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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070455
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】流動化処理土の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180962
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】509134569
【氏名又は名称】友弘エコロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397060153
【氏名又は名称】株式会社ティ・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100085648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幹人
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 友一朗
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB09
2D040CA01
2D040CB03
2D040CD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流動化処理土を、単位重量のセメントを基準として、製造過程において、原料の重量を計量することなく製造する流動化処理土の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】乾燥土とセメントと水を所定の割合で配合してなる流動化処理土を、単位重量のセメント20aを基準として、所定の含水率の原料土10から製造可能な流動化処理土1aの製造容量50と、流動化処理土1aの製造容量50に占める原料土の容量10a及び水の容量30aの配合を決定し、原料土の容量10aに占める乾燥土の容量15a及び含有水の容量33aを算出するとともに、水の容量30aと含有水の容量33aから追加水の容量35aを決定し、解泥槽55に単位重量のセメント20aと、決定した原料土の容量10a及び追加水の容量35aを投入して混合撹拌59する流動化処理土の製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥土とセメントと水を所定の割合で配合してなる流動化処理土を、
単位重量のセメントを基準として、
所定の含水率の原料土から製造可能な流動化処理土の製造容量と、流動化処理土の製造容量に占める原料土の容量及び水の容量の配合を決定し、
原料土の容量に占める乾燥土の容量及び含有水の容量を算出するとともに、
水の容量と含有水の容量から追加水の容量を決定し、
解泥槽に単位重量のセメントと、決定した原料土の容量及び追加水の容量を投入して混合撹拌することを特徴とする流動化処理土の製造方法。
【請求項2】
解泥槽に単位重量のセメントと追加水の容量を投入してセメントミルクを作液した後に、原料土の容量を解泥槽に投入して混合撹拌する請求項1記載の流動化処理土の製造方法。
【請求項3】
流動化処理土の製造容量に対応する解泥槽の液面位置まで、原料土の容量を解泥槽に投入する請求項2記載の流動化処理土の製造方法。
【請求項4】
解泥槽内における原料土の液面位置を、解泥槽に設置した液面管理計によって検知する請求項3記載の流動化処理土の製造方法。
【請求項5】
解泥槽に決定した容量となるまで原料土の容量及び追加水の容量を投入して解泥した後に、単位重量のセメントを解泥槽に投入して混合撹拌する請求項1記載の流動化処理土の製造方法。
【請求項6】
解泥槽内における原料土の容量及び追加水の容量の液面位置を、解泥槽に設置した液面管理計によって検知する請求項5記載の流動化処理土の製造方法。
【請求項7】
乾燥土とセメントと水の配合を、流動化処理土の比重,スランプフロー値,ブリージング率,一軸圧縮強度から選択した一又は複数を基準として設定する請求項1,2,3,4,5又は6記載の流動化処理土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥土と水とセメントから組成され、所定の品質を有する流動化処理土を、単位重量のセメントを基準として製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動化処理土は、流動性が高く自硬性がある資源循環型の埋め戻し材として、その有用性が高く評価されている。図6に示すように、流動化処理土1の組成は、乾燥土15と水30とセメント20であり、乾燥土15は、掘削残土等の建設発生土からなる原料土10から供給され、水30は湿潤状態の原料土10に含まれる含有水33と、流動化処理土1の配合に応じて新たに添加する追加水35の2系統から供給される。
【0003】
流動化処理土1の配合決定に際しては、原料土10の含水率を測定し、製造する流動化処理土1の比重を目安として、試験練りした試料ピースのスランプフロー値やブリージング率の試験を行った上で、試験練りから28日経過後の一軸圧縮強度の試験を経て、要求される品質を満たす乾燥土15と水30とセメント20の配合を決定している。流動化処理土1の配合は、下記の配合式90に示すように水30(含有水33及び追加水35)に対する固形成分(乾燥土15及びセメント20)の割合で管理されるため、原料である湿潤状態の原料土10,追加水35,セメント20の重量をそれぞれ配合に応じて計量する必要がある。
……配合式90
【0004】
図7に示すように、従来はセメントサイロ22に貯留したセメント20をサイロ計量瓶25によって必要重量を計量してセメントミルク作液槽45に供給するとともに、流量計38によって清水槽37に貯水された追加水35を必要量だけ計量して、水中ポンプ39によってセメントミルク作液槽45に供給して、両者を混合撹拌することにより、流動化処理土1の配合に基づく所定重量のセメントミルク40を作液する。その後、作液したセメントミルク40をセメントミルクポンプ48によって、二軸ミキサ9に供給している。
【0005】
一方、原料土10は湿潤状態のまま原料土置場からベルトコンベア3で計量槽5に供給し、計量槽5内の原料土10の重量をロードセル7で計量し、流動化処理土1の配合に基づく重量となると、計量槽5の底部を開いて二軸ミキサ9に供給し、セメントミルク40とともに混合撹拌することにより、流動化処理土1を製造している。
【0006】
よって、セメント20はセメントサイロ22に付設したサイロ計量瓶25によって、又原料土10は計量槽5に装備したロードセル7によって、流動化処理土1の配合に基づいて必要重量を計量する必要がある。なお、追加水35の比重は1のため、図示例では流量計38で流量を計量することによって、重量を計量している。流量計38に代えてロードセル等の重量計量装置を使用することも可能である。
【0007】
このように従来の流動化処理土1の製造は、原材料となる原料土10,追加水35,セメント20の配合を、それぞれロードセル7,流量計38,サイロ計量瓶25による重量計量によって行っており(特許文献1参照)、重量計量のための専用の設備装置を必要としている。これらの設備装置は相応の投資を必要とするばかりか、現場毎への運搬・組立・解体費用に相応の費用を要し、流動化処理土1の製造コスト、特に製造量が少ない場合の製造コストに占める割合が大きくなり、流動化処理土1の普及を阻害する一因となっている。
【0008】
また、図7に示す従来の製造装置では、原料土10をベルトコンベア3で供給し、計量槽5が所定重量の80%程度の原料土10で満たされたことをロードセル7が検知すると、ベルトコンベア3の速度を減速し、ロードセル7が所定重量を計量するとベルトコンベア3を停止する制御を行っている。そのため、人的資材として習熟した技能を有するオペレータを必要とし、この点も流動化処理土1の普及を阻害する一因となっている。
【0009】
そこで、本発明者は流動化処理土を低コストで効率よく製造して、その普及を拡大するために、従来必須の工程であった原料土10の重量測定及びそのための設備装置(ベルトコンベア3,計量槽5,ロードセル7)を不要とした特許文献2に示す流動化処理土の製造方法(以下、「文献2発明」という)を先に提供している。この文献2発明の特徴は、図8に示すように、湿潤状態の原料土10とセメントミルク40(セメント20と追加水35から作液)の配合割合を、流動化処理土1の製造容量に対する容量比によって決定することにある。
【0010】
文献2発明では、予め決定した流動化処理土1の製造容量に対応する重量のセメント20を、セメントサイロ22に付設したサイロ計量瓶25によって計量して、セメントミルク作液槽45に供給する。併せて、流動化処理土1に含まれる水30から原料土10に含まれる含有水33を除いた量に相当する流量の水を追加水35として、清水槽37から水中ポンプ39によってセメントミルク作液槽45に供給し、セメント20と混練してセメントミルク40を作液する。なお、水の比重は1であるため、追加水35の流量は流量計38によって計量している。よって、文献2発明では、セメントミルク40の原料となるセメント20及び追加水35を重量で計量しているものの、これらの原料を用いてセメントミルク作液槽45で作液したセメントミルク40の容量は、流動化処理土1に含まれるセメントミルク40の容量に他ならない。そのため、製造する流動化処理土1の製造容量から作液したセメントミルク40の容量を除いた容量が、流動化処理土1の製造容量に占める湿潤状態の原料土10の容量となる。
【0011】
そこで、製造する流動化処理土1の製造容量に含まれる容量のセメントミルク40をセメントミルクポンプ48で所定容量の解泥槽55に供給した後、湿潤状態の原料土10をバックホウ65等で、予めセメントミルク40が供給された解泥槽55に順次投入する。解泥槽55には、液面管理計57を設置しておき、投入する原料土10の重量や容量を計量することなく、原料土10の投入によって、解泥槽55内の液面が流動化処理土1の製造容量の液面となったことを液面管理計57で検知するまで、原料土10を解泥槽55内に投入しさえすればよい。これにより、解泥槽55には流動化処理土1の製造容量に対応する容量の原料土10が投入されているため、解泥槽55内のセメントミルク40と原料土10を、原料土10の投入に使用したバックホウ65のバケット等を使用して解泥し、混合撹拌することにより、流動化処理土1を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-257109号公報
【特許文献2】特開2020-51086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
流動化処理土1は、資源循環型の埋め戻し材として注目が高まっており、都市部における需要は大きく、その設備能力に見合う出荷量が見込めるため、流動化処理土1を製造するための専用の設備を準備したとしても、その費用は流動化処理土1の製造原価に大きな影響を与えることは少ない。しかしながら、流動化処理土1の需要をこれから喚起しようとする地域では、未だ出荷量が予測できず、その量も安定しないため、流動化処理土1を製造するための専用の設備費用を捻出することの可否が不透明となっている。また、流動化処理土1の製造には専用の設備装置を必要とし、これらの投資費用,施工現場への運搬・組立・解体費用等は流動化処理土の価格に直接的に反映することとなる。そのため、流動化処理土1の製造量が一定量を下回ると、製造単価が高くなり、貧配合生コン等の他の埋め戻し材との競争力を失って、建設発生土を再利用することが困難となっている。また、流動化処理土1の製造のためには、前記した設備装置を敷設するための所定面積の製造場所を確保する必要がある。
【0014】
流動化処理土1が他の埋め戻し材に対して競争力を失うことは、流動化処理土1の製造に必要な設備費用の投資が困難な状況を来たし、その結果、流動化処理土1自体の供給が不安定となり、その普及にも悪影響を与えるという負のスパイラルに陥いることとなる。そして、流動化処理土1の製造価格の高騰は専ら設備装置、中でも重量計量のための大型の設備装置の費用及びその運搬・組立・解体費用、更には製造場所の確保に起因している。
【0015】
前記した流動化処理土1を製造するための設備装置の負担は、専ら製造する流動化処理土1の品質に応じて原材料を配合するため、原料土10の重量を計量する大型の設備装置(ベルトコンベア3,計量槽5,ロードセル7)と、セメント20の重量を計量する大型の設備装置(セメントサイロ22,サイロ計量瓶25)の存在に起因している。しかしながら、これらの大型の設備装置は原材料の重量を計量するためには必要不可欠の部材であり、流動化処理土1の製造には必要不可欠の設備装置である。
【0016】
そこで、本発明者は文献2発明において、原料土10の配合を重量で特定するのではなく、容量で特定することにより、原料土10の重量計量のための設備装置(ベルトコンベア3,計量槽5,ロードセル7)や、計量した重量に基づいて原料土10を解泥槽55に供給するための制御を不要とした。これにより、流動化処理土1の製造に必要な大型の設備装置を簡略化し、流動化処理土1の普及を阻害する一因を取り除き、その競争力を強化した。
【0017】
しかしながら、文献2発明は、セメントミルク40に対する原料土10の配合割合を、流動化処理土1の製造容量に対する容量比によって決定するものの、容量を基準とするのは原料土10のみであって、セメントミルク40を作液するためのセメント20は従来と同様に重量を基準として計量する必要がある。よって、当然ながら、そのための設備装置であるセメントサイロ22とサイロ計量瓶25を必ず必要とする。なお、比重1であって、重量と容量が一致する追加水35については重量を計量することなく、流量計38で計量することが可能である。
【0018】
セメント20を貯蔵するための施設であるセメントサイロ22及びセメント20の重量を計量するためのサイロ計量瓶25の現場毎への敷設(運搬・組立・解体)は、流動化処理土1の製造コスト、特に製造量が少ない場合の製造コストに直接的に影響するばかりか、流動化処理土1の製造場所が限定されることとなり、その汎用性・機動性を失わせるとともに、原料土10として掘削残土等の建設発生土を使用する流動化処理土1の最大の利点を減ずることともなる。
【0019】
そこで、本発明は流動化処理土1の普及、中でも少量であっても流動化処理土1の使用を可能とするため、流動化処理土1を低コストで効率よく製造するために、原料土10の重量計量のための設備装置(ベルトコンベア3,計量槽5,ロードセル7)とともに、文献2発明においても必要不可欠のセメント20の重量計量のための設備装置(セメントサイロ22とサイロ計量瓶25)の双方を必要とせずに流動化処理土1を製造することを新たな課題として設定し、この新たな課題を解決するための流動化処理土1の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、前記した新たな課題を解決するために、文献2発明における製造工程の各段階について見直した結果、セメントサイロとサイロ計量瓶を不要とするためには次の前提を充足する必要があるとの結論を得た。
前提1:セメントサイロ及びサイロ計量瓶を不要とするためには、流動化処理土の製造工程においてセメントの重量計量を不要とする必要があること。
前提2:原料土の重量を計量するベルトコンベア,計量槽,ロードセルについては、文献2発明と同様に液面管理計で解泥槽へ供給する原料土の容量を管理することによって不要とすることができること。
前提3:流動化処理土の配合決定のために、セメント及び原料土の重量を使用しないためには、両者ともに重量に換えて、容量を基準として配合を決定できればよいこと。
前提4:「容量=重量÷比重」の関係にあるため、文献2発明を発展させたとしても、流動化処理土の製造容量に基づいて、セメントミルクの容量を決定するためには、その前提として何らかの手段でセメントの重量を特定する必要があること。
【0021】
前提1,3に基づいて、セメントサイロやサイロ計量瓶を不要とするためには、流動化処理土の製造工程においてセメントの重量を計量不要とすることが必要であり、一方、前提4に基づいてセメントミルクの容量を特定するためには、その前提としてセメントの重量特定が不可欠である。よって、前提1,3と前提4は相互に矛盾することとなる。
【0022】
この前提1,3と前提4の双方を矛盾なく充足する手段について、鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。
知見1:前提4は、セメントの重量を特定することの必要性に関するものであり、流動化処理土の製造工程中において必ずセメントの重量を計量することを求めるものではないこと。
知見2:セメントは、特定の重量を単位として、即ち、単位重量で販売されていること。例えば1000kg等の特定の単位重量に予め計量され、袋体に封入されて流通・販売されていること。当然ながら単位重量で販売されているセメントの重量は改めて計量しなくても既に特定済みであること。
知見3:単位重量で販売されているセメントの重量を、前提4における特定を必要とするセメントの重量として援用できれば、セメントサイロやサイロ計量瓶は不要となること。
【0023】
そこで、知見1~3に基づいて、前提1~4を全て充足するために次の推論を立てた。
推論1:セメントサイロ及びサイロ計量瓶を不要とするために、市販されているセメントの単位重量をそのまま所定容量のセメントミルクを製造するために特定する必要があるセメントの重量として利用すれば、前提1~4を同時に充足可能となること。
推論2:文献2発明における、製造する流動化処理土の容量に基づいて、必要とするセメントの重量を計量する発想を転換し、セメントの単位重量に基づいて製造する流動化処理土の容量を決定すること。即ち、製造する流動化処理土の容量に応じて必要なセメントの重量を決定するのではなく、計量済みで特定の単位重量で販売されているセメントの重量に基づいて製造する流動化処理土の容量を決定すれば、前提1~4を同時に充足可能となること。
【0024】
推論1,2に基づき、本発明の課題を解決するために、請求項1により、乾燥土とセメントと水を所定の割合で配合してなる流動化処理土を、単位重量のセメントを基準として、所定の含水率の原料土から製造可能な流動化処理土の製造容量と、流動化処理土の製造容量に占める原料土の容量及び水の容量の配合を決定し、原料土の容量に占める乾燥土の容量及び含有水の容量を算出するとともに、水の容量と含有水の容量から追加水の容量を決定し、解泥槽に単位重量のセメントと、決定した原料土の容量及び追加水の容量を投入して混合撹拌する流動化処理土の製造方法を基本として提供する。
【0025】
そして、請求項2により、解泥槽に単位重量のセメントと追加水の容量を投入してセメントミルクを作液した後に、原料土の容量を解泥槽に投入して混合撹拌する方法を、請求項3により、流動化処理土の製造容量に対応する解泥槽の液面位置まで、原料土の容量を解泥槽に投入する方法を、請求項4により、解泥槽内における原料土の液面位置を、解泥槽に設置した液面管理計によって検知する方法を提供する。
【0026】
また、請求項5により、解泥槽に決定した容量となるまで原料土の容量及び追加水の容量を投入して解泥した後に、単位重量のセメントを解泥槽に投入して混合撹拌する方法を、請求項6により、解泥槽内における原料土の容量及び追加水の容量の液面位置を、解泥槽に設置した液面管理計によって検知する方法を、請求項7により、乾燥土とセメントと水の配合を、流動化処理土の比重,スランプフロー値,ブリージング率,一軸圧縮強度から選択した一又は複数を基準として設定する方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
上記構成の本発明によれば、予め重量が計量済みで特定されている単位重量のセメントを基準として、所定の含水率の原料土から製造可能な流動化処理土の製造容量と、流動化処理土の製造容量に占める原料土の容量及び水の容量の配合を決定するため、流動化処理土の製造工程において、セメントの重量を改めて計量する必要がない。そのため、セメントを保管するためのセメントサイロと、セメントの重量を計量するためのサイロ計量瓶を必要とせず、これらの投資費用,施工現場への運搬・組立・解体費用等、更には設置場所の確保が不要となり、その分流動化処理土の低コスト化を実現できる。
【0028】
同様に、ベルトコンベアと計量槽とロードセルの組合せによって行っていた原料土の計量を原料土の容量によって行うため、原料土を計量するための設備装置(ベルトコンベア,計量槽,ロードセル)を必要とせず、これらの投資費用,施工現場への運搬・組立・解体費用等が不要となり、その分流動化処理土の低コスト化を実現できる。また、計量槽とロードセルに代えて、解泥槽内に設置した液面管理計によって解泥槽内に供給される原料土の液面の位置を検知することによって原料土の容量を検知するため、流動化処理土の製造工程を著しく簡易化できる。さらに、原料土の重量計量に合わせて駆動制御が必要であったベルトコンベアを必要とせず、原料土はバックホウ等で計量や制御を必要とすることなく、解泥槽に供給しさえすればよい。
【0029】
よって、本発明によれば、原料土の重量計量のための設備装置(ベルトコンベア,計量槽,ロードセル)とともに、セメントの重量計量のための設備装置(セメントサイロ,サイロ計量瓶)の双方を必要としないため、少量であっても低コストで流動化処理土を効率よく製造することが可能となる。また、製造場所の選択範囲も広がる。その結果、流動化処理土の製造場所の制約がなくなり、その汎用性・機動性が高まるとともに、原料土として掘削残土等の建設発生土を使用する流動化処理土の最大の利点を活かして、他の埋め戻し材に対する競争力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】流動化処理土の組成と製造方法を示す説明図。
図2】流動化処理土の製造工程を示す全体説明図。
図3】流動化処理土の製造工程の一例を示す要部説明図。
図4】流動化処理土の製造装置の要部を示す構成図。
図5】流動化処理土の製造工程の他例を示す要部説明図。
図6】従来の流動化処理土の組成と製造方法を示す説明図。
図7】従来の流動化処理土の製造装置の基本構成図。
図8】文献2発明の流動化処理土の組成と製造方法を示す説明図。
図9】文献2発明の流動化処理土の製造装置の基本構成図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて上記した本発明にかかる流動化処理土の製造方法の実施形態を説明する。なお、図8図9に示す文献2発明と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。図1は流動化処理土1aの組成と製造方法を示す説明図、図2はその製造工程を示す全体説明図、図3は製造工程の一例を示す要部説明図、図4はその製造装置の要部を示す構成図、図5は製造工程の他例を示す要部説明図である。
【0032】
流動化処理土1は、図6に示すように掘削残土等の建設発生土からなる原料土10(乾燥土15及び含有水33)とセメントミルク40(セメント20及び追加水35)を混合撹拌して製造する流動体であり、主として埋め戻し材として使用されている。流動化処理土1は、ポンプ圧送や流し込みが可能な流動性を有し、時間経過によって硬化して地下構造物を包み込んで止水効果を有する。また、不等沈下を防ぐとともに、再掘削も可能であるという埋め戻し材として優れた利点を有し、しかも、建設発生土の再利用を促進し、減容化を図ることができる。
【0033】
流動化処理土1aの組成は、図1図2に示すように乾燥土15と水30とセメント20であり、乾燥土15は、掘削残土等の建設発生土からなる原料土10から供給され、水30は湿潤状態の原料土10に含まれる含有水33と、流動化処理土の配合80に応じて新たに添加する追加水35の2系統から供給される。よって、流動化処理土1aの組成は、乾燥土15や含有水33のように他の組成と複合した状態の原料として供給され、或いはセメント20や追加水35のように他の組成から分離した状態の原料として供給される。
【0034】
原料土10は、礫質土,砂質土,粘性土などの土全般を対象としており、その種類や発生原因に限定はない。特には、各種の建設工事や土木工事、例えば場所打ち杭や地中連続壁の掘削工事等において大量に発生する湿潤状態の建設発生土や建設汚泥を主たる対象としている。建設発生土や建設汚泥等からなる原料土10を流動化処理土1の原料として再利用するためには、これらの原料土10から、予め一定サイズ以上の礫を除去しておく必要がある。流動化処理土1の品質基準では一般埋め戻し材としては礫40mm以下、埋設管周りの埋め戻し材としては礫13mm以下と定められている。そこで、原料土10をバックホウ等で公知の分級装置に供給して、原料土10から所定サイズの礫を除去した分級後の原料土置場(図示略)や原料土槽(図示略)等の所定の施設に貯留しておく。
【0035】
流動化処理土1の品質基準は、その用途によって様々であり、図2に示す比重71,スランプフロー値73,ブリージング率75,一軸圧縮強度77等の基準によって定められる。そのため、流動化処理土1の製造に際しては、実際に使用する湿潤状態の原料土10を用いて、要求される品質基準を満足するように乾燥土15とセメント20と水30の配合を決定する必要がある。流動化処理土1の品質基準の一例として東京都における埋め戻し材として使用可能な流動化処理土1の品質基準を下記に示す。本実施形態では、この品質基準を例として説明するが、もとより、この品質基準に限定されるものではない。品質基準は用途に応じて適宜設定すればよい。
一軸圧縮強度 :1.3~5.6kgf/cm2(28日経過後)
スランプフロー値 :180~300mm(シリンダー法)
ブリージング率 :1%未満
比重 :1.5以上
【0036】
本発明の特徴は、図1に示すように所定容量の流動化処理土1aの製造工程において、流動化処理土1aを構成する単位重量のセメント20a,原料土の容量10a,追加水の容量35aのいずれの原材料も、重量計量不要95としたことである。流動化処理土1aの製造に際しては、上記した原料を解泥槽55に投入して、混合撹拌59することにより、流動化処理土1aを製造することができる。本発明で単位重量とは、販売や流通に際して基準として特定された重量のことである。本発明で使用する単位重量のセメント20aは、予め基準の重量に計量され、所定の袋体27等に収納されて流通・販売されている。即ち、予め重量が単位重量に計量済みであり、流動化処理土1aの製造過程において改めて重量を計量する必要がない。本実施形態では、単位重量として、1000kgに計量されて袋体27(図4参照)に収納されて流通・販売されている単位重量のセメント20aを使用した。以下、その具体的な製造工程を説明する。
【0037】
先ず、試料ピースの試験練りを行って、単位重量のセメント20aによって製造する流動化処理土の配合80を決定する。流動化処理土1aの比重71の目安を設定し、この比重71を充足する配合式90における[水の重量/(セメントの重量+乾燥土の重量)]を設定した上で、使用する原料土10の含水率を測定し、その含水率に基づいて、2000ミリリットル程度の流動化処理土1を製造するために必要とするセメント20の重量及び原料土10の重量を、例えば次のように仮定して試料ピースを製造する。
【0038】
前記した東京都の基準を参照とし、流動化処理土1aの比重71を1.5程度と設定すると、配合式90における[水の重量/(セメントの重量+乾燥土の重量)]の比率は、経験則及び過去の実測データに照らし、0.88程度となる。この0.88程度の比率を充足して、2000ミリリットル程度の流動化処理土1aの試料ピースを製造するために必要なセメント20の重量を経験則及び過去の実測データに照らし160グラムと仮定する。セメント20の真比重は3.04のため、セメント160グラムの容量は53ミリリットル(160/3.04)となる。一方、使用する原料土10の重量を2000グラムと仮定すると、含水率の実測値が28.8%の場合、原料土10に含まれる乾燥土15は1424グラム,含有水33は576グラムとなる。土の真比重は2.65のため、乾燥土15の容量は537ミリリットル(1424/2.65)となる。また、配合式90の比率が0.88の場合の、水30の量(含有水33+追加水35)は、1394グラム[0.88×(1424/乾燥土15+160/セメント20])となり、含有水33の576グラムを除いた追加水35の重量は818グラム(1394-576)となり、その容量も818ミリリットルとなる。その結果、前記流動化処理土の配合80で試験練りをした試料ピースは、1984ミリリットル(537/乾燥土15+53/セメント20+576/含有水33+818/追加水35)となる。これらをまとめると表1に示すとおりである。
【0039】
【表1】
【0040】
上記試験練りにより、原料土10を使用した2000ミリリットルに近似した1984ミリリットルの流動化処理土1aの試料ピースが得られたので、設定したスランプフロー値73の値を充足するか否かの所定の試験を行う。スランプフロー試験において、スランプフロー値73が設定値より小さければ、配合式90の比率を大きくなるように調節する。具体的には原料土10の重量を減らしたり、追加水35の重量を増やす等の調整を行って他の試料ピースを製造して再試験を行う。一方スランプフロー値73が設定値より大きければ、配合式90の比率を小さくするように調節する。具体的には原料土10の重量を増やしたり、追加水35の重量を減らす調整を行って、他の試料ピースを製造して再試験を行う。そして、これらの試料ピースの中から、比重71,スランプフロー値73を充足する流動化処理土の配合80を特定する。併せて、比重71,スランプフロー値73を充足した流動化処理土の配合80に基づく流動化処理土1aのブリージング率75を測定し、その合否を判断する。
【0041】
次に、一軸圧縮強度77の試験は、4000ミリリットル程度の試料ピースで行う必要があるため、前記した比重71,スランプフロー値73,ブリージング率75を充足した流動化処理土の配合80に基づいて、4000ミリリットル程度の試料ピースを製造する。具体的には、前記した2000ミリリットル程度の配合を2倍した流動化処理土の配合80を使用する。なお、一軸圧縮強度77の試験に対応するため、予めセメント20の重量を320グラム(160×2)から変化させた配合で比重71,スランプフロー値73,ブリージング率75を充足する複数の流動化処理土の配合80を複数特定して、試料ピースを製造する。例えば、320グラムのセメントを300グラム,340グラム等に変化させた流動化処理土の配合80である。この一軸圧縮強度77の試験を最終的に充足した試料ピースの配合を基準として、単位重量のセメント20aから製造する流動化処理土の配合80を決定する。
【0042】
流動化処理土の配合80を決定する手段に限定はなく、試行錯誤や経験則、過去のデータの蓄積に基づいて試料ピースを作成し、流動化処理土の配合80を決定できればよい。試料ピースは2000ミリリットル及び4000ミリリットルの容量で行うため、その重量も簡易な小型の装置で済むため、従来と同様に原料の重量を基準として行うことができる。本発明では試験練りにおいても単位重量としてのセメントの重量を決定した上で、原料土の重量を決定して行った。
【0043】
本実施形態では、予め計量されて袋体27に封入されて流通・販売している1000kgのセメント20を単位重量のセメント20aとして使用している。そのため、例えば前記した試験練りにおけるセメント20の重量160グラムを使用した流動化処理土の配合80が使用可能であれば、単位重量のセメント20aとして重量1000kgのセメント20を使用する流動化処理土の配合80に必要な情報は前記した表1に示す流動化処理土の配合80を6250倍すれば入手できる(1000÷0.16=6250)。その数値を表2に示す。なお、表2の数値を経験則及び過去の実測データに照らし、微調整することも可能である。
【0044】
【表2】
【0045】
前記した試験練りによって、表2に示すように、1000kgの単位重量のセメント20aを基準として、特定の含水率(28.8%)の原料土10から所定の品質(比重71,スランプフロー値73,ブリージング率75,一軸圧縮強度77)を充足して製造することが可能な流動化処理土1aの製造容量50、及び流動化処理土1aの製造容量50に占める原料土の容量10a及び水の容量30aを知ることができる。更に原料土の容量10aから、原料土の容量10aに含まれる乾燥土の容量15a及び含有水の容量33aを算出することができ、水の容量30aから含有水の容量33aを除くことによって必要な追加水の容量35aを算出することができる。
【0046】
この結果に基づいて、流動化処理土1aを製造するには、図2に示すように解泥槽55に単位重量のセメント20aとして1000kgのセメントと、5112.5リットルの追加水の容量35aと、6958.49リットルの原料土の容量10aを投入して、混合撹拌59することにより、所定の品質を充足する流動化処理土1aを製造することができる。追加水の容量35aは追加水35を貯水している清水槽37から水中ポンプ39で解泥槽55に移送する際に流量計38で必要量を検知すればよく、又原料土の容量10aは解泥槽55に設置した液面管理計57によって必要な容量を検知すればよい。
【0047】
単位重量のセメント20a、追加水の容量35a、原料土の容量10aの解泥槽55への投入手順は特に限定はなく、その一例を図3図4に基づいて説明する。先ず、単位重量のセメント20aとして収納して販売に供されている袋体27をバックホウ65等の重機で吊支し、解泥槽55の上方に移動し、袋体27の底部を開放することにより単位重量のセメント20a(本実施形態では1000kg)を解泥槽55に投入する。次に清水槽37に貯水している追加水35から水中ポンプ39で流動化処理土1aの製造に必要な量の追加水の容量35a(本実施形態では5112.5リットル)を流量計38で計量して供給し、バックホウ65を使用して混合撹拌59することにより、セメントミルク(単位重量のセメント20a+追加水の容量35a)を作液する。なお、解泥槽55への追加水の容量35aの供給と単位重量のセメント20aの投入の順序はどちらが先であってもよい。
【0048】
次に、単位重量のセメント20aの投入に使用したバックホウ65を利用して、セメントミルク(単位重量のセメント20a+追加水の容量35a)が貯留されている解泥槽55に、原料土置場(図示略)や原料土槽(図示略)等の所定の施設に貯留している湿潤状態の原料土の容量10aを投入する。原料土の容量10aの投入に際しては、解泥槽55に付設した液面管理計57が流動化処理土1aの製造容量50を検知するまで投入する。よって、液面管理計57によって検知する解泥槽55の液面の位置は製造する流動化処理土1aの製造容量50に応じて決定する。そして、単位重量のセメント20aと追加水の容量35aから作液したセメントミルクと原料土の容量10aをバックホウ65等で混合撹拌59することによって、流動化処理土1aを製造することができる。
【0049】
流動化処理土1aの製造工程の他例としては、図5に示すように、解泥槽55に、それぞれ所定の容量の湿潤状態の原料土の容量10a及び追加水の容量35aを液面管理計57で検知するまで投入した後に、単位重量としてのセメント20aを投入して混合撹拌59することによって、流動化処理土1aを製造するようにしてもよい。要すれば、単位重量としてのセメント20aと原料土の容量10a及び追加水の容量35aを混合撹拌59することができればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記構成の本発明によれば、予め重量が計量済みで特定されている単位重量のセメントを基準として、所定の含水率の原料土から製造可能な流動化処理土の製造容量と、流動化処理土の製造容量に占める原料土の容量及び水の容量の配合を決定するため、流動化処理土の製造工程において、セメントの重量を改めて計量する必要がない。そのため、セメントを保管するためのセメントサイロと、セメントの重量を計量するためのサイロ計量瓶を必要とせず、これらの投資費用,施工現場への運搬・組立・解体費用等、更には設置場所の確保が不要となり、その分流動化処理土の低コスト化を実現できる。
【0051】
同様に、ベルトコンベアと計量槽とロードセルの組合せによって行っていた原料土の計量を原料土の容量によって行うため、原料土を計量するための設備装置(ベルトコンベア,計量槽,ロードセル)を必要とせず、これらの投資費用,施工現場への運搬・組立・解体費用等が不要となり、その分流動化処理土の低コスト化を実現できる。また、計量槽とロードセルに代えて、解泥槽内に設置した液面管理計によって解泥槽内に供給される原料土の液面の位置を検知することによって原料土の容量を検知するため、流動化処理土の製造工程を著しく簡易化できる。さらに、原料土の重量計量に合わせて駆動制御が必要であったベルトコンベアを必要とせず、原料土はバックホウ等で計量や制御を必要とすることなく、解泥槽に供給しさえすればよい。
【0052】
よって、本発明によれば、原料土の重量計量のための設備装置(ベルトコンベア,計量槽,ロードセル)とともに、セメントの重量計量のための設備装置(セメントサイロ,サイロ計量瓶)の双方を必要としないため、少量であっても低コストで流動化処理土を効率よく製造することが可能となる。また、製造場所の選択範囲も広がる。その結果、流動化処理土の製造場所の制約がなくなり、その汎用性・機動性が高まるとともに、原料土として掘削残土等の建設発生土を使用する流動化処理土の最大の利点を活かして、他の埋め戻し材に対する競争力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1a…流動化処理土
10…原料土
10a…原料土の容量
15…乾燥土
15a…乾燥土の容量
20…セメント
20a…単位重量のセメント
27…袋体
30…水
30a…水の容量
33…含有水
33a…含有水の容量
35…追加水
35a…追加水の容量
37…清水槽
38…流量計
39…水中ポンプ
40…セメントミルク
45…セメントミルク作液槽
48…セメントミルクポンプ
50…(流動化処理土の)製造容量
55…解泥槽
57…液面管理計
65…バックホウ
80…流動化処理土の配合
90…配合式
95…重量計量不要
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9