(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070506
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ウォームホイール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16H 55/22 20060101AFI20240516BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F16H55/22
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181043
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 隆之
【テーマコード(参考)】
3J030
4F206
【Fターム(参考)】
3J030BA03
3J030BC01
3J030BC08
3J030BD01
4F206AA29
4F206AA30
4F206AB25
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD07
4F206AH12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JN12
(57)【要約】
【課題】歯部と本体部とを樹脂製にするとともに、歯部と本体部との接合強度を高めたウォームホイールの製造方法を提供する。
【解決手段】ウォームギヤと噛み合って動力を伝達するためのウォームホイール1の製造方法において、ウォームギヤと噛み合う歯部10を第1の樹脂材料で成形する第1工程と、歯部10と、金属製の芯金20又は金属製のシャフト50とを金型にインサートし、第2の樹脂材料を射出して本体部30を成形する第2工程とを備えるとともに、第2の樹脂材料の樹脂として、第1の樹脂材料の樹脂よりも融点の高い樹脂を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームギヤと噛み合って動力を伝達するためのウォームホイールの製造方法であって、
前記ウォームギヤと噛み合う歯部を、第1の樹脂材料で成形する第1工程と、
前記歯部と、金属製の芯金又は金属製のシャフトとを金型にインサートし、第2の樹脂材料を射出して、前記歯部と、前記芯金又は前記シャフトとを連結する本体部を成形する第2工程とを備えるとともに、
前記第2の樹脂材料の樹脂として、前記第1の樹脂材料の樹脂よりも融点の高い樹脂を用いる、ウォームホイールの製造方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂材料の樹脂と、前記第2の樹脂材料の樹脂とが、共にアミド結合を有する、請求項1に記載のウォームホイールの製造方法。
【請求項3】
前記第1の樹脂材料の樹脂がPA66であり、
前記第2の樹脂材料の樹脂がPA9T又はPA10Tである、
請求項2に記載のウォームホイールの製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
請求項1又は2に記載のウォームホイールの製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
請求項3に記載のウォームホイールの製造方法。
【請求項6】
ウォームギヤと噛み合って動力を伝達するためのウォームホイールであって、
前記ウォームギヤと噛み合い、第1の樹脂材料からなる歯部と、
金属製の芯金又は金属製のシャフトと、
前記歯部と、前記芯金又は前記シャフトとを連結し、第2の樹脂材料からなる本体部と、
を有するとともに、
前記第2の樹脂材料の樹脂の融点が、前記第1の樹脂材料の樹脂の融点よりも高い、ウォームホイール。
【請求項7】
前記第1の樹脂材料の樹脂と、前記第2の樹脂材料の樹脂とが、共にアミド結合を有する、
請求項6に記載のウォームホイール。
【請求項8】
前記第1の樹脂材料の樹脂がPA66であり、
前記第2の樹脂材料の樹脂がPA9T又はPA10Tである、
請求項7に記載のウォームホイール。
【請求項9】
前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を該第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
請求項6又は7に記載のウォームホイール。
【請求項10】
前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を該第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
請求項8に記載のウォームホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームギヤと噛み合って使用されるウォームホイール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に組み込まれる電動パワーステアリング装置は、補助動力として電動モータを使用し、運転者の操舵力を補助するものである。電動パワーステアリング装置は、車両に搭載するため小型化の要求が高く、必然的に電動モータの小型化(軽量化)が要求される。しかし、電動モータを小型化した場合、電動モータでステアリングシャフトを直接駆動するためにはトルクが不十分であるため、電動モータとステアリングシャフトの間に減速ギヤ機構が組み込まれている。
【0003】
減速ギヤ機構としては、平歯車やその他の歯車を使用したものも知られているが、一組で大きな減速比が得られるなどの理由により、ウォームギヤと、このウォームギヤに噛み合うウォームホイールとから構成されるウォーム減速ギヤ機構が、一般的に使用されている。しかし、ウォーム減速ギヤ機構では、ウォームギヤとウォームホイールの双方を金属製にすると、ステアリングホイール操作時や悪路走行時に、歯打ち音や振動などの不快音が発生するという問題が生じており、その対策として、ウォームギヤとウォームホイールのいずれか一方を金属製、他方を樹脂製として、金属部品同士の衝突によって生ずる金属音の発生を回避した騒音対策を行っている。また、その際、両者の歯部同士が噛み合うことにより発熱が起こるため、ウォームギヤを金属製として、高温時における変形の影響を抑えるのが一般的である。
【0004】
一方、このウォームギヤと噛み合うウォームホイールは、歯部を樹脂製とし、中心部は強度を確保するために金属製とされている。このような樹脂製の歯部を有するウォームホイールとして、特許文献1及び特許文献2では、歯部を成形する工程と、シャフトを挿入するために中空状になった金属製の芯金を用意する工程と、歯部と芯金とを金型にインサートし、両者を連結する本体部となる樹脂を成形する工程とを有する製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5775940号公報
【特許文献2】特許第6463867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、歯部の樹脂と、本体部の樹脂との接合について、溝や突起を設けてアンカー効果により接合強度を高めることが記載されているものの、使用する樹脂の種類については特に言及されていない。なお、耐久性の高さから、ポリアミド(PA)が使用されることが多く、中でもPA66が使用されることが多く、特許文献2にも、歯部及び本体部に使用可能な樹脂としてPA6、PA66、PA46等が挙げられている。しかし、吸水性が高い樹脂を用いると、使用中に寸法が大きく変化してウォームギヤとウォームホイールとの噛み合いが悪くなるおそれがあり、電動パワーステアリングシステム(EPS)の操舵力の補助が適切に行われなくなることが懸念される。
【0007】
また、特許文献2では、歯部の樹脂の融点が、本体部の樹脂の融点より高く規定している。これは、本体部を形成する融点の低い樹脂を後から射出することにより、融点の高い樹脂で形成された歯部を変形し難くして、歯部を高精度に保つためである。しかしながら、後から融点の低い樹脂を射出するため、融点の高い樹脂を再溶融させることができず、樹脂同士が溶け合うことで結合が強固になるという効果が得られない。
【0008】
また、近年、電動パワーステアリング装置には、その搭載性を高めるために小型化が要求されており、ウォームホイールも小型化が必要になっている。ウォームホイールを小型化した場合、ウォームホイールに付加される力が大きくなるため、歯部の樹脂と本体部の樹脂との間の接合強度が不足するおそれがある。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、歯部と本体部とを樹脂製にするとともに、歯部と本体部との接合強度を高めたウォームホイールの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本体部を金属製にしたウォームホイールに比べて大幅に軽量化したウォームホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、ウォームホイールの製造方法に係る下記[1]の構成により達成される。
【0011】
[1] ウォームギヤと噛み合って動力を伝達するためのウォームホイールの製造方法であって、
前記ウォームギヤと噛み合う歯部を、第1の樹脂材料で成形する第1工程と、
前記歯部と、金属製の芯金又は金属製のシャフトとを金型にインサートし、第2の樹脂材料を射出して、前記歯部と、前記芯金又は前記シャフトとを連結する本体部を成形する第2工程とを備えるとともに、
前記第2の樹脂材料の樹脂として、前記第1の樹脂材料の樹脂よりも融点の高い樹脂を用いる、ウォームホイールの製造方法。
【0012】
また、ウォームホイールの製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[5]に関する。
【0013】
[2] 前記第1の樹脂材料の樹脂と、前記第2の樹脂材料の樹脂とが、共にアミド結合を有する、
[1]に記載のウォームホイールの製造方法。
[3] 前記第1の樹脂材料の樹脂がPA66であり、
前記第2の樹脂材料の樹脂がPA9T又はPA10Tである、
[2]に記載のウォームホイールの製造方法。
[4] 前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
[1]又は[2]に記載のウォームホイールの製造方法。
[5] 前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
[3」に記載のウォームホイールの製造方法。
【0014】
本発明の上記目的は、ウォームホイールに係る下記[6]の構成により達成される。
【0015】
[6] ウォームギヤと噛み合って動力を伝達するためのウォームホイールであって、
前記ウォームギヤと噛み合い、第1の樹脂材料からなる歯部と、
金属製の芯金又は金属製のシャフトと、
前記歯部と、前記芯金又は前記シャフトとを連結し、第2の樹脂材料からなる本体部と、
を有するとともに、
前記第2の樹脂材料の樹脂の融点が、前記第1の樹脂材料の樹脂の融点よりも高い、ウォームホイール。
【0016】
また、ウォームホイールに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[7]~[10]に関する。
【0017】
[7] 前記第1の樹脂材料の樹脂と、前記第2の樹脂材料の樹脂とが、共にアミド結合を有する、
[6]に記載のウォームホイール。
[8] 前記第1の樹脂材料の樹脂がPA66であり、
前記第2の樹脂材料の樹脂がPA9T又はPA10Tである、
[7]に記載のウォームホイール。
[9] 前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を該第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
[6]又は[7]に記載のウォームホイール。
[10] 前記第1の樹脂材料は、樹脂の数平均分子量が20000以上であり、かつ、補強繊維を該第1の樹脂材料全量に対して10~30質量%含有し、
前記第2の樹脂材料は、補強繊維を該第2の樹脂材料全量に対して40~60質量%含有する、
[8]に記載のウォームホイール。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、歯部と本体部とを樹脂製にするとともに、歯部と本体部との接合強度が高く、耐久性に優れるウォームホイールを製造することができる。
また、本発明は、本体部を金属製にしたウォームホイールに比べて大幅に軽量化したウォームホイールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るウォームホイールの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るウォームホイールの一例の製造方法を示す工程図(第1工程)であり、成形して得た歯部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るウォームホイールの一例の製造方法を示す工程図(第2工程)であり、歯部と芯金とを金型にインサートし、本体部を成形する工程を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るウォームホイールの他の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るウォームホイールの他の例の製造方法を示す工程図(第2工程)であり、歯部とシャフトとを金型にインサートし、本体部を成形する工程を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、歯部と本体部との接合部分の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、ウォームホイールの芯金のみを切り出した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、第1の樹脂材料で成形した歯部と、金属製の芯金又は金属製のシャフトとを金型にインサートし、第1の樹脂材料の樹脂よりも融点の高い樹脂を含む第2の樹脂材料を射出して本体部を形成することにより、第2の樹脂材料の樹脂が、金型内で、第1の樹脂材料の樹脂を再溶融させることにより、両樹脂同士が混ざり合った状態で固化して接合強度が高まることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
【0021】
本発明の一実施形態に係るウォームホイール及びその製造方法について、以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0022】
図1は、本実施形態に係るウォームホイール1の一例を示す斜視図である。図示されるように、ウォームホイール1は、第1の樹脂材料からなる歯部10と、金属製の芯金20とが、第2の樹脂材料からなる本体部30で連結されている。なお、歯部10は、不図示のウォームギヤと噛み合い、芯金20にはシャフトが挿入される。
【0023】
ウォームホイール1を製造するには、第1工程において、第1の樹脂材料を金型に射出成形して歯部10を作製する。金型は、ディスクゲートと呼ばれるゲート方式を採用することが好ましい。歯部10の軸中心にスプルーを配置し、中心から放射状に第1の樹脂材料を均一に流すことにより、ウエルドと呼ばれる樹脂の合流部を形成することがなく、ウエルドによる強度低下や外観不良の発生を防止することができる。
【0024】
ディスクゲートは、歯部10が形成された成型品を金型から取り出した後に機械加工により除去され、
図2に示されるような略円環状で、外周面に多数の歯11が形成された歯部10が得られる。
【0025】
歯部10を形成する第1の樹脂材料の樹脂は、PA66であることが好ましい。歯部10は金属製のウォームギヤの歯部(図示せず)と噛み合うため耐摩耗性に優れること、更には歯部同士の噛み合いにより発熱するため耐熱性にも優れることが重要であり、樹脂としてPA66が好ましい。
【0026】
また、歯部10の歯元強度を高めるために、歯部10を形成する第1の樹脂材料は、ガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維を含有することが好ましい。ただし、補強繊維の含有量を増やし過ぎると耐剥離性が低下するため、補強繊維の含有量は、第1の樹脂材料全量の10~30質量%とすることが好ましく、20~30質量%とすることがより好ましい。
【0027】
さらに、耐剥離性や耐摩耗性を向上させる目的で、PA66の分子量は高い方が好ましいが、流動性との兼ね合いから、数平均分子量で20000以上が好ましく、25000以上がより好ましく、30000以上が更に好ましい。また、上限としては50000以下が好ましく、45000以下がより好ましく、40000以下が更に好ましい。
【0028】
なお、歯部10を形成する第1の樹脂材料には、成形サイクルを短縮するために、結晶核剤又は結晶化促進剤を添加してもよい。具体的には、タルクやカオリン、クレイ等の無機鉱物、金属酸化物、リン化合物等であり、これらを単独で、又は複数種を混合して用いる。これら結晶核剤又は結晶化促進剤の添加量は、第1の樹脂材料全量の2.0質量%以下が好ましい。なお、2.0質量%を超えて配合した場合は、それ以上の結晶化に関する効果は得られないばかりか、物性の低下が懸念されるため、1.0質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。また、上記添加量の下限としては、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。
【0029】
また、その他にも、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤や、フェノール系又はアミン系の酸化防止剤を、それぞれ単独又は併用して添加してもよい。
【0030】
次いで、第2工程において、歯部10と芯金20とを金型にインサートし、第2の樹脂材料を射出して本体部30を成形する。
図3に示すように、第2の工程で使用する金型のゲート方式は、同軸状に等間隔で複数配置したピンゲート40を採用することが好ましい。ゲート数は3点以上とし、周方向に等しい間隔で配置することがより好ましく、ゲート数が多いほど、インサート成形時に歯部10に均一な圧力が負荷されて、歯部10の形状が崩れるのを抑制することができる。なお、ゲート方式としてディスクゲートも考えられるが、ディスクゲートの場合、シャフトの中空部分に樹脂が入り込んだり、シャフトの段差が邪魔になり、中空部分を塞げないなどの不具合が想定されるため、ゲート方式としてピンゲート40を採用することが好ましい。
【0031】
なお、芯金20は,電動パワーステアリングを組み立てる際に、シャフトが挿入され、他部品と連結する目的で使用されるが、
図4や
図5において、本実施形態に係るウォームホイールの他の例として示すように、芯金20の代わりに、金属製のシャフト50自体をインサート成形してもよい。このように、シャフト自体をインサート成形することにより、部品点数の削減やシャフトの圧入工程を省くことができるため、製造時のコストダウンが可能となる。
【0032】
本体部30を形成する第2の樹脂材料の樹脂には、歯部10を形成する第1の樹脂材料の樹脂よりも融点の高い樹脂を用いる。第2の樹脂材料の樹脂は、金型内で歯部10を形成する第1の樹脂材料の樹脂と接触した際に、歯部10を形成する第1の樹脂材料の樹脂を十分に再溶融させるだけの熱量を持っているため、溶融した樹脂同士が溶け合い、固化することで強固に接合することができる。また、歯部10を溶融しやすくする目的で、歯部10を金型にインサートする前に予熱してもよい。
【0033】
上記したように歯部10を形成する第1の樹脂材料の樹脂としてPA66が好ましいが、本体部30を形成する第2の樹脂材料の樹脂は、それよりも融点が高く、剛性にも優れ、更には樹脂同士が溶け合う親和性を考慮して、同じアミド結合を有することで、高い接合強度が得られやすいことなどの理由から、PA6TやPA9T、PA10Tが例として挙げられる。ただし、本体部30は、吸水による寸法変化を抑えるために、吸水率が低いことが好ましいことから、本体部30を形成する第2の樹脂材料の樹脂としては、PA9T又はPA10Tが好ましい。
【0034】
なお、PA66の融点は約260℃であり、PA9T及びPA10Tはともに融点が300℃以上である。よって、PA9T及びPA10Tは、金型内でPA66と接触した際に十分にPA66を再溶融させるだけの十分な熱量を持っているため,溶融した樹脂同士が混合することで強固に接合することができる.
【0035】
本体部30を形成する第2の樹脂材料は、剛性を高める目的及び吸水率を下げる目的で、ガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維を含有してもよい。補強繊維の含有量は、第2の樹脂材料全量の40~60質量%とすることが好ましく、45~55質量%とすることがより好ましいなお、補強繊維の含有量が40質量%より少ないと、本体部30の剛性の向上や吸水率の低減の効果が少なくなる。また、補強繊維の含有量が60質量%を超えると、第2の樹脂材料の流動性低下を招き、成形性が悪化する。
【0036】
また、本体部30を形成する第2の樹脂材料にも、歯部10を形成する第1の樹脂材料と同様に、結晶核剤や結晶化促進剤、酸化防止剤を添加してもよい。結晶核剤又は結晶化促進剤の含有量については、上記第1の樹脂材料の場合に倣えばよい。
【0037】
上記した第1工程及び第2工程により、
図1(芯金20を用いた例)又は
図4(シャフト50を用いた例)に示したウォームホイール1が製造されるが、PA9T及びPA10Tは、いずれも吸水率がPA66の1/4以下であって、歯部10と本体部30とをともにPA66のみで成形した場合や、本体部30をPA66よりも融点は高いものの、吸水率が高い樹脂(例えば、PA46)で形成した場合に比べて、吸水時の寸法変化を抑えることができ、ウォームギヤとウォームホイール1との噛み合いの変化に起因する不良を低減することができる。
【0038】
なお、歯部10と本体部30、及び本体部30と、芯金20又はシャフト50の接合部の形状は,その接合強度を高めるために,軸方向及び周方向のうち少なくとも一方、好ましくは双方にアンダーカットとなる形状にすることが好ましい。
また、歯部10と本体部30とをより強固に接合するために、
図6に示すように、歯部10の内周面10Aに段状の突起などを形成し、本体部30を形成する第2の樹脂材料との接触面積を大きくしてもよい。
【0039】
なお、
図7に、ウォームホイール1の芯金20のみを切り出した斜視図を示すが、芯金20の外周面21に不図示の本体部30が接合しており、芯金20中央の空部22に不図示のシャフトが挿通される。また、芯金20の外周面21における全幅の中央部に、外周面21を横断する溝部23が、所定の幅をもって形成されており、この芯金20が金型にインサートされ、第2の樹脂材料の射出により本体部30が成形されることで、この溝部23と、本体部30における芯金20側表面に形成された突起とがアンダーカット形状にて係合する。
【0040】
上記で説明したウォームホイールの製造方法により得られたウォームホイールは、本体部を金属製にしたウォームホイールに比べて大幅に軽量化される。
【符号の説明】
【0041】
1 ウォームホイール
10 歯部
11 歯
20 芯金
30 本体部
40 ピンゲート
50 シャフト