(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070411
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20240516BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240516BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240516BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240516BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240516BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/31
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180881
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 琴子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC392
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD492
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】伸びがよく、べたつかず、塗布後の肌にツヤを与え、保湿効果に優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)セラミド類、
(B)炭素数12~22の高級アルコール、
(C)N-アシルアミノ酸エステル、
(D)糖アルコール 1~20質量%、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)セラミド類、
(B)炭素数12~22の高級アルコール、
(C)N-アシルアミノ酸エステル、
(D)糖アルコール 1~20質量%、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)が、0.01~10である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)が、0.05~5である請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
次の成分(C)が、25℃における粘度が100,000mPa・s以下である請求項1~3のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
さらに、(F)25℃で固体の炭化水素を含有する請求項1~4のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保湿効果が高く、使用感に優れた乳化組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、融点が20~150℃である油性成分を含有する乳化組成物と、水溶性増粘剤、水及び炭酸ガスを含有するエアゾール組成物を使用するスキンケア方法によれば、べたつきが低減し、伸び、肌なじみが良好になり、保湿感が向上することが記載されている。
特許文献2には、水酸基を2個以上有する特定の有機化合物、水酸基を1個有する特定の有機化合物、セラミド類、HLB10以上の非イオン界面活性剤、糖アルコールを含有する乳化組成物が、水分保持能が高く、水分を長時間皮膚に残留させることが記載されている。
特許文献3には、プロピレン重合体、炭化水素油、ペースト状エステル油を含有する水中油型乳化組成物が、べたつき感がなく、経表皮水分蒸散量の抑制効果、低温での経時安定性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-200282号公報
【特許文献2】特開2011-32265号公報
【特許文献3】特開2016-79183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乳化組成物は、保湿感は得られるものの十分ではなく、塗布後の肌にツヤを与えることもできなかった。
また、身体の広い範囲に塗布するには、伸びやべたつきのなさの点において、十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、セラミド類、炭素数12~22の高級アルコールとともに、N-アシルアミノ酸エステル及び糖アルコールを組合わせて用いることにより、伸びがよく、べたつかず、広い範囲にも容易に塗布することができ、塗布後の肌にツヤを与え、保湿効果に優れた水中油型乳化組成物が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)セラミド類、
(B)炭素数12~22の高級アルコール、
(C)N-アシルアミノ酸エステル、
(D)糖アルコール 1~20質量%、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、伸びがよく、べたつかず、広い範囲にも容易に塗布することができ、塗布後の肌にツヤを与え、保湿効果に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)のセラミド類としては、セラミド1、2、3、4、5、6、7等の天然セラミド、フィトスフィンゴシン等のスフィンゴシン誘導体などの他、特開昭62-228048号公報、特開昭63-216812号公報、特開昭63-227513号公報、特開昭64-29347号公報、特開昭64-31752号公報、特開平8-319263号公報などに記載のセラミド類似構造物質が挙げられる。セラミド類似構造物質としては、具体的には、塗布後の肌のべたつきを低減させ、保湿効果を向上させる観点から、次の一般式(1)及び(2)で表される化合物が挙げられる。
【0009】
【0010】
〔式中、R1bは炭素数10~26の炭化水素基、R2bは炭素数9~25の炭化水素基を示し、Xは-(CH2)n-(ここでnは2~6の整数を示す)を示す。〕
【0011】
【0012】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって炭素数1~40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1~6のアルキレン基又は単結合を示し、R4は水素原子、炭素数1~12のアルコキシ基又は2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のとき、R4は水素原子である。)
【0013】
なお、前記一般式(1)及び(2)中、炭化水素基としてはアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
一般式(1)の化合物の例としては、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが挙げられ、一般式(2)の化合物の例としては長鎖二塩基酸 ビス3-メトキシプロピルアミドが挙げられる。
【0014】
成分(A)としては塗布後の肌のべたつきを低減させ、保湿効果を向上させる観点から、天然セラミド、スフィンゴシン類、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、天然セラミド、スフィンゴシン類、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、天然セラミド、フィトスフィンゴシン、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドから選ばれる1種又は2種以上を含むのがさらに好ましく、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドを含むのがよりさらに好ましい。
【0015】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、保湿効果を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.001~10質量%であるのが好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
【0016】
成分(B)の炭素数12~22の高級アルコールは、塗布時の伸びを向上させ、広い範囲への塗布しやすさを向上させる観点から、炭素数は、14~20が好ましく、炭素数16~18がより好ましい。成分(B)の炭素数12~22の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
これらのうち、塗布時の伸びを向上させ、広い範囲への塗布しやすさを向上させる観点から、直鎖アルキル基を有するものを含むのが好ましく、セタノール、ステアリルアルコールから選ばれる1種以上を含むのがより好ましい。
【0017】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の伸びを向上させ、広い範囲への塗布しやすさを向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~10質量%であるのが好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~2質量%がさらに好ましい。
【0018】
成分(C)のN-アシルアミノ酸エステルにおいて、アシル基は、炭素数10~30であるのが好ましく、炭素数12~18がより好ましい。また、アシル基は、飽和でも、不飽和でも良い。例えば、2-エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、リノレノイル基等が挙げられ、ミリストイル基、ラウロイル基が好ましく、ラウロイル基がより好ましい。また、アシル基は混合脂肪酸を由来としてもよく、ココイル脂肪酸エステル、パーム油脂肪酸エステル、パーム核油脂肪酸エステル、ヒマワリ種子油脂肪酸エステル、マカデミアナッツ油脂肪酸エステルが好ましく、ココイル脂肪酸エステル、パーム核油脂肪酸エステルがより好ましい。
【0019】
N-アシルアミノ酸エステルにおいて、アミノ酸部分としては、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸であり、酸性アミノ酸、中性アミノ酸が好ましく、酸性アミノ酸がより好ましい。より具体的には、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、グリシン、N-メチルアラニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、サルコシン等が好ましく、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、N-メチルアラニン、サルコシンがより好ましく、グルタミン酸がさらに好ましい。
【0020】
また、N-アシルアミノ酸エステルは、N-アシルアミノ酸のアルキルエステルが好ましい。アルキルエステルを構成するアルキル基は、炭素数1~30であるのが好ましく、炭素数12~18がより好ましい。また、アルキル基は、分岐でも、直鎖でも、環状構造を有するものでも良い。例えば、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基、オクチルドデシル基、カンペステリル基や、シトステリル基等のフィトステリル基、コレステリル、デシルテトラデシル基等が好適に例示できる。
また、N-アシルアミノ酸エステルは、モノエステルよりもジエステルであることが好ましい。N-アシルグルタミン酸ジエステル、N-アシルアスパラギン酸ジエステルがより好ましく、N-ラウロイルグルタミン酸ジエステルがさらに好ましい。ジエステル1分子中に存在するアルキル基は同一であっても異なっていてもよいが、2種以上であることが好ましい。
【0021】
本発明において、N-アシルアミノ酸エステルとしては、例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N-ミリストイル-N-メチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等が挙げられる。これらのうち、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)から選ばれる1種以上を含むのが好ましく、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を含むのがより好ましい。
【0022】
成分(C)は、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のツヤを向上させる観点から、25℃における粘度が100,000mPa・s以下であるのが好ましく、50,000mPa・s以下がより好ましく、10,000mPa・s以下がさらに好ましく5,000mPa・s以下がよりさらに好ましい。
ここで、粘度は、B型粘度計、例えば、単一円筒型回転粘度計ビストロンVS-A1(芝浦システム社製)により測定されるものである。
【0023】
N-アシルアミノ酸エステルの市販品としては、味の素社、日本精化社より販売されている「エルデュウPS-203(粘度:1,200mPa・s)」、「Plandool-LG2」(N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルデシル))、「エルデュウCL-301」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL-202」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS-304」、「エルデュウPS-306(粘度:140,000mPa・s)」、「Plandool-LG1」、「Plandool-LG3」、「Plandool-LG4」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウAPS-307」(N-ミリストイル-N-メチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル))等が挙げられる。
【0024】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、塗布後の肌のツヤを向上させ、塗布後の肌の保湿効果を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、0.2~5質量%がより好ましく、0.3~4質量%がさらに好ましく、0.7~2質量%がよりさらに好ましい。
【0025】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、肌のツヤを向上させ、塗布後の肌の保湿効果を向上させる観点から、0.01~10であるのが好ましく、0.1~5がより好ましく、0.6~1.5がさらに好ましい。
【0026】
成分(D)の糖アルコールは、還元基を有する糖の還元基(アルデヒド基及びケトン基)を還元してアルコール基としたものである。
糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、ラクチトール、パラニチット、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、トレハロース、グルコシルトレハロース、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等のポリオキシアルキレンアルキルグルコシドなどが挙げられる。
これらのうち、塗布後のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させる観点から、ソルビトール、マルチトール、トレハロースから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ソルビトールを含むのがより好ましい。
【0027】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させる観点から、含有量は、全組成中に1~20質量%であるのが好ましく、1.5~15質量%がより好ましく、2.5~10質量%がさらに好ましく、3~6質量%がよりさらに好ましい。
【0028】
本発明において、成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)は、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、肌のツヤを向上させ、塗布後の肌のツヤを向上させ、塗布後の肌の保湿効果を向上させる観点から、0.05~5であるのが好ましく、0.1~1がより好ましく、0.19~0.62がさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(E)の水の含有量は、塗布時の伸びを向上させ、広い範囲への塗布しやすさを向上させ、保存安定性を向上させる観点から、全組成中に25~95質量%であるのが好ましく、35~90質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、(F)25℃で固体の炭化水素を含有することができ、ツヤを低下させることなく、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、塗布後の肌の保湿効果を向上させることができる。
成分(F)としては、融点が25℃以上の炭化水素が好ましく、例えば、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、日本薬局方のパラフィン等が挙げられ、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスから選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、ワセリンを含むのがさらに好ましい。
【0031】
成分(F)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の伸びを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、広い範囲への塗布のしやすさを向上させ、塗布後の肌の保湿効果を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、非イオン性界面活性剤を含有することができ、安定性を向上させることができる。
非イオン界面活性剤は、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させ、保存安定性を向上させる観点から、HLB9~18であるのが好ましく、HLB11~16がより好ましく、HLB12~15がさらに好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lipophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。また、2種以上のノニオン界面活性剤から構成される場合、混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各ノニオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、ノニオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有するノニオン界面活性剤Xの質量(g)を示す。
【0033】
かかる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン(HLB:4.5)、イソステアリン酸ソルビタン(HLB:4.7)等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO)(HLB:12.5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO)(HLB:14.0)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。
これらのうち、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させ、保存安定性を向上させる観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上を含むのが好ましい。
【0034】
非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上組合わせて用いることができ、含有量は、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させ、保存安定性を向上させる観点から、全組成中に0.1~5質量%であるのが好ましく、0.3~3質量%がより好ましく、0.5~1質量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、アニオン性界面活性剤を含有することができ、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させ、保存安定性を向上させることができる。
アニオン性界面活性剤としては、通常の乳化組成物に用いられるもので、例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、N-ステアロイル-L-グルタミン酸、N-ミリストイル-L-グルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸等のN-アシルアミノ酸、脂肪酸、アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、アシル乳酸、N-アシルメチルアラニン、N-アシルサルコシン、ジアシルアミノ酸及びそれらの塩等のカルボン酸塩型、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アシルイセチオン酸、アルキルスルホコハク酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-ラウロイル-N-メチルタウリン、N-ステアロイル-N-メチルタウリン等のN-アシルメチルタウリン及びそれらの塩等のスルホン酸塩型、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル及びそれらの塩等の硫酸塩型、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩等のリン酸塩型などが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、αゲル構造を形成し、保存安定性を向上させる観点から、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩を含むことがより好ましく、N-ステアロイル-N-メチルタウリン及びそれらの塩を含むことがさらに好ましい。
【0036】
アニオン性界面活性剤を構成する塩構造としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩や、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-リジン等の塩基性アミノ酸塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0037】
アニオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布後の肌のツヤを向上させ、肌の保湿効果を向上させ、保存安定性を向上させる観点から、全組成中に0.1~5質量%であるのが好ましく、0.3~3質量%がより好ましく、0.5~1質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、水溶性増粘剤を含有することができ、塗布後の肌のツヤを向上させ、安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さを向上させることができる。
水溶性増粘剤としては、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系ポリマー、アルキル変性多糖類系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられ、塗布後の肌のツヤを向上させ、保存安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さを向上させる観点からアクリル酸系ポリマーを含むのが好ましく、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーから選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、カルボキシビニルポリマーを含むのがさらに好ましい。
【0039】
水溶性増粘剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布後の肌のツヤを向上させ、保存安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さを向上させる観点から、全組成中に0.01~3質量%であるのが好ましく、0.1~1質量%がより好ましく、0.2~0.5質量%がよりさらに好ましい。
【0040】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、ステロール誘導体を含有することができ、塗布後の肌のツヤを向上させ、保存安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さをより向上させることができる。
ステロール誘導体としては、ステロール脂肪酸エステルが好ましく、具体的には、ラウリン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、酪酸フィトステリル、ノナン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、カプリル/カプリン酸フィトステリル、リシノール酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、フィトステリルカノラ油脂肪酸グリセリズ、フィトステリルナタネグリセリズ、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、コメヌカ油脂肪酸フィトステリル等が挙げられる。
これらのうち、塗布後の肌のツヤを向上させ、αゲル構造を形成し、保存安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さを向上させる観点から、ラウリン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リノール酸コレステリルが好ましく、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリルがより好ましい。
【0041】
ステロール誘導体は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布後の肌のツヤを向上させ、保存安定性を向上させ、塗布時の伸びの良さを向上させる観点から、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、1~8質量%がより好ましく、2~4質量%がよりさらに好ましい。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油成分、前記以外の界面活性剤、前記以外の水溶性高分子、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤、着色剤等を含有することができる。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常の方法に従って製造することができる。
例えば、成分(A)、(B)、(C)、(F)及びその他の油性成分を加熱撹拌して均一に溶解した油相を調製し、この油相に、80℃以上に加熱した成分(D)、(E)及びその他の水性成分を含む水相を加え、撹拌する。その後、冷却して、水中油型乳化組成物を得ることができる。
本発明の水中油型乳化組成物は、α-ゲル(α型結晶)を形成しているのが好ましく、保湿感をより高めることができる。α-ゲルは、X線による構造解析により、確認することができる。α型構造は六方晶系のことであり、親油基が親水基層の面に対して直角に配向しており、Bragg角21~23°付近に鋭い一本の回折ピークが現れるのが特徴である。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物は、水中油型乳化化粧料として好適であり、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料;スキンケア乳液、スキンケアクリーム、BBクリーム、美容液等のスキンケア化粧料などの皮膚化粧料として適用することができる。なかでも、スキンケア化粧料が好ましく、スキンケア乳液、スキンケアクリームがより好ましく、スキンケアクリームがさらに好ましい。
本発明の水中油型乳化組成物は、伸びがよく、べたつかず、広い範囲に塗布するのに適しており、また、塗布後の肌にツヤを与えることができるので、身体用の乳液、クリームとして好適である。
【実施例0045】
実施例1~6、比較例1~2
表1に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、ツヤ、伸びのよさ、べたつきのなさ、保湿感を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0046】
(製造方法)
成分(A)、(B)、(C)、(F)及びシリコーン油を除くその他の油性成分を80℃以上に加熱撹拌して均一に溶解した油相を調製した。前記油相に、シリコーン油に分散させた水溶性増粘剤と80℃以上に加熱した成分(D)、(E)及びその他の水性成分を含む水相を加え、撹拌した。その後、25℃まで冷却して、水中油型乳化組成物を得た。
【0047】
(評価方法)
(1)ツヤ:
各水中油型乳化組成物2.5μL/cm2を、人工皮革に指で2分間かけて塗布し、60分間室温で乾燥させた。乾燥後、SAMBA HAIR SYSTEM(THALES社製)にて輝度値(最大反射光強度)を測定した。測定は3回行い、平均値を算出した。
【0048】
(2)伸びのよさ:
専門パネラー3名により、各水中油型乳化組成物約0.2gを手の甲にとり、指でなじませたときの伸びのよさ(べたつかずに伸ばしやすい感じ)を、以下の基準で評価した。結果は、3名の合計得点で示した。
5:とても伸びがよい。
4:伸びがよい。
3:やや伸びがよい。
2:伸びがやや悪い。
1:伸びが悪い。
【0049】
(3)べたつきのなさ:
専門パネラー3名により、各水中油型乳化組成物約0.2gを手の甲にとり、指でなじませた後の肌のべたつきのなさを、以下の基準で評価した。結果は、3名の合計得点で示した。
5:明らかにべたつきがない。
4:べたつきがない。
3:あまりべたつきがない。
2:ややべたつきがある。
1:べたつきがある。
【0050】
(4)保湿感:
専門パネラー3名により、各水中油型乳化組成物約0.2gを手の甲にとり、指でなじませたときの保湿感(肌がしっとりした感じ)を、以下の基準で評価した。結果は、3名の合計得点で示した。
5:とても保湿感がある。
4:保湿感がある。
3:やや保湿感がある。
2:あまり保湿感がない。
1:保湿感がない。
【0051】
【0052】
*1:N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド;スフィンゴリピッド E(花王社製)、
*2:セタノール;セチルアルコール NX(高級アルコール工業社製)、
*3:ステアリルアルコール;ステアリルアルコール NX(高級アルコール工業社製)、
*4:N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル);エルデュウ PS-203(味の素社製)、
*5:ソルビット液;ソルビトール #650(三菱商事ライフサイエンス社製)、(ソルビトール:70質量%、水:30質量%。表1中の含有量は、ソルビトールの量を記載した)、
*6:ワセリン;スーパーホワイトプロトペット(Sonneborn, LLC社製)、
*7:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO);エマノーン CH-40(花王社製)、
*8:モノステアリン酸ソルビタン;レオドール SP-S10V(花王社製)、
*9:N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム;ニッコール SMT(日本サーファクタント工業社製)、
*10:イソステアリン酸コレステリル;エキセパール IS-CE-A(花王社製)、
*11:オリブ油;クロピュア OL-LQ(クローダジャパン社製)、
*12:メチルポリシロキサン;シリコーン KF-96A-10CS(信越化学工業社製)、
*13:カルボキシビニルポリマー;カーボポール 980 POLYMER(Lubrizol Advanced Materials, Inc.社製)
【0053】
処方例1~4
表2に示す組成の水中油型乳化組成物は、実施例1~6と同様にして製造され、伸びがよく、べたつかず、塗布後の肌にツヤを与え、保湿効果に優れたものである。
なお、表2中には、各原料の含有量を記載した。
【0054】
【0055】
*14:セラミド2;セラミド2(クローダジャパン社製)、
*15:フィトスフィンゴシン;フィトスフィンゴシン(Evonik Operations GmbH社製)、
*16:マイクロクリスタリンワックス;マルチワックス W-445 S(Sonneborn, LLC社製)、
*17:イソノナン酸イソトリデシル;サラコス 913(日清オイリオグループ社製)、
*18:ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;エステモール N-01(日清オイリオグループ社製)、
*19:グリセリン;86%グリセリンV(花王社製)、
*20:1,3ーブチレングリコール;1,3ーブチレングリコールーP(KHネオケム社製)、
*21:ユーカリエキス;ユーカリ抽出液 EBL(栃本天海堂社製)、
*22:アスナロ抽出液;アスナロリキッド K(一丸ファルコス社製)、
*23:アルテアエキス;ファルコレックス アルテア K(一丸ファルコス社製)、
*24:ローマカミツレエキス;ローマカミツレエキスBG-60(香栄興業社製)、
*25:シラカバエキス;バーチエキストラクト(一丸ファルコス社製)、
*26:エクトイン;RONACARE ECTOIN(Merck KGaA社製)、
*27:海藻エキス(1);ファルコレックス ヒバマタEX-E(一丸ファルコス社製)、
*28:ローズマリーエキス;ファルコレックス ローズマリーE(一丸ファルコス社製)、
*29:チューベロース多糖体;ソフケア TP-S(花王社製)、
*30:エタノール;95度合成アルコール(日本合成アルコール社製)、
*31:パラオキシ安息香酸メチル;メッキンス-M(上野製薬社製)