(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070467
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】給電システム、及び、給電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20240516BHJP
H02J 50/23 20160101ALI20240516BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180987
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正明
(57)【要約】
【課題】受電装置の受電電力を増大可能な位相を迅速に設定可能な給電システム、給電システム、及び、給電方法を提供する。
【解決手段】給電システムは、給電装置と、給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置とを含む給電システムであって、給電装置は、電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、複数のアンテナから第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部とを有し、複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、各グループは、複数のアンテナを含み、複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個のグループに含まれるアンテナは、第1受電装置に送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、第1受電装置は、アンテナサブセットを構築するグループとして、送電信号の受電電力が大きい上位N個のグループを選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置と、
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置と
を含む給電システムであって、
前記給電装置は、
電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナから前記第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部と
を有し、
前記複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、
各グループは、複数の前記アンテナを含み、
前記複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個の前記グループに含まれるアンテナは、前記第1受電装置に前記送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、
前記第1受電装置は、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記送電信号の受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、給電システム。
【請求項2】
前記送電制御部は、前記グループ毎に複数のタイムスロットにわたって符号値がランダムに設定された符号表に基づいて、前記複数のタイムスロットにわたって前記送電信号の位相をシフトしながら前記複数のアンテナから前記送電信号を送電し、
前記第1受電装置は、前記複数のタイムスロットにわたって前記複数のアンテナから送電された前記送電信号を前記第1受電装置が受電した際の受電電力を前記グループ毎に求め、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記グループ毎の前記受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記第1受電装置は、
受電した前記送電信号を復調して得る復調情報と、前記符号表に含まれる前記複数のタイムスロットにわたる符号値とに基づいて、チャネル推定値を前記グループ毎に求め、
前記N個のグループについてのN個の前記チャネル推定値に基づいて、前記N個のグループの各々から前記第1受電装置が前記送電信号を受電した際の受電位相を求め、
前記N個のグループについての前記受電位相を前記送電制御部に通知し、
前記送電制御部は、前記第1受電装置から通知された前記N個のグループについての前記受電位相に基づいて、前記N個のグループから前記第1受電装置が受電する際の受電位相が揃うように、各グループの前記送電位相を制御する、請求項2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記送電制御部は、前記第1受電装置から通知された前記N個のグループについての前記受電位相に基づいて、前記N個のグループの前記送電位相の初期値を求め、前記N個のグループについてのN個の前記初期値に対して、共通のランダムな位相シフト量を前記タイムスロット毎に追加することによって、前記N個のグループから前記第1受電装置が受電する際の受電位相が揃うように、各グループの前記送電位相を制御する、請求項3に記載の給電システム。
【請求項5】
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第2受電装置をさらに含み、
前記送電制御部は、前記複数のグループのうちのN個の前記グループ以外のグループに含まれるアンテナの送電位相を前記タイムスロット毎にランダムに設定する、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記第2受電装置の位置は固定されている、請求項5に記載の給電システム。
【請求項7】
前記第1受電装置は、移動可能である、請求項1に記載の給電システム。
【請求項8】
給電装置と、
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置と
を含む給電システムにおける給電方法であって、
前記給電装置は、
電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナから前記第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部と
を有し、
前記複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、
各グループは、複数の前記アンテナを含み、
前記複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個の前記グループに含まれるアンテナは、前記第1受電装置に前記送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、
前記第1受電装置が、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記送電信号の受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システム、及び、給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受電機器の方向を検出する第1の検出手段と、第1の検出手段によって検出された受電機器の方向に無線で給電電力を放射する第1の放射、及び、給電電力を放射する方向を定められた範囲で変更しながら無線で給電電力を放射する第2の放射を行うよう、給電電力を放射する放射部を制御する制御手段とを有する給電機器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の給電機器は、複数の受電装置に対して給電する場合に、多くの受電量が必要な特定の受電装置への給電と、特定の受電装置以外の受電装置への給電とを両立することを行っていない。
【0005】
そこで、多くの受電量が必要な特定の受電装置への給電と、特定の受電装置以外の受電装置への給電とを両立可能な給電システム、及び、給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の給電システムは、給電装置と、前記給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置とを含む給電システムであって、前記給電装置は、電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、前記複数のアンテナから前記第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部とを有し、前記複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、各グループは、複数の前記アンテナを含み、前記複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個の前記グループに含まれるアンテナは、前記第1受電装置に前記送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、前記第1受電装置は、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記送電信号の受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する。
【発明の効果】
【0007】
多くの受電量が必要な特定の受電装置への給電と、特定の受電装置以外の受電装置への給電とを両立可能な給電システム、及び、給電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の給電システム300を示す図である。
【
図2A】特定デバイス50Aの構成の一例を示す図である。
【
図2B】通信部59が給電装置100に送信するパケットのデータ構造の一例を示す図である。
【
図5A】64個のアンテナ素子111へのインデックスの割り振りの一例を示す図である。
【
図5B】64個のアンテナ素子111へのインデックスの割り振りの一例を示す図である。
【
図5C】64個のアンテナ素子111へのインデックスの割り振りの一例を示す図である。
【
図5D】グループインデックス毎のアンテナ素子111同士の間の平均的な距離の一例を示す図である。
【
図6A】2×2配置の4つのアンテナ素子111のグループインデックスを示す図である。
【
図6B】2×2配置の4つのアンテナ素子111のグループインデックスを示す図である。
【
図9A】特定デバイス50Aが受電する送電信号の位相の最適化を説明する図である。
【
図9B】特定デバイス50Aが受電する送電信号の位相の最適化を説明する図である。
【
図9C】特定デバイス50Aが受電する送電信号の位相の最適化を説明する図である。
【
図9D】特定デバイス50Aが受電する送電信号の位相の最適化を説明する図である。
【
図10】給電システム300の制御装置140及び特定デバイス50Aが実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【
図11】シミュレーションの条件の一例を説明する図である。
【
図12A】比較用のランダムビームフォーミングで送電した場合の受電電力についてのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図12B】給電システム300のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の給電システム、給電システム、及び、給電方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
<給電システム300>
図1は、実施形態の給電システム300を示す図である。給電システム300は、給電装置100と特定デバイス50Aとを含む。特定デバイス50Aは、受電装置の一例である。以下では、XYZ座標系を用いて説明する。平面視とはXY平面視のことである。また、給電システム300は、給電装置100と複数のデバイス50とを含んでもよい。複数のデバイス50には、特定デバイス50Aと、特定デバイス50A以外の複数の非特定デバイス50Bとが含まれる。
【0011】
給電装置100は、一例として、スマート工場、大規模プラント、物流センタ、倉庫等の大規模な施設の領域10に配置される。給電装置100は、アレイアンテナ110、フェーズシフタ120、マイクロ波発生源130、及び制御装置140を含み、領域10内に存在する複数のデバイス50に非接触で給電(マイクロ波給電)を行う。実施形態の給電方法は、給電装置100によって実現される給電方法であり、特に制御装置140が実行する処理によって実現される。
【0012】
給電装置100は、不特定多数のデバイス50に給電を行う際に、アレイアンテナ110にビームフォーミングでの送電を行わせる。アレイアンテナ110の複数のアンテナ素子111は、後述する送電制御部が指定した送電位相で送電可能である。複数のアンテナ素子111が出力する送電信号の位相を固定すると、複数のアンテナ出力信号から形成されるビームによって領域10内に定在波が生じ、定在波の節の位置に存在するデバイス50には電力が殆ど供給されなくなる。このような事態を避けるために、給電装置100は、複数のアンテナ素子111から出力される複数の送電信号の位相を時系列的にランダムにシフトさせて、定在波の節が特定の場所に長時間にわたり生じないようにしている。換言すれば、定在波の節が領域10内で移動するようにしている。送電信号の位相は、タイムスロットに従ってシフトされる。なお、送電信号とは、アンテナ素子111から送電(送電)される信号であり、所定の電力を有するRF(Radio Frequency)信号である。送電信号の周波数は、一例として、918MHzである。
【0013】
このように複数のアンテナ素子111から出力される複数の送電信号の位相をタイムスロットに従ってランダムにシフトさせて形成するビームでの送電を行うことを以下ではランダムビームフォーミングと称す。
【0014】
また、複数のデバイス50の中には、内部のバッテリ54を充電するためにより多くの受電電力を必要とするデバイス50が存在しうる。例えば、他のデバイス50よりも多くの電力を消費して内部のバッテリ54の残量が少なくなっているデバイス50である。このようにより多くの受電電力を必要とするデバイス50を特定デバイス50Aと称す。
図1には、ある時点における1つのデバイス50を特定デバイス50Aとして示す。特定デバイス50Aは、第1受電装置の一例である。
【0015】
特定デバイス50Aは、複数のアンテナ素子111のうちのアンテナサブセット110Aに含まれる複数のアンテナ素子111から主に受電する。ランダムビームフォーミングよりも、より集中的に送電を行うことにより、特定デバイス50Aのバッテリ54を早期に充電するためである。
【0016】
アンテナサブセット110Aに含まれる複数のアンテナ素子111から特定デバイス50Aへの送電は、フレーム毎に位相が設定される。
図1では、アンテナサブセット110Aに4つのアンテナ素子111が含まれている。アンテナサブセット110A、及び、特定デバイス50Aへの送電信号の位相シフトについては後述する。
【0017】
複数のデバイス50のうち、特定デバイス50A以外を非特定デバイス50Bと称す。すべてのデバイス50は、状況に応じて特定デバイス50Aになり得る。特定デバイス50Aは、バッテリ54の充電量が十分な量になれば、アンテナサブセット110Aからの集中的な電力供給が行われなくなり、非特定デバイス50Bになる。非特定デバイス50Bは、第2受電装置の一例である。非特定デバイス50Bは、アンテナサブセット110Aを含むアンテナ素子111からランダムビームフォーミングによる送電を受ける。
【0018】
また、特定デバイス50Aは、Automatic Guided Vehicle(AGV)、又は、Autonomous Mobile Robot(AMR)等のような遠隔管理可能な移動体に搭載されていて、移動可能であってもよい。すべての複数のデバイス50が、このような移動体に搭載されていて、状況によって特定デバイス50Aになることができる構成であってもよいし、すべての複数のデバイス50のうちの一部のデバイス50のみが、このような移動体に搭載されていて、状況によって特定デバイス50Aになることができる構成であってもよい。以下では、一例として特定デバイス50Aが移動体に搭載されていて移動可能である形態について説明する。
【0019】
給電装置100は、非特定デバイス50Bへのランダムビームフォーミングによる送電と、特定デバイス50Aへのアンテナサブセット110Aからの送電とを両立する給電装置である。なお、以下では、特定デバイス50Aと非特定デバイス50Bとを特に区別しない場合には、単にデバイス50と称す。
【0020】
また、以下では、一例として、アレイアンテナ110が、64個のアンテナ素子111を有する形態について説明する。給電システム300は、64個のアンテナ素子111の中からアンテナサブセット110Aに含まれるアンテナ素子111を選択する選択処理を簡易化するために、64個のアンテナ素子111を16個のグループに分ける。各グループは、4個のアンテナ素子111を有する。16個のグループには、それぞれ、1~16のグループインデックスが付与される。
【0021】
<特定デバイス50Aの構成>
図2Aは、特定デバイス50Aの構成の一例を示す図である。特定デバイス50Aは、アンテナ51、スイッチSW、制御部52、RF/DC(Direct Current)変換部53、バッテリ54、直交検波部55、チャネル推定部56、サブセット選択部57、受電位相推定部58、及び通信部59を有する。通信部59は、アンテナ59Aを有する。
【0022】
アンテナ51は、1又は複数のアンテナ素子111から電力を受電するためのアンテナである。アンテナ51は、受電した電力をスイッチSWに出力する。スイッチSWは、制御部52によって切り替えられ、アンテナ51の接続先をRF/DC変換部53と直交検波部55のいずれかに切り替える。
【0023】
制御部52は、各フレームにおける最適化期間と給電期間とでスイッチSWを切り替える。制御部52は、最適化期間ではスイッチSWを直交検波部55に接続するように切り替え、給電期間ではスイッチSWをRF/DC変換部53に接続するように切り替える。
【0024】
制御部52は、最適化期間では、直交検波部55、チャネル推定部56、サブセット選択部57、受電位相推定部58、及び通信部59に、受電位相推定部58において得られる受電位相を表すデータを給電装置100の制御装置140に送電させる処理を行わせる。
【0025】
また、制御部52は、給電期間では、アンテナ51を介してアンテナ素子111から受電する受電電力をバッテリ54に充電する充電制御を行う。
【0026】
バッテリ54は、一例として二次電池又はキャパシタであり、アンテナ51から供給される電力を充電する。バッテリ54に充電される電力は、スイッチSW、制御部52、RF/DC変換部53、直交検波部55、チャネル推定部56、サブセット選択部57、受電位相推定部58、及び通信部59が動作する際に利用される。
【0027】
バッテリ54には、電力を消費する負荷が接続されていてもよい。例えば、負荷は、温度や湿度等を検出するセンサであってもよく、この場合にはデバイス50をセンサデバイスとして取り扱うことができる。また、負荷は、モータやアクチュエータ等の動力源であってもよく、デバイス50は動的な作業を行うデバイスであってもよい。
【0028】
また、デバイス50が移動可能な移動体に取り付けられている場合には、バッテリ54が充電する電力は、負荷としての移動体のモータ等の動力源や制御部等を駆動するための電力として利用することができる。
【0029】
RF/DC変換部53は、アンテナ51で受電(受信)した送電信号(RF信号)を直流電力に変換してバッテリ54に出力するコンバータ(変換回路)である。
【0030】
直交検波部55は、アンテナ51で受電した送電信号を復調して受信系列を取り出し、チャネル推定部56に出力する。直交検波部55が取り出す受信系列は、アンテナ51で受電される送電信号の合成振幅及び位相を表す。受信系列は、復調情報の一例である。
【0031】
チャネル推定部56は、直交検波部55から入力される受信系列と、各グループについてのWF符号とに基づいて、各グループのチャネル推定値を算出する。チャネル推定値は、電圧と位相に相当する次元を有しており複素数で表される。WF符号は、Walsh-Hadamard符号であり、符号表の一例である。WF符号については、
図4を用いて後述する。
【0032】
サブセット選択部57は、チャネル推定部56によって各グループについて算出されるチャネル推定値の絶対値の二乗を各グループの受電電力として算出する。また、サブセット選択部57は、フレーム毎に、すべてのグループの受電電力についてランキング処理を行い、上位の所定数のグループをアンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択する。サブセット選択部57は、アンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択したグループを表す選択結果を受電位相推定部58に出力する。
【0033】
ランキング処理は、すべてのグループの受電電力について、一例として、受電電力が最も高いグループに対して-15dBまでのグループを選択することとする。一例として、サブセット選択部57は、フレーム毎に、受電電力が最も高いグループに対して15dB落ちまでのランキングの複数のグループを選択する。各フレームにおけるアンテナサブセット110Aに含まれるグループの数は、受信電力の最高値から15dB落ちまでのグループの数によって決まるため、フレームによって異なる場合がある。
【0034】
受電位相推定部58は、サブセット選択部57から入力される選択結果に基づいて、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのチャネル推定値を算出し、算出したチャネル推定値が表す受電位相(角度情報)を選択結果とともに通信部59に出力する。
【0035】
通信部59は、受電位相推定部58から出力される選択結果及び受電位相をアンテナ59Aから給電装置100に送信する。受電位相推定部58から通信部59に出力される選択結果は、サブセット選択部57が受電位相推定部58に出力した選択結果である。
【0036】
なお、
図2Aを用いて特定デバイス50Aの構成について説明したが、複数のデバイス50のうち、特定デバイス50Aになることがなく、非特定デバイス50Bとしてのみ機能するデバイス50は、スイッチSW、直交検波部55、チャネル推定部56、サブセット選択部57、受電位相推定部58、及び通信部59を有していなくてよく、制御部52は、バッテリ54の充電制御を行えばよい。
【0037】
ここで、
図1に示すアレイアンテナ110について説明する前に、
図2Bを用いて通信部59が給電装置100に送信するパケットのデータ構造について説明する。
図2Bは、通信部59が給電装置100に送信するパケットのデータ構造の一例を示す図である。
【0038】
図2Bには、パケットは、ランキングが1位から受信電力の大きい順に、グループインデックスと、受電位相とを含む。
図2Bには、一例として、ランキングが1位から3位のグループインデックス及び受電位相を、グループインデックス#1及び受電位相#1、グループインデックス#2及び受電位相#2、グループインデックス#3及び受電位相#3と示す。
ランキングが4位以下のグループが存在する場合には、3位のグループインデックス#3及び受電位相#3の後ろに、グループインデックス及び受電位相が続くことになる。
【0039】
<アレイアンテナ110>
アレイアンテナ110は、
図1に示すように、2次元アンテナグリッドの一例であり、一例としてマトリクス状に配置されるアンテナ素子111を含む。アンテナ素子111は、一例として、X方向に8個、Y方向に8個で64個ある。64個のアンテナ素子111は、XY平面上に位置する。上述のように64個のアンテナ素子111は、16個のグループに分けられている。
【0040】
各アンテナ素子111は、送電ケーブル130Aを介してマイクロ波発生源130に接続されており、マイクロ波帯の電力が供給される。制御装置140によって制御されることにより、16個のグループのうちのアンテナサブセット110Aを構成するグループとして選択された複数のグループに含まれるアンテナ素子111は、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うが、特定デバイス50Aの近傍に位置する非特定デバイス50Bにも副次的に給電がなされる。
【0041】
アンテナサブセット110Aを構成するグループとして選択された複数のグループに含まれないグループのアンテナ素子111は、ランダムビームフォーミングによって非特定デバイス50Bに送電を行うが、特定デバイス50Aの比較的近傍に位置するアンテナ素子111からも副次的に給電がなされる。なお、アンテナサブセット110Aに含まれるグループの数は複数であれば幾つであってもよい。
【0042】
各グループは、4つのアンテナ素子111を有するため、一例として、4つのグループがアンテナサブセット110Aを構成するグループとして選択されると、4つのアンテナ素子111を含むアンテナサブセット110Aが4つ存在することになる。しかしながら、後述する処理を行うことにより、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aを1つに絞ることができる。すなわち、
図1に示すように、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aは、1つである。
【0043】
なお、アンテナ素子111は、平面視で矩形状のパッチアンテナである。アンテナ素子111は、-Z方向側にグランド電位に保持されるグランド板を有していてもよい。
【0044】
また、特定デバイス50Aの移動に伴い、フレーム毎にアンテナサブセット110Aを構成するアンテナ素子111の見直しが行われ、アンテナサブセット110Aに含まれるアンテナ素子111の選択が行われる。
【0045】
各アンテナ素子111は、上述したスマート工場等の大規模な施設の天井や柱等に取り付けられている。各アンテナ素子111の間の間隔は、一例として、アンテナ素子111の通信周波数における波長の数波長に相当する。アンテナ素子111の通信周波数は、一例としてマイクロ波帯を想定しており、一例として918MHzである。
【0046】
また、
図1には、一例として、特定デバイス50Aがアレイアンテナ110に含まれる64個のアンテナ素子111のうちの4個のアンテナ素子111から電力を受電している状態を示す。このように、特定デバイス50Aに送電するために制御装置140によって選択された複数のアンテナ素子111の集合をアンテナサブセット110Aと称す。アンテナサブセット110Aに含まれないアンテナ素子111は、タイムスロットに従って送電信号の位相をシフトさせながらランダムビームフォーミングによって送電を行い、ランダムビームフォーミングによって送電される電力は、非特定デバイス50Bによって受電されるが特定デバイス50Aにも副次的に受電される。
【0047】
フェーズシフタ120は、各アンテナ素子111に1個ずつ接続されており、各アンテナ素子111と送電ケーブル130Aとの間に挿入されている。
図1では、説明の便宜上、1個のアンテナ素子111、及びフェーズシフタ120を拡大して示す。
【0048】
フェーズシフタ120は、マイクロ波発生源130から送電ケーブル130Aを介して伝送される電力の送電位相をシフトしてアンテナ素子111に出力する。フェーズシフタ120は、位相調節部の一例である。
【0049】
マイクロ波発生源130は、64個のフェーズシフタ120に接続されており、所定の電力のマイクロ波を供給する。マイクロ波発生源130は、電波発生源の一例である。マイクロ波の周波数は、一例として918MHzである。なお、ここでは給電装置100がマイクロ波発生源130を含む形態について説明するが、マイクロ波に限られるものではなく、所定の周波数の電波であればよい。
【0050】
制御装置140は、制御部の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性メモリ等を有するマイクロコンピュータであり、一例として、離散型ウェーブレット・マルチトーン(DWMT)を用いることができる。
【0051】
制御装置140は、アンテナ140Aを有し、特定デバイス50Aから受電位相及び選択結果が書き込まれたビーコン信号を受信する。
【0052】
制御装置140は、特定デバイス50Aから受信した選択結果に基づいてアンテナサブセット110Aを設定するサブセット設定処理、特定デバイス50Aから受信した受電位相に基づく64個のフェーズシフタ120の位相制御、及び、マイクロ波発生源130の電力の出力制御を行う。アンテナサブセット110Aに含まれるアンテナ素子111の送電信号の位相制御と、アンテナサブセット110Aに含まれないアンテナ素子111のランダムビームフォーミングによる送電信号の位相制御とは、フェーズシフタ120における位相の制御によって実現される。
【0053】
<制御装置140>
図3は、制御装置140の構成を示す図である。制御装置140は、主制御部141、送電制御部142、及びメモリ143を有する。主制御部141及び送電制御部142は、制御装置140が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ143は、制御装置140のメモリを機能的に表したものである。
【0054】
主制御部141は、制御装置140の処理を統括する処理部であり、送電制御部142が実行する処理以外の処理を実行する。
【0055】
送電制御部142は、特定デバイス50Aから受信した選択結果に基づいて、アンテナサブセット110Aに含まれるアンテナ素子111を設定するサブセット設定処理と、特定デバイス50Aから受信した受電位相に基づいて64個のフェーズシフタ120における位相を制御する位相制御と、マイクロ波発生源130の電力の出力制御とを行う。
【0056】
送電制御部142は、アンテナサブセット110Aを設定していない状態では、すべてのアンテナ素子111から送電を行う送電制御を行う。送電制御部142は、すべてのアンテナ素子111から送電を行う際には、すべてのアンテナ素子111の送電信号の位相をランダムに設定し、かつ、タイムスロット毎に位相をランダムにシフトさせるランダムビームフォーミングによる送電制御を行う(ランダムモード)。これにより、領域10(
図1参照)で送電信号の定在波が生じる位置が時間的に固定されないようにすることができ、すべてのデバイス50が比較的均等に受電することができる。
【0057】
また、送電制御部142は、アンテナサブセット110Aを構築すると、各フレームにおける最適化期間で最適化処理を行い、各フレームの給電期間で給電処理を行う。最適化期間における最適化処理、及び、給電期間における給電処理については後述する。
【0058】
メモリ143は、主制御部141及び送電制御部142が処理を実行する際に用いるデータやプログラム等を格納する。各タイムスロットにおける送電信号の位相を表すデータもメモリ143に格納される。
【0059】
<WH(Walsh-Hadamard)符号表>
図4は、WF符号表の一例を示す図である。
図4には、グループインデックス1~16に対して、タイムスロット1~16について生成された符号値を示す。
図4において、符号値1は、位相シフト量が0度であることを表し、符号値-1は、位相シフト量が180度であることを表す。すなわち、符号値1と符号値-1とは、位相シフト量が180度(π)異なる。
【0060】
このような符号表を用いて、16グループのアンテナ素子111の送電位相をシフトさせながら、アンテナサブセット110Aに含まれるグループの選択と、受電位相の推定とを行う。なお、タイムスロットの数を一例として16に設定したのは、16個のグループの位相シフト量を16回にわたって変更可能にするためである。タイムスロットの数は、16よりも少なくてもよく、多くてもよいが、グループの数の整数倍であることが好ましい。
【0061】
<グループ分け>
図5A乃至
図5Cは、64個のアンテナ素子111へのインデックスの割り振りの一例を示す図である。
図5A乃至
図5Cには、X方向及びY方向に8×8で64個配置される64個のアンテナ素子111に割り振られるインデックスの一例を示す。
【0062】
図5Aには、64個のアンテナ素子111に1~64のインデックスを規則的に割り振った結果の一例を示す。-X方向側かつ+Y方向側の角から、+X方向側かつ-Y方向側の角までに、1~64のインデックスが順番に割り振られている。アンテナ素子111の数と同一数のインデックスが必要であり、符号値数が64、符号長が64となるため、オーバーヘッドが増加する。また、受信側において64タイムスロットの受信信号系列を処理する必要があるため演算量が多くなる。
【0063】
図5B及び
図5Cには、64個のアンテナ素子111を16個のグループに分けた場合のグループインデックスの割り振り結果を示す。各グループは、4つのアンテナ素子111を含むため、
図5B及び
図5Cでは、同一のグループインデックスが4つずつ存在する。グループインデックスが同一の4つのアンテナ素子111の送電位相は、同一の送電位相に設定される。
【0064】
図5Bには、64個のアンテナ素子111の中心を通るX軸及びY軸に平行な直線で64個のアンテナ素子111を4つエリア(4×4の16個のアンテナ素子111を含むエリア)に分け、各エリアについて、インデックスとして1~16のグループインデックスを規則的に配置したグループインデックスの割り振り結果を示す。
【0065】
図5Aの場合に比べて、符号値数が1/4の16に減るため、オーバーヘッドを1/4に低減することができる。同じグループインデックスが割り振られたアンテナ素子111同士の間の最小距離は、隣り合うアンテナ素子111同士の間隔を2.0mとすると8.0mとなり、お互いに影響を受けにくくなっている。
【0066】
しかしながら、例えば、グループインデックスが6、7、10、11の4つのアンテナ素子111が2×2配置で各エリアに存在し、かつ、4つのアンテナ素子111がすべて同一の配置になる。例えば、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aが、グループインデックス6、7、10、11の4つのグループのアンテナ素子111を含み、かつ、4つのアンテナ素子111が2×2配置である場合には、4つのアンテナサブセット110Aにおけるビームフォーミングで得られるビームを区別することができない。換言すれば、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aを1つに絞ることができない。このため、4つのアンテナサブセット110Aのうちの1つのアンテナサブセット110Aは、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うことができるが、残りの3つのアンテナサブセット110Aは、特定デバイス50Aが存在しない位置に向けて、ビーム状の送電信号を送電することになり、無用な強電界エリアを発生させてしまう。
【0067】
そこで、給電システム300では、
図5Cに示すように64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振る。
図5Cでは、同一のグループインデックスが割り振られているアンテナ素子111同士は、一定以上の距離を保っている。また、例えば、アンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択されたグループのグループインデックスが12、6、5、2であって、特定デバイス50Aに送電信号を送電するために選択されたアンテナサブセット110Aが、+X方向側かつ+Y方向側において濃いドットで示すように、グループインデックスが12、6、5、2の2×2配置の4つのアンテナ素子111を含むこととする。
【0068】
この場合に、
図5Cでは、64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振られているため、残りの3つのアンテナサブセット110Aは、薄いドットで示すように、12、6、5、2のグループインデックスの4つのアンテナ素子111は2×2配置にならない。
【0069】
濃いドットで示す2×2配置の12、6、5、2を含むアンテナサブセット110Aは、特定デバイス50Aに向けて最適化された送電位相でビーム状の送電信号を送電することができる。より具体的には、最適化された送電位相を保持したランダムビームフォーミングによって送電信号を送電することができる。しかしながら、薄いドットで示す12、6、5、2を含む3つのアンテナサブセット110Aは、2×2配置ではないため、12、6、5、2のグループインデックスを含んでいても、合成された送電信号の位相が最適化されず、無用な強電界エリアを発生させることを抑制できる。
【0070】
また、残りの3つのアンテナサブセット110Aの各々において、4つのアンテナ素子111の周囲に位置するアンテナ素子111からランダムビームフォーミングで送電信号を送電することにより、マルチパスがタイムスロット毎にランダム化されるため、さらに、強電界の継続を抑制することができる。
【0071】
なお、同一のグループインデックスが割り振られるアンテナ素子111同士の間の距離を大きく設定するのは、同一のグループインデックスが割り振られる複数のアンテナ素子111が送電する送電信号が逆位相で特定デバイス50Aのアンテナに到達すると送電信号が相殺されるが、距離を大きくすることにより、逆位相であっても振幅差が大きくなることで、相殺されにくくすることができるからである。
【0072】
図5Dは、グループインデックス毎のアンテナ素子111同士の間の平均的な距離の一例を示す図である。
図5Dには、
図5Cに示すように64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振った場合に、各グループの4つのアンテナ素子111のうちの2つのアンテナ素子111同士の間の距離を平均した値を示す。
図5Dに示すように、グループ1~16のすべてについて、6.3m以上の距離が得られており、各グループにおいて、4つのアンテナ素子111の間に十分な距離が保たれていることを確認できた。
【0073】
図5Cに示すように64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振るためには、ランダム性を保ちつつ、各グループにおいて、4つのアンテナ素子111の間に十分な距離を保つことが必要である。
【0074】
また、64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振る際に、例えば
図5Bに示すように、グループインデックス6、7、10、11のアンテナ素子111を含む、複数のアンテナサブセット110Aの生成を抑制するには、次のような処理を行えばよい。
【0075】
図6A及び
図6Bは、2×2配置の4つのアンテナ素子111のグループインデックスを示す図である。例えば、ある1つの2×2配置が含む4つのアンテナ素子111のグループインデックスがX、A、B、Cであるとする。このような場合に、グループインデックスXをグループインデックスYに差し替えた場合に、
図6Bに示す8つの2×2配置のパターンが生じないように、64個のアンテナ素子111に対して16個のグループインデックスをランダムに割り振ればよい。
図6Bには、グループインデックスがY、A、B、Cを含む8つのパターンの2×2配置を示す。
【0076】
図6Aに示すグループインデックスがX、A、B、Cの2×2配置と、
図6Bに示す8つの2×2配置(グループインデックスはY、A、B、C)のうちの少なくとも1つが、64個のアンテナ素子111のグループインデックスの中に含まれると、グループインデックスXとグループインデックスYとが等しい場合に、同一の4つのグループインデックスを含む複数のアンテナサブセット110Aが発生し、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aを1つに絞ることができなくなるからである。
【0077】
<フレーム構造>
図7は、フレーム構造の一例を示す図である。フレーム期間は、一例として50msである。フレームは、最適化期間及び給電期間を含む。給電期間は、最適化期間の後に設けられている。
【0078】
最適化期間は、複数のグループ毎にWF符号表(
図4)に基づいて送電位相を設定して、特定デバイス50Aに送電信号を送電するアンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループの送電位相を最適化する最適化処理を行う期間である。
【0079】
特定デバイス50Aに送電信号を送電するアンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループの送電位相を最適化するとは、特定デバイス50Aによってアンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択された複数のグループのアンテナ素子111が送電する送電信号が特定デバイス50Aのアンテナ51で受電される際の位相(受電位相)を揃えることである。複数の送電信号の受電位相が揃えば、特定デバイス50Aの受電電力を最大化できるからである。なお、位相が揃っていることは、位相が完全に同一である場合に限らず、完全に同一である状態に略等しい状態も含む。厳密な意味で位相を揃えるのは容易ではない場合もあり、例えば位相のずれが±5%程度であれば、位相が揃っていると考えて問題ないからである。
【0080】
なお、
図5Cを用いて説明したように、ここでは一例として、各グループが4つのアンテナ素子111を含むため、4つのアンテナサブセット110Aにおいて送電位相が最適化されるが、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのアンテナ素子111が2×2配置になるのは、4つのアンテナサブセット110Aのうちの1つであるため、特定デバイス50Aに向けて最適化された位相で送電を行うアンテナサブセット110Aを1つに絞ることができる。
【0081】
給電期間は、最適化期間における最適化処理で複数のグループのアンテナ素子111で送電する送電信号の位相を最適化した状態で、複数のグループのアンテナ素子111から送電信号を送電する給電処理を行う期間である。給電期間では、アンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループのアンテナ素子111については、同じフレーム内の最適化区間における最適化処理で求められたアンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループの送電位相の関係を保持した状態で、ランダムビームフォーミングを行う。また、アンテナサブセット110Aに含まれない複数のグループのアンテナ素子111については、複数のアンテナ素子111のグループ毎の送電位相同士に特に関係を持たせずに、ランダムビームフォーミングを行う。なお、アンテナサブセット110Aに含まれない複数のグループのアンテナ素子111については、グループに関わらず複数のアンテナ素子111の送電位相同士に特に関係を持たせずに、ランダムビームフォーミングを行ってもよい。
【0082】
<送電位相の最適化>
各アンテナ素子111から、グループ毎に共通の(同一の)送電位相で送電された送電信号が、経路差に応じた位相シフトを受けて、特定デバイス50Aのアンテナ51に到達する。
【0083】
直交検波部55は、アンテナ51で受電した送電信号を復調して受信系列r(l) ( l = 1, …, NS)を取り出す。lはタイムスロットのインデックスであり、最大値はNsである。ここでは一例として、Nsは16である。
【0084】
チャネル推定部56は、直交検波部55から入力される受信系列と、各グループについてのWF符号(
図4参照)とに基づいて、各グループのチャネル推定値を算出する。各グループについてのWF符号は、W = w(g, l), (g = 1, …, N
G)である。gはグループインデックスであり、N
Gは、グループインデックスの最大値である。ここでは一例として、N
Gは16である。
【0085】
チャネル推定部56は、次式(1)に従って、グループインデックスgのグループについてのチャネル推定値hgを算出する。
【0086】
【0087】
サブセット選択部57は、チャネル推定値hgの絶対値の二乗をグループインデックスgのグループのアンテナ素子111から特定デバイス50Aのアンテナ51が受電した受電電力pR, gとして、次式(2)に従って算出する。
【0088】
【0089】
また、サブセット選択部57は、フレーム毎に、すべてのグループについての受電電力についてランキング処理を行い、上位の所定数のグループをアンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択する。具体的には、一例として、受電電力が最も高いグループに対して-15dBまでのグループを選択する。サブセット選択部57は、アンテナサブセット110Aに含まれるグループとして選択したグループを表す選択結果を受電位相推定部58に出力する。
【0090】
受電位相推定部58は、サブセット選択部57から入力される選択結果に基づいて、アンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループのチャネル推定値hsを次式(3)に従って算出する。ここで、sは、アンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループのグループインデックスである。
【0091】
例えば、
図5Cに示すように、アンテナサブセット110Aに、グループインデックスgが12、6、5、2の4つのグループが含まれる場合には、アンテナサブセット110Aに含まれる複数のグループのグループインデックスsは、12、6、5、2である。
【0092】
チャネル推定値hsは、グループインデックスsのグループについてのチャネル推定値である。チャネル推定値hsは、グループインデックスsの各グループについて算出される。
【0093】
【0094】
受電位相推定部58は、式(3)で表されるチャネル推定値hsに基づいて、グループインデックスsのグループのアンテナ素子111から特定デバイス50Aのアンテナ51が受電する際の受電位相Δθsを次式(4)に従って算出する。
【0095】
【0096】
受電位相推定部58は、グループインデックスsのグループ毎の受電位相を選択結果(グループインデックスs)とともに通信部59に出力する。通信部59は、選択結果及びグループインデックスsのグループ毎の受信位相を給電装置100に送信する。
【0097】
送電制御部142は、特定デバイス50Aから帰還された選択結果及び受信位相から、次式(5)に従って、グループインデックスsのグループのアンテナ素子111の送電位相の初期値がφsになるように設定する。このようにして、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのアンテナ素子111の送電位相が最適化される。送電位相φs(初期値)は、グループインデックスsのグループの各々について設定される。グループインデックスsが、12、6、5、2である場合には、グループインデックスsが12、6、5、2の各々のグループについて、グループインデックスに応じた送電位相φsが設定される。
【0098】
【0099】
このように、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのアンテナ素子111の送電位相を最適化することにより、グループインデックスsのグループのアンテナ素子111から送電される送電信号は、特定デバイス50Aのアンテナ51が受電する際に同相化され、受電電力が最大化される。
【0100】
<最適化処理>
図8は、最適化処理の一例を説明する図である。
図8には、1フレームにおける最適化期間及び給電期間とタイムスロットを示す。最適化処理は、Ns個のタイムスロットを含む。給電期間は、タイムスロットNs+1から始まり、最適化期間よりも長いが、ここでは簡略化して示す。
【0101】
アレイアンテナ110に含まれるアンテナ素子111のグループのグループインデックスgを1~NGとする。タイムスロット1では、グループインデックスgが1~NGのアンテナ素子111の送電位相をθ1~θNGに設定する。この状態で送電信号の送電を開始する。なお、送電位相θ1~θNGは、任意の送電位相である。
【0102】
タイムスロット2以降では、WH符号表に従って、各グループのアンテナ素子111の送電位相が設定される。例えば、タイムスロット2では、グループインデックスgが偶数のグループのアンテナ素子111の送電位相は、タイムスロット1における送電位相に対して180度(+π)シフトされる。このように、各グループのアンテナ素子111の送電位相は、タイムスロット毎にWH符号表に従ってシフトされる。なお、タイムスロット1~Nsにおいて、グループインデックス1のアンテナ素子111の送電位相は、θ1に固定される。
【0103】
また、給電期間においては、アンテナサブセット110Aに含まれる4つのグループとしてグループインデックス1~4のグループが選択されたこととする。また、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのグループインデックスgを5、・・・、NGとする。
【0104】
アンテナサブセット110Aに含まれるグループインデックス1~4のグループのアンテナ素子111については、グループインデックス1~4のグループのアンテナ素子111の送電位相を最適化された送電位相φ1~φ4に設定し、最適化された送電位相φ1~φ4の関係を保持しながら、ランダムビームフォーミングを行う。一例として、タイムスロット毎に、グループインデックス1~4のグループのアンテナ素子111の送電位相をΔ1、Δ2、Δ3、・・・ずつシフトさせることによって、最適化された送電位相φ1~φ4の関係を保持しながら、ランダムビームフォーミングを行う。
【0105】
また、給電期間では、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのアンテナ素子111については、複数のアンテナ素子111のグループ毎の送電位相同士に特に関係を持たせずに、ランダムビームフォーミングを行う。給電期間は、送電期間の一例である。なお、アンテナサブセット110Aに含まれない複数のグループのアンテナ素子111については、グループに関わらず複数のアンテナ素子111の送電位相同士に特に関係を持たせずに、ランダムビームフォーミングを行ってもよい。
【0106】
<特定デバイス50Aの送電信号の受電位相>
図9A乃至
図9Dは、特定デバイス50Aが受電する送電信号の位相の最適化を説明する図である。I軸は実軸、Q軸は虚軸である。
【0107】
図9Aには、最適化区間のタイムスロット1において、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号の送電位相θ
1~θ
4を示す。送電位相θ
1~θ
4は任意の送電位相であるため、分かり易くするために、送電位相θ
1~θ
4をすべて0度とする。
図9Aにおける(1)~(4)の4つのベクトルは、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号をベクトルで表したものである。
【0108】
図9Bには、
図9Aに示す送電位相θ
1~θ
4の送電信号を特定デバイス50Aのアンテナ51が受電したときの受電位相を示す。アンテナ51では、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電される送電信号が合成されるが、
図9Bでは分けて示す。
図9Bにおける(1)~(4)の4つのベクトルは、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電され、アンテナ51によって受電された送電信号をベクトルで表したものである。
【0109】
図9Bに示すように、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号が特定デバイス50Aのアンテナ51が受電されるときの受電位相は、Δθ
1~Δθ
4であることとする。
【0110】
このような場合に、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号を最適化するには、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号が特定デバイス50Aのアンテナ51によって受電されるときの受電位相が揃うようにすればよい。
【0111】
ここで、
図9Cに示すように、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号を最適化した値がφ
1~φ
4であるとすると、φ
1=-Δθ
1、φ
2=-Δθ
2、φ
3=-Δθ
3、φ
4=-Δθ
4に設定すればよい。
図9Cにおける(1)~(4)の4つのベクトルは、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電する送電信号をベクトルで表したものである。
【0112】
このように最適化した送電信号φ
1~φ
4を求めて給電期間において給電を開始すると、特定デバイス50Aのアンテナ51が受電するときの受電位相は、
図9Dに示すように、すべて0度で一致することになる。
図9Dにおける(1)~(4)の4つのベクトルは、グループインデックス1~4のアンテナ素子111から送電され、アンテナ51によって受電された送電信号をベクトルで表したものである。
【0113】
なお、ここでは、分かり易くするために、送電位相θ
1~θ
4をすべて0度に設定して説明したため、
図9Dに示すように、特定デバイス50Aのアンテナ51が受電するときの受電位相がすべて0度で一致しているが、例えば、送電位相θ
1~θ
4がすべて45度であれば、特定デバイス50Aのアンテナ51が受電するときの受電位相は、すべて45度に揃うことになる。
【0114】
このようにして、
図9Dに示すように、特定デバイス50Aのアンテナ51が受電する際のベクトル(1)~(4)の角度を揃えることができる。すなわち、特定デバイス50Aの受電電力を最大化することができる。
【0115】
<フローチャート>
図10は、給電システム300の制御装置140及び特定デバイス50Aが実行する処理の一例を表すフローチャートである。制御装置140及び特定デバイス50Aは別々に処理を行うが、ここでは、給電システム300内における一連の処理として説明する。
図10に示す処理は、1つのフレーム内で行われる処理であり、各フレームで同様に行われる。
【0116】
給電装置100の送電制御部142は、すべてのグループのアンテナ素子111から送電信号を同時に送電する(ステップS1)。例えば、
図8に示すタイムスロット1~Nsにわたって、繰り返し送電を行う。
【0117】
特定デバイス50Aのチャネル推定部56は、グループ毎にチャネル推定値を算出する(ステップS2)。
【0118】
特定デバイス50Aのサブセット選択部57は、チャネル推定値に基づいてグループ毎に受電電力を算出し、すべてのグループの受電電力に基づくランキング処理を行い、アンテナサブセット110Aに含まれるグループを選択する(ステップS3)。
【0119】
特定デバイス50Aの受電位相推定部58は、アンテナサブセット110Aに含まれるグループ毎の受電位相を算出する(ステップS4)。
【0120】
特定デバイス50Aの受電位相推定部58は、グループ毎の受電位相と選択結果を通信部59に送信する(ステップS5)。
【0121】
給電装置100の送電制御部142は、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのアンテナ素子111から最適化された送電位相を保持したランダムビームフォーミングで送電信号を送電するとともに、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのアンテナ素子111からランダムビームフォーミングで送電する(ステップS6)。この結果、アンテナサブセット110Aに含まれるグループのアンテナ素子111は、タイムスロット毎に、最適化された送電位相を所定位相ずつシフトさせながら送電信号を送電し、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのアンテナ素子111は、タイムスロット毎に、ランダムな送電位相で送電信号を送電する。
【0122】
特定デバイス50A及び非特定デバイス50Bは、アンテナ51で送電信号を受電する(ステップS7)。
【0123】
ステップS7の処理が終了すると、フレームの終了となる(ステップS8)。ステップS8において1つのフレーム内での処理が完了すると、フローはステップS1にリターンする。
【0124】
<シミュレーション>
図11は、シミュレーションの条件の一例を説明する図である。一例として、8×8の64個のアンテナ素子111をアレイ状に配列した状態で、特定デバイス50Aに給電するシミュレーションを行った。特定デバイス50Aは点線の円の軌道上を2.0m/secの速度で移動する。アンテナ素子111同士の間隔は2m、アンテナ素子111の高さは2.5m、タイムスロット長は0.5ms(ミリ秒)、フレーム長は50msである。
【0125】
給電システム300のシミュレーションでは、フレーム毎に、すべてのグループの受電電力についてランキング処理を行い、ランキング結果でアンテナサブセット110Aに含まれる複数のアンテナ素子111を選択し、アンテナサブセット110Aに含まれる複数のアンテナ素子111には、最適化された送電位相の関係を保持しながらランダムビームフォーミングで送電させ、アンテナサブセット110Aに含まれないアンテナ素子111には、ランダムビームフォーミングで送電させて、特定デバイス50Aが受電する電力量についてシミュレーションを行った。
【0126】
また、比較用に、64個のアンテナ素子111をグループ分けせずに、全てのアンテナ素子111に1~64の異なるインデックスを割り当て、最適化区間において64個のタイムスロットを設け、給電区間においてランダムビームフォーミングで送電した場合に、特定デバイス50Aが受電する電力量についてもシミュレーションを行った。
【0127】
図12Aは、比較用のランダムビームフォーミングで送電した場合の受電電力についてのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図12Aにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は、受電電力(dBm)を表す。比較用のランダムビームフォーミングで送電した場合には、50msの各フレームの前半の約30msの期間における受電電力が略0dBmであり、これは最適化区間に相当する。タイムスロット長は0.5msで、64タイムスロットあるため、最適化区間に32msを要したことになる。各フレームの後半で約5dBm程度の受電電力が得られている区間が給電区間に相当するが、20ms未満であり、最適化区間に長時間を要することを確認できた。
【0128】
図12Bは、給電システム300のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図12Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は、受電電力(dBm)を表す。
【0129】
図12Bに示すように、各フレーム期間の初期に受電電力が略0dBmになる期間は約6msであり、これは最適化区間に相当する。
図12Aに示す比較用のランダムビームフォーミングに比べると、最適化区間が1/4程度に短縮化されており、約5dBmの受電電力が得られる期間が約2倍になっている。また、1つのグループが4つのアンテナ素子111を含むが、
図12Aに示す比較用のランダムビームフォーミングの給電区間における受電電力と、略同等の受電電力が得られている。このため、給電区間を長くすることができ、単位時間あたりにおける特定デバイス50Aの受電電力を増大可能であることを確認できた。
【0130】
<効果>
給電システム300は、給電装置100と、給電装置100から送電される送電信号を受電する特定デバイス50Aとを含む給電システム300であって、給電装置100は、電力を送電可能な複数のアンテナ素子111を有するアレイアンテナ110と、複数のアンテナ素子111から特定デバイス50Aに送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部142とを有し、複数のアンテナ素子111は、複数のグループに分けられており、各グループは、複数のアンテナ素子111を含み、複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個のグループに含まれるアンテナ素子111は、特定デバイス50Aに送電信号を送電するアンテナサブセット110Aを構築し、特定デバイス50Aは、アンテナサブセット110Aを構築するグループとして、送電信号の受電電力が大きい上位N個のグループを選択する。このように、複数のアンテナ素子111は、複数のグループに分けて、アンテナサブセット110Aを構築するグループとして、送電信号の受電電力が大きい上位N個のグループを選択するので、特定デバイス50Aの受電電力を増大可能な位相を迅速に設定することができる。
【0131】
したがって、特定デバイス50Aの受電電力を増大可能な位相を迅速に設定可能な給電システム300を提供することができる。
【0132】
また、送電制御部142は、グループ毎に複数のタイムスロットにわたって符号値がランダムに設定された符号表に基づいて、複数のタイムスロットにわたって送電信号の位相をシフトしながら複数のアンテナ素子111から送電信号を送電し、特定デバイス50Aは、複数のタイムスロットにわたって複数のアンテナ素子111から送電された送電信号を特定デバイス50Aが受電した際の受電電力をグループ毎に求め、アンテナサブセット110Aを構築するグループとして、グループ毎の受電電力が大きい上位N個のグループを選択する。このように、符号表に基づいてグループ毎に送電位相をランダムに設定できるとともに、アンテナサブセット110Aを構築するグループとしてグループ毎の受電電力が大きい上位N個のグループを選択するので、グループ毎の送電位相の設定が容易であるとともに、特定デバイス50Aにより多くの電力を供給可能なグループを容易に選択できる。
【0133】
また、特定デバイス50Aは、受電した送電信号を復調して得る復調情報と、符号表に含まれる複数のタイムスロットにわたる符号値とに基づいて、チャネル推定値をグループ毎に求め、N個のグループについてのN個のチャネル推定値に基づいて、N個のグループの各々から特定デバイス50Aが送電信号を受電した際の受電位相を求め、N個のグループについての受電位相を送電制御部142に通知し、送電制御部142は、特定デバイス50Aから通知されたN個のグループについての受電位相に基づいて、N個のグループから特定デバイス50Aが受電する際の受電位相が揃うように、各グループの送電位相を制御する。チャネル推定値に基づいて、各グループから特定デバイス50Aが送電信号を受電した際の受電位相を容易に求めることができるとともに、送電制御部142は、通知された受電位相に基づいて、特定デバイス50Aの受電位相が揃うように、容易に各グループの送電位相を制御することができる。
【0134】
送電制御部142は、特定デバイス50Aから通知されたN個のグループについての受電位相に基づいて、N個のグループの送電位相の初期値を求め、N個のグループについてのN個の初期値に対して、共通のランダムな位相シフト量をタイムスロット毎に追加することによって、N個のグループから特定デバイス50Aが受電する際の受電位相が揃うように、各グループの送電位相を制御する。このため、N個のグループは、N個の送電位相の初期値の関係を保持したランダムビームフォーミングを容易に実現することができる。
【0135】
また、給電装置100から送電される送電信号を受電する非特定デバイス50Bをさらに含み、送電制御部142は、複数のグループのうちのN個のグループ以外のグループに含まれるアンテナの送電位相をタイムスロット毎にランダムに設定する。このため、非特定デバイス50Bについては、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのアンテナ素子111から、ランダムビームフォーミングで送電できる。
【0136】
また、非特定デバイス50Bの位置は固定されている。このため、アンテナサブセット110Aに含まれないグループのアンテナ素子111からランダムビームフォーミングによる送電信号を効率的かつ均等に受電できる。
【0137】
また、特定デバイス50Aは、移動可能である。このため、移動に追従してフレーム毎にN個のグループについてN個の送電位相の初期値を設定することで、各フレームでN個の送電位相の初期値の関係を保持したランダムビームフォーミングによって、移動中の特定デバイス50Aに対しても効率的に給電することができる。
【0138】
給電方法は、給電装置100と、給電装置100から送電される送電信号を受電する特定デバイス50Aとを含む給電システム300における給電方法であって、給電装置100は、電力を送電可能な複数のアンテナ素子111を有するアレイアンテナ110と、複数のアンテナ素子111から特定デバイス50Aに送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部142とを有し、複数のアンテナ素子111は、複数のグループに分けられており、各グループは、複数のアンテナ素子111を含み、複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個のグループに含まれるアンテナは、特定デバイス50Aに送電信号を送電するアンテナサブセット110Aを構築し、特定デバイス50Aが、アンテナサブセット110Aを構築するグループとして、送電信号の受電電力が大きい上位N個のグループを選択する。このように、複数のアンテナ素子111は、複数のグループに分けて、アンテナサブセット110Aを構築するグループとして、送電信号の受電電力が大きい上位N個のグループを選択するので、特定デバイス50Aの受電電力を増大可能な位相を迅速に設定することができる。
【0139】
したがって、特定デバイス50Aの受電電力を増大可能な位相を迅速に設定可能な給電方法を提供することができる。
【0140】
以上、本発明の例示的な実施形態の給電システム、給電システム、及び、給電方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0141】
以上の実施形態に関し、さらに以下の項目を開示する。
(項目1)
給電装置と、
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置と
を含む給電システムであって、
前記給電装置は、
電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナから前記第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部と
を有し、
前記複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、
各グループは、複数の前記アンテナを含み、
前記複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個の前記グループに含まれるアンテナは、前記第1受電装置に前記送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、
前記第1受電装置は、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記送電信号の受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、給電システム。
(項目2)
前記送電制御部は、前記グループ毎に複数のタイムスロットにわたって符号値がランダムに設定された符号表に基づいて、前記複数のタイムスロットにわたって前記送電信号の位相をシフトしながら前記複数のアンテナから前記送電信号を送電し、
前記第1受電装置は、前記複数のタイムスロットにわたって前記複数のアンテナから送電された前記送電信号を前記第1受電装置が受電した際の受電電力を前記グループ毎に求め、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記グループ毎の前記受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、項目1に記載の給電システム。
(項目3)
前記第1受電装置は、
受電した前記送電信号を復調して得る復調情報と、前記符号表に含まれる前記複数のタイムスロットにわたる符号値とに基づいて、チャネル推定値を前記グループ毎に求め、
前記N個のグループについてのN個の前記チャネル推定値に基づいて、前記N個のグループの各々から前記第1受電装置が前記送電信号を受電した際の受電位相を求め、
前記N個のグループについての前記受電位相を前記送電制御部に通知し、
前記送電制御部は、前記第1受電装置から通知された前記N個のグループについての前記受電位相に基づいて、前記N個のグループから前記第1受電装置が受電する際の受電位相が揃うように、各グループの前記送電位相を制御する、項目2に記載の給電システム。
(項目4)
前記送電制御部は、前記第1受電装置から通知された前記N個のグループについての前記受電位相に基づいて、前記N個のグループの前記送電位相の初期値を求め、前記N個のグループについてのN個の前記初期値に対して、共通のランダムな位相シフト量を前記タイムスロット毎に追加することによって、前記N個のグループから前記第1受電装置が受電する際の受電位相が揃うように、各グループの前記送電位相を制御する、項目3に記載の給電システム。
(項目5)
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第2受電装置をさらに含み、
前記送電制御部は、前記複数のグループのうちのN個の前記グループ以外のグループに含まれるアンテナの送電位相を前記タイムスロット毎にランダムに設定する、項目2乃至4のいずれか1項に記載の給電システム。
(項目6)
前記第2受電装置の位置は固定されている、項目5に記載の給電システム。
(項目7)
前記第1受電装置は、移動可能である、項目1乃至6のいずれか1項に記載の給電システム。
(項目8)
給電装置と、
前記給電装置から送電される送電信号を受電する第1受電装置と
を含む給電システムにおける給電方法であって、
前記給電装置は、
電力を送電可能な複数のアンテナを有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナから前記第1受電装置に送電する送電信号の位相の制御と送電制御とを行う送電制御部と
を有し、
前記複数のアンテナは、複数のグループに分けられており、
各グループは、複数の前記アンテナを含み、
前記複数のグループのうちのN(Nは2以上の整数)個の前記グループに含まれるアンテナは、前記第1受電装置に前記送電信号を送電するアンテナサブセットを構築し、
前記第1受電装置が、前記アンテナサブセットを構築するグループとして、前記送電信号の受電電力が大きい上位N個の前記グループを選択する、給電方法。
【符号の説明】
【0142】
10 領域
50 デバイス
50A 特定デバイス
50B 非特定デバイス
51 アンテナ
SW スイッチ
52 制御部
53 RF/DC変換部
54 バッテリ
55 直交検波部
56 チャネル推定部
57 サブセット選択部
58 受電位相推定部
59 通信部
100 給電装置
110 アレイアンテナ
110A アンテナサブセット
111 アンテナ素子
120 フェーズシフタ
130 マイクロ波発生源
140 制御装置
141 主制御部
142 送電制御部
143 メモリ