(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070450
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電磁波センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180956
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小久保 眞生子
(72)【発明者】
【氏名】原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚城
(72)【発明者】
【氏名】青木 進
(72)【発明者】
【氏名】前川 和也
(72)【発明者】
【氏名】千里内 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕介
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB02
2G065BA12
2G065BA14
2G065BA33
2G065BA34
2G065BA38
2G065BE08
2G065CA12
2G065CA13
2G065CA21
(57)【要約】
【課題】電磁波の良好な検出精度が得られる電磁波センサを提供する。
【解決手段】第1の方向Xに延在する第1のリード配線9aと、第1の方向Xとは異なる第2の方向Yに延在する第2のリード配線9bと、第1のリード配線9aと電気的に接続されると共に、第2のリード配線9bと電気的に接続された電磁波検出部とを備え、第2のリード配線9bは、第1の方向X及び第2の方向Yとは直交する第3の方向Zに間隔が設けられて、第1のリード配線9aとは立体的に交差して配置されており、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線9bは、第3の方向Zから平面視したときに、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとが互いに重なる重畳部30において、一方のリード配線9bの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する第1の配線と、
前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の配線と、
前記第1の配線と電気的に接続されると共に、前記第2の配線と電気的に接続された電磁波検出部とを備え、
前記第2の配線は、前記第1の方向及び前記第2の方向とは直交する第3の方向に間隔が設けられて、前記第1の配線とは立体的に交差して配置されており、
前記第1の配線と前記第2の配線との少なくとも一方の配線は、前記第3の方向から平面視したときに、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに重なる重畳部において、前記一方の配線の前記重畳部を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部を有することを特徴とする電磁波センサ。
【請求項2】
前記第3の方向から平面視したときに、前記幅広部は、前記一方の配線の幅方向の一方側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項3】
前記第3の方向から平面視したときに、前記幅広部は、前記一方の配線の幅方向の両側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項4】
少なくとも前記第3の方向の成分を含む方向に延在すると共に、前記一方の配線及び前記電磁波検出部と電気的に接続されたレッグ部を備え、
前記一方の配線は、前記幅広部において、前記レッグ部の一端側と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項5】
前記レッグ部の他端側と前記電磁波検出部との間を電気的に接続するアーム部を備えることを特徴とする請求項4に記載の電磁波センサ。
【請求項6】
前記電磁波検出部を複数備え、
前記一方の配線を複数備え、
複数の前記電磁波検出部は、複数の前記一方の配線が並ぶ方向に並んで設けられ、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、前記複数の一方の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の一方の配線が前記第1の方向又は前記第2の方向に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項7】
前記電磁波検出部を複数備え、
前記第1の配線を複数備え、
前記第2の配線を複数備え、
複数の前記電磁波検出部は、前記第1の方向及び前記第2の方向に二次元アレイ状に並んで設けられ、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、複数の前記第1の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の第1の配線が前記第2の方向に並んで設けられると共に、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、複数の前記第2の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の第2の配線が前記第1の方向に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項8】
前記電磁波検出部は、温度検知素子と、前記温度検知素子の少なくとも一部を覆う電磁波吸収体とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サーミスタ素子などの電磁波検出部を用いた電磁波センサがある。サーミスタ素子が有するサーミスタ膜の電気抵抗は、サーミスタ膜の温度変化に応じて変化する。電磁波センサでは、サーミスタ膜に入射した赤外線(電磁波)がサーミスタ膜又はサーミスタ膜の周辺の材料に吸収されることによって、このサーミスタ膜の温度が変化する。これにより、サーミスタ素子は、赤外線を検出する。
【0003】
ここで、シュテファン=ボルツマンの法則から、測定対象の温度と、この測定対象から熱輻射により放出される赤外線(輻射熱)との間には相関関係がある。したがって、測定対象から放出される赤外線をサーミスタ素子を用いて検出することで、測定対象の温度を非接触により測定することが可能である。
【0004】
また、このようなサーミスタ素子は、二次元アレイ状に複数配列されることによって、測定対象の温度分布を二次元的に検出(撮像)する赤外線撮像素子(赤外線イメージセンサ)などの電磁波センサに応用されている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電磁波センサでは、赤外線の良好な検出精度を得るため、サーミスタ素子と電気的に接続されるリード配線の電気抵抗値を低く抑えることが求められている。
【0007】
リード配線の電気抵抗値は、リード配線の幅を大きくすることで低くすることができるが、単にリード配線の全体の幅を大きくしてしまうと、平面視におけるリード配線の領域が大きくなり、これにより赤外線の検出精度が悪化することがあった。
【0008】
例えば、平面視におけるリード配線の領域が大きくなることにより、リード配線からの熱輻射がサーミスタ素子に与える影響が大きくなり、赤外線の検出精度が悪化することがあった。また、例えば、平面視におけるリード配線の領域が大きくなることにより、リード配線が測定対象の赤外線をサーミスタ素子に対して遮蔽する影響が大きくなり、赤外線の検出精度が悪化することがあった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、電磁波の良好な検出精度が得られる電磁波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 第1の方向に延在する第1の配線と、
前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の配線と、
前記第1の配線と電気的に接続されると共に、前記第2の配線と電気的に接続された電磁波検出部とを備え、
前記第2の配線は、前記第1の方向及び前記第2の方向とは直交する第3の方向に間隔が設けられて、前記第1の配線とは立体的に交差して配置されており、
前記第1の配線と前記第2の配線との少なくとも一方の配線は、前記第3の方向から平面視したときに、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに重なる重畳部において、前記一方の配線の前記重畳部を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部を有することを特徴とする電磁波センサ。
〔2〕 前記第3の方向から平面視したときに、前記幅広部は、前記一方の配線の幅方向の一方側に突出していることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
〔3〕 前記第3の方向から平面視したときに、前記幅広部は、前記一方の配線の幅方向の両側に突出していることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
〔4〕 少なくとも前記第3の方向の成分を含む方向に延在すると共に、前記一方の配線及び前記電磁波検出部と電気的に接続されたレッグ部を備え、
前記一方の配線は、前記幅広部において、前記レッグ部の一端側と電気的に接続されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
〔5〕 前記レッグ部の他端側と前記電磁波検出部との間を電気的に接続するアーム部を備えることを特徴とする前記〔4〕に記載の電磁波センサ。
〔6〕 前記電磁波検出部を複数備え、
前記一方の配線を複数備え、
複数の前記電磁波検出部は、複数の前記一方の配線が並ぶ方向に並んで設けられ、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、前記複数の一方の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の一方の配線が前記第1の方向又は前記第2の方向に並んで設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
〔7〕 前記電磁波検出部を複数備え、
前記第1の配線を複数備え、
前記第2の配線を複数備え、
複数の前記電磁波検出部は、前記第1の方向及び前記第2の方向に二次元アレイ状に並んで設けられ、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、複数の前記第1の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の第1の配線が前記第2の方向に並んで設けられると共に、
前記複数の電磁波検出部のそれぞれが、複数の前記第2の配線のうちの対応する1つと電気的に接続されるように、前記複数の第2の配線が前記第1の方向に並んで設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
〔8〕 前記電磁波検出部は、温度検知素子と、前記温度検知素子の少なくとも一部を覆う電磁波吸収体とを含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電磁波の良好な検出精度が得られる電磁波センサを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電磁波センサの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す電磁波センサの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す電磁波センサの構成を示す平面図である。
【
図4】
図3に示す電磁波センサが備える構造体の構成を示す平面図である。
【
図5】
図4中に示す線分A1-A1による構造体の断面図である。
【
図6】
図4中に示す線分B1-B1による構造体の断面図である。
【
図7】
図1に示す電磁波センサの別の構成例を示す平面図である。
【
図8】
図1に示す電磁波センサの別の構成例を示す平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る電磁波センサの構成を示す平面図である。
【
図10】
図9に示す電磁波センサが備える構造体の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10中に示す線分A2-A2による構造体の断面図である。
【
図12】
図10中に示す線分B2-B2による構造体の断面図である。
【
図13】
図9に示す電磁波センサの別の構成例を示す平面図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る電磁波センサの構成を模式的に示す平面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る電磁波センサの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を電磁波センサの特定の面内における第1の方向Xとし、Y軸方向を電磁波センサの特定の面内において第1の方向Xと直交する第2の方向Yとし、Z軸方向を電磁波センサの特定の面内に対して直交する第3の方向Zとして示すものとする。第3の方向Zは、第1の方向X及び第2の方向Yと直交する方向である。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図8に示す電磁波センサ1Aについて説明する。
【0016】
なお、
図1は、電磁波センサ1Aの構成を示す平面図である。
図2は、電磁波センサ1Aの構成を示す分解斜視図である。
図3は、電磁波センサ1Aの構成を示す平面図である。
図4は、電磁波センサ1Aが備える構造体20Aの構成を示す平面図である。
図5は、
図4中に示す線分A1-A1による構造体20Aの断面図である。
図6は、
図4中に示す線分B1-B1による構造体20Aの断面図である。
図7は、電磁波センサ1Aの別の構成例を示す平面図である。
図8は、電磁波センサ1Aの別の構成例を示す平面図である。
【0017】
本実施形態の電磁波センサ1Aは、測定対象から放出される赤外線を検出することによって、この測定対象の温度分布を二次元的に検出(撮像)する赤外線撮像素子(赤外線イメージセンサ)に本発明を適用したものである。
【0018】
赤外線は、波長が0.75μm以上、1000μm以下である電磁波である。赤外線イメージセンサは、赤外線カメラとして屋内や屋外の暗視などに利用されるほか、非接触式の温度センサとして人や物の温度測定などに利用されている。
【0019】
具体的に、この電磁波センサ1Aは、
図1~
図6に示すように、互いに対向して配置された第1の基板2及び第2の基板3と、これら第1の基板2と第2の基板3との間に配置された複数のサーミスタ素子4(
図1及び
図2において図示せず。)とを備えている。
【0020】
第1の基板2及び第2の基板3は、ある特定の波長の電磁波、具体的には10μmの波長を含む波長帯域を有する赤外線(本実施形態では波長8~14μmの長波長赤外線)IRに対して透過性を有するシリコン基板からなる。また、赤外線IRに対して透過性を有する基板としては、ゲルマニウム基板などを用いることができる。本実施形態の電磁波センサ1Aは、測定対象から放出された検知対象の電磁波(測定対象から放出された赤外線IR)が第1の基板2側から入射するように構成されている。
【0021】
第1の基板2及び第2の基板3は、互いに対向する面の周囲をシール材(図示せず。)により封止することによって、その間に密閉された内部空間Kを構成している。また、内部空間Kは、高真空に減圧されている。
【0022】
これにより、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、内部空間Kでの対流による熱の影響を抑制し、サーミスタ素子4に対して測定対象から放出される赤外線IR以外の熱による影響を排除している。
【0023】
なお、本実施形態の電磁波センサ1Aは、上述した密閉された内部空間Kを減圧した構成に必ずしも限定されるものではなく、大気圧のまま密閉又は開放された内部空間Kを有する構成であってもよい。
【0024】
サーミスタ素子4は、赤外線IRを検出する電磁波検出部であり、温度検知素子としてのサーミスタ膜5と、サーミスタ膜5の一方の面に接触して設けられた一対の第1の電極6a,6bと、サーミスタ膜5の他方の面に接触して設けられた第2の電極6cと、サーミスタ膜5の少なくとも一部(本実施形態では全部)を覆う電磁波吸収体としての絶縁膜7a,7b,7cとを備え、サーミスタ膜5の面直方向に電流が流れるCPP(Current-Perpendicular-to-Plane)構造を有している。絶縁膜7bは、一対の第1の電極6a,6bのサーミスタ膜5と接触する側とは反対側に設けられている。
【0025】
すなわち、このサーミスタ素子4では、第1の電極6aから第2の電極6cに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すと共に、第2の電極6cから第1の電極6bに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すことが可能となっている。
【0026】
サーミスタ膜5としては、例えば、酸化バナジウム、非晶質シリコン、多結晶シリコン、マンガンを含むスピネル型結晶構造の酸化物、酸化チタン、又はイットリウム-バリウム-銅酸化物などを用いることができる。
【0027】
第1の電極6a,6b及び第2の電極6cとしては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの導電膜を用いることができる。
【0028】
絶縁膜7a,7b,7cとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、又はサイアロン(ケイ素とアルミニウムとの酸窒化物)などを用いることができる。
【0029】
絶縁膜7a,7b,7cは、少なくともサーミスタ膜5の少なくとも一部を覆うように設けられた構成であればよい。本実施形態では、サーミスタ膜5の両面を覆うように、絶縁膜7a,7b,7cが設けられている。
【0030】
なお、上記サーミスタ素子4は、上述したCPP構造を有しているが、これに対して、第2の電極6cを省略したCIP構造を有する構成としてもよい。
【0031】
複数のサーミスタ素子4は、互いに同じ大きさで形成されている。また、複数のサーミスタ素子4は、第1の基板2及び第2の基板3と平行な面内(以下、「特定の面内」という。)に二次元アレイ状に配列されている。すなわち、これら複数のサーミスタ素子4は、特定の面内において互いに交差(本実施形態では直交)する第1の方向Xと第2の方向Yとにマトリックス状に並んで配置されている。なお、第1の方向Xと第2の方向Yとは、特定の面内において必ずしも直交していなくてもよい。
【0032】
また、各サーミスタ素子4は、第1の方向Xを行方向とし、第2の方向Yを列方向として、第1の方向Xに一定の間隔で並んで配置されると共に、第2の方向Yに一定の間隔で並んで配置されている。
【0033】
なお、上記サーミスタ素子4の行列数としては、例えば640行×480列、1024行×768列などが挙げられるが、これら行列数に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0034】
第1の基板2側には、第1の絶縁体層8と、後述する回路部15と電気的に接続された配線部9と、各サーミスタ素子4と配線部9との間を電気的に接続する第1の接続部10とが設けられている。
【0035】
第1の絶縁体層8は、第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)側において形成された絶縁膜からなる。絶縁膜としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、サイアロン(ケイ素とアルミニウムの酸窒化物)などを用いることができる。
【0036】
配線部9は、複数の第1のリード配線9aと、複数の第2のリード配線9bとを有している。第1のリード配線9aのそれぞれ及び第2のリード配線9bのそれぞれは、例えば銅や金などの導電膜からなる。
【0037】
複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとは、第3の方向Zの異なる位置に配置され、立体的に交差するように配置されている。このうち、複数の第1のリード配線9aは、第1の方向Xに延在し、且つ、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。一方、複数の第2のリード配線9bは、第2の方向Yに延在し、且つ、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。
【0038】
すなわち、それぞれの第1の配線リード配線9aは、第3の方向Zに間隔が設けられて、複数の第2の配線リード配線9bと立体的に交差するように配置されている。また、それぞれの第2の配線リード配線9bは、第3の方向Zに間隔が設けられて、複数の第1のリード配線9aと立体的に交差するように配置されている。第1のリード配線9aと第2の配線リード配線9bとに挟まれた部分には、第1の絶縁体層8の一部が配置されている。
【0039】
なお、本実施形態では、第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bが第1の絶縁体層8の層内に位置しているが、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線の少なくとも表面が、第1の絶縁体層8から露出していてもよい。
【0040】
各サーミスタ素子4は、第3の方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、これら複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとによって区画された領域E毎に設けられている。各サーミスタ膜5と第1の基板2の厚さ方向において対向する領域(平面視で重なる領域)には、第1の基板2とサーミスタ膜5との間で赤外線IRを透過させる窓部Wが存在している。
【0041】
第1の接続部10は、複数のサーミスタ素子4のそれぞれに対応して設けられた一対の第1の接続部材11a,11bを有している。本実施形態の電磁波センサ1Aでは、複数のサーミスタ素子4のそれぞれが、複数の第1のリード配線9aのうちの対応する1つと第1の接続部材11aを介して電気的に接続されると共に、複数のサーミスタ素子4のそれぞれが、複数の第2のリード配線9bのうちの対応する1つと第1の接続部材11aを介して電気的に接続されている。
【0042】
また、一対の第1の接続部材11a,11b及び1つのサーミスタ素子4が1つの構造体20Aを構成している。なお、
図1及び
図2では、構造体20Aの具体的な図示を省略している。
【0043】
一対の第1の接続部材11a,11bは、一対のアーム部12a,12bと、一対のレッグ部13a,13bとを有している。
【0044】
アーム部12a,12bは、それぞれの形状が線状である。アーム部12a,12bは、サーミスタ素子4が有するサーミスタ膜5と電気的に接続される線状の配線層21と、配線層21の両面にその一部が配置された保護層22a,22bとを有している。保護層22a,22bのそれぞれの形状は、配線層21の形状に合わせた線状である。
【0045】
アーム部12aが有する配線層21は、第1の電極6aを介してサーミスタ膜5と電気的に接続されている。アーム部12bが有する配線層21は、第1の電極6bを介してサーミスタ膜5と電気的に接続されている。配線層21は、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、タングステン、チタン、タンタル、クロム、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム、窒化タングステン及び窒化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種からなる。なお、配線層21のみでアーム部12a,12bの十分な機械的強度が得られる場合は、配線層21の両面に保護層22a,22bを設けなくてもよい。
【0046】
保護層22a,22bは、上述したサーミスタ膜5を覆う絶縁膜7a,7b,7cからなる。このうち、配線層21の一面側に配置された保護層(以下、「第1の保護層」として区別する。)22aは、絶縁膜7aにより構成され、配線層21の他面側に配置された保護層(以下、「第2の保護層」として区別する。)22bは、絶縁膜7b,7cにより構成されている。
【0047】
一対のアーム部12a,12bは、第3の方向Zから見た平面視において、サーミスタ素子4を挟んだ両側に位置している。また、各アーム部12a,12bは、少なくともサーミスタ素子4の周囲に沿って延在する部分と、サーミスタ素子4と連結される部分とを有している。
【0048】
具体的に、本実施形態のアーム部12a,12bは、第1の方向Xに延在する複数(本実施形態では2つ)の部分が第2の方向Yに並んで配置されると共に、互いに隣り合う部分の一端と他端とを第2の方向Yに延在する部分を介して折り返し連結した構造を有している。また、一対のアーム部12a,12bは、第2の方向Yに延在する部分を介してサーミスタ素子4を挟む位置にてサーミスタ素子4と連結されている。
【0049】
各レッグ部13a,13bは、第1のリード配線9a又は第2のリード配線9bと電気的に接続されるコンタクトプラグである。各レッグ部13a,13bは、例えば銅、金、FeCoNi合金又はNiFe合金(パーマロイ)などのめっきによって断面円形状の導体ピラーにより形成されている。各レッグ部13a,13bは、第3の方向Zの成分を含む方向(本実施形態では第3の方向Z)に延在する。
【0050】
第1の接続部材11aは、第1の電極6aと電気的に接続されたアーム部12aと、アーム部12bと第1のリード配線9aとの間を電気的に接続するレッグ部13aとを有して、第1の電極6aと第1のリード配線9aとの間を電気的に接続している。すなわち、レッグ部13aは、第1のリード配線9a及びサーミスタ素子4(サーミスタ膜5)と電気的に接続されている。
【0051】
第1の接続部材11bは、第1の電極6bと電気的に接続されたアーム部12bと、アーム部12bと第2のリード配線9bとの間を電気的に接続するレッグ部13bとを有して、第1の電極6bと第2のリード配線9bとの間を電気的に接続している。すなわち、レッグ部13bは、第2のリード配線9b及びサーミスタ素子4(サーミスタ膜5)と電気的に接続されている。
【0052】
これにより、サーミスタ素子4は、その面内の対角方向に位置する一対の第1の接続部材11a,11bにより第3の方向Zに吊り下げられた状態で支持されている。また、サーミスタ素子4と第1の絶縁体層8との間には、空間Gが設けられている。
【0053】
第2の基板3側には、第2の絶縁体層14と、サーミスタ素子4から出力される電圧の変化を検出して輝度温度に変換する回路部15と、各サーミスタ素子4と回路部15との間を電気的に接続する第2の接続部16とが設けられている。
【0054】
第2の絶縁体層14は、第2の基板3の一方の面(第1の基板2と対向する面)側において形成された絶縁膜からなる。絶縁膜としては、上記第1の絶縁体層8で例示した絶縁膜と同じものを用いることができる。
【0055】
回路部15は、読み出し集積回路(ROIC:Read Out Integrated Circuit)やレギュレータ、A/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter)、マルチプレクサなどからなり、第2の絶縁体層14の層内に設けられている。
【0056】
また、第2の絶縁体層14の面上には、複数の第1のリード配線9aに対応した複数の接続端子17aと、複数の第2のリード配線9bに対応した複数の接続端子17bとが設けられている。接続端子17a,17bは、例えば銅や金などの導電膜からなる。
【0057】
接続端子17aは、回路部15の周囲を囲む領域のうちの第1の方向Xの一方側の領域に位置して、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。接続端子17bは、回路部15の周囲を囲む領域のうちの第2の方向Yの一方側の領域に位置して、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。
【0058】
第2の接続部16は、複数の第1のリード配線9aに対応して設けられた複数の第2の接続部材18aと、複数の第2のリード配線9bに対応して設けられた複数の第2の接続部材18bとを有している。複数の第2の接続部材18a,18bは、例えば銅や金などのめっきによって形成された断面円形状の導体ピラーからなる。複数の第2の接続部材18a,18bは、第3の方向Zの成分を含む方向(本実施形態では第3の方向Z)に延在する。
【0059】
第2の接続部材18aは、第1のリード配線9aの一端側と接続端子17aとの間を電気的に接続している。第2の接続部材18bは、第2のリード配線9bの一端側と接続端子17bとの間を電気的に接続している。これにより、複数の第1のリード配線9aと回路部15との間が第2の接続部材18a及び接続端子17aを介して電気的に接続されている。また、複数の第2のリード配線9bと回路部15との間が第2の接続部材18b及び接続端子17bを介して電気的に接続されている。
【0060】
第1の基板2のサーミスタ素子4と対向する面側には、反射防止層19が設けられている。本実施形態では、第1の基板2と第1の絶縁体層8との間に反射防止層19が設けられている。反射防止層19の少なくとも一部は、サーミスタ素子4の少なくとも一部と対向している。反射防止層19は、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通過してサーミスタ膜5に入射するまでの間に、第1の基板2と空間Gとの界面で赤外線IRが反射されることを防止し、第1の基板2を透過した赤外線IRをサーミスタ膜5側に効率良く入射させるためのものである。
【0061】
反射防止層19としては、例えば、硫化亜鉛、フッ化イットリウム、カルコゲナイドガラス、ゲルマニウム、シリコン、セレン化亜鉛、ガリウム砒素などを用いることができる。
【0062】
また、反射防止層19は、屈折率の異なる膜を交互に積層し、各層で反射する波の干渉を利用して赤外線IRの反射率を低減する構成であってもよい。この場合、反射防止層19として、上述した材料の他にも、例えば、酸化膜、窒化膜、硫化膜、フッ化膜、ホウ化膜、臭化膜、塩化膜、セレン化膜、Ge膜,ダイヤモンド膜、カルコゲナイド膜、Si膜などを積層した積層膜を用いることができる。
【0063】
第1の絶縁体層8のサーミスタ素子4と対向する部分には、第1の絶縁体層8を貫通する孔部8aが設けられている。換言すると、反射防止層19とサーミスタ素子4との間には、第1の絶縁体層8を貫通する孔部8aが設けられている。孔部8aは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおけるサーミスタ素子4と対向する部分に設けられている。
【0064】
以上のような構成を有する本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通過してサーミスタ素子4に入射する。
【0065】
サーミスタ素子4では、サーミスタ膜5の近傍に形成された絶縁膜7a,7b,7cに入射した赤外線IRが絶縁膜7a,7b,7cに吸収されること、並びに、サーミスタ膜5に入射した赤外線IRがサーミスタ膜5に吸収されることによって、このサーミスタ膜5の温度が変化する。また、サーミスタ素子4では、サーミスタ膜5の温度変化に対して、このサーミスタ膜5の電気抵抗が変化することで、一対の第1の電極6a,6bの間の出力電圧が変化する。本実施形態の電磁波センサ1Aでは、サーミスタ素子4がボロメータ素子として機能する。
【0066】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定対象から放出される赤外線IRを複数のサーミスタ素子4により平面的に検出した後、各サーミスタ素子4から出力される電気信号(電圧信号)を輝度温度に変換することによって、測定対象の温度分布(温度画像)を二次元的に検出(撮像)することが可能である。
【0067】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、サーミスタ膜5に定電流を印加して、サーミスタ膜5の温度変化に対して、サーミスタ膜5から出力される電圧の変化を検出しているが、サーミスタ膜5に定電圧を印加し、サーミスタ膜5の温度変化に対して、サーミスタ膜5に流れる電流の変化を検出して輝度温度に変換することも可能である。
【0068】
ところで、本実施形態の電磁波センサ1Aにおいて、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線(本実施形態では第2のリード配線9b)は、
図1に示すように、第3の方向Zから平面視したときに、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとが互いに重なる重畳部30において、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有している。
【0069】
すなわち、この幅広部31は、他方のリード配線(本実施形態では第1のリード配線9a)と平面視において重なり、平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の一方側に突出している。
【0070】
図1に示す構成では、幅広部31は、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の重畳部30を除く部分に対して幅方向に突出している。なお、
図1に示す例において、リード配線の幅方向とは、平面視においてリード配線の延在方向に垂直な方向である。すなわち、
図1に示す例において、幅広部31は、第2の方向Yに延在する第2のリード配線9bの重畳部30を除く部分における第1の方向Xの幅の平均値よりも第1の方向Xの幅が大きくなっている。
図1に示す例において、幅広部31の範囲は、第2のリード配線9bの重畳部30の範囲と同じになっている。
【0071】
なお、幅広部31については、上述した平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)が他方のリード配線(第1のリード配線9a)と平面視において重なる範囲(重畳部30の範囲)に限らず、平面視において重畳部30の範囲の外側に亘って形成されていてもよい。幅広部31は、平面視において電磁波検出部(サーミスタ素子4)とは重ならないことが好ましい。
【0072】
また、幅広部31は、平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の両側に突出した構成としてもよい。また、幅広部31の形状についても、特に限定されるものではなく、その形状について適宜変更することが可能である。
【0073】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、このような幅広部31を重畳部30に設けることによって、平面視におけるリード配線の領域(平面視における第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとからなる領域)の増加を抑制しながら、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅を幅広部31において広げることが可能である。これにより、通電により熱源となるリード配線9a,9bから電磁波検出部(サーミスタ素子4)への熱輻射の増加を抑制しながら、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の電気抵抗値を低減することが可能である。
【0074】
また、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、電磁波検出部(サーミスタ素子4)から見て、第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bが測定対象の電磁波(赤外線IR)の入射方向側に配置されているため、第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bの平面視における電磁波検出部(サーミスタ素子4)との重なり部分により、電磁波検出部(サーミスタ素子4)に向かって入射する測定対象の電磁波の一部が遮蔽されることが考えられる。
【0075】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、平面視において第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bが電磁波検出部(サーミスタ素子4)と重なる範囲が増加することを抑制しながら、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅を幅広部31において広げることが可能である。これにより、リード配線9a,9bによる測定対象の電磁波の遮蔽の影響の増加を抑制しながら、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の電気抵抗値を低減することが可能である。
【0076】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、電磁波(赤外線IR)の良好な検出精度を得ることが可能である。
【0077】
なお、上記電磁波センサ1Aでは、上述した第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとのうち、第2のリード配線9bに幅広部31が設けられた構成となっているが、例えば
図7に示すように、第1のリード配線9aに幅広部31が設けられた構成としてもよい。なお、
図7では、上記構造体20Aの具体的な図示を省略している。
【0078】
具体的に、この
図7に示す構成は、第3の方向Zから平面視したときに、重畳部30において、第1のリード配線9aの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31が第1のリード配線9a側に設けられた構成となっている。
【0079】
図7に示す構成では、幅広部31は、第1のリード配線9aの重畳部30を除く部分に対して幅方向に突出している。なお、
図7に示す例において、リード配線の幅方向とは、平面視においてリード配線の延在方向に垂直な方向である。
図7に示す例において、幅広部31は、第1の方向Xに延在する第1のリード配線9aの重畳部30を除く部分における第2の方向Yの幅の平均値よりも第2の方向Yの幅が大きくなっている。
図7に示す例において、幅広部31の範囲は、第1のリード配線9aの重畳部30の範囲と同じになっている。
【0080】
すなわち、この幅広部31は、第2のリード配線9bと平面視において重なり、平面視において、第1のリード配線9aの幅方向の一方側に突出している。幅広部31は、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の両側に突出した構成としてもよい。
【0081】
さらに、上記電磁波センサ1Aは、例えば
図8に示すように、第1のリード配線9aに第1の幅広部31aが設けられると共に、第2のリード配線9bに第2の幅広部31bが設けられた構成としてもよい。なお、
図8では、上記構造体20Aの具体的な図示を省略している。
【0082】
具体的に、この
図8に示す構成は、第3の方向Zから平面視したときに、重畳部30において、第1のリード配線9aの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい第1の幅広部31aが第1のリード配線9aに設けられ、第2のリード配線9bの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい第2の幅広部31bが第2のリード配線9bに設けられた構成となっている。
【0083】
すなわち、第1の幅広部31aは、第2のリード配線9bと平面視において重なり、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の一方側に突出している。第1の幅広部31aは、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の両側に突出した構成としてもよい。
【0084】
第2の幅広部31bは、第1のリード配線9aと平面視において重なり、平面視において第2のリード配線9bの幅方向の一方側に突出している。第2の幅広部31bは、平面視において第2のリード配線9bの幅方向の両側に突出した構成としてもよい。
【0085】
図8に示す電磁波センサ1Aの構成では、通電により熱源となるリード配線9a,9bから電磁波検出部(サーミスタ素子4)への熱輻射の増加を抑制しながら、両方の配線(第1のリード配線9a及び第2のリード配線9b)の電気抵抗値を低減することが可能である。また、
図8に示す電磁波センサ1Aの構成では、リード配線9a,9bによる測定対象の電磁波の遮蔽の影響の増加を抑制しながら、両方の配線(第1のリード配線9a及び第2のリード配線9b)の電気抵抗値を低減することが可能である。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図9~
図13に示す電磁波センサ1Bについて説明する。
【0087】
なお、
図9は、電磁波センサ1Bの構成を示す平面図である。
図10は、電磁波センサ1Bが備える構造体20Bの構成を示す平面図である。
図11は、
図10中に示す線分A2-A2による構造体20Bの断面図である。
図12は、
図10中に示す線分B2-B2による構造体20Bの断面図である。
図13は、電磁波センサ1Bの別の構成例を示す平面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0088】
本実施形態の電磁波センサ1Bは、上記構造体20Aの代わりに、例えば
図9~
図12に示すような構造体20Bを備えている。また、電磁波センサ1Bでは、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bの配置順が電磁波センサ1Aとは異なっている。それ以外は、電磁波センサ1Bは、上記電磁波センサ1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0089】
具体的に、この電磁波センサ1Bでは、複数のサーミスタ素子4のそれぞれが、複数の第1のリード配線9aのうちの対応する1つと第1の接続部材11aを介して電気的に接続されると共に、複数のサーミスタ素子4のそれぞれが、複数の第2のリード配線9bのうちの対応する1つと第1の接続部材11aを介して電気的に接続されている。
【0090】
また、一対の第1の接続部材11a,11b及び1つのサーミスタ素子4が1つの構造体20Bを構成している。
【0091】
具体的に、この構造体20Bは、一対のアーム部12a,12b及び一対のレッグ部13a,13bを含む一対の第1の接続部材11a,11bを備え、サーミスタ素子4が一対の第1の接続部材11a,11bを介してサーミスタ素子4と対向する第1の基板2に対して吊り下げられた構造を有している。
【0092】
また、構造体20Bでは、平面視において、サーミスタ素子4の中心を基準に点対称に一対のアーム部12a,12bが配置されている。構造体20Bでは、レッグ部13bと第2のリード配線9bとの接続位置が、上記構造体20Aとは異なっている。それ以外は、構造体20Bは、上記構造体20Aと基本的に同じ構成を有している。
【0093】
また、電磁波センサ1Bでは、第2のリード配線9bの方が第1のリード配線9aよりも、第3の方向Zにおいてアーム部12a,12bに近い側にある。すなわち、電磁波センサ1Bでは、第2のリード配線9bの第3の方向Zの位置は、第1のリード配線9aの第3の方向Zの位置とアーム部12a,12bの第3の方向Zの位置との間にある。
【0094】
ところで、本実施形態の電磁波センサ1Bは、
図9に示すように、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線(本実施形態では第2のリード配線9b)に幅広部31が設けられ、一方のリード配線(第2のリード配線9b)が、この幅広部31において、レッグ部13bの一端側と電気的に接続された構成となっている。
【0095】
すなわち、この幅広部31は、他方のリード配線(本実施形態では第1のリード配線9a)と平面視において重なり、平面視において、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の一方側に突出している。また、幅広部31の端部は、平面視において丸みを帯びた形状を有している。
【0096】
なお、本実施形態では、幅広部31のうちの幅方向に突出している部分において、一方のリード配線(第2のリード配線9b)がレッグ部13bの一端側と電気的に接続されている。また、本実施形態では、幅広部31(幅広部31のうちの幅方向に突出している部分)がレッグ部13bの一端側と直接接続されている。
【0097】
なお、幅広部31については、上述した平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)が他方のリード配線(第1のリード配線9a)と重なる範囲(重畳部30の範囲)に限らず、平面視において重畳部30の範囲の外側に亘って形成されていてもよい。また、幅広部31は、平面視において電磁波検出部(サーミスタ素子4)とは重ならないことが好ましい。また、幅広部31は、平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の両側に突出した構成としてもよい。
【0098】
また、幅広部31の形状についても、上述した幅広部31の端部が平面視で丸みを帯びた形状を有するものに必ずしも限定されるものではなく、その形状について適宜変更することが可能である。
【0099】
本実施形態の電磁波センサ1Bでは、このような幅広部31を重畳部30に設けることによって、第1の実施形態の電磁波センサ1Aと同様に、電磁波(赤外線IR)の良好な検出精度を得ることが可能である。
【0100】
また、本実施形態の電磁波センサ1Bでは、一方のリード配線(第2のリード配線9b)が、上述した幅広部31において、レッグ部13bの一端側と電気的に接続されている。これにより、複数の構造体20Bをスペース効率良く配置することが可能である。また、アーム部12aとアーム部12bとを対称性良く形成することが可能である。さらに、対称性良く形成されたアーム部12a,12bは、ゆがみを生じ難いため、電磁波センサ1Bの高い信頼性が得られる。
【0101】
なお、上記電磁波センサ1Bでは、上述した第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとのうち、第2のリード配線9bに幅広部31が設けられ、第2のリード配線9bが、この幅広部31において、レッグ部13bの一端側と電気的に接続された構成となっているが、例えば
図13に示すように、第1のリード配線9aに第1の幅広部31aが設けられると共に、第2のリード配線9bに第2の幅広部31bが設けられ、第2のリード配線9bが、この第2の幅広部31bにおいて、レッグ部13bの一端側と電気的に接続された構成としてもよい。
【0102】
すなわち、この第1の幅広部31aは、第2のリード配線9bと平面視において重なり、第1のリード配線9aの幅方向の両側に突出している。第1の幅広部31aは、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の一方側に突出した構成としてもよい。
【0103】
第2の幅広部31bは、第1のリード配線9aと平面視において重なり、第2のリード配線9bの幅方向の両側に突出している。第2の幅広部31bは、平面視において第2のリード配線9bの幅方向の一方側に突出した構成としてもよい。
【0104】
なお、
図13に示す例では、第2の幅広部31bがレッグ部13bの一端側と直接接続されている。また、
図13に示す例では、第2のリード配線9bが、第2の幅広部31bにおいて、レッグ部13bの一端側と電気的に接続された構成となっているが、第1のリード配線9aが、第1の幅広部31aにおいて、レッグ部13aの一端側と電気的に接続された構成となっていてもよく、さらに、これら両方の構成を含むものであってもよい。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図14に示す電磁波センサ1Cについて説明する。
【0106】
なお、
図14は、電磁波センサ1Cの構成を模式的に示す平面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1A,1Bと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0107】
本実施形態の電磁波センサ1Cは、
図14に示すように、複数のサーミスタ素子4が1列に配列された構造を有している。
【0108】
すなわち、この電磁波センサ1Cは、1つの第2のリード配線9bと、複数の第1のリード配線9aとを備えている。また、電磁波センサ1Cでは、複数のサーミスタ素子4が第2の方向Yに並んで設けられている。また、複数のサーミスタ素子4のそれぞれが、複数の第1のリード配線9aのうちの対応する1つと電気的に接続されるように、複数の第1のリード配線9aが第2の方向Yに並んで設けられている。また、複数のサーミスタ素子4のそれぞれは、1つの第2のリード配線9bと電気的に接続されている。
【0109】
電磁波センサ1Cは、上記電磁波センサ1Aが備える構造体20Aの代わりに、
図14に示すような構造体20Cを備えている。構造体20Cは、アーム部の形状が、構造体20Aが備えるアーム部12a,12bと若干異なっているが、それ以外は、構造体20Aと基本的に同じ構成を有している。
【0110】
第1の実施形態の電磁波センサ1Aと同様に、
図14に示す電磁波センサ1Cにおいて、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線(本実施形態では第2のリード配線9b)は、第3の方向Zから平面視したときに、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとが互いに重なる重畳部30において、一方のリード配線(第2のリード配線9b)の重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有している。
【0111】
すなわち、この幅広部31は、他方のリード配線(本実施形態では第1のリード配線9a)と平面視において重なり、平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の両側に突出している。
【0112】
また、本実施形態の電磁波センサ1Cにおいて、幅広部31は、平面視において一方のリード配線(第2のリード配線9b)の幅方向の一方側に突出した構成としてもよい。また、電磁波センサ1Cは、第1の実施形態の電磁波センサ1Aと同様に、第1のリード配線9aに幅広部が設けられた構成としてもよい。この場合、第1のリード配線9aに設けられた幅広部は、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の両側に突出した構成としてもよく、平面視において第1のリード配線9aの幅方向の一方側に突出した構成としてもよい。
【0113】
また、電磁波センサ1Cは、第2の実施形態の電磁波センサ1Bと同様に、第2のリード配線9bが、幅広部31においてレッグ部13bの一端側と電気的に接続された構成としてもよい。
【0114】
本実施形態の電磁波センサ1Cでは、このような幅広部31を有する重畳部30を設けることによって、第1の実施形態の電磁波センサ1Aと同様に、電磁波(赤外線IR)の良好な検出精度を得ることが可能である。
【0115】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば
図15に示す電磁波センサ1Dについて説明する。
【0116】
なお、
図15は、電磁波センサ1Dの構成を模式的に示す断面図である。理解を容易とするために、
図15は1つの断面ではなく、複数の断面を組み合わせた模式的な断面図としている。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1A,1B,1Cと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0117】
本実施形態の電磁波センサ1Dは、
図15に示すように、複数のサーミスタ素子4が、サーミスタ素子4と対向する第2の基板3に対して懸架された構造を有している。
【0118】
この場合、配線部9は、第2の基板3側に配置されている。すなわち、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとは、第2の基板3側において、第3の方向Zの異なる位置に、立体的に交差するように配置されている。
【0119】
具体的に、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、第1の実施形態の電磁波センサ1Aにおいて第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bが第1の絶縁体層8の層内に位置しているのと同様に、第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bが第2の基板3に形成された絶縁体層の層内に位置している。また、第1のリード配線9aと第2の配線リード配線9bとに挟まれた部分には、絶縁体層の一部が配置されている。
【0120】
また、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線の少なくとも表面は、第2の基板3に形成された絶縁体層から露出していてもよい。本実施形態において、配線部9(第1のリード配線9a及び第2のリード配線9b)は、第2の基板3に設けられた読み出し回路(ROIC)の一部を構成している。すなわち、第1の接続部材11a,11bは、第2の基板3に設けられた読み出し回路(ROIC)に直接接続されている。
【0121】
また、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、第1の基板2、シール部材23及び第2の基板3により密閉された内部空間K内に複数のサーミスタ素子4が配置されている。一方、読み出し回路(ROIC)と電気的に接続された電極パッド24が、その内部空間Kの外側に配置されている。
【0122】
また、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、第1の接続部材11a,11b及び1つのサーミスタ素子4を含む構造体として、上記電磁波センサ1A,1B,1Cが備える構造体20A,20B,20Cと同様の構成を採用することが可能である。
【0123】
また、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bとして、上記電磁波センサ1A,1B,1Cが備える第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bと同様の構成を採用することが可能である。
【0124】
すなわち、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、上記電磁波センサ1A,1B,1Cと同様に、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとの少なくとも一方のリード配線(例えば第2のリード配線9b)が、第3の方向Zから平面視したときに、第1のリード配線9aと第2のリード配線9bとが互いに重なる重畳部30において、一方のリード配線(例えば第2のリード配線9b)の重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有している。
【0125】
また、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、上記電磁波センサ1A,1B,1Cと同様に、第1のリード配線9aが、重畳部30において、第1のリード配線9aの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有し、第2のリード配線9bが、重畳部30において、第2のリード配線9bの重畳部30を除く部分における幅の平均値よりも幅が大きい幅広部31を有していてもよい。
【0126】
本実施形態の電磁波センサ1Dでは、このような幅広部31を重畳部30に設けることによって、第1の実施形態の電磁波センサ1Aと同様に、通電により熱源となるリード配線9a,9bから電磁波検出部(サーミスタ素子4)への熱輻射の増加を抑制しながら、一方のリード配線(例えば第2のリード配線9b)又は両方の配線(第1のリード配線9a及び第2のリード配線9b)の電気抵抗値を低減することが可能である。
【0127】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、電磁波(赤外線IR)の良好な検出精度を得ることが可能である。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0129】
例えば、本発明を適用した電磁波センサは、上述した複数のサーミスタ素子4を二次元アレイ状又は線状に配列した赤外線イメージセンサの構成に必ずしも限定されるものではなく、1つのサーミスタ素子4を用いた電磁波センサなどにも本発明を適用することが可能である。
【0130】
また、本発明を適用した電磁波センサは、電磁波として、上述した赤外線IRを検出するものに必ずしも限定されるものではなく、例えば波長が30μm以上、3mm以下のテラヘルツ波を検出するものであってもよく、可視光線を検出するものであってよい。
【0131】
また、本発明を適用した電磁波センサは、電磁波検出部として上述したサーミスタ素子4を用いたものに必ずしも限定されるものではなく、例えば、サーミスタ膜5に代えて、サーモパイル(熱電対)型や焦電型、ダイオード型などの温度検知素子を用いたものを電磁波検出部として用いることが可能である。また、上述したサーミスタ素子4に代えて、フォトダイオードなどの電磁波を直接検出する素子を電磁波検出部として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0132】
1,1A~1D…電磁波センサ 2…第1の基板 3…第2の基板 4…サーミスタ素子(電磁波検出部) 5…サーミスタ膜(温度検知素子) 6a,6b…第1の電極 6c…第2の電極 7a,7b,7c…絶縁膜(電磁波吸収体) 8…第1の絶縁体層(中間層) 8a…孔部 9…配線部 9a…第1のリード配線 9b…第2のリード配線 10…第1の接続部 11a,11b…第1の接続部材 12a,12b…アーム部 13a,13b…レッグ部 14…第2の絶縁体層 15…回路部 16…第2の接続部 17a,17b…接続端子 18a,18b…第2の接続部材 19…反射防止層 20A,20B,20C…構造体 21…配線層 22a…第1の保護層 22b…第2の保護層 23…シール部材 30…重畳部 31…幅広部 31a…第1の幅広部 31b…第2の幅広部 IR…赤外線(電磁波) G…空間