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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007047
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20240111BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01P5/12 C
G01F1/684 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108230
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 美貴
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA04
(57)【要約】
【課題】センサ素子に対する熱的影響を低減でき、検知精度を向上させることが可能なセンサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明におけるセンサ装置(1)は、発熱部を有する基板(2)と、前記基板を収容する収容部(27)を備えた筐体(5)と、感温抵抗体を備え前記基板に支持されたセンサ素子(3、4)と、を有し、前記収容部は、前記センサ素子に近い側で、複数の収容空間(27a、27b)に仕切られていることを特徴とする。前記収容部は、仕切り板を介して第1の収容空間(27a)と第2の収容空間(27b)に分けられており、前記第1の収容空間は、前記第2の収容空間よりも前記センサ素子に近い側であり、前記第2の収容空間に比べて幅広で形成される。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を有する基板と、前記基板を収容する収容部を備えた筐体と、感温抵抗体を備え前記基板に支持されたセンサ素子と、を有し、
前記収容部は、前記センサ素子に近い側で、複数の収容空間に仕切られていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記収容部には、複数の仕切り板により第1の収容空間と第2の収容空間とが設けられており、前記第1の収容空間は、前記第2の収容空間よりも前記センサ素子に近い側であり、前記第2の収容空間に比べて幅広で形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記基板は、前記筐体にねじ止めされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、風速を計測可能なセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した流量検知用抵抗素子を流体に曝し、その際の放熱作用に基づいて流体の流量を検出する熱式のセンサ装置が知られている。センサ装置は、流量検知用抵抗素子の他に温度補償用抵抗素子を備えており、流量検知用抵抗素子と温度補償用抵抗素子が、ブリッジ回路に組み込まれている。流量検知用抵抗素子が流体を受けると、流量検知用抵抗素子の温度が低下して抵抗が変化し、これにより、ブリッジ回路にて差動出力を得ることができる。この作動出力に基づいて、流体の流量を検出することができる。
例えば、特許文献1では、流量検知用抵抗素子及び温度補償用抵抗素子を備えた各センサ素子が、夫々、リード線を介して基板から離間して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-215163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各センサ素子は、基板に支持されており、該基板は、筐体内に収容されている。基板には各抵抗素子と電気的に接続された制御部が設けられており、制御部は熱源とされる。
このため、制御部からの熱が筐体内を通ってセンサ素子にまで伝達し、検知精度が低下する問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、センサ素子に対する熱的影響を低減でき、検知精度を向上させることが可能なセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるセンサ装置は、発熱部を有する基板と、前記基板を収容する収容部を備えた筐体と、感温抵抗体を備え前記基板に支持されたセンサ素子と、を有し、前記収容部は、前記センサ素子に近い側で、複数の収容空間に仕切られていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記収容部には、複数の仕切り板により第1の収容空間と第2の収容空間とが設けられており、前記第1の収容空間は、前記第2の収容空間よりも前記センサ素子に近い側であり、前記第2の収容空間に比べて幅広で形成されることが好ましい。
本発明では、前記基板は、前記筐体にねじ止めされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセンサ装置においては、基板を収容する収容空間を複数に仕切ることで、センサ素子に対する熱的影響を低減でき、検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態におけるセンサ装置の斜視図である。
図2図1に示すセンサ装置の分解斜視図である。
図3】本実施の形態のセンサ素子の断面図である。
図4】本実施の形態のセンサ装置の回路図である。
図5】本実施の形態のセンサ素子が接続された基板の正面図である。
図6】本実施の形態の第1の筐体部の内部を示す正面図である。
図7】本実施の形態の基板が第1の筐体部に組み込まれた状態を示す部分拡大正面図である。
図8】(a)は、実験例1のセンサ装置の熱分布を示すサーモグラフィ写真であり、(b)は、(a)の模式図である。
図9】(a)は、実験例2のセンサ装置の熱分布を示すサーモグラフィ写真であり、(b)は、(a)の模式図である。
図10】(a)は、実験例3のセンサ装置の熱分布を示すサーモグラフィ写真であり、(b)は、(a)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
<本実施の形態のセンサ装置1の概要>
図1は、本実施の形態におけるセンサ装置の斜視図である。図2は、図1のセンサ装置の分解斜視図である。図3は、本実施の形態のセンサ素子の断面図である。図4は、本実施の形態のセンサ装置の回路図である。図5は、本実施の形態のセンサ素子が接続された基板の正面図である。図6は、本実施の形態の第1の筐体部の内部を示す正面図である。図7は、本実施の形態の基板が第1の筐体部に組み込まれた状態を示す部分拡大正面図である。
【0012】
図1図2に示されるX1-X2方向及びY1-Y2方向は、平面内にて直交する2方向を示し、図1に示すZ1-Z2方向は、X1-X2方向及びY1-Y2方向に互いに直交する高さ方向を指す。
【0013】
図1図2に示す本実施の形態のセンサ装置1は、発熱部を有する基板2と、基板2を収容する筐体5と、感温抵抗体を備えたセンサ素子3、4と、を有して構成される。
【0014】
筐体5には、センサ素子3、4を外部から保護する保護カバー6が設けられるが、本実施の形態において保護カバー6は、必須の構成部材ではない。ただし、保護カバー6を設けることで、センサ素子3、4を外部から適切に保護でき好ましい。
この実施の形態では、筐体5に保護カバー6が一体的に形成されるが、保護カバー6を筐体5とは別に設けてもよい。
図1図2に示すように、センサ素子3、4は、網目構造の保護カバー6の内側に配置されている。
【0015】
図1図3に示すように、センサ素子3、4は、高さ方向(Z1-Z2方向)に長く延出する形状で形成される。このように、センサ素子3、4は棒状であり、具体的には、円柱状であってもよいし多角柱状であってもよい。ここで、本実施の形態でのセンサ素子3、4は、高さ方向に長く延出する円柱状である。
【0016】
図2に示すように、各センサ素子3、4は、夫々、その両端にリード線7a、7b、8a、8bが接続されており、各リード線は、基板2に接続される。
センサ素子3は、流量検知用抵抗体10を備えた第1のセンサ素子であり、センサ素子4は、温度補償用抵抗体38を備えた第2のセンサ素子である。
【0017】
第1のセンサ素子3の内部構造について、図3を用いて説明する。図3に示すように、第1のセンサ素子3は、感温抵抗体としての流量検知用抵抗体10と、流量検知用抵抗体10の両側に配置された電極キャップ11と、流量検知用抵抗体10及び電極キャップ11を被覆する絶縁膜12と、を有して構成される。
【0018】
流量検知用抵抗体10は、例えば、セラミック等の円柱基板の表面に抵抗被膜が形成されて成る。したがって、流量検知用抵抗体(感温抵抗体)10は、周囲方向全体に渡って形成される。ここで、「周囲方向全体」とは、第1のセンサ素子3が延出する高さ方向(Z1-Z2方向)を軸中心にした軸周りの方向を指す。なお、図示しないが、流量検知用抵抗体10の抵抗被膜の表面には、トリミングが施されて、抵抗調整がされている。
【0019】
第1のセンサ素子3の外面は、流量検知面として機能する素子表面3aと、素子表面3aの上下に位置する上面3b及び下面3cとを備える。
【0020】
図3に示すように、下面3c側に位置する電極キャップ11から第1のリード線7aがZ2方向に延出している。また、上面3b側に位置する電極キャップ11から第1のリード線7bが一旦、Z1方向に延び、途中で折り曲げられて、Z2方向に向け延出している。このため、図3に示すように、一対のリード線7a、7bは、X1-X2方向に所定の間隔を空けて対向し、ともにZ2方向に向けて延出している。そして、一対のリード線7a、7bの端部が基板2に接続されている。
【0021】
第2のセンサ素子4に関しても、図3と同様の構造であるが、流量検知用抵抗体10の代わりに、感温抵抗体としての温度補償用抵抗体38が内蔵されている。
【0022】
図4に示すように、流量検知用抵抗体10は、温度補償用抵抗体38とともに、ブリッジ回路を構成する。図4に示すように、流量検知用抵抗体10と、温度補償用抵抗体38と、抵抗器16、17とでブリッジ回路18を構成している。図4に示すように、流量検知用抵抗体10と抵抗器16とで第1の直列回路19を構成し、温度補償用抵抗体38と抵抗器17とで第2の直列回路20を構成している。そして、第1の直列回路19と第2の直列回路20とが、並列に接続されてブリッジ回路18を構成している。
【0023】
図4に示すように、第1の直列回路19の出力部21と、第2の直列回路20の出力部22とが、夫々、差動増幅器(アンプ)23に接続されている。ブリッジ回路18には、差動増幅器23を含めたフィードバック回路24が接続されている。フィードバック回路24には、トランジスタ(図示せず)等が含まれる。
【0024】
抵抗器16、17は、流量検知用抵抗体10、及び温度補償用抵抗体38よりも抵抗温度係数(TCR)が小さい。流量検知用抵抗体10は、例えば、所定の周囲温度よりも所定値だけ高くなるように制御された加熱状態で、所定の抵抗値Rs1を有し、また、温度補償用抵抗体38は、例えば、前記の周囲温度にて、所定の抵抗値Rs2を有するように制御されている。なお、抵抗値Rs1は、抵抗値Rs2よりも小さい。流量検知用抵抗体10と第1の直列回路19を構成する抵抗器16は、例えば、流量検知用抵抗体10の抵抗値Rs1と同様の抵抗値R1を有する固定抵抗器である。また、温度補償用抵抗体38と第2の直列回路20を構成する抵抗器17は、例えば、温度補償用抵抗体38の抵抗値Rs2と同様の抵抗値R2を有する固定抵抗器である。
【0025】
流量検知用抵抗体10は、周囲温度よりも高い温度となるように調整されており、第1のセンサ素子3が風を受けると、発熱抵抗である流量検知用抵抗体10の温度は低下する。このため、流量検知用抵抗体10が接続された第1の直列回路19の出力部21の電位が変動する。これにより、差動増幅器23により差動出力が得られる。そして、フィードバック回路24では、差動出力に基づいて、流量検知用抵抗体10に駆動電圧を印加する。そして、流量検知用抵抗体10の加熱に要する電圧の変化に基づき、基板2内に配置されたマイコンにて風速を換算し出力することができる。なお、マイコンは、各センサ素子3、4と、各リード線7a、7b、8a、8bを介して電気的に接続されている。
【0026】
また、温度補償用抵抗体38は、流体そのものの温度を検知し、流体の温度変化の影響を補償する。このように、温度補償用抵抗体38を備えることで、流体の温度変化が流量検知に影響するのを低減でき、流量検知を精度よく行うことができる。上記したように、温度補償用抵抗体38は、流量検知用抵抗体10よりも十分に抵抗が高く、且つ、温度が周囲温度付近に設定されている。このため、温度補償用抵抗体38が風を受けても、温度補償用抵抗体38が接続された第2の直列回路20の出力部22の電位は、ほとんど変化しない。したがって、出力部22の電位を基準電位として、流量検知用抵抗体10の抵抗変化に基づく差動出力を精度よく得ることができる。なお、図4に示す回路構成は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0027】
<基板2>
図2及び図5を用いて、センサ素子3、4を支持する基板2について説明する。基板2は、絶縁基板であり、特に限定するものではないが、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた一般的なプリント基板であることが好ましく、例えば、FR4基板を提示することができる。
【0028】
図2及び図5に示すように、基板2は、Z1-Z2方向に延出した板状で形成されている。図5に示すように、基板2は、センサ素子3、4を支持するZ1側のセンサ部2aと、マイコン等の制御部を備えた駆動基板2bと、センサ部2aと駆動基板2bとの間を連結する連結部2cとを、有する。
【0029】
制御部は、センサ素子3、4と電気的に接続されて、センサ素子3、4の検知情報を基に、図4で説明した電気回路を構成する。制御部としては、各種抵抗などの能動素子や受動素子、更にはコネクタ36、37等が含まれる。
【0030】
図2図5に示すように、駆動基板2bには、ねじ穴2dが形成されている。ねじ穴2dは、発熱部よりも上方(Z1側)に形成されることが好ましい。
【0031】
また、本実施の形態では、駆動基板2bの連結部2c近傍にLED等の発光部9が設けられている。例えば、発光部9を、所定以上の強さの風を検知した際に点灯させたり、風の強さに応じて明滅させたりでき、制御部の動作制御により、風情報を視覚的に認識させることができる。なお、発光部9を配置するか否かは任意である。
【0032】
図5に示すように、センサ部2aには、横一列(X1-X2方向)に複数の固定穴14が形成されており、センサ素子3、4に接続される各リード線7a、7b、8a、8bは、各固定穴14に挿入され固定支持される。これにより、センサ素子3、4は、基板2よりも上方(Z1方向)に離間して配置される。
また、センサ部2aには、連結部2c寄りに横方向に延びる長穴15が形成されている。
【0033】
センサ部2aの幅寸法(X1-X2方向の長さ)は、駆動基板2bの幅寸法よりも大きい。
【0034】
また、図2図5に示すように、連結部2cの幅寸法(X1-X2方向の長さ)は、センサ部2a及び駆動基板2bの幅寸法よりも小さく、連結部2cの位置で縊れた形状とされる。また、連結部2cには、複数の極小の穴25が形成されている。
【0035】
<筐体5>
筐体5は、センサ素子3、4側の基板2を収容する前端側筐体5aと、前端側筐体5aの後端側に位置し、基板2の駆動基板2bを収容する後端側筐体5bとに分けられる。
【0036】
(前端側筐体5a)
図2に示すように、前端側筐体5aは、第1の筐体部31と第2の筐体部32に分けられるが、第1の筐体部31と第2の筐体部32は略同形状であるため、第1の筐体部31の構造について説明する。
図2図6に示すように、第1の筐体部31の内面には、凹状の収容部27が形成されている。
【0037】
収容部27は、複数の仕切り板35、40、43により、高さ方向(Z1-Z2方向)に、第1の収容空間27aと第2の収容空間27bに分けられている。第1の収容空間27aは、第1の筐体部31と第2の筐体32とを組み合わせた状態にて、センサ部2aを収容する空間であり、第2の収容空間27bは、駆動基板2bを収容する空間である。第1の収容空間27aの天井側に位置する仕切り板40には、複数の細穴29が設けられており、この細穴29は収容部27にまで通じている。
【0038】
図6に示すように、第1の収容空間27aの幅寸法(X1-X2方向の長さ)T1は、第2の収容空間27bの幅寸法T2よりも大きい。これにより、第1の筐体部31と第2の筐体32とを組み合わせた状態にて、センサ部2a及び駆動基板2bを夫々、各収容空間27a、27bに適切に収容することができる。なお、第1の収容空間27aの幅寸法T1は、センサ部2aの幅寸法よりも広く形成され、第2の収容空間27bの幅寸法T2は、駆動基板2bの幅寸法より広く形成される。
【0039】
また、第1の収容空間27aの奥行長さ(Y2方向への長さ)は、第2の収容空間27bの奥行長さよりも大きい。したがって、図1に示すように、第1の筐体部31と第2の筐体部32とを組み合わせた前端側筐体5aのうち、第1の収容空間27aが設けられた部分の外形面は、第2の収容空間27bが設けられた部分の外形面よりも平面方向(X1-X2方向とY1-Y2方向で作られる面)の外側に突出した形状とされる。
【0040】
また、仕切り板35の中央には、切り欠き35aが形成されている。この切り欠き35aは、基板2の連結部2cを通す箇所であり、切り欠き35aの幅寸法T3は、第1の収容空間及び第2の収容空間の各幅寸法T1、T2よりも小さく形成される。切り欠き35aの幅寸法T3は、連結部2cの幅寸法とほぼ同程度である。また、切り欠き35aの奥行寸法も連結部2cの厚みとほぼ同程度である。
第1の収容空間27a、第2の収容空間27b及び切り欠き35aは、連通している。
また、第2の収容空間27bの底面側にも仕切り板43が設けられており、仕切り板43の中央には、切り欠き43aが形成されている。この切り欠き43aの幅寸法T4は、駆動基板2bとほぼ同程度である。
【0041】
(後端側筐体5b)
図2に示すように、後端側筐体5bは、第3の筐体部33と第4の筐体部34とを組み合わせて構成される。
第3の筐体部33には、駆動基板2bに形成されたねじ穴2dと同位置にねじ穴33aが設けられている。第3の筐体部33には、コネクタ36を通し外部に露出可能な窓33bが設けられている。
【0042】
また、図示しないが、第3の筐体部33の内面には、駆動基板2bを収容可能な収容空間が設けられている。
【0043】
第4の筐体部34には、内面に駆動基板2bを収容可能な収容空間34aが設けられている。また、収容空間34aの天井側には仕切り板44、45が設けられている。前端側筐体5aと後端側筐体5bとを組み合わせた際に、仕切り板43、44同士は接触し、第2の収容空間27bと、収容空間34aとの間が、仕切り板43、44、45により仕切られている。なお、仕切り板45は、第3の筐体部33には設けられていない。
また、該収容空間34aには駆動基板2bに形成されたねじ穴2dと同位置に筒状のねじ受け34bが形成されている。なお、筒状のねじ受け34bは、第3の筐体部33には設けられていない。また、図示しないが、第4の筐体部34にはコネクタ37を通し外部に露出可能な窓が設けられている。
【0044】
<筐体5と基板2との組み立て>
図2に示す第1の筐体部31と第4の筐体部34、及び第2の筐体部32と第3の筐体部33とを夫々組み合わせ、その間の収容空間に基板2を挟み込み、第1の筐体部31と第2の筐体部32、及び第3の筐体部33と第4の筐体部34とを夫々凹凸嵌合する。
【0045】
また、ねじ39をねじ穴33aに差し込み、ねじ39により、基板2と筐体5とを固定する。なお、ねじ39は、樹脂製であってもよいが金属製であることが好ましい。
【0046】
図7は、前端側筐体5aを構成する第1の筐体部31に基板2を収容した状態を示す正面図である。図7に示すように、センサ部2aを、第1の筐体部31の第1の収容空間27aに収容し、駆動基板2bを、第1の筐体部31の第2の収容空間27bに収容する。このとき、仕切り板40に設けられた複数の細穴29にセンサ素子3、4を固定するリード線7a、7b、8a、8bを通すことができる。これにより、センサ素子3、4は、筐体5の仕切り板40から上方に突き出した状態で支持される。また、仕切り板35に形成された切り欠き35aの位置に、基板2の連結部2cが通される。以上により、基板2を第1の筐体部31の収容部27に適切に収容できる。図示しないが、第2の筐体部32にも第1の筐体部31と同様の収容部27が形成されており、第1の筐体部31と第2の筐体部32を合わせた前端側筐体5aの収容部27に、センサ素子3、4近傍の基板2を収容できる。
【0047】
<本実施の形態の効果について>
本実施の形態のセンサ装置1では、センサ素子3、4近傍の前端側筐体5aの内部を複数の仕切り板35、40、43、44、45により、複数の収容空間27a、27bに区分けし、各収容空間27a、27bにセンサ部2a及び駆動基板2bを配置した点に特徴がある。
【0048】
これにより、駆動基板2bの熱源である制御部が発熱し、その熱が上昇気流によりセンサ素子3、4方向に伝達された際に、各仕切り板35、40、43、44、45により、熱分離でき、センサ素子3、4にまで伝わる熱量を低減させることができる。
【0049】
また、本実施の形態では、基板2と筐体5とをねじ止めしている。ねじ39は、第3の筐体部33及び基板2に設けられたねじ穴2d、33aを通って、第4の筐体部34のねじ受け34bに挿入される。
【0050】
ねじ39の位置を限定するものではないが、ねじ39が基板2の発熱部よりも上方(センサ素子3、4に近い方向)に位置することで、ねじ39を介して外部に放熱でき、より好ましくセンサ素子3、4にまで伝わる熱量を低減させることができる。ねじ39は金属製であることがより放熱効果を高めることができ好適である。
【0051】
また、図6図7に示すように、収容部27のうち、センサ素子3、4に近い側の第1の収容空間27aを、センサ素子3、4から遠い側の第2の収容空間27bよりも幅広で形成しているため、仕切り板35の手前で空気中へ拡散した熱が上昇気流によって筐体外部から回り込むことによる、センサ素子3、4への熱的影響をより低減できる。
【0052】
また、センサ部2aと駆動基板2bを繋ぐ連結部2cの幅を小さくし、仕切り板35に形成した切り欠き35aに連結部2cを通す構造としたことで、駆動基板2bから連結部2cを介してセンサ素子3,4方向に伝わる熱量を低減でき、より効果的に、センサ素子3、4に対する熱的影響を低減できる。
【0053】
また、センサ部2aには長穴15が形成されており、また、連結部2cには、複数の穴25が形成されているが、これにより、熱分離を、より効果的に促進できる。
【0054】
以上により、本実施の形態のセンサ装置1の構造によれば、熱分離効果を得ることができ、センサ素子3、4に対する熱的影響を低減でき、良好な検知精度を維持することができる。
【0055】
<そのほか>
図1に示すように、前端側筐体5aの天井側に位置する仕切り板40には保護カバー41が設けられており、センサ素子3、4は保護カバー41内に収容されている。
【0056】
保護カバー41は、センサ素子3、4の長手方向(Z1-Z2方向)に対して、斜め方向に延出する複数の支柱42にてセンサ素子3、4の周囲を囲み、本実施の形態では、複数の支柱42が、格子状に交わっている。
【0057】
本実施の形態では、センサ素子3、4の周囲360度の方向から風が作用したとき、風は、どの方向から吹いても、保護カバー41を通り抜けて、流量検知用抵抗体10を備えた第1のセンサ素子3に作用する。したがって、第1のセンサ素子3は、周囲360度からの風の作用により流量検知が可能である。以上により、保護カバー41により、センサ素子3、4を適切に外部から保護し、且つ、センサ素子3、4の周囲360度における無指向性を得ることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、筐体5が4分割されているが、2分割にしてもよく、分割せずに一体型の筐体であってもよい。
【0059】
上記では、センサ装置1は、風を検知するものとして説明したが、検知する流体としては、風以外にガスや、液体であってもよい。
【実施例0060】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
実験では、図1に示す構造のセンサ装置(実験例1)、図1からねじ39を除いた実験例2、図1からねじ39、及び仕切り板35、40、43、44、45を除去した実験例3を夫々用意した。
【0062】
各実験例の熱分離効果を確かめるために、基板表面の温度変化をサーモグラフィ(日本アビオニクス(株)製)にて観察した。
【0063】
図8は、実験例1の結果であり、図9は、実験例2の結果であり、図10は、実験例3の結果である。図8図10の各(a)は、熱分布を示すサーモグラフィ写真であり、各(b)は、各(a)の模式図である。なお、各(a)には、温度レベルの指標が右側に示されているが、各(b)には、その指標をわかりやすくするためにデフォルメして示した。
【0064】
各図におけるP1は、発光部付近、P2は、マイコン付近、P3は、熱源付近、P4は、仕切り板よりやや第2の収容空間寄りの位置、P5は、第1のセンサ素子の下付近を指す。
【0065】
P5の第1のセンサ素子の下付近で温度が低くなるほど熱分離効果が得られるが、実験例1では、P5の温度が27.1℃、実験例2では、P5の温度が28.6℃、実験例3では、P5の温度が29.2℃であり、実験例1が最も温度を低くできることがわかった。
【0066】
このように仕切り板35、40、43、44、45及びねじ39が除去された実験例3は、仕切り板35、40、43、44、45は設けられているがねじ39が除去された実験例2、及び仕切り板35、40、43、44、45とねじ39の双方を有する実験例1よりも熱分離効果が低いため、仕切り板35を設けたことの熱分離効果を証明できた。
【0067】
また、仕切り板35、40、43、44、45は設けられているがねじ39が除去された実験例2は、仕切り板35、40、43、44、45とねじ39の双方を有する実験例1よりも熱分離効果が低いため、ねじ39を設けたことの熱分離効果を証明できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明では、熱分離効果を向上でき、精度良い検知特性を得ることができ、様々な度プリケーションに適用することができる。例えば、空調設備や、風の制御系、分析用などに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 :センサ装置
2 :基板
2a :センサ部
2b :駆動基板
2c :連結部
2d :ねじ穴
3 :第1のセンサ素子
4 :第2のセンサ素子
5 :筐体
5a :前端側筐体
5b :後端側筐体
6 :保護カバー
7a、7a、8a、8b :リード線
9 :発光部
10 :流量検知用抵抗体
18 :ブリッジ回路
21、22 :出力部
23 :差動増幅器
24 :フィードバック回路
27 :収容部
27a :第1の収容空間
27b :第2の収容空間
31 :第1の筐体部
32 :第2の筐体部
33 :第3の筐体部
34 :第4の筐体部
35、40、43、44、45 :仕切り板
35a :切り欠き
36、37 :コネクタ
38 :温度補償用抵抗体
39 :ねじ
41 :保護カバー
42 :支柱

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10