさらに有していても良い。バーナー、酸素ガス吹き込みランス、及び炭材吹き込みランスは、外殻17を斜め方向に貫通して、炉本体11の内部を斜め方向に移動可能に設けられていても良い。バーナーは燃料ガスの燃焼熱により金属原料1の溶解を促進する。酸素ガス吹き込みランスからは脱炭のための酸素ガスが炉本体11内に吹き込まれる。また、炭材吹き込みランスからは、空気や窒素ガス等を搬送用ガスとし、燃焼熱による金属原料1の溶解促進や溶湯への加炭のためにコークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛等の炭材が炉本体11内に吹き込まれる。
【0044】
さらに、炉本体11には、傾動機構19が設けられている。傾動機構19は、炉本体11を傾動させる機構である。これにより、溶融金属2の出湯やスラグ3の排滓を容易にすることができる。
【0045】
<バケット12>
バケット12は、金属原料1を搬送して炉本体11内に装入するための装置である。本実施形態では、バケット12は、収容部21と、車輪22とを有する。収容部21は、金属原料1を収容する部材であり、車輪22は、収容部21を搬送させる移動機構である。
【0046】
金属原料1は、
図1に示されるように、炉蓋16を移動させ、炉本体11の上方が開放された状態において、炉本体11の上部より装入される。具体的には、バケット12が不図示のクレーン等で吊り上げられ、収容部21内の金属原料1が炉本体11内に投下されることになる。尚、
図1においては、図示の都合上、バケット12が小さく描かれているが、通常、バケット12は炉本体11の容量に近い程度の容量を有する大きさである。
【0047】
<電源装置13>
電源装置13は、電極14に電圧を印加するための装置である。上述したように、本実施形態では、炉本体11は、三相交流アーク炉であり、電源装置13は、電極14に交流電圧を印加する。電源装置13は、
図1に示されるように、電気量測定装置15を備えている。電気量測定装置15は、電極14に印加される電圧や電流を測定する装置である。本実施形態では、電気量測定装置15は、電圧計及び電流計を含むものである。したがって、電源装置13は、電極14に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成され、電気量測定装置15から、測定された電圧及び電流、電力量などの電力諸量を判定装置40に出力することができる。
【0048】
<判定装置40>
判定装置40は、炉本体11内に金属原料1を追加装入する時期を判定するための装置(追加装入時期の判定装置)である。本実施形態の溶解設備10において連続的に操業を行う際、炉本体11に装入された金属原料1がある程度溶解した時点で、金属原料1を追加で装入することが必要である。仮に、この金属原料1を追加で装入する時期を、判定装置40を用いるのではなく、オペレータが炉本体11に装入された金属原料1の溶解(進捗)率を経験に基づいて推定する場合、この溶解率の推定の誤差が大きくなることがある。
【0049】
溶解率の推定の誤差が大きかった場合には、投入されるエネルギー量や、作業時間が増大してしまうことがある。例えば、実際の溶解率が、推定された溶解率よりも小さかった場合(すなわち、実際の溶け残り4の量が、推定された溶け残り4の量よりも多かった場合)、炉本体11内に追加装入可能な金属原料1の嵩体積が推定よりも小さくなってしまう。このため、金属原料1を炉本体11内に追加装入することで、金属原料1が炉本体11からはみ出して炉蓋16が閉まらないこと(いわゆる、オーバーフローしてしまうこと)がある。また、炉蓋16が閉まらないことにより、炉本体11内の熱の損失が増大してしまうことがある。さらに、炉蓋16が閉まらないことに対処するために、オペレータの作業時間が増大してしまうことがある。
【0050】
また、実際の溶解率が、推定された溶解率よりも小さくなる問題を回避するため、推定された溶解率が十分に大きな値となってから(推定された溶け残り4の量が十分に小さい値となってから)、金属原料1を追加で装入することもできる。しかし、この場合、炉本体11内に実際に残存する溶け残り4が少なくなる。溶け残り4が少なく炉本体11の炉壁が露出している状態でエネルギーを投入すると、エネルギー量の損失が増大してしまう。
【0051】
さらに、炉本体11内に装入される金属原料1の体積が計測されず、オペレータが金属原料1の重量のみを把握している場合、溶解率の推定の誤差がさらに大きくなることがある。また、追加装入後の炉本体11内の金属原料1の重量や体積を定量的に求めない場合、溶解率の推定の精度を向上させることもできない。この場合、金属原料1の追加装入後、オーバーフローの発生率が高い場合に、オペレータが経験に基づいて溶解率の推定を調整しているため、溶解率の推定の精度を向上させることは困難である。
【0052】
そこで、本実施形態の判定装置40は、まず、バケット12の収容部21内の金属原料1の高さ情報に基づいてバケット12の収容部21内の金属原料1の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、炉本体11内の金属原料1を溶解するために投入されたエネルギー量を算出する。そして、この投入されたエネルギー量で溶解される金属原料1の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、理論溶解分嵩体積を用いて炉本体11内に追加装入可能な金属原料1の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備える。本実施形態の判定装置40では、この装入可能嵩体積が、バケット原料嵩体積と等しくなった時に、追加装入する時期であると判定される。
【0053】
これにより、本実施形態では、溶解設備10において金属原料1の追加装入の時期を精度良く判定することができる。金属原料1の追加装入の時期を精度良く判定できることで、金属原料1を追加で装入した後に投入されるエネルギー量や、作業時間が増大してしまうことを抑制することができる。さらに、本実施形態では、後述するように、装入可能嵩体積を算出する数理モデルの精度を向上させることができる。
【0054】
<<判定装置40の詳細>>
以下では、
図1を再び参照しつつ、判定装置40の詳細について説明する。
【0055】
判定装置40は、バケット原料高さ測定装置20と、炉本体原料高さ測定装置30と、制御装置41と、演算装置42と、通信装置43と、オペレータ用端末90とを有する。
【0056】
バケット原料高さ測定装置20は、バケット12の収容部21内の金属原料1の高さを測定するための装置である。バケット原料高さ測定装置20は、
図1に示されるように、バケット12の上方に配置されている。バケット原料高さ測定装置20は、バケット12の収容部21内の金属原料1の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を有している。バケット原料高さ測定装置20は、例えば、レーザーによる3Dスキャナ、LiDAR (Light Detection and Ranging)センサー、レーダー等を使用して、バケット12の収容部21内の金属原料1の表面の三次元形状を計測する。
【0057】
バケット原料高さ測定装置20は、
図1に示されるように、前方向に搬送されるバケット12を検知して、計測を開始する。LiDAR センサーを使用してバケット12の収容部21内の金属原料1の表面の三次元形状を計測する場合、バケット原料高さ測定装置20は、まず、収容部21に収容された金属原料1の形状をスキャンする。次に、スキャンした点群データを合成し、収容部21に収容された金属原料1の形状に復元する。これにより、バケット原料高さ測定装置20は、収容部21に収容された金属原料1の表面の3次元点群データを生成することができる。バケット原料高さ測定装置20は、生成した3次元点群データを、制御装置41や演算装置42に出力することができる。
【0058】
但し、バケット原料高さ測定装置20は、三次元計測装置を有さなくても良く、金属原料1の表面の一点における金属原料の高さを測定する装置を1つ又は複数備える形態でもよい。また、バケット原料高さ測定装置20は、搬送されるバケット12を検知する監視用カメラをさらに有していても良い。
【0059】
炉本体原料高さ測定装置30は、炉本体11内の、溶け残り4を含む金属原料1の高さを測定するための装置である。炉本体原料高さ測定装置30は、
図1に示されるように、炉蓋16の上方に位置している。炉本体原料高さ測定装置30は、炉本体11内の金属原料1の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を有している。炉本体原料高さ測定装置30は、例えば、レーザーによる3Dスキャナ、LiDAR センサー、レーダー等を使用して、炉本体11内の金属原料1の表面の三次元形状を計測する。
【0060】
炉本体原料高さ測定装置30は、上述したバケット原料高さ測定装置20と同様に、炉本体11内の溶け残り4を含む金属原料1の表面の3次元点群データを生成することができる。炉本体原料高さ測定装置30は、生成した3次元点群データを、制御装置41や演算装置42に出力することができる。
【0061】
炉本体原料高さ測定装置30は、三次元計測装置を有さなくても良く、金属原料1の表面の一点における金属原料の高さを測定する装置を1つ又は複数備える形態でもよい。炉本体原料高さ測定装置30は、例えば、電極14の下端の上下方向の位置を測定するための電極位置測定装置を有していても良い。電極位置測定装置が、電源装置13により通電時の電極14の上下方向の位置を測定し、この電極の上下位置情報と電極に印加されている電圧や電流の値から炉本体11内の金属原料1の高さが算出されても良い。
【0062】
制御装置41は、判定装置40の各種装置(例えば、バケット原料高さ測定装置20、炉本体原料高さ測定装置30、演算装置42、通信装置43等)を制御するための装置である。制御装置41は、判定装置40における各種処理の結果(例えば、後述する追加装入時期の判定処理の結果や、数理モデルの修正処理の結果)を、オペレータ用端末90の表示装置に表示する機能を有していても良い。但し、制御装置41は、判定装置40における各種処理の結果を、オペレータ用端末90の表示装置以外の装置に表示しても良い。
【0063】
制御装置41は、上述した機能に限られず、バケット原料高さ測定装置20や炉本体原料高さ測定装置30で測定した結果(例えば、3次元点群データ)を、オペレータ用端末90の表示装置に表示する機能を有していても良い。また、制御装置41は、上述した判定装置40の各種装置との通信に問題が発生した場合、オペレータ用端末90の表示装置にエラーメッセージをポップアップ表示する機能を有していても良い。さらに、制御装置41は、バケット12の収容部21や炉本体11内の金属原料1の映像や、判定装置40の各種装置の停止時などにエラーメッセージや校正の情報をオペレータ用端末90の表示装置に表示する機能を有していても良い。
【0064】
演算装置42は、判定装置40における各種処理(後述する追加装入時期の判定処理や、数理モデルの修正処理)を行い、結果を制御装置41に出力する装置である。判定装置40における各種処理の詳細については、後述する。
【0065】
通信装置43は、不図示の通信ネットワークに接続するための装置である。判定装置40の各種装置は、通信ネットワークを介して接続されている。通信ネットワークは、例えばLAN、VAN、無線通信網、インターネット、電話回線網等である。
【0066】
オペレータ用端末90は、オペレータが使用する情報端末である。オペレータ用端末90は、判定装置40の各種装置への指令や、判定装置40の各種装置から出力された情報を表示する端末である。オペレータ用端末90は、例えば、パーソナルコンピュータである。但し、オペレータ用端末90は、パーソナルコンピュータに限られるものではなく、例えばタブレット型の携帯端末や、スマートフォンであっても良い。オペレータ用端末90は、不図示のCPU、メモリ、記憶装置、通信モジュール、ディスプレイ等の表示装置、マウスやキーボード等の入力装置などのハードウェアを有している。尚、判定装置40は、オペレータ用端末90を有していなくても良い。
【0067】
本実施形態では、判定装置40は、不図示の各種ハードウェアと各種ソフトウェアとの協働により、判定装置40における各種処理の実行が可能になる。判定装置40は、例えばサーバー等のコンピュータであり、CPU、メモリ、記憶装置等を有している。記憶装置には、判定装置40が実行する各種処理に係るプログラムや各種のデータが記憶されている。
【0068】
例えば、制御装置41が記憶装置に記憶されている数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、演算装置42による判定装置40における各種処理(後述する追加装入時期の判定処理や、数理モデルの修正処理)が実現される。尚、判定装置40は、複数のコンピュータを含んでいても良い。そして、ネットワークを介した当該複数のコンピュータの協働により、判定装置40における各種処理が実行されても良い。
【0069】
本発明において、バケット内や炉本体内における金属原料の高さとは、金属原料の表面における一点又は複数点の高さを意味している。この高さを測定する点の数が多いほど、金属原料の嵩体積の算出精度が高くなるため、バケット原料高さ測定装置及び炉本体原料高さ測定装置が、金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えていることが好ましい。
【0070】
<<溶解設備における操業手順のフロー>>
以下では、判定装置40を有する溶解設備10における、本発明の追加装入時期の判定方法の一実施形態を含む操業手順のフローについて説明する。
【0071】
図2は、本実施形態の溶解設備における操業手順の一実施形態のフロー図である。
図3は、本実施形態の溶解設備における装入可能嵩体積の算出処理のフロー図である。
図4は、本実施形態の溶解設備における数理モデルの修正処理のフロー図である。
図5は、本実施形態の溶解設備における数理モデルにおける各種パラメータの説明図である。尚、
図3では、
図2の炉本体11内の装入可能嵩体積算出処理(S004)における各処理が、
図4では、
図2の数理モデルの修正処理(S008)における各処理が示されている。
【0072】
まず、炉本体11内への金属原料1の初回装入の前に、初回装入時のバケット12の収容部21内の金属原料1の嵩体積を算出する(
図2のS001)。具体的には、バケット原料高さ測定装置20が、バケット12の収容部21内の金属原料1の表面の高さを測定する。そして、バケット原料高さ測定装置20は、測定した結果(金属原料1の表面の高さの情報)を、演算装置42に出力する。演算装置42は、バケット原料高さ測定装置20による測定の結果を受け取り、本発明におけるバケット原料嵩体積であるバケット12の収容部21内の金属原料1の嵩体積を算出する。
【0073】
次に、炉本体11内へ金属原料1を初回装入する(
図2のS002)。このとき、
図1に示されるように、炉本体11の炉蓋16を開放状態にし、電極14を上昇させた状態で、バケット12により金属原料1が炉本体11の上部より炉本体11内に装入される。
【0074】
本実施形態の溶解設備10では、1回装入した金属原料1を全て溶解してその都度出鋼するバッチ操業ではなく、炉本体11に装入された金属原料1がある程度溶解した時点で、金属原料1を追加で装入する操業が行われる。そこで、本実施形態の溶解設備10では、初回装入後に、次の追加装入の準備として初回装入前のS001と同様にしてバケット12の収容部21内の金属原料1の嵩体積を算出し(
図2のS003)、判定装置40は、追加装入時期の判定処理を行う(
図2のS004及びS005)。
【0075】
追加装入時期の判定処理では、まず、炉本体11内の装入可能嵩体積算出処理が行われる(
図2のS004)。装入可能嵩体積算出処理では、まず、演算装置42が、数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、溶解設備10に投入されたエネルギー量で溶解される金属原料1の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積Vmを算出する(
図3のS101)。
【0076】
理論溶解分嵩体積Vm(m3)は、数理モデルに含まれる下記の数式1により求められる。
Vm=E÷{(Sc×ρ)×α}・・・(数式1)
ここで、Eは、溶解設備10に投入された(投入済み)エネルギー量(kWh)である。電源装置13の電気量測定装置15が、電極14に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定し、演算装置42が、電気量測定装置15による測定の結果(少なくとも電圧の測定値及び電流の測定値)を受け取り、溶解設備10に投入されたエネルギー量Eを算出する。また、Scは、金属原料1の単位重量当たりの溶解に必要なエネルギーである基準エネルギー原単位(kWh/t)であり、ρは、金属原料1の嵩比重(t/m3)である。また、αは、金属原料1の溶解係数である。初回装入後の金属原料1の溶解係数αには、例えば、本実施形態の溶解設備10における前回の操業時に得られた実績値や前回までの操業時に得られた複数の実績値の平均値等を用いることができるが、最初の操業時には、従来の操業における実績データに基づいて計算した概算値を用いてもよい。
【0077】
次に、演算装置42は、数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、追加装入可能な金属原料1の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積Vpを算出する(
図3のS102)。
【0078】
装入可能嵩体積Vp(m3)は、数理モデルに含まれる下記の数式2により求められる。
Vp=Vfb-β=Vf-(Vfs-Vm)-β・・・(数式2)
ここで、Vfbは炉内残容積(m3)、Vfは炉本体11内の全空間容積(m3)、Vfsは炉本体11内の金属原料1の装入後(溶解開始前)の嵩体積である炉本体原料嵩体積(m3)、Vmは理論溶解分嵩体積(m3)、βは補正容積(m3)である。尚、本実施形態においては、初回装入後、1回目の追加装入時期の判定処理を行う際には、炉本体原料嵩体積Vfsは、初回装入時のバケット原料嵩体積に等しく、この値を用いるが、初回装入後に炉本体原料高さ測定装置30による測定を行い、その結果に基づいて算出されても良い。2回目以降の追加装入時期の判定処理を行う際には、炉本体原料嵩体積Vfsには、前回の追加装入の後に後述のS007において算出された炉本体原料嵩体積を用いる。
【0079】
ここで、数式2の(Vfs-Vm)の部分は、炉本体11内の金属原料1の前回装入後(溶解開始前)の炉本体原料嵩体積Vfsから、理論溶解分嵩体積Vmを差し引いたものである。つまり、金属原料の溶け残り4の嵩体積の理論値である。以下では、金属原料の溶け残り4の嵩体積の理論値を、理論溶け残り嵩体積Vr(m
3)と呼ぶことがある。即ち、炉内残容積Vfbは、炉本体11の全空間容積Vfから、理論溶け残り嵩体積Vrを差し引いたものである。炉内に実際に追加装入可能な金属原料1の嵩体積は炉内残容積Vfbよりも一定程度小さいため、炉内残容積Vfbから所定の定数値である補正容積βを差し引いた値が装入可能嵩体積Vpとなる。尚、
図5Aには、2回目以降の追加装入時期の判定を行う場合における、装入可能嵩体積Vpと、炉本体11内の全空間容積Vfと、炉本体11内の金属原料1の前回装入後(溶解開始前)の炉本体原料嵩体積Vfsと、理論溶解分嵩体積Vmと、理論溶け残り嵩体積Vrと、補正容積βの関係が図示されている。補正容積βは、炉本体やバケットの寸法及び形状等によって異なるが、例えば、炉本体11内の全空間容積Vfの10~15%程度の値を用いることができる。
【0080】
次に、演算装置42は、金属原料1の追加装入が可能かを判定する(
図2のS005)。ここでは、S004で算出した装入可能嵩体積VpをS003で算出したバケット原料嵩体積と比較し、装入可能嵩体積Vpがバケット原料嵩体積と等しくなった時に、金属原料1の追加装入が可能な時期であると判定する。
【0081】
演算装置42は、金属原料1の追加装入が可能な時期であると判定した場合(YES)、金属原料1の追加装入が可能であるとの信号を制御装置41に出力する。オペレータは、この信号に基づいてオペレータ用端末90に表示されたメッセージを確認し、炉本体11内への金属原料1の追加装入を決定する(
図2のS006)。但し、演算装置42が金属原料1の追加装入が可能な時期であると判定した場合に(YES)、オペレータ用端末90へのメッセージの表示に関わらず、自動的に炉本体11内への金属原料1の追加装入がなされても良い。演算装置42は、金属原料1の追加装入が可能な時期ではないと判定した場合(NO)、上述した装入可能嵩体積算出処理S004に戻り、S004とS005の処理を繰り返す。
【0082】
これにより、本実施形態では、溶解設備10において金属原料1の追加装入の時期を精度良く判定することができる。金属原料1の追加装入の時期を精度良く判定できることで、金属原料1を追加で装入した後に投入されるエネルギー量や、作業時間が増大してしまうことを抑制することができる。尚、電力投入のスケジュールやバーナーによる加熱スケジュール等を含むエネルギー投入のスケジュールに基づいて、装入可能嵩体積Vpがバケット原料嵩体積と等しくなる時期が予想できる場合には、追加装入が可能となる時期の所定時間前(例えば1~3分前)に予想時期、あるいは目標投入電力量をオペレータ用端末90に表示したり、追加装入が可能となるまでの残り時間を、例えば10秒刻み等でオペレータ用端末90に表示したりしてもよい。これにより、オペレータが手動でスクラップの追加装入を行う場合に、オペレータが次の追加装入の時期に合わせて準備作業を予め行っておくことが可能となる。また、追加装入が自動で行われる場合には、演算装置42は、追加装入が可能となる時期の所定時間前(例えば1~3分前)に制御装置41に信号を出力し、炉蓋の駆動装置やクレーン等、追加装入のために作動させる各装置の準備動作を予め行わせておいてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、追加装入後の炉本体11内の金属原料1の嵩体積を定量的に求めることにより、溶解率の推定の精度を向上させることができる。本実施形態の溶解設備10では、判定装置40が、追加装入後に、数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、追加装入後の炉本体11内の金属原料の嵩体積である炉本体原料嵩体積を算出し(
図2のS007)、数理モデルの修正処理を行う(
図2のS008)。
【0084】
数理モデルの修正処理では、まず、演算装置42が、前回の装入(第1の装入)により金属原料1を炉本体11内に装入した後の炉本体11内の金属原料1の嵩体積である第1原料嵩体積と、今回の装入(第2の装入)を行った後の炉本体11内の金属原料1の嵩体積である第2原料嵩体積に基づいて、炉本体11内で実際に溶解した金属原料1の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出する(
図4のS201)。
【0085】
具体的には、演算装置42は、第2の装入の前の時点における溶け残り4の嵩体積の推定値である溶け残り嵩体積Vr’(m
3)を、数理モデルに含まれる下記の数式3により算出する。
Vr’=Vfs’-Vch・・・(数式3)
ここで、Vfs’は第2原料嵩体積(m
3)、Vchは第2の装入で装入された金属原料1を収容していたバケットに関するバケット原料嵩体積(m
3)である。第2原料嵩体積Vfs’は、第2の装入の後に行われた炉本体原料高さ測定装置30による測定の結果に基づいて算出される。つまり、溶け残り嵩体積Vr’は、第2原料嵩体積Vfs’から、第2の装入で装入された金属原料1の嵩体積であるバケット原料嵩体積Vchを差し引いたものである。尚、装入可能嵩体積Vpが上記のバケット原料嵩体積Vchと等しくなったときに追加装入を行うため、このバケット原料嵩体積Vchは、
図5の装入可能嵩体積Vpと等しい。
【0086】
次に、演算装置42が、数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、炉本体11内で実際に溶解した金属原料1の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出する。
【0087】
実際溶解分嵩体積Vm’は、数理モデルに含まれる下記の数式4により求められる。
Vm’=Vfs-Vr’・・・(数式4)
ここで、Vfsは、数式2の説明でも述べたが、炉本体11内の金属原料1の前回装入後の炉本体原料嵩体積(第1原料嵩体積)(m3)である。したがって、実際溶解分嵩体積Vm’は、炉本体11内の金属原料1の前回の装入後の炉本体原料嵩体積Vfsから、数式3で求められる溶け残り嵩体積Vr’を差し引いたものである。
【0088】
図5Bには、炉本体11内の金属原料1の装入後の炉本体原料嵩体積Vfs’と、実際溶解分嵩体積Vm’と、溶け残り嵩体積Vr’との関係が図示されている。追加装入は、前回の装入後に算出した炉本体原料嵩体積Vfs(第1原料嵩体積)から、
図5Aの理論溶解分嵩体積Vmだけが溶けたものと仮定して行われる。しかし、実際に第2の装入を行った後に算出した炉本体原料嵩体積Vfs’(第2原料嵩体積)が、
図5Bにおける想定していた第2の装入後の金属原料1の高さLcとΔVだけずれた高さLmのレベルに対応するものであった場合、この分だけ
図5Aの理論溶解分嵩体積Vmが誤差を含んでおり、理論溶解分嵩体積Vmではなく実際溶解分嵩体積Vm’が正しい値であったということを意味している。
【0089】
次に、演算装置42が、数理モデルを含むプログラムをメモリに読み出して実行することにより、校正された溶解係数(校正溶解係数)α’を再計算する(
図4のS202)。
【0090】
上記の理由から、溶解係数α’は、実際溶解分嵩体積Vm’を用い、数理モデルに含まれる下記の数式5により求められる。
α’=E÷{(Sc×ρ)}÷Vm’・・・(数式5)
ここで、数式1の説明でも述べたが、Eは、溶解設備10に投入された(投入済み)エネルギー量(kWh)である。また、Scは、金属原料1の基準エネルギー原単位(kWh/t)であり、ρは、金属原料1の嵩比重(t/m3)である。数式5からわかるように、溶解係数α’は、実際溶解分嵩体積Vm’を用いて再計算される。数理モデルの修正は、数式1の溶解係数αを溶解係数α’によって修正することで行われる。具体的には、例えば、1回の数理モデルの修正処理によって算出された溶解係数α’によって数式1の溶解係数αを置き換えてもよいし、過去の複数回の操業時に得られた複数の溶解係数α’の平均値によって数式1の溶解係数αを置き換えてもよい。更に、溶解係数αは金属原料1に含まれる原料の種類や配合比(配合パターン)にも依存するため、配合パターンP1、P2…、に対応する溶解係数α1、α2…、のデータを蓄積し、これらに基づいて統計処理により算出した溶解係数αを配合パターンに応じて使用しても良い。
【0091】
以上説明した通り、数理モデルの修正処理では、演算装置42が、第1の装入(例えば、初回装入や1回目の追加装入)により金属原料11を炉本体11内に装入した後の炉本体11内の金属原料1の嵩体積である第1原料嵩体積(Vfs)と、第1の装入の次の装入である第2の装入(例えば、1回目の追加装入や2回目の追加装入)を行った後の炉本体11内の金属原料1の嵩体積である第2原料嵩体積(Vfs’)とに基づいて、第1の装入と第2の装入との間の期間に炉本体11内で溶解された金属原料1の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積(Vm’)を算出し、実際溶解分嵩体積に基づいて数理モデルを修正する。これにより、本実施形態では、炉本体11内に装入可能な金属原料1の嵩体積を算出する数理モデルの精度を向上させることができる。
【0092】
尚、本実施形態においては、第1の装入が初回装入である場合には、第1原料嵩体積として初回装入時のバケット原料嵩体積を用いるため、演算装置42は、第1原料嵩体積と第2原料嵩体積のうち第2原料嵩体積だけを、炉本体原料高さ測定装置30による測定の結果に基づいて算出する。一方、第1の装入が追加装入である場合には、第1の装入の後に行った炉本体原料高さ測定装置30による測定の結果に基づいて第1原料嵩体積(炉体内原料嵩体積Vfs)を算出するため、演算装置42は、第1原料嵩体積と第2原料嵩体積との双方を、炉本体原料高さ測定装置30による測定の結果に基づいて算出することとなる。
【0093】
上述した数理モデルの修正処理は、金属原料1の追加装入毎に実行される。その後、判定装置40は、溶解作業を終了するか否かを判断し(
図2のS009)、溶解作業が終了される場合(YES)、処理を終了する。判定装置40は、溶解作業が終了されない場合(NO)、上述した追加装入時期の判定処理に戻り、S003~S008の処理を繰り返す。これにより、本実施形態では、炉本体11内に装入可能な金属原料1の嵩体積を算出する数理モデルの精度をさらに向上させることができる。
【0094】
===その他===
以上、本発明について実施形態を用いて説明してきたが、本発明はこの形態の構成には限られない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定まるものであり、その範囲内において実施の形態に示した構成要素の一部の省略や変形、またそれらの改良を施した構成の全てが本発明に含まれる。
【0095】
例えば、上記の実施形態では、電圧の測定値及び電流の測定値のみを用いてエネルギー量を算出する場合を示したが、本発明はこの形態の構成には限られない。溶解設備に投入されたエネルギー量は、バーナーにより燃焼熱が与えられる場合には、この燃焼熱を加えて算出する。また、炭材吹き込みランスから炭材を吹き込む場合には、この炭材の燃焼熱を加えて算出する。
【0096】
また、上記の実施形態では、判定装置40が炉本体原料高さ測定装置30を有する場合を示したが、本発明はこの形態の構成には限られない。数理モデルの精度を向上させる必要がなければ、判定装置40は炉本体原料高さ測定装置30を有していなくともよい。この場合は、追加装入時期の判定処理を行う際には、バケット原料嵩体積を用いて算出した値を炉本体原料嵩体積Vfsとして用いてもよい。具体的には、1回目の追加装入に際しては、S001で算出したバケット原料嵩体積を炉本体原料嵩体積Vfsとし、2回目以降の追加装入に際しては、前回の追加装入の前にS003で算出したバケット原料嵩体積と前回の追加装入の前にS004で算出した理論溶け残り嵩体積の和を今回の追加装入時期の判定処理における炉本体原料嵩体積Vfsとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 金属原料
2 溶融金属
3 スラグ
4 溶け残り
10 溶解設備
11 炉本体
12 バケット
13 電源装置
14 電極
15 電気量測定装置
16 炉蓋
17 外殻
18 ライニング
19 傾動装置
20 バケット原料高さ測定装置
21 収容部
22 車輪
30 炉本体原料高さ測定装置
40 判定装置
41 制御装置
42 演算装置
43 通信装置
90 オペレータ用端末
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定装置であって、
前記バケット内の前記金属原料の高さを測定するためのバケット原料高さ測定装置と、
前記バケット原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出するとともに、少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出し、前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出し、前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出する数理モデルを備え、前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力するよう構成された演算装置と、
を備えていることを特徴とする追加装入時期の判定装置。
【請求項2】
前記バケット原料高さ測定装置が、前記バケット内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項3】
前記演算装置が、第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出し、前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記数理モデルを修正するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項4】
前記炉本体内の前記金属原料の高さを測定するための炉本体原料高さ測定装置を更に備え、
前記演算装置が、前記第1原料嵩体積と前記第2原料嵩体積のうち少なくとも前記第2原料嵩体積を、前記炉本体原料高さ測定装置による測定の結果に基づいて算出するよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項5】
前記炉本体原料高さ測定装置が、前記炉本体内の前記金属原料の表面の三次元形状を計測可能な三次元計測装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項6】
前記炉本体原料高さ測定装置が、前記電極の下端の上下方向位置を測定するための電極位置測定装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の追加装入時期の判定装置。
【請求項7】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、
前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、
前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、
請求項1~6のいずれか1項に記載の追加装入時期の判定装置と、を備えることを特徴とする溶解設備。
【請求項8】
金属原料が装入され、上方から挿入された電極から発生するアークにより前記金属原料を溶解する炉本体と、前記金属原料を搬送して前記炉本体内に装入するためのバケットと、前記電極に印加する電圧及び電流のそれぞれの値を測定可能に構成された電源装置と、を含む溶解設備において、前記炉本体内に前記金属原料を追加装入する時期を判定するための判定方法であって、
前記バケット内の前記金属原料の高さを測定することと、
前記高さの測定の結果に基づいて前記バケット内の前記金属原料の嵩体積であるバケット原料嵩体積を算出することと、
少なくとも前記電圧の測定値及び前記電流の測定値を用いて前記炉本体内の前記金属原料を溶解するために投入されたエネルギー量を算出することと、
前記エネルギー量で溶解される前記金属原料の嵩体積の理論値である理論溶解分嵩体積を算出することと、
前記理論溶解分嵩体積を用いて前記炉本体内に装入可能な前記金属原料の嵩体積の推定値である装入可能嵩体積を算出することと、
前記装入可能嵩体積と前記バケット原料嵩体積の比較結果に基づいて前記金属原料を追加装入する時期を判定し、判定結果を出力することと、
を含むことを特徴とする追加装入時期の判定方法。
【請求項9】
第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出することと、
前記実際溶解分嵩体積に基づいて、前記装入可能嵩体積を算出する数理モデルを修正することと、
を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の追加装入時期の判定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
かかる追加装入時期の判定方法であって、第1の装入により前記金属原料を前記炉本体内に装入した後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第1原料嵩体積と、前記第1の装入の次の前記金属原料の装入である第2の装入を行った後の前記炉本体内の前記金属原料の嵩体積である第2原料嵩体積とに基づいて、前記第1の装入と前記第2の装入との間の期間に前記炉本体内で溶解された前記金属原料の嵩体積の推定値である実際溶解分嵩体積を算出することと、前記実際溶解分嵩体積に基づいて前記装入可能嵩体積を算出する数理モデルを修正することと、を更に含むことが望ましい。