(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070503
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】先端ビット保持治具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B25B21/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181038
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 直樹
(57)【要約】
【課題】主に、回転駆動軸に対して先端ビットを容易に交換し得るようにする。
【解決手段】回転駆動軸2に装着されて、回転駆動軸2に先端ビット5を交換可能に保持させる先端ビット保持治具7に関する。
一端部に回転駆動軸2に対して取付可能な軸取付部11を有し、
他端部に先端ビット5に備えられた取付穴12へ挿入可能なビット挿入部13を有するソケット部材14を備えている。
ソケット部材14は、軸取付部11とビット挿入部13との間に、先端ビット5をソケット部材14に保持させるビット保持部15を備えている。
ビット保持部15には磁石16が取付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動軸に装着されて、前記回転駆動軸に先端ビットを交換可能に保持させる先端ビット保持治具であって、
一端部に前記回転駆動軸に対して取付可能な軸取付部を有し、
他端部に前記先端ビットに備えられた取付穴へ挿入可能なビット挿入部を有するソケット部材を備え、
前記ソケット部材は、前記軸取付部と前記ビット挿入部との間に、前記先端ビットを前記ソケット部材に保持させるビット保持部を備え、
前記ビット保持部には磁石が取付けられていることを特徴とする先端ビット保持治具。
【請求項2】
請求項1に記載の先端ビット保持治具であって、
前記ビット保持部は、外側面に、前記回転駆動軸の軸線方向および接線方向へ延びる平面部を有し、
前記平面部は、前記ビット保持部に対し、周方向に複数箇所設けられ、
前記磁石は、前記平面部に取付けられていることを特徴とする先端ビット保持治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の先端ビット保持治具であって、
前記磁石は、ネオジム磁石であることを特徴とする先端ビット保持治具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の先端ビット保持治具であって、
前記ソケット部材は、前記一端部に、前記回転駆動軸に取付けられたチャック部に取付可能なチャック取付部を有することを特徴とする先端ビット保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先端ビット保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インパクトレンチなどの電動工具では、回転駆動軸に、先端ビットを交換可能に保持するためのチャック部が備えられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のチャック部は、保持した先端ビットをロックおよびロック解除可能な、機械式のロック機構を備えている。
【0003】
この機械式のロック機構は、バネによって回転駆動軸の軸線方向に付勢されたスライドリングと、先端ビットを押さえて固定するためのボールとを主に有している。
【0004】
そして、ロック機構は、バネによって軸線方向に付勢されたスライドリングなどがボールを押し出し、押し出されたボールが回転駆動軸に装着された先端ビットを押さえ付けることで、先端ビットをロックするようになっている。
【0005】
反対に、ロック機構は、バネの付勢力に抗してスライドリングを軸線方向の反対側へスライドさせることにより、ボールがフリーになって先端ビットから離されることで、先端ビットに対するロックを解除するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のチャック部は、機械式のロック機構を備えていたため、ロック機構を操作しなければ、先端ビットの交換ができず、先端ビットの交換に手間がかかるなどの問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対して、本発明は、
回転駆動軸に装着されて、前記回転駆動軸に先端ビットを交換可能に保持させる先端ビット保持治具であって、
一端部に前記回転駆動軸に対して取付可能な軸取付部を有し、
他端部に前記先端ビットに備えられた取付穴へ挿入可能なビット挿入部を有するソケット部材を備え、
前記ソケット部材は、前記軸取付部と前記ビット挿入部との間に、前記先端ビットを前記ソケット部材に保持させるビット保持部を備え、
前記ビット保持部には磁石が取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、回転駆動軸に対して先端ビットを容易に交換することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態にかかる先端ビット保持治具を回転工具に装着し、先端ビット保持治具に先端ビットを取付けた状態を示す回転工具の全体側面図である。
【
図2】
図1の回転工具の先端(下端)に装着された先端ビット保持治具および先端ビットを示す拡大側面図である。
【
図3】先端ビット保持治具に先端ビットを取付ける前の状態を示す、
図2と同様の回転工具の先端部分の拡大側面図である。
【
図4C】先端ビット保持治具を
図4Bとは異なる方向から見た側面図である。
【
図4D】先端ビット保持治具を一端部の側から見た斜視図である。
【
図4E】先端ビット保持治具を他端部の側から見た斜視図である。
【
図5】別の先端ビットに交換した状態を示す
図1と同様の回転工具の全体側面図である。
【
図7】
図6のチャック部に対して先端ビット保持治具を取付けた状態を示す回転工具の先端部分の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態は、
図1~
図7を用いて詳細に説明される。
【実施例0013】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0014】
例えば、
図1は、回転工具1を示している。この回転工具1は、モーターを内蔵しており、モーターが発生する駆動力によって回転駆動軸2を軸周りに回転させて作業を行う電動式の工具(電動工具)である。
【0015】
このような回転工具1には、例えば、電動インパクトレンチや、電動インパクトドライバーなどがある。
【0016】
ここで、電動インパクトレンチは、ボルトやナットを自動で回す電動レンチである。電動インパクトレンチは、打撃機構を有して高いトルクを得られるようになっている。また、電動インパクトドライバーは、ネジ締めを自動で行う電動ドライバーである。電動インパクトドライバーは、打撃機構を有して高いトルクを得られるようになっている。なお、回転工具1は、電動インパクトレンチを含む電動レンチや、電動インパクトドライバーを含む電動ドライバーに限るものではなく、電動レンチや電動ドライバー以外のものであっても良い。
【0017】
また、上記した回転工具1は、本体1aにグリップ1bとトリガ1cとを備えた手持ちタイプのものとなっている。しかし、回転工具1は、手持ちタイプのものに限らず、据え置き型のものとしても良い。
【0018】
回転駆動軸2は、モーターの駆動力によって回転される軸であり、回転工具1の本体1aから外部へ突出される。図では、回転工具1は、工場の作業ステージで使用されるものとなっている。そのため、回転工具1は、金具3が取付けられ、金具3にワイヤ4が繋がれることで、特定の作業ステージの外に持ち出せなくなっている。なお、ワイヤ4の先端には、フック4aが取付けられており、必要な場合には、ワイヤ4は、金具3から取外せるようになっている。
【0019】
更に、作業ステージに設置された回転工具1は、回転駆動軸2が常に真下へ向いた状態となるように、下向きの姿勢で保持されている。そして、不図示のワークが、回転工具1に対して相対的に昇降されることで、回転工具1はワークを加工するようになっている。
【0020】
このような回転駆動軸2は、先端部2aに先端ビット5が取付けられる。この実施例では、回転駆動軸2に対し、
図2(~
図4E)に示すような先端ビット保持治具7を装着して、先端ビット保持治具7に先端ビット5を取付けるようにしている。先端ビット保持治具7は、回転駆動軸2に、先端ビット5を交換可能に保持させる治具である。
【0021】
ここで、先端ビット5は、ボルトやナットを回したり、ネジ締めを行ったりするためのレンチやドライバーなどの工具の先端部分を備えた、回転工具1のための交換部品である。
【0022】
先端ビット5には、様々なボルトやナットやネジなどの締結固定部材の形状や大きさに応じて、各種のものが用意されている。例えば、
図2の先端ビット5は、レンチ型のビット部6aを有する先端ビット5aとなっている。また、
図5の先端ビット5は、ドライバー型のビット部6bを有する先端ビット5bとなっている。各種の先端ビット5a,5bは、作業に使用する締結固定部材に応じて、適宜交換される。
【0023】
先端ビット5は、基本的に、回転駆動軸2の先端部2aに予め備えられた、比較例のようなチャック部8(
図6、
図6A)に取付けて使うように作られている。
【0024】
そのために、先端ビット5は、後端部に、既設のチャック部8に取付けるためのチャック取付部9(
図2)を備えている。チャック取付部9は、チャック部8に取付けるために、全ての先端ビット5で共通の形状や構造になっている。
【0025】
上記に対し、この実施例にかかる先端ビット保持治具7は、以下のような構成を備えても良い。
【0026】
なお、この実施例にかかる先端ビット保持治具7は、既設のチャック部8に代えて、または、加えて、回転駆動軸2に取付けられ、先端ビット5を交換可能に保持するための治具である。
【0027】
(1)
図3(~
図4E)に示すように、先端ビット保持治具7は、
一端部に回転駆動軸2に対して取付可能な軸取付部11を有し、
他端部に先端ビット5に備えられた取付穴12(
図2)へ挿入可能なビット挿入部13を有するソケット部材14を備えている。
また、ソケット部材14は、軸取付部11とビット挿入部13との間に、先端ビット5をソケット部材14に保持させるビット保持部15を備えている。
そして、ビット保持部15には磁石16が取付けられている。
【0028】
ここで、一端部は、ソケット部材14において、回転駆動軸2の側となる端部(
図2の上端部)およびその周辺である。ソケット部材14の一端部は、回転駆動軸2に沿って延びる円柱状の部分(円柱部17)となっている。
【0029】
軸取付部11は、回転駆動軸2に対してソケット部材14を取付けるための部分である。軸取付部11は、ソケット部材14の円柱部17に、回転駆動軸2へ嵌合するための軸取付用穴部18を有している。軸取付用穴部18は、円柱部17の一端部の回転中心位置に開口されて、ソケット部材14の一端側(図の上側)から他端側(図の下側)へ向けて延びるように凹設形成されている。軸取付用穴部18は、回転駆動軸2への取付けに必要な深さを有している。軸取付用穴部18は、回転駆動軸2の先端部2aとほぼ同じ断面形状とされる。
【0030】
軸取付部11は、ソケット部材14の円柱部17の外周面に、ソケット部材14の回転中心へ向けて径方向に延びるネジ穴19を有している。ネジ穴19は、軸取付用穴部18が有る位置に形成されている。ネジ穴19は、単数または複数形成されている。ネジ穴19が複数設けられる場合、複数のネジ穴19は、円柱部17の外周面に沿って均等な位置に設けられる。例えば、ネジ穴19は、外周面に沿って均等となるように4箇所設けても良い。この実施例では、円柱部17の外周面に、リング状の溝21を形成し、ネジ穴19は、リング状の溝21の部分(底部)に、形成されている。
【0031】
ソケット部材14は、回転駆動軸2に、一端部の軸取付部11の軸取付用穴部18を嵌合した状態で、止めネジ22で横から締め付けることによって、回転駆動軸2に一体に回転されるように固定される。
【0032】
他端部は、ソケット部材14において、回転駆動軸2とは反対側となる端部(
図2の下端部)およびその周辺である。
【0033】
先端ビット5の取付穴12は、先端ビット5のチャック取付部9に設けられた、既設のチャック部8に取付けるための穴(チャック取付穴)である。先端ビット5のチャック取付部9は、ほぼ筒状をしており、取付穴12は、ほぼ筒状のチャック取付部9の内部に凹設形成される。取付穴12は、チャック取付部9の、ビット部6aとは反対側の端部の中心位置に開口するように形成されて、ビット部6aの側へ向けて延びる。取付穴12は、既設のチャック部8の形状に合わせた形状となっている。取付穴12は、例えば、回転駆動軸2の回転を効率良く伝えられるように角穴となっている。この場合、取付穴12は、正方形状の断面を有する四角柱状の穴となっている。
【0034】
ビット挿入部13は、先端ビット5のチャック取付部9に設けられた上記したような取付穴12へ挿入して、取付穴12と嵌合できるようにするための軸状をした突出部分である。ビット挿入部13は、ソケット部材14の他端側の回転中心位置に、回転駆動軸2に沿って他側(回転駆動軸2とは反対の側)へ延びるように形成される。ビット挿入部13は、軸取付用穴部18と同軸に形成される。ビット挿入部13は、既設のチャック部8に合わせるため、既設のチャック部8のものと同じ形状、大きさおよび長さに形成される。この場合、ビット挿入部13は、正方形状の断面を有する四角柱状の軸となっている。ビット挿入部13は、僅かな遊び隙間を有して取付穴12に嵌合される大きさ、形状および取付穴12の深さとほぼ同じ長さになっている。
【0035】
ソケット部材14は、回転駆動軸2に対し、直接または間接的に取付けられて、先端ビット5を保持するためのソケットとして機能する部材である。ソケット部材14は、全体として回転駆動軸2に沿って延びる形状を有する。ソケット部材14の回転中心は、回転駆動軸2および先端ビット5の回転中心と一致される。ソケット部材14は、先端ビット5を用いた作業に必要な強度が得られる素材(例えば、金属や樹脂など)で形成される。
【0036】
ビット保持部15は、ソケット部材14のビット挿入部13に嵌合された先端ビット5を、嵌合状態のままビット挿入部13に保持固定できるようにするための機能を有する部分である。ビット保持部15は、先端ビット5を、保持固定できれば何でも良いが、この実施例では、ビット保持部15は、既設のチャック部8のような機械的なロック機構25(
図6)を用いないものとなっている。機械的なロック機構25を有さないことで、ソケット部材14は、単一の部品で構成されたほぼブロック状の部材となる。
【0037】
磁石16は、鉄などの金属を吸い付ける磁力を有する物体である。磁石16は、永久磁石を使用する。磁石16は、どのような形状のものを使っても良いが、回転に適したものとなるように、薄型のものを使うのが好ましい。この実施例では、磁石16は、薄い円柱状のものとしている。ただし、磁石16は、薄い角柱状(例えば、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状、七角柱状、八角柱状など)のものなどとしても良い。
【0038】
そして、先端ビット5は、磁石16で吸着される金属によって形成されたものを使用する。
【0039】
これに対し、ソケット部材14は、磁石16で吸着される金属によって形成しても良いし、磁石16で吸着されない金属によって形成しても良い。また、ソケット部材14は、必要な強度が得られるのであれば、樹脂などの金属以外の素材で形成しても良い。
【0040】
磁石16で吸着されない金属には、例えば、アルミニウム、真鍮、銅、金、鉛、銀などがある。また、ステンレスなどの合金には、配合された成分によって、磁石16が付くものと、磁石16が付かないものとが存在する。この実施例では、ソケット部材14は、例えば、磁石16に付かないステンレス、または、エンジニアリングプラスチックなどの素材で形成されている。
【0041】
磁石16で吸着されない金属でソケット部材14を形成した場合、ソケット部材14に取付けた磁石16そのものからの磁力が、先端ビット5に直接作用する。また、磁石16で吸着される金属によってソケット部材14を形成した場合、ソケット部材14に取付けた磁石16の磁力が、ソケット部材14を通して先端ビット5に作用する。
【0042】
(2)上記先端ビット保持治具7では、
ビット保持部15は、外側面に、回転駆動軸2の軸線方向31および接線方向32へ延びる平面部33を有しても良い。
平面部33は、ビット保持部15に対し、周方向34に複数箇所設けられても良い。
磁石16は、平面部33に取付けられても良い。
【0043】
ここで、ビット保持部15の外側面は、ビット保持部15の外側部分を形成する面である。この場合、ビット保持部15の外側面は、主に、複数の平面部33にて形成される。
【0044】
回転駆動軸2の軸線方向31は、回転駆動軸2が延びる方向(
図3の上下方向)である。回転駆動軸2の接線方向32は、回転駆動軸2と中心が同じ円に接する方向である。接線方向32は、回転駆動軸2と垂直な面内に位置して、回転駆動軸2の径方向と直交する。接線方向32は、複数存在する。
図3は接線方向32の一つを図示している。
【0045】
平面部33は、ソケット部材14の外側面を、軸線方向31に沿って接線方向32に切欠いた形状の平らな面である。平面部33は、回転駆動軸2の中心の周りに、周方向34に均等な間隔を有して、等しい大きさおよび形状に設けるのが好ましい。平面部33を周方向34に均等に設けることにより、回転駆動軸2の回転によって、ソケット部材14がブレ回るのが防止される。
【0046】
この実施例では、平面部33は、ソケット部材14の周方向34に均等に4箇所、同じ形状および大きさに設けられる。これにより、ビット保持部15は、円柱部17よりも一回り小さく、ビット挿入部13よりも一回り大きいほぼ四角柱状(または角柱状)になる。四角柱状のビット保持部15は、四角柱状のビット挿入部13と、周方向34に対する面の向き(または面の位置)を揃えて形成するのが好ましい。
【0047】
なお、ビット保持部15は、平面部33を周方向34に4箇所程度設けるのが、取付ける磁石16の大きさや数の面で最適となる。ただし、平面部33は、周方向34に4箇所に限らず、2箇所以上の複数箇所設けることが構造的には可能である。この際、更に、平面部33は、周方向34に奇数箇所(例えば、3箇所、5箇所、7箇所、9箇所など)設けても良いが、周方向34に偶数箇所(例えば、2箇所、4箇所、6箇所、8箇所など)設けるのが好ましい。
【0048】
周方向34は、ソケット部材14の外側面に沿って周回する方向である。
【0049】
磁石16は、端面を、平面部33に当接した状態で、平面部33に固定される。磁石16は、端面を、平面部33に対し、面の中心どうしをほぼ一致させた状態で固定される。
【0050】
この際、平面部33に対し、磁石16は、例えば、ネジ35で固定しても良い。ネジ固定により、簡単、確実かつ強固に磁石16が平面部33に固定される。また、平面部33および磁石16は、中心部にそれぞれ下穴を形成しておくのが、平面部33に対する磁石16の取付精度を確保、向上する上では好ましい。
【0051】
但し、磁石16は、平面部33に接着固定や溶接固定などで固定しても良いし、ネジ固定と、接着固定と、溶接固定とのいずれか1つ以上を適宜併用して固定しても良い。
【0052】
また、磁石16は、ビット保持部15とビット挿入部13との境界部分36に対し、ほぼ位置を揃えて取付けるのが好ましい。また、磁石16は、ビット保持部15と一端側の円柱部17との境界部分37に対し、ほぼ位置を揃えて取付けるようにしても良い。境界部分36および境界部分37は、段差形状となって、位置が分かり易くなっているので、位置合わせに使うのに最適である。
【0053】
そのために、ビット保持部15は、軸線方向31に対して、磁石16の幅寸法または径寸法とほぼ同じ大きさに形成しても良い。これにより、ビット保持部15の各平面部33に対する磁石16の取付位置の、軸線方向31に対する調整が簡略化できる。
【0054】
また、磁石16は、平面部33の幅範囲内に収まる幅寸法または径寸法のものを使用するのが好ましい。これにより、ビット保持部15の各平面部33に対する磁石16の取付位置の、接線方向32に対する調整が簡略化できる。
【0055】
磁石16は、ビット挿入部13の側の極性が同じになるように、極性を揃えて平面部33に取付けるのが好ましい。
【0056】
(3)上記先端ビット保持治具7では、磁石16は、ネオジム磁石41としても良い。
【0057】
ここで、ネオジム磁石41は、ネオジム、鉄、ホウ素(ボロン)を主成分とする希土類磁石(レアアース磁石)の一つである。ネオジム磁石41は、永久磁石のうちで現在最も強力なものである。ネオジム磁石41は、素材が安価で大量製造可能なものである。なお、磁石16は、ネオジム磁石41以外のものとしても良いが、ネオジム磁石41とするのが好ましい。
【0058】
(4)上記先端ビット保持治具7では、
ソケット部材14は、一端部に、回転駆動軸2に取付けられたチャック部8(
図7)に取付可能なチャック取付部50を有しても良い。
【0059】
ここで、チャック部8は、上記したように、回転工具1の回転駆動軸2の先端部2aに備えられて、先端ビット5を交換可能に保持できるようにした既設の治具である。既設のチャック部8は、先端ビット5に対するロック機構25を備えた周知の構造を有している。先端ビット保持治具7は、基本的に、既設のチャック部8を回転駆動軸2から取外して、回転駆動軸2の先端部2aに直接装着することを想定して作られている。しかし、先端ビット保持治具7は、既設のチャック部8に取付けるようにしても良い。
【0060】
まず、既設のチャック部8について説明する。
図6に示すように、チャック部8は、この実施例のソケット部材14と同様に、一端部に回転駆動軸2に対して取付可能な軸取付部51を有している。また、チャック部8は、他端部に先端ビット5に備えられた取付穴12へ挿入可能なビット挿入部52を有している。軸取付部51、ビット挿入部52は、先端ビット保持治具7の軸取付部11、ビット挿入部13とほぼ同様になっている。
【0061】
そして、既設のチャック部8は、主に、軸取付部51とビット挿入部52との間に、先端ビット5をソケット部材14に交換可能に保持させるための機械式のロック機構25を備えている。
【0062】
この機械式のロック機構25は、外周部分に、回転駆動軸2の軸線方向31へ移動可能なスライドリング53を備えている。スライドリング53は、不図示のバネによって、ビット挿入部52の側(図の下側)へ付勢されている。スライドリング53は、操作力を加えない状態では、バネの付勢力によって下側に位置されるようになっている。
【0063】
また、ロック機構25は、ビット挿入部52に、先端ビット5を押さえて固定するためのボール54を有している。ボール54は、ビット挿入部52の内側から、ビット挿入部52に形成されたボール突出穴55に、一部が突出されると共に、ボール突出穴55から抜け出ないように保持されている。ボール突出穴55は、ボール54よりも径の小さい穴になっている。
【0064】
更にロック機構25は、スライドリング53とボール54との間に、ボール54の一部がビット挿入部52のボール突出穴55から突出した状態に保持されるように、ボール54をボール突出穴55の側へ押出す押出部材(不図示)を備えている。
【0065】
そして、バネによって付勢されたスライドリング53が、図の下側に位置することで、押出部材がビット挿入部52に設置されたボール54の一部をビット挿入部52のボール突出穴55から外側へ押出した状態にして、ボール54を動かないように固定する。そのため、ビット挿入部52にチャック取付部9の取付穴12を嵌合した先端ビット5に対し、ボール54がボール突出穴55から出て、取付穴12の内側面に押し付けられることで、ボール54が先端ビット5を固定してロックするようになっている。
【0066】
反対に、ロック機構25は、バネの付勢力に抗してスライドリング53を、図の上側へスライドさせることで、押出部材が動かされてボール54をフリーにする。ボール54は、ボール突出穴55から内側へ引っ込んで取付穴12から離れることによって、先端ビット5に対するロックが解除される。
【0067】
このような既設のチャック部8は、バネの付勢力に抗してスライドリング53を持ち上げるのと、スライドリング53を持ち上げた状態に保っている間に、ビット挿入部52から先端ビット5を引き抜くのとに、両手が必要になり、手間と時間がかかって煩わしい。
【0068】
そこで、この実施例では、先端ビット保持治具7は、一端部側の軸取付用穴部18を、回転工具1の回転駆動軸2の先端部2aに備えられた既設のチャック部8のビット挿入部52に取付けられる形状のチャック取付部50にする。
【0069】
具体的には、先端ビット保持治具7は、一端部に形成された軸取付用穴部18を、先端ビット5の後端部に設けられたチャック取付部9の取付穴12と同様の取付穴56にする。即ち、ソケット部材14は、一端部の軸取付用穴部18を、先端ビット5のチャック取付部9の取付穴12と同じ大きさおよび形状(図では四角柱状の穴となっている)にする。
【0070】
そのため、ソケット部材14は、既設のチャック部8のビット挿入部52に対して、一端部のチャック取付部50の取付穴56を嵌合することで、チャック部8のロック機構25によってロックされるようになる。この際、取付穴56の内部には、既設のチャック部8のビット挿入部52のボール54が当たる位置に、ボール54を受ける受穴(
図4D)を形成しても良い。受穴は、ネジ穴19を利用することができる。この実施例では、ネジ穴19は、四角柱状のビット保持部15、および、四角柱状のビット挿入部13の面の中央の位置に形成されている。そのため、ネジ穴19は、ビット挿入部52のボール54を嵌合させることが可能となる。
【0071】
なお、ソケット部材14は、一端部の軸取付部11に、軸取付用穴部18と、取付穴56とのどちらかを有していれば、回転駆動軸2か既設のチャック部8のどちらか一方に取付けて使うことが可能である。そのために、先端ビット保持治具7は、チャック取付部50を有するものと、(チャック取付部50ではない)軸取付用穴部18を有するものとを別個に設けて、使い分けるようにしても良い。
【0072】
ただし、回転駆動軸2の先端部2aが、既設のチャック部8のビット挿入部52と同じ形状になっていれば、1種類のソケット部材14で、回転駆動軸2とソケット部材14との両方に取付けて使うことが可能になる。また、回転駆動軸2の先端部2aが、既設のチャック部8のビット挿入部52とは異なる形状をしている場合には、例えば、回転駆動軸2の先端部2aをビット挿入部52と同じ形状となるように加工する。これにより、ソケット部材14は、1種類で、回転駆動軸2とソケット部材14との両方に取付けられるようになる。
【0073】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0074】
先端ビット保持治具7は、回転駆動軸2に装着されて、回転駆動軸2に先端ビット5を交換可能に保持する。
【0075】
先端ビット保持治具7では、ソケット部材14は、一端部の軸取付部11が回転駆動軸2に取付られる。これにより、回転駆動軸2に先端ビット保持治具7のソケット部材14が装着される。
【0076】
ソケット部材14は、他端部のビット挿入部13を、先端ビット5に備えられた取付穴12に挿入することで、ビット挿入部13と先端ビット5の取付穴12とを嵌合させる。これにより、ソケット部材14に先端ビット5が取付けられる。
【0077】
この際、ソケット部材14は、軸取付部11とビット挿入部13との間に、ビット保持部15を備えており、ビット保持部15が磁石16を備えている。これにより、ソケット部材14は、ビット挿入部13に嵌合された先端ビット5を、ビット挿入部13から近い位置に設けられたビット保持部15の磁石16によって、磁力で吸着固定する。
【0078】
また、ビット保持部15は、先端ビット5をビット挿入部13にある程度近付けることで、磁石16の磁力によって、先端ビット5がソケット部材14に引き寄せられる。これにより、磁石16は、磁力によってビット挿入部13に対する先端ビット5の取付けを補助する。
【0079】
そして、ソケット部材14に先端ビット5を取付けた状態で、回転駆動軸2を回転駆動することによって、先端ビット5は、ソケット部材14と共に回転駆動軸2と一体に回転され、先端ビット5による加工、例えば、ネジ止めなどが行われる。
【0080】
先端ビット5による加工が済んだら、ソケット部材14の他端部のビット挿入部13から先端ビット5を外し、ビット挿入部13に別の先端ビット5を取付ける(ビット挿入部13を取付穴12へ挿入して嵌合させる)ことで、別の先端ビット5に交換する。そして、回転工具1は、別の先端ビット5を使って、別の作業を行う。
【0081】
この際、先端ビット5は、磁石16の磁力に抗してソケット部材14から離す方向(例えば、下など)に引っ張ることで、ビット挿入部13から先端ビット5を引き抜いて取外すことができる。先端ビット5を引っ張るだけなので、先端ビット5は、片手でも比較的簡単にソケット部材14から取外すことができる。
【0082】
そして、別の先端ビット5は、上記と同様に、取付穴12をビット挿入部13へ嵌合するだけで、磁石16の磁力によって、簡単にソケット部材14に吸着固定させることができる。
【0083】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0084】
(効果 1)ソケット部材14は、軸取付部11とビット挿入部13とを有すると共に、軸取付部11とビット挿入部13との間に、先端ビット5をソケット部材14に保持させるビット保持部15を備えている。そして、ビット保持部15には磁石16が取付けられている。
【0085】
そのため、先端ビット保持治具7は、磁石16を備えたビット保持部15によって、ソケット部材14のビット挿入部13に対して先端ビット5を近付けたり、引き離したりするだけで、先端ビット5の着脱交換ができる。そのため、先端ビット保持治具7は、片手でも容易かつ簡単に交換作業が可能であり、交換に手間も時間もかからない。
【0086】
また、ソケット部材14は、先端ビット5や別の先端ビット5の固定に、磁石16の磁力を用いているため、既設のチャック部8のような機械的なロック機構25がない。よって、ソケット部材14は、ロック機構25を操作するという煩わしい作業がなくなり、ロック機構25で先端ビット5などをロックしたりロックを解除したりする必要もない。
【0087】
そして、ロック機構25がなくても、または、ロック機構25を使わなくても、ソケット部材14は、先端ビット5に対する保持力を得ることができ、保持力の確保および向上も容易にできる。
【0088】
よって、複数の先端ビット5を交換しながらの作業に対する効率を向上することができる。しかも、ソケット部材14は、ロック機構25がないので、部品構成が少なく、構成もシンプルで、安価かつ容易に製造できる。
【0089】
(効果 2)ビット保持部15は、ソケット部材14の外側面に、回転駆動軸2の軸線方向31および接線方向32へ延びる平面部33を有しても良い。これにより、ビット保持部15の外側面に対し平面部33を容易に加工形成して、平面部33を有するビット保持部15を容易に設けることができる。
【0090】
平面部33は、ビット保持部15に対し、周方向34に複数箇所設けられても良い。そして、磁石16は、平面部33に取付けられても良い。これにより、ビット保持部15は、複数箇所の平面部33に対して、磁石16をそれぞれ安定して取付けた構成にできる。そして、各平面部33に取付けられた複数の磁石16によって、強い磁力を得ることができる。また、ビット保持部15の周方向34に複数箇所設けられた平面部33にそれぞれ取付けられている複数の磁石16によって、全周に亘って安定した磁力を得ることができる。そのため、ビット保持部15は、先端ビット5を強く安定して吸着固定できるものになる。
【0091】
(効果 3)磁石16は、ネオジム磁石41であっても良い。ネオジム磁石41は、強い磁力を有する磁石16であり、入手も比較的容易なので、磁力によって先端ビット5の固定を行う先端ビット保持治具7を、容易かつ確実に実現できる。
【0092】
(効果 4)ソケット部材14は、回転駆動軸2に直接取付けることができる。これにより、回転駆動軸2に対して最もシンプルな状態で、ソケット部材14を装着することができる。
【0093】
これに対し、回転駆動軸2は、先端ビット5に対するロック機構25を備えたチャック部8が予め備え付けになっているものも多い。
【0094】
このような場合には、ソケット部材14は、一端部にチャック取付部50を形成して、チャック取付部50を使ってチャック部8に取付けられるようにしても良い。これにより、予めチャック部8が備えられた回転駆動軸2に対し、回転駆動軸2からチャック部8を取外すことなく、ソケット部材14を、チャック部8に簡単に取付けることができる。そして、ソケット部材14は、チャック部8を介して、回転駆動軸2に間接的に装着される。そのため、回転駆動軸2からチャック部8を取外す手間や、回転駆動軸2の先端部2aを加工する手間などをかけずに、簡単にソケット部材14を使用することができる。