(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070476
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】圧縮機および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20240516BHJP
F04B 39/16 20060101ALI20240516BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F04C29/02 341A
F04B39/16 C
F04C29/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180997
(22)【出願日】2022-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】関根 和也
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003BG01
3H129AA04
3H129AA09
3H129AA13
3H129AA21
3H129AB03
3H129BB36
3H129CC02
3H129CC07
3H129CC09
3H129CC16
3H129CC17
3H129CC22
(57)【要約】
【課題】 異物が圧縮機内を循環するのを防ぎ、圧縮機の信頼性を向上させることができる圧縮機および空気調和装置を提供すること。
【解決手段】 圧縮機は、磁石52を内蔵するロータ51を備えた電動機と、ロータ51により回転する回転軸42と、回転軸42の回転により吸い込んだ流体を圧縮する圧縮機構とを含む。回転軸42は、該回転軸42の軸方向に貫通する貫通穴60を有する。ロータ51は、貫通穴60に連続し、回転軸42を中心として径方向に延びる連通路54と、連通路54の外周部に設けられ、磁石により少なくとも1つの面が磁化された捕集空間55とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を内蔵する回転子を備えた電動機と、
前記回転子により回転する回転軸と、
前記回転軸の回転により吸い込んだ流体を圧縮する圧縮機構と
を含み、
前記回転軸が、該回転軸の軸方向に貫通する貫通穴を有し、
前記回転子が、前記貫通穴に連続し、前記回転軸を中心として径方向に延びる連通路と、前記連通路の外周部に設けられ、前記磁石により少なくとも1つの面が磁化された捕集空間とを有する、圧縮機。
【請求項2】
前記回転子は、前記回転軸の軸方向を鉛直方向に向けて設置した場合の前記回転軸、前記連通路および前記捕集空間の上部を覆う上端板を含み、
前記回転軸の上端、前記連通路の連通路面および前記捕集空間の底面のうち、前記連通路の連通路面から前記上端板までの流路高さが最小である、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記上端板は、少なくとも1つの吐出穴を有する、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記上端板に設けられる吐出穴の径は、前記貫通穴の径より小さい、請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記吐出穴は、前記径方向の前記貫通穴と前記捕集空間との間の前記連通路上に設けられる、請求項3に記載の圧縮機。
【請求項6】
磁石を内蔵する回転子を備えた電動機と、
前記回転子により回転する回転軸と、
前記回転軸の回転により吸い込んだ流体を圧縮する圧縮機構と、
前記回転軸の軸方向を鉛直方向に向けて設置した場合の前記回転子上に取り付けられる捕集部品と
を含み、
前記回転軸が、該回転軸の軸方向に貫通する貫通穴を有し、
前記捕集部品が、前記貫通穴に連続し、前記回転軸を中心として径方向かつ前記回転子上に向けて延びる連通部と、前記連通部の外周側に設けられ、前記磁石により少なくとも1つの面が磁化された捕集空間とを有する、圧縮機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧縮機を含み、前記圧縮機により循環する流体と空間内の空気との間で熱交換を行うことにより空気調和を行う、空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機および該圧縮機を備える空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機には、回転軸を備え、各摺動部へ潤滑油を供給し、圧縮機下部で発生した泡状のガスを圧縮機上部へ逃がすために、回転軸に貫通穴を有するものがある。回転軸に貫通穴を有する圧縮機は、泡状のガスが圧縮機上部へ運ばれるため、各摺動部の油面切れを抑制することができるが、ガスが抜けやすくなったことから、ガスとともに異物も圧縮機上部へ運ばれやすくなっている。
【0003】
異物には、埃、摩耗粉、溶接玉(スパッタ)等がある。これら異物の中でも、特に摩耗粉や溶接玉は、硬度が高く、磁性体であるため、摺動部の異物噛み込みによるアブレシブ摩耗(引っ掻き摩耗)やモータコイルのショートの懸念がある。このことから、摩耗粉や溶接玉等の高硬度で、磁性体である鉄系異物の捕集が重要となっている。
【0004】
従来において、内部が軸内通路と繋がるように駆動軸の端部に筒状部を設け、遠心力の作用により冷媒ガスに含まれる異物を分離し、筒状部に設けられた異物捕捉部材により分離された異物を捕捉する圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の上記圧縮機は、遠心力の作用により異物を分離するため、圧縮機の停止時や運転開始時等の遠心力が強く働かない場合に、捕捉した異物がオイル中に戻り、再度オイルとともに圧縮機内部を循環する懸念があり、圧縮機の信頼性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、磁石を内蔵する回転子を備えた電動機と、
回転子により回転する回転軸と、
回転軸の回転により吸い込んだ流体を圧縮する圧縮機構と
を含み、
回転軸が、該回転軸の軸方向に貫通する貫通穴を有し、
回転子が、貫通穴に連続し、回転軸を中心として径方向に延びる連通路と、連通路の外周部に設けられ、磁石により少なくとも1つの面が磁化された捕集空間とを有する、圧縮機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異物が圧縮機内を循環するのを防ぎ、圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】空気調和装置の冷媒回路について説明する図。
【
図4】回転軸に固定された回転子の第1の構成例を示した断面図。
【
図5】回転子に内蔵された磁石の配置について説明する図。
【
図7】回転軸に固定された回転子の第2の構成例を示した断面図。
【
図8】回転軸に固定された回転子の第3の構成例を示した断面図。
【
図9】回転軸に固定された回転子の第4の構成例を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、空気調和装置の構成例を示した図である。空気調和装置10は、空気調和を行う空間内(室内)に設置される少なくとも1台の室内機11と、室外に設置される少なくとも1台の室外機12とを含む。空気調和装置10は、室内機11と室外機12との間で冷媒を循環させ、室内の空気と冷媒との間で熱交換させることにより空気調和を行う。このため、室内機11と室外機12とは、冷媒を循環させるための冷媒配管13、14により接続される。
【0011】
冷媒は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等を使用することができる。HFCの種類としては、R-410A、R-32、R-134a等を挙げることができ、HFOの種類としては、R-1234yf等を挙げることができる。これらの冷媒は、塩素原子を有しないため、オゾン層破壊について一定の抑止効果を有している。
【0012】
室内機11は、室内に配置されるリモートコントローラ15からの運転指令、設定温度の変更、運転停止指令等を、赤外線等を使用した無線通信により受け付ける。室内機11は、リモートコントローラ15からの運転指令を受信して起動し、室外機12に対して起動を指示する。室外機12は、起動後、室内温度が設定温度になるように、室外機12が備える圧縮機や膨張弁等を制御し、冷媒の循環量等を調整する。
【0013】
室内機11は、設定温度の変更、運転停止指令を受け付けた場合、室外機12に対して設定温度の変更、運転停止を指示する。室内機11は、室外機12に対して運転停止を指示した後、自身の運転を停止する。室外機12は、設定温度の変更の指示を受けた場合、設定温度を変更し、変更した設定温度になるように、圧縮機や膨張弁等を制御する。室外機12は、運転停止の指示を受けた場合、圧縮機を停止し、自身の運転を停止する。
【0014】
図2は、空気調和装置10を構成する室内機11および室外機12の構成と冷媒回路について説明する図である。空気調和装置10は、冷房モードや暖房モード等の複数の運転モードを備える。
図2に示す矢印は、冷房モードにおける冷媒が流れる方向を示しており、ここでは、冷房モードにおける冷房運転を中心に説明する。なお、暖房モードでは、矢印が逆向きになる。
【0015】
室内機11は、室内熱交換器20と、室内ファン21とを備える。室内ファン21は、室内ファン用駆動モータにより駆動し、室内の空気を取り込み、室内熱交換器20へ送り込む。室内熱交換器20は、内部に冷媒が流れる複数の伝熱管を有し、室内ファン21により送り込まれた空気が複数の伝熱管の外表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室内熱交換器20により熱交換された空気は、室内へ排出される。
【0016】
室内機11は、そのほか、室内温度や室内の湿度等を計測するための各種センサや、室内機11へ供給する冷媒の量を調整するための室内膨張弁等を備えることができる。
【0017】
室外機12は、圧縮機30と、四方弁31と、室外膨張弁32と、室外熱交換器33と、室外ファン34とを備える。圧縮機30は、圧縮機用駆動モータにより駆動し、低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する。圧縮機30は、圧縮機構へ供給する冷媒を貯留するアキュームレータ35が接続される。アキュームレータ35は、圧縮機構への液戻りを防止し、冷媒を適度な乾き度に調整する機能も有する。なお、乾き度は、蒸気と微小液滴との混合状態を示す湿り蒸気中における蒸気の占める割合である。
【0018】
四方弁31は、空気調和装置10の運転モードに応じて、冷媒が流れる方向を切り替える弁である。室外膨張弁32は、高圧の冷媒を減圧し、膨張させるとともに、冷媒の流量を制御する弁である。室外ファン34は、室外ファン用駆動モータにより駆動し、室外の空気を取り込み、室外熱交換器33へ送り込む。室外熱交換器33は、室内熱交換器20と同様、内部に冷媒が流れる複数の伝熱管を有し、室外ファン34により取り込まれた空気が複数の伝熱管の外表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室外熱交換器33により熱交換された空気は、室外へ排出される。
【0019】
室外機12は、制御装置36を備えている。制御装置36は、圧縮機30、四方弁31、室外膨張弁32、室外ファン34、室内ファン21の制御を行う。具体的には、制御装置36は、圧縮機30、室外ファン34、室内ファン21を駆動する各モータの回転数、室外膨張弁32の開度、四方弁31の切り替え等の制御を行う。室外機12は、圧縮機30等の制御を行うために、吐出温度等を検出する温度センサ等の各種センサを備えることができる。制御装置36は、室内機11および室外機12が備える各種センサにより検出された情報に基づき、上記の各制御を行う。
【0020】
冷房モードで冷房運転を行う場合、室内熱交換器20は、蒸発器として機能し、室外熱交換器33は、凝縮器として機能する。このため、制御装置36は、矢印に示すように、圧縮機30、室外熱交換器33、室外膨張弁32、室内熱交換器20、四方弁31、アキュームレータ35、圧縮機30の順で系内に封入された冷媒を循環させる。
【0021】
圧縮機30は、低温低圧のガス状態の冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒ガスとして吐出する。室外熱交換器33は、圧縮機30から吐出された冷媒ガスを室外の空気と熱交換し、冷媒ガスを冷却して凝縮させる。室外膨張弁32は、凝縮した冷媒を減圧して一部を気化させる。このため、冷媒は、気液が混合した状態で室内機11へ供給される。室外膨張弁32は、適度な液体量となるように制御装置36により開度が調整される。
【0022】
室内熱交換器20は、室内機11へ供給された冷媒を室内の空気と熱交換し、冷媒を全て気化する。室内熱交換器20を出た冷媒は、低温低圧のガス状態の冷媒であり、四方弁31を介してアキュームレータ35へ送られ、圧縮機30へ戻される。
【0023】
制御装置36は、室外機12に実装されることに限定されない。したがって、制御装置36は、室内機11に実装されていてもよいし、その他の中央制御盤等に実装されていてもよい。また、制御装置36は、2つの装置に分け、室内機11と室外機12のそれぞれに実装されてもよい。
【0024】
図3は、圧縮機30の構成例を示した図である。圧縮機30は、ロータリ圧縮機であり、電動機40と、圧縮機構41と、電動機40と圧縮機構41とを繋ぐ回転軸42と、電動機40、圧縮機構41および回転軸42を収納する密閉容器43とを含む。
図3に示すように、密閉容器43の長手方向を鉛直方向に向けて設置した縦置きの場合、電動機40が上側に、圧縮機構41が下側に配置される。
【0025】
電動機40は、固定子(ステータ)50と、回転子(ロータ)51とを含む。ステータ50は、ロータ51の周囲を取り囲み、密閉容器43の内面に固定される。ステータ50は、コイルを有し、コイルには電流を供給するためのコードが接続されている。ロータ51は、永久磁石等の磁石を内蔵し、ステータ50のコイルに電流が流れることにより発生する磁界により一定方向に回転する。
【0026】
ロータ51は、中央に所定の径の穴が形成され、回転軸42を挿入して取り付けることができるようになっている。したがって、ロータ51は、回転軸42の上端側の周囲を取り囲むようにして固定される。回転軸42は、回転軸42の長手方向である軸方向の所定位置の外周部に、円筒状の回転体であるローラを偏心して回転させるための偏心部を備えている。また、回転軸42は、軸方向の一端である上端から他端である下端まで内部を貫通するように貫通穴60が設けられている。
【0027】
回転軸42は、下端側の貫通穴60内に、密閉容器43内の底部であって、圧縮機構41の下方に貯留される潤滑油(オイル)をくみ上げ、シリンダとローラの間等の各摺動部にオイルを供給するためのパドル61と給油ピース62とを備えている。オイルは、高い潤滑性を有し、各摺動部の摩耗を低減し、圧縮機構41内で圧縮する流体である冷媒が隙間から漏れ出ないようにシールするために供給される。
【0028】
オイルは、圧縮機構41から冷媒とともに吐出されるため、貯留される密閉容器43の底部へ戻す必要があり、ある程度冷媒に溶け合う性質(冷媒相溶性)を有している。なお、オイルは、電動機40の下側であって、圧縮機構41上の空間に冷媒とともに吐出されるが、ミスト状であるため、圧縮機構41上に落下し、圧縮機構41の傾斜した上面を下方へ流れ、圧縮機構41の縁部に設けられた排出孔を通り、密閉容器43の底部へ戻される。
【0029】
図3に示す例では、圧縮機構41は、2段に設けられ、2つのシリンダ70、71と、2つのシリンダ70、71を仕切る仕切板72と、主軸受73と、副軸受74とを含む。2段のうちの上側の上段は、シリンダ70と主軸受73と仕切板72とにより1つの圧縮室を構成し、下側の下段は、シリンダ71と副軸受74と仕切板72とにより1つの圧縮室を構成する。主軸受73は、密閉容器43の内面に固定され、回転軸42を回転可能に支持する。各シリンダ70、71内には、回転軸42に設けられる2つの偏心部のそれぞれが挿入されるローラを有し、ローラに当接し、圧縮室を2つの空間に分離するベーンを有する。ベーンには、スプリングが設けられ、ローラへの当接を維持できるように構成されている。
【0030】
シリンダ70、71は、ベーンを挟んだ両側に冷媒の吸込口と吐出口とを有する。吸込口から吸い込まれた冷媒は、シリンダ70、71の内面に接しながらシリンダ70、71内を回転するローラにより圧縮され、吐出口から吐出される。
【0031】
オイルが供給される摺動部は、シリンダ70、71とローラとの間、シリンダ70、71とベーンとの間、回転軸42と主軸受73との間、回転軸42と副軸受74との間等である。このため、これらの摺動部に供給されたオイルは、圧縮室内の冷媒と混ざり合い、冷媒とともに吐出されることになる。
【0032】
密閉容器43の底部に戻されるオイルには、冷媒が含まれる。圧縮機30が停止し、オイルの温度が低下すると、オイル中の冷媒が凝縮する。圧縮機30が再度起動し、オイルの温度が上昇すると、オイル中の冷媒が気化し、泡状のガスを発生する。泡状のガスが発生すると、各摺動部へ供給するオイル中に泡状のガスが含まれることになり、各摺動部の油面切れが発生する。
【0033】
しかしながら、回転軸42には、貫通穴60が設けられているため、発生した泡状のガスは、貫通穴60を通して排出することができる。このため、各摺動部の油面切れを抑制することができる。なお、オイル中には、各摺動部における金属部品同士の摺動により発生する摩耗粉や溶接時に発生する溶接玉が含まれる。これらは、硬度が高く、磁性体であるため、各摺動部の異物噛み込みによるアブレシブ摩耗や電動機のコイル(モータコイル)のショートの懸念がある。
【0034】
摩耗粉や溶接玉等の異物は、オイルや泡状のガスとともに貫通穴60を通して圧縮機上部へ運ばれる。すなわち、異物は、電動機40の上部へ運ばれる。せっかく電動機40の上部へ運んだ異物がオイル中に戻り、再度オイルとともに圧縮機内部を循環してしまっては、上記のアブレシブ摩耗やモータコイルのショートの懸念が解消されない。
【0035】
そこで、電動機40の上部へ運ばれた異物、特に高硬度、磁性体である鉄系異物を捕集する機構を設け、再びオイル中に戻らないようにすることができる。具体的な構成の一例を、
図4に示す。
図4は、
図3中、矩形Aで示される、回転軸42に固定されたロータ51の第1の構成例を示した断面図である。
【0036】
ロータ51は、中央に回転軸42が挿入可能な穴を有し、回転軸42の上端が挿入され、回転軸42に固定される。回転軸42に固定されたロータ51を軸方向に切断した断面は、回転軸42を中心として両側にロータ51が配置される形となる。ロータ51は、軸方向に延びるように永久磁石等の磁石52を内蔵する。
【0037】
図5は、ロータ51内の磁石52の配置例を示した図である。磁石52は、矩形の断面を有し、軸方向に長く延びた板状とされ、中央の穴に挿入される回転軸42の周囲を取り囲むように、略90°ずつ方向を変えて4つ配置される。ここでは、回転軸42の周囲を取り囲むように、磁石52を4つ配置しているが、これに限られるものではなく、3つ配置してもよいし、5つ以上配置してもよい。
【0038】
再び
図4を参照して、回転軸42の上端は、ロータ51の中央の穴53の上端を超えない位置まで挿入される。
図4に示す例では、回転軸42の上端が、ロータの中央の穴53の上端より低い位置まで挿入されている。ロータ51の上面は、中央の穴53に挿入された回転軸42の貫通穴60に連続し、回転軸42を中心として径方向に四方八方に拡がるように延びる連通路54と、連通路54の外周部に捕集溝として設けられる捕集空間55とを備える。
【0039】
捕集空間55のさらに外周部には、外周壁56が設けられている。外周壁56の上面は、連通路54より高い位置にある。外周壁56の上面には、ロータ51の上面を覆うように円形の上端板57が設けられる。上端板57を設けることで、異物の吹き上げを抑制することができる。上端板57の中央には、吐出穴58が設けられている。
【0040】
貫通穴60を通して運ばれた泡状のガス中のガス成分(主に冷媒)は、上端板57に設けられた吐出穴58を通して圧縮機上部へ送られ、密閉容器43の上部に設けられた吐出口から吐出される。貫通穴60を出た泡状のガスに含まれる異物は、貫通穴60を通して運ばれたオイルとともに、回転するロータ51の遠心力により径方向へ連通路54を通して捕集空間55へ送られる。
【0041】
捕集空間55は、連通路54を通して送られてきた異物を捕集する。異物は、遠心力が作用している間、捕集空間55内に留まる。
【0042】
しかしながら、圧縮機30の停止時や運転開始時等の遠心力が強く働かない場合は、一度捕集した異物がオイル中に戻り、再度オイルとともに圧縮機内部を循環する懸念が生じる。
【0043】
そこで、捕集空間55の少なくとも1つの面を、ロータ51に内蔵された磁石52により磁化する。異物は、磁性体である鉄系異物であり、捕集空間55の少なくとも1つの面を磁化することにより、磁化した少なくとも1つの面に吸着し続ける。このため、圧縮機30の停止時や運転開始時等の遠心力が強く働かない場合でも、捕集した異物がオイル中に戻ることがなくなる。
【0044】
図6は、
図4に示すロータ51の斜視図である。捕集空間55は、ロータ51に内蔵された磁石52に所定の距離だけ離間し、捕集空間55の底面と、磁石52の上面とが対向する位置に設けられる。これにより、捕集空間55の底面を磁化することができる。
【0045】
捕集空間55は、その捕集空間のどの面を磁化してもよく、その面の磁化のために、ロータ51に内蔵されている磁石52を使用することができる。このため、別途磁石を設けて捕集空間の少なくとも1つの面を磁化する必要がなくなる。
【0046】
捕集空間55に捕集された異物は、捕集空間55の磁化された面に吸着して捕集され、圧縮機30の停止時においても、異物を捕集空間55に保持し続ける仕組みとなっている。
【0047】
ロータ51は、
図4および
図6に示すように、連通路54が貫通穴60を中心として径方向Bに四方八方に拡がるように形成されており、連通路54の連通路面から上部を覆う上端板57までの高さとされ、捕集空間55の底部から上部を覆う上端板57までの高さより小さいので、捕集空間55に捕集した異物が放出されにくくなる。
【0048】
図7は、回転軸42に固定されたロータ51の第2の構成例を示した断面図である。
図7に示す例では、上端板57に設ける吐出穴58の径D1が、回転軸42に設けられる貫通穴60の径D2より小さくなっている。これにより、貫通穴60を通して運ばれてきた異物が、直接的にロータ51の上部に抜け出ることを抑制し、遠心力による異物の捕集効果を向上させることができる。
【0049】
図8は、回転軸42に固定されたロータ51の第3の構成例を示した断面図である。
図4および
図7に示した例では、上端板57に設ける吐出穴58は、1つであり、回転軸42に設けられた貫通穴60と同一線上に設けていたが、
図8に示す例では、上端板57に設ける吐出穴58が、連通路54上となっている。すなわち、吐出穴58が、貫通穴60と捕集空間55との間の位置に設けられている。
【0050】
このように、上端板57に設ける吐出穴58を、貫通穴60と捕集空間55との間の位置に設けることで、回転軸42の貫通穴60から直接上に抜ける分が無くなるので、流れの勢いによる異物の吹き上げを防止することができる。
【0051】
図9は、回転軸42に固定されたロータ51の第4の構成例を示した断面図である。ロータ51の上面に着脱可能な異物捕集用の捕集部品80を取り付ける。捕集部品80は、貫通穴60に連続する連通部81と、連通部81の外周側であって、ロータ51に内蔵される磁石52の上部に配置される捕集空間82とを含む。
図9に示す例では、連通部81が、ロータ51の中央の穴内であって、下方の回転軸42の上端に向けて拡径しており、捕集空間82が、ロータ51の上端上に設置される袋状のものとされている。捕集空間82が接するロータ51の上端は、磁石52により磁化され、鉄系異物を吸着させることができるようになっている。
【0052】
ロータ51の上端に捕集空間が作れない場合においても、
図9に示すような捕集部品80を取り付けることで、異物の捕集を行うことができる。
【0053】
これまで本発明の圧縮機および空気調和装置について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
10…空気調和装置
11…室内機
12…室外機
13、14…冷媒配管
15…リモートコントローラ
20…室内熱交換器
21…室内ファン
30…圧縮機
31…四方弁
32…室外膨張弁
33…室外熱交換器
34…室外ファン
35…圧縮機本体
36…アキュームレータ
37…制御装置
40…電動機
41…圧縮機構
42…回転軸
43…密閉容器
50…ステータ
51…ロータ
52…磁石
53…穴
54…連通路
55…捕集空間
56…外周壁
57…上端板
58…吐出穴
60…貫通穴
61…パドル
62…給油ピース
70、71…シリンダ
72…仕切板
73…主軸受
74…副軸受
80…捕集部品
81…連通部
82…捕集空間