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特開2024-70459孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法
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  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図1
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図2
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図3
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図4
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図5
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図6
  • 特開-孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070459
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】孔壁保護具、及び、該孔壁保護を用いたアンカー施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180967
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】511245994
【氏名又は名称】小田鐵網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 緒
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗平
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GC00
(57)【要約】
【課題】 孔壁に仮設される鋼管の使い回しを可能とするための孔壁保護具、及び、該孔壁保護具を用いたアンカー設置方法を提供する。
【解決手段】 本開示の孔壁保護具1は、円筒状の網部材2と、網部材2の内周面2aを外径方向に向けて支持する支持部材3とを備える。支持部材3を、網部材2の内周面2aに沿って螺旋状に巻き回すように設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の網部材と、前記網部材の内周面を外径方向に向けて支持する支持部材と、を備えた孔壁保護具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記網部材の内周面に沿って螺旋状に巻き回されている、請求項1に記載の孔壁保護具。
【請求項3】
前記網部材及び支持部材は、帯状に設けられた線材から構成されている、請求項1に記載の孔壁保護具。
【請求項4】
複数の請求項1に記載の孔壁保護具と、鋼管と、を用いて複数のアンカーを設置する方法であって、
第1アンカー孔を掘削しつつ、掘削した前記第1アンカー孔に鋼管を設置する工程と、
前記鋼管の内側に第1前記孔壁保護具を設置する工程と、
前記第1アンカー孔から前記鋼管を抜き取る工程と、
第2アンカー孔を掘削しつつ、掘削した前記第2アンカー孔に前記鋼管を設置する工程と、
前記鋼管の内側に前記孔壁保護具を設置する工程と、
前記第2アンカー孔から前記鋼管を抜き取る工程と、
前記第1孔壁保護具の内側にグラウトを投入した後、続けて、前記第2孔壁保護具の内側にグラウトを投入する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、孔壁を保護する孔壁保護具、及び、該孔壁保護具を用いたアンカー施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面等の地盤にドリルでアンカー孔を掘削し、アンカー孔に芯棒を設置し、グラウトを投入して、アンカーを施工する技術が知られている。具体的には、例えば、図4,5(a)に示すように、ドリル7に鋼管6を装着し、法面の地盤Gを掘削しつつ、アンカー孔5の孔壁を鋼管6で保護し、鋼管6に芯棒41を設置し、グラウト42を投入する方法が知られている。また、特許文献1には、アンカー孔の孔壁を保護するための孔壁保護管が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-123445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のアンカー施工方法によれば、アンカー毎に、グラウトの投入後に鋼管を抜き取るため、たとえ少量であってもグラウトの投入作業が伴い、時間と労力がかかるという問題があった。また、鋼管に保護された状態でグラウトの投入が完了しても、鋼管を抜き取った段階ではグラウトは硬化しておらず、孔壁が崩落して芯棒に不純物が付着する可能性があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、鋼管を抜き取った後でもグラウトの投入を可能とし、グラウトが硬化するまで孔壁を保護し続けることが可能な孔壁保護具、及び、該孔壁保護具を用いたアンカー施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の孔壁保護具は、以下の特徴を備える。
(1)円筒状の網部材と、網部材の内周面を外径方向に向けて支持する支持部材と、を備えたこと。
【0007】
(2)上記(1)の場合に、支持部材は、網部材の内周面に沿って螺旋状に巻き回されていること。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の場合に、網部材及び支持部材は、帯状に設けられた線材から構成されていること。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示のアンカー施工方法は、以下の特徴を備える。
(4)上記(1)~(3)の孔壁保護具と、鋼管と、を用いて複数のアンカーを施工する方法であって、第1アンカー孔を掘削しつつ、掘削した第1アンカー孔に鋼管を設置する工程と、鋼管の内側に第1孔壁保護具を設置する工程と、第1アンカー孔から鋼管を抜き取る工程と、第2アンカー孔を掘削しつつ、掘削した第2アンカー孔に鋼管を設置する工程と、鋼管の内側に孔壁保護具を設置する工程と、第2アンカー孔から鋼管を抜き取る工程と、第1孔壁保護具の内側にグラウトを投入した後、続けて、第2孔壁保護具の内側にグラウトを投入する工程と、を含むこと。
【発明の効果】
【0010】
本開示の孔壁保護具、及び、該孔壁保護具を用いてアンカーを施工する方法によれば、鋼管を孔壁保護具に置き換えて抜き出した鋼管を次のアンカー孔の掘削に流用できる。このため、例えば、孔壁保護具で孔壁を保護しつつ複数のアンカー孔を掘削した後、全てのアンカー孔に一気にグラウトを投入する等の方法でアンカーを設置できるという利点がある。また、鋼管を抜き取る際に、孔壁が崩落して芯棒に不純物が付着するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】吹付法枠工を施した法面を例示する、(a)正面図、(b)A-A線断面図である。
図2】本開示の一実施形態を示す孔壁保護具の(a)斜視図、(b)分解斜視図である。
図3】(a)要部Bの拡大図、(b)支持部材の模式図である。
図4】アンカー孔を掘削し、鋼管を設置する方法を説明する説明図である。
図5】鋼管設置後における、(a)従来のアンカー施工方法、(b)本開示のアンカー施工方法を説明する説明図である。
図6】複数本のアンカーを施工する方法を説明する説明図である。
図7】孔壁保護具の連結例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の孔壁保護具をアンカー孔5の孔壁を保護する孔壁保護具1に具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示の孔壁保護具は、他の円筒状の孔壁に対しても流用可能である。
【0013】
図1(a)に例示する吹付法枠工は、法面に格子状のコンクリートCを造成し、格子の交差部をアンカー4を用いて地盤Gに固定し、法面を安定化する工法である。図1(b)に示すように、アンカー4は、金属材よりなる芯棒41及びコンクリート材よりなる本体部40から構成され、孔壁保護具1と一体化されてアンカー孔5内に埋設されている。芯棒41の先端部は、保護キャップ8により被覆されている。
【0014】
図2に示すように、この実施形態の孔壁保護具1は、アンカー孔5(図5参照)に埋設される円筒状の網部材2と、網部材2の内周面2aを支持する支持部材3とを備える。網部材2は、シート状に形成された金網の両側辺を綴じ合わせて円筒状に形成したものであり、網部材2の筒長は、アンカー孔5の深さに応じて適宜変更可能である。また、網部材2の筒径は、外周面2bが鋼管6の内周面に沿う大きさとなるように設けられる。
【0015】
支持部材3は、網部材2の内周面2aに沿って螺旋状(コイル状)に巻き回されている。支持部材3は、網部材2の内周面2aを外径方向に向けて支持することにより、網部材2の変形を防止している。支持部材3の長さは、網部材2の筒長と略同じ長さに設けることができる。また、支持部材3は、所定の間隔で網部材2に固定することもできる。網部材2及び支持部材3の素材は金属材等を選択でき、表面に防錆加工が施されていることが好ましい。さらに、支持部材3を螺旋状に巻き回したことにより、支持部材3の長さ方向への若干の伸縮が可能となり、孔壁保護具1全体の筒長を微調整することもできる。
【0016】
図3に示すように、網部材2及び支持部材3を構成する線材21,31は、各々、帯状に設けられている。ここで、「帯状」とは、線材21,31の断面形状が長丸又は矩形であって、表面及び裏面を有する形状を示す。
【0017】
図3(a)に示すように、網部材2は、各々螺旋状に形成した複数本の線材21を圧し潰して山部21a及び谷部21bが交互に表れるように平坦化し、例えば、一の線材21の谷部21bと他の線材21’の山部21a’とを絡み合わせて網状に形成したものである。また、各々の線材21の帯面は網部材2の内周面2a又は外周面2bを構成する。帯状の線材21を採用したため、線材の断面形状を正円形とした場合と比較して、網部材2の内径方向への突出が少なく、網部材2の内部空間を広く設けることができる。また、網部材2の外周面2bとアンカー孔5の孔壁との接触面積が増大するため、より確実に孔壁の崩壊を防止することができる。
【0018】
図3(b)に示すように、線材31の帯面は支持部材3の内周面3a又は外周面3bを構成する。帯状の線材31を採用したため、線材の断面形状を正円形とした場合と比較して、支持部材3の内径方向への突出が少なく、支持部材3の内部空間を広く確保することができる。また、支持部材3の外周面3bと網部材2の内周面2aとの接触面積が増大し、網部材2をより確実に支持することができる。
【0019】
続いて、上記孔壁保護具1を使用したアンカー施工方法について、従来の方法と比較しつつ、図4~6に基づいて説明する。地盤Gは実際には法面を構成するが、図4~6では、図面の簡素化のため、本来傾斜している法面の地盤Gを水平に表記する。
【0020】
図4に示すように、アンカー孔5への鋼管6の設置に際しては、ドリル7に鋼管6を装着し(図4(1))、ドリル7で地盤Gを掘削しつつ、鋼管6を埋設し(図4(2))、アンカー孔5の掘削が完了した後に(図4(3))、鋼管6を残してドリル7を抜き取る(図4(4))。
【0021】
ここで、従来の施工方法では、図5(a)に示すように、鋼管6内に芯棒41を配置してグラウト42を投入し(図5(a-1))た後で、鋼管6を抜き出し(図5(a-2))、アンカー4の埋設が完了した後に(図5(a-3))、次のアンカー4の施工に移行する(図4(1))。
【0022】
一方、本開示の施工方法では、図5(b)に示すように、鋼管6の内部に孔壁保護具1を設置し(図5(b-1))た後で、鋼管6を抜き取る(図5(b-2))。抜き出した鋼管6を用いて、次のアンカー4の施工を開始する(図4(1))。その後、孔壁保護具1内に芯棒41を配置し、グラウト42を投入し(図5(b-3))、アンカー4の埋設が完了する(図5(a-4))。
【0023】
本開示の施工方法によれば、鋼管6を孔壁保護具1に置き換えるので、グラウト42の投入前に鋼管6を抜き出しても、アンカー孔5が崩壊しない。このため、例えば、図6に示すように、1つ目のアンカー孔5に設置された鋼管6の内側に1つ目の孔壁保護具1を設置し、1つ目のアンカー孔5から鋼管6を抜き取って、2つ目のアンカー孔5を掘削し、2つ目のアンカー孔5に設置された鋼管6の内側に2つ目の孔壁保護具1を設置し、2つ目のアンカー孔5から鋼管6を抜き取る。この工程を繰り返して、1~n個のアンカー孔5に各々1~n個の孔壁保護具1を設置する。その後、1~n個の孔壁保護具1の全てに必要十分な量のグラウト42を生成し、1~n個の孔壁保護具1の内側に順次又は一気にグラウト42を投入する、との施工方法が可能となる。
【0024】
この施工方法によれば、その都度グラウトを生成し、投入する必要が無いため、グラウト42の生成、投入の手間や消費量を削減できるとともに、グラウト42の品質の均一化を図ることができる。また、鋼管6を抜き取る際に、孔壁が崩落して芯棒41に不純物が付着するおそれもない。さらに、アンカー4の施工後も孔壁保護具1が埋設されたままであるため、アンカー4が補強され、アンカー4の耐久性を向上させることができる。その他、グラウト42の投入前に鋼管6を抜き取るため、鋼管6にグラウト42が付着せず、鋼管6の洗浄作業が手軽となる。円筒状の網部材2を支持部材3により支持する構造であるため、部品点数が少なく、容易に製造できる。
【0025】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【0026】
例えば、図7に示すように、孔壁保護具1の端部に連結部11を設けることも可能である。孔壁保護具1を連結して所望の長さの孔壁保護具1とすることにより、現場毎に異なる長さの孔壁保護具1を製造する手間や、長尺の孔壁保護具1を運搬する負担を低減することができる。
【0027】
連結部11は、網部材2から支持部材3を突出させた雄型の連結部11aとしたり、網部材2の内部に支持部材3を引き込む雌型の連結部11bとしたりすることができる。各孔壁保護具1において、雄型連結部11aと雌型連結部11bとを、自由に組み合わせることもできる。例えば、図7(a)のように、孔壁保護具1の両端を雄型連結部11a又は雌型連結部11bとしたり、図7(b)のように、孔壁保護具1の一端を雄型連結部11aとし、他端を雌型連結部11bとしたりすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 孔壁保護具
2 網部材
3 支持部材
4 アンカー
5 アンカー孔
6 鋼管
7 ドリル
8 保護キャップ
11 連結部
21 線材(網部材)
31 線材(支持部材)
40 本体部
41 芯材
42 グラウト
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7