(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070469
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】製造を支援するシステム及び製造を支援する方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240516BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240516BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240516BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240516BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B23/02 T
G05B23/02 301Q
G05B19/418 Z
G05B23/02 302S
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180989
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】301078191
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】小高 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】礒部 敦
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA34
3C100AA38
3C100AA62
3C100AA70
3C100BB05
3C100BB13
3C100BB27
3C100BB29
3C100EE11
3C223AA05
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF24
3C223FF33
3C223GG01
3C223HH03
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オペレーションを行うユーザの判断及び操作を支援するための指針となる情報を提供する。
【解決手段】製造設備の状態量または操作量を計測する複数のセンサと、複数のセンサによって計測される複数の変数の時系列データを収集し保持するデータ収集・管理部と、保持されたデータとオンライン計測された変数から、分析の対象とする変数を定義する変数定義部と、変数を前処理し主成分演算するデータ整形処理部および主成分分析処理部と、所定サイクル毎に多変量解析を実行し、分析値を更新し時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を時系列主成分値に合わせて表示する変数相関表示部と、多時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する状態変化定義部と、状定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行する変化要因変数算出処理部と、抽出された状態変化に関わる要因変数を表示する変化要因変数表示部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造設備の状態量または操作量を計測する複数のセンサと、
前記複数のセンサによって計測される複数の変数の時系列データを収集し保持するデータ収集・管理部と、
前記保持されたデータとオンライン計測された変数から、分析の対象とする変数を定義する変数定義部と、
前記変数定義部で定義された変数を前処理し主成分演算するデータ整形処理部および主成分分析処理部と、
所定サイクル毎に所定期間のデータに応じた多変量解析を実行し、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新し時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を、時系列主成分値に合わせて表示する変数相関表示部と、
前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する状態変化定義部と、
前記状態変化定義部により定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行する変化要因変数算出処理部と、
前記要因変数抽出処理により抽出された状態変化に関わる要因変数を表示する変化要因変数表示部と、
を備えることを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新し時系列情報として表示するとともに、変数関係を因子プロットとして表示することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記目標指標となる時系列情報の数値データを、クラスタリング処理によって分類されたクラスとして前記時系列主成分値に合わせて表示することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する際に、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値から、前記所定期間から任意の2点を選択することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する際に、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新し時系列情報として表示された画面上において、状態変化の方向を入力することで定義することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理において、主成分空間における変数関係の因子ベクトルと、前記時系列情報から定義された要因変数抽出の対象となる状態変化ベクトルの内積値を各変数毎に演算することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の製造を支援するシステムであって、
状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理において、主成分空間における変数関係の因子ベクトルと、前記時系列情報から定義された要因変数抽出の対象となる状態変化ベクトルの内積値に対して、前記前処理された変数の変化量を乗算処理することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新した時系列情報について、多変量解析に基づいた分析値が該当時刻と1サイクル前の時刻における主成分分析のプロット間のユークリッド距離を表示することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の製造を支援するシステムであって、
前記ユークリッド距離が所定の大きさよりも大きい際に、アラートを発することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項10】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記抽出された状態変化に相関の大きな要因変数を表示、または変数関係を因子プロット時に制御可能な変数を表示することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の製造を支援するシステムであって、
前記目標指標となる時系列情報は、生産性指標の実績データ、或いは、予兆診断に基づく予測値であることを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項12】
請求項2に記載の製造を支援するシステムであって、
前記抽出された状態変化に相関の大きな要因変数について、主成分分析に基づいた相関の大きさと、定義された状態変化量から、センサ検出値の物理量に変換して表示することを特徴とする製造を支援するシステム。
【請求項13】
以下のステップを含む、製造を支援する方法;
(a)所定サイクル毎に所定期間のデータに応じた多変量解析を実行し、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新して時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を、時系列主成分値に合わせて表示するステップ、
(b)前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義するステップ、
(c)前記定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行するステップ、
(d)前記抽出された状態変化に関わる要因変数を表示するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造設備や製造装置のオペレーションを行うユーザが設備状態や装置状態を調整する際の指針を提供し支援するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造設備や製造装置など(以下、単に「製造設備」と呼ぶ)に配置された多数のセンサが出力する検知信号に基づいて得られた多次元時系列データを主成分分析により処理し、製造設備の状態を視覚上わかりやすい出力形態で通知する技術が、特許文献1に開示されている。また、多次元時系列データの解析に基づいて異常の予兆を検知する予兆診断システムが、例えば特許文献2により知られている。
【0003】
これらのシステムでは、多数のセンサ情報を複合して状態を診断するため、主成分分析などの多変量解析が用いられている。製造設備の状態を総合的かつ全体的に監視することで、製造設備の異常の予兆を捉え、これをユーザに報知する。これにより、事後保全の割合を減らし、製造設備等の運転を高度に支援することができる。また、出力変数に影響を持つ主成分を抽出し、製造設備の予兆検知のために、正常データを多数集めて学習し、統計量などを用いて異常と正常のしきい値を決定する処理が行われている。
【0004】
また、主成分分析の解析結果に関連の強い要因変数を表示するシステムが特許文献3により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-67117号公報
【特許文献2】特開2019-204342号公報
【特許文献3】特開2014-178844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば化学プラントなどの製造設備では、異常ではないが稼働中に生産性が変動することがある。生産性とは、例えば原単位や製品の良品率、製造のエネルギー効率などである。この理由は、気温などの環境変化や、製造工程での触媒等の品質変化、メンテナス等の影響など様々な要因がある。生産性が低下した場合に生産を止めてメンテナスする方法もあるが、生産を完全に停止することは、生産量の大幅な低下につながったり、メンテナンス作業コストが上昇したりするなど、デメリットもある。そこで、生産を継続することも選択肢となるが、僅かでも生産性を向上させることが望ましい。
【0007】
上記特許文献1から特許文献3のように、正常と異常を予兆及び識別する技術は従来から多く知られているが、正常状態の範囲で少しでも生産性を向上するためには、熟練技術者の経験に頼る部分がある。
【0008】
しかしながら、熟練技術者の高齢化による退職や、少子化によって将来的にオペレーションを担う人員が不足する事態を想定すると、熟練技術者の持つ生産性向上の知見を形式化することが望まれており、ひいては自動制御化にも繋がる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、製造設備が正常な範囲で稼働している中で様々に変化する運転状況変化に応じた要因抽出を行い、オペレーションを行うユーザの判断及び操作を支援するための指針となる情報を提供する製造を支援するシステム及び製造を支援する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、製造設備の状態量または操作量を計測する複数のセンサと、前記複数のセンサによって計測される複数の変数の時系列データを収集し保持するデータ収集・管理部と、前記保持されたデータとオンライン計測された変数から、分析の対象とする変数を定義する変数定義部と、前記変数定義部で定義された変数を前処理し主成分演算するデータ整形処理部および主成分分析処理部と、所定サイクル毎に所定期間のデータに応じた多変量解析を実行し、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新し時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を、時系列主成分値に合わせて表示する変数相関表示部と、前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する状態変化定義部と、前記状態変化定義部により定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行する変化要因変数算出処理部と、前記要因変数抽出処理により抽出された状態変化に関わる要因変数を表示する変化要因変数表示部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、(a)所定サイクル毎に所定期間のデータに応じた多変量解析を実行し、前記所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新して時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を、時系列主成分値に合わせて表示するステップ、(b)前記多変量解析に基づいた前記時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義するステップ、(c)前記定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行するステップ、(d)前記抽出された状態変化に関わる要因変数を表示するステップ、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造設備が正常な範囲で稼働している中で様々に変化する運転状況変化に応じた要因抽出を行い、オペレーションを行うユーザの判断及び操作を支援するための指針となる情報を提供する製造を支援するシステム及び製造を支援する方法を実現することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】製造設備の生産性の時系列データの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る化学プラント管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】製造設備200とセンサ群300の一例を示す図である。
【
図4】プラント監視及び制御支援システム100の構成及び処理フローを示す機能ブロック図である。
【
図5A】状態変化表示部108の表示例を示す図である。
【
図5B】状態変化表示部108の表示例を示す図である。
【
図6A】状態変化表示部108の表示例を示す図である。
【
図6B】状態変化表示部108の表示例を示す図である。
【
図7】状態変化定義部110における操作例を示す図である。
【
図8】全変数の内積値を工程順に表示した例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る化学プラント管理システムの各部のデータ例を示す図である。
【
図11】予兆診断システム及び異常検知システム600の一例を示す図である。
【
図13】本発明の適用有無によって想定されるユーザの行動の違いを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0016】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0017】
図1から
図9を参照して、本発明の実施例1に係る製造を支援するシステム及び製造を支援する方法について説明する。
【0018】
先ず、
図1を用いて、本発明の基本コンセプトを説明する。
図1は、製造設備の生産性の時系列データの一例を示している。横軸に時間を示し、縦軸に製造設備の稼働率や製品の良品率などの生産性指標を示している。
【0019】
図1において、生産性とは、製造設備の稼働率や製品の良品率、生産量などの指標である。また、異常検知とは、製造設備の故障や停止、著しく生産性が低下するといった重大な問題を検知することである。
【0020】
例えば化学プラントなどの製造設備では、基準となる生産性を想定して年間の製造計画を策定する場合がある。仮に生産性が計画よりも低下して改善の余地がある場合、B:生産性の低下を抑制しながら運転を継続するという試みがなされる。この場合、将来的に突発的な製造設備の故障や停止、或いは、予期しない製品の品質低下などに繋がる可能性がある。
【0021】
一方、C:異常または異常予兆を検知して生産を停止し、異常の原因を取り除き再稼働した場合、設備を停止しメンテナンスすることは稼働率ひいてはトータルの生産性を犠牲にする。
【0022】
そこで、本発明では、A:正常な範囲内で生産効率改善の試行を継続することで、対象設備自体の製造能力向上に寄与する。そのため、製造設備が正常な範囲で稼働している中で様々に変化する運転状況変化に応じた要因抽出を行い、オペレーションを行うユーザの判断及び操作を支援するための指針となる情報を提供する。
【0023】
図2を用いて、本実施例の製造を支援するシステムについて説明する。
図2は、本実施例のプラント監視及び制御支援システム100を含む化学プラント管理システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、本実施例のプラント監視及び制御支援システム100は、多数のセンサからなるセンサ群300の検知信号に基づき、製造設備200の運転を監視し、わずかな状態変化及びその変動要因を抽出しつつ、製造設備200の効率的なユーザの作業及び設備稼働を支援するシステムである。
【0025】
図2の化学プラント管理システム1は、一例として、生産性データ管理システム400と、製造管理システム500と、予兆診断システム及び異常検知システム600と、監視及び制御部700と、データ収集・管理システム800とを含んで構成されている。
【0026】
なお、明細書中では生産性データ管理システム400、製造管理システム500、予兆診断システム及び異常検知システム600、監視及び制御部700、データ収集・管理システム800を機能として分けて記載しているが、本発明はプラント監視及び制御支援システム100に関わるものであるため、これらのすべてあるいは一部が、プラント監視及び制御支援システム100として同一の装置内で構成されていても良い。
【0027】
センサ群300から出力された検知信号に基づく各種データは、監視及び制御部700に入力されるとともに、データ収集・管理システム800を通じて、生産性データ管理システム400、予兆診断システム及び異常検知システム600、プラント監視及び制御支援システム100に送信される。
【0028】
プラント監視及び制御支援システム100は、製造設備200の状況、及び製造環境の変動に関する診断を行い、製造設備200のパラメータ制御の指針となる情報を表示及び出力するシステムである。その詳細な機能及び構造に関しては後述する。
【0029】
生産性データ管理システム400は、例えば時間毎や1日毎、あるいは原料ロット毎、又は製造ロット毎に計測・検査された製品の生産性に関するデータを管理する。生産性に関するデータとは、例えば製品の良品率、あるいは一定量の製品を作るために消費した原材料である原単位、また製造過程で単位製造量あたりに消費されたエネルギー効率などがある。
【0030】
具体例を挙げると、生産性データ管理システム400は、原料又は最終製品の品質を分析する分析装置(図示せず)からの分析結果を取り込んで管理する機能を有する。また、生産性データ管理システム400は、製造管理システム500から原料ロット、製造ロットに関するデータの供給を受け、このデータに従って期間毎、あるいは原料ロット毎又は製造ロット毎に生産性に関するデータを管理する。
【0031】
製造管理システム500は、製造設備200において製造に用いられる原料の管理、原料ロット及び製造ロットの管理、在庫の管理、最終製品の管理、製造設備200の制御に関する情報の管理等を司るシステムであり、監視及び制御部700を通して製造設備200による製造を管理している。
【0032】
監視及び制御部700は、センサ群300からの検知信号を監視し、そのデータに基づき製造設備200を制御する機能を有する。また、監視及び制御部700は、製造管理システム500で管理される各種情報に従い、製造設備200を制御する。
【0033】
図3に、製造設備200とセンサ群300の一例を示す。製造設備200は、一例として、原料タンク201と、貯蔵タンク202と、反応タンク203と、反応タンク204と、製品貯蔵タンク205とを備えており、原料群S,Mから最終製品Cを製造するための製造設備である。
【0034】
タンク201~205は、それぞれ配管で接続されており、配管を通じて原料、中間生成物、及び最終生成物が搬送される。また、原料以外にも、窒素や酸素を供給する配管が接続されている。さらに、ヒーターやバルブなど(図示せず)が、独立あるいはセンサと組み合わせて多数設置されており、これらを調整することでもセンサ群300の検出値が変動する。反応タンク203,204では、原料群S,Mやガスの撹拌、加熱、加圧等により反応させることで最終製品Cが生成される。
【0035】
センサ群300は、一例として、原料等の流量を計測する流量センサ、反応タンク203等の温度を計測する温度センサ、反応タンク204等の圧力を計測する圧力センサ、製品貯蔵タンク205等の生成物の貯蔵量を計測するレベルセンサや生成物の濃度を計測する濃度センサ等を含む。
【0036】
また、センサ群300には、窒素や酸素などのガスの供給量を計測する流量センサなども含まれ、センサ群の種類はこれらに限定されるものではなく、その配置も一例であることは言うまでもない。例えば、温度センサは反応タンク203だけでなく、製造設備200内の複数個所に設置することができる。また、温度センサの測定対象も、原料、中間生成物、最終生成物だけでなく、オイル、冷却水、環境温度などが含まれ得る。
【0037】
このような製造設備200において、センサ群300中の複数のセンサの各々は、それぞれ検知信号を出力し、監視及び制御部700は、個々の検知信号の値が所定の範囲(上限,下限)に含まれる正常値であるか、又はこの範囲を超える異常値であるか否かを検知する。
【0038】
また、センサ群300の各検出値は、直接制御に関係しないデータを含めてデータ収集・管理システム800によって収集及び蓄積され、生産性データ管理システム400、予兆診断システム及び異常検知システム600、プラント監視及び制御支援システム100におけるデータベースとなる。データ収集・管理システム800は、データ蓄積だけでなく、例えばセンサ群の各検出値のタイムスタンプ情報を統一するなど、データ整形の機能を備えていても良い。
【0039】
予兆診断システム及び異常検知システム600の出力値は、センサ群300の検知信号と同様に表示され、製造設備200を統合的に監視した異常度合を表示することができる。
【0040】
本発明では、さらにプラント監視及び制御支援システム100によって、相対的に小さな状態変化を強調して表示する。センサ群300から得られる多次元時系列データを主成分分析する点は特許文献3のプロセス監視診断装置と類似しているが、正常と異常の判別ではなく、主成分分析に基づいた状態変化に関する情報を監視表示して制御を支援するシステムである。
【0041】
そのため、本発明に学習モデルは無い。学習に基づくシステムではないため、学習のためのデータが不要である。学習に依存しないことは、例えば気候の変動などで製造設備の状態が変動する場合でも、柔軟に対応し直近のデータに基づいて分析が可能という長所がある。但し、本発明と、学習モデルを有する監視システムとを組み合わせて使用することを否定するものではない。一例として、学習モデルを有する予兆診断システムや異常検知システムは、
図2のように組み込むことができる。
【0042】
図4に、プラント監視及び制御支援システム100の構成及び処理フローを示す。上記の処理を実行するため、プラント監視及び制御支援システム100は一例として、オフラインのデータ蓄積部101と、オンラインのデータ取得部102と、変数定義部103と、データ整形処理部104と、主成分分析処理部105と、指標定義部106と、クラスタリング処理部107と、状態変化表示部108と、変数相関表示部109と、状態変化定義部110と、変化要因変数算出処理部111と、変化要因変数表示部112とによって構成される。また、製造設備200の状態を制御する制約条件を課す機能として、調整可能変数処理部113を有する。
【0043】
変数定義部103、データ整形処理部104、主成分分析処理部105から構成される監視処理部114での処理は、例えば特許文献1に記載されているような一般的な主成分分析である。
【0044】
データ蓄積部101は、センサ群300から出力された検知信号群を時刻毎に生データとして記憶(蓄積)する記憶部である。データ取得部102は、監視している時刻のセンサ群300のデータをオンラインで取得する。オフラインのデータ蓄積部101及びオンラインのデータ取得部102は、システム構成によってはデータ収集・管理システム800の機能とみなすこともできるが、本実施例では
図4中の機能ブロックの1つとして記載する。
【0045】
変数定義部103、データ蓄積部101及びデータ取得部102の検知信号群のうち、分析に利用する検知信号群を選択する。例えば全センサのデータを選択する場合や、反応タンク203に関わるセンサ群のみを選択することもできる。また、データ蓄積部101の時系列データから分析に用いる期間を定義する。
【0046】
本発明では、学習モデル等を構築する従来技術に比べて、分析する時系列データの期間は短い。本実施例では、分析対象期間よりも過去のデータが200日以上あるが、変数定義部103において、オンラインデータ1日分と、直近のオフラインデータ19日分の合計20日分のデータを利用した。データ量が多いことは学習モデル構築には有効であるが、直近の分析対象期間とは気候や消耗品の状態など状態が異なる場合がある。そこで、直近の僅かな状態変化を捉えるために、本実施例での分析期間は20日間で固定し、1日1回の分析の都度、分析データを更新した。
【0047】
データ整形処理部104では、後段の主成分分析部105にデータを入力する前処理を行う。例えば異なるサンプリングタイムで取得されたデータ群に対して、1分周期や1時間周期などのサンプリングタイムに統一する。また、各検知信号毎に強度の正規化処理や、明らかな異常データの除去などを行う。検知信号群を前処理した後、主成分分析処理部105において、主成分分析処理を行う。
【0048】
主成分分析によって、各時刻のn個のセンサデータが主成分空間に変換される。分散がもっとも大きい主成分軸1の方向に対して、式(1)で表される。skは整形処理後のセンサ値、P1,kは主成分分析によって得られる主成分軸1に変換するためk番目の変数に対する係数である。
【0049】
【0050】
同様に、第1主成分と直交方向で分散が最大となる第2主成分スコアScore2を算出する。Score1を横軸、Score2を縦軸にプロットすることで2次元の主成分スコアをプロットできる。n次元ベクトルZとして各時刻tにおけるScoreを表現すると式(2)となる。
【0051】
【0052】
指標定義部106では、解析の対象とする生産性指標を定義する。原単位や良品率、エネルギー効率が例として挙げられる。或いは、予兆診断システム及び異常検知システム600の出力を用いて分析することもできる。
【0053】
クラスタリング処理部107は、指標定義部106で定義された指標を複数のクラスに分類するものである。必須の要素ではないが、生産性指標をそのまま数値で表記するよりも適している場合に用いる。例えば、良品率が生産性指標であり、80~90%が目標の製造設備については、90%以上を良好、80~90%を中間、80%未満を不良と分類した方が、数値よりも認識しやすい場合がある。このような場合には生産性指標にクラスタリング処理を施す。
【0054】
続いて、状態変化表示部108について説明する。表示の一例として主成分スコアの2次元プロットについて説明する。変数定義部103において、20日分のデータを取得している。主成分スコアは変数と同数のn個存在するが、作業者への表示をするため2次元または3次元として表示することが適当であり、本実施例では2次元で説明する。
【0055】
上述のとおりScore1をPC1として横軸、Score2をPC2として縦軸にプロットすることで2次元の主成分スコアをプロットし、この座標に着目して正常と異常を判別する方法が代表的な手法である。本発明では、各座標ではなく、2点間の座標変化、すなわちベクトルに着目し、製造設備200の状態変化の情報として表示することを特徴とする。
【0056】
図5A及び
図5Bに、本実施例における代表的な状態変化表示部108の表示例を示す。
【0057】
図5Aは2次元プロットの例であり、主成分解析のスコアが座標情報としてプロットされることは従来手法と同じである。本発明では、さらに各プロットを時系列順に線で接続し方向を示す。或いは、プロット点の脇に時間や日付などの情報を付加する方法でも良い。また、クラスタリング処理部107からの出力を重ねて表示する。具体的には、上述した良品率の場合、90%以上で良好の場合には〇印でプロット、80~90%で中間状態の場合には△印でプロット、80%未満で不良の場合には×でプロットする。
【0058】
この表示は、プロットの形ではなく、プロットの色で青・黄・赤のように識別したり、A・B・C等のランクをプロット点の横に表示しても良い。また、クラスタリング処理部107を通さず、生産性指標の数値を直接表示しても良く、ユーザの利便性に応じて変更することが望ましい。
【0059】
2次元プロット以外の表示方法について、
図5Bを用いて説明する。主成分軸のプロットは、変数を多く含むほど、実際の設備との関連を認識しづらい。本発明では、オンラインデータを逐次入力しながら主成分分析処理を施すことを特徴としており、本実施例ではオンラインデータ取得時を含めて直近20日のデータを用いて解析している。そのため1日毎に解析及び表示を更新するたびに主成分軸が変動する。つまり、式(1)のP
1,kや、式(2)のP
nが解析及び表示毎に変化する。仮に1日毎に表示を更新する場合、現在表示している縦軸・横軸と、前日に表示された縦軸・横軸が異なる。
【0060】
この軸が変動する表示は、ユーザにとって理解が難しい場合があり、使い難さを感じる場合もある。そこで、
図5Aの2次元プロットではなく、2次元プロットの2点間の距離(ユークリッド距離)、及び方向を時間軸に対してプロットしても良い。
【0061】
図5Bの上段は2点間の距離(ユークリッド距離)を時系列でプロットした例である。また、
図5Bの中段は3点間で定義される2つのベクトルの方向変化をプロットしている。
図5Bの中段に関しては、逐次データを更新しながら主成分分析を実施する手法が知られている。この手法では、主成分軸の変動量に着目し、特許文献3のように変動量にしきい値を設定し、異常検出を実現する。
【0062】
本発明と比較すると、
図5Bの中段に類似した時系列プロットに、正常/異常のしきい値を設定し監視する方式である。一方で、本発明は
図5Bの中段の時系列プロットも含めて、正常/異常に関わらず状態の変動を可視化し、状態変化の要因抽出のための指標を可視化するものである。
【0063】
図5Bの上段の距離はセンサ群検出値の変動量、
図5Bの中段の方向は該当期間中に変動した変数種類と関連が大きい。そのため、プロットの方向が変動し、かつ距離が大きい場合には製造設備200の状態が大きく変化した可能性があることをユーザに知らせる(アラートを発する)ことができる。
【0064】
例えば、5/10から5/11への遷移距離は3を超えており、データを取得した20日間の平均値2に対して大きい。また、5/10から5/11への状態変化は、5/9から5/10の状態変化と方向が異なっている。ここでは、一例として90°±20°を大きな変化と定義している。180°付近は、変数の正負が異なるが、抽出する変数の種類は0°と類似するため、小さな角度変化である。
【0065】
上記遷移長と角度変化の条件から、
図5Bの下段に状態変化が大きい場合を1,小さい場合を0とした時系列プロットを示す。例えば、(2)5/19から5/20への変化は、遷移距離が小さい。角度変化は135°であり小さくはないが、本発明の手法では僅かな状態変化が角度変化としてプロットされる可能性があるため、5/19から5/20への状態変化は相対的に小さいと見做した。
【0066】
遷移距離と角度変化の両方が大きいという条件を課すと、5/20から過去20日間の状態変化を分析した場合には、5/7,11,17,19が状態変化の大きかった日として表示される。この表示に、クラスタリングした生産性の記号を重ねても良い。以上が5/20における本実施例の状態変化表示部108の表示である。2次元プロットと1次元時系列プロットを併記しても良いし、いずれか一方のみの表示でも良い。
【0067】
続いて、変数相関表示部109について説明する。主成分分析処理部105の演算結果を表示する機能を有し、本発明を構成する必須要素ではないが用途に応じて表示しても良い。
【0068】
図6Aは
図5Aと同じ主成分スコアの2次元プロットである。
図6Bは
図6Aをプロットする際に用いた変数の因子プロットである。式(2)で示したn次元行列P
nに対して、1行目と2行目の要素からなるベクトル(P
1,k, P
2,k)を示していることに等しい。変数が少ない場合には(P
1,k, P
2,k, P
3,k)と3次元表示しても可視性に問題はない。
【0069】
図6Bからは主成分空間での変数同士の相関を把握することができる。例えば同じ点にプロットされる変数同士は、同じ挙動をしていることが分かる。また、
図6Aで左下にプロットされた5/20のデータは、
図6Bの左下の因子が相対的に大きく、右上の因子が負の値として大きいことを、この図から推測できる。
図6Bは変数種類が少なければ状態把握に有効であるが、数十、数百といった多くの変数を扱う場合には、重要な変数を認識しづらく、ユーザのオペレーション支援方法として適していない。
【0070】
そこで、本発明では、状態変化定義部110及び変化要因変数算出処理部111を備えることで、多くの変数の中からユーザが着目した状態変化に対して重要であると分析された変数を、変化要因変数表示部112に出力する。
【0071】
本実施例における状態変化定義部110の機能は、要因変数を表示する日を選択することである。例えば
図5Bの時系列プロットから状態変化の大きいと提案された5/11が自動で選択される方法がある。或いは、最新の日付である5/20を自動で選択する方法でも良い。或いは、
図5Aまたは
図5Bの時系列プロット画面をユーザが確認し、画面で日付を選択する方式でも良い。
【0072】
状態変化定義部110における別の操作方法を
図7に示す。2次元プロットを状態変化表示部108に表示された
図5Aに対し、ユーザが分析対象の状態変化を視覚で確認し、モニター画面からポインタのクリックなどで選択しても良い。例えば5/10から5/11の状態変化に着目した場合には、矢印(A)で示すように5/10と5/11を繋ぐ線を選択する方式であり、式(3)で表すことができる。この例ではt =5/11、k=1となる。
【0073】
【0074】
また、他の状態変化の定義方式として、2次元プロット図に矢印を挿入する方法がある。変数相関表示部109のとおり、相関の大きい変数は主成分空間の因子ベクトルとして表示することができる。そこで、ユーザが5/10から5/11の変化に着目し分析を実施するため、5/10から5/11への遷移方向と平行な矢印(B)を定義することで、状態変化の方向を定義することができる。例えばこの方法は監視装置のマウスで操作する方式、或いは、タッチパネル画面で定義しても良い。
【0075】
本方式は、任意の方向を定義できることに長所がある。日付やプロット点に基づいたデータ選択は、この例では約19種の状態変化に対する要因変数を抽出するのみである。一方、2次元プロットに矢印を挿入することで、データには存在しない方向の要因変数を調べることができる。または矢印の始点と終点を選択する方法でも良い。
【0076】
状態変化定義部110の操作はデータの分析だけでなく、プラントのパラメータを調整する事前検討に有用である。例えば5/20の時点で生産効率が比較的良好であったときに、2次元プロットの右方向へ状態が移ると、生産効率が低下するのではないかと推測できる。そこで、状態変化定義部110において左右方向(C)の矢印すなわちPC1軸方向に相関が大きい変数を事前に把握し、右方向に状態が移る傾向があった場合には、左方向に状態を動かす変数を調整する準備をする、という操作に生かすことができる。また、主成分表示中に定義した矢印の長さや向きから、データ整形処理部104で実施した正規化処理の逆演算を行い、実際の物理量に基づいたセンサ検出値の一例を表示しても良い。
【0077】
変化要因変数算出処理部111では、状態変化定義部110で定義した状態変化と相関の大きい変数を求める。本実施例では、主成分分析処理部105で演算され、場合によっては変数相関表示部109に出力されたn個の因子プロットをベクトルとして扱い、式(4)に示すように状態変化定義部110で定義したベクトルの内積を計算する。
【0078】
【0079】
また、n個の内積値を並び替えて、変化要因変数表示部112に表示するための処理の実施も含める。内積値、或いは内積の絶対値の順に並び替える処理もある。或いは、内積値が大きいものから10個を選択する処理があっても良い。
【0080】
変化要因変数表示部112では、変化要因変数算出処理部111の結果を表示する。
【0081】
図8は、式(4)で示した全変数の内積値を工程順に表示した例である。
図9は、一例として内積の大きさ順の表示である。棒グラフの白抜き部は、その左側の変数と同じ動きをするため同一の変数と見なせることを意味する。或いは、内積の絶対値が大きい変数10~20個を相関が大きい変数として表示し、内積の絶対値が小さい変数を相関が小さい変数として表示しても良い。
図9では棒グラフで表示しているが、表と相関値を表示しても良い。
【0082】
さらに、要因変数を抽出する方法の一例として、式(5)で示される内積値とセンサ群300の各センサ値変動の乗算結果を表示しても良い。
【0083】
【0084】
以上説明したように、本実施例の製造を支援するシステムは、製造設備200の状態量または操作量を計測する複数のセンサ(センサ群300)と、複数のセンサによって計測される複数の変数の時系列データを収集し保持するデータ収集・管理部(データ収集・管理システム800)と、保持されたデータとオンライン計測された変数から、分析の対象とする変数を定義する変数定義部103と、変数定義部103で定義された変数を前処理し主成分演算するデータ整形処理部104および主成分分析処理部105と、所定サイクル毎に所定期間のデータに応じた多変量解析を実行し、所定サイクル毎に所定期間の多変量解析に基づいた分析値を更新し時系列情報として表示し、目標指標となる時系列情報を、時系列主成分値に合わせて表示する変数相関表示部109と、多変量解析に基づいた時系列情報から要因変数抽出の対象となる状態変化を定義する状態変化定義部110と、状態変化定義部110により定義された状態変化に相関の大きな要因変数抽出処理を実行する変化要因変数算出処理部111と、要因変数抽出処理により抽出された状態変化に関わる要因変数を表示する変化要因変数表示部112を備えている。
【0085】
また、目標指標となる時系列情報は、生産性指標の実績データ、或いは、予兆診断に基づく予測値である。
【0086】
本実施例の製造を支援するシステム及び製造を支援する方法によれば、正常稼働している製造設備の僅かな状態変化が可視化される。また、この状態変化の要因変数を抽出することで、製造設備の生産効率を向上させるための設備パラメータ調整の指針を提供することができる。そして、従来は熟練技術者の経験に依存していたパラメータ調整を形式化することが可能となる。
データ蓄積部601では、学習モデルを構築するため、センサ群300の過去の検出値を蓄積している。また、生産性データ管理システム400で収集及び分析された生産性に関するデータもオフラインデータとして蓄積される。なお、データ蓄積部601として、データ収集・管理システム800の機能を用いても良い。
変数定義部602では、データ蓄積部601に蓄積されたセンサ検出値から、プロセス監視の学習モデル構築に必要な項目を選定し、必要に応じて新たに管理指標等の変数を合成してn個の入力変数を定義する。
データ整形処理部603では、変数定義部602で定義された入力変数に対して、正規化処理や、異常値或いは学習に用いないデータ除去を施し、後段の主成分分析処理部604へデータを入力する前処理を実施する。
主成分分析処理部604では、重心からデータの分散が最大となる方向(第1主成分)を算出し、次に第1主成分と直交方向で分散が最大となる箇所(第2主成分)を算出する、という処理をデータ次元だけ繰り返す。以上の処理は、オフラインデータのみを利用する点を除いて、本発明と同様である。
監視時には、データ取得部609によりデータ収集・管理システム800を通じてセンサ群300から取得したオンラインデータの中から、解析に用いる検出値を変数定義部610にて選択し、学習時の条件を用いて前処理及びPn(learning)から主成分スコアを計算する。さらに、データ整形処理部611にてデータを整形した後、統計量算出処理部612において、異常度や正常度といった統計量を計算する。また、統計量がしきい値定義部608で定義されたしきい値を超えるか否かを異常判定処理部613で判定し、正常か異常の診断結果を状態判定表示部614に表示する。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。