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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007045
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240111BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240111BHJP
   G06M 11/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H04N7/18 D
B61L25/02 Z
G06M11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108224
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】507049175
【氏名又は名称】株式会社大阪メトロサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小作 愼一
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC03
5C054FC05
5C054FC12
5C054FC14
5C054FD03
5C054FE11
5C054FE28
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA19
5C054HA26
5H161AA01
5H161BB20
5H161DD20
5H161FF07
5H161GG11
5H161GG16
(57)【要約】
【課題】車両において乗車した人に関わる状態を監視することができるようにすることである。
【解決手段】各車両1に設けられた複数の撮像装置11により、各1車両の内部を複数の撮像領域A1~A8に分割して撮像し、複数の撮像装置11で撮像された画像をサーバ22で合成し、サーバ22において、各車両1を対象として、合成された画像に含まれる人を計数し、人の乗降が不可能な状態である場合に、計数された各車両1における人の計数値の増減に応じて、各車両1を対象として異常状態を判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が乗降可能な車両が複数連結されており、乗車した人が隣接した車両間で移動可能な車両列を監視対象として、各車両内の状態を監視する監視システムであって、
前記各車両に設けられ、各車両の内部を複数の領域に分割して撮像する複数の撮像装置と、
前記各車両を対象として、前記複数の撮像装置で撮像された画像を合成する画像合成部と、
前記各車両を対象として、前記画像合成部により合成された画像に含まれる人を計数する計数部と、
前記各車両において人の乗降が不可能な状態である場合に、前記計数部により計数された前記各車両における人の計数値の増減に応じて、前記各車両を対象として異常状態を判定する判定部とを備えた、監視システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記計数部による人の計数値の減少率が閾値以上となった前記車両を、異常状態が生じた車両であると判定する、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記計数部による人の計数値の減少率が第1閾値以上となった第1車両があり、前記第1車両における人数の減少に応じて前記計数部による人の計数値の増加率が第2閾値以上となった第2車両がある場合に、前記第1車両を、異常状態が生じた車両であると判定する、請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記判定部は、さらに、前記各車両を対象として、前記画像合成部により合成された画像の輝度変化に応じて、火災が発生したことを判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車等の車両を監視する従来の監視システムとしては、列車の内側および外側に設けられた監視カメラにより、列車の内側および外側に備えた各種の機器を撮像し、撮像した画像のデータを列車の内部に設けられた表示装置に表示するとともに、当該表示装置において異常発生箇所を表示画面上に表示するものがあった(特許文献1)。
【0003】
また、列車等の車両において撮像した画像のデータの送信および受信をするシステムとしては、車両で撮像した画像のデータについて、車両に設けられた送信装置から通信ネットワークを介して送信し、そのように送信された画像のデータを車両の外部に設置されたサーバ等の情報処理装置において受信するシステムがあった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-129907号公報
【特許文献2】特開2021-93691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の監視システムでは、車両において乗車した人に関わる異常状態等、乗車した人に関わる状態を確認することができないという問題があった。
【0006】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、車両において乗車した人に関わる状態を監視できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による監視システムは、人が乗降可能な車両が複数連結されており、乗車した人が隣接した車両間で移動可能な車両列を監視対象として、各車両内の状態を監視する監視システムであって、前記各車両に設けられ、各車両の内部を複数の領域に分割して撮像する複数の撮像装置と、前記各車両を対象として、前記複数の撮像装置で撮像された画像を合成する画像合成部と、前記各車両を対象として、前記画像合成部により合成された画像に含まれる人を計数する計数部と、前記各車両において人の乗降が不可能な状態である場合に、前記計数部により計数された前記各車両における人の計数値の増減に応じて、前記各車両を対象として異常状態を判定する判定部とを備える。
【0008】
前記判定部は、前記計数部による人の計数値の減少率が閾値以上となった前記車両を、異常状態が生じた車両であると判定してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記計数部による人の計数値の減少率が第1閾値以上となった第1車両があり、前記第1車両における人数の減少に応じて前記計数部による人の計数値の増加率が第2閾値以上となった第2車両がある場合に、前記第1車両を、異常状態が生じた車両であると判定してもよい。
【0010】
前記判定部は、さらに、前記各車両を対象として、前記画像合成部により合成された画像の輝度変化に応じて、火災が発生したことを判定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、車両において乗車した人に関わる状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】監視システムにおけるカメラの配置例を示す平面図である。
図2】監視システムにおける各車両内での複数のカメラの配置と複数のカメラの撮像領域とを示す図である。
図3】監視システムにより各車両の内部で撮像される画像例を示す図である。
図4】監視システムの全体構成例を示すブロック図である。
図5】監視システムにおける車両の制御装置の情報処理例を示すフローチャートである。
図6】監視システムにおける情報処理センタのサーバの情報処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
<監視システム10における撮像装置11の配置例>
図1は、監視システム10における撮像装置11の配置例を示す模式的な平面図である。図1では、車両1において、天井、窓、扉、座席等の撮像装置11の配置説明に不要なものが省略された平面図が示されている。図1では、連結された複数の車両1よりなる列車100において、各車両1に設けられた複数の撮像装置11の配置位置が示される。
【0015】
図1において、列車100は、複数の車両1が複数の連結部18により1列に連結された車両列よりなる電車等の鉄道車両である。車両1は、人が乗降可能な客車である。各連結部18では、連結された車両1間で人が移動可能な連結通路が設けられている。各車両1内では、天井部分に、複数の撮像装置11が取付けられている。撮像装置11は、動画を撮像可能なカメラよりなる。
【0016】
図2は、監視システム10における各車両1内での複数の撮像装置11の配置と複数の撮像装置11の撮像領域A1~A8とを示す図である。
【0017】
図2においては、複数の撮像装置11の他に、複数の撮像装置11による撮像領域A1~A8と、複数の扉19とが示されている。車両1においては、図中で矢印により示される進行方向に対して、左右両側に、複数の扉19が設けられている。扉19は、乗客の乗降に用いられるものであり、例えば両開きまたは片開きの自動扉である。
【0018】
複数の撮像装置11は、動画を撮像可能な撮像装置である。複数の撮像装置11は、車両1の天井部分に取付けられ、車両1の内部空間全体を上方から下方に向けて撮像可能である。複数の撮像装置11は、車両1の車内において相互に離隔配置されている。
【0019】
具体的に、複数の撮像装置11は、車両1の車内の内部空間を複数の撮像領域A1~A8に分割して撮像可能な位置に分散して配置されている。複数の撮像領域A1~A8は、1つの領域が1つの撮像装置11に対応する撮像領域である。このような配置により、複数の撮像装置11は、車両1の車内の内部空間を分割して撮像することにより、車両1の車内における内部空間の全ての領域を上方から撮像することが可能である。
【0020】
図2では、複数の撮像装置11の配置状態の一例として、車両の進行方向に2列に並ぶ態様で、複数の撮像装置11が列設された例が示されている。図2では、各撮像装置11が、各扉19の近傍に配置された例が示されている。
【0021】
なお、複数の撮像装置11の配置は、図2の配置に限らず、複数の撮像装置11を用いて車両1の内部空間の全てを撮像することが可能な配置であれば、どのような配置状態であってもよい。例えば、複数の撮像装置11の配置は、各撮像装置11が、各扉19の近傍以外の位置に配置された配置状態であってもよい。
【0022】
<監視システム10における撮像装置11の撮像例>
次に、監視システム10における撮像装置11の撮像例を説明する。図3は、監視システム10により各車両1の内部で撮像される画像例を示す図である。図3においては、車両1の内部で人5および炎6が撮像された例が示されている。
【0023】
図3では、次のような画像が示されている。撮像領域A1,A2,A4,A6,A7,A8の画像は、人5が撮像された画像である。撮像領域A5の画像は、人5がいない画像である。撮像領域A3の画像が、炎6が撮像された画像である。
【0024】
複数の撮像装置11の撮像により得られる画像は、撮像領域A1~A8毎に撮像された画像である。監視システム10では、後述のサーバ22において、複数の撮像装置11の撮像で得られる撮像領域A1~A8の全ての画像データを繋ぎ合わせて1つの画像データを合成する画像処理が行なわれる。撮像領域A1~A8の全ての画像データが合成されると、複数の撮像装置11での撮像により得られた画像データが、例えば図3に示すような各車両1の内部の全領域を示す一体的な画像データに加工される。
【0025】
複数の撮像装置11での撮像により得られる画像データでは、画像の輪郭等を含み、人であることを特定可能な特徴を有する画像を人5の画像として識別することが可能である。また、このような画像データにおいては、画像の輝度等を含み、炎6であることを特定可能な特徴を有する画像を炎6の画像として識別可能である。例えば炎6が発生すると輝度が異常に高く変化するので輝度の変化に基づき、炎6の画像を識別可能となる。
【0026】
図3に示すような、監視システム10では、各車両1の内部における全ての撮像領域A1~A8の一体的な画像データが得られると、その画像データでは、人5の画像を識別し、人5の人数を計数する情報処理をすることが可能となる。また、監視システム10では、このような一体的な画像データにおいて、炎6の画像を識別し、炎6の発生位置を特定する情報処理をすることが可能となる。
【0027】
監視システム10では、各車両1の内部で識別された人5の人数を計数できると、各車両1の内部に乗車している人5の人数の変化の有無、および、変化した人数を確認することが可能となる。これにより、監視システム10では、例えば事件の発生等により、ある車両1に乗車している人5の人数が急減した場合等の条件が成立した場合に、そのような異常状態が生じたことを判断することができる。
【0028】
監視システム10では、各車両1の内部で炎6の画像を特定することができると、例えば火災の発生の有無、および、火災が発生した位置を確認することが可能となる。これにより、各車両1の内部で火災が発生したこと、および、火災が発生した位置を判断することができる。
【0029】
<監視システム10の全体構成例>
次に、監視システム10の全体構成例を説明する。図4は、監視システム10の全体構成例を示すブロック図である。図4においては、監視システム10が設けられる鉄道管理システム101が示されている。
【0030】
図4を参照して、鉄道管理システム101は、車両1が運行される鉄道機関に設けられ、列車100の車両1、情報処理センタ2、指令所3、および、駅4に設けられた情報処理機器がデータ通信可能に接続されることにより構成されている。
【0031】
車両1においては、複数の撮像装置11、加速度センサ12、制御装置13、および、通信装置14が設けられている。複数の撮像装置11は、図1図3に示される撮像装置11である。加速度センサ12は、車両1の加速度を検出するセンサである。加速度センサ12は、列車100において、少なくとも1つの車両1に設けられている。
【0032】
制御装置13は、コンピュータよりなり、画像処理および通信処理を含む各種の情報処理を実行する。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、外部記憶装置等)および、入出力ポート等を含む(以下のコンピュータも同様の構成を有する)。
【0033】
制御装置13は、複数の撮像装置11から送られる画像データ、および、加速度センサ12から送られる加速度の検出信号を受ける。制御装置13は、複数の撮像装置11から送られる画像データに基づき、前述した画像の合成等の画像処理を実行可能である。
【0034】
制御装置13は、複数の撮像装置11により撮像されて合成された画像データ、および、加速度センサ12により検出された加速度の検出データを通信装置14に送り、それらのデータを通信装置14から情報処理センタ2に送信する通信制御を実行可能である。
【0035】
情報処理センタ2は、列車100が運行される鉄道機関における統括的な情報処理を実行する情報処理システムが設けられた施設である。情報処理センタ2には、通信装置21,23およびサーバ22が設けられている。通信装置21は、車両1の通信装置14と通信可能である。通信装置23は、指令所3の通信装置31と通信可能である。サーバ22は、コンピュータよりなり、各種の情報処理を実行することが可能である。サーバ22のコンピュータには、図示を省略する入力装置および表示装置等が接続されている。
【0036】
情報処理センタ2においては、通信装置21が、車両1の通信装置14から送信されたデータを受信し、受信したデータをサーバ22に送る。サーバ22は、通信装置14から送信されてきたデータのうち、加速度の検出データに基づいて、車両1が通常走行中であるか否か等の車両1の走行状態を判定することが可能である。
【0037】
サーバ22は、通信装置14から送信されてきたデータのうち、複数の撮像装置11により撮像されて合成された画像データに基づいて、人5の識別、および、人5の計数を実行することが可能である。また、サーバ22は、このような画像データに基づいて、炎6の画像の識別を実行することが可能である。
【0038】
また、サーバ22は、通信装置14から送信されてきたデータのうち、加速度の検出データに基づいて、車両1が入庫移動中か否かを判定し、入庫移動中の車両1において人5が残存しているか否かを判定することが可能である。
【0039】
サーバ22は、扉19が閉状態である例えば通常走行中における人5の計数値の変化に基づき、異常状態が生じた車両1を特定可能である。サーバ22は、炎6の画像を識別することに基づき、異常状態が生じた車両1を特定可能である。サーバ22は、車庫への移動(以下、入庫という)中において、基本的に乗客が乗車していない車両1の内部に人5が残存しているという判定に基づき、異常状態が生じた車両1を特定可能である。
【0040】
サーバ22は、前述のような異常状態が生じた車両1を特定した場合に、異常状態が生じた車両1に関する各種データを通信装置23に送り、それらのデータを通信装置23から指令所3に無線通信により送信する通信制御を実行することが可能である。
【0041】
車両1に設けられた複数の撮像装置11、加速度センサ12、制御装置13、および、通信装置14と、情報処理センタ2に設けられた通信装置21,23およびサーバ22とにより、監視システム10が構成される。
【0042】
指令所3は、鉄道の乗務員(機関士、運転士、車掌等)および駅等に業務指示を行う現業機関である。指令所3には、通信装置31,35、制御装置32、および、表示装置33が設けられている。通信装置31は、情報処理センタ2の通信装置23と通信可能である。通信装置35は、車両1の通信装置15および駅4の通信装置41と通信可能である。通信装置35と車両1の通信装置15とは、無線通信により通信をする。制御装置32は、コンピュータよりなり、各種の情報処理を実行することが可能である。表示装置33は、液晶表示装置等の画像表示装置よりなり、各種の情報を表示可能である。制御装置32には、入力装置等(図示省略)が接続されている。
【0043】
指令所3では、通信装置31が、車両1の通信装置14から送信されたデータを受信し、受信したデータを制御装置32に送る。制御装置32は、通信装置31から送られてきたデータに基づき、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを表示装置33に表示するための処理を実行し、これらの情報を表示するための表示信号を表示装置33に送る。このような表示信号により、表示装置33では、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを示す画像が表示される。これにより、指令所3の職員は、異常状態が生じた車両1を認識できるとともに、異常状態の内容を認識できる。
【0044】
さらに、制御装置32は、通信装置31から送信されてきたデータに基づいて、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを示すデータを、異常が発生した列車100において乗務員室が設けられた車両1の通信装置15に対して無線通信により送信する。
【0045】
列車100において、乗務員室が設けられた車両1は、監視システム10を構成する装置に加え、通信装置15、制御装置16、および、表示装置17等が設けられている。通信装置15は、指令所3の通信装置35と無線通信により通信可能である。制御装置16は、コンピュータよりなり、各種の情報処理を実行可能である。制御装置16には、入力装置等(図示省略)が接続されている。表示装置17は、液晶表示装置等の画像表示装置よりなり、各種の情報を表示することが可能である。
【0046】
通信装置15は、指令所3の通信装置35から送信されたデータを受信し、受信したデータを制御装置16に送る。制御装置16は、通信装置15から送られてきたデータに基づき、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを表示装置17に表示するための表示信号を表示装置17に送る。このような表示信号により、表示装置17では、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを示す画像が表示される。これにより、列車100の乗務員は、異常状態が生じた車両1を認識することができるとともに、異常状態の内容を認識することができる。なお、各車両1において複数の撮像装置11で撮像されて制御装置13で合成した画像データを直接的に制御装置16に送り、その画像データに基づき、制御装置16が各車両1の画像を表示するための表示信号を表示装置17に送り、表示装置17において各車両1の画像を表示するようにしてもよい。その場合には、車両1と情報処理センタ2との間の通信等、制御装置16が異常状態の内容を示す情報を得るための通信経路が遮断された状態等の通信障害が生じた場合でも、表示装置17で表示される画像により乗務員が各車両1の状態を確認することが可能となる。
【0047】
駅4では、通信装置41、制御装置42、および、表示装置43が設けられている。通信装置41は、指令所3の通信装置35と通信可能である。制御装置42は、コンピュータよりなり、各種の情報処理を実行することが可能である。制御装置42には、入力装置等(図示省略)が接続されている。表示装置43、液晶表示装置等の画像表示装置よりなり、各種の情報を表示することが可能である。
【0048】
通信装置41は、指令所3の通信装置35から送信されたデータを受信し、受信したデータを制御装置42に送る。制御装置42は、通信装置35から送信されてきたデータに基づいて、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを表示装置43に表示するための表示信号を表示装置43に送信する。このような表示信号により、表示装置43では、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを示す画像が表示される。これにより、駅4の駅員は、異常状態が生じた車両1を認識することができるとともに、異常状態の内容を認識することができる。
【0049】
このような鉄道管理システム101では、各車両1において異常状態が発生した場合に、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とが、指令所3の制御装置32、駅4の制御装置42、および、列車100の制御装置16に送信されるので、指令所3、駅4、および、列車100の乗務員室において、情報を共有することが可能となるため、各車両1に異常状態が生じた場合の対処を早急に行なうことができる。
【0050】
<車両1の制御装置13の情報処理例>
次に、車両1の制御装置13の情報処理例を説明する。以下に説明する情報処理は、列車100を構成する各車両1において個別に実行される。図5は、監視システム10における車両1の制御装置13の情報処理例を示すフローチャートである。
【0051】
制御装置13は、以下の処理を実行する。ステップS1により、複数の撮像装置11により撮像された画像の画像データを制御装置13が取得する。ステップS2により、制御装置13は、ステップS1で取得した複数の画像データを合成する画像処理をする。
【0052】
具体的に、ステップS2では、図2のように8つの撮像装置11により8つの撮像領域A1~A8に分割して撮像された画像を繋ぎ合せ、例えば図3に示すような車両1の車内の全ての撮像領域A1~A8を一体化して示す画像となるように画像データを合成する。制御装置13のステップS2により、各車両1を対象として、複数の撮像装置11で撮像された画像を合成する画像合成部が構成されている。図3に示すような車両1の車内の全ての撮像領域A1~A8を一体化して示す画像は、車両1の車内の全領域を俯瞰した態様で示すことができるので、人5の数の計数を容易に行なうことができ、さらに、人5の移動方向を確認したい場合は、その確認を容易化することができる。
【0053】
ステップS3により、制御装置13は、ステップS2で合成した画像データを圧縮する処理をして通信装置14から送信させる。このように画像データを合成し、圧縮して送信することにより、例えば地下鉄の車両のように十分な通信帯域を確保することが難しい車両1において、容易にデータ通信を行なうことができる。
【0054】
加速度センサ12が設けられた車両1では、ステップS4により、加速度センサ12の検出データ(以下、加速度検出データという)を制御装置13が取得する。ステップS5により、制御装置13は、ステップS4で取得した加速度検出データを通信装置14から送信させる。
【0055】
<情報処理センタ2のサーバ22の情報処理例>
次に、情報処理センタ2のサーバ22の情報処理例を説明する。図6は、監視システム10における情報処理センタ2のサーバ22の情報処理例を示すフローチャートである。
【0056】
サーバ22は、以下のような処理を実行する。ステップS11により、サーバ22は、図5に示すステップS3,S5で車両1の通信装置14から送信され、通信装置21で受信した画像データおよび加速度検出データを、サーバ22が取得する。
【0057】
ステップS12により、サーバ22は、各車両1から受信した画像データにおいて、人5の画像を認識する処理をする。これにより、サーバ22は、各車両1に乗車している人5を識別することができる。具体的に、サーバ22は、ディープラーニングにより学習するAI(Artificial Intelligence)技術を用いた画像認識により、各車両1から受信した画像データ中において、人5の画像を抽出し、その抽出した画像を人5の画像として認識する。これにより、ステップS12では、各車両1から受信した画像データに基づいて、各車両1に乗車している人5を正確に認識することができる。
【0058】
ステップS13により、サーバ22は、各車両1から受信した画像データにおいて、第1輝度以上の画像を認識する処理をする。第1輝度は、炎6となる可能性がある中輝度に設定されている。これにより、サーバ22は、各車両1において、炎6となる可能性がある輝度の発光体を識別できる。具体的に、サーバ22は、第1輝度の閾値(第3閾値)をメモリに記憶しておき、各車両1において、当該第1輝度以上の画像を識別する。サーバ22は、各車両1について、第1輝度以上の画像のデータをメモリに記憶しておき、そのデータを、後述するステップS16での炎の判定に用いる。
【0059】
ステップS14により、サーバ22は、ステップS12で認識された人5の数を計数する。これにより、サーバ22は、各車両1で認識された人5の合計数を把握できる。サーバ22は、ステップS14が実行される毎に、各車両1について、ステップS14での計数により得られた人5の合計数のデータを一定期間に亘りメモリに記憶する。サーバ22のステップS14により、各車両1を対象として、合成された画像に含まれる人を計数する計数部が構成されている。
【0060】
ステップS15により、サーバ22は、各車両1について、ステップS14で計数された人5の数(メモリに記憶された合計数のデータ)に基づいて、人5が急減した車両1を判定する処理を行なう。具体的に、サーバ22は、人5が急減したと判定可能な人の減少率の閾値(第1閾値)をメモリに記憶しておき、ステップS14で計数された各車両1の人5の合計数についての所定期間における減少率を演算し、その減少率が第1閾値以上となった場合に、該当する車両1を人5が急減した車両1と判定する。例えば、5分間における車両1での人5の減少率が20%(第1閾値)以上となった場合に、該当する車両1を人5が急減した車両1であると判定する。この場合の減少率は、例えば5分前の車両1内の人5の計数値に対して現在の車両1内の人5の計数値が減少した割合である。
【0061】
ステップS16により、サーバ22は、各車両1について、ステップS13で認識された第1輝度以上の画像について、画像の輝度が異常に増加した車両1があるか否かを判定する。具体的に、サーバ22は、炎6が発生したときに生じ得る第2輝度である第4閾値(第3閾値よりも高輝度)をメモリに記憶しておき、ステップS13で認識された第1輝度以上であった画像について、今回の判定により第2輝度以上に増加した場合に、画像の輝度が異常に増加したと判定する。
【0062】
ステップS16で画像の輝度が異常に増加した車両1がないと判定された場合は、ステップS18に進む。一方、ステップS16で画像の輝度が異常に増加した車両1があると判定された場合は、ステップS17により、画像の輝度が異常に増加した車両1を異常が生じた車両(以下、異常車両という)であると特定し、ステップS18に進む。
【0063】
ステップS18により、サーバ22は、車両1が通常走行中であるかどうかを判定する。具体的に、サーバ22は、ステップS11で取得した加速度センサ12の検出データに基づいて、車両1が通常走行中である否かを判定する。例えば、加速度センサ12は、車両1が停止状態から発進して加速する第1行程において進行方向への加速度を検出し、車両1が一定速度で走行中の第2行程において加速度をほぼ検出せず、車両1が走行状態から減速して停止する第3行程において進行方向と逆方向への加速度を検出する。
【0064】
ステップS18において、サーバ22は、加速度センサ12の検出データに基づいて、車両1が第1行程~第3行程のうちのいずれかの状態にあるか否かを判断し、第1行程~第3行程のうちのいずれかの状態にある場合に、車両1が通常走行中であると判定する。
【0065】
車両1が通常走行中である場合は、扉19が閉状態であり、基本的に車両1内の人5が急減または急増し得ない状態である。ステップS18において車両1が通常走行中ではない場合は、後述するステップS21に進む。一方、ステップS18において車両1が通常走行中である場合は、ステップS19に進む。
【0066】
なお、ステップS18においては、扉19が閉状態であり、基本的に車両1内の人5が急減または急増し得ない状態として、発車した駅と到着予定の駅との間の経路で車両1が緊急停止中の状態であるか否かを判定し、緊急停止中の状態である場合にステップS19に進み、緊急停止中の状態でない場合にステップS21に進むようにしてもよい。サーバ22は、例えば、加速度センサ12の検出データに基づいて、走行した車両1の第2行程の期間が、予め定められた駅間距離に対応する期間よりも短い期間となり、その後に第3行程に至って停止している状態である場合に、発車した駅と到着予定の駅との間の経路で車両1が緊急停止中の状態であると判定すればよい。
【0067】
また、ステップS18においては、扉19が閉状態であり、基本的に車両1内の人5が急減または急増し得ない状態として、車両1が通常走行中である場合と、車両1が緊急停止中の状態である場合とのいずれかの状態に該当するか否かを判定し、いずれかの状態に該当する場合にステップS19に進み、いずれの状態にも該当しない場合にステップS21に進むようにしてもよい。なお、車両1が緊急停止中の状態であることは、車両1から緊急停止中を示す情報が送信された場合に、緊急停止中の状態であると判断してもよい。
【0068】
サーバ22は、ステップS19により、ステップS15の判定結果に基づいて、人5が急減した車両1があるか否かを判定する。ステップS19で人5が急減した車両1がない場合、サーバ22は、処理を終了する。一方、ステップS19で人5が急減した車両1がある場合、サーバ22は、ステップS20により、人5が急減した車両1を異常車両であると特定し、処理を終了する。ステップS18で人5が急減した車両1がある場合に、人5が急減した車両1を異常車両であると特定する理由は、次のとおりである。
【0069】
車両1が通常走行中(緊急停止中も同様)である場合のように扉19が閉状態である場合は、基本的に、車両1内の人5が急減することは考えられない。しかし、列車100での隣接する車両1間では、連結部18の連結通路を通って人5が移動可能である。ある車両1で、車両1内の人5が当該車両1から別の車両1に避難するような異常状態が発生した場合に、連結通路を通り多数の人5が隣接する車両1に移動する状況が生じ得る。この場合は、連結通路を通る人5の移動により、異常状態が発生した車両1内の人5が急減すると考えられる。したがって、このような理由により、ステップS20では、人5が急減した車両1がある場合に、人5が急減した車両1を異常車両であると特定する。サーバ22のステップS19,S20により、計数された各車両1における人5の計数値の増減に応じて、各車両1を対象として異常状態を判定する判定部が構成されている。
【0070】
サーバ22は、ステップS21により、車両1が車庫に入庫するために移動中であるか否かを判定する。列車100は、営業運転が終了した場合等に、車両1を車庫に入庫させるために、側線および引き上げ線等、営業運転で走行する本線の線路とは別に設けられた線路上を走行する。したがって、車両1が車庫に入庫する場合には、本線を通る走行パターンとは異なる入庫時走行パターン(通常走行の走行パターン、緊急停止前の走行パターン)で車両1が走行する。ステップS18では、加速度センサ12の検出データに基づいて、例えば入庫時走行パターンで車両1が走行中である場合に、車両1が車庫に入庫するために移動中であると判断する。
【0071】
ステップS21において車両1が車庫に入庫するために移動中ではない場合、サーバ22は、処理を終了する。例えば、車両1が営業運転中である場合に駅で停車している状態は、ステップS18で車両1が通常走行中(または緊急停止中)ではないと判定され、かつ、ステップS21で車両1が車庫に入庫するために移動中ではないと判定される。
【0072】
ステップS21において車両1が車庫に入庫するために移動中である場合、サーバ22は、ステップS22により、ステップS12での人5の認識結果に基づいて、人5が残存した車両1があるか否かを判定する。車両1が車庫に入庫するために移動中である場合は、乗客が車両1内に残存していない状態となるのが正常な状態である。
【0073】
ステップS22で人5が残存した車両1がない場合は、正常な状態であるので、サーバ22は、処理を終了する。一方、ステップS22で人5が残存した車両1がない場合は、異常な状態であるので、サーバ22がステップS23により、人5が残存している車両1を異常車両として特定し、処理を終了する。これにより、車両1が車庫に入庫するために移動中であるにも関わらず車両1内に人5が残存している場合には、その車両1が異常な状態であると判断することができる。
【0074】
以上に説明した実施の形態1では、ステップS19で、人5が急減した車両1があると判定された場合に、ステップS20で、人5が急減した車両1が異常車両として特定されるので、人5の乗降が不可能な状態で例えば各車両内の人数が変化する異常状態が発生したことのような、通常ではあり得ない異常状態を判定することが可能な監視ができる等、車両において乗車した人5に関わる状態を監視することができる。
【0075】
また、各車両1において異常状態が発生した場合に、各車両1から送信される画像データ等に基づいて、異常状態が発生したことをサーバ22において早急に判定することができ、指令所3、駅4、および、列車100の乗務員室において、異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とを早急に認識することができる。
【0076】
また、複数の撮像装置11が撮像した画像のデータを合成した画像が指令所3等において表示されるので、異常状態が生じていないときの各車両1の混雑状況および乗車人数を管理者が一目で確認でき、車両1の円滑な運行管理に役立たせることができる。
【0077】
また、ステップS14では、各車両1における人5の数を計数するので、その計数データを車両毎に1日単位でメモリに保存しておけば、時間帯毎の人流データおよび車両1毎の人流データを分析でき、車両1の円滑な運行管理に役立たせることができる。
【0078】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2として、情報処理センタ2のサーバ22において、ステップS19で人5が急減した車両1があると判定された場合に、ステップS20を実行せずに、人5が急減した車両1があることに対応して人5が急増した車両1があることを条件として、人5が急減した車両1を異常車両であると特定する例を説明する。
【0079】
実施の形態2の特徴的なステップは、図6において破線で示される。図6を参照して、情報処理センタ2のサーバ22では、実施の形態1のステップS15とステップS16との間において、ステップS15Aにより、各車両1について、ステップS14で計数された人5の数に基づいて、人5が急増した車両1を判定する処理を行なう。具体的に、サーバ22は、人5が急増したと判定可能な増加率の閾値(第2閾値)をメモリに記憶しておき、ステップS14で計数された各車両1での人5の合計数の所定期間における増加率を演算し、増加率が第2閾値以上である場合に、該当する車両1を人5が急増した車両1と判定する。例えば5分間における人5の増加率が10%(第3閾値)以上となった場合に、該当する車両1を人5が急増した車両1と判定する。この増加率は、例えば5分前の車両1内の人5の計数値に対する現在の車両1内の人5の計数値が増加した割合である。
【0080】
サーバ22は、ステップS19で人5が急減した車両1があると判定された場合に、ステップS24で、ステップS15Aでの判定結果に応じて、人5が急増した車両1があるか否かを判定する。ステップS24で急増した車両1がない場合、サーバ22は処理を終了する。一方、ステップ24で急増した車両1がある場合、サーバ22は、ステップS25により、ステップS19で急減したと判定された車両1と、ステップ15Aで急増したと判定された車両1との増減関係に基づき、異常車両を特定し、処理を終了する。
【0081】
具体的に、ステップS25では、次のように異常車両を特定する。ある車両1で事件等の異常状態が発生した場合には、当該車両1から人5が連結部18の接続通路を通り、隣接する車両1に避難する状況が生じ得る。その場合は、ある車両1で人5の計数値が急減することに応じて、隣接する車両1で人5の計数値が急増する。ステップS25では、ステップS19で人5が急減した車両1があり、かつ、ステップS24で人5が急増した車両1がある場合において、これらの車両1が隣接する車両1であることを条件として、ステップS19で人5が急減した車両1を異常車両として特定する。サーバ22のステップS19,S20,S24,S25により、計数された各車両1における人5の計数値の増減に応じて、各車両1を対象として異常状態を判定する判定部が構成されている。
【0082】
これにより、人5が急減した車両1を異常車両として特定する場合に、隣接した車両1で人5が急増したことが条件となるので、列車100全体における人5の増減の整合性を確認することにより、人5が急減した車両1を異常車両として特定する場合の異常状態の判定精度を向上させることができる。
【0083】
実施の形態2では、人5の乗降が不可能な状態で各車両1内の人数が減少したり、人数が増加したりする異常状態が発生する場合のような通常ではあり得ない異常状態を判定可能な監視ができる等、車両において乗車した人5に関わる状態を監視することができる。
【0084】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3として、図5のステップS2での画像データの合成処理を、車両1の制御装置13ではなく、情報処理センタ2のサーバ22で実行する例を説明する。
【0085】
実施の形態3の特徴的なステップは、図5および図6において破線で示される。図5を参照して、車両1の制御装置13は、ステップS1で複数の撮像装置11により撮像された画像の画像データを取得後、前述のステップS2,S3を実行せずに、ステップS1Aにより、ステップS1で取得した画像データを送信する。制御装置13は、ステップS1Aの実行後、前述のステップS4,S5を実行する。これにより、車両1の制御装置13では、ステップS1で取得した複数の画像データを、合成せずにサーバ22に送信する。
【0086】
図6を参照して、情報処理センタ2のサーバ22では、ステップS11で、図5に示すステップS30,S5で各車両1の通信装置14から送信され、通信装置21により受信された画像データおよび加速度センサ12の検出データを受信した後、ステップS11Aにより、受信した画像データに基づいて、8つの撮像装置11により8つの撮像領域A1~A8に分割して撮像された画像を繋ぎ合せ、例えば図3に示すような車両1の車内の全ての撮像領域A1~A8を一体化して示す画像となるように画像データを合成する。サーバ22のステップS11Aにより、各車両1を対象として、複数の撮像装置11で撮像された画像を合成する画像合成部が構成されている。
【0087】
ステップS11Aが実行された後、サーバ22は、前述したステップS12~S23、または、ステップS12~S26を実行する。
【0088】
以上のような実施の形態3では、車両1の制御装置13におけるデータ処理負担を軽減することができるという効果を得ることができる。
【0089】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0090】
[構成1] 人が乗降可能な車両(車両1)が複数連結されており、乗車した人が隣接した車両間で移動可能な車両列(列車100)を監視対象として、各車両(車両1)内の状態を監視する監視システム(監視システム10)であって、前記各車両(車両1)に設けられ、各車両(車両1)の内部を複数の領域(撮像領域A1~A8)に分割して撮像する複数の撮像装置(撮像装置11)と、前記各車両(車両1)を対象として、前記複数の撮像装置(撮像装置11)で撮像された画像を合成する画像合成部(制御装置13のステップS2、サーバ22のステップS11A)と、前記各車両(車両1)を対象として、前記画像合成部(ステップS2を実行する制御装置13、ステップS11Aを実行するサーバ22)により合成された画像に含まれる人を計数する計数部(ステップS14を実行するサーバ22)と、前記車両(車両1)において人の乗降が不可能な状態である場合(サーバ22のステップS19でYES)に、前記計数部により計数された前記各車両における人の計数値の増減に応じて、前記各車両を対象として異常状態を判定する判定部(サーバ22のステップS19,S20,S24,S25)とを備えた、監視システム(監視システム10)。
【0091】
このような構成によれば、車両の内部を複数の領域に分割して複数の撮像部により撮像し、撮像された画像を合成することで、車両の内部の全領域を合成した撮像画像を得ることができ、その撮像画像に含まれる人を計数することにより、車両に乗車している人数を確認できる。各車両において人の乗降が不可能な状態である場合において、計数された各車両における人の計数値の増減に応じて、各車両を対象として異常状態が判定されるので、人の乗降が不可能な状態で例えば各車両内の人数が減少したり、人数が増加したりする異常状態が発生したことのような通常ではあり得ない異常状態を判定することが可能な監視ができる等、車両において乗車した人に関わる状態を監視することができる。
【0092】
[構成2] 前記判定部(サーバ22)は、前記計数部による人の計数値の減少率が閾値(第1閾値)以上となった前記車両を、異常状態が生じた車両であると判定する(ステップS20)、前記[構成1]に記載の監視システム(監視システム10)。
【0093】
このような構成により、人の計数値の減少率が閾値以上となった車両を、異常状態が生じた車両であると判定するので、例えば車両内で起きた事件等により車両内の人数が減少したことのような異常状態が発生したことを判定可能な監視をすることができる。
【0094】
[構成3] 前記判定部(サーバ22)は、前記計数部による人の計数値の減少率が第1閾値(第1閾値)以上となった第1車両があり(ステップS19)、前記第1車両における人数の減少に応じて前記計数部による人の計数値の増加率が第2閾値(第2閾値)以上となった第2車両がある(ステップS24)場合に、前記第1車両を、異常状態が生じた車両であると判定する(ステップS25)、前記[構成1]に記載の監視システム(監視システム10)。
【0095】
このような構成により、人の計数値の減少率が第1閾値以上となった第1車両があり、第1車両における人数の減少に応じて人の計数値の増加率が第2閾値以上となった第2車両がある場合に、第1車両を異常状態が生じた車両であると判定するので、例えば第1車両で起きた事件等により第1車両の人数が減少し、それに連動して第2車両の人数が減少したことのような異常状態が発生したことを判定することが可能なるので、異常状態を判定する精度を向上させることができる。
【0096】
[構成4]
前記判定部(サーバ22)は、さらに、前記各車両を対象として、前記画像合成部により合成された画像の輝度変化に応じて、火災が発生したことを判定する(ステップS16,S17)、前記[構成1]~[構成3]のいずれかに記載の監視システム(監視システム10)。
【0097】
このような構成により、各車両を対象として、合成された画像の輝度変化に応じて、火災が発生したことを判定するので、車両において乗車した人に関わる状態の監視に加えて、車両内で火災の監視をすることが可能な監視システムを提供することができる。
【0098】
[構成5]
前記判定部(サーバ22)は、さらに、前記車両が入庫するための移動中である場合に、前記計数部により計数された各車両において人が計数された場合に、前記各車両を対象として異常状態を判定する(ステップS22,S23)、前記[構成1]~[構成4]のいずれかに記載の監視システム(監視システム10)。
【0099】
このような構成により、各車両を対象として、車両が入庫するための移動中であるにも関わらず、人が計数されることにより人が乗っていることが計数された場合に、人が乗っていない筈の状態で人が乗っているという異常状態が生じたことを判定できる。
【0100】
[実施の形態の変形例]
(1) 図1等に示す撮像装置11は、予め定められた撮像期間の間隔で静止画を撮像するカメラを用いてもよい。
【0101】
(2) 撮像装置11は、各車両1の壁部等のその他の位置に設けられてもよい。
【0102】
(3) サーバ22は、情報処理センタ2に設けられるものに限らず、クラウドサーバを用いてもよい。
【0103】
(4) 図6に示したようなサーバ22が実行する処理は、指令所3に設けたコンピュータである制御装置32により実行してもよく、指令所3に設けた制御装置32以外のコンピュータにより実行してもよい。
【0104】
(5) 車両1の走行状態については、加速度センサ12を用いて認識する例を示したが、これに限らず、車両1に設けられた速度センサの検出データで認識してもよい。
【0105】
(6) 車両1に乗車している人の検出は、AIを用いずに、AIのように学習することを要しないで人の画像の特徴を判定する特徴抽出判定処理により実行してもよい。
【0106】
(7) 異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とは、指令所3から、異常状態が発生した列車100に送信しないようにしてもよい。走行中の列車100で異常状態が生じた場合は、当該列車100の乗務員が対処することが人員数等の事情で困難であり、次に到着する駅の駅員が対処方法を検討しておき、当該列車100が次の駅に到着したときに駅員等が対処した方が適切な対処ができるからである。
【0107】
(8) 異常状態が生じた車両1を特定する情報と、異常状態の内容を示す情報とは、指令所3から、運行中の全ての列車100に送信してもよい。これにより、運行中の全ての列車100において、異常状態が発生した車両1の情報を共有することができ、鉄道管理システム101の全体における情報の混乱を防ぐことができる。
【0108】
(9) 今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合せても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 車両、100 列車、10 監視システム、A1~A8 撮像領域、11 撮像装置、22 サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6