(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070472
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20240516BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240516BHJP
G07D 11/237 20190101ALI20240516BHJP
G07D 1/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G07D11/26
B65H5/02 K
G07D11/237
G07D1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180993
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】大岩 章
【テーマコード(参考)】
3E141
3F049
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141AA09
3E141AA11
3E141BA08
3E141DA08
3E141FG03
3E141FG08
3E141FG13
3E141GA04
3E141JA10
3E141JA14
3E141KC12
3E141LA23
3E141LA33
3E141LA45
3F049AA01
3F049BA02
3F049DB13
3F049EA10
3F049LA08
3F049LB12
(57)【要約】
【課題】様々な箇所における媒体の詰まりの解消を図ることができるようにする。
【解決手段】現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、ピンベルト搬送部18により出金案内部19を介して入出金部13へ搬送した硬貨が速度切替枚数になると、搬送モータ46を通常回転速度から低回転速度に切り替えてトルクを高め、搬送ピン44から硬貨CNに伝達する力を増加させる。このため硬貨処理装置10では、出金案内部19に硬貨が詰まっていたとしても、搬送ピン44から当該硬貨CNに比較的大きい力を伝達でき、放出口13D側へ押し出して詰まりの解消を図ることができる。これにより硬貨処理装置10では、実行中の取引処理の停止や保守員による保守作業等を行うこと無く、運用を継続できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記媒体を収容する収容部と、
前記搬送部による前記収容部への前記媒体の搬送処理において、所定の切替条件が満たされた場合、前記搬送部による搬送速度を低下させるよう制御する制御部と
を具えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記搬送部により搬送された前記媒体を前記収容部に案内する案内部
をさらに具え、
前記収容部には、前記搬送部から引き渡された前記媒体を前記収容部内へ放出する放出口が設けられ、
前記案内部は、前記搬送部と前記放出口とを連通する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記搬送部側から前記収容部側へ向かう案内方向に沿った前記媒体の進行を許容する一方、前記案内方向と反対の方向に沿った前記媒体の進行を阻止する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記切替条件は、前記搬送部により搬送される前記媒体の数量、又は前記収容部へ搬送された前記媒体の数量に関する条件である
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記搬送部により前記収容部へ搬送される前記媒体の枚数を計数する計数部
をさらに具え、
前記切替条件は、前記計数部により計数された前記媒体の枚数が所定の切替枚数を超えたことである
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記計数部は、前記媒体を認識及び搬送する認識搬送部から前記搬送部に当該媒体を引き渡し、
前記切替条件は、前記認識搬送部において認識された前記媒体の数が所定の切替枚数を超えたことである
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記搬送部により前記収容部へ搬送する予定である前記媒体の数量である搬送予定数を取得し、
前記制御部は、前記搬送予定数が所定の切替枚数以上であった場合に、前記搬送処理において前記切替条件が満たされると前記搬送速度を低下させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記搬送部又は前記収容部に設けられ、前記媒体の詰まりを検出する検出部
をさらに具え、
前記切替条件は、前記検出部により前記媒体の前記詰まりを検出したことである
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記搬送部は、モータから供給される駆動力を基に前記媒体を搬送し、
前記制御部は、前記切替条件が満たされた場合、前記モータの回転速度を低下させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記搬送部は、
前記媒体を搬送すべき方向に沿って走行するベルトと、
前記ベルトと一体に走行し、前記媒体が搬送される際に通過する空間である媒体通過空間内に少なくとも一部分が位置し、前記媒体に当接して駆動力を伝達する駆動力伝達体と
を具えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記ベルトは、前記媒体通過空間の外を走行し、
前記駆動力伝達体は、前記ベルトにおける前記媒体を搬送すべき方向に関する複数箇所に設けられ、少なくとも一部分が前記媒体通過空間内に位置するピンである
ことを特徴とする請求項10に記載の媒体処理装置。
【請求項12】
前記収容部は、前記搬送部により搬送された前記媒体が放出口から放出され、且つ前記媒体を収容する収容トレイの底面が、当該放出口から離れるに連れて低くなるよう傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項13】
前記収容部は、
前記媒体を収容する収容トレイと、
当該収容トレイを振動させる振動部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記切替条件が満たされた場合、前記搬送速度を低下させると共に、前記振動部を振動させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項14】
駆動力を発生させる駆動力源と、
前記駆動力源から供給される前記駆動力を利用して媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記媒体を収容する収容部と、
前記搬送部による前記収容部への前記媒体の搬送処理において、所定の切替条件が満たされた場合、前記駆動力源において発生する前記駆動力のトルクを高めるよう制御する制御部と
を具えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項15】
前記駆動力源は、モータであり、
前記制御部は、前記切替条件が満たされた場合、前記モータの回転速度を低下させることにより、前記駆動力の前記トルクを高めるよう制御する
ことを特徴とする請求項14に記載の媒体処理装置。
【請求項16】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項15の何れかに記載の媒体処理装置と
を具えることを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するものが広く普及している。この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客との間で硬貨(媒体とも呼ぶ)の授受を行う入出金部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を識別する識別部、及び金種ごとに硬貨を収納する収納部、並びに各部を制御する制御部等を有している。
【0003】
このうち搬送部としては、例えば硬貨を搬送すべき搬送経路に沿って硬貨を案内する搬送路(搬送ガイドとも呼ぶ)と、該搬送経路に沿って張架された搬送ベルトと、該ベルトに所定間隔ごとに取り付けられた突起(ピンとも呼ぶ)とを有するものがある。この搬送部は、搬送ベルトを走行させると共に、ピンの一部を硬貨の周側面における末尾近傍に当接させることにより、該硬貨を進行方向の末尾側から押し、搬送経路に沿って搬送することができる。
【0004】
この搬送部では、例えば異物が挟まる等の理由により、搬送路上において硬貨に詰まりが発生する場合がある。そこで硬貨処理装置として、所定のセンサ等により硬貨の詰まりが発生したことを検知した場合、搬送部の搬送ベルトを逆走させることにより、詰まりの解消を図るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2009/130774号(段落[0179]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで硬貨処理装置では、搬送部における搬送路上以外の他の箇所であっても、硬貨が通過する箇所であれば、詰まりが発生する可能性がある。例えば硬貨処理装置では、出金取引等において硬貨を出金する場合、硬貨を搬送部により搬送し、該搬送部と入出金部との間を繋ぐ案内路を経由して、該入出金部に形成された放出口から硬貨を放出させ、収納させる。このとき硬貨処理装置では、出金する硬貨の枚数が比較的多い場合などに、入出金部内の放出口付近に硬貨が偏って堆積し、該放出口を塞いでしまう可能性がある。
【0007】
そうすると硬貨処理装置では、例えば案内路上、すなわち搬送ベルトの走行経路以外の箇所において、硬貨の詰まりが発生する可能性がある。このような場合、硬貨処理装置では、搬送ベルトを逆走させたとしても詰まりの解消を図ることができないため、運用中止による可用性の低下を招き、また保守員等による保守作業も必要となる、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、様々な箇所における媒体の詰まりの解消を図ることができる媒体処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された媒体を収容する収容部と、搬送部による収容部への媒体の搬送処理において、所定の切替条件が満たされた場合、搬送部による搬送速度を低下させるよう制御する制御部とを設けるようにした。
【0010】
また本発明の媒体処理装置においては、駆動力を発生させる駆動力源と、駆動力源から供給される駆動力を利用して媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された媒体を収容する収容部と、搬送部による収容部への媒体の搬送処理において、所定の切替条件が満たされた場合、駆動力源において発生する駆動力のトルクを高めるよう制御する制御部とを設けるようにした。
【0011】
さらに本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0012】
本発明は、搬送部により媒体を収容部へ搬送する際に、切替条件が満たされると、当該搬送部における搬送速度を低下させ、又は搬送部に供給する駆動力のトルクを高めるよう制御する。これにより本発明は、収容部において媒体の詰まりが発生していた場合や、該詰まりが発生する可能性が高まっていた場合に、搬送部から搬送中の硬貨を介して周囲の硬貨に比較的大きい力を作用させ、その結果として詰まりの解消を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な箇所における媒体の詰まりの解消を図ることができる媒体処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】現金自動預払機の構成を示す略線的斜視図である。
【
図3】ピンベルト搬送部の構成を示す略線図である。
【
図4】出金案内部の構成を示す略線的斜視図である。
【
図5】出金案内部の構成を示す略線的斜視図である。
【
図6】レバー支持部による規制レバーの支持の様子を示す略線図である。
【
図7】硬貨の案内時における規制レバーの回動の様子を示す略線図である。
【
図8】入出金部における硬貨の詰まりの様子を示す略線的斜視図である。
【
図9】第1の実施の形態による搬送制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施の形態による入出金部の構成を示す略線的平面図である。
【
図11】第2の実施の形態による入出金部の構成を示す略線的断面図である。
【
図12】第3の実施の形態による搬送制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】第4の実施の形態による搬送制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0017】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で硬貨の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、カード入出口4、硬貨入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0018】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。硬貨入出金口5は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。また硬貨入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに応対部3には、使用者により入金される紙幣が投入されると共に該使用者へ出金する紙幣が排出される紙幣入出金口(図示せず)等も設けられている。
【0019】
操作部としての操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
【0020】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0021】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0022】
[1-2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、
図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、媒体としての硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い円板形状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類(すなわち複数金種)の硬貨を取り扱うことが想定されている。
【0023】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、出金案内部19、6個のスタッカ部21、出金搬送部22、及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0024】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0025】
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。この入出金部13は、収容トレイ13A、シャッタ13B及び放出口13D等を有している。
【0026】
収容トレイ13Aは、上側に開口部を有すると共に下方へ窪んだような形状に形成されており、その内部に所定の最大枚数(例えば100枚)までの硬貨を収容できる。シャッタ13Bは、収容トレイ13Aの上側において開閉可能に構成されており、該収容トレイ13Aの開口部を開放した開放状態、又は該開口部を閉塞した閉塞状態に遷移することができる。
【0027】
放出口13Dは、出金案内部19(詳しくは後述する)における収容トレイ13A側の端部と接続されており、該収容トレイ13Aの後左側面における底面からやや離れた位置に形成されている。この放出口13Dは、出金案内部19により硬貨が案内されてくると、当該硬貨を収容トレイ13A内へ放出する。
【0028】
このように構成された入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で使用者により硬貨が収容トレイ13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容トレイ13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。
【0029】
また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を出金案内部19により前下方へ案内し、放出口13Dから収容トレイ13A内へ放出して収容させる。その後入出金部13は、シャッタ13Bを開放して、収容トレイ13A内の硬貨を使用者に受け取らせる。
【0030】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0031】
認識部としての認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に当該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に当該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を当該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、当該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0032】
硬貨制御部12は、認識搬送部16から得られた認識結果を基に、当該硬貨の搬送先を決定すると共に、硬貨の合計枚数や金種ごとの枚数を計数し、さらに合計金額も算出する。このため以下では、認識搬送部16及び硬貨制御部12をまとめて計数部とも呼ぶ。
【0033】
搬送部としてのピンベルト搬送部18は、
図3に示すように、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、搬送経路Wを形成している。
【0034】
ピンベルト搬送部18は、大きく分けて搬送ガイド41及びピンベルト42により構成されている。このうち搬送ガイド41は、上側をやや左方向へ傾けたような傾斜面である搬送面41Sを有しており、この搬送面41Sに硬貨の盤面を当接させる。搬送面41Sの右側には、搬送される硬貨が通過すべき空間(以下これを硬貨通過空間又は媒体通過空間とも呼ぶ)が形成されている。また下ピンベルト搬送部18L及び上ピンベルト搬送部18Uには、搬送ガイド41における搬送面41Sの下端近傍に、該搬送面41Sとほぼ直交する搬送底面41SBも形成されている。この搬送底面41SBは、搬送される硬貨における下側の周側面を当接させる。
【0035】
ピンベルト42は、搬送ベルト43及び複数の搬送ピン44により構成されている。搬送ベルト43は、可撓性を有する材料によって円環状に形成されている。一方、硬貨処理装置筐体11(
図2)には、主に搬送ガイド41が屈曲する箇所の近傍に、複数のプーリ45がそれぞれ回転可能に設けられている。搬送ベルト43は、搬送ガイド41及び硬貨通過空間よりも右側において、各プーリ45の周囲を周回するように張架されている。
【0036】
各搬送ピン44は、搬送ベルト43における互いに離散した複数箇所にそれぞれ設けられている。駆動力伝達体としての搬送ピン44は、小さい円柱状に形成された部分が搬送ベルト43の左側面よりも左側へ突出した形状であり、その一部分が硬貨通過空間内に位置している。
【0037】
一部のプーリ45には、搬送モータ46から所定のギア等(図示せず)を介して駆動力が伝達されるようになっている。駆動力源としての搬送モータ46は、例えばパルスモータ(ステッピングモータとも呼ばれる)であり、硬貨制御部12からパルス状の制御信号が供給されることにより、回転や停止、及び回転方向や回転速度等が制御される。
【0038】
このような構成により、ピンベルト搬送部18は、搬送モータ46から一部のプーリ45に駆動力が伝達されると、該プーリ45を反時計回りに回転させ、これに伴ってピンベルト42を図の反時計回りとなるように、すなわち矢印E42により示す方向へ走行させる。これに伴いピンベルト搬送部18は、搬送ガイド41の搬送面41Sに硬貨の盤面(すなわち左側面)を寄りかからせた状態で、搬送ピン44により当該硬貨に対し搬送方向へ力を加え、該搬送ガイド41に沿って進行させること、すなわち搬送することができる。
【0039】
ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路Wに沿って搬送する。またピンベルト搬送部18は、硬貨を最も長い距離に渡って搬送する場合、当該硬貨を上ピンベルト搬送部18Uの前端近傍から出金案内部19に引き渡し、該出金案内部19から入出金部13の放出口13Dを介して収容トレイ13A内へ当該硬貨を放出させることができる。
【0040】
案内部としての出金案内部19は、
図4及び
図5に模式的な斜視図を示すように、左案内部51、右案内部52、下案内部53、レバー支持部54、レバーシャフト55、規制レバー56及びレバースプリング57により構成されている。
【0041】
左案内部51は、全体として左右方向に薄い板状の部材を中心に構成されており、ピンベルト搬送部18の搬送ガイド41に固定されている。左案内部51の右側面は、該搬送ガイド41の搬送面41S(
図3)とほぼ連続する平面となっている。また左案内部51には、左右方向に貫通する丸孔でなるシャフト軸孔51HBや、該シャフト孔を中心とした2箇所の円弧状の長孔でなる規制孔51H1及び51H2等が設けられている。
【0042】
右案内部52は、全体として左右方向に薄い板状の部材を中心に構成されており、所定の支持部材等を介して左案内部51の右側にやや離れた位置に固定されている。右案内部52の左側面は、平面状に形成されており、左案内部51の右側面との間に1枚の硬貨CNの厚さよりも大きい隙間が形成されている。また右案内部52には、左案内部51の規制孔51H1及び51H2とそれぞれ対応する位置に、それぞれ円弧状の長孔でなる規制孔52H1及び52H2等が設けられている。
【0043】
下案内部53は、左案内部51及び右案内部52の間における下側に設けられている。下案内部53の上側面は、後端部分が上ピンベルト搬送部18Uの搬送底面41SB(
図3)と同等の高さであり、また前側へ進むに連れて下降する傾斜面として形成されている。
【0044】
このように出金案内部19は、左案内部51の右側面、右案内部52の左側面及び下案内部53の上側面により囲まれた空間(以下これを出金案内空間S19と呼ぶ)を形成しており、この出金案内空間S19に沿って硬貨CNを入出金部13へ案内することができる。以下では、下案内部53の上側面に沿った前斜め下方向を、出金案内部19における案内方向と呼ぶ。
【0045】
レバー支持部54は、例えば薄板状の金属部材が所定形状に切削されると共に屈曲されることにより構成されており、大きく分けて取付部54A、中間部54B及び左支持部54Cを有している。取付部54Aは、左右方向に薄い板状であり、左案内部51の左側に固定されている。中間部54Bは、おおむね上下方向に薄い板状であり、取付部54Aの上端近傍から左方向へ立設されている。左支持部54Cは、左右方向に薄い板状であり、中間部54Bの左端からおおむね上方向へ向けて立設されている。左支持部54Cには、左案内部51のシャフト軸孔51HBと同軸となる位置に、左右方向に貫通する丸孔でなるシャフト軸孔54HBが穿設されている。
【0046】
レバーシャフト55は、中心軸を概ね左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、左案内部51のシャフト軸孔51HB及びレバー支持部54のシャフト軸孔54HBに挿通され、回転可能に支持されている。またレバーシャフト55の両端近傍には、所定の抜け止め部材がそれぞれ設けられており、シャフト軸孔51HBおよび54HBから抜け落ちないようになっている。
【0047】
規制レバー56は、左側板61、右側板62、下側板63、並びに規制シャフト64及び65により構成されている。左側板61は、左右方向に薄い板状であり、全体として後上側と前下側とを結ぶような斜め方向に沿った長方形状に形成されている。左側板61の後上側端部近傍には、左右方向に貫通する丸孔でなる回転シャフト孔61HBが穿設され、レバーシャフト55が挿通されている。また左側板61の前下側端部近傍及びそのやや後上側には、それぞれ左右方向に貫通する丸孔でなる規制シャフト孔61H1及び61H2が穿設されている。
【0048】
右側板62は、左側板61の右側にやや離れた位置に配置されている。この右側板62は、左側板61と概ね同様の形状に構成されており、回転シャフト孔61HB並びに規制シャフト孔61H1及び61H2とそれぞれ対応する回転シャフト孔62HB並びに規制シャフト孔62H1及び62H2が穿設されている。下側板63は、法線を前斜め上方向に向けた薄板状に形成されており、左側板61の下端及び右側板62の下端とそれぞれ連接されている。
【0049】
規制シャフト64は、中心軸を概ね左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、左側板61の規制シャフト孔61H1、右側板62の規制シャフト孔62H1、左案内部51の規制孔51H1及び右案内部52の規制孔52H1に挿通されている。また規制シャフト64には、左側板61の左側及び右側板62の右側等に所定の抜け止め部材(図示せず)が設けられており、規制シャフト孔61H1等から抜け落ちないようになっている。
【0050】
規制シャフト65は、規制シャフト64と同様に構成されており、左側板61の規制シャフト孔61H2、右側板62の規制シャフト孔62H2、左案内部51の規制孔51H2及び右案内部52の規制孔52H2に挿通されている。
【0051】
このような構成により、規制レバー56は、
図6に模式的な側面図を示すように、レバー支持部54等に対し、レバーシャフト55を中心として、矢印R1方向又は矢印R2方向へ回動することができる。このとき規制レバー56は、規制シャフト64を左案内部51の規制孔51H1及び右案内部52の規制孔52H1の内部で円弧状に変位させると共に、規制シャフト65を左案内部51の規制孔51H2及び右案内部52の規制孔52H2の内部で円弧状に変位させる。
【0052】
レバースプリング57は、いわゆるトーションばねとして構成されており、巻回された部分がレバーシャフト55に挿通されている。このレバースプリング57は、一端が規制レバー56に当接すると共に他端が左案内部51に当接しており、該規制レバー56を
図6における反時計回りに回動させるよう付勢している。
【0053】
出金案内部19は、
図7(A)に模式的な側面図を示すように、初期状態として、重力及びレバースプリング57の作用により、規制レバー56(
図5、
図6)の規制シャフト64及び65を、左案内部51の規制孔51H1及び51H2におけるそれぞれの下端近傍に位置させる。以下、この位置を規制位置と呼ぶ。なお
図7(A)では、説明の都合上、右案内部52等の一部の部品を省略している。
【0054】
規制レバー56が規制位置にあるとき、規制シャフト64は、上ピンベルト搬送部18Uの搬送底面41SBの上側に位置しており、且つ該搬送底面41SBとの間隔が硬貨CNの直径よりもやや小さい一方、当該硬貨CNの半径よりも大きくなっている。ここで、規制シャフト64の仮想的な中心軸を規制シャフト軸X64とすると、規制レバー56がレバーシャフト55を中心として回動する場合、規制シャフト軸X64は円弧状の軌跡C64を描く。さらに、軌跡C64の規制位置における接線を、規制位置接線T64とする。この規制位置接線T64は、搬送底面41SBの法線N41SBに対して前側に、すなわち図の反時計回りに回転する方向に、傾いている。
【0055】
また規制レバー56が規制位置にあるとき、規制シャフト65は、規制シャフト64の前斜め下側であって下案内部53の上側に位置しており、且つ該下案内部53との間隔が硬貨CNの直径及び半径よりも小さくなっている。ここで、規制シャフト65の仮想的な中心軸を規制シャフト軸X65とすると、規制レバー56がレバーシャフト55を中心として回動する場合、規制シャフト軸X65は円弧状の軌跡C65を描く。さらに、軌跡C65の規制位置における接線を、規制位置接線T65とする。この規制位置接線T65は、下案内部53の上側面における法線N53に対して前側に、すなわち図の反時計回りに回転する方向に、傾いている。
【0056】
また出金案内部19は、
図7(B)に示すように、上ピンベルト搬送部18Uから、ピンベルト42の搬送ピン44により前方向へ力を加えられている硬貨CNが搬送されてくる。このとき出金案内部19では、出金案内空間S19内において、まず硬貨CNが規制レバー56の規制シャフト64に当接し、該規制シャフト64に対し、前斜め上方向へ向かう力F64が作用する。これにより規制レバー56は、レバーシャフト55を中心として図の時計回りに回動し、持ち上げられていく。
【0057】
続いて出金案内部19では、引き続き硬貨CNが搬送ピン44からの力により出金案内空間S19内を前方向へ移動すると、該硬貨CNが前方向へ変位することにより規制シャフト65に当接し、該規制シャフト65に対し前斜め上方向へ向かう力F65が作用する。これにより規制レバー56は、レバーシャフト55を中心として図の時計回りにさらに回動し、さらに持ち上げられていく。
【0058】
さらに出金案内部19では、搬送ピン44からの力を受ける硬貨CNが出金案内空間S19内を引き続き前方向へ進行すると、
図7(C)に示すように、当該硬貨CNの上端近傍が規制シャフト65の真下を通過する頃に当該搬送ピン44が離れていく。その後、出金案内部19は、前方向へ向かおうとする慣性や重力の作用等により、硬貨CNを下案内部53の傾斜に沿って案内方向へ(すなわち前斜め下方向へ)進行させ、やがて入出金部13(
図3等)に引き渡す。また規制レバー56は、持ち上げられる方向に力が加えられなくなるため、重力及びレバースプリング57(
図6)の作用により、図の反時計回りに回動し、規制位置に戻る。
【0059】
ところで出金案内部19では、
図8に示すように、入出金部13へ大量の硬貨CNが搬送されて収納された場合、出金案内空間S19内に硬貨が滞留し、その一部が後方向へ逆走しようとする恐れがある。
【0060】
ここで出金案内部19では、
図7(A)に示したように、規制レバー56が規制位置にある場合、前側に位置する規制シャフト65が比較的低い位置にあり、且つ規制位置接線T65が下案内部53の上側面における法線N53に対して前側に傾斜している。
【0061】
このため出金案内部19では、
図7(D)に示すように、仮に出金案内空間S19内において硬貨CNから規制シャフト65に対し案内方向と反対の方向へ、すなわち後斜め上方向へ向かう力が作用した場合、下案内部53の上側面から引き離す方向力の成分や前方向へ向かう力の成分が発生しない。すなわち出金案内部19では、案内方向と反対方向へ向かう硬貨CNによっては、規制シャフト65が持ち上げられることが無く、当該硬貨CNを当該規制シャフト65よりも後側へ進行させること、すなわち当該硬貨CNを逆走させることを阻止できる。
【0062】
このように出金案内部19では、ピンベルト搬送部18により硬貨CNが搬送されてくると、当該硬貨CNにより規制レバー56を規制位置から持ち上げるように回動させるため、出金案内空間S19内において当該硬貨CNの案内方向への進行を許容し、入出金部13へ引き渡すことができる。その一方で出金案内部19は、硬貨CNが案内方向と反対方向へ進行しようとした場合には、規制レバー56が規制位置から回動せずに当該硬貨CNの進行を阻止することができる。
【0063】
また、ピンベルト搬送部18(
図3)には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部20がそれぞれ設けられている。各分岐部20の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0064】
各分岐部20は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
【0065】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20Sが設けられている。各スタッカ分岐部20Sの左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20Sは、各分岐部20と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0066】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部34とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20Sから受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部34により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0067】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち
図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0068】
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
【0069】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を後方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0070】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっており、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。集積分離部29Aは、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出する。
【0071】
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での処理についてそれぞれ説明する。
【0072】
[1-3-1.入金取引における硬貨の搬送]
まず、現金自動預払機1(
図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。
【0073】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6(
図1)を介して使用者から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金計数処理を開始する。
【0074】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して硬貨入出金口5(
図1)のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを開いて使用者に入出金部13内へ硬貨を投入させる。次に硬貨制御部12は、使用者から操作表示部6(
図1)を介して硬貨の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、硬貨入出金口5のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを閉塞した上で、入出金部13からシュート部14を介して上分離部15に硬貨を引き渡す。
【0075】
上分離部15は、硬貨を1枚ずつに分離して繰り出し、認識搬送部16へ引き渡す。認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつ搬送しながら認識し、受渡部17に引き渡すと共に、得られた認識結果を硬貨制御部12へ通知する。
【0076】
これに応じて硬貨制御部12は、通知された認識結果を基に、該硬貨を受け入れ得るか否かを判定すると共にその搬送先を決定し、さらに記憶する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が取扱可能な金種であり、且つ正当である(すなわち偽造されていない)と判定した場合にこれを受入可能とし、それ以外の場合を受入不可能とする。例えば硬貨制御部12では、外国の硬貨を受入不可能と判定することになる。また硬貨制御部12は、受入可能と判定した硬貨の金額を逐次加算することにより合計金額を集計する。
【0077】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が受入可能であれば、分岐部20により分岐させて一時保留部23へ進行させ、該一時保留部23に集積させる。またピンベルト搬送部18は、例えば該硬貨が外国の硬貨であった場合のように受入不可能であれば、入出金部13まで搬送して収容させる。
【0078】
やがて硬貨制御部12は、上分離部15から全ての硬貨を繰り出し終えると、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していれば、主制御部9(
図1)と協働し上シャッタ等を開放させ、該硬貨を使用者に返却して確認させると共に、必要に応じて再投入させる。一方、硬貨制御部12は、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していなければ、入金計数処理を完了し、入金計数処理を完了したこと及び集計した合計金額(以下これを入金額と呼ぶ)を主制御部9に通知する。これに応じて現金自動預払機1の主制御部9は、所定の操作指示画面を操作表示部6(
図1)に表示させ、使用者にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。
【0079】
ここで入金取引の中止が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、所定の入金返却処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨を入出金部13へ搬送して使用者に返却する。一方、使用者から入金取引の継続が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、入金収納処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨をスタッカ部21へ搬送して金種毎に集積させる。
【0080】
具体的に硬貨制御部12は、まず一時保留部23のベルトを走行させることにより、一時保留部23内に集積している硬貨を前方へ搬送して繰り出し、上分離部15に順次引き渡す。上分離部15及び認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつに分離してから認識すると共に、受渡部17へ引き渡す。
【0081】
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、該硬貨が再利用可能であるか否か、すなわち以降の出金処理において出金可能な硬貨であるか否かを判定し、該硬貨の搬送先を決定する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0082】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用可能であれば、前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L及び後ピンベルト搬送部18Rにより該硬貨を順次搬送する。やがてピンベルト搬送部18は、該硬貨が上ピンベルト搬送部18Uに到達すると、金種に応じたスタッカ分岐部20Sにより該硬貨を分岐させ、案内部31を介して集積部32に集積させる。
【0083】
一方、ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用不可能であれば、これをリジェクト庫27へ搬送して収容させる。やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、入金収納処理を終了する。
【0084】
[1-3-2.出金取引における硬貨の搬送]
次に、現金自動預払機1(
図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。
【0085】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して使用者から出金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、出金処理を開始する。
【0086】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して操作表示部6を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、硬貨制御部12において出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を決定する。続いて各スタッカ部21は、決定した金種及び枚数に応じて、集積部32に集積している硬貨をそれぞれ繰り出し、下側の出金搬送部22又は一時保留部23内へ落下させ、集積させる。出金搬送部22は、ベルトの上面を前方へ走行させることにより、集積されている硬貨を前方へ搬送し、一時保留部23内へ落下させて集積させる。
【0087】
その後、硬貨制御部12は、入金返却処理及び入金収納処理の場合と同様に、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識して受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0088】
また硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に該硬貨が出金可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定すると共に記憶する。すなわち硬貨制御部12は、該硬貨が出金可能であれば、入出金部13を搬送先とし、出金不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が出金可能であれば、出金案内部19を介して入出金部13へ搬送して収容トレイ13A内に収容させる。一方、ピンベルト搬送部18は、該硬貨が出金不可能であれば、後第1リジェクト分岐部まで搬送して分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。
【0089】
やがて硬貨制御部12は、出金額に応じた金種及び枚数の硬貨を入出金部13の収容トレイ13A内に収容させ終えると、主制御部9(
図1)と協働して入出金部13のシャッタ13B等を開放して使用者に該硬貨が取り出されるのを待ち受ける。その後、硬貨制御部12は、使用者により収容トレイ13A内の硬貨が取り出されたことを検知すると、再び主制御部9と協働してシャッタ13B等を閉塞し、出金処理を終了する。
【0090】
[1-4.硬貨の詰まりの発生及び解消]
ところで硬貨処理装置10では、上述した入金取引における入金返却処理や出金取引における出金処理において、比較的多い枚数の硬貨CNをピンベルト搬送部18により入出金部13へ搬送して収容させる場合がある。
【0091】
上述したように、入出金部13の収容トレイ13Aは、最大枚数(例えば100枚)までの硬貨CNを収容できる。すなわち入出金部13では、一回の取引において返却又は出金する全ての硬貨CNを収容トレイ13A内に十分に収容でき、使用者に受け取らせることができる。
【0092】
しかし入出金部13では、例えば
図8に示したように、収容トレイ13A内において、硬貨CNが放出口13Dの近傍などに偏って堆積し、当該硬貨CNが放出口13Dの一部又は全部を塞いでしまう恐れがある。このとき出金案内部19は、出金案内空間S19内に硬貨CNを滞留させた状態、すなわち詰まらせた状態となってしまう。
【0093】
この場合、出金案内部19は、ピンベルト搬送部18から受け取った硬貨CNを入出金部13の放出口13Dから収容トレイ13A内へ放出することや、該ピンベルト搬送部18から新たな硬貨CNを受け取ることができなくなる。すなわち硬貨処理装置10は、使用者に返却又は出金すべき全ての硬貨CNを入出金部13へ搬送することができず、これらの硬貨CNを受け取らせることができなくなる。このような場合、現金自動預払機1は、使用者との間で種々の取引を行うこと、すなわち運用することができなくなり、保守員等による保守作業が必要となってしまう。
【0094】
そこで硬貨処理装置10では、ピンベルト搬送部18による硬貨CNの搬送処理において、ピンベルト42の走行に関する制御を行い、当該硬貨CNの搬送速度を調整することにより、硬貨の詰まり又は硬貨が詰まる兆候の解消を図るようになっている。
【0095】
ここでは、出金処理を行う場合を例に、ピンベルト搬送部18における搬送速度を制御する処理について説明する。硬貨処理装置10は、出金取引が行われる場合、硬貨制御部12により出金額に応じた硬貨CNの金種及び枚数(以下これを出金枚数又は搬送予定数と呼ぶ)を決定した上で、ピンベルト搬送部18を制御する搬送制御処理手順RT1(
図9)を開始する。
【0096】
因みに硬貨処理装置10では、出金処理について上述したように、決定された金種及び枚数の硬貨CNをスタッカ部21から繰り出した後、これらの硬貨CNを出金搬送部22、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16により順次搬送し、受渡部17を介してピンベルト搬送部18に順次引き渡していく。
【0097】
硬貨制御部12は、最初のステップSP1において、搬送モータ46(
図3)の回転を開始させることにより、受渡部17から受け取った硬貨CNをピンベルト搬送部18によって入出金部13へ搬送する搬送動作を開始させ、次のステップSP2に移る。このとき硬貨制御部12は、搬送モータ46を所定の通常回転速度で回転させることにより、ピンベルト搬送部18のピンベルト42を所定の通常搬送速度で走行させ、硬貨CNを当該通常搬送速度で搬送する。
【0098】
ステップSP2において硬貨制御部12は、認識搬送部16において認識された硬貨CNの枚数を基に、入出金部13へ搬送した硬貨CNの枚数である搬送枚数を計数し、次のステップSP3に移る。
【0099】
ステップSP3において硬貨制御部12は、搬送枚数が所定の速度切替枚数であるか否かを判定する。ここで速度切替枚数は、予め設定された上で硬貨制御部12により記憶されている値であり、例えば60枚となっている。この60枚という値は、入出金部13の収容トレイ13Aに収容可能な硬貨CNの最大枚数である100枚よりも少なく、且つ半分よりもやや多い枚数となっている。以下では、速度切替枚数を切替条件とも呼び、搬送枚数が該速度切替枚数となったことを、該切替条件が満たされたものとする。
【0100】
ここで肯定結果が得られると、このことは搬送枚数が速度切替枚数となったため、入出金部13において、収容トレイ13Aに収容された硬貨CNが放出口13Dを塞ぐように、又は塞ぐ兆候があるように堆積している可能性があることを表している。このとき硬貨制御部12は、次のステップSP4に移る。
【0101】
ステップSP4において硬貨制御部12は、搬送モータ46の回転速度を、通常回転速度よりも低速な低回転速度に切り替えるよう制御し、次のステップSP5に移る。これにより搬送モータ46は、パルスモータの特性上、回転速度の低下と引き換えにトルクを高めることができる。これに伴いピンベルト搬送部18では、ピンベルト42が走行する速度が低い低搬送速度で硬貨CNを搬送することになるものの、搬送ピン44から当該硬貨CNに伝達する力を増加させることができる。
【0102】
一方、ステップSP3において否定結果が得られると、このことは、搬送枚数が未だに速度切替枚数未満であるか、或いは既に速度切替枚数を超えており低速に切替済であるため、現在の搬送速度をそのまま維持すべきであることを表している。このとき硬貨制御部12は、次のステップSP5に移る。
【0103】
ステップSP5において硬貨制御部12は、出金額に応じて設定された出金枚数の硬貨CNを入出金部13へ搬送し終えたか否かを判定する。具体的に硬貨制御部12は、例えば認識搬送部16から得られた硬貨CNの認識結果を基に、ピンベルト搬送部18により入出金部13へ搬送した硬貨CNの枚数を計数することにより、搬送済である硬貨CNの枚数を認識し、これを出金枚数と比較する。また硬貨制御部12は、認識搬送部16を通過した硬貨CNがピンベルト搬送部18により入出金部13へ搬送されるのに要する時間を考慮し、この時点から所定の搬送所要時間以上前に得られた認識結果を基に、搬送済である硬貨CNの枚数を集計する。
【0104】
ここで否定結果が得られると、このことは入出金部13に搬送された硬貨CNの枚数が出金枚数未満であるため、ピンベルト搬送部18による搬送処理を継続する必要があることを表している。このとき硬貨制御部12は、再びステップSP2に戻って一連の処理を繰り返すことにより、入出金部13への硬貨CNの搬送を継続する。
【0105】
一方、ステップSP5において肯定結果が得られると、このことは出金枚数の硬貨CNを入出金部13へ搬送し終えたため、硬貨CNの搬送処理を終了すると共に、使用者に該入出金部13から硬貨CNを受け取らせる必要があることを表している。このとき硬貨制御部12は、次のステップSP6に移る。
【0106】
ステップSP6において硬貨制御部12は、搬送モータ46の回転を停止させることにより、ピンベルト搬送部18におけるピンベルト42の走行を停止させて硬貨CNの搬送を終了し、次のステップSP7に移る。ステップSP7において硬貨制御部12は、入出金部13のシャッタ13Bを閉塞状態から開放状態に遷移させると、次のステップSP8に移って搬送制御処理手順RT1を終了する。これに応じて使用者は、入出金部13の収容トレイ13A内に収容されている硬貨CNを取り出し、受け取ることができる。
【0107】
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、使用者に受け取らせるべき硬貨CNを、ピンベルト搬送部18により出金案内部19を介して入出金部13へ搬送し、放出口13Dから放出して収容トレイ13A内に収容させる。
【0108】
このとき硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、入出金部13への硬貨CNの搬送枚数が所定の速度切替枚数(60枚)未満であれば、比較的高速な通常搬送速度で搬送する。一方、硬貨制御部12は、硬貨CNの搬送枚数が速度切替枚数となった場合、すなわち切替条件が満たされた場合、低速な低搬送速度に切り替えることにより、搬送モータ46のトルクを高め、搬送ピン44から硬貨CNに伝達される力を増加させる。
【0109】
このため硬貨処理装置10では、仮に出金案内部19の出金案内空間S19内に硬貨CNが詰まっていたとしても(
図8)、ピンベルト搬送部18のピンベルト42が低搬送速度に切り替わった段階で、搬送ピン44からこれらの硬貨CNに比較的大きい力を加えることができる。
【0110】
この結果、出金案内部19では、ピンベルト搬送部18側から比較的大きい力が硬貨CNに加えられるため、出金案内空間S19内に詰まっていた硬貨CNを入出金部13の放出口13D側へ押し出すことや、該放出口13Dの近傍に堆積していた硬貨CNを崩すこと、すなわち詰まりの解消を図ることができる。これにより硬貨処理装置10では、実行中の取引処理の停止や保守員による保守作業等を行うこと無く、使用者との間で各種取引を行い得る状態を維持すること、すなわち運用を継続することができる。
【0111】
また硬貨制御部12は、入出金部13への硬貨CNの搬送枚数が速度切替枚数未満である間は、ピンベルト搬送部18において比較的高速な通常搬送速度で硬貨CNを搬送させ、該搬送枚数が該速度切替枚数に達してから、低搬送速度に切り替えるようにした。このため硬貨処理装置10は、使用者が硬貨CNを受け取るまでの待ち時間をできるだけ短く抑えることと、入出金部13における詰まりの解消を図ることとを、バランス良く両立させることができる。
【0112】
他の観点から見ると、硬貨処理装置10では、仮にピンベルト搬送部18の搬送ガイド41上において硬貨CNの詰まりが発生した場合には、特許文献1にも記載されているように、例えばピンベルト42を一時的に逆走させる等の処理により、詰まりを解消し得る可能性がある。
【0113】
しかし硬貨処理装置10では、出金案内部19における出金案内空間S19内の大部分をピンベルト42が走行していないため、仮に出金案内部19において硬貨CNの詰まりが発生した場合、ピンベルト42を逆走させたとしても、該出金案内部19における硬貨CNの詰まりに対し有効な措置をとることが困難である。
【0114】
そこで硬貨処理装置10では、ピンベルト搬送部18におけるピンベルト42のトルクを高めることにより、出金案内部19に詰まっている硬貨CNに対して他の硬貨CNを介して比較的強い力を伝達でき、これらの硬貨CNによる詰まりの解消を図ることができる。
【0115】
また硬貨処理装置10では、事前の実験等を基に、出金案内部19において硬貨CNの詰まりが発生する可能性が高まる搬送枚数(例えば60枚)を、速度切替枚数として設定した。そのうえで硬貨処理装置10では、搬送枚数が速度切替枚数に達した段階で、出金案内部19において硬貨CNの詰まりが発生している可能性があると見なし、ピンベルト42を低搬送速度に切り替えるようにした(
図9)。
【0116】
これにより硬貨処理装置10では、出金案内部19に硬貨CNの詰まりを検知するためのセンサ等を設けることなく、実際に詰まりが発生していた場合にその解消を図ることができるため、装置構成の複雑化を招くことがない。
【0117】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、ピンベルト搬送部18により出金案内部19を介して入出金部13へ搬送した硬貨CNが速度切替枚数になると、搬送モータ46を通常回転速度から低回転速度に切り替えてトルクを高め、搬送ピン44から硬貨CNに伝達する力を増加させる。このため硬貨処理装置10では、出金案内部19に硬貨CNが詰まっていたとしても、搬送ピン44から当該硬貨CNに比較的大きい力を伝達でき、放出口13D側へ押し出して詰まりの解消を図ることができる。これにより硬貨処理装置10では、実行中の取引処理の停止や保守員による保守作業等を行うこと無く、運用を継続できる。
【0118】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機201(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置210(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、入出金部13に代わる入出金部213を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0119】
すなわち硬貨処理装置210は、第1の実施の形態と同様に、出金処理等においてピンベルト搬送部18による硬貨CNの搬送枚数が速度切替枚数になり、切替条件が満たされると、搬送モータ46を低速回転に切り替え、搬送ピン44から硬貨CNに伝達する力(トルク)を増加させるようになっている。
【0120】
入出金部213は、第1の実施の形態による入出金部13と比較して、収容トレイ13Aに代わる収容トレイ213Aを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。この収容トレイ213Aは、
図10に平面図を示すと共に、
図11にA1-A2断面図を示すように、底面が左右方向から見て円弧状に湾曲しており、且つ前後方向から見て左側に対し右側の方が低くなるように、すなわち放出口13Dから離れるに連れて低くなるように、傾斜している。
【0121】
このため入出金部213では、放出口13Dから放出された硬貨CNが、収容トレイ213A内において右側に偏るように、すなわち該放出口13Dから離れた箇所に積極的に堆積するようにして収容されていく。これにより入出金部213は、ピンベルト搬送部18により搬送されてきた硬貨CNが、収容トレイ213A内における放出口13Dの近傍に堆積して該放出口13Dを塞ぐ可能性や、出金案内部19に硬貨CNが詰まる可能性を、大幅に低減させることができる。
【0122】
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨処理装置210は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0123】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機301(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置310を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置310(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、硬貨制御部12及び入出金部13に代わる硬貨制御部312及び入出金部313を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0124】
硬貨制御部312は、第1の実施の形態による硬貨制御部12と同様、図示しないCPU等を有しており、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置310を統括制御する。入出金部313は、第1の実施の形態による入出金部13と比較して、振動部313E(
図2)を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。振動部313Eは、硬貨制御部312の制御に基づき、収容トレイ13Aを振動させるようになっている。
【0125】
硬貨制御部312は、ピンベルト搬送部18による硬貨CNの搬送処理をする際に、第1の実施の形態における搬送制御処理手順RT1(
図9)に代えて、
図12に示す搬送制御処理手順RT3を実行するようになっている。
【0126】
硬貨制御部312は、搬送制御処理手順RT3を開始すると、ステップSP31、SP32及びSP33において、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP1、SP2及びSP3とそれぞれ同様の処理を行う。このうちステップSP33において肯定結果が得られると、硬貨制御部312は次のステップSP34に移り、ステップSP4と同様に搬送速度を低速に切り替えた後、その次のステップSP35に移る。
【0127】
ステップSP35において硬貨制御部312は、入出金部313の振動部313Eを制御することにより、収容トレイ13Aの振動を開始させ、次のステップSP36に移る。これにより入出金部313では、収容トレイ13A内において硬貨CNが偏って堆積していたとしても、これを崩して平坦な状態に近づけることができ、放出口13Dの近傍に偏って堆積することを阻止できる。
【0128】
ステップSP36において硬貨制御部312は、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP5と同様の判断処理を行う。このステップSP36において肯定結果が得られると、硬貨制御部312は次のステップSP37に移り、入出金部313の振動部313Eを制御することにより収容トレイ13Aの振動を終了させ、その次のステップSP38に移る。
【0129】
その後、硬貨制御部312は、ステップSP38~SP40において搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP6~SP8とそれぞれ同様の処理を行うことにより、搬送制御処理手順RT3を終了する。
【0130】
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機301の硬貨処理装置310は、出金処理等においてピンベルト搬送部18により入出金部313への硬貨CNの搬送枚数が速度切替枚数を超え、切替条件が満たされると、第1の実施の形態と同様にピンベルト42の搬送速度を低速に切り替える。これにより硬貨処理装置310は、第1の実施の形態と同様に、仮に出金案内部19に硬貨CNが詰まっていたとしても(
図8)、ピンベルト42からこれらの硬貨CNに比較的大きい力を加えて、詰まりの解消を図ることができる。
【0131】
これに加えて硬貨処理装置310は、切替条件が満たされた場合、入出金部313の収容トレイ13Aの振動を開始する。このため硬貨処理装置310は、仮に収容トレイ13A内において硬貨CNが偏って堆積していたとしても、この振動により、堆積している硬貨CNを崩すことが期待でき、また新たに偏って堆積することも良好に抑止できる。
【0132】
その他の点においても、第3の実施の形態による硬貨処理装置310は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0133】
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による現金自動預払機401(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置410を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置410(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、硬貨制御部12及び出金案内部19に代わる硬貨制御部412及び出金案内部419を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0134】
硬貨制御部412は、第1の実施の形態による硬貨制御部12と同様、図示しないCPU等を有しており、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置410を統括制御する。出金案内部419は、第1の実施の形態による出金案内部19と比較して、センサ458(
図2)を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0135】
センサ458は、例えば所定の検知光を発光する発光素子や当該検知光を受光する受光素子等によって構成され、出金案内部419内を当該検知光が通過するように、各部が設置されている。このため検知光は、出金案内部419を硬貨CNが通過した場合や、該出金案内部419内に硬貨CNが詰まった場合等に、これらの硬貨CNにより遮られることになる。
【0136】
このセンサ458は、受光素子において受光した検知光の光強度に応じた受光信号を生成し、これを硬貨制御部412へ供給する。これに応じて硬貨制御部412は、この受光信号の信号レベルやその変化の様子を基に、出金案内部419を硬貨CNが通過したことや該出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生したことを検知できる。また硬貨制御部412は、出金案内部419を通過した硬貨CNの枚数を集計することにより、入出金部413へ搬送された硬貨CNの枚数を認識することもできる。このため以下では、硬貨制御部412及びセンサ458をまとめて検出部とも呼ぶ。
【0137】
硬貨制御部412は、ピンベルト搬送部18による硬貨CNの搬送処理をする際に、第1の実施の形態における搬送制御処理手順RT1(
図9)に代えて、
図13に示す搬送制御処理手順RT4を実行するようになっている。硬貨制御部412は、この搬送制御処理手順RT4を開始すると、ステップSP41において、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP1と同様に硬貨CNの搬送を開始し、次のステップSP42に移る。
【0138】
ステップSP42において硬貨制御部412は、出金案内部419のセンサ458から受光信号を取得し、次のステップSP43に移る。ステップSP43において硬貨制御部412は、取得した受光信号を基に、出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生しているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは出金案内部419において発生した硬貨CNの詰まりを解消する必要があることを表している。このとき硬貨制御部412は、次のステップSP44に移る。この第4の実施の形態では、出金案内部419における硬貨CNの詰まりの検知を切替条件としており、この硬貨CNの詰まりを検知した場合に該切替条件が満たされたものとする。
【0139】
ステップSP44において硬貨制御部412は、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP4と同様に、搬送モータ46の回転速度を、通常回転速度よりも低速な低回転速度に切り替えるよう制御し、搬送ピン44から硬貨CNに与える力を増加させ、次のステップSP45に移る。
【0140】
一方、ステップSP43において否定結果が得られると、このことは出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生していないため、硬貨CNの搬送速度を変更する必要が無いことを表している。このとき硬貨制御部412は、次のステップSP45に移る。
【0141】
その後、硬貨制御部412は、ステップSP45~SP48において、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP5~SP8とそれぞれ同様の処理を行い、搬送制御処理手順RT4を終了する。
【0142】
以上の構成において、第4の実施の形態による現金自動預払機401の硬貨処理装置410は、出金処理等において出金案内部419のセンサ458によって該出金案内部419における硬貨CNの詰まりを検知し、切替条件が満たされると、ピンベルト42の搬送速度を低速に切り替える。これにより硬貨処理装置410は、出金案内部419内に硬貨CNが詰まっていた場合に(
図8)、第1の実施の形態と同様に硬貨CNの搬送速度を低速に切り替えて当該硬貨CNに比較的大きい力を加えることができ、詰まりの解消を図ることができる。
【0143】
特に硬貨処理装置410は、第1の実施の形態等のように、入出金部13へ搬送した硬貨CNの枚数では無く、センサ458から得られる受光信号を基に出金案内部419内に硬貨CNの詰まりが発生したことを切替条件とした。このため硬貨処理装置410では、搬送枚数に関わらず、出金案内部419において実際に硬貨CNの詰まりが発生した場合にのみ、硬貨CNの搬送速度を低速に切り替えて詰まりの解消を図る。
【0144】
すなわち硬貨処理装置410では、搬送枚数が比較的少ない段階であっても、出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生した場合には、硬貨CNの搬送速度を低速に切り替えて詰まりの解消を図ることができる。その一方で硬貨処理装置410では、搬送枚数が多い段階であっても、出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生していなければ、通常の搬送速度を維持するため、入出金部13への硬貨CNの搬送を比較的短い時間で完了できる。
【0145】
その他の点においても、第4の実施の形態による硬貨処理装置410は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0146】
[5.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、搬送枚数が速度切替枚数であることを切替条件とし、第4の実施の形態においては、出金案内部419における硬貨CNの詰まりを検知することを切替条件とする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばピンベルト搬送部18においてピンベルト42が走行できず搬送モータ46が設定通りの回転速度で回転できないこと等、他の種々の事象を切替条件としても良い。すなわち本発明では、出金案内部419において硬貨CNの詰まりが発生したことや、詰まりが発生する可能性が高いこと等を直接又は間接的に表す種々の事象を利用した切替条件を設定することができる。
【0147】
また上述した第1の実施の形態においては、ピンベルト搬送部18により搬送される全ての硬貨CNを対象として搬送枚数を計数する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば金種に応じて硬貨CNの直径や厚さ、及び質量等が相違する場合に、比較的直径が大きい金種や比確定質量が大きい金種等、一部の金種のみを対象として搬送枚数を計数しても良い。この場合、ピンベルト搬送部18に引き渡される前に認識搬送部16において認識された金種を利用できる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0148】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ピンベルト搬送部18により搬送される硬貨CNの枚数を単純に計数して搬送枚数とする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨CNの量を表す値、すなわち当該硬貨CNの直径や厚さ、或いは体積や質量等、種々の物理量に応じた係数を当該硬貨CNの金種毎に設定しておき、当該係数を乗じた値を枚数として積算しても良い。具体的には、例えば日本国において使用される硬貨CNの場合、直径や厚さが比較的小さい1円硬貨については係数を「1」とし、直径や厚さがやや大きい10円硬貨については係数を「1.3」とし、直径や厚さがさらに大きい500円硬貨については係数を「1.7」とすること等が考えられる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0149】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送制御処理手順RT1(
図9)のステップSP2~SP4において、認識搬送部16において認識された硬貨CNの枚数を基に、入出金部13へ搬送した硬貨CNの枚数である搬送枚数を計数し、当該搬送枚数が速度切替枚数となった場合に、切替条件が満たされたとする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば認識搬送部16において認識された硬貨CNの枚数が速度切替枚数となった場合に、切替条件が満たされたものとし、搬送モータ46を低回転速度に切り替えさせても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0150】
さらに上述した第1の実施の形態においては、切替条件を1種類のみ設定し、硬貨CNの搬送速度を比較的高速な通常搬送速度又は比較的低速な低搬送速度の2段階に切り替える形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば切替条件を、第1速度切替枚数(例えば60枚)及び第2速度切替枚数(例えば80枚)のように複数個設定し、硬貨CNの搬送速度を通常搬送速度、やや低速な第1低搬送速度、さらに低速な第2低搬送速度といった3通りに切り替えるようにしても良い。すなわち本発明は、複数個の切替条件を設定すると共に複数個の搬送速度に切り替えるようにしても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0151】
さらに上述した第1の実施の形態においては、1回の出金処理において、切替条件を満たした場合、搬送速度を通常搬送速度から低搬送速度に切り替えた後、当該出金処理が完了するまで低搬送速度を維持する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば切替条件を満たし通常搬送速度から低搬送速度に切り替えた後、所定枚数の硬貨CNを搬送した段階や所定時間が経過した時点に、通常搬送速度に戻しても良い。これにより硬貨CNの搬送に要する時間の短縮化を図ることができる。第2~第4の実施の形態についても同様である。特に第4の実施の形態においては、硬貨CNの詰まりが発生した直後のみ低搬送速度に切り替え、これ以外は通常搬送速度を維持できるため、詰まりの解消と搬送に要する時間の短縮化とを、極めて高い次元で両立させることができる。
【0152】
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金処理の開始後、切替条件を満たすまでの間、硬貨CNの搬送速度を通常搬送速度とする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば出金処理の開始後から所定の初期枚数(例えば20枚)の硬貨CNについては、通常搬送速度よりも高速な高搬送速度により搬送しても良い。この場合、入出金部13において放出口13Dから放出される硬貨CNの速度を高めることにより、該放出口13Dから遠方に硬貨CNを到達させることができ、該放出口13Dの近傍に硬貨が偏って堆積する可能性を抑えることができる。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0153】
さらに上述した第1の実施の形態においては、切替条件としての速度切替枚数を60枚とする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば50枚や80毎等、種々の枚数としても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0154】
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金処理において、出金額を基に出金する硬貨CNの金種及び枚数が決定された後、搬送制御処理手順RT1(
図9)を必ず実行する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば出金する硬貨CNの金種及び枚数が決定された際に、当該枚数が速度切替枚数以上であった場合にのみ搬送制御処理手順RT1を実行するようにしても良い。この場合、出金する硬貨CNの枚数が速度切替枚数未満であれば、全ての硬貨CNを通常搬送速度で搬送させれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0155】
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金処理において搬送制御処理手順RT1(
図9)を実行する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば入金取引において使用者が硬貨CNを投入した後に当該入金取引の中止が指示され、入金額に相当する硬貨CNを返却する入金返却処理を行う場合等、他の種々の処理を行う際に搬送制御処理手順RT1を実行しても良い。すなわち本発明は、ピンベルト搬送部18により入出金部13へ多数の硬貨CNを搬送する場合に適用できる。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0156】
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金案内部19においてレバーシャフト55を中心として規制レバー56を回動させることにより、硬貨CNを前方向へ進行させる一方、後方向への進行を阻止する形態について述べた(
図6及び
図7)。しかし本発明はこれに限らず、例えば周知の種々の構成でなる逆走防止機構を設けても良い。要は、硬貨CNの後方向への逆走を防止できれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0157】
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金案内部19に規制レバー56等を設けることにより、出金案内空間S19内において硬貨CNが後方向へ逆走することを防止する形態について述べた(
図4~
図7)。しかし本発明はこれに限らず、例えば出金案内部19から規制レバー56等を省略しても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0158】
さらに上述した第4の実施の形態においては、出金案内部419を検知光が通過するようにセンサ458を設ける形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば収容トレイ13A内における放出口13Dの近傍等、入出金部13における種々の箇所を検知光が通過するようにセンサ458を設けても良い。要は、入出金部413においてピンベルト搬送部18から新たな硬貨CNを受け取り得ない状態であることや、新たな硬貨CNを受け取り得なくなる可能性が高いことを検知できれば良い。
【0159】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送モータ46をパルスモータとする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、搬送モータ46を例えばDC(Direct Current、直流)モータ等、他の種々のモータとして良い。要は、ピンベルト42に供給する駆動力のトルクを調整できるモータであれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0160】
さらに上述した第1の実施の形態においては、切替条件が満たされた場合、硬貨制御部12により搬送モータ46の回転数を切り替えるよう制御する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば搬送モータ46に対しトルクの増減を直接的に制御し得る場合に、当該トルクを増加させるよう制御しても良い。要は、ピンベルト42から搬送中の硬貨CNに加えられるトルクを増加させるよう搬送モータ46を制御できれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0161】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ピンベルト42を有するピンベルト搬送部18により硬貨CNを入出金部13へ搬送する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば互いに対向する一対のベルトの間に硬貨CNを挟んで搬送する構成や、ベルトに段差が形成され、当該段差に硬貨CNの末尾部分を当接させて搬送する構成等、種々の構成でなる搬送部により硬貨CNを搬送しても良い。要は、搬送モータ46の回転速度を制御することにより硬貨CNに伝達されるトルクを調整できれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0162】
さらに上述した第1の実施の形態においては、入出金部13における収容トレイ13Aの底部を、左右方向から見て半円状に湾曲させる形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば収容トレイ13Aの底部を平坦とする等、他の種々の形状としても良い。また、例えば収容トレイ13Aの底部に複数の溝を形成することにより、使用者が硬貨CNを容易に取り出し得るようにしても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0163】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨処理装置10の硬貨処理装置筐体11内において、ピンベルト搬送部18により搬送し出金案内部19により案内された硬貨を入出金部13に収納させる形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置筐体11の外側に着脱可能な硬貨収納袋(図示せず)を装着した状態とし、ピンベルト搬送部18により搬送し出金案内部19により案内された硬貨を当該硬貨収納袋へ収納させる形態としても良い。或いは、例えばピンベルト搬送部18により搬送された硬貨を出金案内部19により硬貨処理装置筐体11の外側へ案内するようにし、該出金案内部19の近傍や下側に硬貨を収納可能な硬貨収納箱(図示せず)を設置した状態とし、出金案内部19により案内された硬貨を当該硬貨収納箱に落下させて収納させる形態としても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0164】
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば自動券売機等のように使用者との間で硬貨CNに関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置等に本発明を適用しても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0165】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨CNを取り扱う硬貨処理装置10に本発明を適用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば遊技場等において使用されるメダルや玉など、種々の施設において使用される種々の媒体を取り扱う装置に適用しても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0166】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0167】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送部としてのピンベルト搬送部18と、収容部としての入出金部13と、制御部としての硬貨制御部12とによって媒体処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送部と、収容部と、制御部とによって媒体処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、例えば使用者との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0169】
1、201、301、401……現金自動預払機、6……操作表示部、9……主制御部、10、210、310、410……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12、312、412……硬貨制御部、13、213、313、413……入出金部、13A、213A……収容トレイ、13B……シャッタ、13D……放出口、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19、419……出金案内部、41……搬送ガイド、42……ピンベルト、43……搬送ベルト、44……搬送ピン、45……プーリ、46……搬送モータ、56……規制レバー、64、65……規制シャフト、313E……振動部、458……センサ、CN……硬貨、W……搬送経路。