(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070499
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及びこれを用いた電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H02M3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181033
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川高 伸人
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB82
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG05
5H730FG25
5H730FV05
5H730FV08
5H730FV09
(57)【要約】
【課題】並列運転用の基準電圧(特性目標電圧)を生成する回路の消費電力を小さく抑えることができるスイッチング電源装置及びこれを用いた電源システムを提供する。
【解決手段】出力特性Xoの制御の目標となる特性目標電圧Vmを生成し、Vmライン22aに出力する特性目標電圧生成部20を備える。特性目標電圧生成部20は、設定電圧生成部24,定電流回路26及びVm制御部28を備える。設定電圧生成部24は、直流の設定電圧Vmsを生成する。定電流回路26は、Vmライン22aを正の電圧にプルアップするための一定電流JをVmライン22aに流し込む。Vm制御部28は、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>h・Vms[hは1以上の定数]の時にVmライン22aから電流を引き込み、Vm≦h・Vmsの時にVmライン22aから電流を引き込むのを停止することによって、特性目標電圧Vm=h・Vmsになるように制御する。設定電圧Vms又は定数hを外部から変更できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって所定の出力電圧に変換し、出力端に接続された負荷に前記出力電圧及び出力電流を供給する電力変換部と、
前記出力電圧又は前記出力電流を制御対象の出力特性Xoとし、前記出力特性Xoが目標の値になるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力するスイッチング制御部とを備えたスイッチング電源装置において、
前記出力特性Xo又はそれに相当する特性を検出し、これに対応した電圧である出力特性信号Vos=k・Xo[kは正の定数]を出力する出力特性検出回路が設けられ、
前記スイッチング制御部は、前記出力特性信号Vosと特性目標電圧Vmとが等しくなるように前記駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する駆動パルス生成部と、前記特性目標電圧Vmを生成し、前記駆動パルス生成部に向けて出力する特性目標電圧生成部と、前記特性目標電圧生成部の出力ラインであるVmラインを外部に接続可能にするVmライン外部接続端子とを備え、
前記特性目標電圧生成部は、直流の設定電圧Vmsを生成する設定電圧生成部と、前記Vmラインを正の電圧にプルアップするための一定電流を前記Vmラインに流し込む定電流回路と、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>h・Vms[hは1以上の定数]の時に前記Vmラインから電流を引き込み、Vm≦h・Vmsの時に前記Vmラインから電流を引き込むのを停止することによって、前記特性目標電圧Vmが前記設定電圧Vmsに対応した値h・Vmsになるように制御するVm制御部とを備え、
前記特性目標電圧生成部は、前記設定電圧生成部が生成する前記設定電圧Vmsの値、又は前記Vm制御部の前記定数hの値を外部から変更できるように構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタが前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、前記直流電圧源と前記第一PNPトランジスタのベースとの間に接続された第二抵抗と、前記第一PNPトランジスタのベースとグランドとの間に接続された第三抵抗とを備える請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタが前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、一端が前記直流電圧源に接続された第二抵抗と、エミッタが前記第二抵抗の他端に接続され、コレクタ及びベースが前記第一PNPトランジスタのベースに接続された第二PNPトランジスタと、一端が前記第二PNPトランジスタのベースに接続され、他端がグランドに接続された第三抵抗とを備える請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記特性目標電圧生成部は、前記定電流回路が流す前記一定電流のオンとオフとを切り替えるためのオンオフ切り替え部を備える請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタがダイオードを介して前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、前記直流電圧源と前記第一PNPトランジスタのベースとの間に接続された第二抵抗と、前記第一PNPトランジスタのベースとグランドとの間に接続された第三抵抗とを備え、
前記オンオフ切り替え部は、前記一定電流をオンからオフに切り替える時、前記第一PNPトランジスタのベースの、前記グランドに対する電位を強制的に低下させることによって、前記第一PNPトランジスタをオフさせる請求項4記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタがダイオードを介して前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、一端が前記直流電圧源に接続された第二抵抗と、エミッタが前記第二抵抗の他端に接続され、コレクタ及びベースが前記第一PNPトランジスタのベースに接続された第二PNPトランジスタと、一端が前記第二PNPトランジスタのベースに接続され、他端がグランドに接続された第三抵抗とを備え、
前記オンオフ切り替え部は、前記一定電流をオンからオフに切り替える時、前記第一PNPトランジスタのベースの、前記グランドに対する電位を強制的に低下させることによって、前記第一PNPトランジスタをオフさせる請求項4記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が互いに並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が互いに連結され、前記各出力特性検出回路の前記定数kが一律の値に設定されており、
前記各スイッチング電源装置の中の、単体で動作させた時に前記特性目標電圧Vmが最も低くなる1台をマスタ電源、その他をスレーブ電源とし、前記マスタ電源を単体で動作させた時の前記特性目標電圧VmをVm(M)とした時、
前記マスタ電源の前記駆動パルス生成部は、自己の前記特性目標電圧生成部が生成した前記特性目標電圧Vm(M)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成し
前記スレーブ電源の前記駆動パルス生成部は、自己の前記Vmライン外部接続端子を通じて入力された前記特性目標電圧Vm(M)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成することを特徴とする電源システム。
【請求項8】
請求項4記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置の前記オンオフ切り替え部は、自己の前記スイッチング電源装置が前記マスタ電源か前記スレーブ電源かを特定するための情報を取得し、前記スレーブ電源であると認識された場合に、自己の前記一定電流をオフさせる請求項7記載の電源システム。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が互いに並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が互いに連結され、前記各出力特性検出回路の前記定数kが一律の値に設定されており、
前記Vmライン外部接続端子には、前記Vmライン外部接続端子の電圧が外部指定電圧Vm(G)になるように動作する外部可変回路が接続され、前記外部可変回路は、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vm(G)の時に前記Vmライン外部接続端子から電流を引き込み、Vm≦Vm(G)の時に前記Vmライン外部接続端子から電流を引き込むのを停止する動作を行う回路であり、
前記各スイッチング電源装置は、単体で動作させた時の前記特性目標電圧Vmが前記外部指定電圧Vm(G)よりも高くなるように、前記設定電圧Vms及び前記係数hが設定されており、
前記各スイッチング電源装置の前記Vmラインに前記外部指定電圧Vm(G)が発生し、前記各駆動パルス生成部は、この前記特性目標電圧Vm(G)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成することを特徴とする電源システム。
【請求項10】
請求項4記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置の中の一部の前記スイッチング電源装置に向けて、前記一定電流をオフさせる旨の外部指令を送信する外部制御機器が設けられ、
前記外部指令を受けた前記スイッチング電源装置の前記オンオフ切り替え部は、自己の前記一定電流をオフさせる請求項9記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列運転が可能なスイッチング電源装置、及び複数台のスイッチング電源装置を並列運転させた電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数台のスイッチング電源装置の出力端を並列接続し、1つの負荷に向けて負荷電力を供給するようにした電源システムが使用されている。複数台のスイッチング電源装置を並列運転させる場合、各スイッチング電源装置が負担する負荷電力を均等化することが課題になる。
【0003】
従来、この課題を解決するための技術として、特許文献1に開示されている並列運転方式の技術があった。この並列運転方式は、並列接続される電源装置の各々に、安定化出力電圧を決める基準電圧を発生する基準電圧発生回路として、基準電圧調整手段を有する並列制御型の基準電圧発生回路を設け、この基準電圧発生回路の基準電圧出力端子を相互に接続するというものである。特許文献1の第2図には、基準電圧出力端子(7a)が接続された基準電圧ラインを正の直流電圧にプルアップするプルアップ用抵抗と、電流引き込み型の出力段を有し、基準電圧ラインから電流を引き込むことによって基準ラインに発生する基準電圧を調整する電圧基準電圧調整手段とで構成された基準電圧発生回路が記載されている。
【0004】
この並列運転方式によれば、各電源装置を並列運転した時、各電源装置の基準電圧が、特定の1台の電源装置の基準電圧(最も低い基準電圧)に統一されるので、各電源装置を確実に動作させることができ、負荷電力の負担を概ね均等化することができる。また、この特定の電源をマスタ電源とすれば、マスタ電源の基準電圧調整手段のボリューム(VR)を可変調節することによって、各電源装置の出力電圧を一斉に変更できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の並列運転方式に使用される電源装置を単体で使用した時、及びこれらを並列運転した時、動作状況によって基準電圧発生回路の消費電力が非常に大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、並列運転用の基準電圧(特性目標電圧)を生成する回路の消費電力を小さく抑えることができるスイッチング電源装置及びこれを用いた電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のスイッチング電源装置は、入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって所定の出力電圧に変換し、出力端に接続された負荷に前記出力電圧及び出力電流を供給する電力変換部と、前記出力電圧又は前記出力電流を制御対象の出力特性Xoとし、前記出力特性Xoが目標の値になるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力するスイッチング制御部とを備えたスイッチング電源装置であって、
前記出力特性Xo又はそれに相当する特性を検出し、これに対応した電圧である出力特性信号Vos=k・Xo[kは正の定数]を出力する出力特性検出回路が設けられ、
前記スイッチング制御部は、前記出力特性信号Vosと特性目標電圧Vmとが等しくなるように前記駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する駆動パルス生成部と、前記特性目標電圧Vmを生成し、前記駆動パルス生成部に向けて出力する特性目標電圧生成部と、前記特性目標電圧生成部の出力ラインであるVmラインを外部に接続可能にするVmライン外部接続端子とを備え、
前記特性目標電圧生成部は、直流の設定電圧Vmsを生成する設定電圧生成部と、前記Vmラインを正の電圧にプルアップするための一定電流を前記Vmラインに流し込む定電流回路と、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>h・Vms[hは1以上の定数]の時に前記Vmラインから電流を引き込み、Vm≦h・Vmsの時に前記Vmラインから電流を引き込むのを停止することによって、前記特性目標電圧Vmが前記設定電圧Vmsに対応した値h・Vmsになるように制御するVm制御部とを備え、
前記特性目標電圧生成部は、前記設定電圧生成部が生成する前記設定電圧Vmsの値、又は前記Vm制御部の前記定数hの値を外部から変更できるように構成されているスイッチング電源装置である。
【0009】
前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタが前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、前記直流電圧源と前記第一PNPトランジスタのベースとの間に接続された第二抵抗と、前記第一PNPトランジスタのベースとグランドとの間に接続された第三抵抗とを備える構成にすることができる[請求項2記載のスイッチング電源装置]。あるいは、前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタが前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、一端が前記直流電圧源に接続された第二抵抗と、エミッタが前記第二抵抗の他端に接続され、コレクタ及びベースが前記第一PNPトランジスタのベースに接続された第二PNPトランジスタと、一端が前記第二PNPトランジスタのベースに接続され、他端がグランドに接続された第三抵抗とを備える構成にすることができる[請求項3記載のスイッチング電源装置]。
【0010】
また、前記特性目標電圧生成部は、前記定電流回路が流す前記一定電流のオンとオフとを切り替えるためのオンオフ切り替え部を備える構成にすることが好ましい[請求項4記載のスイッチング電源装置]。この場合、前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタがダイオードを介して前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、前記直流電圧源と前記第一PNPトランジスタのベースとの間に接続された第二抵抗と、前記第一PNPトランジスタのベースとグランドとの間に接続された第三抵抗とを備え、前記オンオフ切り替え部は、前記一定電流をオンからオフに切り替える時、前記第一PNPトランジスタのベースの、前記グランドに対する電位を強制的に低下させることによって、前記第一PNPトランジスタをオフさせる構成にすることができる[請求項5記載のスイッチング電源装置]。あるいは、前記定電流回路は、一端が直流電圧源に接続された第一抵抗と、エミッタが前記第一抵抗の他端に接続され、コレクタがダイオードを介して前記Vmラインに接続されて、前記一定電流を前記Vmラインに流し込む第一PNPトランジスタと、一端が前記直流電圧源に接続された第二抵抗と、エミッタが前記第二抵抗の他端に接続され、コレクタ及びベースが前記第一PNPトランジスタのベースに接続された第二PNPトランジスタと、一端が前記第二PNPトランジスタのベースに接続され、他端がグランドに接続された第三抵抗とを備え、前記オンオフ切り替え部は、前記一定電流をオンからオフに切り替える時、前記第一PNPトランジスタのベースの、前記グランドに対する電位を強制的に低下させることによって、前記第一PNPトランジスタをオフさせる構成にすることができる[請求項6記載のスイッチング電源装置]。
【0011】
請求項7記載の電源システムは、請求項1乃至6のいずれか記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が互いに並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が互いに連結され、前記各出力特性検出回路の前記定数kが一律の値に設定されており、
前記各スイッチング電源装置の中の、単体で動作させた時に前記特性目標電圧Vmが最も低くなる1台をマスタ電源、その他をスレーブ電源とし、前記マスタ電源を単体で動作させた時の前記特性目標電圧VmをVm(M)とした時、
前記マスタ電源の前記駆動パルス生成部は、自己の前記特性目標電圧生成部が生成した前記特性目標電圧Vm(M)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成し
前記スレーブ電源の前記駆動パルス生成部は、自己の前記Vmライン外部接続端子を通じて入力された前記特性目標電圧Vm(M)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成する電源システムである。
【0012】
例えば、請求項4記載のスイッチング電源装置を複数台使用し、前記各スイッチング電源装置の前記オンオフ切り替え部は、自己の前記スイッチング電源装置が前記マスタ電源か前記スレーブ電源かを特定するための情報を取得し、前記スレーブ電源であると認識された場合に、自己の前記一定電流をオフさせる構成にすることができる[請求項8記載の電源システム]。
【0013】
また、請求項9記載の電源システムは、請求項1乃至6のいずれか記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が互いに並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が互いに連結され、前記各出力特性検出回路の前記定数kが一律の値に設定されており、
前記Vmライン外部接続端子には、前記Vmライン外部接続端子の電圧が外部指定電圧Vm(G)になるように動作する外部可変回路が接続され、前記外部可変回路は、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vm(G)の時に前記Vmライン外部接続端子から電流を引き込み、Vm≦Vm(G)の時に前記Vmライン外部接続端子から電流を引き込むのを停止する動作を行う回路であり、
前記各スイッチング電源装置は、単体で動作させた時の前記特性目標電圧Vmが前記外部指定電圧Vm(G)よりも高くなるように、前記設定電圧Vms及び前記係数hが設定されており、
前記各スイッチング電源装置の前記Vmラインに前記外部指定電圧Vm(G)が発生し、前記各駆動パルス生成部は、この前記特性目標電圧Vm(G)と自己の前記出力特性信号Vosとが等しくなるように前記駆動パルスを生成することを電源システムである。
【0014】
例えば、請求項4記載のスイッチング電源装置を複数台使用し、前記各スイッチング電源装置の中の一部の前記スイッチング電源装置に向けて、前記一定電流をオフさせる旨の外部指令を送信する外部制御機器が設けられ、前記外部指令を受けた前記スイッチング電源装置の前記オンオフ切り替え部は、自己の前記一定電流をオフさせる構成にすることができる[請求項10記載の電源システム]。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスイッチング電源装置は、特許文献1の基準電圧発生回路に類似した構成の特性目標電圧生成部を有しているが、特性目標電圧生成部の出力ラインであるVmラインを独特な定電流回路でプルアップしている点で大きく相違する。そして、この構成の違いにより、本発明のスイッチング電源装置を単体で使用した時、及びこれらを並列運転して使用した時(本発明の電源システムを構成した時)に、特性目標電圧生成部の消費電力を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1の特性目標電圧生成部を構成する設定電圧生成部の2つの具体例を示すブロック図(a)、(b)である。
【
図3】
図1の特性目標電圧生成部を構成する定電流回路の2つの具体例を示す回路図(a)、(b)である。
【
図4】
図1の特性目標電圧生成部を構成するVm制御部の2つの具体例を示す回路図(a)、(b)である。
【
図5】
図1の特性目標電圧生成部における消費電力の数値例を示す図(a)、比較例の回路における消費電力の数値例を示す図(b)である。
【
図6】本発明の電源システムの第一の実施形態を示すブロック図である。
【
図7】
図6の各特性目標電圧生成部における消費電力の数値例を示す図である。
【
図8】本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態を示すブロック図である。
【
図9】
図8の特性目標電圧生成部を構成する定電流回路及びオンオフ切り替え部の2つの具体例を示す回路図(a)、(b)である。
【
図10】本発明の電源システムの第二の実施形態を示すブロック図(a)、マスタ電源及びスレーブ電源の各特性目標電圧生成部における消費電力の数値例を示す図である。
【
図11】本発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態を示すブロック図である。
【
図12】本発明の電源システムの第三の実施形態を示すブロック図である。
【
図13】2台のスイッチング電源装置の各特性目標電圧生成部における消費電力、及び外部可変回路における消費電力の数値例を示す図である。
【
図14】特性目標電圧生成部の一変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第一の実施形態>>
以下、本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第一の実施形態について、
図1~
図7に基づいて説明する。
【0018】
<第一の実施形態のスイッチング電源装置10>
この実施形態のスイッチング電源装置10は、並列運転を行うのに適した機能を有し、単体でも使用できる電源装置である。
【0019】
スイッチング電源装置10は、
図1に示すように、入力端に供給された直流又は交流の入力電圧Viを、主スイッチング素子(図示せず)のスイッチング動作によって所定の出力電圧Voに変換し、出力端に接続された負荷(図示せず)に出力電圧Vo及び出力電流Ioを供給する電力変換部12を備えている。その他には、スイッチング制御部14及び出力特性検出回路16を備えている。
【0020】
スイッチング制御部14は、概して言うと、主スイッチング素子のスイッチング動作を制御するブロックである。スイッチング制御部14は、出力電圧Vo又は出力電流Ioを制御対象の出力特性Xoとし、出力特性Xoが目標の値になるように主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスVgを生成し、主スイッチング素子に向けて出力する。したがって、スイッチング電源装置10は、制御対象の出力特性Xoを出力電圧Voとすれば定電圧電源として使用することができ、出力電流Ioとすれば定電流電源として使用することができる。
【0021】
出力特性検出回路16は、出力特性Xo(Vo,Io)又はそれに相当する特性を検出し、これに対応したアナログ電圧である出力特性信号Vos=k・Xo[kは正の定数]を出力するブロックである。
【0022】
次に、スイッチング制御回路14の内部の構成を詳しく説明する。スイッチング制御部14は、駆動パルス生成部18、特性目標電圧生成部20及びVmライン外部接続端子22を備えている。
【0023】
駆動パルス生成部18は、出力特性検出回路16が出力した出力特性信号Vosと、Vmライン22aに発生している特性目標電圧Vmとが等しくなるように、パルス幅変調を行って駆動パルスVgを生成し、主スイッチング素子に向けて出力するブロックである。
【0024】
特性目標電圧生成部20は、特性目標電圧Vmを生成し、Vmライン22aを通じて駆動パルス生成部18に出力するブロックである。特性目標電圧生成部20は、設定電圧生成部24、プルアップ回路26及びVm制御部28で構成される。
【0025】
設定電圧生成部24は、例えば
図2(a)に示すように、デジタル演算部24a、パルス幅変調部24b及びローパスフィルタ24cで構成することができる。デジタル演算部24aは、設定電圧Vmsの指定値や設定電圧Vmsを変化させる時の変化速度の指定値等がデフォルト設定され、これらの指定値に基づくデジタル演算処理を行って、どのような設定電圧Vmsを生成するかを示す設定電圧情報J(Vms)を作成するブロックである。設定電圧Vmsの指定値の意味は後で説明する。
【0026】
パルス幅変調部24bは、デジタル演算部24aが作成した設定値情報J(Vms)に基づいてデューティDが設定される矩形波電圧Vp(波高値V1)を出力するブロックで、ローパスフィルタ24cは、矩形波電圧Vpを平滑してアナログの設定電圧Vms≒V1・Dを発生させるブロックである。パルス幅変調部24b以降の構成は、デジタルプロセッサ内にパルス幅変調部24bを設け、ディスクリート部品で成るローパスフィルタ24cを組み合わせる独特な構成であり、安価な汎用デジタルプロセッサを使用しても高い分解能で設定電圧Vmsを生成できるという利点がある。その他には、
図2(b)に示すように、上記のデジタル演算部24a及びD/Aコンバータ24dでシンプルに構成することも可能である。ただし、D/Aコンバータ24dを使用する場合、設定電圧Vmsの分解能を高くするためには、比較的高価な高速デジタルプロセッサが必要になる点に留意する。
【0027】
なお、設定電圧Vmsの指定値や変化速度の指定値は、使用者からの外部指令GSによって設定変更することができる。外部指令GSは様々な方法で入力することができ、例えば、
図2(a)に示すように、使用者が、スイッチング電源装置10に外部接続した外部制御機器30を通じてデジタル信号として入力する方法がある。また、
図2(b)に示すように、使用者が、スイッチング電源装置10の内部に設けた電圧可変回路32の可変抵抗器32aを手動で調節し、アナログ電圧として入力する方法がある。
【0028】
定電流回路26は、特性目標電圧生成部202の出力ラインであるVmライン22aを正の電圧にプルアップする回路である。定電流回路26は、例えば
図3(a)に示すように、一端が直流電圧源Vccに接続された第一抵抗34aと、エミッタが第一抵抗34aの他端に接続され、コレクタがVmライン22aに接続されて、一定電流JをVmライン22aに流し込む第一PNPトランジスタ34bと、直流電圧源Vccと第一PNPトランジスタ34bのベースとの間に接続された第二抵抗34cと、第一PNPトランジスタ34bのベースとグランドとの間に接続された第三抵抗34dとで構成することができる。あるいは、
図3(b)に示すように、第一PNPトランジスタ34bのベースと第二抵抗34cと第三抵抗34dとの接続点に第二PNPトランジスタ34eを追加してカレントミラーの構成にしてもよい。
【0029】
Vm制御回路28は、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>h・Vms[hは1以上の定数]の時にVmライン22aから電流を引き込み、Vm≦h・Vmsの時にVmライン22aから電流を引き込むのを停止することによって、Vmライン22aの特性目標電圧Vmが設定電圧Vmsに対応した値h・Vmsになるように制御するブロックである。例えば、
図4(a)の構成の場合、特性目標電圧Vmは設定電圧Vmsと等しい値に制御され、
図4(b)の構成の場合、特性目標電圧Vmは設定電圧Vmsよりも高い値に制御されることになる。
【0030】
ここで、出力特性Xo(Vo,Io)、出力特性信号Vos、特性目標電圧Vm及び設定電圧Vmsの関係を整理する。まず、出力特性Xo(Vo,Io)は出力特性信号Vosに対応した値なので、特性目標電圧Vmが変化すると、これに追従して出力特性信号Vosが変化し、出力特性Xo(Vo,Io)も同様に変化する。また、特性目標電圧Vmは設定電圧Vmsに対応した値なので、設定電圧Vmsが変化すると、これに追従して特性目標電圧Vmが変化する。したがって、出力特性Xoの値は、特性目標電圧Vm又は設定電圧Vmsの値を変更することによって調節することができる。
【0031】
Vmライン外部接続端子22は、Vmライン22aを外部に接続可能にする端子である。この端子は、複数台のスイッチング電源装置10を並列運転する時に相互に接続される端子であり、スイッチング電源装置10を単体で使用する時は、何も接続せずに開放状態にする。
【0032】
次に、発明の要部である特性目標電圧生成部20の動作を、具体的な数値例を基に説明する。
図5(a)の左図は、直流電圧源Vcc=10V、定電流回路26の一定電流J=1mAの条件で、Vm制御部28に設定電圧Vms=5Vが入力され、特性目標電圧Vm=h・Vms=5Vに制御されている状況を示しており、この場合、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流は1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。
【0033】
また、
図5(a)の右図は、出力特性Xo(Vo,Io)を低下させてゼロするため、設定電圧Vmsが0Vに変更され、特性目標電圧Vm=h・Vms=0Vに制御されている状況を示しており、この場合も、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流は1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。
【0034】
図5(b)は、定電流回路26を固定抵抗36に変更した比較例の動作を示している。この比較例は、背景技術で説明した特許文献1(第2図)と類似した構成である。
図5(b)の左図は、直流電圧源Vcc=10V、固定抵抗36が5kΩの条件で、Vm制御部28に設定電圧Vms=5Vが入力され、特性目標電圧Vm=h・Vms=5Vに制御されている状況を示しており、この場合、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流Iは1mAとなり、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。この10mWというのは、特性目標電圧生成部20の場合と同じ数値である。
【0035】
また、
図5(b)の右図は、出力特性Xo(Vo,Io)を低下させてゼロにするため、設定電圧Vmsが0Vに変更され、特性目標電圧Vm=h・Vms=0Vに制御されている状況を示しており、この場合、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流Iが2mAになるので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・2mA=20mWとなる。この20mWという数値は、特性目標電圧生成部20の場合の2倍の数値である。
【0036】
このように、固定抵抗36を用いた比較例のスイッチング電源装置の場合、出力特性Xo(Vo,Io)を可変するために特性目標電圧Vm又は設定電圧Vmsが変更されると、直流電圧源Vccが負担する総消費電力が格段に大きくなるという問題がある。これに対して、定電流回路26を用いた特性目標電圧生成部20の場合、特性目標電圧Vm又は設定電圧Vmsが変更されても、直流電圧源Vccが負担する総消費電力が小さく抑えられる。
【0037】
図5(a)において、スイッチング電源装置10の出力特性Xo(Vo,Io)は、Xo=Vos/k=Vm/kに制御される。そして、特性目標電圧Vm又は設定電圧Vmsの値を変更することによって、出力特性Xoの値を調節することができる。
【0038】
<第一の実施形態の電源システム38>
この実施形態の電源システム38は、
図6に示すように、2台のスイッチング電源装置10で構成される。2台のスイッチング電源装置10は、各出力特性検出回路16の定数kが一律の値に設定され、各Vm制御部32の定数hが一律の値に設定されており、電力変換部12の出力端同士を互いに並列接続し(並列運転させ)、1つの負荷に電力を供給する。負荷電力は、2台のスイッチング電源装置10の出力電力(=Vo・Io)を合算した値となる。さらに、Vmライン外部接続端子22同士が互いに連結されている。
【0039】
2台のスイッチング電源装置10は、設定電圧生成部24の設定電圧Vmsの指定値を意図的にずらし、単体で動作させた時に特性目標電圧Vmが異なる値になるようにしている。そこで、2台のスイッチング電源装置10のうち、単体で動作させた時に特性目標電圧Vmが相対的に低くなる方をマスタ電源10(M)、高くなる方をスレーブ電源10(S)と称して区別する。
【0040】
次に、マスタ電源10(M)及びスレーブ電源10(S)の各特性目標電圧生成部20の動作を、具体的な数値例を基に説明する。
図7は、直流電圧源Vcc=10V、定電流回路26の一定電流J=1mAの条件で、マスタ電源10(M)は、Vm制御部28に設定電圧Vms=5Vが入力され、スレーブ電源10(S)は、Vm制御部28に設定電圧Vms=7Vが入力されている状況を示している。マスタ電源10(M)は、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=5Vに制御される。
【0041】
一方、スレーブ電源10(S)は、単体で動作したとすれば、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=7Vに制御される。しかし、スレーブ電源10(S)は、Vmライン22aがVmライン外部接続端子22を介してマスタ電源10(M)のVmライン22aに連結されているので、特性目標電圧Vmが5Vに保持されることになる。そのため、スレーブ電源10(S)のVm制御部28は、Vmライン22aから電流を引き込む動作を停止したままの制御不能な状態に保持される。
【0042】
マスタ電源10(M)は、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流が1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。スレーブ電源10(S)も同様に、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流は1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。ただし、スレーブ電源10(S)の1mAは、マスタ電源10(M)のVm制御部28に流れ込むことになる。
【0043】
図7において、マスタ電源10(M)の特性目標電圧VmをVm(M)とすると、スレーブ電源10(S)の特性目標電圧VmもVm(M)となる。したがって、マスタ電源10(M)の出力特性Xo(Vo,Io)とスレーブ電源10(S)の出力特性Xo(Vo,Io)は同じ値になり、負荷電力を均等に負担することになる。電源システム38の動作説明は以上である。
【0044】
なお、上記の電源システム38は、2台のスイッチング電源装置10を並列運転する構成になっているが、3台以上のスイッチング電源装置10を並列運転する構成にしても、ほぼ同様の作用効果が得られる。3台以上を並列運転する場合は、単体で動作させた時の特性目標電圧Vmが最も低くなる1台がマスタ電源10(M)、その他がすべてスレーブ電源10(S)となる。そして、各電源装置の出力特性Xoの値は、マスタ電源10(M)によって制御されることになる。したがって、各電源装置の出力特性Xoの設定変更は、マスタ電源10(M)の設定電圧Vmsの指定値を変更するだけで容易に行うことができる。
【0045】
<スイッチング電源装置10及び電源システム38の効果のまとめ>
以上のように、スイッチング電源装置10は、特許文献1の基準電圧発生回路に類似した構成の特性目標電圧生成部20を有しているが、特性目標電圧生成部20の出力ラインであるVmライン20aを独特な定電流回路26でプルアップしている点で大きく相違する。そして、この構成の違いにより、スイッチング電源装置10を単体で使用した時、及びこれらを並列運転して使用した時(電源システム38を構成した時)に、特性目標電圧生成部20の消費電力を小さく抑えることができる。
【0046】
<<本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第二の実施形態>>
以下、本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第二の実施形態について、
図8~
図10に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10及び電源システム38と同様の構成とは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
この実施形態のスイッチング電源装置40及びこれを用いた電源システム46は、上記の電源システム38で発生する問題を解決できるものである。そこで、まず、電源システム38で発生する問題について、簡単に説明する。
【0048】
電源システム38の場合、
図7に示すように、マスタ電源10(M)のVm制御部28に、すべての電源装置の一定電流Jが集中する。したがって、例えば並列運転台数が10~15台になると、マスタ電源10(M)のVm制御部28の消費電力(損失)が過剰になる可能性があるので、並列運転台数の上限値を規定しなければならない。
【0049】
しかし、この実施形態のスイッチング電源装置40を用いた電源システム46では、この問題を容易に回避することができる。
【0050】
<第二の実施形態のスイッチング電源装置40>
スイッチング電源装置40は、並列運転を行うのに適した機能を有し、単体でも使用できる電源装置である。
図8に示すように、全体的な構成は上記のスイッチング電源装置10と類似しており、異なるのは、定電流回路26が定電流回路42に置き換えられ、新たにオンオフ切り替え部44が設けられている点である。以下、構成が異なる点を中心に説明する。
【0051】
定電流回路42は、例えば
図9(a)に示すように、定電流回路26[
図3(a)]と同様の回路素子を有し、さらに、第一PNPトランジスタ34bのコレクタとVmライン22aとの間に、逆流阻止用のダイオード42aを追加した構成になっている。あるいは、
図9(b)に示すように、定電流回路26[
図3(b)]と同様の回路素子を有し、さらに、第一PNPトランジスタ34bのコレクタとVmライン22aとの間に、逆流阻止用のダイオード42aを追加した構成にしてもよい。
【0052】
オンオフ切り替え部44は、定電流回路42が流す一定電流Jのオンとオフとを切り替えるブロックである。具体的には、第一PNPトランジスタ34bのベースとグランドとの間に接続されたスイッチ44aを備え、スイッチ44aをオフすることで一定電流Jをオンさせ、スイッチ44aをオンすることで一定電流Jをオフさせる構成になっている。
【0053】
オンオフ切り替え部44は、自己がマスタ電源かスレーブ電源かを特定するためのマスタ・スレーブ情報J(M/S)を能動的に取得し、マスタ電源の時に一定電流Jをオンさせ、スレーブ電源の時に一定電流Jをオフさせる動作を行う。例えば、設定電圧Vms、係数h及び特性目標電圧Vmの情報を取得し、Vm=h・Vmsを満たしている時はマスタ電源であると認識し、Vm≠h・Vmsの時はスレーブ電源として動作していると認識する。
【0054】
スイッチング電源装置40を単体で使用すると、オンオフ切り替え部44は、自己がマスタ電源と認識し、常に一定電流Jをオンの状態に保持する。したがって、スイッチング電源装置40を単体で使用する時の動作は、上記のスイッチング電源装置10と基本的に同じである。スイッチング電源装置40は、電源システム46に組み込んで並列運転させた時に、独特な動作を行う。
【0055】
<第二の実施形態の電源システム46>
電源システム46は、
図10(a)に示すように、2台のスイッチング電源装置40で構成される。2台のスイッチング電源装置40は、各出力特性検出回路16の定数kが一律の値に設定され、各Vm制御部28の定数hが一律の値に設定されており、電力変換部12の出力端同士を互いに並列接続し(並列運転させ)、1つの負荷に電力を供給する。負荷電力は、2台のスイッチング電源装置40の出力電力(=Vo・Io)を合算した値となる。さらに、Vmライン外部接続端子22同士が互いに連結されている。
【0056】
2台のスイッチング電源装置40は、設定電圧生成部24の設定電圧Vmsの指定値を意図的にずらし、単体で動作させた時に特性目標電圧Vmが異なる値になるようにしている。そこで、2台のスイッチング電源装置40のうち、単体で動作させた時に特性目標電圧Vmが相対的に低くなる方をマスタ電源40(M)、高くなる方をスレーブ電源40(S)と称して区別する。
【0057】
次に、マスタ電源40(M)及びスレーブ電源40(S)の各特性目標電圧生成部20の動作を、具体的な数値例を基に説明する。
図10(b)は、直流電圧源Vcc=10V、定電流回路42の一定電流J=1mAの条件で、マスタ電源40(M)は、Vm制御部28に設定電圧Vms=5Vが入力され、スレーブ電源40(S)は、Vm制御部28に設定電圧Vms=7Vが入力された状況を示している。マスタ電源40(M)は、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=5Vに制御される。そして、マスタ電源40(M)のオンオフ切り替え部44は、自己がマスタ電源だと認識して一定電流Jをオンの状態に保持させる。
【0058】
一方、スレーブ電源40(S)は、単体で動作したとすれば、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=7Vに制御される。しかし、スレーブ電源40(S)は、Vmライン22aがVmライン外部接続端子22を介してマスタ電源40(M)のVmライン22aに連結されているので、特性目標電圧Vmが5Vに保持されることになる。そのため、スレーブ電源10(S)のVm制御部28はVmライン22aから電流を引き込む動作を停止したままの制御不能な状態に保持される。さらに、スレーブ電源40(S)のオンオフ切り替え部44は、自己がスレーブ電源だと認識して一定電流Jをオフの状態に保持させる。
【0059】
マスタ電源40(M)は、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流が1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。スレーブ電源10(S)は、一定電流Jがオフしているので、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流はゼロとなり、直流電圧源Vccが負担する総消費電力はほぼゼロとなる。
【0060】
マスタ電源40(M)のVm制御部28に流れ込む電流は自己の一定電流J=1mAだけとなり、Vm制御部28の消費電力は5V・1mA=5mWとなる。また、スレーブ電源40(M)のVm制御部28に流れ込む電流はゼロとなり、Vm制御部28の消費電力はほぼゼロとなる。このように、スレーブ電源40(M)の一定電流Jがオフすることにより、無駄な消費電力が発生するのが阻止される。
【0061】
図10(b)において、マスタ電源40(M)の特性目標電圧VmをVm(M)とすると、スレーブ電源40(S)の特性目標電圧VmもVm(M)となる。したがって、マスタ電源40(M)の出力特性Xo(Vo,Io)とスレーブ電源40(S)の出力特性Xo(Vo,Io)は同じ値になり、負荷電力を均等に負担することになる。電源システム46の動作説明は以上である。
【0062】
なお、上記の電源システム46は、2台のスイッチング電源装置40を並列運転する構成になっているが、3台以上のスイッチング電源装置40を並列運転する構成にしてもよく、ほぼ同様の作用効果が得られる。3台以上を並列運転する場合は、単体で動作させた時の特性目標電圧Vmが最も低くなる1台がマスタ電源10(M)、その他がすべてスレーブ電源10(S)となる。つまり、1台の一定電流Jだけがオンになるので、並列運転台数を増やしたとしても、無駄な消費電力が増大することはない。
【0063】
<スイッチング電源装置40及び電源システム46の効果のまとめ>
以上のように、スイッチング電源装置40においても、第一の実施形態のスイッチング電源装置10と同様の優れた効果を得ることができる。
【0064】
さらにまた、スイッチング電源装置40を用いた電源システム46によれば、第一の実施形態の電源システム38と同様の優れた効果を得ることができ、さらに、スレーブ電源40(M)の一定電流Jを停止させるので、各特性目標電圧生成部20の消費電力をよりさらに小さく抑えることができる。
【0065】
<<本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第三の実施形態>>
以下、本発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第三の実施形態について、
図11~
図13に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
この実施形態のスイッチング電源装置48及びこれを用いた電源システム50は、上記の電源システム38で発生する問題(並列運転台数の上限値を規定しなければならないという問題)を、スイッチング電源装置40及びこれを用いた電源システム46とは別の手段で解決する。
【0067】
<第三の実施形態のスイッチング電源装置48>
スイッチング電源装置48は、並列運転を行うのに適した機能を有し、単体でも使用できる電源装置である。
図11に示すように、全体的な構成は上記のスイッチング電源装置40とほぼ同じであり、異なるのは、オンオフ切り替え部44が、マスタ・スレーブ情報J(M/S)を取得して動作するのではないという点である。
【0068】
オンオフ切り替え部44は、通常は定電流回路42の一定電流Jをオンの状態に保持し、一定電流Jをオフ信号させる旨の外部指令GSを受信すると、一定電流Jをオンからオフに切り替える動作を行う。
【0069】
スイッチング電源装置48を単体で使用する時は、外部指令GSが入力されないので、オンオフ切り替え部44は、常に一定電流Jをオンの状態に保持する。したがって、スイッチング電源装置48を単体で使用する時の動作は、上記のスイッチング電源装置10と基本的に同じである。スイッチング電源装置48は、電源システム50に組み込んで並列運転させた時に、独特な動作を行う。
【0070】
<第三の実施形態の電源システム50>
電源システム50は、
図12に示すように、2台のスイッチング電源装置48(48(1),48(2))と、外部可変回路52と、外部制御機器54とで構成される。
【0071】
スイッチング電源装置48(1),48(2)は、各出力特性検出回路16の定数kが一律の値に設定され、各Vm制御部28の定数hが一律の値に設定されており、電力変換部12の出力端同士を互いに並列接続し(並列運転させ)、1つの負荷に電力を供給する。負荷電力は、2台のスイッチング電源装置40の出力電力(=Vo・Io)を合算した値となる。さらに、Vmライン外部接続端子22同士が互いに連結されている。
【0072】
外部可変回路52は、Vmライン外部接続端子22に接続され、Vmライン外部接続端子22の電圧が外部指定電圧Vm(G)になるように動作する回路である。具体的には、外部可変回路52は電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vm(G)の時にVmライン外部接続端子22から電流を引き込み、Vm≦Vm(G)の時にVmライン外部接続端子22から電流を引き込むのを停止する。
【0073】
外部制御機器54は、並列運転をしているスイッチング電源装置の中の、特定の1台[ここでは、スイッチング電源装置48(1)]を除くすべてのスイッチング電源装置[ここでは、スイッチング電源装置48(2))]のオンオフ切り替え部44に、一定電流Jをオフさせる旨の外部指令GSを送信する。外部指令GSの送信は、使用者が外部制御機器54を操作することによって行ってもよいし、外部制御機器54が自動送信するようにプログラミングしておいてもよい。
【0074】
スイッチング電源装置48(1),48(2)は、単体で動作した時の特定目標電圧Vmが、外部可変回路52の外部指定電圧Vm(G)よりも高くなるように、設定電圧Vms及び係数hが設定されている。ここでは、係数hが一律の値なので、設定電圧生成部24の設定電圧Vmsの指定値を異なる値にすることによって、そのように設定している。
【0075】
次に、スイッチング電源装置48(1),48(2)の各特性目標電圧生成部20、及び外部可変回路52の動作を、具体的な数値例を基に説明する。
【0076】
図13は、外部可変回路52は外部指定電圧Vm(G)=5Vで、スイッチング電源装置48(1)及び48(2)は、直流電圧源Vcc=10V、定電流回路26の一定電流J=1mAの条件で、Vm制御部28に設定電圧Vms=7Vが入力されている状況を示している。この時、外部制御機器54からの外部指令GSを受けて、スイッチング電源装置48(2)の一定電流Jはオフの状態に保持され、スイッチング電源装置48(1)の一定電流Jだけがオンの状態になっている。
【0077】
スイッチング電源装置48(1)及び48(2)のVmライン外部接続端子22は、スイッチング電源装置48(1)の定電流回路42によってプルアップされており、外部可変回路52がVmライン外部接続端子22から電流を引き込み、Vmライン外部接続端子22の電圧がVm(G)=5Vに制御される。
【0078】
スイッチング電源装置48(1)は、単体で動作したとすれば、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=7Vに制御されるが、外部可変回路52の制御が優先され、Vmライン22aの特性目標電圧Vmが5Vに保持されることになる。同様に、スイッチング電源装置48(2)は、単体で動作したとすれば、自己のVm制御部28の制御により、特性目標電圧Vm=h・Vms=7Vに制御されるが、外部可変回路52の制御が優先され、Vmライン22aの特性目標電圧Vmが5Vに保持されることになる。
【0079】
スイッチング電源装置48(1)は、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流が1mAなので、直流電圧源Vccが負担する総消費電力は10V・1mA=10mWとなる。スイッチング電源装置48(2)は、一定電流Jがオフしているので、直流電圧源Vcc=10Vから流出する電流はゼロとなり、直流電圧源Vccが負担する総消費電力はほぼゼロとなる。
【0080】
外部可変回路52に流れ込む電流は、スイッチング電源装置48(1)の一定電流J=1mAだけなので、外部可変回路52の消費電力は5V・1A=5mWとなる。また、スイッチング電源装置48(1),48(2)の各Vm制御部28に流れ込む電流はゼロとなり、各Vm制御部28の消費電力はほぼゼロとなる。このように、スイッチング電源装置48(2)の一定電流Jをオフさせることによって、無駄な消費電力が発生するのを阻止することができる。
【0081】
図13において、スイッチング電源装置48(1),48(2)の特性目標電圧Vmは、ともにVm(G)となる。したがって、2台の出力特性Xo(Vo,Io)は同じ値になり、負荷電力を均等に負担することになる。電源システム50の動作説明は以上である。
【0082】
なお、上記の電源システム50は、2台のスイッチング電源装置48を並列運転する構成になっているが、3台以上のスイッチング電源装置48を並列運転する構成にしてもよく、ほぼ同様の作用効果が得られる。3台以上を並列運転する場合でも、少なくとも1台の一定電流Jをオンにしておけばよいので、並列運転台数を増やしたとしても、無駄な消費電力が増大することはない。
【0083】
<スイッチング電源装置48及び電源システム50の効果のまとめ>
以上のように、スイッチング電源装置48においても、第一及び第二の実施形態のスイッチング電源装置10,40と同様の優れた効果を得ることができる。
【0084】
またさらに、スイッチング電源装置48を用いた電源システム50によれば、第一の実施形態の電源システム38と同様の優れた効果を得ることができ、さらに、第二の実施形態の電源システム46と同様に、各特性目標電圧生成部20の消費電力(外部可変回路52の消費電力を含む)を小さく抑えることができる。
【0085】
<<その他の実施形態など>>
なお、本発明のスイッチング電源装置及び電源システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の動作説明の中で、各部の電圧、電流及び電力の具体的な数値を示したが、これは、あくまでも説明を分かりやすくするための例であり、これ以外の設定で使用できることは言うまでもない。
【0086】
スイッチング電源装置10の定電流回路26は、
図3(a)、(b)の回路構成に限定されず、本発明の狙いの動作が可能であれば、他の公知な構成に変更することができる。同様に、スイッチング電源装置40,48の定電流回路42は、
図9(a)、(b)の回路構成に限定されず、本発明の狙いの動作が可能であれば、他の公知な構成に変更することができ、それに合わせてオンオフ切り替え部の構成も変更すればよい。
【0087】
スイッチング電源装置10,40,48の設定電圧生成部24及びVm制御部28は、
図14に示す設定電圧生成部56及びVm制御部58に置き換えることができる。上記の設定電圧生成部24及びVm制御部28の場合は、Vm=h・Vmsの中の係数hを固定値とし、特性目標値Vmを変化させる時に設定電圧Vmsを変化させる構成になっている。これに対して、設定電圧生成部56及びVm制御部58の場合は、Vm=h・Vmsの中の設定電圧Vmsを固定値とし、特性目標値Vmを変化させる時に係数h設定電圧Vmsを変化させる構成になっており、係数hは、オペアンプの反転入力端子に接続された抵抗R1とR2の分圧比を外部指令GSで変更することによって変化させることができる。この設定電圧生成部56及びVm制御部58を使用した場合でも、スイッチング電源装置及びこれを用いた電源システムとしての動作は同じであり、同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、その他の電源システムとして、例えば、別々の負荷に電力を供給する複数組の電源システム38(又は46又は50)を設け、Vm外部接続端子22同士を相互に連結した構成にすることも可能である。このような構成にしても、各スイッチング電源装置10(又は40又は48)の特性目標電圧生成部20の消費電力を小さく抑えることができる。なお、複数組の電源システム50を組み合わせる場合は、各電源システム50の外部制御機器54の機能を1台の外部制御機器に集約するとよい。
【0089】
また、その他の電源システムとして、別々の負荷に電力を供給する電源システム38(又は46又は50)と1台のスイッチング電源装置10(又は40又は48)とを設け、Vm外部接続端子22同士を相互に連結した構成にすることも可能である。このような構成にしても、各スイッチング電源装置10(又は40又は48)の特性目標電圧生成部20の消費電力を小さく抑えることができる。なお、電源システム50と1台のスイッチング電源装置48とを組み合わせる場合は、電源システム50の外部制御機器54が1台のスイッチング電源装置48にも外部指令GSを送信する構成にするとよい。
【0090】
また、その他の電源システムとして、別々の負荷に電力を供給する複数台のスイッチング電源装置10(又は40又は48)を設け、Vm外部接続端子22同士を相互に連結した電構成にすることも可能である。この場合も、各スイッチング電源装置10(又は40又は48)の特性目標電圧生成部20の消費電力を小さく抑えることができる。なお、複数台のスイッチング電源装置48を組み合わせる場合は、電源システム50の外部制御機器54を別途用意し、各スイッチング電源装置48に外部指令GSを送信する構成にするとよい。
【符号の説明】
【0091】
10,40,48 スイッチング電源装置
10(M),40(M) マスタ電源
10(S),40(S) スレーブ電源
12 電力変換部
14 スイッチング制御部
16 出力特性検出回路
18 駆動パルス生成部
20 特性目標電圧生成部
22 Vmライン外部接続端子
22a Vmライン
24,56 設定電圧生成部
26,42 定電流回路
28,58 Vm制御部
34a 第一抵抗
34b 第一PNPトランジスタ
34c 第二抵抗
34d 第三抵抗
34e 第二PNPトランジスタ
38,46,50 電源システム
42a ダイオード
44 オンオフ切り替え部
52 外部可変回路
54 外部制御機器
GS 外部指令
h 定数
Io 出力電流(出力特性)
J 一定電流
J(M/S) マスタ・スレーブ情報
K 定数
PS(ON) パワーオン信号(外部指令)
PS(OFF) パワーオフ信号(外部指令)
T(Vms) Vms遅れ時間
Vi 入力電圧
Vg 駆動パルス
Vm 特性目標電圧
Vms 設定電圧
Vo 出力電圧(出力特性)
Vos 出力特性信号
Xo 出力特性