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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070441
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240516BHJP
【FI】
C02F1/461 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180942
(22)【出願日】2022-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA02
4D061DA03
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB19
4D061EB39
4D061ED12
4D061ED13
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】一室型の電解槽で再利用する電解質水溶液の品質を安定化できる電解水生成装置を提供すること。
【解決手段】供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する第1中間室と、第1中間室からイオン化した電解質が供給される第1アノード室及び第1カソード室と、を有する第1の三室型電解槽と、一室型電解槽と、電解質供給部と、電解質水溶液が電解質供給部から供給されるとともに、第1中間室との間で電解質水溶液を循環させ、かつ一室型電解槽に電解質水溶液を供給する電解質循環部と、電解質循環部において第1中間室および一室型電解槽への電解質水溶液の供給量よりも電解質供給部および第1中間室からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液を電解質循環部との間で循環させる余剰循環部と、を備える電解水生成装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する第1中間室と、前記第1中間室からイオン化した電解質が供給される第1アノード室及び第1カソード室と、を有する第1の三室型電解槽と、
一室型電解槽と、
電解質供給部と、
電解質水溶液が前記電解質供給部から供給されるとともに、前記第1中間室との間で電解質水溶液を循環させ、かつ前記一室型電解槽に電解質水溶液を供給する電解質循環部と、
前記電解質循環部において前記第1中間室および前記一室型電解槽への電解質水溶液の供給量よりも前記電解質供給部および前記第1中間室からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液を前記電解質循環部との間で循環させる余剰循環部と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記第1アノード室から酸性電解水が供給される第1配管と、原水が流通し前記第1配管と合流する第2配管と、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記電解質循環部は、
前記電解質供給部からの電解質水溶液の第1流入口と、
前記一室型電解槽への電解質水溶液の第1流出口と、
前記第1流入口から前記第1流出口へ電解質水溶液が流れる方向において、前記第1流入口よりも下流にある、前記余剰循環部への電解質水溶液の第2流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流入口よりも下流、かつ前記第2流出口よりも上流にある、前記第1中間室からの電解質水溶液の第2流入口と、
前記流れる方向において、前記第2流入口よりも上流にある、前記第1中間室への電解質水溶液の第3流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流出口よりも上流にある、前記余剰循環部からの電解質水溶液の第3流入口と、を備えること特徴とする電解水生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解水生成装置において、
前記第3流入口は、前記流れる方向において、前記第2流出口の上流および下流にそれぞれあること特徴とする電解水生成装置。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の電解水生成装置において、
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質が消費された電解質水溶液を排出する第2中間室と、前記第2中間室からイオン化した電解質が供給される第2アノード室及び第2カソード室と、前記第2アノード室と前記第2カソード室とを連結し、前記第2アノード室が生成する酸性電解水を前記第2カソード室に送る第3配管と、を有する第2の三室型電解槽を備え、
前記電解質循環部は、前記第2中間室との間で電解質水溶液を循環させること特徴とする電解水生成装置。
【請求項6】
請求項3に従属する請求項5に記載の電解水生成装置において、
前記電解質循環部は、
前記流れる方向において、前記第1流入口よりも下流、かつ前記第2流出口よりも上流にある、前記第2中間室への電解質水溶液の第4流出口と、
前記流れる方向において、前記第2流出口よりも下流、かつ、前記第1流出口よりも上流にある、前記第2中間室からの電解質水溶液の第4流入口と、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記第1の三室型電解槽は、前記アノード室と前記カソード室とを連結し、前記アノード室が生成する酸性電解水を前記カソード室に送る連結配管を有することを特徴とする電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三室型の電解水生成装置には、一般に、電気分解後の電解質水溶液を再度、電解槽に送る循環経路が設けられている。循環経路における電解槽の後段にて、高濃度の電解質水溶液が供給され、消費分の電解質が補充される。この補充に伴う余剰の電解質水溶液は、循環経路から装置外に廃棄される。環境及びコストの観点から、電解質水溶液の廃棄を減らすことが望ましい。そこで、本願出願人は、余剰の電解質水溶液を一室型の電解槽で再利用する電解水生成装置を開発した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6139809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、循環経路における余剰の電解質水溶液を一室型の電解槽で再利用する場合、一室型の電解槽で一定の品質の酸性電解水を継続して生成する観点から、循環経路において電気分解後の電解質水溶液に高濃度の電解質水溶液が十分に混合され、塩分濃度および酸性度が一室型の電解槽での電気分解に適した状態である、すなわち品質、が安定した電解質水溶液が一室型の電解槽に送られることが望ましい。すなわち、電解水生成装置において、一室型の電解槽で再利用する電解質水溶液の短時間での品質の安定化が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば以下の通りである。以下では、図の符号を参照のために用いている。
(1)供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する第1中間室(23)と、前記第1中間室(23)からイオン化した電解質が供給される第1アノード室(22)及び第1カソード室(21)と、を有する第1の三室型電解槽(2、2A)と、
一室型電解槽(3)と、
電解質供給部(4)と、
電解質水溶液が前記電解質供給部(4)から供給されるとともに、前記第1中間室(23)との間で電解質水溶液を循環させ、かつ前記一室型電解槽(3)に電解質水溶液を供給する電解質循環部(5、5A~5D)と、
前記電解質循環部(5、5A~5D)において前記第1中間室(23)および前記一室型電解槽(3)への電解質水溶液の供給量よりも前記電解質供給部(4)および前記第1中間室(23)からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液を前記電解質循環部(5、5A~5D)との間で循環させる余剰循環部(6)と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置(1、1A、1B)。
(2)(1)に記載の電解水生成装置(1、1A)において、
前記第1アノード室(22)から酸性電解水が供給される第1配管(88)と、原水が流通し前記第1配管(88)と合流する第2配管(90)と、を備えることを特徴とする電解水生成装置(1、1A)。
(3)(1)に記載の電解水生成装置(1、1A)において、
前記電解質循環部(5、5A~5C)は、
前記電解質供給部(4)からの電解質水溶液の第1流入口(53)と、
前記一室型電解槽(3)への電解質水溶液の第1流出口(54)と、
前記第1流入口(53)から前記第1流出口(54)へ電解質水溶液が流れる方向(X)において、前記第1流入口(53)よりも下流にある、前記余剰循環部(6)への電解質水溶液の第2流出口(55)と、
前記流れる方向(X)において、前記第1流入口(53)よりも下流、かつ前記第2流出口(55)よりも上流にある、前記第1中間室(23)からの電解質水溶液の第2流入口(56)と、
前記流れる方向(X)において、前記第2流入口(56)よりも上流にある、前記第1中間室(23)への電解質水溶液の第3流出口(57)と、
前記流れる方向(X)において、前記第1流出口(54)よりも上流にある、前記余剰循環部(6)からの電解質水溶液の第3流入口(58)と、を備えること特徴とする電解水生成装置(1、1A)。
(4)(3)に記載の電解水生成装置(1、1A)において、
前記第3流入口(58)は、前記流れる方向(X)において、前記第2流出口(55)の上流および下流にそれぞれあること特徴とする電解水生成装置(1、1A)。
(5)(1)または(3)に記載の電解水生成装置(1A)において、
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質が消費された電解質水溶液を排出する第2中間室(23)と、前記第2中間室(23)からイオン化した電解質が供給される第2アノード室(22)及び第2カソード室(21)と、前記第2アノード室(22)と前記第2カソード室(21)とを連結し、前記第2アノード室(22)が生成する酸性電解水を前記第2カソード室(21)に送る第3配管(96)と、を有する第2の三室型電解槽(2A)を備え、
前記電解質循環部(5A、5C)は、前記第2中間室(23)との間で電解質水溶液を循環させること特徴とする電解水生成装置(1A)。
(6)(3)に従属する(5)に記載の電解水生成装置(1A)において、
前記電解質循環部(5A、5C)は、
前記流れる方向(X)において、前記第1流入口(53)よりも下流、かつ前記第2流出口(55)よりも上流にある、前記第2中間室(23)への電解質水溶液の第4流出口(591、591C)と、
前記流れる方向(X)において、前記第2流出口(55)よりも下流、かつ、前記第1流出口(54)よりも上流にある、前記第2中間室(23)からの電解質水溶液の第4流入口(592)と、を備えることを特徴とする電解水生成装置(1A)。
(7)(1)に記載の電解水生成装置(1B)において、
前記第1の三室型電解槽(2A)は、前記アノード室(22)と前記カソード室(21)とを連結し、前記アノード室(22)が生成する酸性電解水を前記カソード室(21)に送る連結配管(96)を有することを特徴とする電解水生成装置(1B)。
【0006】
本発明では、一室型の電解槽で再利用する電解質水溶液の品質を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
図2】電解質オーバーフロータンクを示す図である。
図3】電解質循環部における電解質水溶液の流入、流出の位置関係を説明するための図である。
図4】第3流入口の他の例を示す図である。
図5】第2実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
図6】電解質循環部における電解質水溶液の流入、流出の位置関係を説明するための図である。
図7】電解質循環部の第3実施形態の構成を説明するための図である。
図8】電解質循環部の第4実施形態の構成を説明するための図である。
図9】第2実施形態の電解水生成装置の構成の他の例を示す図である。
図10】電解質循環部の第2実施形態の構成の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して各実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、電解水生成装置1の構成を示す図である。
電解水生成装置1は、三室型電解槽2(本発明の第1の三室型電解槽に相当)、一室型電解槽3、電解質供給部4、電解質循環部5、電解質オーバーフロータンク6(本発明の余剰循環部に相当)を備える。
【0009】
三室型電解槽2は、内部がカソード室21(本発明の第1カソード室に相当)、アノード室22(本発明の第1アノード室に相当)、カソード室21およびアノード室22の間にある中間室23(本発明の第1中間室に相当)に仕切られる。中間室23には、電解質循環部5から電解質水溶液が供給される。電解質水溶液として、例えばNaClが高濃度で溶解する塩水が用いられる。高濃度の塩水は、飽和食塩水であってもよい。電解質水溶液として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸、塩化カリウム、塩化カルシウムまたはその混合物などの電解質が溶解するものが用いられてもよい。
【0010】
カソード室21と中間室23は、陽イオン交換膜211に仕切られる。陽イオン交換膜211は、Na等の陽イオンを選択的に透過させる。陽イオン交換膜211の背面側にカソード電極24がある。
【0011】
アノード室22と中間室23は、陰イオン交換膜221に仕切られる。陰イオン交換膜221は、Cl等の陰イオンを選択的に透過させる。陰イオン交換膜221の背面側にアノード電極25がある。
【0012】
原水供給部81は、原水を、配管82および配管82から分岐する配管83を介してカソード室21に供給するとともに、配管82および配管82から分岐する配管84を介してアノード室22に供給する。原水として、水道水やRO(Reverse Osmosis)水等を用いることができる。原水は、電解質の濃度が15ppm以下等、電解質が僅かに溶解していてもよい。配管82には、配管82内を開閉する開閉機構85が設けられている。
【0013】
電解水生成装置1は、全体を制御する不図示のプロセッサ、プロセッサに読み込まれるプログラム等を記憶する不図示のメモリ、設定画面等を表示する不図示のディスプレイ、ユーザから設定等の入力を受け付けるボタン等の不図示の入力部を備える。開閉機構85は、プロセッサに制御される。
【0014】
三室型電解槽2による電気分解の実行時には、カソード電極24およびアノード電極25に直流電圧が印加される。すると、中間室23内のNa等の陽イオンがカソード室21に移動し、公知の反応によりカソード室21にアルカリ性電解水が生じる。アルカリ性電解水は、カソード室21から配管86を介してアルカリ性電解水排出口87へ送られる。
【0015】
また、中間室23内のCl等の陰イオンがアノード室22に移動し、公知の反応によりアノード室22に酸性電解水(例えば次亜塩素酸水)が生じる。酸性電解水は、アノード室22から配管88(本発明の第1配管に相当)を介して酸性電解水排出口89へ送られる。配管88と原水供給部81とが配管90(本発明の第2配管に相当)で接続される。配管90には、プロセッサの制御下にある開閉機構91が設けられている。開閉機構91を開け、原水供給部81から配管90を介して原水を配管88に送ることで、アノード室22で生成される酸性電解水を希釈できる。これにより、例えば、アノード室22で生成される次亜塩素酸水を、弱酸性次亜塩素酸水または微酸性次亜塩素酸水に希釈できる。このように、三室型電解槽2による電気分解の作用により、中間室23では、電解質水溶液中の電解質の一部が消費される。中間室23は、電解質の一部が消費された電解質水溶液を配管51を介して電解質循環部5に送る。
【0016】
電解質供給部4は、電解質が高濃度に溶解する電解質水溶液、例えば飽和食塩水を貯留する。電解質供給部4は、プロセッサの制御下にあるポンプ41が設けられた配管42を介し、電解質循環部5に接続する。プロセッサが例えば三室型電解槽2の稼働時間に応じてポンプ41を駆動することで、電解質供給部4は、必要量の電解質水溶液を電解質循環部5に送る。
【0017】
電解質循環部5は、電解質水溶液が電解質供給部4から供給されるとともに、中間室23との間で電解質水溶液を循環させ、かつ一室型電解槽3に電解質水溶液を供給する。中間室23の出口及び入口には、中間室23に電解質水溶液を循環させる配管51が接続する。配管51において、電解質循環部5の下流、かつ中間室23の上流には、プロセッサの制御下にあるポンプ52が設けられている。ポンプ52の駆動により、中間室23に電解質水溶液が循環する。
【0018】
中間室23から循環する電解質水溶液は、三室型電解槽2による電気分解の作用により、電解質水溶液のpHが低下する(酸性度が高くなる)。そこで、電解質循環部5は、中間室23に電解質水溶液を送るとともに、中間室23から電気分解の利用後の電解質水溶液を回収し、利用後の電解質水溶液に電解質供給部4から電解質の濃度の高い電解質水溶液を加えて中間室23との間で循環させる。
【0019】
電解質オーバーフロータンク6は、電解質循環部5との間で循環経路を形成する配管61中に設けられる。配管61において、電解質オーバーフロータンク6の下流、かつ電解質循環部5の上流には、プロセッサによる制御下にあるポンプ62が設けられている。
【0020】
電解質オーバーフロータンク6は、電解質循環部5において三室型電解槽2および一室型電解槽3への電解質水溶液の供給量よりも電解質供給部4および中間室23からの電解質水溶液の循環量が多いことによる余剰の電解質水溶液を、ポンプ62の駆動により、電解質循環部5との間で循環させる。電解質オーバーフロータンク6は、後述するが、一室型電解槽3へ供給する電解質水溶液の品質の安定化に寄与する。
【0021】
図2に参照されるように、電解質オーバーフロータンク6は、水位が設定値に至ると、余剰の電解質水溶液を排出口63から排出する。電解質オーバーフロータンク6内には、排出口63よりも高い位置に、電解質循環部5からの電解質水溶液の不図示の供給口がある。電解質オーバーフロータンク6内には、例えば配管61の一部を構成するチューブが差し込まれる。ポンプ62の駆動により、電解質オーバーフロータンク6内の電解質水溶液がチューブに吸い上げられ、配管61により電解質循環部5へ送られる。
【0022】
図1に示すように、一室型電解槽3では、陰極31および陽極32が隔膜で仕切られていない。一室型電解槽3は、配管33を介して電解質循環部5と接続する。配管33には、プロセッサの制御下にあるポンプ34が設けられている。ポンプ34の駆動により、電解質循環部5から一室型電解槽3に電解液水溶液が供給される。一室型電解槽3は、陰極31および陽極32により、供給される酸性に傾いた電解液水溶液を電気分解し、酸性電解水(例えば微酸性電解水)を生成する。
【0023】
一室型電解槽3で生成される酸性電解水は、配管35を介して酸性電解水排出口36に送られる。配管35と原水供給部81とが配管37で接続される。配管37には、プロセッサの制御下にある開閉機構38が設けられている。開閉機構38を開け、原水供給部81から配管37を介して原水を配管35に送ることで、一室型電解槽3で生成される酸性電解水を希釈できる。
【0024】
本実施形態では、三室型電解槽2で電解質水溶液を循環使用しながらアルカリ性電解水および酸性電解水を生成する。また、本実施形態では、三室型電解槽2で循環使用した電解質水溶液を一室型電解槽3で再利用し、酸性電解水を生成する。これにより、本実施形態では、電解質水溶液の廃液を抑制しつつ、大容量の酸性電解水を継続して生成できる。
【0025】
三室型電解槽2で電気分解され、電解質循環部5に送られる電解質水溶液は、電気分解の作用により、塩分濃度が低下し、電解質水溶液のpHが低下する(酸性度が高くなる)。pHが低下する要因としては、中間室23に存在するNaイオンとHイオンの陽イオンの内、イオン化傾向としてNaイオンの方が大きいため、陽イオン交換膜211を優先的に透過しカソード室21に移動する。したがって、中間室23では相対的にHイオンが残存するため、これにより中間室23を循環する電解質水溶液の酸性度が高くなり、pHが低くなることが知られている。本実施形態では、電解質循環部5において、酸性度が高くなった電解質水溶液に高濃度の電解質水溶液を混合し、塩分濃度および酸性度を一室型電解槽3で生成する微酸性電解水の生成に適した液性とした後、当該電解質水溶液を一室型電解槽3に送る。
【0026】
そこで、本実施形態では、上記混合を十分に行うために、中間室23を通る電解質水溶液の循環系で生じる余剰の電解質水溶液を、電解質オーバーフロータンク6によって電解質循環部5に流入、流出させ、電解質循環部5内の電解質水溶液を撹拌する。これにより、本実施形態では、電解質水溶液の濃度を短時間で均一化でき、塩分濃度および酸性度が一室型電解槽3での微酸性電解水の生成に適した電解質水溶液を一室型電解槽3に送ることができる。以上により、本実施形態では、電解質循環部5から一室型電解槽3に送る電解質水溶液の品質の安定化を短時間で図ることができる。
【0027】
図3は、電解質循環部5における電解質水溶液の流入、流出の位置関係を説明するための図である。
電解質循環部5には、電解質供給部4からの電解質水溶液の第1流入口53と、一室型電解槽3への電解質水溶液の第1流出口54と、がある。電解質循環部5には、電解質オーバーフロータンク6への電解質水溶液の第2流出口55がある。第2流出口55は、第1流入口53から第1流出口54へ電解質水溶液が流れる方向Xにおいて、第1流入口53よりも下流にある。
【0028】
電解質循環部5には、中間室23からの電解質水溶液の第2流入口56が、方向Xにおいて、第1流入口53よりも下流、かつ第2流出口55よりも上流にある。電解質循環部5には、中間室23への電解質水溶液の第3流出口57が、方向Xにおいて、第2流入口56よりも上流にある、本実施形態では、第1流入口53よりも上流にある。電解質循環部5には、電解質オーバーフロータンク6からの電解質水溶液の第3流入口58が、方向Xにおいて、第1流出口54よりも上流にある、本実施形態では第2流出口55と同位置にあり、第2流出口55と対向している。
【0029】
このような各口53~58の位置関係により、本実施形態では、電解質循環部5内において、電解質水溶液を良好に撹拌、混合でき、一室型電解槽3に送る電解質水溶液の品質を一室型電解槽3での酸性電解水の生成に適した品質に安定化できる。なお、各口53~58は、それぞれ複数あってもよい。各口53~58の上記位置は、例示であり、適宜に設定できる。
【0030】
図4は、第3流入口58の他の例を示す図である。
電解質循環部5には、電解質オーバーフロータンク6からの電解質水溶液の第3流入口58が、方向Xにおいて、第2流出口55の上流および下流にそれぞれあってもよい。図4に示すように、第2流出口55を上記2か所に設けることによって、電解質循環部5内の電解質水溶液の撹拌効率を高めることができる。
【0031】
(第2実施形態)
図5は、電解水生成装置1Aの構成を示す図である。
電解水生成装置1Aは、電解水生成装置1に三室型電解槽2A(第2の三室型電解槽)を加えたものであり、他の構成は、電解水生成装置1と同様である。三室型電解槽2Aは、アルカリ性電解水生成用であり、アノード室22(本発明の第2アノード室に相当)で生成される酸性電解水が配管96(本発明の第3配管および連結配管に相当)を介してカソード室21(本発明の第2カソード室に相当)に送られる点が、三室型電解槽2と異なる点である。
【0032】
三室型電解槽2Aの中間室23には、電解質循環部5Aを経由して電解質水溶液を循環させる配管92が接続する。配管92において、電解質循環部5Aの下流、かつ三室型電解槽2Aの中間室23の上流には、プロセッサの制御下にあるポンプ93が設けられている。ポンプ93の駆動により、三室型電解槽2Aの中間室23に電解質水溶液が送られる。三室型電解槽2Aのアノード室22には、原水供給部81から配管94を介して原水が送られる。配管94には、プロセッサの制御下にある開閉機構95が設けられる。三室型電解槽2Aのアノード室22にて生成される酸性電解水は、配管96を介して三室型電解槽2Aのカソード室21に送られる。三室型電解槽2Aのカソード室21にて生成されるアルカリ性電解水は、配管95を介してアルカリ性電解水排出口87に送られる。三室型電解槽2Aの他の要素24、25、211、221は、三室型電解槽2の要素24、25、211、221と同様である。
【0033】
アルカリ性電解水生成用の三室型電解槽2Aは、三室型電解槽2よりもカソード室21でNa等の陽イオンを除去できる。本実施形態では、三室型電解槽2Aの中間室23の循環追加処理後の電解質水溶液を電解質循環部5Aに送ることにより、より酸性度が高く、一室型電解槽3での微酸性電解水の生成に適した電解質水溶液を電解質循環部5Aにて生成することができる。当該電解質水溶液を電解質循環部5Aから一室型電解槽3に送ることで、一室型電解槽3にて安定した微酸性電解水を生成できる。
【0034】
図6は、電解質循環部5Aにおける電解質水溶液の流入、流出の位置関係を説明するための図である。
電解質循環部5Aには、三室型電解槽2Aの中間室23への電解質水溶液の第4流出口591が、方向Xにおいて、第1流入口53よりも下流、かつ第2流出口55よりも上流にある、本実施形態では、第2流入口56よりも上流にある。電解質循環部5Aには、三室型電解槽2Aの中間室23からの電解質水溶液の第4流入口592が、方向Xにおいて、第1流出口54よりも上流にある。電解質循環部5Aのその他の構成は、図3の電解質循環部5と同様である。電解質循環部5Aにおいても、電解質オーバーフロータンク6からの電解質水溶液の第3流入口58は、方向Xにおいて、第2流出口55の上流および下流にそれぞれあってもよい。各口53~58、591、592の上記位置は、例示であり、適宜に設定できる。
【0035】
なお、電解水生成装置1Aは、開閉機構85を閉めて三室型電解槽2を駆動させず、アルカリ性電解水生成用の三室型電解槽2A(本発明の第1の三室型電解槽に相当)および酸性電解水生成用(例えば微酸性電解水生成用)の一室型電解槽3を駆動させてもよい。または、図9図10に示すように、電解水生成装置1Bは、三室型電解槽2を備えず、三室型電解槽2A(本発明の第1の三室型電解槽に相当)および一室型電解槽3を備えていてもよい。これらの場合でも、電解水生成装置1Bは、三室型電解槽2Aおよび電解質循環部5Dの作用により、塩分濃度および酸性度が一室型電解槽3での微酸性電解水の生成に適した電解質水溶液を電解質循環部5D内で生成し、一室型電解槽3に送ることができる。図10の各口53~55、58、591、592の位置は、図6と同様の位置となっているが、例示であり、適宜に設定できる。第3流入口58は、方向Xにおいて、第2流出口55の上流および下流にそれぞれあってもよい。
【0036】
(第3実施形態)
図7は、電解質循環部の他の実施形態5Bの構成を説明するための図である。
第3の実施形態の電解水生成装置は、電解水生成装置1Aにおいて、アルカリ生成用の三室型電解槽2Aを、通常の三室型電解槽2と同じ構成の三室型電解槽2Bに替えたものである。電解質循環部5Bには、三室型電解槽2Bの中間室23への第5流出口593が、方向Xにおいて、第1流入口53の下流、かつ第2流入口56の上流にある。電解質循環部5Bには、三室型電解槽2Bの中間室23からの第5流入口594が、方向Xにおいて、第2流入口56の下流、かつ第2流出口55の上流にある。各口53~58、593、594の上記位置は、例示であり、適宜に設定できる。第3流入口58は、方向Xにおいて、第2流出口55の上流および下流にそれぞれあってもよい。
【0037】
本実施形態でも、三室型電解槽2Bにより、三室型電解槽2、2Bと電解質循環部5Bの間で循環する電解質水溶液の酸性度をより高めることができ、一室型電解槽3に、より酸性度が高く電気分解に適した電解質水溶液を送ることができる。
【0038】
(第4実施形態)
図8は、電解質循環部の他の実施形態5Cの構成を説明するための図である。
第4の実施形態の電解水生成装置は、三室型電解槽2、2A、2Bを備える。本実施形態では、電解質循環部5Cにおいて、三室型電解槽2Aの中間室23への第4流出口591Cが、方向Xにおいて、第2流入口56の下流にある点が、第2実施形態の図6の第4流出口591と異なる。各口53~58、591C、592~594の上記位置は、例示であり、適宜に設定できる。第3流入口58は、方向Xにおいて、第2流出口55の上流および下流にそれぞれあってもよい。
【0039】
本実施形態では、三室型電解槽2A、2Bにより、三室型電解槽2、2A、2Bと電解質循環部5Cの間で循環する電解質水溶液の酸性度をさらに高めることができ、一室型電解槽3に、酸性度が高く電気分解に適した電解質水溶液を送ることができる。
【0040】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0041】
1、1A~1B…電解水生成装置、2…三室型電解槽(本発明の第1の三室型電解槽に相当)、2A…三室型電解槽(図5では、三室型電解槽2の駆動時には本発明の第2の三室型電解槽に相当し、三室型電解槽2の停止時には本発明の第1の三室型電解槽に相当、図9では本発明の第1の三室型電解槽に相当)、3…一室型電解槽、4…電解質供給部、5、5A~5D…電解質循環部、6…電解質オーバーフロータンク(本発明の余剰循環部に相当)、21…カソード室(本発明の第1カソード室に相当、三室型電解槽2の駆動時の図5の三室型電解槽2Aのカソード室21は本発明の第2カソード室に相当)、22…アノード室(本発明の第1アノード室に相当、三室型電解槽2の駆動時の図5の三室型電解槽2Aのアノード室22は本発明の第2アノード室に相当)、23…中間室(本発明の第1中間室に相当、三室型電解槽2の駆動時の図5の三室型電解槽2Aの中間室23は本発明の第2中間室に相当)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する第1中間室と、前記第1中間室からイオン化した電解質が供給される第1アノード室及び第1カソード室と、を有する第1の三室型電解槽と、
一室型電解槽と、
電解質供給部と、
電解質水溶液が前記電解質供給部から供給されるとともに、前記第1中間室との間で電解質水溶液を循環させ、かつ前記一室型電解槽に電解質水溶液を供給する電解質循環部と、
前記電解質循環部との間に電解質水溶液の循環経路が形成され、前記電解質循環部において前記第1中間室および前記一室型電解槽への電解質水溶液の供給量よりも前記電解質供給部および前記第1中間室からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液が、前記循環経路中のポンプの駆動により前記電解質循環部との間で循環電解質オーバーフロータンクと、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記第1アノード室から酸性電解水が供給される第1配管と、原水が流通し前記第1配管と合流する第2配管と、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記電解質循環部は、
前記電解質供給部からの電解質水溶液の第1流入口と、
前記一室型電解槽への電解質水溶液の第1流出口と、
前記第1流入口から前記第1流出口へ電解質水溶液が流れる方向において、前記第1流入口よりも下流にある、前記電解質オーバーフロータンクへの電解質水溶液の第2流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流入口よりも下流、かつ前記第2流出口よりも上流にある、前記第1中間室からの電解質水溶液の第2流入口と、
前記流れる方向において、前記第2流入口よりも上流にある、前記第1中間室への電解質水溶液の第3流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流出口よりも上流にある、前記電解質オーバーフロータンクからの電解質水溶液の第3流入口と、を備えること特徴とする電解水生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解水生成装置において、
前記第3流入口は、前記流れる方向において、前記第2流出口の上流および下流にそれぞれあること特徴とする電解水生成装置。
【請求項5】
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する第1中間室と、前記第1中間室からイオン化した電解質が供給される第1アノード室及び第1カソード室と、を有する第1の三室型電解槽と、
一室型電解槽と、
電解質供給部と、
電解質水溶液が前記電解質供給部から供給されるとともに、前記第1中間室との間で電解質水溶液を循環させ、かつ前記一室型電解槽に電解質水溶液を供給する電解質循環部と、
前記電解質循環部において前記第1中間室および前記一室型電解槽への電解質水溶液の供給量よりも前記電解質供給部および前記第1中間室からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液を前記電解質循環部との間で循環させる余剰循環部と、
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質が消費された電解質水溶液を排出する第2中間室と、前記第2中間室からイオン化した電解質が供給される第2アノード室及び第2カソード室と、前記第2アノード室と前記第2カソード室とを連結し、前記第2アノード室が生成する酸性電解水を前記第2カソード室に送る第3配管と、を有する第2の三室型電解槽と、を備え、
前記電解質循環部は、前記第2中間室との間で電解質水溶液を循環させること特徴とする電解水生成装置。
【請求項6】
求項5に記載の電解水生成装置において、
前記電解質循環部は、
前記電解質供給部からの電解質水溶液の第1流入口と、
前記一室型電解槽への電解質水溶液の第1流出口と、
前記第1流入口から前記第1流出口へ電解質水溶液が流れる方向において、前記第1流入口よりも下流にある、前記余剰循環部への電解質水溶液の第2流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流入口よりも下流、かつ前記第2流出口よりも上流にある、前記第1中間室からの電解質水溶液の第2流入口と、
前記流れる方向において、前記第2流入口よりも上流にある、前記第1中間室への電解質水溶液の第3流出口と、
前記流れる方向において、前記第1流出口よりも上流にある、前記余剰循環部からの電解質水溶液の第3流入口と、
前記流れる方向において、前記第1流入口よりも下流、かつ前記第2流出口よりも上流にある、前記第2中間室への電解質水溶液の第4流出口と、
前記流れる方向において、前記第2流出口よりも下流、かつ、前記第1流出口よりも上流にある、前記第2中間室からの電解質水溶液の第4流入口と、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電解水生成装置において、
前記第1の三室型電解槽は、前記第1アノード室と前記第1カソード室とを連結し、前記第1アノード室が生成する酸性電解水を前記第1カソード室に送る連結配管を有することを特徴とする電解水生成装置。