(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070495
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電気機械変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 17/02 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H04R17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181027
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(71)【出願人】
【識別番号】000173728
【氏名又は名称】一般財団法人小林理学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】大久保 則男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正哉
(72)【発明者】
【氏名】安野 功修
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004DD03
5D004DD04
5D004FF07
(57)【要約】
【課題】薄型で品質の安定した電気機械変換器の提供。
【解決手段】電気機械変換器10においては、錘13の付いた圧電素子12が基板11上に配置され、2個の対向するスペーサ板14が圧電素子12及び錘13を両側から挟み込んだ状態で、シートフィルム15がこれら全体を包み込んでいる。スペーサ板14は、圧電素子12及び錘13の合計高さよりも高く、また、奥行方向の寸法D
14は、圧電素子12及び錘13の奥行方向の寸法D
13より大きく設計されているため、圧電素子12及び錘13とシートフィルム15との間には空間が確保される。したがって、圧電素子12に対し錘13による荷重のみを掛けることができ、シートフィルム15が環境要因の影響や経時変化等により伸縮しても電気機械変換器10の性能には影響しないため、品質を安定させることができる。また、スペーサ14を備えていても、実用の観点からみて十分な薄さを実現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を電気信号に変換する電気機械変換器であって、
平板状又はシート状の基板と、
前記基板上に設けられる圧電素子と、
前記圧電素子が配置される空間を前記電気機械変換器の外部の環境から遮断するフィルムと、
前記圧電素子を前記フィルムの干渉から保護する構造物と
を備えた電気機械変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記構造物は、
前記基板上に設けられ、自己が囲み又は挟む内部空間に前記圧電素子全体を収めるスペーサであり、
前記フィルムは、
少なくとも前記スペーサの上部を覆うことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械変換器において、
前記内部空間に設けられ、前記圧電素子の出力をインピーダンス変換する変換器
をさらに備えた電気機械変換器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電気機械変換器において、
前記圧電素子に重ねて取り付けられる錘をさらに備え、
前記スペーサは、
前記錘を前記内部空間に収めることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機械変換器において、
前記錘は、
前記電気機械変換器の周波数特性に対応した質量を有していることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項6】
請求項2に記載の電気機械変換器において、
前記圧電素子に重ねて取り付けられ、前記圧電素子に荷重を掛ける錘に前記圧電素子の出力をインピーダンス変換する変換器が一体化した兼用錘をさらに備え、
前記スペーサは、
前記兼用錘を前記内部空間に収めることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項7】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記構造物は、
前記圧電素子の上面全体を被覆可能な大きさを有し、前記圧電素子に重ねて取り付けられる錘であり、
前記フィルムは、
前記圧電素子及び前記錘が設けられた前記基板全体を包み込むことを特徴とする電気機械変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械振動を電気信号に変換する電気機械変換器に関し、特に、センサやマイクロホンとして用いられる電気機械変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子をセンサとして使用する場合には、圧電素子に錘を載せて荷重を掛けることや圧電素子に曲げ等の変形を起こさせて圧電素子から電荷を取り出すことが行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子に対し錘の荷重を掛ける振動センサの一例が開示されている。この振動センサは、密閉したケースの内部において錘の上下に圧電素子が接合され、上下で反対向きの起電力が生じるように構成されており、センサの出力を受ける装置側で一方の正負を反転して加算することで、センサの出力を装置に送る際に生じうるノイズの影響を低減するものである。
【0004】
また、
図8には、圧電素子の変形を利用した従来技術としての加速度センサの一例が示されている。このうち(A)は、錘付きのセンサ及び錘のないセンサの各斜視図であり、(B)は、錘付きのセンサの垂直断面図である。これらの加速度センサにおいては、圧電素子を取り付けた基板全体をラミネート加工して圧電素子を保護している。錘付きのセンサは、基板の端部に設けられた錘が片持ち梁として全体を振動させ、その振動を受けて圧電素子が変形する際の圧電素子の出力を利用するものである。また、錘のないセンサは、外部からの物体の接触や衝突等に応じて圧電素子が変形する際の圧電素子の出力を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の振動センサは、錘の上下に圧電素子を配置する構造であるため、構造が大きくなるという問題がある。また、上記の加速度センサは、ラミネート加工の圧着によりラミネートフィルムが圧電素子に掛ける圧力を均一にすることが難しく、均一の品質を有した製品を作ることが困難である上に、経時変化や環境の影響によりラミネートフィルムが伸縮して、振動子に掛ける圧力が変化するという問題がある。これらの問題は、構造の大きさ、及び、ラミネートフィルムの圧電素子への影響の観点で捉えれば、錘を備えない電気機械変換器にも共通するものである。
【0007】
そこで、本発明は、薄型で品質の安定した電気機械変換器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の電気機械変換器を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
すなわち、本発明の電気機械変換器は、振動を電気信号に変換する電気機械変換器であって、平板状又はシート状の基板と、基板上に設けられる圧電素子と、圧電素子が配置される空間を電気機械変換器の外部の環境から遮断するフィルムと、圧電素子をフィルムの干渉から保護する構造物とを備えている(第1態様)。例えば、構造物は、基板上に設けられ、自己が囲み又は挟む内部空間に圧電素子全体を収めるスペーサであり、フィルムは、少なくともスペーサの上部を覆う(第2態様)。
【0010】
この態様の電気機械変換器によれば、スペーサが取り囲む空間又は挟み込む空間に圧電素子全体が収められるため、スペーサは圧電素子とフィルムとの間に空間を確保して、圧電素子をフィルムの干渉から保護することができる。このような構造においては、フィルムが環境要因の影響や経時変化により伸縮しても、電気機械変換器の性能には影響することはない。したがって、この態様の電気機械変換器は、品質の安定したものとなる。また、この態様の電気機械変換器は、スペーサを備えてはいるものの、実用の観点からみて十分な薄さを実現することができる。
【0011】
また、上述した態様の電気機械変換器において、上記の内部空間に設けられ、圧電素子の出力をインピーダンス変換する変換器をさらに備えていてもよい。
【0012】
外部の環境から遮蔽されていない空間でインピーダンス変換する場合には、その経路で寄生容量(浮遊容量)を持ってしまい、感度の低下やノイズを受け易くなることがある。この態様の電気機械変換器によれば、変換器が電気機械変換器の外部の環境から遮断された空間に設けられるため、変換器に与えうる外部の環境要因の影響を抑制することができ、電気機械変換器の性能を向上させることが可能となる。
【0013】
より好ましくは、上述したいずれかの態様の電気機械変換器において、圧電素子に重ねて取り付けられる錘をさらに備え、スペーサは、錘を上記の内部空間に収める。また、錘は、電気機械変換器の周波数特性に対応した質量を有している。
【0014】
この態様の電気機械変換器においては、錘の質量が電気機械変換器の周波数特性に対応している。見方を変えると、この態様の電気機械変換器を製造する際には、採用する錘の質量を変えることにより、電気機械変換器の周波数特性(周波数範囲)を調整することができる。この態様の電気機械変換器は、例えば加速度センサとしての使用が可能である。
【0015】
さらに好ましくは、上述した第2態様の電気機械変換器において、圧電素子に重ねて取り付けられ、圧電素子に荷重を掛ける錘に圧電素子の出力をインピーダンス変換する変換器が一体化した兼用錘をさらに備え、スペーサは、兼用錘を上記の内部空間に収める。
【0016】
この態様の電気機械変換器によれば、変換器が錘と一体化されていることから、単体としての変換器を配置する空間が不要となるため、電気機械変換器をさらに小型化することができる。
【0017】
また、好ましくは、上述した第1態様の電気機械変換器において、構造物は、圧電素子の上面全体を被覆可能な大きさを有し、圧電素子に重ねて取り付けられる錘であり、フィルムは、圧電素子及び錘が設けられた基板全体を包み込む。
【0018】
この態様の電気機械変換器によれば、錘が圧電素子の上面全体を覆うことにより圧電素子をフィルムの干渉から保護するため、スペーサを設けることなく圧電素子を保護することができ、電気機械変換器の小型化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の電気機械変換器によれば、薄型で品質の安定した電気機械変換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の電気機械変換器10を示す斜視図及び平面図である。
【
図2】電気機械変換器10の垂直断面図(
図1中のII-II線に沿う断面図)である。
【
図3】第2実施形態の電気機械変換器20を示す断面図である。
【
図4】第3実施形態の電気機械変換器30を示す斜視図及び平面図である。
【
図5】電気機械変換器30の垂直断面図(
図4中のV-V線に沿う断面図)である。
【
図6】第4実施形態の電気機械変換器40を示す断面図である。
【
図7】第5実施形態の電気機械変換器50を示す斜視図及び垂直断面図(
図7中のVII-VII線に沿う断面図)である。
【
図8】従来技術の加速度センサを示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、発明の理解を容易とするために、図面においては構成部品の寸法を誇張して表しており、各部品における高さ(厚み)、幅、奥行きの相対比や部品間の大きさの相対比等は、実際のものには対応していない。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2を参照しながら、第1実施形態の電気機械変換器10の構造を説明する。
図1は、電気機械変換器10の斜視図及び平面図であり、
図2は、電気機械変換器10の垂直断面図(
図1中のII-II線に沿う断面図)である。
【0023】
電気機械変換器10は、主に、平板状の基板11と、基板11の上に配置される圧電素子12と、圧電素子12に重ねるようにして取り付けられる錘13と、圧電素子12及び錘13を水平方向(厚み方向に直交する所定の方向)の両側から挟み込む2個のスペーサ板14と、これら全体を包み込んで内部に密閉された空間を形成するシートフィルム15とで構成される。シートフィルムの材料には耐環境性のある高分子材料が適しており、例えばPET材が望ましい。また、性能及び信頼性の確保として、シートフィルムでのラミネート工法が考えられる。シートフィルムは、質量やテンションで決まる共振周波数が測定上限周波数以上になるように設定している必要がある。
【0024】
図1中(A)に示されるように、錘13の水平方向の形状は、圧電素子12に対し効率よく荷重を掛けられるよう、圧電素子12と略同一の形状に設計されている。また、
図1中(B)に示されるように、スペーサ板14の奥行方向の寸法D
14は、圧電素子12及び錘13の奥行方向の寸法D
13より大きく設計されており、
図2に示されるように、スペーサ板14の高さは、圧電素子12及び錘13を重ね合わせた高さよりも高く設計されている。
【0025】
スペーサ板14をこのような大きさとすることで、錘13の付いた圧電素子12全体を2個のスペーサ板14の間に形成される空間内に収めることができる。これにより、全体を包み込むシートフィルム15は、2個のスペーサ板の上端面に接して錘13の付いた圧電素子12が収められた空間の上部を覆うこととなり、錘13の付いた圧電素子12からは常に離れた状態となる。
【0026】
見方を変えると、第1実施形態においては、スペーサが2個のスペーサ板14で構成されており、対向する2個のスペーサ板14の間に形成される空間(2個のスペーサ板14が区画する空間)に錘13の付いた圧電素子12全体を収めることで、スペーサが圧電素子12をシートフィルム15の干渉から保護している。
【0027】
図示されていないが、圧電素子12のグランド(以下、「GND」と称する。)及び出力端子は、基板11の底部又は端部に引き出されている。圧電素子12、錘13、スペーサ板14が取り付けられた基板11をシートフィルム15で包む際には、引き出されたGND及び出力端子を塞がないようシートフィルム15に孔を設け、孔の周囲においては基板11とシートフィルム15とを密着させる。これにより、シートフィルム15に包まれる空間を外部の環境から遮断して気密性を保持することができる。
【0028】
なお、基板11の底面(圧電素子12が配置される面と反対側の面)に、補強のために薄い金属の板等を取り付けてもよい。また、基板11として、高分子等で形成されたシートフィルムを用いてもよいし、シートフィルム15と同じ材質又は異なる材質のシートフィルムを用いてもよい。
【0029】
電気機械変換器10は、例えば、加速度センサとして使用することができる。上述したように、電気機械変換器10においては、シートフィルム15が圧電素子12に干渉しないことから、圧電素子12に対し錘13による荷重のみを掛けることができ、シートフィルム15が温度や湿度等の環境要因の影響又は経時変化により伸縮しても、センサの性能には影響しないため、品質の安定したセンサを製造することができる。
【0030】
また、電気機械変換器10の構造によれば、上述した従来技術のセンサ(
図8)に比較すれば多少厚みは増すものの、実用の観点からみて十分な薄さを実現することができる。
【0031】
さらに、電気機械変換器10をセンサとして使用する場合には、錘13の質量を変えることにより、センサの周波数特性を調整することができる。
【0032】
ところで、図示を省略するが、電気機械変換器10から錘13をなくす、或いは錘の質量を調節することにより、本構造の電気機械変換器は、シートフィルム15と圧電素子12との間の空気層を前室としシートフィルム15が振動膜として作用するマイクロホンとして使用することができる。このような構造のマイクロホンは、シートフィルム15が温度や湿度等の環境要因又は経時変化により伸縮しても、マイクロホンの性能には影響しないため、品質の安定したマイクロホンを製造することができる。また、スペーサと圧電素子との間に形成される空隙は、共振周波数が最高可聴周波数以上になるように、極力薄くするとよい。
【0033】
〔第2実施形態〕
図3は、第2実施形態の電気機械変換器20を示す断面図である。
第2実施形態の電気機械変換器20は、上述した第1実施形態の電気機械変換器10(
図1及び
図2)を変形させたものであり、2個のスペーサ板の間にさらにインピーダンス変換器が配置される点において電気機械変換器10と異なっており、これに関連して一部の構成部品の寸法も異なっている。なお、電気機械変換器10と共通する点については、適宜説明を省略する。また、インピーダンス変換器の内部構造の図示を省略する。
【0034】
電気機械変換器10(
図2)と比較すると、電気機械変換器20においては、2個のスペーサ板14の間隔がより大きく確保され、錘13の付いた圧電素子12と一方のスペーサ板14との間にインピーダンス変換器26が配置されており、その分だけ、基板21及びシートフィルム25の寸法がより大きくなっている。
【0035】
スペーサ板14は、圧電素子12及び錘13を重ね合わせた高さよりも高く、かつ、インピーダンス変換器26の高さよりも高い。また、図示を省略しているが、スペーサ板14の奥行方向の寸法は、圧電素子12及び錘13の奥行方向の寸法よりも大きく、かつ、インピーダンス変換器26の奥行方向の寸法よりも大きい。したがって、シートフィルム25は、圧電素子12及び錘13に加えインピーダンス変換器26にも干渉しない。
【0036】
図示されていないが、圧電素子12のGND及び出力端子は、インピーダンス変換器26に接続されており、インピーダンス変換器26のGND及び出力端子は、基板21の底部又は端部に引き出されている。圧電素子12、錘13、スペーサ板14、インピーダンス変換器26が取り付けられた基板21をシートフィルム25で包む際には、引き出されたGND及び出力端子を塞がないようシートフィルム25に孔を設け、孔の周囲においては基板21とシートフィルム25とを密着させる。これにより、シートフィルム25に包まれる空間を外部の環境から遮断して気密性を保持することができる。
【0037】
電気機械変換器20においては、インピーダンス変換器26が密閉空間に収容されるため、インピーダンス変換器26に与えうる外部の環境要因(例えば、湿度変化や急激な温度変化等)の影響を抑制することができ、電気機械変換器20の性能を向上させることが可能となる。
【0038】
また、電気機械変換器20において、インピーダンス変換器26を錘13と一体化させた部品(兼用錘)を設け、錘13に代えてこの部品を圧電素子12の上に重ねれば、この部品はインピーダンス変換器を兼ねることから、単体としてのインピーダンス変換器を配置する空間が不要となるため、電気機械変換器をさらに小型化することができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
続いて、
図4及び
図5を参照しながら、第3実施形態の電気機械変換器30の構造を説明する。
図4は、電気機械変換器30の斜視図及び平面図であり、
図5は、電気機械変換器30の垂直断面図(
図4中のV-V線に沿う断面図)である。
【0040】
第3実施形態の電気機械変換器30は、上述した第1実施形態の電気機械変換器10を変形させたものであり、2個のスペーサ板で構成されるスペーサに代えて、筒形のスペーサを採用している点において電気機械変換器10と異なっている。なお、電気機械変換器10と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0041】
電気機械変換器30は、主に、平板状の基板31と、基板31の上に配置される圧電素子32と、圧電素子32に重ねるようにして取り付けられる錘33と、圧電素子32及び錘33の周囲を取り囲む(圧電素子32及び錘33の厚み方向に直交する面を取り囲む)筒形スペーサ34と、筒形スペーサ34の上端面に貼り付けられて筒形スペーサ34の上端部を塞ぐシートフィルム35とで構成される。
【0042】
図4に示されるように、筒形スペーサ34は、筒状(図示の例においては、角筒状)の形状をなしており、その内側に延びる中空部に圧電素子32及び錘33を収めるようにして基板31に固定されている。なお、図示の例においては、筒形スペーサ34が圧電素子32及び錘33の周囲を隙間なく取り囲んでいるが、圧電素子32及び錘33と筒形スペーサ34との間には隙間を設けてもよい。
【0043】
図5に示されるように、筒形スペーサ34の高さは、圧電素子32及び錘33を重ね合わせた高さよりも高く設計されている。また、シートフィルム35は、そのような筒形スペーサ34の上端面に貼り付けられているため、錘33の付いた圧電素子32からは常に離れた状態となる。
【0044】
見方を変えると、第3実施形態においては、筒形スペーサ34がその中空部34a(筒形スペーサ34の内部に形成される空間、筒形スペーサ34が区画する空間)に錘33の付いた圧電素子32を収容することで、圧電素子32をシートフィルム35の干渉から保護している。また、筒形スペーサ34の下端部が基板31に塞がれるとともに上端部がシートフィルム35に塞がれることで、筒形スペーサの中空部34aは外部の環境から遮断される。
【0045】
図示されていないが、圧電素子32のGND及び出力端子は、基板31の底部又は端部に引き出されている。なお、筒形スペーサ34の上端部をシートフィルム35で塞ぐのに代えて、第1実施形態と同様に、錘33の付いた圧電素子32及び筒形スペーサ34が固定された基板31全体をシートフィルムで包み込んで内部に密閉空間を形成してもよい。その場合には、引き出されたGND及び出力端子を塞がないようシートフィルム35に孔を設け、孔の周囲においては基板31とシートフィルム35とを密着させる。
【0046】
〔第4実施形態〕
図6は、第4実施形態の電気機械変換器40を示す断面図である。
第4実施形態の電気機械変換器40は、上述した第3実施形態の電気機械変換器30(
図4及び
図5)を変形させたものであり、筒形スペーサの中空部にさらにインピーダンス変換器が配置される点において電気機械変換器30と異なっており、これに関連して一部の構成部品の寸法も異なっている。また、第4実施形態の電気機械変換器40は、上述した第2実施形態の電気機械変換器20(
図3)を変形させたものと捉えることもでき、電気機械変換器20とは、2個のスペーサ板で構成されるスペーサに代えて、筒形のスペーサを採用している点において異なっている。なお、電気機械変換器20,30と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0047】
電気機械変換器30(
図5)と比較すると、電気機械変換器40においては、筒形スペーサ44の幅方向の寸法(より正確には、中空部44aの寸法)がより大きく確保され、錘33の付いた圧電素子32の隣にインピーダンス変換器46が配置されており、その分だけ、基板41及びシートフィルム45の寸法がより大きくなっている。
【0048】
筒形スペーサ44は、圧電素子32及び錘33を重ね合わせた高さよりも高く、かつ、インピーダンス変換器46の高さよりも高い。したがって、シートフィルム45は、圧電素子32及び錘33に加えインピーダンス変換器46にも干渉しない。また、筒形スペーサ44の下端部が基板41に塞がれるとともに上端部がシートフィルム45に塞がれることで、筒形スペーサの中空部44aは外部の環境から遮断される。このような構造によっても、上述した第2実施形態の電気機械変換器20(
図3)と同様の効果を得ることができる。
【0049】
図示されていないが、圧電素子42のGND及び出力端子は、インピーダンス変換器46に接続されており、インピーダンス変換器46のGND及び出力端子は、基板41の底部又は端部に引き出されている。
【0050】
なお、筒形スペーサ44の上部をシートフィルム45で塞ぐのに代えて、第2実施形態と同様に、錘33の付いた圧電素子32、インピーダンス変換器46及び筒形スペーサ44が固定された基板41全体をシートフィルムで包み込んで内部に密閉空間を形成してもよい。このような構成とすることで、筒形スペーサ44の中空部をより確実に外部環境から遮断して、インピーダンス変換器46に与えうる外部の環境要因の影響をより確実に抑制することができる。
【0051】
〔第5実施形態〕
最後に、
図7を参照しながら、第5実施形態の電気機械変換器50の構造を説明する。
図7中(A)は、電気機械変換器50の斜視図であり、
図7中(B)は、電気機械変換器50の垂直断面図(
図7中(A)のVII-VII線に沿う断面図)である。
【0052】
上述した第1~第4実施形態の電気機械変換器は、いずれも基板上にスペーサが設けられており、スペーサが圧電素子を挟む又は囲むことにより、圧電素子をシートフィルムの干渉から保護していた。これに対し、第5実施形態の電気機械変換器50は、基板上にスペーサが設けられておらず、その代わりに、錘が圧電素子をシートフィルムの干渉から保護する役割を兼ねている点に特徴を有している。
【0053】
電気機械変換器50は、主に、平板状の基板51と、基板51の上に配置される圧電素子52と、圧電素子52に重ねるようにして取り付けられる錘53と、これら全体を包み込んで内部に密閉された空間を形成するシートフィルム55とで構成される。
【0054】
図7中(A)に示されるように、錘53の水平方向の形状は、圧電素子52に対し効率よく荷重を掛けられるよう、圧電素子52と略同一の形状に設計されており、圧電素子52の上に錘53がぴたりと重ね合わされることにより、圧電素子52の上面が錘53により完全に覆われている。なお、錘53の水平方向の形状は、圧電素子52の水平方向の形状よりひと回り大きくした形状としてもよい。これにより、圧電素子52をシートフィルム15の干渉から一段と確実に保護することが可能となる。
【0055】
また、基板51は、圧電素子52及び錘53よりも大きいため、これら全体をシートフィルム55で包み込むと、
図7中(B)に示されるように、圧電素子52の側面の周辺には空間が生じ、シートフィルム55は圧電素子52から常に離れた状態となる。このような構造により、上述した第1及び第3実施形態の電気機械変換器10(
図1-2),30(
図4-5)と同様の効果を得ることができる。また、錘53に代えて、錘にインピーダンス変換器を一体化させた部品(兼用錘)を採用し、そのような兼用錘を圧電素子52の上に取り付けた構造とすることにより、上述した第2及び第4実施形態の電気機械変換器20(
図3),40(
図6)と同様の効果を得ることができる。
【0056】
〔本発明の優位性〕
以上のように、上述した各実施形態の電気機械変換器によれば、以下のような効果が得られる。
【0057】
(1)第1~第4実施形態においては、スペーサにより挟まれ又は囲まれる内部空間に圧電素子が収められるため、シートフィルムが圧電素子に干渉する(接触して圧を加える)のを防ぐことができる。これにより、シートフィルムが環境要因の影響や経時変化等により伸縮しても電気機械変換器の性能には影響しないため、品質の安定した電気機械変換器を製造することができる。また、スペーサを備えた電気機械変換器であっても、実用の観点からみて十分な薄さを実現することができる。
【0058】
(2)センサとして使用される電気機械変換器を製造する場合には、採用する錘の質量を変えることにより、センサの周波数特性を調整することができる。
【0059】
(3)第2及び第4実施形態においては、インピーダンス変換器が外部の環境から遮断された空間に配置されるため、インピーダンス変換器に与えうる外部の環境要因の影響を抑制することができ、電気機械変換器の性能を向上させることが可能となる。
【0060】
(4)第2及び第4実施形態において、インピーダンス変換器を錘に一体化させた部品を設け圧電素子に重ねて取り付けることにより、単体としてのインピーダンス変換器を配置する空間が不要となるため、電気機械変換器をさらに小型化することができる。
【0061】
(5)第5実施形態においては、錘が圧電素子の上面全体を覆うことにより圧電素子をシートフィルムの干渉から保護するため、スペーサが不要となり、その分だけ電気機械変換器を小型化することができる。
【0062】
(6)上述した従来技術のセンサにおいては、圧電定数d31という長さ方向の力の変化と電荷変化との間を結びつける係数を利用していることから、片持ち梁形状の構造となり、結果として構造が大きくなっていたのに対し、第1~第5実施形態においては、圧電定数d33という厚さ方向の力の変化と電荷変化との間を結びつける係数を圧電素子に利用しており、圧電素子上に錘を載せる構造であるため、小型化が可能である。
【0063】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0064】
上述した各実施形態においては、基板、圧電素子及び錘をいずれも略矩形の平板形状としているが、基板、圧電素子及び錘の形状はこれに限定されず、状況に応じて適宜変更が可能である。また、各実施形態においては、透明のシートフィルムを用いているが、シートフィルムは透明でなくてもよい。
【0065】
上述した第3及び第4実施形態においては、スペーサを角筒状の形状としているが、これらの実施形態におけるスペーサは筒状であればよく、例えば、角筒状に代えて円筒状又は楕円筒状の形状としてもよい。
【0066】
上述した第1及び第2実施形態においては、スペーサが2個のスペーサ板で構成され、対向する2個のスペーサ板で錘の付いた圧電素子を挟み込んでいるが、これに代えて、スペーサを3個以上のスペーサ板で構成し、錘の付いた圧電素子を取り囲むようにしてその周囲にスペーサ板を断続的又は連続的に配置してもよい。
【0067】
その他、電気機械変換器10,20,30,40,50に関する説明の過程で挙げた構成や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
10,20,30,40,50 電気機械変換器
11,21,31,41,51 基板
12, 32, 52 圧電素子
13, 33, 53 錘
14, 34,44 スペーサ
15,25,35,45,55 シートフィルム
26, 46 インピーダンス変換器