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<図1>
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図1
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図2
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図3
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図4
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図5
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図6
  • 特開-ショベル支援装置及びショベル 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070484
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ショベル支援装置及びショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240516BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F3/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181005
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴俊
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】作業の困難性を軽減させることが可能なショベル支援装置を提供する。
【解決手段】表示装置に画像が表示される。制御装置が、ショベルの周囲の土壌の水分量の分布を、ショベルの現在位置と関連付けて表示装置に表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示装置と、
ショベルの周囲の土壌の水分量の分布を、前記ショベルの現在位置と関連付けて前記表示装置に表示する制御装置と
を備えたショベル支援装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ショベルの周囲の土壌の水分量の分布に応じて、進入禁止区域を決定し、前記進入禁止区域の範囲を前記表示装置に表示する請求項1に記載のショベル支援装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記ショベルを遠隔から操作するショベル遠隔操作装置のオペレータが視認することができる位置に配置されている請求項1または2に記載のショベル支援装置。
【請求項4】
さらに、前記ショベルの周囲の土壌の水分量を測定する水分量測定装置を備えた請求項1または2に記載のショベル支援装置。
【請求項5】
アクチュエータと、
周囲の土壌の水分量の分布を表す分布情報、及びオペレータの操作に基づいてまたは自動で、前記アクチュエータの動作内容を決めるルールが記憶された記憶装置と、
前記アクチュエータを制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記分布情報に基づいて、前記記憶装置に記憶された前記ルールを修正して前記アクチュエータを制御するショベル。
【請求項6】
ショベルの周囲の土壌の水分量の分布を表す分布情報、及び作業計画を定義する情報が記憶された記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記作業計画に基づいて、自律的にアクチュエータを制御して作業を行う制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記分布情報に基づいて、前記記憶装置に記憶された前記作業計画を修正して前記アクチュエータを制御するショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル支援装置及びショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
気象情報データベースから作業エリアの気象条件を表す作業参考情報を生成し、ショベル遠隔操作装置に作業参考情報を出力する遠隔作業支援サーバが公知である(特許文献1)。この作業参考情報から、作業エリアにおける地盤の本来的な性質にどのような影響を及ぼしているかを、オペレータに推定させることができる。地盤の本来的な性質からの変化を推定することにより、作業の困難性の軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-179826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気象条件等から、掘削箇所の土壌の性質の変化をある程度推測することが可能である。ところが、気象条件から土壌の性質の変化を精度よく推定することは困難である。土壌の性質の推定に誤差が生じると、作業の困難性を軽減させる効果が得られない。本発明の目的は、作業の困難性を軽減させることが可能なショベル支援装置及びショベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
画像を表示する表示装置と、
ショベルの周囲の土壌の水分量の分布を、前記ショベルの現在位置と関連付けて前記表示装置に表示する制御装置と
を備えたショベル支援装置が提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
アクチュエータと、
周囲の土壌の水分量の分布を表す分布情報、及びオペレータの操作に基づいてまたは自動で、前記アクチュエータの動作内容を決めるルールが記憶された記憶装置と、
前記アクチュエータを制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記分布情報に基づいて、前記記憶装置に記憶された前記ルールを修正して前記アクチュエータを制御するショベルが提供される。
【0007】
本発明のさらに他の観点によると、
ショベルの周囲の土壌の水分量の分布を表す分布情報、及び作業計画を定義する情報が記憶された記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記作業計画に基づいて、自律的にアクチュエータを制御して作業を行う制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記分布情報に基づいて、前記記憶装置に記憶された前記作業計画を修正して前記アクチュエータを制御するショベルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
オペレータは、ショベルの周囲の土壌の水分量の分布に基づいて、ショベルの操作内容や走行経路等を決定することができる。これにより、作業効率の低下を抑制することができる。オペレータの操作に基づいてまたは自動で、アクチュエータの動作内容を決めるルールを、水分量の分布に基づいて修正することにより、作業効率の低下を抑制することができる。水分量の分布に基づいて作業計画を修正することにより、作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施例によるショベル支援装置の概略図である。
図2図2A及び図2Bは、土壌の水分量を測定する方法を説明するための概略図である。
図3図3は、ショベル支援装置の機能を有するショベル遠隔操作装置の概略図及びブロック図である。
図4図4は、他の実施例によるショベルの機能の一部を示すブロック図である。
図5図5は、図4に示した実施例によるショベルで掘削作業の操作が行われたときのアクチュエータの制御の手順を示すフローチャートである。
図6図6は、ルール修正前及び修正後のそれぞれのバケットの移動の軌跡の一例を示す模式図である。
図7図7は、さらに他の実施例によるショベル支援装置による作業を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図3を参照して、一実施例によるショベル支援装置について説明する。
図1は、ショベル支援装置20の概略図及びブロック図である。ショベル支援装置20は、表示装置21、制御装置22、及び水分量測定装置23を含む。水分量測定装置23は、ショベルの周囲の土壌の水分量を測定する。
【0011】
土壌の水分量の測定は、例えばレーザ測器による測定方法を用いることができる。この測定方法は、湿潤状態の土壌にレーザ光線を入射させるとレーザ光線が散乱してしまい、反射が弱まる傾向を示すという性質を利用している。例えば、レーザ測器を利用した土壌水分マップを作成する技術が、株式会社つうけんアドバンスシステムズの小林による「航空レーザ計測データを用いた土壌水分マップ」(https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjd3qbNw_D4AhXpS2wGHUW9AxUQFnoECAQQAQ&url=http%3A%2F%2Fwww.hamanasu-info.co.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2019%2F04%2FPDF4.pdf&usg=AOvVaw1aIzPdqUQylCQuHhUpECuu)に開示されている。
【0012】
その他に、遠赤外線カメラを用いて、土壌の加熱冷却の経時変化を観測することによっても、土壌の水分量を測定することができる。この技術は、奈良先端技術大学の福井らによる「遠赤外カメラを用いた加熱冷却の経時変化の観測に基づく含水状態推定」(http://omilab.naist.jp/~mukaigawa/papers/SI2021-SoilMoisture.pdf)に開示されている。
【0013】
制御装置22は、水分量測定装置23の測定結果を取り込み、水分量の分布を、ショベル10の現在位置と関連付けて表示装置21に画像として表示する。例えば、表示装置21に、地面の平面画像を表示し、観測エリア内の土壌の水分量の多少に応じて、色分けして、または濃淡をつけて表示する。また、ショベルの位置に、ショベルのアイコン10Aを表示する。
【0014】
図2Aは、土壌の水分量を測定する方法を説明するための概略図である。ショベル10に水分量測定装置23が取り付けられている。例えば、水分量測定装置23は、ショベル10のキャビンの上に取り付けられている。水分量測定装置23は、ショベル10の周囲の観測エリア30内の土壌の水分量を測定する。測定結果が制御装置22に取り込まれる。
【0015】
図2Bは、土壌の水分量を測定する他の方法を説明するための概略図である。水分量測定装置23が、小型無人航空機24(例えば、ドローン)に搭載されている。小型無人航空機24は、オペレータの操縦により、または予め設定された飛行経路に沿って、ショベル10が作業する予定の観測エリア30の上空を飛行する。このとき、水分量測定装置23が、観測エリア30内の土壌の水分量を測定する。水分量測定装置23による水分量の測定結果が制御装置22に取り込まれる。
【0016】
図3は、ショベル支援装置20の機能を有するショベル遠隔操作装置80の概略図及びブロック図である。ショベル遠隔操作装置80は、オペレータが着座する操作席81、複数の操作レバー等の操作子82、表示装置84、制御装置83、及び通信装置86を含む。通信装置86は、ショベル10の通信装置62とデータ通信を行う。制御装置83は、ショベル支援装置20の制御装置22を兼ねる。表示装置84の画面の一部の領域が、ショベル支援装置20の表示装置21として利用される。
【0017】
オペレータが操作席81に着座して操作子82を操作すると、制御装置83が、操作子82の操作内容に応じた動作指令を、通信装置86を介してショベル10に送信する。これにより、ショベル10を遠隔操作することができる。表示装置84は、操作席81に着座したオペレータの視認可能な位置、例えばオペレータの正面に配置されている。表示装置84として、例えば3行3列に配置された9個のモニタからなるマルチディスプレイが用いられる。表示装置84には、ショベル10に搭載されたカメラで撮影された画像、例えばショベル10に搭乗したオペレータ視線で見た画像が映し出される。なお、表示装置84の一部に、ショベル10の周囲の俯瞰画像を表示するようにしてもよい。さらに、表示装置84には、ショベル10のアクチュエータの駆動情報や、オペレータに通知する種々のメッセージが表示される。
【0018】
制御装置83は、さらに、水分量測定装置23から取得した水分量分布情報に基づいて、図1に示したように、表示装置84の画面の一部の領域に、水分量の分布を画像として表示する。オペレータは、表示装置21に表示された水分量の分布を参考にしながら、ショベル10を遠隔から操作する。
【0019】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例によると、ショベル10を遠隔操作しているオペレータは、周囲の土壌の水分量に基づいて、より適切な操作を行うことができる。その結果、作業効率を高めることができる。
【0020】
例えば、水分量が多い地面を走行するとクローラが埋没し、走行不能な状態になる場合がある。オペレータは、水分量の多い場所を避けてショベル10を走行させることにより、走行不能な状態に陥ることを回避することができる。制御装置83は、土壌の水分量から、ショベル10の進入禁止区域を決定し、進入禁止区域の範囲を表示装置21に表示するようにするとよい。
【0021】
掘削対象の地面の硬さによって、バケットの先端を地面に接触させるときの好ましい角度が異なる。土壌の水分量は、地面の硬さを判断する重要な指標となる。掘削箇所の水分量に関する情報は、バケットを地面に挿入するときの好ましい角度を判断するための有益な情報になる。オペレータが、掘削箇所の水分量に応じてバケットの挿入角度を適切に調整して掘削作業を行うことにより、効率的な作業を行うことが可能になる。
【0022】
掘削対象の地面の硬さによって、バケットが受ける反力が変わる。バケットが受ける反力が大きくなると、ショベル10の浮き上がり等が発生し、挙動が不安定になる。掘削箇所の水分量は、バケットが受ける反力の大きさを推定する有益な情報になる。オペレータは、掘削箇所の水分量から反力を推定し、ショベル10の挙動が不安定にならないようにショベル10を遠隔操作することが可能になる。
【0023】
次に、本実施例の変形例によるショベル支援装置について説明する。
本実施例では、ショベル遠隔操作装置80の表示装置84に、土壌の水分量の分布を表す情報を表示しているが、ショベル10のキャビン内の表示装置に表示してもよい。この場合には、ショベル支援装置20の制御装置22は、ショベル10に搭載される。土壌の水分量の分布を表す情報をキャビン内の表示装置に表示すると、オペレータがキャビンに搭乗してショベル10を直接操作する場合に、作業の効率性を高めることができる。
【0024】
次に、図4図6を参照して、他の実施例によるショベルについて説明する。以下、図1図3を参照して説明した上記実施例によるショベル支援装置と共通の構成については説明を省略する。
【0025】
図4は、本実施例によるショベル10の機能の一部を示すブロック図である。図4において、機械的動力ラインを二重線で示し、高圧油圧ラインを太い実線で示し、パイロットラインを太い破線で示し、制御ラインを細い破線で示す。
【0026】
バッテリからの電力で駆動されるポンプ用電動機75が、制御装置60の制御下でメインポンプ70及びパイロットポンプ71を駆動する。なお、ポンプ用電動機75に代えて、内燃機関、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等を用いてもよい。
【0027】
メインポンプ70は、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ73に作動油を供給する。パイロットポンプ71は、パイロットラインを介して圧力制御弁72(例えば、比例弁)にパイロット圧を供給する。圧力制御弁72は、制御装置60の制御下で、動作指令に応じたパイロット圧をコントロールバルブ73に供給する。
【0028】
コントロールバルブ73は、メインポンプ70から供給される作動油を、圧力制御弁72からのパイロット圧に応じて、複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。複数の油圧アクチュエータには、ブームシリンダ50、アームシリンダ51、バケットシリンダ52、ブレードシリンダ53、走行油圧モータ54、55、及び旋回油圧モータ56が含まれる。例えば、コントロールバルブ73は、メインポンプ70から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向とを制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含む。
【0029】
ブームシリンダ50、アームシリンダ51、バケットシリンダ52は、それぞれショベル10のブームを上下方向に揺動させ、アームを前後方向に揺動させ、バケットを開閉させる。ブレードシリンダ53は、ショベル10のブレードを上下方向に揺動させる。走行油圧モータ54、55は、それぞれショベル10の左右のクローラを回転させる。旋回油圧モータ56は、ショベル10の上部旋回体を旋回させる。なお、旋回油圧モータ56に代えて、旋回電動機を用いてもよい。
【0030】
操作装置63が複数の操作レバー等の操作子を含む。ショベル10のキャビンに搭乗したオペレータが操作子を操作すると、操作内容に応じた電気信号が制御装置60に取り込まれる。
【0031】
ショベル10は、さらに、記憶装置61及び通信装置62を含む。記憶装置61には、制御装置60が実行するプログラム、ショベル10の制御に必要な種々のデータが格納されている。例えば、オペレータの操作に基づいてブームシリンダ50等のアクチュエータの動作内容を決めるルールが、記憶装置61記憶されている。制御装置60は、操作装置63の操作内容、及び記憶装置61に格納されているルールに基づいて圧力制御弁72を制御する。すなわち、ブームシリンダ50等のアクチュエータを制御する。制御装置60は、さらに、ショベル支援装置20の制御装置22(図1)の機能を実現する。通信装置62は、例えばショベル遠隔操作装置80(図3)とデータ通信を行う。
【0032】
次に、ショベル支援装置20としての機能について説明する。
制御装置60は、水分量測定装置23から水分量の分布の測定結果を取得し、記憶装置61に格納する。制御装置60が操作装置63から操作内容を取り込むと、水分量の分布の情報に基づいて、記憶装置61に予め格納されているルールを修正して、アクチュエータを駆動する。例えば、作業場所の水分量に応じてショベル10が適切な動作を行うように、ルールを修正する。
【0033】
次に、図5及び図6を参照して、掘削作業のルールを修正する一例について説明する。
図5は、掘削作業の操作が行われたときのアクチュエータの制御の手順を示すフローチャートである。掘削作業時には、まず、バケットの爪先を地面の上方から地面に向かって下降させる。制御装置60は一定の周期で、バケットの爪先から地面までの距離が、バケット高さの判定閾値以下か否かを判定する(ステップS1)。バケットの爪先から地面までの距離は、ブーム、アーム、及びバケットの姿勢を検出するセンサ、またはブームシリンダ、アームシリンダ、及びバケットシリンダの伸縮長を測定するセンサ等の測定結果を用いて計算することができる。
【0034】
バケットの爪先から地面までの距離が判定閾値より長い場合、処理を終了する。バケットの爪先から地面までの距離が判定閾値以下である場合、掘削箇所の土壌の水分量が、水分量の判定閾値以上か否かを判定する(ステップS2)。なお、バケットの爪先から地面までの距離が判定閾値以下になった場合、1回の掘削動作が終了するまで、ステップS1は実行しない。
【0035】
掘削箇所の土壌の水分量が、水分量の判定閾値以上である場合は、処理を終了する。すなわち、制御装置60は、記憶装置61に格納されているルールに基づいてアクチュエータを制御する。掘削箇所の土壌の水分量が、水分量の判定閾値未満である場合は、記憶装置61に格納されているルール、例えばバケットの移動軌跡のルールを修正してアクチュエータを制御する(ステップS3)。
【0036】
図6は、ルール修正前及び修正後のそれぞれのバケットの位置及び移動の軌跡の一例を示す模式図である。図6において、ルール修正前のバケット15の位置及び移動の軌跡を破線で示し、ルール修正後のバケット15の位置及び移動の軌跡を実線で示す。ルール修正前においては、バケット15が地面16に対して角度αを成す斜め方向から直線的に地面16に近づく。バケット15が地面に接触すると、地面16に対してバケット15の爪先のなす角度がαの条件で地面16に進入する。
【0037】
修正後のルールが適用された場合は、オペレータの操作が同一であっても、バケット15が地面16に対してほぼ垂直な角度αを成す方向から地面16に接近し、バケット15が地面に接触すると、地面16に対してバケット15の爪先のなす角度がαの条件で地面16に進入するように、バケット15の姿勢及び進入方向が修正される。
【0038】
次に、図6に示したようにバケット15の軌跡を修正する効果について説明する。
掘削箇所の水分量が少なくなり、掘削対象表面が硬くなると、掘削反力が増大する。掘削反力は、掘削深さが同一である条件の下で、地面16に対するバケット15の爪先の角度が90°のときに最小になる。掘削箇所の水分量が水分量の判定閾値未満の時に、オペレータが図6の破線で示した軌跡でバケット15を移動させる操作を行っても、制御装置60は、地面16に対するバケット15の爪先の角度を垂直に近づけるようにバケット15を移動させる。これにより、掘削反力が小さくなり、ショベル10の挙動の安定性を高めることができる。
【0039】
次に、本実施例の変形例によるショベル支援装置について説明する。
図4図6を参照して説明した実施例では、オペレータがショベル10に搭乗して、ショベル10のキャビン内の操作装置63(図4)を操作する場合について説明したが、上記実施例による技術的思想は、ショベル遠隔操作装置80(図3)からショベル10を遠隔操作するときにも適用することができる。さらに、ショベル10が、予め決められた作業計画に応じて、無人で自律運転される場合にも、上記実施例による技術的思想を適用することが可能である。
【0040】
次に、図7を参照して、さらに他の実施例によるショベルについて説明する。以下、図4図6を参照して説明した実施例によるショベルと共通の構成については説明を省略する。
【0041】
図7は、本実施例によるショベル10による作業を説明するための模式図である。ショベル10が、仮置きの土砂90をダンプトラック91まで搬送する作業を、自律的に行う。土砂の搬送の作業計画が、記憶装置61(図4)に格納されており、制御装置60(図4)が、作業計画に基づいて自律的にブームシリンダ50等のアクチュエータを制御する。
【0042】
一例として、作業計画では、仮置きの土砂90を搬送する順序が、図7において土砂90の山の左端から右端に向かうように設定されている。制御装置60は、土砂90の水分量の分布に基づいて、水分量が少ない箇所の土砂90を優先的に搬送するように、作業計画を修正する。例えば、水分量測定装置23(図4)による水分量分布の測定結果で、仮置きの土砂90の水分量が、土砂90の山の右端から左端に向かって多くなっている場合、土砂90の搬送の順序を、土砂90の山の右端から左端に向かうように作業計画を修正する。
【0043】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
土砂の水分量が多いと、単位体積当たりの土砂の重量が重くなる。重量が重い土砂をダンプトラック91に積載することは好ましくないため、当初の作業計画通りに作業を進める場合には、土砂90の左端の水分量が許容値以下になるまで、作業を開始することができない。これに対して本実施例では、作業開始まで待機することなく、水分量が相対的に少ない箇所の土砂から順番にダンプトラック91に積み込むことができる。
【0044】
次に、本実施例の変形例によるショベル支援装置について説明する。
図7では、仮置きの土砂90をダンプトラック91に搬送する作業について説明したが、自律運転によるその他の作業にも、本実施例による技術的思想を適用することができる。例えば、広いエリア内の作業場所まで走行する場合に、当初の作業計画で設定されている走行ルートに土砂の水分量が多い場所が存在すると、水分量が多い場所を避けるように走行ルートを修正するとよい。これにより、ショベル10がぬかるみにはまって走行不能になる事態を回避することができる。
【0045】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0046】
10 ショベル
10A ショベルのアイコン
15 バケット
16 地面
20 ショベル支援装置
21 表示装置
22 制御装置
23 水分量測定装置
24 小型無人航空機
30 観測エリア
50 ブームシリンダ
51 アームシリンダ
52 バケットシリンダ
53 ブレードシリンダ
54、55 走行油圧モータ
56 旋回油圧モータ
60 制御装置
61 記憶装置
62 通信装置
63 操作装置
70 メインポンプ
71 パイロットポンプ
72 圧力制御弁
73 コントロールバルブ
75 ポンプ用電動機
80 ショベル遠隔操作装置
81 操作席
82 操作子
83 制御装置
84 表示装置
86 通信装置
90 仮置きの土砂
91 ダンプトラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7