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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070498
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/28 20060101AFI20240516BHJP
   B65H 57/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B65H57/28
B65H57/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181031
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】竹島 載佳
【テーマコード(参考)】
3F110
【Fターム(参考)】
3F110CA05
3F110DA07
3F110DB08
3F110DB18
(57)【要約】
【課題】糸貯留装置から供給部側への糸の案内と糸貯留装置への糸の案内を適切に行う。
【解決手段】ワインダユニット2は、糸Yを供給する給糸部6と、供給された糸Yを貯留する糸貯留装置40と、糸Yを巻き取ってパッケージ30を形成するパッケージ形成部8と、糸継ぎをする糸継装置14と、糸Yを糸貯留装置40に案内し、糸貯留装置40から給糸部6へ向かう方向に空気を噴出することにより糸貯留装置40に貯留された糸Yを引き出して噴出することで、糸Yを糸継装置14まで案内する糸噴出部60と、糸Yを糸貯留装置40に案内する際の糸案内位置と、糸貯留装置40に貯留された糸Yを引き出する際の糸引出し位置と、に糸噴出部60を移動させる移動部90と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給する供給部と、
前記供給部から供給された糸を貯留する糸貯留装置と、
前記糸貯留装置に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記供給部と前記糸貯留装置との間で糸が分断された時に、前記供給部側の糸と、前記糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする糸継装置と、
前記供給部から供給された糸を前記糸貯留装置に案内し、前記糸貯留装置から前記供給部へ向かう方向に空気を噴出することにより前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記供給部側に噴出することで当該糸を前記糸継装置まで案内する糸噴出部と、
前記供給部から供給された糸を前記糸貯留装置に案内する際の糸案内位置と、前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記供給部側に噴出する際の糸引出し位置と、に前記糸噴出部を移動させる移動部と、
を有する、糸巻取装置。
【請求項2】
前記糸案内位置は、Z撚り糸を前記糸貯留装置に案内する第1位置と、S撚り糸を前記糸貯留装置に案内する第2位置と、を含む、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記第1位置と前記第2位置は、前記糸貯留装置の中心に対して線対称の関係にある、請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記糸引出し位置は、前記第1位置と前記第2位置との中間の第3位置である、請求項2又は3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記糸引出し位置は、Z撚り糸を前記糸貯留装置から引き出す第4位置と、S撚り糸を前記糸貯留装置から引き出す第5位置と、を含む、請求項1~3のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記糸貯留装置は、糸を巻き取って貯留する貯留ローラを有し、
前記糸案内位置は、前記糸噴出部の前記糸貯留装置側の端部が、当該端部から前記貯留ローラの側面への接線に対して前記糸貯留装置よりも外側に向いた位置である、請求項1~5のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記移動部は、
第1軸周りに回転可能なカムと、
一端が前記カムの側面に当接し、他端が第2軸周りに回転可能に固定され、前記カムの回転に従って前記第2軸回りに回転する第1アームと、
一端に前記糸噴出部が固定され、他端が前記第1アームの他端とともに前記第2軸回りに回転可能に固定され、前記第1アームの回転に従って前記糸噴出部を前記糸案内位置と前記糸引出し位置とに移動させる第2アームと、
を有する、請求項1~6のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記カムの原点位置に前記第1アームの一端が当接しているときに、前記糸噴出部は、Z撚り糸を前記糸貯留装置に案内する第1位置に位置している、請求項7に記載の糸巻取装置。
【請求項9】
前記移動部は、
前記カムを第1方向に回転させることで、前記糸引出し位置から前記糸噴出部がZ撚り糸を前記糸貯留装置に案内する第1位置へと前記糸噴出部を移動させ、
前記カムを前記第1方向とは逆方向の第2方向に回転させることで、前記糸引出し位置から前記糸噴出部がS撚り糸を前記糸貯留装置に案内する第2位置へと前記糸噴出部を移動させる、請求項7又は8に記載の糸巻取装置。
【請求項10】
前記供給部は、給糸ボビンから解舒された糸を供給する、請求項1~9のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項11】
前記供給部は、空気の力により紡績された糸を供給する、請求項1~9のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項12】
前記供給部は、ローターの回転力により紡績された糸を供給する、請求項1~9のいずれかに記載の糸巻取装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸ボビンが支持される給糸部と、給糸部に支持された給糸ボビンから糸を解舒し、解舒した糸を巻き取る糸貯留装置と、給糸ボビン側の糸の糸端と糸貯留装置側の糸の糸端との糸継ぎを行う糸継装置と、糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取部と、を備える糸巻取装置が知られている。この糸巻取装置には、給糸ボビンと糸貯留装置との間で糸が分断状態となった場合に、糸貯留装置側の糸を捕捉して糸の案内経路へ吹き飛ばすことで、糸を当該案内経路に沿って引き出して、捕捉部に捕捉させる吹送り部(エアサッカー装置)が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-077949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の吹送り部は、給糸ボビンから解舒された糸を糸貯留装置に案内するために用いられることもある。糸貯留装置側の糸を捕捉して供給部側へ吹き飛ばす際の吹送り部の最適位置と、糸を糸貯留装置に案内する際の最適位置とは異なる一方で、従来の糸巻取装置では、吹送り部は所定位置に固定され移動可能となっていなかった。そのため、糸貯留装置側の糸を捕捉して案内経路へ吹き飛ばす際、及び/又は、糸を糸貯留装置に案内する際に、吹送り部が最適位置に配置されず、糸の案内が適切に行われない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、糸貯留装置を有する糸巻取装置において、糸貯留装置から供給部側への糸の案内、及び、糸貯留装置への糸の案内を適切に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一態様に係る糸巻取装置は、供給部と、糸貯留装置と、巻取部と、糸継装置と、糸噴出部と、移動部と、を備える。供給部は、糸を供給する。糸貯留装置は、供給部から供給された糸を貯留する。巻取部は、糸貯留装置に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する。糸継装置は、供給部と糸貯留装置との間で糸が分断された時に、供給部側の糸と、糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする。
【0007】
糸噴出部は、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する。また、糸噴出部は、糸貯留装置から供給部へ向かう方向に空気を噴出することにより糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出することで、当該糸を糸継装置まで案内する。移動部は、糸案内位置と糸引出し位置とに糸噴出部を移動させる。糸案内位置は、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する際の糸噴出部の位置である。糸引出し位置は、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する際の糸噴出部の位置である。
【0008】
上記の糸巻取装置では、移動部が、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する位置である糸案内位置と、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する位置である糸引出し位置と、に糸噴出部を移動させる。このように、糸巻取装置では、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する際の最適位置と、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する際の最適位置と、に糸噴出部を移動できるので、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0009】
上記の糸巻取装置において、糸案内位置は、Z撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置と、S撚り糸を糸貯留装置に案内する第2位置と、を含んでもよい。これにより、異なる撚り(Z撚り、S撚り)の糸を、糸貯留装置へ適切に案内できる。
【0010】
上記の糸巻取装置において、第1位置と第2位置は、糸貯留装置の中心に対して線対称の関係にあってもよい。これにより、第1位置と第2位置を適切に設定できる。
【0011】
上記の糸巻取装置において、糸引出し位置は、第1位置と第2位置との中間の第3位置であってもよい。これにより、適切な糸引出し位置を設定できる。
【0012】
上記の糸巻取装置において、糸引出し位置は、Z撚り糸を糸貯留装置から引き出す第4位置と、S撚り糸を糸貯留装置から引き出す第5位置と、を含んでもよい。これにより、糸の撚りに応じた適切な糸引出し位置を設定できる。
【0013】
上記の糸巻取装置において、糸貯留装置は、貯留ローラを有してもよい。貯留ローラは、糸を巻き取って貯留する。この場合、糸案内位置は、糸噴出部の糸貯留装置側の端部が、当該端部から貯留ローラの側面への接線に対して糸貯留装置よりも外側に向いた位置であってもよい。これにより、糸が切断したときに、切断された糸が糸貯留装置(貯留ローラ)に当たることを防止して、適切に糸を案内できる。
【0014】
上記の糸巻取装置において、移動部は、カムと、第1アームと、第2アームと、を有してもよい。カムは、第1軸周りに回転可能となっている。第1アームは、一端がカムの側面に当接し、他端が第2軸周りに回転可能に固定され、カムの回転に従って第2軸回りに回転する。第2アームは、一端に糸噴出部が固定され、他端が第1アームの他端とともに第2軸回りに回転可能に固定される。第2アームは、第1アームの回転に従って糸噴出部を糸案内位置と糸引出し位置とに移動させる。これにより、糸噴出部を、糸案内位置と糸引出し位置とを適切に移動できる。
【0015】
上記の糸巻取装置において、カムの原点位置に第1アームの一端が当接しているときに、糸噴出部は、Z撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置に位置していてもよい。これにより、糸噴出部を移動させる頻度が比較的大きい位置を原点とすることで、糸噴出部の制御が容易になる。
【0016】
上記の糸巻取装置において、移動部は、カムを第1方向に回転させることで、糸引出し位置から糸噴出部がZ撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置へと糸噴出部を移動させてもよい。また、カムを第1方向とは逆方向の第2方向に回転させることで、糸引出し位置から糸噴出部がS撚り糸を糸貯留装置に案内する第2位置へと糸噴出部を移動させてもよい。これにより、糸噴出部の制御が容易になる。
【0017】
上記の糸巻取装置において、供給部は、給糸ボビンから解舒された糸を供給してもよい。これにより、糸貯留装置を有する自動ワインダにおいて、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0018】
供給部は、空気の力により紡績された糸を供給してもよい。これにより、糸貯留貯蔵装置を有する空気紡績機において、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0019】
供給部は、ローターの回転力により紡績された糸を供給してもよい。これにより、糸貯留装置を有するオープンエンド紡績機において、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する際の最適位置と、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する際の最適位置と、に糸噴出部を移動可能とすることで、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】自動ワインダの構成を示す図。
図2】ワインダユニットの構成を示す図。
図3】糸貯留装置の拡大図。
図4A】糸貯留装置と検出部との配置関係を示した図。
図4B】糸貯留装置と発光部との配置関係を示した図。
図4C】糸貯留装置と検出ユニットとの配置関係を示した図。
図5】移動部の詳細構成を示す図。
図6】カムの回転に従って第1アームが回転する状態を示す図。
図7】糸案内位置と糸引出し位置とを示す図。
図8】糸噴出部を第1位置に配置した状態で、S撚りの糸を糸貯留装置に案内した場合の糸道を示す図。
図9】ワインダユニットにおけるパッケージの形成動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態
(1)自動ワインダ
以下、第1実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。「上流」及び「下流」とは、糸の走行方向における上流及び下流をそれぞれ意味する。
【0023】
図1を用いて、自動ワインダ1を説明する。図1は、自動ワインダ1の構成を示す図である。自動ワインダ1は、並べて配置された複数のワインダユニット2(糸巻取装置の一例)と、機台制御装置3と、給糸ボビン供給装置4と、玉揚装置5と、を備える。また、自動ワインダ1には、図示しないブロアボックスが設けられる。
【0024】
ワインダユニット2は、糸Yを巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成する。ワインダユニット2は、給糸ボビン21の糸Yを解舒し、解舒した糸Yを糸貯留装置40で一旦貯留した後、糸貯留装置40に貯留された糸Yを引き出して巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成する。
【0025】
機台制御装置3は、各ワインダユニット2と通信可能に構成されている。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置3を適宜操作することにより、複数のワインダユニット2を集中的に管理することができる。機台制御装置3は、給糸ボビン供給装置4及び玉揚装置5の動作を制御する。
【0026】
給糸ボビン供給装置4は、給糸ボビン21を一本ずつ搬送トレイ26上にセットする。給糸ボビン供給装置4は、搬送トレイ26上にセットした給糸ボビン21を、複数のワインダユニット2のそれぞれに供給する。
【0027】
玉揚装置5は、ワインダユニット2においてパッケージ30が満巻(規定量の糸Yが巻き取られた状態)となった場合に、当該ワインダユニット2の位置まで走行し、満巻のパッケージ30を取り外す。玉揚装置5は、パッケージ30を取り外した当該ワインダユニット2に対して糸Yが巻かれていない巻取ボビン22をセットする。
【0028】
(2)ワインダユニット
(2-1)ワインダユニットの概略構成
以下、ワインダユニット2の構成を説明する。まず、図2を用いて、ワインダユニット2の概略構成を説明する。図2は、ワインダユニット2の構成を示す図である。ワインダユニット2は、給糸部6(供給部の一例)と、糸貯留装置40と、糸案内部7と、パッケージ形成部8(巻取部の一例)と、制御部25と、を備えている。
【0029】
給糸部6は、搬送トレイ26にセットされた給糸ボビン21を所定の位置で支持し、この給糸ボビン21から糸Yを解舒できるように構成されている。給糸部6は、給糸ボビン21から全ての糸Yが解舒されると、糸Yが巻かれていない給糸ボビン21の芯管を排出して、給糸ボビン供給装置4から新しい給糸ボビン21の供給を受ける。
【0030】
糸貯留装置40は、給糸部6とパッケージ形成部8との間に形成される糸走行経路の途中に配置されている。糸貯留装置40は、ワックス付与装置70に対し糸Yの走行方向における上流側の位置に設けられている。糸貯留装置40は、給糸部6で解舒した糸Yを巻き取って一時的に貯留する。糸貯留装置40は、貯留している糸Yをパッケージ形成部8へ供給する。
【0031】
糸案内部7は、給糸部6と糸貯留装置40との間に配置され、給糸部6から供給された糸Yを、給糸部6と糸貯留装置40との間で案内する。糸案内部7においては、給糸部6と糸貯留装置40との間で糸Yが分断された時に、給糸部6側に存在する糸Yの終端部と、糸貯留装置40側に存在する糸Yの終端部と、を糸継ぎする。
【0032】
パッケージ形成部8は、糸貯留装置40から供給された糸Yを巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成する。パッケージ形成部8は、クレードル23と、綾振ドラム24と、を有する。クレードル23は、巻取ボビン22(又はパッケージ30)を回転可能に支持する。クレードル23は、支持しているパッケージ30の外周面を綾振ドラム24の外周面に対して接触可能に構成されている。
【0033】
綾振ドラム24は、糸Yを綾振りさせながら巻取ボビン22を駆動する。詳細には、綾振ドラム24は、図示しない駆動源(例えば、電動モータ等)によって回転駆動され、巻取ボビン22又はパッケージ30の外周面に接触した状態で回転することで、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、糸貯留装置40に貯留された糸Yを解舒して引き出し、巻取ボビン22に巻き取ることができる。
【0034】
綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸Yを所定の幅で綾振り(トラバース)することが可能になっている。以上の構成で、糸Yを綾振りさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定形状のパッケージ30を形成することができる。
【0035】
制御部25は、CPU、記憶装置(ROM、RAMなど)、各種インタフェースなどのハードウェアを備えたコンピュータシステムである。記憶装置には、制御プログラム等のソフトウェアが記憶されている。制御部25は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、ワインダユニット2の各構成を制御する。制御部25は、機台制御装置3と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダ1が備えた複数のワインダユニット2の動作を、機台制御装置3において集中的に管理することができる。
【0036】
ワインダユニット2は、ワックス付与装置70を有する。ワックス付与装置70は、糸貯留装置40とパッケージ形成部8との間に配置されている。ワックス付与装置70は、糸貯留装置40からパッケージ形成部8に向けて走行する糸Yにワックスを付与する。
【0037】
(2-2)糸貯留装置
次に、ワインダユニット2の詳細構成を説明する。まず、図2及び図3を用いて、糸貯留装置40の詳細構成を説明する。図3は、糸貯留装置40の拡大図である。糸貯留装置40は、糸Yを巻き付けることが可能な貯留ローラ41と、貯留ローラ41を回転駆動する駆動モータ45と、カバー47と、を備えている。貯留ローラ41は、糸Yを貯留ローラ41における外周面41dの貯留領域Aに巻き付けて糸Yを一時的に貯留する。貯留ローラ41は、自動ワインダ1の機台(フレーム)に、水平方向に対してやや傾いた回転軸C1を中心として回転可能に支持されている。図2及び図3に示されるように、貯留ローラ41の軸方向の両端部側には、それぞれ、端に近づくほど径が拡大するテーパ部41a,41bが形成されている。二つのテーパ部41a,41bの間の部分は径が一定の円筒部41cとなっており、その外周面41dは、糸Yが巻き付けられる貯留領域Aである。円筒部41cの外周面41dは、鏡面加工されている。両端側の二つのテーパ部41a,41bによって、円筒部41cに巻き付けられた糸Yが抜け落ちることが防止される。
【0038】
貯留ローラ41の円筒部41cの外周面41dには、リング部材42が巻き付けられている。リング部材42は、例えばゴムにより円環状に形成されている。リング部材42は、円筒部41cと先端側のテーパ部41bとの境界部分に取り付けられている。リング部材42は、パッケージ形成部8によって貯留ローラ41から引き出される糸Yを囲み、当該糸Yに接触して抵抗を付与するテンションリングである。リング部材42は、その径方向内側に締め付ける弾性力により円筒部41cに取り付けられている。リング部材42は、貯留ローラ41から引き出される糸Yに対して当該弾性力によって抵抗を付与する。リング部材42により、貯留ローラ41から引き出される糸Yに適度な張力が与えられ、貯留ローラ41からの糸Yの解舒が安定化される。
【0039】
貯留ローラ41の外周面41dにおいて、リング部材42の取付位置を回転軸C1に沿う方向に跨ぐ領域には、第一凹部(凹部)43aが設けられている。つまり、貯留ローラ41の径方向外側から見て、第一凹部43aは、リング部材42の取付位置を通るように設けられて当該取付位置と交差しており、第一凹部43aの一部は当該取付位置と重なっている。ここでの第一凹部43aは、貯留ローラ41の一端から他端まで回転軸C1に沿う方向に延びる溝部を構成している。第一凹部43aは、例えば、その長手方向において同一の断面形状を有し、断面略矩形状に形成されている。貯留ローラ41の外周面41dには、更に、第二凹部(凹部)43bが設けられている。第二凹部(凹部)43bは、円筒部41cの内周面41gにセンサ用マグネットを埋め込むボス又は補強用リブを成形するときに、凹み(いわゆるヒケ)(sink mark)が形成されないように設けられる凹部(いわゆる肉ヌスミ)(downgage)である。
【0040】
駆動モータ45は、給糸部6からの糸Yを巻き取る方向に貯留ローラ41を回転させる。また、駆動モータ45は、当該巻き取る方向とは反対の方向に貯留ローラ41を回転させることもできる。駆動モータ45は、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等の位置制御可能なモータである。
【0041】
貯留ローラ41の他端側(貯留ローラ41における上流側)のテーパ部41bからは、貯留ローラ41に巻き付けられていた糸Yが引き出されて、下流側(パッケージ形成部8側)に送られる。テーパ部41bにおいて、貯留ローラ41上の糸Yは、貯留ローラ41の回転軸C1の延長線上に位置する引出ガイド37を介して下流側へ引き出される。貯留ローラ41に巻き付けられている糸Yは、上記リング部材42との間を通して解舒され、これにより、解舒される糸Yに適度の張力が付与されるようになっている。
【0042】
検出部53は、貯留ローラ41の円筒部41cの外周面41d近傍に配置されている。例えば、検出部53は、貯留ローラ41の糸Yが所定の上限量以上になったことと、所定の下限量未満となったことと、を検出できる。検出部53は、上記の上限量から上記の下限量までを検出範囲としてもよい。なお、検出範囲は上記の上限量を超える部分から上記の下限量を下回る部分までを含む、より広範囲な範囲としてもよい。これにより、例えば上記の上限値に対する超過量を検出することができる。本実施形態では、その検出範囲の中から、貯留ローラ41の糸Yが所定の上限量以上になったことと、所定の下限量未満となったことと、を検出している。なお、上記における以上と未満とは、適宜超過と以下とすることができる。検出部53による検出結果は、制御部25によって取得される。制御部25は、検出部53の検出結果に基づいて、貯留ローラ41の貯留量(巻付量)が上記上限量と上記下限量の間に収まるように、駆動モータ45を制御する。
【0043】
検出部53は、貯留ローラ41の外周面41dに巻き付けられた糸Yを検出する。図4A図4Cに示されるように、検出部53は、貯留ローラ41に向けて光を発光する発光部55と共に、検出ユニット50を形成する。すなわち、検出ユニット50は、検出部53と、発光部55と、を含んで構成されている。検出部53と発光部55とは、筐体51に収容されており、自動ワインダ1の機台に固定されている。図4Aは、糸貯留装置40と検出部53との配置関係を示した図である。図4Bは、糸貯留装置40と発光部55との配置関係を示した図である。図4Cは、糸貯留装置40と検出ユニット50との配置関係を示した図である。
【0044】
検出部53は、円筒部41cの外周面41dに形成される貯留領域Aにおいて糸Yの走行方向における上流側の端部41fと糸Yの走行方向における下流側の端部41eとの間を結ぶ直線区間ST1の糸Yの有無を検出するラインセンサ53Aと、入射光を縮小するレンズ53Bと、を有している。ラインセンサ53Aの例には、一列に配列されたフォトダイオードによって光量を取得する、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである。ラインセンサ53Aは、入射光を縮小するレンズ53Bを介して光を受光する。本実施形態では、直線区間ST1の延在方向が回転軸C1の延在方向に平行となるようにラインセンサ53Aが設けられているが、直線区間ST1の延在方向が回転軸C1の延在方向に交差するようにラインセンサ53Aが設けられてもよい。
【0045】
発光部55は、二つの光源55B,55Bと、二つの光源55B,55Bから出射される光を面発光に変換すると共に貯留ローラ41に向けて出射する光導波路55Cと、を有している。光導波路55Cの構成要素の一部には、光を導光するアクリル板等の拡散板が含まれる。二つの光源55B,55Bの例は、LED(Light Emitting Diode)であり、LED基板55Aに設けられている。なお、光源の数は、二つに限定されない。
【0046】
ラインセンサ53Aは、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないように、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する発光部55からの光が入射するような位置に設けられている。例えば、ラインセンサ53Aは、図4Cに示されるように、0°~30°の範囲の照射角度θで光を出射する。「貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないようにラインセンサ53Aが配置されている」とは、発光部55からこのような角度で出射される光が貯留ローラ41の外周面41dに全反射し、その反射した光が入射しないような位置にラインセンサ53Aが配置されていることを意味する。
【0047】
ここで、回転軸C1に直交する直線の一つを第一直線L1と仮想的に設定し、第一直線L1に平行かつ貯留ローラ41の外周面41dに接する直線の一つを第二直線L2と仮想的に設定する。本実施形態では、貯留ローラ41の回転軸C1が延在する方向から見た平面視において、発光部55は、第一直線L1上、又は、第一直線L1及び第二直線L2の配列方向においてラインセンサ53Aと第一直線L1との間に配置されている。これにより、発光部55は、第一直線L1及び第二直線L2の間に位置する貯留ローラ41の一部分に対して光を出射することができる。ラインセンサ53Aは、第二直線L2と第一直線L1との間に配置されている。ラインセンサ53Aの受光方向は、第一直線L1と略平行である。言い換えれば、ラインセンサ53Aには、第一直線L1と略平行方向から光が入射する。カバー47は、第一直線L1及び前記第二直線の配列方向において、第二直線L2に対して第一直線L1が配置された側とは反対側の領域に配置されている。
【0048】
カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dの一部に対向するように設けられている。カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dを反射した発光部55からの光の進行方向の少なくとも一部に設けられている。カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dを反射しない発光部55からの光の進行方向の少なくとも一部にも設けられていてもよい。カバー47において発光部55からの光が入射する箇所である対向面47aの少なくとも一部は、光の反射率を低くする色(例えば黒色)となるように形成されている。このように反射率を低くすることで、カバー47からの反射光が貯留ローラ41に入射されることを防ぐことができる。これにより、カバー47によって反射された光がラインセンサ53Aに検出されることによって糸Yから反射される光を適切に検出できなくなることを防止できる。
【0049】
なお、カバー47を設けなくても、発光部55からの光の進行方向に光を反射する構造部を配置しないように糸貯留装置40の周辺を構成してもよい。仮に、発光部55からの光の進行方向に光を反射する構造部を配置する場合でも、反射した光がラインセンサ53Aに到達するときには十分減衰するような位置に配置された構造物であれば、糸Yから反射される光を適切に検出できなくなることを防止できる。
【0050】
(2-3)糸案内部
次に、図2を用いて、給糸部6と糸貯留装置40との間で糸Yを案内する糸案内部7の詳細構成を説明する。糸案内部7は、糸Yの糸道(糸走行経路)に配置され、解舒補助装置10と、下糸フィーラー11と、テンション付与部12と、捕捉装置13と、糸継装置14と、糸監視装置16と、糸噴出部60と、糸案内部材80と、を有する。
【0051】
解舒補助装置10は、給糸ボビン21から解舒される糸Yが振り回されて給糸ボビン21の上部に形成されるバルーンに対し、可動部材27を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸Yの解舒を補助する。
【0052】
下糸フィーラー11は、解舒補助装置10の下流側における解舒補助装置10に近接する位置に配置されている。下糸フィーラー11は、解舒補助装置10から供給された糸Yの有無を規定する。
【0053】
テンション付与部12は、走行する糸Yに所定のテンションを付与する。テンション付与部12は、図示しないテンションセンサによって検出された糸Yのテンションに基づいて、糸Yに所定のテンションを付与する。テンション付与部12は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置してなるゲート式に構成されており、櫛歯の間に糸Yを走行させることで所定の抵抗を付与する。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、例えばソレノイドにより移動可能に構成されている。これにより、テンション付与部12は、糸Yに付与するテンションを調整することができる。なお、テンション付与部12の構成は特に限定されず、例えばディスク式のテンション付与部であってもよい。
【0054】
捕捉装置13は、テンション付与部12の下流側に配置されている。捕捉装置13は、第1捕捉部13Aと、第2捕捉部13Bと、を有する。本実施形態では、第1捕捉部13A及び第2捕捉部13Bは、一体化されており、一つの部品として構成されている。第1捕捉部13A及び第2捕捉部13Bのそれぞれは、図示しない負圧源に接続されている。
【0055】
第1捕捉部13Aは、先端部に開口が形成された筒状の部材として構成されている。第1捕捉部13Aは、糸継時に吸引空気流を発生させ、後述する糸案内部材80の内部空間を吸引することで、糸貯留装置40側の糸Yを吸引して捕捉する。
【0056】
第2捕捉部13Bは、先端部に開口が形成された筒状の部材として構成されている。第2捕捉部13Bは、揺動可能に設けられている。第2捕捉部13Bは、解舒補助装置10側から供給された糸Yを捕捉する捕捉位置(図2において実線で示す位置)と、糸Yを糸継装置14に案内する案内位置(図2において破線で示す位置)と、の間で揺動する。捕捉位置は、第2捕捉部13Bの待機位置でもあってもよい。
【0057】
第2捕捉部13Bは、捕捉位置において、下糸フィーラー11の下流側において糸道に接近している状態で、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、給糸ボビン21からの糸端を吸引して捕捉する。第2捕捉部13Bは、カッタ15で糸Yを切断した際に、切断した糸Yの給糸ボビン21側の糸端を吸引して捕捉する。また、第2捕捉部13Bは、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、走行する糸Yに付着している風綿等を吸引して除去するように構成してもよい。
【0058】
第2捕捉部13Bによって糸Yを捕捉する際、給糸部6に新しい給糸ボビン21が供給された直後の場合には、下糸フィーラー11の下流側の位置(第2捕捉部13Bの先端)まで糸端を吹き送る補助吹送り部28が設けられている。
【0059】
補助吹送り部28は、中空状に形成された搬送トレイ26及び給糸ボビン21の内部に圧縮空気を噴出することにより、給糸ボビン21の先端部に、当該給糸ボビン21の糸Yを下糸フィーラー11側へ吹き送る空気流を形成する。新しく供給された給糸ボビン21が給糸部6に支持された場合、補助吹送り部28が動作することにより、当該給糸ボビン21側の糸端を下糸フィーラー11側に向かって確実に送ることができる。
【0060】
糸継装置14は、分断された糸Yの糸継ぎを行う。糸継装置14は、糸監視装置16が糸欠陥を検出してカッタ15で糸Yを切断する糸切断時、給糸ボビン21から解舒中の糸Yが切れる糸切れ時、又は、給糸ボビン21の交換時等のように、給糸ボビン21と糸貯留装置40との間の糸Yが分断された状態となったときに、給糸ボビン21側の糸Yの終端部と、糸貯留装置40側の糸Yの終端部と、を糸継ぎする。糸継装置14は、糸道から若干退避した位置に配置されている。糸継装置14は、導入された糸端同士を繋いで、糸Yを連続状態とすることができる。糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いる装置や、機械式の装置を使用できる。
【0061】
糸監視装置16は、糸Yの太さ等を適宜のセンサで監視することにより、スラブや異物混入等の糸欠陥を検出する。糸監視装置16の上流側における当該糸監視装置16に近接する位置には、カッタ15が配置されている。カッタ15は、糸監視装置16が糸欠陥を検出した場合直ちに、糸Yを切断する。カッタ15及び糸監視装置16は、共通のハウジング19に収容されている。糸監視装置16を収容するハウジング19は、糸継装置14の下流側に配置されている。
【0062】
糸噴出部60は、貯留ローラ41の一端側(貯留ローラ41における上流側)のテーパ部41aの近傍に配置され、内部に糸Yを通過させることが可能な細い筒状部材で構成される。糸噴出部60の給糸部6側の口からは、糸貯留装置40から給糸部6への向かう方向に圧縮空気を噴出可能となっている。給糸ボビン21と糸貯留装置40との間で糸Yが分断状態となった場合、糸噴出部60は、糸貯留装置40から給糸部6へ向かう方向に空気を噴出することにより糸貯留装置40側の糸Yの糸端を内部に吸引して捕捉し、糸案内部材80の案内経路へ吹き飛ばす。
【0063】
一方、通常の糸巻取時においては、糸噴出部60は、給糸部6から供給された糸Yを、貯留ローラ41の一端側のテーパ部41aに案内する。駆動モータ45を駆動して貯留ローラ41を一方向に回転させたときに、糸噴出部60によって貯留ローラ41の一端側のテーパ部41aに案内された糸Yは、円筒部41cの一端側(上流側)から前の糸層を押し上げながら順次巻き付いていく。その結果、貯留ローラ41の外周面41d上に既に巻き付けられている糸Yは、新しく巻き付けられた糸Yによって押され、他端側(下流側)へ順次送られる。これにより、貯留ローラ41の円筒部41cの外周面において、糸Yが螺旋状に整列して一端側から他端側に向かって規則正しく巻き付いていく。
【0064】
詳細は後述するが、糸噴出部60は、移動部90により、給糸部6から供給された糸Yを貯留ローラ41に案内する場合の最適位置(糸案内位置と呼ぶ)と、糸貯留装置40に貯留された糸Yの糸端を吸引により引き出して糸継装置14(糸案内部材80の案内経路)へ案内する最適位置(糸引出し位置と呼ぶ)とに移動可能となっている。
【0065】
糸案内部材80は、湾曲した筒状の部材であり、長手方向両端にはそれぞれ開口が形成されている。糸案内部材80の一方の開口は、糸噴出部60の給糸部6側の口に近接するように配置されている。他方の開口は、第1捕捉部13Aに対向させた状態で配置されている。糸案内部材80の内部には、案内経路が形成されている。案内経路は、糸監視装置16及び糸継装置14等を迂回するように、糸案内部材80の両端の開口同士を繋ぐ。糸案内部材80には、案内経路まで貫通するスリットが全長にわたって形成されている。
【0066】
給糸ボビン21と糸貯留装置40との間で糸Yが分断状態となった場合、糸案内部材80は、糸噴出部60により案内経路に吹き飛ばされた糸Yを案内経路に沿って第1捕捉部13Aまで案内し、案内された糸Yを第1捕捉部13Aに捕捉させる。糸案内部材80には案内経路まで貫通するスリットが全長にわたって形成されているため、糸案内部材80は、第1捕捉部13Aに捕捉された糸Yを糸案内部材80の案内経路から引っ張り出し、糸継装置14側に向けて案内できる。
【0067】
(2-4)移動部
以下、図5を用いて、糸噴出部60を移動する移動部90の詳細構成を説明する。図5は、移動部90の詳細構成を示す図である。移動部90は、カム91と、第1アーム92と、第2アーム93と、位置センサ94と、を有する。カム91は、第1軸A1周りに回転可能に筐体CHに設けられている。なお、筐体CHは、カッタ15及び糸監視装置16を収納するハウジング19上に固定されている。
【0068】
カム91には、第1プーリ91Aが固定されている。第1プーリ91Aにはベルト91Bが掛けられている。ベルト91Bの第1プーリ91Aが掛けられている側とは反対側には、第2プーリ91Cが掛けられている。第2プーリ91Cは、モータ91Dの出力回転軸に固定されている。モータ91Dの出力回転軸の回転が、第2プーリ91C、ベルト91B、第1プーリ91Aによりカム91に伝達されることで、カム91は、第1軸A1周りに回転する。モータ91Dの回転は、制御部25により制御される。
【0069】
第1アーム92が当接するカム91の側面PHは、基準位置(原点Oと呼ぶ)から図5の反時計回りに原点Oから離れるに従い、第1軸A1までの距離(すなわち、カム91の半径)が大きくなっている。
【0070】
第1アーム92は、細長の部材である。第1アーム92の一端は、カム91の外周に当接する。一方、第1アーム92の他端は、第1軸A1と平行な第2軸A2周りに回転可能に筐体CHに固定される。原点Oから離れるに従いカム91の側面PHと第1軸A1との間の距離が大きくなるので、カム91が(図5の時計回りに)回転するに従い、第1アーム92とカム91との当接位置と第1軸A1との間の距離が大きくなる。図6に示すように、カム91の回転に従って第1アーム92とカム91の側面PHとの当接位置と第1軸A1との間の距離が大きくなることにより、第1アーム92は、カム91の回転に従って、第2軸A2周りに回転する。図6は、カム91の回転に従って第1アーム92が回転する状態を示す図である。
【0071】
第2アーム93は、細長の部材であり、その一端側には糸噴出部60が固定されている。一方、第2アーム93の他端は、第2軸A2周りに回転可能に第1アーム92取り付けられている。これにより、第2アーム93は、第1アーム92の回転に従って、第2軸A2周りに回転する。第2アーム93が第2軸A2周りに回転することにより、第2アーム93の一端に固定された糸噴出部60が移動する。
【0072】
位置センサ94は、第2アーム93を検知することで、第2アーム93の一端がカム91の原点Oの位置に当接しているか否かを検出する。第2アーム93の一端をカム91の原点Oに当接させる場合、制御部25は、第1アーム92の一端がカム91の原点O側の半円部に入り込むようカム91を移動させ、位置センサ94により第2アーム93が検知されたときに、第2アーム93の一端がカム91の原点Oの位置に当接していると判断する。位置センサ94は、例えば、マグネットセンサである。
【0073】
(2-5)糸噴出部の位置
以下、図7を用いて、給糸部6側から糸貯留装置40へ糸Yを案内するときの糸噴出部60の位置である糸案内位置と、糸貯留装置40から糸Yを引き出すときの糸噴出部60の位置である糸引出し位置を説明する。図7は、糸案内位置と糸引出し位置とを示す図である。
【0074】
まず、糸案内位置を説明する。給糸部6側から糸貯留装置40への糸Yの案内は、糸貯留装置40の円筒形状の貯留ローラ41の回転により実行される。Z撚りの糸Yを給糸部6側から糸貯留装置40へ案内する場合には、貯留ローラ41を第1貯留ローラ回転方向に回転させる。図7に示す例では、第1貯留ローラ回転方向は反時計回りの方向である。この場合、糸噴出部60は、図7に示す例においては、貯留ローラ41の中心線よりも右側に配置する。また、糸噴出部60の糸貯留装置40側の端部は、当該端部から貯留ローラ41の右側面への接線(すなわち、Z撚りの糸Yの糸道)に対して糸貯留装置40(貯留ローラ41)よりも外側に向ける。給糸部6側から糸貯留装置40へZ撚りの糸Yを案内する場合の糸案内位置を、第1位置P1とする。
【0075】
第1位置P1が、糸貯留装置40の中心線よりも右側において、糸噴出部60の端部から貯留ローラ41の側面への接線に対して糸貯留装置40よりも外側に向ける位置であることにより、Z撚りの糸Yが切断されたときに、切断された糸Yが糸噴出部60の端部から飛び出して、糸貯留装置40(貯留ローラ41)に衝突しなくなる。この結果、糸Yが糸貯留装置40に衝突することにより生じるくぐり糸(貯留された糸Yの下に糸Yの他の部分が入り込む現象)、二重口出し(糸Yが二重になって引き出される現象)などを防止して、Z撚りの糸Yを糸貯留装置40に適切に案内できる。
【0076】
なお、図5及び図6を用いて説明した移動部90においては、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの原点Oに当接しているとき(図5に示す場合)に、糸噴出部60が第1位置P1に配置されるようにする。ワインダユニット2においては、Z撚りの糸Yを用いてパッケージ30を形成する頻度の方がS撚りの糸Yを用いて形成する頻度よりも多いので、第1アーム92がカム91の側面PHの原点Oに当接しているときに、糸噴出部60がZ撚りの糸Yを糸貯留装置40に案内する場合の第1位置P1に配置されるようにすることで、糸噴出部60の制御が容易になる。例えば、糸噴出部60を後述する第2位置P2まで移動させる頻度を小さくできる。
【0077】
ワインダユニット2は、Z撚りの糸Yだけでなく、撚り方が異なるS撚りの糸Yのパッケージ30も形成可能である。その一方で、本発明者は、S撚りの糸Yのパッケージ30を形成するために、S撚りの糸Yを給糸部6側から糸貯留装置40へ案内する場合に、貯留ローラ41を上記の第1貯留ローラ回転方向に回転させると、リング部材42の寿命が大幅に短くなってしまうことを発見した。つまり、貯留ローラ41の回転方向は、糸Yの撚り方に応じたものであることを発見した。従って、S撚りの糸Yを給糸部6側から糸貯留装置40へ案内する場合には、貯留ローラ41を上記の第1貯留ローラ回転方向とは逆方向(図7に示す例では、時計回り方向)(第2貯蔵ローラ回転方向と呼ぶ)に回転させる。
【0078】
また、糸噴出部60を第1位置P1に配置した状態で、貯留ローラ41を第2貯蔵ローラ回転方向に回転させて糸貯留装置40へ糸Yを案内した場合、図8に示すように、糸噴出部60の糸貯留装置40側において、糸Yが大きく屈曲してダメージ(例えば、切断)を受けやすくなる。図8は、糸噴出部60を第1位置P1に配置した状態で、S撚りの糸Yを糸貯留装置40に案内した場合の糸道を示す図である。
【0079】
従って、S撚りの糸Yを糸貯留装置40へ案内する場合には、糸噴出部60の位置を、第1位置P1とは異なる位置とする。具体的には、図7に示す例においては、S撚りの糸Yを糸貯留装置40へ案内する場合、糸噴出部60は、貯留ローラ41の中心線よりも左側に配置する。また、糸噴出部60の糸貯留装置40側の端部は、当該端部から貯留ローラ41の左側面への接線(すなわち、S撚りの糸Yの糸道)に対して糸貯留装置40よりも外側に向ける。給糸部6側から糸貯留装置40へS撚りの糸Yを案内する場合の糸案内位置を、第2位置P2とする。この第2位置P2と第1位置P1とは、糸貯留装置40(貯留ローラ41)の中心線に対して線対称の関係にある。
【0080】
第2位置P2が、糸貯留装置40の中心線よりも左側において、糸噴出部60の端部から貯留ローラ41の側面への接線に対して糸貯留装置40よりも外側に向ける位置であることにより、S撚りの糸Yが切断されたときに、切断された糸Yが糸噴出部60の端部から飛び出して、糸貯留装置40(貯留ローラ41)に衝突しなくなる。この結果、糸Yが糸貯留装置40に衝突することにより生じるくぐり糸、二重口出しなどを防止して、S撚りの糸Yを糸貯留装置40に適切に案内できる。
【0081】
なお、図5及び図6を用いて説明した移動部90においては、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの原点Oから最も遠い位置(第1外周位置PH1と呼ぶ)に当接しているときに、糸噴出部60が第2位置P2に配置されるようにする。
【0082】
次に、糸引出し位置を説明する。糸引出し位置は、図7に示すように、Z撚りの糸YとS撚りの糸Yとで共通しており、糸貯留装置40(貯留ローラ41)の中心線上に配置される。すなわち、糸引出し位置は、第1位置P1と第2位置P2との中間の位置(第3位置P3と呼ぶ)である。糸引出し位置を糸貯留装置40の中心線上に配置することで、貯留ローラ41と糸噴出部60の糸貯留装置40側の端部との間の距離を小さくできる。この結果、糸噴出部60は、吸引により、糸貯留装置40から糸Yを引出し易くなる。
【0083】
なお、図5及び図6を用いて説明した移動部90においては、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの原点Oと第1外周位置PH1との中間位置(第2外周位置PH2と呼ぶ)に当接しているとき(図6に示す場合)に、糸噴出部60が第3位置P3に配置されるようにする。また、カム91の側面PHの第2外周位置PH2の前後においては、側面PHから第1軸A1までの距離が一定となっている。これにより、第1アーム92が第2外周位置PH2で当接する位置までカム91を回転させた後に、カム91がいずれかの方向にさらに回転してしまった場合でも、糸噴出部60を第3位置P3に維持できる。
【0084】
カム91の側面PHの原点O、第1外周位置PH1、第2外周位置PH2が上記のような位置関係にある場合、制御部25は、カム91を第1方向(図5及び図6の例では、反時計回りの方向)に回転させることで、糸噴出部60は、糸引出し位置(第3位置P3)からZ撚りの糸Yを案内する第1位置P1へと移動する。一方、カム91を第1方向とは逆方向の第2方向(図5及び図6の例では、時計回りの方向)に回転させることで、糸噴出部60は、糸引出し位置からS撚りの糸Yを案内する第2位置P2へと移動する。これにより、カム91を反対に回転させることで、糸噴出部60を、第3位置P3から第1位置P1、又は、第3位置P3から第2位置P2へと移動できるので、糸噴出部60の制御が容易になる。
【0085】
(3)ワインダユニットの動作
以下、ワインダユニットの動作を説明する。ワインダユニット2が起動すると、ワインダユニット2にてパッケージ30の形成を実行するための初期動作が行われる。この初期動作において、糸噴出部60が原点位置に移動される。具体的には、制御部25が、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの原点Oに当接するようカム91を回転させて、糸噴出部60を第1位置P1に移動させる。このように、糸噴出部60の原点位置は、第1位置P1である。
【0086】
初期動作の後、ワインダユニット2にてパッケージ30の形成が開始される。パッケージ30の形成は、図9に示すフローチャートに従って実行される。図9は、ワインダユニット2におけるパッケージ30の形成動作を示すフローチャートである。図9は、1つのパッケージ30を形成する際のフローチャートを示している。
【0087】
パッケージ30の形成が開始されると、制御部25は、ステップS1で、パッケージ30の形成に用いる糸Yの種類を判断する。パッケージ30の形成に用いる糸Yの種類は、例えば、オペレータが機台制御装置3を操作することで設定できる。
【0088】
糸Yの種類がZ撚りの糸である場合(ステップS1で「Z撚り」)、制御部25は、Z撚りの糸Yを糸貯留装置40に案内するために、糸噴出部60を第1位置P1に移動させる(ステップS2)。具体的には、制御部25は、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの原点Oに当接するようカム91を回転させて、糸噴出部60を第1位置P1に移動させる。なお、上記のとおり、初期状態においては、糸噴出部60は第1位置P1に配置されている。よって、ワインダユニット2の起動後にパッケージ30を最初に形成する場合には、制御部25は、糸噴出部60を第1位置P1(原点位置)に配置したまま移動させない。
【0089】
一方、糸Yの種類がS撚りの糸である場合(ステップS1で「S撚り」)、制御部25は、S撚りの糸Yを糸貯留装置40に案内するために、糸噴出部60を第2位置P2へ移動させる(ステップS3)。
【0090】
その後、パッケージ30を形成するために糸の巻き取りが開始される(ステップS4)。ステップS4では、給糸ボビン21から解除された糸Yが、糸案内部7により、糸貯留装置40まで案内され、糸貯留装置40(貯留ローラ41)に一時的に貯留される。糸貯留装置40に貯留された糸Yが巻取ボビン22に巻き取られて、パッケージ30が形成される。このとき、Z撚りの糸Yが用いられている場合には糸噴出部60が第1位置P1に配置され、S撚りの糸Yが用いられている場合には糸噴出部60が第2位置P2に配置される。これにより、用いられる糸Yの種類に応じて、糸Yを糸貯留装置40に適切に案内できる。
【0091】
なお、ステップS4において糸貯留装置40に糸Yを貯留し始めたときに、制御部25は、糸案内部7にて案内されている糸Yのテンションを監視し、糸Yのテンションが所定の閾値を超えた場合に、貯留ローラ41の回転を停止するか、又は、糸Yを切断してもよい。これにより、例えば、糸繋ぎ直後の巻き始めに発生するテンション切れにより糸Yが切断され、くぐり糸が発生することを防止できる。
【0092】
糸Yの巻き取り中、制御部25は、ステップS5で、カッタ15による糸Yの切断、給糸ボビン21から解舒中の糸Yの糸切れ、給糸ボビン21の交換などにより糸Yの分断が発生したか否かを判断する。糸Yの分断が発生していない場合(ステップS5で「No」)、パッケージ30の形成動作は、ステップS10に進む。
【0093】
一方、糸Yの分断が発生した場合(ステップS5で「Yes」)、制御部25は、ステップS6で、糸Yの巻取ボビン22への巻き取りを中断する。その後、制御部25は、ステップS7で、糸貯留装置40から糸Yの引出しを行うための第3位置P3に、糸噴出部60を移動させる。具体的には、制御部25は、第1アーム92の一端がカム91の側面PHの第2外周位置PH2に当接するようカム91を回転させて、糸噴出部60を第3位置P3に移動させる。
【0094】
糸噴出部60を第3位置P3に移動後、糸噴出部60が、糸貯留装置40側の糸Yの端部を内部に吸引することで糸貯留装置40から引き出し、引き出した糸Yを糸案内部材80に向けて吹き飛ばす(ステップS8)。この結果、糸貯留装置40側の糸Yの端部が、糸案内部材80内の案内経路を第1捕捉部13Aまで移動し、第1捕捉部13Aにより捕捉される。その後、糸案内部材80の内部の糸Yが、糸案内部材80に設けられたスリットから引っ張り出され、糸継装置14に案内される。また、給糸部6側の糸Yの端部が、捕捉位置に位置する第2捕捉部13Bにより捕捉され、糸継装置14に案内される。
【0095】
糸貯留装置40側の糸Yの端部と給糸部6側の糸Yの端部とが糸継装置14に案内された後、これら糸Yの端部が糸継装置14により糸継ぎされる(ステップS9)。糸継ぎを完了後、パッケージ30への糸Yの巻き取りが再開される。すなわち、パッケージ30の形成動作はステップS4に戻る。
【0096】
糸Yの巻き取りを再開するに際して、Z撚りの糸Yを用いてパッケージ30の形成がされている場合、制御部25は、第3位置P3から第1位置P1へと糸噴出部60を移動させる。具体的には、制御部25は、カム91を第1方向に回転させて、第1アーム92とカム91の側面PHとの当接位置を第2外周位置PH2から原点Oに変更し、糸噴出部60を第3位置P3から第1位置P1へと移動させる。
【0097】
一方、S撚りの糸Yを用いてパッケージ30の形成がされている場合、制御部25は、第3位置P3から第2位置P2へ糸噴出部60を移動させる。具体的には、制御部25は、カム91を第2方向に回転させて、第1アーム92とカム91の側面PHとの当接位置を第2外周位置PH2から第1外周位置PH1に変更し、糸噴出部60を第3位置P3から第2位置P2へと移動させる。
【0098】
糸噴出部60を第1位置P1(Z撚りの場合)又は第2位置P2(S撚りの場合)に移動後、制御部25は、糸Yの巻き取りを再開する。
【0099】
糸Yの巻き取り中に、制御部25は、ステップS10で、巻取ボビン22に規定量の糸Yが巻き取られ、パッケージ30の形成が終了したか否かを判断する。パッケージ30の形成が終了していない場合(ステップS10で「No」)、制御部25は、糸Yの巻き取りを継続する。
【0100】
一方、パッケージ30の形成が終了した場合(ステップS10で「Yes」)、制御部25は、糸Yの巻き取りを停止して(ステップS11)、パッケージ30の形成を終了する。形成されたパッケージ30は、玉揚装置5によりパッケージ形成部8から取り外され、所定の位置に搬送される。その後、ワインダユニット2において他のパッケージ30を形成する場合には、上記のステップS1~S11が再度実行される。
【0101】
このように、ワインダユニット2では、移動部90が、給糸部6から供給された糸Yを糸貯留装置40に案内する位置である糸案内位置(すなわち、第1位置P1、第2位置P2)と、糸貯留装置40に貯留された糸Yを引き出して給糸部6側に噴出する位置である糸引出し位置(すなわち、第3位置P3)と、に糸噴出部60を移動させる。これにより、ワインダユニット2では、糸貯留装置40への糸Yの案内と、糸貯留装置40から給糸部6側への糸Yの案内と、を適切に行うことができる。
【0102】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)ワインダユニット2の動作を示す図9のフローチャートにおける各ステップの処理内容、各ステップの実行順は、発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0103】
(B)上記の第1実施形態では、糸貯留装置40から糸Yを引き出す引出し位置は、Z撚りの糸YとS撚りの糸Yで共通の第3位置P3とされていた。これに限られず、Z撚りの糸Yの糸引出し位置と、S撚りの糸Yの糸引出し位置と、を異ならせてもよい。具体的には、Z撚り糸を糸貯留装置40から引き出す際には第4位置に糸噴出部60を移動させ、S撚り糸を糸貯留装置40から引き出す際には第5位置に糸噴出部60を移動させてもよい。第4位置は、例えば、第3位置P3よりも若干第1位置P1寄りの位置とできる。また、第5位置は、例えば、第3位置P3よりも若干第2位置P2寄りの位置とできる。
【0104】
このように、Z撚りの糸Yの糸引出し位置と、S撚りの糸Yの糸引出し位置と、を異ならせることにより、糸Yの撚りに応じた適切な糸引出し位置を設定できる。
【0105】
(C)上記の第1実施形態では、給糸部6は、給糸ボビン21から解舒された糸Yを供給するものであった。すなわち、第1実施形態のワインダユニット2は、自動ワインダであった。これに限られず、他の形式の給糸部6を用いることもできる。給糸部6を、例えば、空気の力により紡績された糸Yを供給するものとしてもよい。すなわち、ワインダユニット2は、空気紡績機であってもよい。
【0106】
(D)その他、給糸部6を、ローターの回転力により紡績された糸Yを供給するものとしてもよい。すなわち、ワインダユニット2は、オープンエンド紡績機であってもよい。
【0107】
(E)移動部90は、図5及び図6を用いて説明した構成を有するもの以外にも、糸噴出部60を移動できる任意の構成のものとできる。
【0108】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
(1)糸巻取装置(例えば、ワインダユニット2)は、供給部(例えば、給糸部6)と、糸貯留装置(例えば、糸貯留装置40)と、巻取部(例えば、パッケージ形成部8)と、糸継装置(例えば、糸継装置14)と、糸噴出部(例えば、糸噴出部60)と、移動部(例えば、移動部90)と、を備える。供給部は、糸(例えば、糸Y)を供給する。糸貯留装置は、供給部から供給された糸を貯留する。巻取部は、糸貯留装置に貯留された糸を巻き取ってパッケージ(例えば、パッケージ30)を形成する。糸継装置は、供給部と糸貯留装置との間で糸が分断された時に、供給部側の糸と、糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする。
【0109】
糸噴出部は、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する。また、糸噴出部は、糸貯留装置から供給部へ向かう方向に空気を噴出することにより糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出することで、当該糸を糸継装置まで案内する。移動部は、糸案内位置と糸引出し位置とに糸噴出部を移動させる。糸案内位置は、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する際の糸噴出部の位置である。糸引出し位置は、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する際の糸噴出部の位置である。
【0110】
上記の糸巻取装置では、移動部が、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する位置である糸案内位置と、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する位置である糸引出し位置と、に糸噴出部を移動させる。このように、糸巻取装置では、供給部から供給された糸を糸貯留装置に案内する際の最適位置と、糸貯留装置に貯留された糸を引き出して供給部側に噴出する際の最適位置と、に糸噴出部を移動できるので、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0111】
(2)上記(1)の糸巻取装置において、糸案内位置は、Z撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置(例えば、第1位置P1)と、S撚り糸を糸貯留装置に案内する第2位置(例えば、第2位置P2)と、を含んでもよい。これにより、異なる撚り(Z撚り、S撚り)の糸を、糸貯留装置へ適切に案内できる。
【0112】
(3)上記(2)の糸巻取装置において、第1位置と第2位置は、糸貯留装置の中心に対して線対称の関係にあってもよい。これにより、第1位置と第2位置を適切に設定できる。
【0113】
(4)上記(2)又は(3)の糸巻取装置において、糸引出し位置は、第1位置と第2位置との中間の第3位置であってもよい。これにより、適切な糸引出し位置を設定できる。
【0114】
(5)上記(1)~(3)の糸巻取装置において、糸引出し位置は、Z撚り糸を糸貯留装置から引き出す第4位置と、S撚り糸を糸貯留装置から引き出す第5位置と、を含んでもよい。これにより、糸の撚りに応じた適切な糸引出し位置を設定できる。
【0115】
(6)上記(1)~(5)の糸巻取装置において、糸貯留装置は、貯留ローラ(例えば、貯留ローラ41)を有してもよい。貯留ローラは、糸を巻き取って貯留する。この場合、糸案内位置は、糸噴出部の糸貯留装置側の端部が、当該端部から貯留ローラの側面への接線に対して糸貯留装置よりも外側に向いた位置であってもよい。これにより、糸が切断したときに、切断された糸が糸貯留装置(貯留ローラ)に当たることを防止して、適切に糸を案内できる。
【0116】
(7)上記(1)~(6)の糸巻取装置において、移動部は、カム(例えば、カム91)と、第1アーム(例えば、第1アーム92)と、第2アーム(例えば、第2アーム93)と、を有してもよい。カムは、第1軸(例えば、第1軸A1)周りに回転可能となっている。第1アームは、一端がカムの側面(例えば、側面PH)に当接し、他端が第2軸(例えば、第2軸A2)周りに回転可能に固定され、カムの回転に従って第2軸回りに回転する。第2アームは、一端に糸噴出部が固定され、他端が第1アームの他端とともに第2軸回りに回転可能に固定される。第2アームは、第1アームの回転に従って糸噴出部を糸案内位置と糸引出し位置とに移動させる。これにより、糸噴出部を、糸案内位置と糸引出し位置とを適切に移動できる。
【0117】
(8)上記(7)の糸巻取装置において、カムの原点位置(例えば、原点O)に第1アームの一端が当接しているときに、糸噴出部は、Z撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置に位置していてもよい。これにより、糸噴出部を移動させる頻度が比較的大きい位置を原点とすることで、糸噴出部の制御が容易になる。
【0118】
(9)上記(7)~(8)の糸巻取装置において、移動部は、カムを第1方向に回転させることで、糸引出し位置から糸噴出部がZ撚り糸を糸貯留装置に案内する第1位置へと糸噴出部を移動させてもよい。また、カムを第1方向とは逆方向の第2方向に回転させることで、糸引出し位置から糸噴出部がS撚り糸を糸貯留装置に案内する第2位置へと糸噴出部を移動させてもよい。これにより、糸噴出部の制御が容易になる。
【0119】
(10)上記(1)~(9)の糸巻取装置において、供給部は、給糸ボビンから解舒された糸を供給してもよい。これにより、糸貯留装置を有する自動ワインダにおいて、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0120】
(11)上記(1)~(9)の糸巻取装置において、供給部は、空気の力により紡績された糸を供給してもよい。これにより、糸貯蔵装置を有する空気紡績機において、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【0121】
(12)上記(1)~(9)の糸巻取装置において、供給部は、ローターの回転力により紡績された糸を供給してもよい。これにより、糸貯留装置を有するオープンエンド紡績機において、糸貯留装置への糸の案内と、糸貯留装置から供給部側への糸の案内と、を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、糸巻取装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 :自動ワインダ
2 :ワインダユニット
3 :機台制御装置
4 :給糸ボビン供給装置
5 :玉揚装置
6 :給糸部
7 :糸案内部
8 :パッケージ形成部
10 :解舒補助装置
11 :下糸フィーラー
12 :テンション付与部
13 :捕捉装置
13A :第1捕捉部
13B :第2捕捉部
14 :糸継装置
15 :カッタ
16 :糸監視装置
19 :ハウジング
21 :給糸ボビン
22 :巻取ボビン
23 :クレードル
24 :綾振ドラム
25 :制御部
26 :搬送トレイ
27 :可動部材
28 :補助吹送り部
30 :パッケージ
37 :引出ガイド
40 :糸貯留装置
41 :貯留ローラ
41a :テーパ部
41b :テーパ部
41c :円筒部
41d :外周面
41e :端部
41f :端部
41g :内周面
42 :リング部材
43a :第一凹部
45 :駆動モータ
47 :カバー
47a :対向面
50 :検出ユニット
51 :筐体
53 :検出部
53A :ラインセンサ
53B :レンズ
55 :発光部
55A :LED基板
55B :光源
55C :光導波路
60 :糸噴出部
70 :ワックス付与装置
80 :糸案内部材
90 :移動部
91 :カム
91A :第1プーリ
91B :ベルト
91C :第2プーリ
91D :モータ
92 :第1アーム
93 :第2アーム
94 :位置センサ
A :貯留領域
A1 :第1軸
A2 :第2軸
C1 :回転軸
CH :筐体
L1 :第一直線
L2 :第二直線
O :原点
P1 :第1位置
P2 :第2位置
P3 :第3位置
PH :側面
PH1 :第1外周位置
PH2 :第2外周位置
ST1 :直線区間
Y :糸
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9