(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070483
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ショベル遠隔操作装置及びショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181004
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴俊
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】ショベルが、想定される正常な動作を行わない場合に、その原因を特定するための支援を行うことができるショベル遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】ショベル遠隔操作装置が、アクチュエータ、及びアクチュエータによって動作する対象物を含むショベルを遠隔から操作する。操作手段を操作して、アクチュエータを駆動する指令を入力する。操作手段によって入力された指令を、制御部が、通信部を介してショベルに送信する。制御部は、通信部を介してショベルからアクチュエータの駆動状態を示すアクチュエータ駆動情報を受信し、受信したアクチュエータ駆動情報に基づいて、アクチュエータの駆動状態を表示部に表示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ、及び前記アクチュエータによって動作する対象物を含むショベルを遠隔から操作する遠隔操作装置であって、
前記アクチュエータを駆動する指令を入力する操作手段と、
前記ショベルと通信する通信部と、
表示部と、
前記操作手段によって入力された前記指令を、前記通信部を介して前記ショベルに送信する制御部と
を備えており、
前記制御部は、
前記アクチュエータの駆動状態を示すアクチュエータ駆動情報を、前記通信部を介して前記ショベルから受信し、
受信した前記アクチュエータ駆動情報に基づいて、前記アクチュエータの駆動状態を前記表示部に表示するショベル遠隔操作装置。
【請求項2】
前記アクチュエータはクローラを回転させる走行油圧モータであり、
前記制御部は、前記アクチュエータの駆動状態に基づいて、前記クローラの回転状態を示す情報を前記表示部に表示する請求項1に記載のショベル遠隔操作装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ショベルから前記通信部を介して前記ショベルの走行状態が反映された情報を受信し、受信した情報に基づいて前記ショベルが走行しているか否かを判定し、
前記走行油圧モータの駆動状態が正常であるにもかかわらず、前記ショベルが走行していない場合、前記クローラが空転していることを通知する請求項2に記載のショベル遠隔操作装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記ショベルから、前記アクチュエータが駆動する前記対象物の動作状態が反映された動作情報を受信し、
前記アクチュエータ駆動情報に基づいて前記アクチュエータが駆動されているか否かを判定し、
前記動作情報に基づいて前記対象物が動作しているか否かを判定し、
前記アクチュエータが駆動されているにもかかわらず、前記対象物が動作していないと判定した場合、異常を通知する請求項1に記載のショベル遠隔操作装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記ショベルの上部旋回体を旋回させる旋回油圧モータであり、
前記動作情報は、前記上部旋回体に取り付けられたカメラで撮影された画像、または前記上部旋回体に取り付けられた角加速度センサによる角加速度情報である請求項4に記載のショベル遠隔操作装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは油圧シリンダであり、
前記アクチュエータによって駆動される前記対象物は、前記ショベルのブーム、アーム、バケット、ブレードの少なくとも1つであり、
前記動作情報は、前記対象物が写り込んだ画像情報または前記対象物の関節部分の角度情報である請求項4に記載のショベル遠隔操作装置。
【請求項7】
ショベルに対して走行を指令する機能と、
前記ショベルから、前記ショベルの走行油圧モータの駆動状態を示す駆動情報、及び前記ショベルの走行状態が反映された走行状態情報を受信し、受信した前記駆動情報及び前記走行状態情報に基づいて、前記ショベルのクローラが空転しているか否かを判定する機能と
を備えたショベル遠隔操作装置。
【請求項8】
アクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動状態を検知するセンサと、
ショベル遠隔操作装置と通信する通信部と、
前記通信部を介して前記ショベル遠隔操作装置から受信した指令に基づいて、前記アクチュエータを駆動し、前記センサの検知結果を、前記通信部を介して前記ショベル遠隔操作装置に送信するコントローラと
を備えたショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル遠隔操作装置及びショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルを遠隔から操作するショベルの施工支援システムが公知である(特許文献1)。この施工支援システムは、ショベルに取り付けられた撮像装置が撮像した画像に基づいて周囲画像を生成する。この画像は、ショベルの外部にある遠隔操作室に設置された表示装置に表示される。さらに、ショベルに取り付けられた物体検知装置が取得した情報に基づいて、遠隔操作室で操作しているオペレータに注意を喚起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショベルに搭乗して操作を行っているときに、何らかの異常によって操作内容から想定される動作が行われない場合、振動、音、及び目視等により、異常の原因を特定することが可能である。ところが、ショベルを遠隔から操作している場合は、一般的に、ショベルに搭載されたカメラによって取得された周囲の画像から異常の発生を認識できるのみである。周囲の画像以外にも、異常の原因を特定するのに有益な情報があるとよい。
【0005】
本発明の目的は、ショベルが、想定される正常な動作を行わない場合に、その原因を特定するための支援を行うことができるショベル遠隔操作装置、及び遠隔操作されるショベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
アクチュエータ、及び前記アクチュエータによって動作する対象物を含むショベルを遠隔から操作する遠隔操作装置であって、
前記アクチュエータを駆動する指令を入力する操作手段と、
前記ショベルと通信する通信部と、
表示部と、
前記操作手段によって入力された前記指令を、前記通信部を介して前記ショベルに送信する制御部と
を備えており、
前記制御部は、
前記アクチュエータの駆動状態を示すアクチュエータ駆動情報を、前記通信部を介して前記ショベルから受信し、
受信した前記アクチュエータ駆動情報に基づいて、前記アクチュエータの駆動状態を前記表示部に表示するショベル遠隔操作装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると
ショベルに対して走行を指令する機能と、
前記ショベルから、前記ショベルの走行油圧モータの駆動状態を示す駆動情報、及び前記ショベルの走行状態が反映された走行状態情報を受信し、受信した前記駆動情報及び前記走行状態情報に基づいて、前記ショベルのクローラが空転しているか否かを判定する機能と
を備えたショベル遠隔操作装置が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の観点によると、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動状態を検知するセンサと、
ショベル遠隔操作装置と通信する通信部と、
前記通信部を介して前記ショベル遠隔操作装置から受信した指令に基づいて、前記アクチュエータを駆動し、前記センサの検知結果を、前記通信部を介して前記ショベル遠隔操作装置に送信するコントローラと
を備えたショベルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
ショベルが、操作内容から想定される動作を行っていない場合、表示部に表示されたアクチュエータの駆動状態は、アクチュエータの駆動状態が異常のために想定される動作が行われていないのか、またはその他の原因で想定される動作が行われていないのかを判定するための有益な情報となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施例によるショベルの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した実施例によるショベルのブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した実施例によるショベル遠隔操作装置の概略図及びブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したショベル遠隔操作装置に対してオペレータが行う操作、制御部が実行する手順、及びショベルのコントローラが実行する手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5A~
図5Dは、走行油圧モータの動作に基づくクローラの回転状態を表す情報の表示例を示す図である。
【
図6】
図6は、他の実施例によるオペレータが行う操作、ショベル遠隔操作装置の制御部が実行する手順、及びショベルのコントローラが実行する手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、ショベル遠隔操作装置の制御部がオペレータに異常を通知するときに、表示部に表示する文字列の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、さらに他の実施例によるオペレータが行う操作、ショベル遠隔操作装置の制御部が実行する手順、及びショベルのコントローラが実行する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図5Dを参照して、一実施例によるショベル及びショベル遠隔操作装置について説明する。
【0012】
図1は、本実施例によるショベル10の側面図である。本実施例によるショベル10は、下部走行体12、下部走行体12に対して旋回機構13を介して旋回可能に搭載された上部旋回体11、ブーム21、アーム22、バケット23、及びブレード24を備えている。
【0013】
下部走行体12は、例えば、左右一対のクローラ14を含み、それぞれのクローラ14が、後述する走行油圧モータで油圧駆動されることにより自走する。
【0014】
上部旋回体11は、後述する旋回油圧モータで駆動されることにより、下部走行体12に対して旋回する。上部旋回体11は、キャビン15を備えている。ショベル10を直接操作する場合は、キャビン15にオペレータが搭乗する。
【0015】
ブーム21は、上部旋回体11の前部中央に上下方向に揺動可能に取り付けられている。ブーム21の先端に、アーム22が前後方向に揺動可能に取り付けられている。アーム22の先端に、バケット23が開閉動作可能に取り付けられている。ブーム21、アーム22、及びバケット23は、それぞれ、油圧シリンダであるブームシリンダ25、アームシリンダ26、及びバケットシリンダ27により油圧駆動される。バケット23はエンドアタッチメントの一例であり、アーム22の先端に、作業内容等に応じて、バケット23の代わりに、他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。
【0016】
ブレード24は、下部走行体12の前方に、上下方向に揺動可能に取り付けられている。ブレード24は、油圧シリンダであるブレードシリンダ28によって駆動される。
【0017】
ショベル10は、キャビン15に搭乗するオペレータの操作に応じて、下部走行体12、上部旋回体11、ブーム21、アーム22、バケット23、及びブレード24を動作させる。また、後述する遠隔操作装置からの指令により、下部走行体12、上部旋回体11、ブーム21、アーム22、バケット23、及びブレード24を動作させることもできる。
【0018】
次に、
図2を参照して、機能に着目したショベル10の構成について説明する。
図2は、ショベル10のブロック図である。
図2において、機械的動力ラインを二重線で示し、高圧油圧ラインを太い実線で示し、パイロットラインを太い破線で示し、電力ラインを細い実線で示し、制御ラインを細い破線で示す。
【0019】
バッテリモジュール50が、高圧蓄電装置50B及びバッテリコントローラ50Cを含む。高圧蓄電装置50Bは、普通充電用車両インレット90から充電用ACDCコンバータ91を介して普通充電される。また、充電ステーションの充電ガンを急速充電用車両インレット92に接続することにより、高圧蓄電装置50Bが急速充電される。普通充電及び急速充電は、バッテリコントローラ50Cによって制御される。高圧蓄電装置50Bとして、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等が用いられる。
【0020】
電力変換装置51が、高圧蓄電装置50Bから供給される電力を昇圧し、インバータ57に供給する。インバータ57は、コントローラ60の制御下でポンプ用電動機58を駆動する。ポンプ用電動機58には、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータが用いられる。なお、ポンプ用電動機58に代えて、内燃機関、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等を用いてもよい。
【0021】
次に、ポンプ用電動機58で駆動される油圧駆動系について説明する。
ポンプ用電動機58によって、メインポンプ70及びパイロットポンプ71が駆動される。メインポンプ70は、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ73に作動油を供給する。メインポンプ70として、例えば、可変容量式油圧ポンプが用いられる。
【0022】
パイロットポンプ71は、パイロットラインを介して圧力制御弁72(例えば、比例弁)にパイロット圧を供給する。圧力制御弁72は、コントローラ60の制御下で、動作指令に応じたパイロット圧をコントロールバルブ73に供給する。パイロットポンプ71として、例えば、固定容量式油圧ポンプが用いられる。
【0023】
コントロールバルブ73は、メインポンプ70から供給される作動油を、圧力制御弁72からのパイロット圧に応じて、複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。複数の油圧アクチュエータには、ブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27、ブレードシリンダ28、走行油圧モータ29、30、及び旋回油圧モータ31が含まれる。例えば、コントロールバルブ73は、メインポンプ70から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向とを制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含む。走行油圧モータ29、30は、それぞれ下部走行体12の左右のクローラ14(
図1)を回転させる。旋回油圧モータ31は、上部旋回体11を旋回させる。なお、旋回油圧モータ31に代えて、旋回電動機を用いてもよい。
【0024】
次に、操作系について説明する。
操作装置38が複数の操作レバー、操作ペダル等の操作手段を含む。キャビン15(
図1)に搭乗したオペレータが操作手段を操作すると、操作内容に応じた電気信号がコントローラ60に取り込まれる。コントローラ60は、操作内容に応じて圧力制御弁72及びインバータ57を制御する。
【0025】
ショベル10は、さらに、周囲情報取得装置32、通信装置33、加速度センサ34、角加速度センサ35、及びGNSS受信機36を備えている。
【0026】
周囲情報取得装置32は、例えばショベル10の上部旋回体11に取り付けられたカメラで構成される。例えば、周囲情報取得装置32は、ショベル10の前方をオペレータ視線で見た画像を撮影するカメラ、ショベル10の後方及び側方を撮影するためのカメラ等を含む。ショベル10の後方及び側方の画像がコントローラ60に取り込まれ、コントローラ60は、これらの画像から、俯瞰視点で見た画像(俯瞰画像)を合成する。俯瞰画像は、キャビン15内の表示装置に表示される。
【0027】
通信装置33は、コントローラ60の制御下で、後述するショベル遠隔操作装置とデータ通信を行う。ショベル遠隔操作装置との通信には、プライベートネットワーク、パブリックネットワーク等が用いられる。
【0028】
加速度センサ34及び角加速度センサ35は、上部旋回体11に取り付けられている。例えば、加速度センサ34及び角加速度センサ35により、3軸方向の加速度、及び3軸の角加速度を測定することができる。測定結果がコントローラ60に取り込まれる。
【0029】
GNSS受信機36は、ショベル10の現在位置を求める。GNSS受信機36で求められた現在位置情報がコントローラ60に取り込まれる。
【0030】
次に、
図3を参照してショベル遠隔操作装置について説明する。
図3は、ショベル遠隔操作装置80の概略図及びブロック図である。ショベル遠隔操作装置80は、オペレータが着座する操作席81、複数の操作レバー、操作ペダル等の操作手段82、表示部84、制御部85、及び通信部86を含む。通信部86は、ショベル10の通信装置33とデータ通信を行う。
【0031】
オペレータが操作席81に着座して操作手段82を操作することにより、ショベル10を遠隔操作する。表示部84は、操作席81に着座したオペレータの正面に配置されている。表示部84として、例えば3行3列に配置された9個のモニタからなるマルチディスプレイが用いられる。表示部84には、ショベル10に搭載された周囲情報取得装置32(
図2)で撮影された画像、例えばショベル10に搭乗したオペレータ視線で見た画像が映し出される。なお、表示部84の一部に、ショベル10の周囲の俯瞰画像を表示するようにしてもよい。さらに、表示部84には、ショベル10のアクチュエータの駆動情報や、オペレータに通知する種々のメッセージが表示される。
【0032】
図4は、ショベル遠隔操作装置80に対してオペレータが行う操作、制御部85(
図3)が実行する手順、及びショベル10のコントローラ60(
図2)が実行する手順を示すフローチャートである。操作席81に着座したオペレータが操作手段82を操作する(ステップSR1)。以下、クローラ14(
図1)を回転させてショベル10を走行させる操作を行った場合について説明する。
【0033】
ショベル遠隔操作装置80の制御部85は、操作手段82の操作内容を検知し、ショベル10に、走行油圧モータ29、30を駆動する指令を送信する(ステップSR2)。ショベル10のコントローラ60は、この指令を受信すると、操作内容に応じて走行油圧モータ29、30を駆動する(ステップSS1)。コントローラ60は、走行油圧モータ29、30の駆動状態を示す駆動情報、及び周囲の画像情報を取得する(ステップSS2)。その後、走行油圧モータ29、30の駆動情報、及び周囲の画像情報を、ショベル遠隔操作装置80に送信する(ステップSS3)。
【0034】
走行油圧モータ29、30の駆動情報として、例えば、走行油圧モータ29、30に流入する作動油の流量を採用することができる。作動油の流量は、油圧回路に挿入された流量センサにより測定することができる。なお、作動油の流量に代えて、メインポンプ70の吐出圧を用いてもよい。走行油圧モータ29、30が駆動されているときに、他の油圧アクチュエータが駆動されていない場合は、走行油圧モータ29、30に流入する作動油の流量が、メインポンプ70の吐出圧に応じて変化するため、メインポンプ70の吐出圧を、走行油圧モータ29、30の駆動情報として用いることができる。
【0035】
ショベル遠隔操作装置80の制御部85が、ショベル10から、走行油圧モータ29、30の駆動状態を示す駆動情報、及び周囲情報取得装置32から取得した画像情報を受信する(ステップSR3)。その後、制御部85は、走行油圧モータ29、30の駆動情報、及び画像情報を、画像として表示部84に表示する(ステップSR4)。例えば、走行油圧モータ29、30の駆動情報は、クローラ14の回転状態を示す画像として表示される。
【0036】
図5A~
図5Dは、走行油圧モータ29、30の動作に基づくクローラ14の回転状態を示す画像の表示例を示す図である。
図5A及び
図5Cは、走行油圧モータ29、30が正常に動作している場合の表示例であり、
図5B及び
図5Dは、走行油圧モータ29、30が正常に動作していない場合の表示例である。
図5Aに示した例では、ショベルのアイコンを表示し、クローラに沿う矢印を付すことによりクローラ14が正常に回転していることが表現されている。なお、クローラ14に沿う矢印を付す代わりに、または矢印を付すとともに、クローラ14が回転するアニメーションを表示してもよい。
図5Bに示した例では、クローラ14に沿う矢印を破線にし、矢印上に「×」印を付すことによりクローラ14が回転していないことを表現している。
【0037】
図5Cに示した例では、「クローラ回転中」という文字列が表示され、
図5Dに示した例では、「クローラ非回転」という文字列が表示される。
【0038】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
オペレータがショベル遠隔操作装置80の操作手段82(
図3)を操作してショベル10を走行させようとしたときに、表示部84に表示されているショベル10の周囲の画像が変化しない場合、ショベル10が想定した通りの走行をしていないと判断される。ところが、ショベル10の周囲の画像のみからでは、クローラ14(
図1)が回転していないのか、クローラ14は回転しているがショベル10が走行していないのかを区別することが困難である。
【0039】
例えば、作業現場の地面がぬかるんでいる場合に、オペレータが走行レバーを操作してもクローラが空転して走行できない事態が生じ得る。オペレータがショベルに搭乗して操作している場合は、クローラが空転する音や振動により空転が生じていることを認識することが可能である。遠隔から操作している場合は、走行レバーを操作しても周囲の画像が変化せず、正常に走行していないことが認識できるのみである。走行していない原因が、クローラの空転なのか、その他の何らかの異常によって走行していないのか、原因を特定することが困難である。
【0040】
上記実施例においては、オペレータは、表示部84に表示された走行油圧モータ29、30の駆動状態を示す情報(
図5A~
図5D)を見て、ショベル10が走行していない原因が、クローラ14が回転していないためなのか、クローラ14が回転しているにもかかわらず他の原因によって走行していないのかを判断することができる。
【0041】
クローラ14が回転していない場合には、遠隔操作系に何らかの異常が発生しているか、ショベル10の走行油圧モータ29、30の駆動系に何らかの異常が発生していると判断することができる。クローラ14が回転しているにもかかわらずショベル10が走行してない場合には、地面がぬかるんでいる等の理由によりクローラ14が空転していると判断することができる。
【0042】
次に、
図6~
図7Bを参照して、他の実施例によるショベル遠隔操作装置及びショベルについて説明する。以下、
図1~
図5Dを参照して説明した上記実施例によるショベル遠隔操作装置及びショベルと共通の構成については説明を省略する。
【0043】
図6は、本実施例によるオペレータが行う操作、ショベル遠隔操作装置80の制御部85が実行する手順、及びショベル10のコントローラ60が実行する手順を示すフローチャートである。
図7A及び
図7Bは、ショベル遠隔操作装置80の制御部85がオペレータに異常を通知するときに、表示部84に表示する文字列の一例を示す図である。
【0044】
ステップSR1~SR4、ステップSS1~SS3の手順は、
図4に示した手順と同一である。
図4に示した実施例では、ショベル遠隔操作装置80の表示部84(
図3)に表示されたショベル10の周囲の画像、及びアクチュエータ駆動状態を示す表示をオペレータが見て、異常が発生しているか否かをオペレータが判断する。
【0045】
図6に示した実施例では、ショベル遠隔操作装置80の制御部85が、走行油圧モータ29、30の駆動状態が正常か否かを判定し(ステップSR5)、異常であると判定した場合は、遠隔操作系または走行油圧モータ駆動系に異常が発生していることをオペレータに通知する(ステップSR6)。例えば、
図7Aに示すように、「遠隔操作系または走行油圧モータ駆動系に異常発生」という文字列を表示部84に表示する。
【0046】
走行油圧モータ29、30が正常に駆動されている場合、制御部85は、走行状態が正常であるか否かを判定する(ステップSR7)。走行状態の判定は、例えばショベル10の周囲の画像を解析することによって行うことができる。例えば、ショベル10の周囲の画像の変化からオプティカルフロー推定を行うことにより、ショベル10が正常に走行しているか否かを判定することができる。すなわち、画像情報は、ショベル10の走行状態を判定する基礎となる走行状態情報として利用される。
【0047】
ショベル10が正常に走行していない場合、制御部85は、クローラが空転していることをオペレータに通知する(ステップSR8)。例えば、
図7Bに示すように、表示部84に、「クローラ空転発生」という文字列を表示する。
【0048】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においては、遠隔操作系または走行油圧モータ駆動系の異常、またはクローラの空転がオペレータに通知されるため、オペレータは、これらの異常に容易に気付くことができる。
【0049】
次に、本実施例の変形例によるショベル遠隔操作装置について説明する。
図6に示した実施例では、ショベル遠隔操作装置80の制御部85が、ショベル10の周囲の画像からショベル10の走行状態を判定している。その他に、ショベル10に搭載されたGNSS受信機36(
図2)で求められたショベル10の現在位置情報をショベル10からショベル遠隔操作装置80に送信するようにしてもよい。ショベル遠隔操作装置80の制御部85は、ショベル10の現在位置情報で表されるショベル10の現在位置の移動状況に基づいて、ショベル10の走行状態が正常であるか否かを判定してもよい。例えば、時間が経過してもショベル10がほとんど移動していない場合は、走行状態が異常であると判定するとよい。すなわち、GNSS受信機36で求められた現在位置情報が、ショベル10の走行状態を表す走行状態情報として用いられる。
【0050】
次に、
図8を参照してさらに他の実施例によるショベル遠隔操作装置及びショベルについて説明する。以下、
図1~
図5Dを参照して説明した上記実施例によるショベル遠隔操作装置と共通の構成については説明を省略する。
【0051】
図8は、本実施例によるオペレータが行う操作、ショベル遠隔操作装置80の制御部85が実行する手順、及びショベル10のコントローラ60が実行する手順を示すフローチャートである。
【0052】
図4に示した実施例と同様に、オペレータが操作手段82(
図3)を操作する(ステップSR1)。本実施例では、ブーム21、アーム22、バケット23、ブレード24、上部旋回体11(
図2)に対する操作を行う。制御部85(
図3)は、ショベル10に、操作内容に応じたアクチュエータの駆動指令を送信する(ステップSR10)。例えば、操作の対象物がブーム21である場合、ブームシリンダ25の駆動指令を送信する。
【0053】
ショベル10のコントローラ60は、は、受信した駆動指令に応じて、アクチュエータを駆動する(ステップSS11)。その後、コントローラ60は、アクチュエータ駆動情報、及びアクチュエータによって駆動される対象物の動作情報を取得する(ステップSS12)。例えば、アクチュエータがブームシリンダ25等の油圧シリンダである場合は、アクチュエータ駆動情報として、油圧シリンダに取り付けられた圧力センサの測定値(検知結果)を採用するとよい。アクチュエータが旋回油圧モータ31である場合、アクチュエータ駆動情報として、旋回油圧モータ31に流入する作動油の流量の測定値を採用するとよい。
【0054】
アクチュエータによって駆動される対象物がブーム21、アーム22、バケット23、ブレード24である場合、対象物の動作情報として、ブーム21、アーム22、バケット23、ブレード24が写り込んだ画像情報を採用するとよい。画像を解析することにより、ブーム21、アーム22、バケット23、ブレード24の動作状態を検知することができる。また、ブーム21、アーム22、バケット23、ブレード24の関節部分の角度情報を、対象物の動作情報として採用してもよい。
【0055】
対象物が上部旋回体11である場合、対象物の動作情報として、上部旋回体に取り付けられた角加速度センサ35で測定された角加速度情報を採用するとよい。角加速度情報により、上部旋回体11が正常に旋回しているか否かを判定することができる。
【0056】
ショベル10のコントローラ60は、アクチュエータ駆動情報及び対象物の動作情報をショベル遠隔操作装置80に送信する(ステップSS13)。ショベル遠隔操作装置80の制御部85は、アクチュエータ駆動情報及び対象物の動作情報を受信する(ステップSR11)。
【0057】
制御部85は、受信したアクチュエータ駆動情報に基づいて、アクチュエータの駆動状態が正常であるか否かを判定する(ステップSR12)。例えば、アクチュエータが油圧シリンダである場合、油圧シリンダに取り付けられた圧力センサによる作動油の油圧の測定値に基づいて、アクチュエータの駆動状態が正常であるか否かを判定する。アクチュエータが旋回油圧モータ31である場合、旋回油圧モータ31に流入する作動油の流量の測定値に基づいて、旋回油圧モータ31の駆動状態が正常であるか否かを判定する。
【0058】
アクチュエータの駆動状態が正常ではない場合、制御部85は、遠隔操作系またはアクチュエータ駆動系に異常が発生していることをオペレータに通知する(ステップSR13)。例えば、表示部84に、異常を通知するメッセージを表示する。
【0059】
アクチュエータの駆動状態が正常である場合、制御部85は、対象物の動作状態が正常か否かを判定する(ステップSR14)。アクチュエータがブームシリンダ25である場合、制御部85は、ブーム21が写り込んでいる画像を解析することにより、ブーム21が正常に動作しているか否かを判定する。または、ブーム21の基部に取り付けられた角度センサの測定結果から、ブーム21が正常に動作しているか否かを判定する。アクチュエータが旋回油圧モータ31である場合、制御部85は、上部旋回体11の角加速度情報に基づいて、上部旋回体11が正常に旋回しているか否かを判定する。
【0060】
対象物の動作状態が正常ではない場合、制御部85は、アクチュエータが駆動されているが動作が異常であることをオペレータに通知する(ステップSR15)。例えば、表示部84に、異常の発生を通知するメッセージを表示する。
【0061】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、アクチュエータに対して遠隔から操作を行ったときに、操作内容から想定される動作が実行されない場合、アクチュエータの駆動が正常に行われていないのか、アクチュエータは正常に駆動されているが、その他の原因で対象物が正常に動作していないのかを、容易に判定することができる。
【0062】
各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0063】
10 ショベル
11 上部旋回体
12 下部走行体
13 旋回機構
14 クローラ
15 キャビン
21 ブーム
22 アーム
23 バケット
24 ブレード
25 ブームシリンダ
26 アームシリンダ
27 バケットシリンダ
28 ブレードシリンダ
29、30 走行油圧モータ
31 旋回油圧モータ
32 周囲状況取得装置
33 通信装置
34 加速度センサ
35 角加速度センサ
36 GNSS受信機
38 操作装置
50 バッテリモジュール
50B 高圧蓄電装置
50C バッテリコントローラ
51 電力変換装置
57 インバータ
58 ポンプ用電動機
60 コントローラ
70 メインポンプ
71 パイロットポンプ
72 圧力制御弁
73 コントロールバルブ
80 ショベル遠隔操作装置
81 操作席
82 操作手段
84 表示装置
85 制御部
86 通信部
90 普通充電用車両インレット
91 充電用ACDCコンバータ
92 急速充電用車両インレット