(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070478
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240516BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240516BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/56
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180999
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】市川 英李
(72)【発明者】
【氏名】吉本 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】武邑 哲彦
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC02
4B027FK02
4B027FK09
4B027FP85
4B117LC03
4B117LG17
4B117LK06
(57)【要約】
【課題】後味のよさ、飲みやすさ、飲みごたえ、およびおいしさを維持しつつ、苦渋みを抑えた飲料を提供すること。
【解決手段】本発明の飲料は、カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料であって、ジヒドロジャスモン酸メチルを0.05~100ppbの割合で含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料であって、
ジヒドロジャスモン酸メチルを0.05~100ppbの割合で含有する、
飲料。
【請求項2】
前記ジヒドロジャスモン酸メチルを0.1~50ppbの割合で含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記カテキン類の含有量(A)(単位:ppm)と前記ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量(B)(単位:ppb)との〔(B)/((A)×1000)〕で表される質量比は2.91×10-8以上である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料は茶抽出物を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
前記茶抽出物は緑茶抽出物を含む、請求項4に記載の飲料。
【請求項6】
カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料に、ジヒドロジャスモン酸メチルの割合が0.05~100ppbとなるように添加する、飲料の風味改善方法。
【請求項7】
前記飲料の苦渋みを改善するための、請求項6に記載の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
茶に含まれるカテキン類は、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール調節作用、血糖値調節作用、抗酸化作用などを有することが知られている。そのため、近年では、健康志向の観点から、カテキン類を含む飲料に注目が集まっている。しかしながら、カテキン類を含む茶飲料は特有の苦渋味を有するため、苦みを好まない若年層の嗜好には合いにくいものとなっている。そのため、苦渋味を軽減するために、カテキン類(茶抽出成分)の含有量を減らす検討の結果、カテキン類の含有量を減らすと茶飲料の「苦渋み」を抑えるだけでなく、「飲みごたえ」や「おいしさ」等の低減にもつながってしまうことが確認されている。そこで、カテキン類(茶抽出成分)の含有量を変更せずに、茶飲料の風味を改善するための検討がなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、カテキン類の苦味の軽減に有効な成分を添加することにより、カテキン類由来の刺激的な苦味を軽減した飲料が開示されている。
【0004】
特許文献1によると、特定の割合で苦味の軽減に有効な成分(フェネチルアルコール)を添加することにより、紅茶抽出物由来のカテキンについての苦みを軽減できるとされている。
【0005】
しかしながら、カテキン類が含まれる飲料において、「飲みごたえ」や「おいしさ」を維持しつつ、そのカテキン類に由来する苦渋みを軽減する技術については検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、後味のよさ、飲みやすさ、飲みごたえ、およびおいしさを維持しつつ、苦渋みを抑えた飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カテキン類を含む飲料に、特定の割合のジヒドロジャスモン酸メチルを添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下の(1)~(7)のように構成される。
【0009】
カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料であって、
ジヒドロジャスモン酸メチルを0.05~100ppbの割合で含有する、
飲料。
(2)前記ジヒドロジャスモン酸メチルを0.1~50ppbの割合で含有する、(1)に記載の飲料。
(3)前記カテキン類の含有量(A)(単位:ppm)と前記ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量(B)(単位:ppb)との〔(B)/((A)×1000)〕で表される質量比は2.91×10-8以上である、(1)または(2)に記載の飲料。
(4)前記飲料は茶抽出物を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の飲料。
(5)前記茶抽出物は緑茶抽出物を含む、(4)に記載の飲料。
(6)カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料に、ジヒドロジャスモン酸メチルの割合が0.05~100ppbとなるように添加する、飲料の風味改善方法。
(7)前記飲料の苦渋みを改善するための、(6)に記載の風味改善方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後味のよさ、飲みやすさ、飲みごたえ、およびおいしさを維持しつつ、苦渋みを抑えた飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。
【0012】
1.飲料
本発明の飲料は、カテキン類を含む飲料であって、ジヒドロジャスモン酸メチル(methyl dihydrojasmonate)を含むことを特徴とする。以下に上記成分について説明する。
【0013】
[カテキン類]
本発明の飲料は、カテキン類を含有する。カテキン類とは、重合していない単量体のカテキン類のことをいう。例えば、カテキン類として、(+)-カテキン、(-)-エピカテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-カテキンガレート、(-)-エピカテキンガレート、(-)-ガロカテキンガレート、および(-)-エピガロカテキンガレートが挙げられる。本発明の飲料においては、これらのカテキン類を1種以上含んでいればよい。
【0014】
また、カテキン類は、紅茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などの茶葉から得られる茶抽出物であることが好ましく、緑茶から得られる緑茶抽出物であることがより好ましい。このような茶抽出物を含んで飲料とすることで、茶飲料を構成することができる。
【0015】
カテキン類の含有量は、108~1720ppmであり、215~860ppmであることが好ましく、215~500ppmであることがより好ましい。なお、本発明において、「カテキン類の含有量」とは、飲料中に含まれる上述のカテキン類の合計量のことを意味する。
【0016】
(カテキン類の含有量の測定)
本発明における飲料中のカテキン類の含有量は、例えば、Waters社製の超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)を用いて測定することができる。具体的には、分析対象の飲料を精製水で2倍に希釈し、これを0.45μmのシリンジフィルターでろ過したものを測定用のサンプルとして、上記装置で測定することができる。
【0017】
[ジヒドロジャスモン酸メチル]
本発明の飲料は、ジヒドロジャスモン酸メチル(methyl dihydrojasmonate)を特定の割合で含有する。ジヒドロジャスモン酸メチルは、天然には、ジャスミン属の植物をはじめ、紅茶などに存在し、持続性のある花様香気を有する。
【0018】
本発明の飲料において、飲料中のジヒドロジャスモン酸メチルの含有量は、0.05~100ppbである。また、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量は、0.1~50ppbであることがより好ましい。ジヒドロジャスモン酸メチルを上記範囲の割合で含有することにより、飲料中のカテキン類に由来する苦渋みをマスキングすることができ、カテキン類の含有量を変更することなしに、後味の良さ、飲みやすさ、飲みごたえ、およびおいしさを維持したまま、苦渋みを低減した飲料とすることができる。なお、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が100ppb超になると、含有量が100ppb以下のときと比較して、飲料の飲みやすさやおいしさが損なわれる可能性がある。
【0019】
(ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量の測定)
本発明における飲料中のジヒドロジャスモン酸メチルの含有量は、例えば、アジレント・テクノロジー社製のガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて測定することができる。具体的には、分析対象の飲料(3.0mL)をバイアル瓶(容量10mL)に入れ、上記装置で測定することができる。なお、本測定における検量線は標準添加法にて作成し、内部標準物質としてシクロヘキサノールを用いる。
【0020】
ここで、本発明の飲料において、カテキン類の含有量(単位:ppm)を(A)とし、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量(単位:ppb)を(B)とすると、ppb換算したときの質量比〔(B)/((A)×1000)〕は2.91×10-8以上であることが好ましく、1.16×10-7以上であることがより好ましく、2.33×10-7以上であることがさらに好ましい。また、上記質量比〔(B)/((A)×1000)〕の上限値は、特に限定されないが、9.26×10-4以下であることが好ましく、2.33×10-4以下であることがより好ましく、1.16×10-4以下であることがさらに好ましい。
【0021】
カテキン類とジヒドロジャスモン酸メチルの質量比が、上記範囲内であると、カテキン類に由来する苦渋みをより効果的にマスキングすることができる。
【0022】
[その他の成分]
本発明の飲料においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な飲料に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、その配合量は、目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
[容器]
本発明の飲料においては、容器に充填することで容器詰飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0024】
2.飲料の製造方法
本発明の飲料は、飲料の製造において採用される任意の条件や方法を用いて製造することができる。例えば、茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシス種(Camellia Sinensis)の茶葉を抽出して茶抽出物を調製し、飲料中のカテキン類の含有量が108~1720ppmとなるように水に溶解する。その後、ジヒドロジャスモン酸メチルを、飲料中の含有量が0.05~100ppbとなるように、水に溶解した茶抽出物に添加して混合する。さらにその他必要に応じて加えられる成分を添加する等して飲料を調製する。
【0025】
上述したように、飲料の製造においては、準備されたそれぞれ所定量の成分を含有する抽出液や、特定量のジヒドロジャスモン酸メチルを、順次又は同時に添加し、撹拌等により混合する方法を用いることができる。各成分の混合順序等については、特に限定されない。
【0026】
ジヒドロジャスモン酸メチルを添加するにあたっては、香料(化学合成された化合物等)として添加する方法や、ジヒドロジャスモン酸メチルを含む食品素材の抽出液を添加する方法等が挙げられる。
【0027】
製造された飲料は、容器に充填して容器詰飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0028】
3.飲料の風味改善方法
上述したように、本発明の飲料によれば、カテキン類を所定の割合で含有する飲料において、ジヒドロジャスモン酸メチルを0.05~100ppbの含有量で配合されていることにより、カテキン類に由来する苦渋みを改善し、後味のよさや、飲みやすさ、飲みごたえ、おいしさなどを有する嗜好性に優れた飲料となる。
【0029】
したがって、このことから、カテキン類を含む飲料においてジヒドロジャスモン酸メチルを特定量配合することで、飲料の風味を改善する方法として定義することができる。すなわち、本発明の飲料の風味改善方法は、カテキン類を108~1720ppmの割合で含有する飲料に、ジヒドロジャスモン酸メチルを0.05~100ppbとなるように添加することを特徴とする。
【0030】
なお、ここで「飲料の風味改善」とは、苦渋みを低減させるよう改善して、後味のよさ、飲みやすさ、飲みごたえ、およびおいしさの少なくともいずれかを有する飲料とすることをいう。
【0031】
ここで、本発明の飲料の風味改善方法において、ジヒドロジャスモン酸メチルの添加量は、飲料中の含有量として0.05~100ppbとなるようにすることが好ましい。また、飲料中の、カテキン類の含有量(単位:ppm)を(A)とし、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量(単位:ppb)を(B)とすると、ppb換算したときの質量比〔(B)/((A)×1000)〕が2.91×10-8以上となるようにすることが好ましい。
【実施例0032】
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
[試験飲料の作製および官能評価]
官能評価に用いる試験飲料1-1~1-5の作製および官能評価を以下のように行った。
【0034】
(試験飲料1-1~1-5の作製)
市販の緑茶抽出物(カテキン類の濃度80%)を用いて、カテキン類の含有量が、108、215、430、860、1720ppmとなるように、水に溶解して、試験飲料1-1~1-5を作製した。作製した試験飲料1-1~1-5に含まれるカテキン類の含有量を、超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)を用いて下記条件で測定した。なお、測定用のサンプルは、分析対象である試験飲料1-1~1-5をそれぞれ精製水で2倍に希釈し、これを0.45μmのシリンジフィルターでろ過したものを用いた。
【0035】
(UPLCの分析条件)
・機器:Waters UPLC装置一式(検出器:PDA、グラジエント法)
・移動相:0.5%ギ酸(A液)、0.5%ギ酸/メタノール(B液)
・カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,2.1mm×100mm
・流量:0.3ml/分
・グラジエント:A/B=90/10で2分間通液後、65/35で11分間通液
【0036】
(官能評価)
作製した試験飲料1-1~1-5について、専門評価パネル5名にて官能評価を行った。具体的には、表1に示す試験飲料1-1~1-5に対して、「苦渋み」、「後味の良さ」、「飲みやすさ」および「飲みごたえ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記評価基準に従って各パネルが付けた評価点数の平均値として算出した。当該評価は、カテキン類が未添加である飲料(基準品1)の点数を基準値(4点)として評価した。
【0037】
「苦渋み」については、下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり強い、6点:強い、5点:やや強い、4点:基準品と同等、3点:やや弱い、2点:弱い、1点:かなり弱い
【0038】
「後味の良さ」、「飲みやすさ」および「飲みごたえ」については下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり良い、6点:良い、5点:やや良い、4点:基準品と同等、3点:やや悪い、2点:悪い、1点:かなり悪い
【0039】
(結果)
表1に、基準品1および試験飲料1-1~1-5のカテキン類の濃度および官能評価の結果を示す。「苦渋み」については、上記評価基準にあるように、小さくなるほど、「苦渋み」を感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。また、「後味の良さ」、「飲みやすさ」および「飲みごたえ」については、上記評価基準にあるように、点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。
【0040】
【0041】
(結果)
表1に示されるように、カテキン類が含まれることで、またそのカテキン類の濃度が高くなるにつれて、「飲みごたえ」が良くなる一方で、飲料の「苦渋み」が強くなることを確認した。
【0042】
(実施例2)
[試験飲料の作製および官能評価]
官能評価に用いる試験飲料2-1~2-6の作製および官能評価を以下のように行った。
【0043】
(試験飲料2-1~2-6の作製)
実施例1で作製した試験飲料1-3(カテキン類の含有量:430ppm)に、ジヒドロジャスモン酸メチルを表2に示す含有量(0.05、0.1、0.5、1、10、100ppb)になるように添加し、試験飲料2-1~2-6を作製した。作製した試験飲料2-1~2-6(各3.0mL)をそれぞれバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル株式会社製のMPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)により、GC/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入し、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量を測定した。本測定における検量線は標準添加法にて作成し、内部標準物質としてシクロヘキサノールを用いた。
【0044】
(GC/MSの分析条件)
・機器 GC :Agilent 7890B GC System
MS :Agilent 5977B GC/MSD
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS2/DHS/TDU2/CIS4
・捕集管(吸着剤):TenaxTA,Carbopack-B&Carbopack-X
・カラム :DB-WAX UI(30m×0.25mm、膜厚0.25μm)
・注入法 :溶媒ベント
・キャリアガス :He(1.0mL/分)
・トランスファーライン:250℃
・昇温プログラム :40℃(2分間保持)→8℃/分→240℃(10分間保持)
・定量イオン(Indole):117
・イオン化方法 :EI
・四重極温度 :150℃
・イオン源温度 :230℃
【0045】
なお、上記機器(GCおよびMS)、およびカラムはアジレント・テクノロジー社製であり、全自動揮発性成分抽出導入装置はゲステル社製である。
【0046】
(官能評価)
作製した試験飲料2-1~2-6について、専門評価パネル5名にて官能評価を行った。具体的には、カテキン類の含有量が430ppmであり、ジヒドロジャスモン酸メチルが未添加である基準品2に対して、ジヒドロジャスモン酸メチルを上述の含有量になるように添加したときの、試験飲料2-1~2-6の「苦渋み」、「後味の良さ」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」および「おいしさ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記評価基準に従って各パネルが付けた評価点数の平均値として算出した。当該評価は、基準品2(ジヒドロジャスモン酸メチルが未添加の飲料)の点数を基準値(4点)として評価した。
【0047】
「苦渋み」については、下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり強い、6点:強い、5点:やや強い、4点:基準品と同等、3点:やや弱い、2点:弱い、1点:かなり弱い
【0048】
「後味の良さ」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」および「おいしさ」については下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり良い、6点:良い、5点:やや良い、4点:基準品と同等、3点:やや悪い、2点:悪い、1点:かなり悪い
【0049】
(結果)
表2に、試験飲料2-1~2-6に含まれるジヒドロジャスモン酸メチルの含有量、および官能評価の結果を示す。「苦渋み」については、上記評価基準にあるように、小さくなるほど、「苦渋み」を感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。また、「後味の良さ」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」および「おいしさ」については、上記評価基準にあるように、点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。
【0050】
【0051】
表2に示されるように、ジヒドロジャスモン酸メチルを添加することにより、飲料の「苦渋み」が抑えられ、「飲みごたえ」は維持しつつ、「後味の良さ」および「飲みやすさ」が改善されることが確認できた。とくに、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量を0.05~100ppbの範囲にすることにより、飲料の「苦渋み」を効果的に抑えながら、「後味の良さ」、「飲みやすさ」および「おいしさ」を高められることがわかった。
【0052】
(実施例3)
[試験飲料の作製および官能評価]
官能評価に用いる試験飲料3-1の作製および官能評価を以下のように行った。
【0053】
(試験飲料3-1の作製)
実施例1で作製した試験飲料1-4(カテキン類の含有量:860ppm)に、ジヒドロジャスモン酸メチルを表3に示す含有量(50ppb)になるように添加し、試験飲料3-1を作製した。試験飲料3-1に含まれるジヒドロジャスモン酸メチルの含有量は、実施例2で用いたガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)および測定条件で測定した。
【0054】
(官能評価)
作製した試験飲料3-1について、専門評価パネル5名にて官能評価を行った。具体的には、カテキン類の含有量が860ppmであり、ジヒドロジャスモン酸メチルが未添加である基準品3に対して、ジヒドロジャスモン酸メチルを上述の含有量になるように添加し、試験飲料3-1の「苦渋み」、「後味の良さ」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」、「おいしさ」について比較評価することで行った。当該評価は、基準品3(ジヒドロジャスモン酸メチルが未添加の飲料)の点数を基準値(4点)として評価し、各評価点数は、実施例2と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。
【0055】
(結果)
表3に、試験飲料3-1に含まれるジヒドロジャスモン酸メチルの含有量、および官能評価の結果を示す。評価における「苦渋み」については、上記評価基準にあるように、小さくなるほど、「苦渋み」を感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。また、「後味の良さ」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」および「おいしさ」については、上記評価基準にあるように、点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。
【0056】
【0057】
表3に示されるように、カテキン類の濃度が増えた場合であっても、ジヒドロジャスモン酸メチルを添加することにより、飲料の「苦渋み」が抑えられ、「飲みごたえ」は維持しつつ、「後味の良さ」、「飲みやすさ」および「おいしさ」を高められることがわかった。
本発明により、特定の香料成分を茶飲料に添加することにより、飲みごたえやおいしさ等を維持しつつ、苦渋みのみを抑えた茶飲料を提供することができるので、茶飲料分野に有用である。