(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070523
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】温度測定システム、及び温度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01K 3/14 20060101AFI20240516BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240516BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240516BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20240516BHJP
F23R 3/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01K3/14
F01D25/00 V
F01D25/00 W
F02C7/00 A
F02C9/00 B
F23R3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181070
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大道 佳昇
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀和
(72)【発明者】
【氏名】和田 健太
(72)【発明者】
【氏名】高▲崎▼ 知尚
(57)【要約】
【課題】一領域内の温度を測定する二つの測温部のうち、いずれが異常になったかを把握する。
【解決手段】温度測定システムは、複数の小領域毎に設けられている第一測温部及び第二測温部と、前記第一測温部で測定された第一測定温度と前記第二測温部で測定された第二測定温度との温度偏差を求める温度偏差演算部と、前記第一測定温度の第一温度変化率及び前記第二測定温度の第二温度変化率を求める変化率演算部と、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率に関する代表変化率を求める代表変化率演算部と、温度偏差閾値を超えている前記温度偏差の演算に用いられた第一測定温度の変化率及び第二測定温度の変化率と前記代表変化率とを比較して、前記第一測温部及び前記第二測温部が異常であるか否かを判断する変化率異常判断部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域を複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域毎に設けられ、該小領域内の温度を測定可能な第一測温部及び第二測温部と、
複数の前記小領域毎に設けられ、前記第一測温部で測定された温度である第一測定温度と前記第二測温部で測定された温度である第二測定温度との差である温度偏差を求める温度偏差演算部と、
複数の前記小領域毎に設けられ、前記温度偏差が予め定められた温度偏差閾値を超えているか否かを判断する偏差異常判断部と、
複数の前記小領域毎に設けられ、前記第一測定温度の単位時間当たりの変化率である第一温度変化率と、前記第二測定温度の単位時間当たりの変化率である第二温度変化率と、を求める変化率演算部と、
複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて、複数の前記小領域毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算部と、
複数の前記小領域毎に設けられ、前記温度偏差が前記温度偏差閾値を超えている場合に、前記温度偏差閾値を超えている前記温度偏差である異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度である対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度である対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する変化率異常判断部と、
を備える温度測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定システムにおいて、
前記代表変化率演算部は、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうちから、最大変化率及び最小変化率を抽出し、前記最大変化率及び前記最小変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断部は、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の温度測定システムにおいて、
前記代表変化率演算部は、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて平均変化率を求め、前記平均変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断部は、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差である第一変化率偏差が予め定められた変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差である第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の温度測定システムにおいて、
前記代表変化率演算部は、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうちから、最大変化率及び最小変化率を抽出すると共に、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて平均変化率を求め、前記最大変化率、前記最小変化率、及び前記平均変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断部は、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差である第一変化率偏差が予め定められた変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差である第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断し、
前記第一変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えず、且つ前記第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えない場合、前記第一変化率偏差と前記第二変化率偏差とのうち偏差が大きい方の変化率偏差を定め、
前記第一温度変化率と前記第二温度変化率とのうち、前記大きい方の変化率偏差を示す温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記第一測温部と前記第二測温部とのうち、前記大きい方の変化率偏差に対応する対象測定温度を測定した測温部が異常であると判断する、
温度測定システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温度測定システムにおいて、
前記代表変化率演算部が求める前記平均変化率は、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうち、最大変化率及び最小変化率を除く全ての変化率の平均変化率である、
温度測定システム。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の温度測定システムにおいて、
前記変化率異常判断部は、前記大領域における温度変化の原因となるパラメータが予め定められた値以上に変化した場合、前記第一変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断せず、前記第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断しない、
温度測定システム。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の温度測定システムにおいて、
前記変化率演算部として、
単位短時間当たりの前記第一測定温度の変化率である短時間第一温度変化率、及び、前記単位短時間当たりの前記第二測定温度の変化率である短時間第二温度変化率を求める短時間変化率演算部と、
前記単位短時間より長い単位長時間当たりの前記第一測定温度の変化率である長時間第一温度変化率、及び、前記単位長時間当たりの前記第二測定温度の変化率である長時間第二温度変化率を求める長時間変化率演算部と、
を備え、
前記代表変化率演算部として、
前記単位短時間に対する前記代表変化率である短時間代表変化率を求める短時間代表変化率演算部と、
前記単位長時間に対する前記代表変化率である長時間代表変化率を求める長時間代表変化率演算部と、
を備え、
前記変化率異常判断部として、
前記短時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部、及び前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する短時間変化率異常判断部と、
前記長時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部、及び前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する長時間変化率異常判断部と、
を備える、
温度測定システム。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の温度測定システムにおいて、
複数の前記小領域毎に設けられているレンジ異常判断部を備え、
前記レンジ異常判断部は、
前記対象第一測定温度が前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度が前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定システム。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の温度測定システムにおいて、
複数の前記小領域毎に、前記第一測温部と第二測温部とのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を、前記測定対象の動作を制御する制御装置に送る選択部を備える、
温度測定システム。
【請求項10】
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域を複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域毎に、該小領域の温度を第一測温部で測定する第一測温工程と、
複数の前記小領域毎に、該小領域の温度を第二測温部で測定する第二測温工程と、
複数の前記小領域毎に、前記第一測温工程で測定された温度である第一測定温度と前記第二測温工程で測定された温度である第二測定温度との差である温度偏差を求める温度偏差演算工程と、
複数の前記小領域毎に、前記温度偏差が予め定められた温度偏差閾値を超えているか否かを判断する偏差異常判断工程と、
複数の前記小領域毎に、前記第一測定温度の単位時間当たりの変化率である第一温度変化率と、前記第二測定温度の単位時間当たりの変化率である第二温度変化率と、を求める変化率演算工程と、
複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて、複数の前記小領域毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算工程と、
複数の前記小領域毎に、前記温度偏差が前記温度偏差閾値を超えている場合に、前記温度偏差閾値を超えている前記温度偏差である異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度である対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度である対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する変化率異常判断工程と、
を実行する温度測定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の温度測定方法において、
前記代表変化率演算工程では、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうちから、最大変化率及び最小変化率を抽出し、前記最大変化率及び前記最小変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断工程では、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定方法。
【請求項12】
請求項10に記載の温度測定方法において、
前記代表変化率演算工程では、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて平均変化率を求め、前記平均変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断工程では、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差が予め定められた変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差が前記変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定方法。
【請求項13】
請求項10に記載の温度測定方法において、
前記代表変化率演算工程では、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうちから、最大変化率及び最小変化率を抽出すると共に、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて平均変化率を求め、前記最大変化率、前記最小変化率、及び前記平均変化率を前記代表変化率とし、
前記変化率異常判断工程では、
前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差である第一変化率偏差が予め定められた変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差である第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えることを条件として、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断し、
前記第一変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えず、且つ前記第二変化率偏差が前記変化率偏差閾値を超えない場合、前記第一変化率偏差と前記第二変化率偏差とのうち偏差が大きい方の変化率偏差を定め、
前記第一温度変化率と前記第二温度変化率とのうち、前記大きい方の変化率偏差を示す温度変化率が前記最大変化率又は前記最小変化率であることを条件として、前記第一測温部と前記第二測温部とのうち、前記大きい方の変化率偏差に対応する対象測定温度を測定した測温部が異常であると判断する、
温度測定方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の温度測定方法において、
前記代表変化率演算工程で求められる前記平均変化率は、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率のうち、最大変化率及び最小変化率を除く全ての変化率の平均変化率である、
温度測定方法。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の温度測定方法において、
前記変化率異常判断工程では、前記大領域における温度変化の原因となるパラメータが予め定められた値以上に変化した場合、前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断せず、前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断しない、
温度測定方法。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の温度測定方法において、
前記測定対象は、空気を圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な複数の燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備えるガスタービンであり、
前記タービンは、軸線を中心として回転可能なタービンロータと、前記タービンロータの外周を覆うタービンケーシングと、前記タービンケーシングに接続され、前記タービンロータを通過した燃焼ガスである排気ガスが流通可能な排気ケーシングと、を有し、
前記大領域は、前記排気ケーシング内の前記軸線を中心として環状の領域であり、
複数の前記小領域は、前記大領域を前記軸線に対する周方向に複数に分割して得られるそれぞれの領域であり、
前記変化率異常判断工程では、複数の前記燃焼器へ供給する燃料の流量が予め定められた値以上に変化した場合、前記対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記平均変化率との差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断せず、前記対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記平均変化率との差が前記変化率偏差閾値を超えていても、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断しない、
温度測定方法。
【請求項17】
請求項10から13のいずれか一項に記載の温度測定方法において、
前記変化率演算工程として、
単位短時間当たりの前記第一測定温度の変化率である短時間第一温度変化率、及び、前記単位短時間当たりの前記第二測定温度の変化率である短時間第二温度変化率を求める短時間変化率演算工程と、
前記単位短時間より長い単位長時間当たりの前記第一測定温度の変化率である長時間第一温度変化率、及び、前記単位長時間当たりの前記第二測定温度の変化率である長時間第二温度変化率を求める長時間変化率演算工程と、
を実行し、
前記代表変化率演算工程として、
前記単位短時間に対する前記代表変化率である短時間代表変化率を求める短時間代表変化率演算工程と、
前記単位長時間に対する前記代表変化率である長時間代表変化率を求める長時間代表変化率演算工程と、
を実行し、
前記変化率異常判断工程として、
前記短時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部、及び前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する短時間変化率異常判断工程と、
前記長時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部、及び前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する長時間変化率異常判断工程と、
を実行する、
温度測定方法。
【請求項18】
請求項10から13のいずれか一項に記載の温度測定方法において、
複数の前記小領域毎に、レンジ異常判断工程を実行し、
前記レンジ異常判断工程では、
前記対象第一測定温度が前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であると判断し、
前記対象第二測定温度が前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であると判断する、
温度測定方法。
【請求項19】
請求項10から13のいずれか一項に記載の温度測定方法において、
複数の前記小領域毎に、前記第一測温部と第二測温部とのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を、前記測定対象の動作を制御する制御装置に送る選択工程を実行する、
温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度測定システム、及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定システムとしては、例えば、以下の特許文献1に記載のシステムがある。このシステムは、ガスタービンの燃焼器を監視するため、燃焼器周りに配置された複数の熱電対を有する。複数の熱電対は、いずれも、ダブルエレメント型である。ダブルエレメント型の熱電対は、一つのシース管内に、二つの測温部を有する。よって、このシステムでは、燃焼器周りの一領域内の温度を測定する測温部に冗長性を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、一領域内の温度を二つの測温部で測定可能にしているだけで、二つの測温部のうち、いずれかが異常になった場合、二つの測温部のうち、いずれの測温部で測定された温度を燃焼器の監視に用いるべきかわからない。
【0005】
そこで、本開示は、一領域内に二つの測温部を設けつつも、二つの測温部のうち、いずれかが異常になった場合、いずれが異常になったかを把握できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための一態様としての温度測定システムは、
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域を複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域毎に設けられ、該小領域内の温度を測定可能な第一測温部及び第二測温部と、複数の前記小領域毎に設けられ、前記第一測温部で測定された温度である第一測定温度と前記第二測温部で測定された温度である第二測定温度との差である温度偏差を求める温度偏差演算部と、複数の前記小領域毎に設けられ、前記温度偏差が予め定められた温度偏差閾値を超えているか否かを判断する偏差異常判断部と、複数の前記小領域毎に設けられ、前記第一測定温度の単位時間当たりの変化率である第一温度変化率と、前記第二測定温度の単位時間当たりの変化率である第二温度変化率と、を求める変化率演算部と、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて、複数の前記小領域毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算部と、複数の前記小領域毎に設けられ、前記温度偏差が前記温度偏差閾値を超えている場合に、前記温度偏差閾値を超えている前記温度偏差である異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度である対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度である対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する変化率異常判断部と、を備える。
【0007】
本態様では、いずれかの小領域に配置されている第一測温部で測定された第一測定温度とこの小領域に配置されている第二測温部で測定された第二測定温度との差である温度偏差が予め定められた温度偏差閾値を超えているか否かが判断される。この温度偏差が温度偏差閾値を超えている場合、第一測温部と第二測温部とのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本態様では、温度偏差閾値を超えている温度偏差である異常偏差の演算に用いられた第一測定温度である対象第一測定温度に関する第一温度変化率と、複数の小領域毎の第一温度変化率及び第二温度変化率を用いて求められた代表変化率とが比較される。本態様では、さらに、前記異常偏差の演算に用いられた第二測定温度である対象第二測定温度に関する第二温度変化率と前記代表変化率とが比較される。そして、本態様では、変化率異常判断部が、これらの比較結果から、対象第一測定温度を測定した第一測温部が異常であるか否か、及び、対象第二測定温度を測定した第二測温部が異常であるか否かを判断する。
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての温度測定方法は、
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域を複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域毎に、該小領域の温度を第一測温部で測定する第一測温工程と、複数の前記小領域毎に、該小領域の温度を第二測温部で測定する第二測温工程と、複数の前記小領域毎に、前記第一測温工程で測定された温度である第一測定温度と前記第二測温工程で測定された温度である第二測定温度との差である温度偏差を求める温度偏差演算工程と、複数の前記小領域毎に、前記温度偏差が予め定められた温度偏差閾値を超えているか否かを判断する偏差異常判断工程と、複数の前記小領域毎に、前記第一測定温度の単位時間当たりの変化率である第一温度変化率と、前記第二測定温度の単位時間当たりの変化率である第二温度変化率と、を求める変化率演算工程と、複数の前記小領域毎の前記第一温度変化率及び前記第二温度変化率を用いて、複数の前記小領域毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算工程と、複数の前記小領域毎に、前記温度偏差が前記温度偏差閾値を超えている場合に、前記温度偏差閾値を超えている前記温度偏差である異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度である対象第一測定温度に関する前記第一温度変化率と前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度である対象第二測定温度に関する前記第二温度変化率と前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度を測定した前記第一測温部が異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度を測定した前記第二測温部が異常であるか否かを判断する変化率異常判断工程と、を実行する。
【0009】
本態様でも、前記一態様における温度測定システムと同様に、対象第一測定温度を測定した第一測温部が異常であるか否か、及び、対象第二測定温度を測定した第二測温部が異常であるか否かを判断することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様では、一領域内に二つの測温部を設けつつも、二つの測温部のうち、いずれかが異常になった場合、いずれが異常になったかを把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービン設備の模式的構成図である。
【
図2】本開示に係る一実施形態における温度測定システムの機能ブロック図である。
【
図3】本開示に係る一実施形態における第一測温部及び第二測温部を示す説明図である。
【
図4】本開示に係る一実施形態の変形例における第一測温部及び第二測温部を示す説明図である。
【
図5】本開示に係る一実施形態における信号処理部、短時間代表変化率演算部、及び長時間代表変化率演算部の機能ブロック図である。
【
図6】本開示に係る一実施形態における温度測定システムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】本開示に係る一実施形態における各種条件と異常判断結果との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る温度測定システム、及びこの温度測定システムの測定対象の実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
「測定対象の一実施形態」
本発明に係る温度測定システムの測定対象、及びこの測定対象を含む設備の一実施形態について、
図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態における測定対象は、
図1に示すように、ガスタービンである。よって、本実施形態における測定対象を含む設備は、ガスタービン設備である。ガスタービン1は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機10と、圧縮空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器20と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン30と、タービン30から排気された燃焼ガスである排気ガスEGが流れる排気ケーシング7と、を備える。
【0015】
圧縮機10は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ12と、圧縮機ロータ12を覆う圧縮機ケーシング16と、複数の静翼列15と、吸気量調節機(以下、IGV(inlet guide vane)とする)17と、を有する。タービン30は、軸線Arを中心として回転可能なタービンロータ32と、タービンロータ32を覆うタービンケーシング36と、複数の静翼列35と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0016】
圧縮機10は、タービン30に対して軸線上流側Dauに配置されている。また、排気ケーシング7は、タービン30に対して軸線下流側Dadに配置されている。
【0017】
圧縮機ロータ12とタービンロータ32とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、発電機9のロータが接続されている。この発電機9は、ガスタービン1の起動時に電動機として機能する。発電機9、又は発電機9に接続されている電力線には、発電機9が発電した電力を検知する出力計41が接続されている。
【0018】
ガスタービン1は、さらに、中間ケーシング6を備える。この中間ケーシング6は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング16とタービンケーシング36との間に配置されている。排気ケーシング7は、タービンケーシング36の軸線下流側Dadの端に接続されている。圧縮機ケーシング16と中間ケーシング6とタービンケーシング36と排気ケーシング7とは、互いに接続されてガスタービンケーシング5を成す。
【0019】
圧縮機ロータ12は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸13と、このロータ軸13に取り付けられている複数の動翼列14と、を有する。複数の動翼列14は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列14は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列14の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列15のうちのいずれか一の静翼列15が配置されている。各静翼列15は、圧縮機ケーシング16の内側に設けられている。各静翼列15は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。IGV17は、圧縮機ケーシング16の吸込み口に設けられている複数のベーン17vと、複数のベーン17vを駆動する駆動器17dとを有する。このIGV17は、駆動器17dに複数のベーン17vを開閉動作させることで、圧縮機ケーシング16内に吸い込まれる空気の流量である吸気量を調節できる。
【0020】
タービンロータ32は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸33と、このロータ軸33に取り付けられている複数の動翼列34と、を有する。複数の動翼列34は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列34は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列34の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列35のうちのいずれか一の静翼列35が配置されている。各静翼列35は、タービンケーシング36の内側に設けられている。各静翼列35は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0021】
複数の燃焼器20は、周方向Dcに並んで、中間ケーシング6に取り付けられている。燃焼器20には、燃料供給源からの燃料Fを燃焼器20に導くことができる燃料ライン8が接続されている。この燃料ライン8には、燃料弁8vが設けられている。
【0022】
ガスタービン設備は、以上で説明したガスタービン1の他、複数の測定器と、温度信号処理装置50と、制御装置90と、を備える。
【0023】
ガスタービン設備は、複数の測定器として、回転数計40と、出力計41と、吸気温度計42と、吸気圧力計43と、複数のケーシング温度計44と、ケーシング内圧力計45と、燃料流量計46と、複数の上流側排気ガス温度計47と、複数の下流側排気ガス温度計48と、を有する。回転数計40は、ガスタービンロータ2の回転数Nを測定する。出力計41は、ガスタービン出力としての発電機9の出力PWを測定する。吸気温度計42は、圧縮機10が吸い込む空気Aの温度である吸気温度Tiを測定する。吸気圧力計43は、圧縮機10が吸い込む空気Aの圧力である吸気圧力(大気圧)Piを測定する。複数のケーシング温度計44は、周方向Dcに並んで、中間ケーシング6に取り付けられている。複数のケーシング温度計44は、この中間ケーシング6内の温度Tcを測定する。ケーシング内圧力計45は、中間ケーシング6の圧力Pcを測定する。燃料流量計46は、燃焼器20に流入する燃料流量Frを測定する。この燃料流量計46は、燃料ライン8に設けられている。複数の上流側排気ガス温度計47は、周方向Dcに並んで排気ケーシング7に取り付けられている。複数の上流側排気ガス温度計47は、タービン30から排気され排気ケーシング7内に流入した排気ガスEGの温度である上流側排気ガス温度Teを測定する。複数の下流側排気ガス温度計48は、複数の上流側排気ガス温度計47の軸線下流側Dadの位置で周方向Dcに並んで排気ケーシング7に取り付けられている。複数の下流側排気ガス温度計48は、排気ケーシング7内に流入した排気ガスEGの温度である下流側排気ガス温度Trを測定する。なお、下流側排気ガス温度Trは、上流側排気ガス温度Teが測定される位置よりも軸線下流側Dadの位置における排気ガスの温度である。
【0024】
制御装置90は、以上で説明した複数の測定器からのデータ、及び外部からの要求出力等に応じて、燃料弁8vの開度や、IGV17の駆動量、さらに、ガスタービン1の起動時に電動機として機能する発電機9の動作等を制御する。
【0025】
燃焼器20の数が、例えば16個の場合、上流側排気ガス温度計47の数は、燃焼器20の数とほぼ同数の例えば16個である。複数の上流側排気ガス温度計47で検知された値は、例えば、燃焼器20の故障等を制御装置90が把握するために用いられる。また、燃焼器20の数が、例えば16個の場合、下流側排気ガス温度計48の数は、例えば8個である。下流側排気ガス温度計48で検知された値は、排気ケーシング7の熱損傷の可能性等を制御装置90が把握するために用いられる。ケーシング温度計44の数は、例えば4個である。複数のケーシング温度計44で検知された値は、例えば、ガスタービン1のヒートバランス等を制御装置90が求めるために用いられる。また、複数のケーシング温度計44で検知された値は、燃焼器20への燃料供給停止後に中間ケーシング6内の温度分布を制御装置90が把握するために用いられる。
【0026】
温度信号処理装置50は、複数の上流側排気ガス温度計47からの信号が入力し、これらの信号のうち、一部の信号のみを制御装置90に送る。
【0027】
温度信号処理装置50及び制御装置90は、いずれもコンピュータで構成されている。このため、温度信号処理装置50及び制御装置90は、一台のコンピュータで構成してもよいし、それぞれ別のコンピュータで構成してもよい。
【0028】
圧縮機10は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成し、この圧縮空気を中間ケーシング6内に吐出する。中間ケーシング6内の圧縮空気は、燃焼器20内に流入する。燃焼器20には、燃料Fが供給される。燃焼器20は、圧縮空気中で燃料Fを燃焼させて、高温高圧の燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスは、燃焼器20からタービンケーシング36内に送られる。燃焼ガスは、タービンケーシング36内を軸線下流側Dadへ流れる過程で、タービンロータ32を回転させる。このタービンロータ32の回転で、ガスタービンロータ2に接続されている発電機9のロータが回転する。この結果、発電機9は発電する。タービン30の最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスEGは、排気ケーシング7内に流入する。この排気ガスEGは、例えば、排熱回収ボイラー内を流れた後、煙突から排気される。
【0029】
「温度測定システムの一実施形態」
本発明に係る温度測定システムの一実施形態について、
図2~
図7を参照して説明する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態における温度測定システムSYは、前述の複数の上流側排気ガス温度計47及び温度信号処理装置50を有する。
【0031】
複数の上流側排気ガス温度計47は、排気ケーシング7内の軸線上流側Dauの空間中の温度を測定する。この空間は、軸線Arを中心とした環状の大領域Rbである。この大領域Rbには、正常な温度範囲が予め定められている。燃焼器20の数が、前述したように、例えば16個の場合、この大領域Rbを16個に分割して得られるそれぞれの領域が小領域Rsを成す。一つの小領域Rsには、一つの上流側排気ガス温度計47が配置されている。一つの上流側排気ガス温度計47は、
図2及び
図3に示すように、小領域Rs内の温度を測定する第一測温部47a及び第二測温部47bを有する。本実施形態における上流側排気ガス温度計47は、一つのシース管47c内に、それぞれが測温部として機能する二つの熱電対が配置されている。よって、本実施形態における上流側排気ガス温度計47は、ダブルエレメント型熱電対である。
【0032】
なお、本実施形態における温度測定システムSYでは、一つの小領域Rsに第一測温部47a及び第二測温部47bが配置されていればよいので、
図4に示すように、一つの小領域Rsに、一つの熱電対が一つのシース管内に収められたシングルエレメント型の熱電対を二つ配置し、それぞれのシングルエレメント型の熱電対を第一測温部47a、第二測温部47bとしてもよい。また、一つのシース管内に三つの測温部を収納し、三つの測温部のうち、一つの測温部を第一測温部47aとし、他の一の測温部を第二測温部47bとし、残りの一の測温部を予備としてもよい。
【0033】
温度信号処理装置50は、複数の小領域Rs毎の第一測温部47a及び第二測温部47bからの温度信号のうち一方の測温部からの温度信号のみを制御装置90に送る。この温度信号処理装置50は、
図2に示すように、機能構成として、複数の小領域Rs毎に存在する信号処理部51と、短時間代表変化率演算部70sと、長時間代表変化率演算部70lと、を有する。
【0034】
温度信号処理装置50は、前述したように、コンピュータで構成される。このため、機能構成としての、複数の小領域Rs毎の信号処理部51、短時間代表変化率演算部70s、及び長時間代表変化率演算部70lは、ハードディスク等の補助記憶装置に記憶されている温度信号処理プログラムを、CPU(Central Processing Unit)がメモリ等の主記憶装置に展開してこのプログラムを実行することで機能する。
【0035】
一つの信号処理部51には、一つの小領域Rs内に配置されている第一測温部47a及び第二測温部47bからの温度信号が入力する。この信号処理部51は、温度偏差演算部52と、偏差異常判断部53と、短時間変化率演算部55sと、長時間変化率演算部55lと、短時間変化率異常判断部60sと、長時間変化率異常判断部60lと、レンジ異常判断部68と、選択部69と、を有する。
【0036】
温度偏差演算部52は、
図2及び
図5に示すように、第一測温部47aで測定された温度である第一測定温度Teaと第二測温部47bで測定された温度である第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabを求める。なお、第一測定温度Tea及び第二測定温度Tebは、瞬時値であってもよいし、所定時間(例えば、1秒間)の移動平均値であってもよい。
【0037】
偏差異常判断部53は、温度偏差演算部52が求めた温度偏差ΔTabの絶対値と予め定められた温度偏差閾値ΔTshとの大小を比較する大小比較器54を有する。この大小比較器54は、温度偏差ΔTabの絶対値が温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、この温度偏差ΔTabが異常であると判断し、温度偏差ΔTabが異常である旨を示す「1」を出力する。
【0038】
短時間変化率演算部55sは、単位短時間当たりの第一測定温度Teaの変化率である短時間第一温度変化率dTeaを求める短時間第一温度変化率演算部56aと、単位短時間当たりの第二測定温度Tebの変化率である短時間第二温度変化率dTebを求める短時間第二温度変化率演算部56bとを有する。短時間第一温度変化率演算部56aは、第一測温部47aからの第一測定温度Teaを単位短時間分だけ遅らせて出力する遅延器57aと、第一測温部47aからの第一測定温度Teaと遅延器57aからの第一測定温度Teaとの差である短時間第一温度変化率dTeaを求める差分器58aと、を有する。短時間第二温度変化率演算部56bは、第二測温部47bからの第二測定温度Tebを単位短時間分だけ遅らせて出力する遅延器57bと、第二測温部47bからの第一測定温度Tebと遅延器57bからの第二測定温度Tebとの差である短時間第二温度変化率dTebを求める差分器58bと、を有する。
【0039】
長時間変化率演算部55lの構成は、短時間変化率演算部55sの構成と同じである。よって、長時間変化率演算部55lの構成について説明を省略する。但し、長時間変化率演算部55lは、単位短時間より長い単位長時間当たりの第一温度変化率である長時間第一温度変化率と、単位長時間当たりの第二温度変化率である長時間第二温度変化率と、を求める。
【0040】
ここで、単位短時間とは、例えば、1秒間で、単位長時間とは、例えば、10秒間である。また、変化率は、互に異なる時刻に測定された測定温度の瞬時値の差であってもよいし、互に異なる時間帯で測定された測定温度の移動平均の差であってもよい。
【0041】
短時間代表変化率演算部70sは、複数の小領域Rs毎の短時間第一温度変化率dTea及び短時間第二温度変化率dTebを用いて、複数の小領域Rs毎の短時間温度変化率を代表する値である短時間代表変化率を求める。この短時間代表変化率演算部70sには、複数の信号処理部51の短時間変化率演算部55sで求められた短時間変化率の全てが入力する。短時間代表変化率演算部70sは、最大変化率及び最小変化率抽出部71と、最大変化率及び最小変化率除去部72と、平均変化率演算部73と、を有する。最大変化率及び最小変化率抽出部71は、複数の信号処理部51からの短時間変化率のうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出し、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを短時間代表変化率として出力する。最大変化率及び最小変化率除去部72は、複数の信号処理部51からの短時間変化率のうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く。平均変化率演算部73は、複数の信号処理部51からの短時間変化率のうち、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均値である平均変化率dTavを求め、平均変化率dTavを短時間代表変化率として出力する。なお、平均変化率dTavは、複数の信号処理部51からの短時間変化率の全ての平均変化率であってもよい。
【0042】
長時間代表変化率演算部70lの構成は、短時間代表変化率演算部70sの構成と同じである。よって、長時間代表変化率演算部70lの構成について説明を省略する。但し、長時間代表変化率演算部70lには、複数の信号処理部51の長時間変化率演算部55lで求められた長時間変化率が入力する。このため、長時間代表変化率演算部70lは、入力した複数の長時間変化率に基づき、複数の長時間変化率から最大変化率及び最小変化率を抽出して、これらを長時間代表変化率として出力する。さらに、長時間代表変化率演算部70lは、複数の長時間変化率のうち、最大変化率及び最小変化率を除く全ての変化率の平均値である平均変化率を求め、この平均変化率を長時間代表変化率として出力する。
【0043】
短時間変化率異常判断部60sは、短時間変化率演算部55sが求めた短時間第一温度変化率dTea及び短時間第二温度変化率dTebと、短時間代表変化率演算部70sが求めた短時間代表変化率とを用いて、第一測定温度Teaが異常であるか、及び第二測定温度Tebが異常であるかを判断する。
【0044】
短時間変化率異常判断部60sは、第一差分器61aと、第一大小比較器62aと、第一アンド回路63aと、第二差分器61bと、第二大小比較器62bと、第二アンド回路63bと、第三大小比較器64と、変化率選択器65と、変化率比較器66と、第三アンド回路67と、を有する。
【0045】
第一差分器61aは、短時間第一温度変化率dTeaと短時間代表変化率の一つである平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaを求める。第一大小比較器62aは、第一差分器61aが求めた第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と予め定めた変化率偏差閾値ΔdTshとの大小を比較する。第一大小比較器62aは、この第一変化率偏差ΔdTaの絶対値が変化率偏差閾値ΔdTshを超えている場合、この第一変化率偏差ΔdTaが異常であると判断し、第一変化率偏差ΔdTaが異常である旨を示す「1」を出力する。第一アンド回路63aは、温度偏差ΔTabが異常「1」で、第一変化率偏差ΔdTaが異常「1」で、且つ、燃料流量の変化ΔFが小さい「1」場合、第一測定温度Teaが異常であると判断し、この第一測定温度Teaが異常である旨を示す「1」を出力する。ここで、燃料流量の変化ΔFが小さい場合とは、複数の燃焼器20へ供給する燃料の流量の変化ΔFが予め定められた値未満の場合である。制御装置90は、この場合に、燃料流量の変化ΔFが大きい旨を温度測定システムSYに出力する。燃料流量の変化ΔFが大きい場合としては、ガスタービン1の起動時、発電機9に対する負荷遮断時、発電機9に対するランバック時(負荷高速減少制御時)、ガスタービン1の停止時等がある。温度信号処理装置50は、制御装置90から燃料流量の変化ΔFが大きい旨を受信しない場合、燃料流量の変化ΔFが小さい「1」とする。
【0046】
第二差分器61bは、短時間第二温度変化率dTebと短時間代表変化率の一つである平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbを求める。第二大小比較器62bは、第二差分器61bが求めた第二変化率偏差ΔdTbの絶対値と予め定めた変化率偏差閾値ΔdTshとの大小を比較する。第二大小比較器62bは、この第二変化率偏差ΔdTbの絶対値が変化率偏差閾値ΔdTshを超えている場合、この第二変化率偏差ΔdTbが異常であると判断し、第二変化率偏差ΔdTbが異常である旨を示す「1」を出力する。第二アンド回路63bは、温度偏差ΔTabが異常「1」で、第二変化率偏差ΔdTbが異常「1」で、且つ、燃料流量の変化ΔFが小さい「1」場合、第二測定温度Tebが異常であると判断し、この第二測定温度Tebが異常である旨「1」を出力する。
【0047】
第三大小比較器64は、第一差分器61aが求めた第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と第二差分器61bが求めた第二変化率偏差ΔdTbの絶対値との大小を比較し、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を出力する。変化率選択器65は、短時間第一温度変化率dTeaと短時間第二温度変化率dTebとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTLに対応する温度変化率dTeLを出力する。変化率比較器66は、変化率選択器65が出力した温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が、短時間代表変化率演算部70sが求めた最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しいか否かを判断する。変化率比較器66は、変化率選択器65が出力した温度変化率dTeLが、最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しい場合には、この温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が異常である旨を示す「1」を出力する。第三アンド回路67は、温度偏差ΔTabが異常「1」で、且つ変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)が大きい方の温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が異常「1」である場合、この温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)に関する測定温度TeL(=Tea or Teb)が異常である旨「1」を出力する。
【0048】
長時間変化率異常判断部60lは、長時間変化率演算部55lが求めた長時間第一温度変化率及び長時間第二温度変化率と、長時間代表変化率演算部70lが求めた長時間代表変化率とを用いて、第一測定温度Teaが異常であるか、及び第二測定温度Tebが異常であるかを判断する。
【0049】
長時間変化率異常判断部60lの構成は、短時間変化率異常判断部60sの構成と同じである。よって、長時間変化率異常判断部60lの構成について説明を省略するが、この長時間変化率異常判断部60lも、短時間変化率異常判断部60sと同様、第一差分器と、第一大小比較器と、第一アンド回路と、第二差分器と、第二大小比較器と、第二アンド回路と、第三大小比較器と、変化率選択器と、変化率比較器と、第三アンド回路と、を有する。但し、この長時間変化率異常判断部60lには、長時間変化率演算部55lが求めた長時間第一温度変化率及び長時間第二温度変化率が入力する。このため、長時間変化率異常判断部60lの第一アンド回路は、温度偏差Tabが異常で、長時間第一変化率偏差が異常で、且つ、燃料流量の変化が小さい場合、第一測定温度Teaが異常であると判断し、この第一測定温度Teaが異常である旨を示す「1」を出力する。また、長時間変化率異常判断部60lの第二アンド回路は、温度偏差ΔTabが異常で、長時間第二変化率偏差が異常で、且つ、燃料流量の変化が小さい場合、第二測定温度Tebが異常であると判断し、この第二測定温度Tebが異常である旨「1」を出力する。また、長時間変化率異常判断部60lの第三アンド回路は、温度偏差ΔTabが異常で、且つ長時間変化率偏差が大きい方の長時間温度変化率が異常である場合、長時間変化率偏差が大きい方の測定温度TeL(=Tea or Teb)が異常である旨「1」を出力する。
【0050】
レンジ異常判断部68は、第一測定温度Teaが大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内であるか否かに応じて、第一測定温度Teaが異常であるか否かと判断する。さらに、レンジ異常判断部68は、第二測定温度Tebが大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内であるか否かに応じて、第二測定温度Tebが異常であるか否かを判断する。このレンジ異常判断部68は、第一測定温度Teaが正常な温度範囲内でない場合に、第一測定温度Teaが異常であると判断し、第二測定温度Tebが正常な温度範囲内でない場合に、第二測定温度Tebが異常であると判断する。
【0051】
なお、ここでは、一つの信号処理部51中の短時間変化率異常判断部60s、長時間変化率異常判断部60l、及びレンジ異常判断部68において、判断対象の第一測定温度Teaは、この一つの信号処理部51に入力する対象第一測定温度Teaであり、判断対象の第二測定温度Tebは、この一つの信号処理部51に入力する対象第二測定温度Tebである。また、ここでは、第一測定温度Teaの異常は第一測温部47aの異常を意味し、第二測定温度Tebの異常は第二測温部47bの異常を意味する。
【0052】
選択部69は、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を制御装置90に送る。
【0053】
次に、
図6に示すフローチャートに従って、温度測定システムSYの動作について説明する。
【0054】
温度測定システムSYは、複数の小領域Rs毎に行われる信号処理工程S10と、短時間代表変化率演算工程S20sと、長時間代表変化率演算工程S20lと、を実行する。
【0055】
複数の小領域Rs毎の信号処理工程S10は、第一測温工程S11a、第二測温工程S11b、温度偏差演算工程S12、偏差異常判断工程S13、短時間変化率演算工程S14s、長時間変化率演算工程S14l、短時間変化率異常判断工程S15s、長時間変化率異常判断工程S15l、レンジ異常判断工程S16、選択工程S17を含む。
【0056】
第一測温工程S11aでは、信号処理工程S10が扱う小領域Rsの温度をこの小領域Rsに配置されている第一測温部47aで測定する。第二測温工程S11bでは、この信号処理工程S10で扱う小領域Rsの温度をこの小領域Rsに配置されている第二測温部47bで測定する。この信号処理工程S10における第一測温工程S11aで測定された温度は、対象第一測定温度Teaであり、この信号処理工程S10における第二測温工程S11bで測定された温度が対象第二測定温度Tebである。
【0057】
温度偏差演算工程S12では、温度偏差演算部52が対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabを求める。
【0058】
偏差異常判断工程S13では、偏差異常判断部53が温度偏差ΔTabの絶対値と予め定められた温度偏差閾値ΔTshとの大小を比較する。そして、この偏差異常判断工程S13では、温度偏差ΔTabの絶対値が温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、この温度偏差ΔTabが異常であると判断し、温度偏差ΔTabが異常である旨を示す「1」を出力する。
【0059】
短時間変化率演算工程S14sでは、短時間変化率演算部55sが、単位短時間当たりの対象第一測定温度Teaの変化率である短時間第一温度変化率dTeaと、単位短時間当たりの対象第二測定温度Tebの変化率である短時間第二温度変化率dTebを求める。
【0060】
長時間変化率演算工程S14lでは、長時間変化率演算部55lが、単位長時間当たりの対象第一測定温度Teaの変化率である長時間第一温度変化率と、単位長時間当たりの対象第二測定温度Tebの変化率である長時間第二温度変化率を求める。
【0061】
短時間代表変化率演算工程S20sでは、短時間代表変化率演算部70sが、複数の信号処理工程S10毎の短時間変化率演算工程S14sで求められた短時間第一温度変化率dTea及び短時間第二温度変化率dTebのうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出し、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを短時間代表変化率として出力する。短時間代表変化率演算工程S20sでは、さらに、短時間代表変化率演算部70sが、複数の信号処理工程S10毎の短時間変化率演算工程S14sで求められた短時間第一温度変化率dTea及び短時間第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均値である平均変化率dTavを求め、この平均変化率dTavを短時間代表変化率として出力する。
【0062】
長時間代表変化率演算工程S20lでは、長時間代表変化率演算部70lが、複数の信号処理工程S10毎の長時間変化率演算工程S14lで求められた長時間変化率のうちから、最大変化率及び最小変化率を抽出し、最大変化率及び最小変化率を長時間代表変化率として出力する。長時間代表変化率演算工程S20lでは、さらに、長時間代表変化率演算部70lが、複数の信号処理工程S10毎の長時間変化率演算工程S14lで求められた長時間変化率のうち、最大変化率及び最小変化率を除く全ての変化率の平均値である平均変化率を求め、この平均変化率を長時間代表変化率として出力する。
【0063】
複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimを示す第一測定温度Tea又は第二測定温度Tebを測定した測温部は、異常である可能性がある。そこで、本実施形態では、第一測温部47a及び第二測温部47bが異常であるか否かを判断するために用いる平均変化率dTavとして、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均変化率dTavを用いることで、異常判断の正確性を高めている。
【0064】
偏差異常判断工程S13で、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの温度偏差ΔTabが異常であると判断された場合、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれか一方が異常である可能性が高い。このため、短時間変化率異常判断工程S15s及び長時間変化率異常判断工程S15lでは、対象第一測定温度Teaの第一温度変化率dTea及び対象第二測定温度Tebの第二温度変化率dTebを用いて、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれが異常であるかを判断する。
【0065】
短時間変化率異常判断工程S15s及び長時間変化率異常判断工程S15lでは、第一判断手法及び第二判断手法のそれぞれで、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれが異常であるかを判断する。第一判断手法では、温度変化率dTと平均変化率dTavとの差である変化率偏差ΔdTに基づき、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれが異常であるかを判断する。第二判断手法では、温度変化率dTが最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであるかに基づき、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれが異常であるかを判断する。
【0066】
短時間変化率異常判断工程S15sでは、まず、短時間変化率異常判断部60sの第一差分器61aが、短時間第一温度変化率dTeaと短時間代表変化率の一つである平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaを求める。さらに、短時間変化率異常判断部60sの第二差分器61bが、短時間第二温度変化率dTebと短時間代表変化率の一つである平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbを求める。
【0067】
短時間変化率異常判断工程S15sにおける第一判断手法では、短時間変化率異常判断部60sの第一大小比較器62aが、第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と予め定めた変化率偏差閾値ΔdTshとの大小を比較する。第一大小比較器62aは、この第一変化率偏差ΔdTaの絶対値が変化率偏差閾値ΔdTshを超えている場合、この第一変化率偏差ΔdTaが異常であると判断し、第一変化率偏差ΔdTaが異常である旨を示す「1」を出力する。第一アンド回路63aは、温度偏差ΔTabが異常「1」で、第一変化率偏差ΔdTaが異常「1」で、且つ、燃料流量の変化ΔFが小さい「1」場合、第一測定温度Teaが異常であると判断し、この第一測定温度Teaが異常である旨を示す「1」を出力する。
【0068】
短時間変化率異常判断工程S15sにおける第一判断手法では、さらに、短時間変化率異常判断部60sの第二大小比較器62bが、第二変化率偏差ΔdTbの絶対値と変化率偏差閾値ΔdTshとの大小を比較する。第二大小比較器62bは、この第二変化率偏差ΔdTbの絶対値が変化率偏差閾値ΔdTshを超えている場合、この第二変化率偏差ΔdTbが異常であると判断し、第二変化率偏差ΔdTbが異常である旨を示す「1」を出力する。第二アンド回路63bは、温度偏差ΔTabが異常「1」で、第二変化率偏差ΔdTbが異常「1」で、且つ、燃料流量の変化ΔFが小さい「1」場合、第二測定温度Tebが異常であると判断し、この第二測定温度Tebが異常である旨を示す「1」を出力する。
【0069】
短時間変化率異常判断工程S15sにおける第二判断手法では、短時間変化率異常判断部60sの第三大小比較器64が、第一差分器61aで求められた短時間第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と第二差分器61bで求めた短時間第二変化率偏差ΔdTbの絶対値との大小を比較し、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を出力する。短時間変化率異常判断部60sの変化率選択器65は、短時間第一温度変化率dTeaと短時間第二温度変化率dTebとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTLに対応する温度変化率dTeLを出力する。変化率比較器66は、変化率選択器65が出力した温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が、短時間代表変化率演算部70sが求めた最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しいか否かを判断する。変化率比較器66は、変化率選択器65が出力した温度変化率dTeLが、最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しい場合には、この温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が異常である旨を示す「1」を出力する。第三アンド回路67は、温度偏差ΔTabが異常「1」で、且つ変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)が大きい方の温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が異常「1」である場合、この温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)に関する測定温度TeL(=Tea or Teb)が異常である旨「1」を出力する。
【0070】
長時間変化率異常判断工程S15lでは、短時間変化率異常判断工程S15sと同様に、長時間第一変化率と長時間第二変化率と長時間代表変化率とを用いて、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aと対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bとのうち、いずれかが異常であるかを判断する。
【0071】
レンジ異常判断工程S16では、レンジ異常判断部68が、対象第一測定温度Teaが大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内でない場合に、対象第一測定温度Teaが異常であると判断する。また、このレンジ異常判断工程S16では、レンジ異常判断部68が、対象第二測定温度Tebが大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内でない場合に、対象第二測定温度Tebが異常であると判断する。
【0072】
選択工程S17では、短時間変化率異常判断工程S15s、長時間変化率異常判断工程S15l、及びレンジ異常判断工程S16で、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとのうち、異常であると判断されていない対象測定温度Tea,Tebを制御装置90に送る。
【0073】
次に、
図7を参照して、各種条件と異常判断結果との関係について説明する。なお、繰り返すことになるが、ここでも、第一測定温度Teaの異常は第一測温部47aの異常を意味し、第二測定温度Tebの異常は第二測温部47bの異常を意味する。
【0074】
本実施形態では、各種条件の態様として、以下の五つのケースがある。
【0075】
ケース1は、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとのうち、少なくとも一方が大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内でない場合である。言い換えると、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとのうち、少なくとも一方が大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲の最大温度Temaxを超えるか、大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲の最小温度Teminより低い場合である。
【0076】
この場合、他の条件に関わらず、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとのうち、正常な温度範囲内でない対象測定温度Tea,Tebが異常である、とされる。なお、ケース1における異常判断は、レンジ異常判断部68が行う。
【0077】
ケース2~5は、いずれも、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの両方が大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲内の場合である。言い換えると、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの両方が、正常な温度範囲の最大温度Temax未満であり、且つ、正常な温度範囲の最小温度Teminより高い場合である。なお、ケース2~5における異常判断は、短時間変化率異常判断部60s及び長時間変化率異常判断部60lのそれぞれが行う。
【0078】
ケース2は、以上の温度範囲条件に加えて、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTsh以下の場合である。
【0079】
この場合、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの両方は、異常とされない。
【0080】
ケース3~5は、以上の温度範囲条件に加えて、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超える場合である。
【0081】
ケース3は、以上の温度範囲条件及び温度偏差条件に加えて、第一温度変化率dTeaと平均変化率dTavとの第一変化率偏差ΔdTaが予め定めた変化率偏差閾値ΔdTshより大きい、及び/又は、第二温度変化率dTebと平均変化率dTavとの第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshより大きい場合で、且つ、燃料流量の変化ΔFが小さい場合である。
【0082】
この場合、変化率偏差が変化率偏差閾値ΔdTshより大きい対象測定温度Tea,Tebが異常である、とされる。つまり、第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshより大きい場合、対象第一測定温度Teaが異常である、とされ、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshより大きい場合、対象第二測定温度Tebが異常である、とされる。
【0083】
よって、以上の温度範囲条件及び温度偏差条件に加えて、第一温度変化率dTeaと平均変化率dTavとの第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshより大きい、及び/又は、第二温度変化率dTebと平均変化率dTavとの第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshより大きい場合でも、燃料流量の変化ΔFが大きい場合、変化率偏差が大きい対象測定温度Tea,Tebが異常とされない。
【0084】
なお、ケース3を除く、ケース1,2,4,5の場合、燃料流量の変化ΔFの大小は、異常判断に影響しない。燃料流量の変化ΔFが大きい場合、燃料流量の変化ΔFが小さい場合と比べて、温度変化率dTと平均変化率dTavとの変化率偏差ΔdTが大きくなる。このため、燃料流量の変化ΔFが大きい場合、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が正常でも、変化率偏差ΔdTが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshより大きくなって、この測温部が異常であると判断されることがある。そこで、本実施形態では、異常判断の正確性を向上させるため、ケース3のように、変化率偏差ΔdTの高い対象測定温度Tea,Tebが異常であると判断する場合のみ、燃料流量の変化ΔFが小さいことを条件とする。言い換えると、本実施形態では、燃料流量の変化ΔFが大きい場合、変化率偏差ΔdTが変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断しない。
【0085】
ケース4,5は、以上の温度範囲条件及び温度偏差条件に加えて、第一温度変化率dTeaと平均変化率dTavとの第一変化率偏差ΔdTa、及び第二温度変化率dTebと平均変化率dTavとの第二変化率偏差ΔdTbが予め定めた変化率偏差閾値ΔdTsh以下の場合である。
【0086】
ケース4は、以上の温度範囲条件、温度偏差条件及び変化率偏差条件に加えて、第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と第二変化率偏差ΔdTbの絶対値とのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTLに対応する温度変化率dTeL(=deTa or dTeb)が最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しい場合である。
【0087】
この場合、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとのうち、変化率偏差ΔdTLが大きい方の対象測定温度TeL(=Tea or Teb)が異常である、とされる。
【0088】
ケース5は、以上の温度範囲条件、温度偏差条件及び変化率偏差条件に加えて、第一変化率偏差ΔdTaの絶対値と第二変化率偏差ΔdTbの絶対値とのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTLに対応する温度変化率dTeL(=dTea or ΔdTeb)が最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimと等しくない場合である。
【0089】
この場合、対象第一測定温度Teaと対象第二測定温度Tebとの両方が、異常とされない。
【0090】
以上、本実施形態では、いずれかの小領域Rsに配置されている第一測温部47aで測定された第一測定温度Teaとこの小領域Rsに配置されている第二測温部47bで測定された第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えているか否かが判断される。この温度偏差ΔTabが温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本実施形態では、温度偏差閾値ΔTshを超えている温度偏差ΔTabである異常偏差の演算に用いられた第一測定温度Teaである対象第一測定温度Teaに関する第一温度変化率dTeaと、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebを用いて求められた代表変化率とが比較される。本実施形態では、さらに、前記異常偏差の演算に用いられた第二測定温度Tebである対象第二測定温度Tebに関する第二温度変化率dTebと前記代表変化率とが比較される。そして、本実施形態では、変化率異常判断部60s,60lが、これらの比較結果から、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であるか否か、及び、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であるか否かを判断する。
【0091】
測温部のタイプや、測温部中の故障箇所が異なると、小領域Rs内の温度変化が生じてから測温部から出力される測定温度Tea,Tebが変化するまでの応答時間が変わることがある。そこで、本実施形態では、互いに異なる二つの単位時間当たりの温度変化率に基づいて、測温部の異常を判断することで、異常判断の正確性を高めている。
【0092】
本実施形態の温度信号処理装置50は、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を制御装置90に送る。このため、制御装置90によるガスタービン制御不具合の発生を抑えることができる。
【0093】
「変形例」
以上の実施形態における代表変化率は、複数の小領域Rs毎の第一測定温度Tea及び第二測定温度Tebのうちの最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimと、複数の小領域Rs毎の第一測定温度Tea及び第二測定温度Tebから求められた平均変化率dTavとがある。しかしながら、代表変化率は、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimと、平均変化率dTavとのうち、いずれか一方のみでもよい。この場合、短時間変化率異常判断部60s及び長時間変化率異常判断部60lでは、温度変化率が最小変化率dTmimか最大変化率dTmaxかに基づく異常判断と、温度変化率と平均変化率dTavとの偏差に基づく異常判断とのうち、いずれか一方のみを判断することになる。
【0094】
以上の実施形態における短時間変化率異常判断部60s及び長時間変化率異常判断部60lでは、温度偏差ΔTabが異常で、変化率偏差ΔdTが異常で、且つ、大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータである燃料流量の変化が小さい場合、測定温度Tea,Tebが異常であると判断する。しかしながら、パラメータとしての燃料流量の変化を異常判断の条件から外してもよい。
【0095】
以上の実施形態における温度測定システムSYは、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を制御装置90に送る選択部69を有する。しかしながら、この選択部69を省略してもよい。この場合、温度測定システムSYは、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、いずれかが異常であると判断した場合、その旨を外部に出力するようにするとよい。
【0096】
以上の実施形態の温度測定システムSYは、複数の上流側排気ガス温度計47を有する。しかしながら、温度測定システムSYは、複数の上流側排気ガス温度計47の替りに、複数の下流側排気ガス温度計48や複数のケーシング温度計44を有してもよい。
【0097】
仮に、温度測定システムSYが複数の下流側排気ガス温度計48を有する場合、排気ケーシング7内の軸線下流側Dadの環状の空間が大領域Rbになり、この大領域Rbを周方向Dcに分割して得られるそれぞれの領域が小領域Rsになる。一つの小領域Rsには、第一測温部及び第二測温部が配置される。なお、この場合も、大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータは、燃料流量である。
【0098】
また、仮に、温度測定システムSYが複数のケーシング温度計44を有する場合、中間ケーシング6内の環状の空間が大領域Rbになり、この大領域Rbを周方向Dcに分割して得られるそれぞれの領域が小領域Rsになる。一つの小領域Rsには、第一測温部及び第二測温部が配置される。なお、この場合、大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータは、例えば、ガスタービン1を停止後に、中間ケーシング6内に供給する冷却空気流量である。
【0099】
以上の実施形態における測定対象は、ガスタービン1である。しかしながら、測定対象はガスタービン1に限定されない。
【0100】
本開示は、以上で説明した実施形態及び変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0101】
「付記」
以上の実施形態における温度測定システムSYは、例えば、以下のように把握される。
【0102】
(1)第一態様における温度測定システムSYは、
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域Rbを複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域Rs毎に設けられ、該小領域Rs内の温度を測定可能な第一測温部47a及び第二測温部47bと、複数の前記小領域Rs毎に設けられ、前記第一測温部47aで測定された温度である第一測定温度Teaと前記第二測温部47bで測定された温度である第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabを求める温度偏差演算部52と、複数の前記小領域Rs毎に設けられ、前記温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えているか否かを判断する偏差異常判断部53と、複数の前記小領域Rs毎に設けられ、前記第一測定温度Teaの単位時間当たりの変化率である第一温度変化率dTeaと、前記第二測定温度Tebの単位時間当たりの変化率である第二温度変化率dTebと、を求める変化率演算部55s,55lと、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて、複数の前記小領域Rs毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算部70s,70lと、複数の前記小領域Rs毎に設けられ、前記温度偏差ΔTabが前記温度偏差閾値ΔTshを超えている場合に、前記温度偏差閾値ΔTshを超えている前記温度偏差ΔTabである異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度Teaである対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度Tebである対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する変化率異常判断部60s,60lと、を備える。
【0103】
本態様では、いずれかの小領域Rsに配置されている第一測温部47aで測定された第一測定温度Teaとこの小領域Rsに配置されている第二測温部47bで測定された第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えているか否かが判断される。この温度偏差ΔTabが温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本態様では、温度偏差閾値ΔTshを超えている温度偏差ΔTabである異常偏差の演算に用いられた第一測定温度Teaである対象第一測定温度Teaに関する第一温度変化率dTeaと、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebを用いて求められた代表変化率とが比較される。本態様では、さらに、前記異常偏差の演算に用いられた第二測定温度Tebである対象第二測定温度Tebに関する第二温度変化率dTebと前記代表変化率とが比較される。そして、本態様では、変化率異常判断部60s,60lが、これらの比較結果から、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であるか否か、及び、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であるか否かを判断する。
【0104】
(2)第二態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様における温度測定システムSYにおいて、前記代表変化率演算部70s,70lは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出し、前記最大変化率dTmax及び前記最小変化率dTmimを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断部60s,60lは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaが前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebが前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0105】
第一態様における温度測定システムSYに関して説明したように、第一測定温度Teaと第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本態様では、対象第一測定温度Teaに関する第一温度変化率dTeaと、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebのうちの最小変化率dTmim及び最大変化率dTmaxとが比較される。本態様では、さらに、対象第二測定温度Tebに関する第二温度変化率dTebと前記最小変化率dTmim及び前記最大変化率dTmaxとが比較される。そして、本態様では、変化率異常判断部60s,60lが、第一温度変化率dTeaが最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断し、第二温度変化率dTebが最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断する。
【0106】
(3)第三態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様における温度測定システムSYにおいて、前記代表変化率演算部70s,70lは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて平均変化率dTavを求め、前記平均変化率dTavを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断部60s,60lは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0107】
第一態様における温度測定システムSYに関して説明したように、第一測定温度Teaと第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本態様では、対象第一測定温度Teaに関する第一温度変化率dTeaと、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebを用いて求められた平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaが求められる。本態様では、さらに、対象第二測定温度Tebに関する第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbが求められる。そして、本態様では、変化率異常判断部60s,60lが、第一変化率偏差ΔdTaが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断し、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断する。
【0108】
(4)第四態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様における温度測定システムSYにおいて、前記代表変化率演算部70s,70lは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出すると共に、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて平均変化率dTavを求め、前記最大変化率dTmax、前記最小変化率dTmim、及び前記平均変化率dTavを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断部60s,60lは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断し、前記第一変化率偏差ΔdTaが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えず、且つ前記第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えない場合、前記第一変化率偏差ΔdTaと前記第二変化率偏差ΔdTbとのうち偏差が大きい方の変化率偏差を定め、前記第一温度変化率dTeaと前記第二温度変化率dTebとのうち、前記大きい方の変化率偏差を示す温度変化率が前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記第一測温部47aと前記第二測温部47bとのうち、前記大きい方の変化率偏差に対応する対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断する。
【0109】
第一態様における温度測定システムSYに関して説明したように、第一測定温度Teaと第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えている場合、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、少なくともいずれか一方の測温部が異常である可能性が高い。この場合、本態様では、対象第一測定温度Teaに関する第一温度変化率dTeaと、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebを用いて求められた平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaが求められる。本態様では、さらに、対象第二測定温度Tebに関する第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbが求められる。そして、本態様では、変化率異常判断部60s,60lが、第一変化率偏差ΔdTaが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断し、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断する。さらに、本態様では、第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshを超えず、且つ、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えない場合、第一温度変化率dTeaと第二温度変化率dTebとのうち、第一変化率偏差ΔdTaと第二変化率偏差ΔdTbとのうち偏差が大きい方の変化率偏差を定める。そして、本態様では、変化率異常判断部60s,60lが、第一温度変化率dTeaと第二温度変化率dTebとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を示す温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)に対応する対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断する。
【0110】
(5)第五態様における温度測定システムSYは、
前記第三態様又は前記第四態様における温度測定システムSYにおいて、前記代表変化率演算部70s,70lが求める前記平均変化率dTavは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均変化率dTavである。
【0111】
複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimを示す第一測定温度Tea又は第二測定温度Tebを測定した測温部は、異常である可能性がある。そこで、本態様では、第一測温部47a及び第二測温部47bが異常であるか否かを判断するために用いる平均変化率dTavとして、複数の小領域Rs毎の第一温度変化率dTea及び第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均変化率dTavを用いことで、異常判断の正確性を高めている。
【0112】
(6)第六態様における温度測定システムSYは、
前記第三態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における温度測定システムSYにおいて、前記変化率異常判断部60s,60lは、前記大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータが予め定められた値以上に変化した場合、前記第一変化率偏差ΔdTaが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断せず、前記第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断しない。
【0113】
本態様では、大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータの変化が大きい場合、このパラメータの変化が小さい場合と比べて、各測定温度Tea,Tebに関する温度変化率と平均変化率dTavとの変化率偏差ΔdTが大きくなる。このため、パラメータの変化が大きい場合、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が正常でも、変化率偏差ΔdTが変化率偏差閾値ΔdTshより大きくなって、この測温部が異常であると判断されることがある。そこで、本態様では、異常判断の正確性を向上させるため、パラメータの変化が大きい場合、変化率偏差ΔdTが変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断しないことで、異常判断の正確性を高めている。
【0114】
(7)第七態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における温度測定システムSYにおいて、前記変化率演算部55s,55lとして、単位短時間当たりの前記第一測定温度Teaの変化率である短時間第一温度変化率dTea、及び、前記単位短時間当たりの前記第二測定温度Tebの変化率である短時間第二温度変化率dTebを求める短時間変化率演算部55sと、前記単位短時間より長い単位長時間当たりの前記第一測定温度Teaの変化率である長時間第一温度変化率、及び、前記単位長時間当たりの前記第二測定温度Tebの変化率である長時間第二温度変化率を求める長時間変化率演算部55lと、を備える。前記代表変化率演算部70s,70lとして、前記単位短時間に対する前記代表変化率である短時間代表変化率を求める短時間代表変化率演算部70sと、前記単位長時間に対する前記代表変化率である長時間代表変化率を求める長時間代表変化率演算部70lと、を備える。前記変化率異常判断部60s,60lとして、前記短時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47a、及び前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する短時間変化率異常判断部60sと、前記長時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47a、及び前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する長時間変化率異常判断部60lと、を備える。
【0115】
測温部のタイプや、測温部中の故障箇所が異なると、小領域Rs内の温度変化が生じてから測温部から出力される測定温度Tea,Tebが変化するまでの応答時間が変わることがある。そこで、本態様では、互いに異なる二つの単位時間当たりの温度変化率に基づいて、測温部の異常を判断することで、異常判断の正確性を高めている。
【0116】
(8)第八態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における温度測定システムSYにおいて、複数の前記小領域Rs毎に設けられているレンジ異常判断部68を備える。前記レンジ異常判断部68は、前記対象第一測定温度Teaが前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebが前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0117】
本態様では、大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲外の場合に、測定温度Tea,Tebを測定した測温部を異常であると判断する。
【0118】
(9)第九態様における温度測定システムSYは、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における温度測定システムSYにおいて、複数の前記小領域Rs毎に、前記第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を、前記測定対象の動作を制御する制御装置90に送る選択部69を備える。
【0119】
本態様では、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を制御する制御装置90に送られる。このため、制御装置90による制御不具合の発生を抑えることができる。
【0120】
以上の実施形態における温度測定方法は、例えば、以下のように把握される。
(10)第十態様における温度測定方法は、
測定対象中で、正常な温度範囲が予め定められている大領域Rbを複数に分割して得られるそれぞれの領域である小領域Rs毎に、該小領域Rsの温度を第一測温部47aで測定する第一測温工程S11aと、複数の前記小領域Rs毎に、該小領域Rsの温度を第二測温部47bで測定する第二測温工程S11bと、複数の前記小領域Rs毎に、前記第一測温工程S11aで測定された温度である第一測定温度Teaと前記第二測温工程S11bで測定された温度である第二測定温度Tebとの差である温度偏差ΔTabを求める温度偏差演算工程S12と、複数の前記小領域Rs毎に、前記温度偏差ΔTabが予め定められた温度偏差閾値ΔTshを超えているか否かを判断する偏差異常判断工程S13と、複数の前記小領域Rs毎に、前記第一測定温度Teaの単位時間当たりの変化率である第一温度変化率dTeaと、前記第二測定温度Tebの単位時間当たりの変化率である第二温度変化率dTebと、を求める変化率演算工程S14s,S14lと、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて、複数の前記小領域Rs毎の温度変化率を代表する値である代表変化率を求める代表変化率演算工程S20s,S20lと、複数の前記小領域Rs毎に、前記温度偏差ΔTabが前記温度偏差閾値ΔTshを超えている場合に、前記温度偏差閾値ΔTshを超えている前記温度偏差ΔTabである異常偏差の演算に用いられた前記第一測定温度Teaである対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記代表変化率とを比較すると共に、前記異常偏差の演算に用いられた前記第二測定温度Tebである対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記代表変化率とを比較して、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であるか否か、及び、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する変化率異常判断工程S15s,S15lと、を実行する。
【0121】
本態様でも、第一態様における温度測定システムSYと同様に、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であるか否か、及び、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であるか否かを判断することができる。
【0122】
(11)第十一態様における温度測定方法は、
前記第十態様における温度測定方法において、前記代表変化率演算工程S20s,S20lでは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出し、前記最大変化率dTmax及び前記最小変化率dTmimを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断工程S15s,S15lでは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaが前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebが前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0123】
本態様でも、第二態様における温度測定システムSYと同様に、第一温度変化率dTeaが最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断することができる。さらに、第二温度変化率dTebが最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断することができる。
【0124】
(12)第十二態様における温度測定方法は、
前記第十態様における温度測定方法において、前記代表変化率演算工程S20s,S20lでは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて平均変化率dTavを求め、前記平均変化率dTavを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断工程S15s,S15lでは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差が予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差が前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0125】
本態様でも、第三態様における温度測定システムSYと同様に、第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断することができる。さらに、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断することができる。
【0126】
(13)第十三態様における温度測定方法は、
前記第十態様における温度測定方法において、前記代表変化率演算工程S20s,S20lでは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうちから、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを抽出すると共に、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebを用いて平均変化率dTavを求め、前記最大変化率dTmax、前記最小変化率dTmim、及び前記平均変化率dTavを前記代表変化率とする。前記変化率異常判断工程S15s,S15lでは、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差である第一変化率偏差ΔdTaが予め定められた変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差である第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断し、前記第一変化率偏差ΔdTaが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えず、且つ前記第二変化率偏差ΔdTbが前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えない場合、前記第一変化率偏差ΔdTaと前記第二変化率偏差ΔdTbとのうち偏差が大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を定め、前記第一温度変化率dTeaと前記第二温度変化率dTebとのうち、前記大きい方の変化率偏差ΔdTLを示す温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が前記最大変化率dTmax又は前記最小変化率dTmimであることを条件として、前記第一測温部47aと前記第二測温部47bとのうち、前記大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)に対応する対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断する。
【0127】
本態様でも、第四態様における温度測定システムSYと同様に、第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第一測定温度Teaを測定した第一測温部47aが異常であると判断することができる。さらに、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えることを条件として、対象第二測定温度Tebを測定した第二測温部47bが異常であると判断することができる。また、本態様でも、第一変化率偏差ΔdTaが変化率偏差閾値ΔdTshを超えず、且つ、第二変化率偏差ΔdTbが変化率偏差閾値ΔdTshを超えない場合、第一温度変化率dTeaと第二温度変化率dTebとのうち、第一変化率偏差ΔdTaと第二変化率偏差ΔdTbとのうち偏差が大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を定める。そして、本態様でも、変化率異常判断工程S15s,S15lでは、第一温度変化率dTeaと第二温度変化率dTebとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)を示す温度変化率dTeL(=dTea or dTeb)が最大変化率dTmax又は最小変化率dTmimであることを条件として、第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、大きい方の変化率偏差ΔdTL(=ΔdTa or ΔdTb)に対応する対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断することができる。
【0128】
(14)第十四態様における温度測定方法は、
前記第十二態様又は前記第十三態様における温度測定方法において、前記代表変化率演算工程S20s,S20lで求められる前記平均変化率dTavは、複数の前記小領域Rs毎の前記第一温度変化率dTea及び前記第二温度変化率dTebのうち、最大変化率dTmax及び最小変化率dTmimを除く全ての変化率の平均変化率dTavである。
【0129】
本態様でも、第五態様における温度測定システムSYと同様に、異常判断の正確性を高めることができる。
【0130】
(15)第十五態様における温度測定方法は、
前記第十二態様から前記第十四態様のうちのいずれか一態様における温度測定方法において、前記変化率異常判断工程S15s,S15lでは、前記大領域Rbにおける温度変化の原因となるパラメータが予め定められた値以上に変化した場合、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差が前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断せず、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差が前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断しない。
【0131】
本態様でも、第六態様における温度測定システムSYと同様に、異常判断の正確性を高めることができる。
【0132】
(16)第十六態様における温度測定方法は、
前記第十二態様から前記第十四態様のうちのいずれか一態様における温度測定方法において、前記測定対象は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機10と、前記圧縮空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成可能な複数の燃焼器20と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン30と、を備えるガスタービン1である。前記タービン30は、軸線Arを中心として回転可能なタービンロータ32と、前記タービンロータ32の外周を覆うタービンケーシング36と、前記タービンケーシング36に接続され、前記タービンロータ32を通過した燃焼ガスである排気ガスEGが流通可能な排気ケーシング7と、を有する。前記大領域Rbは、前記排気ケーシング7内の前記軸線Arを中心として環状の領域である。複数の前記小領域Rsは、前記大領域Rbを前記軸線Arに対する周方向Dcに複数に分割して得られるそれぞれの領域である。前記変化率異常判断工程S15s,S15lでは、複数の前記燃焼器20へ供給する燃料Fの流量が予め定められた値以上に変化した場合、前記対象第一測定温度Teaに関する前記第一温度変化率dTeaと前記平均変化率dTavとの差が前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断せず、前記対象第二測定温度Tebに関する前記第二温度変化率dTebと前記平均変化率dTavとの差が前記変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断しない。
【0133】
本態様では、大領域Rbにおける温度変化の原因となる燃料流量の変化ΔFが大きい場合、燃料流量の変化ΔFが小さい場合と比べて、各測定温度Tea,Tebに関する温度変化率と平均変化率dTavとの変化率偏差ΔdTが大きくなる。このため、燃料流量の変化ΔFが大きい場合、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が正常でも、変化率偏差ΔdTが変化率偏差閾値ΔdTshより大きくなって、この測温部が異常であると判断されることがある。そこで、本態様では、異常判断の正確性を向上させるため、燃料流量の変化ΔFが大きい場合、変化率偏差ΔdTが変化率偏差閾値ΔdTshを超えていても、対象測定温度Tea,Tebを測定した測温部が異常であると判断しないことで、異常判断の正確性を高めている。
【0134】
(17)第十七態様における温度測定方法は、
前記第十態様から前記第十六態様のうちのいずれか一態様における温度測定方法において、前記変化率演算工程S14s,S14lとして、単位短時間当たりの前記第一測定温度Teaの変化率である短時間第一温度変化率dTea、及び、前記単位短時間当たりの前記第二測定温度Tebの変化率である短時間第二温度変化率dTebを求める短時間変化率演算工程S14sと、前記単位短時間より長い単位長時間当たりの前記第一測定温度Teaの変化率である長時間第一温度変化率、及び、前記単位長時間当たりの前記第二測定温度Tebの変化率である長時間第二温度変化率を求める長時間変化率演算工程S14lと、を実行する。前記代表変化率演算工程S20s,S20lとして、前記単位短時間に対する前記代表変化率である短時間代表変化率を求める短時間代表変化率演算工程S20sと、前記単位長時間に対する前記代表変化率である長時間代表変化率を求める長時間代表変化率演算工程S20lと、を実行する。前記変化率異常判断工程S15s,S15lとして、前記短時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47a、及び前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する短時間変化率異常判断工程S15sと、前記長時間代表変化率を用いて、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47a、及び前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であるか否かを判断する長時間変化率異常判断工程S15lと、を実行する。
【0135】
本態様でも、第七態様における温度測定システムSYと同様に、異常判断の正確性を高めることができる。
【0136】
(18)第十八態様における温度測定方法は、
前記第十態様から前記第十七態様のうちのいずれか一態様における温度測定方法において、複数の前記小領域Rs毎に、レンジ異常判断工程S16を実行する。前記レンジ異常判断工程S16では、前記対象第一測定温度Teaが前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第一測定温度Teaを測定した前記第一測温部47aが異常であると判断し、前記対象第二測定温度Tebが前記正常な温度範囲外の場合に、前記対象第二測定温度Tebを測定した前記第二測温部47bが異常であると判断する。
【0137】
本態様でも、第八態様における温度測定システムSYと同様に、大領域Rbに対して予め定められている正常な温度範囲外の場合に、測定温度Tea,Tebを測定した測温部を異常であると判断できる。
【0138】
(19)第十九態様における温度測定方法は、
前記第十態様から前記第十八態様のうちのいずれか一態様における温度測定方法において、複数の前記小領域Rs毎に、前記第一測温部47aと第二測温部47bとのうち、異常であると判断されていない測温部で測定された温度を、前記測定対象の動作を制御する制御装置90に送る選択工程S17を実行する。
【0139】
本態様でも、第十態様における温度測定システムSYと同様に、制御装置90による制御不具合の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0140】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
5:ガスタービンケーシング
6:中間ケーシング
7:排気ケーシング
8:燃料ライン
8v:燃料弁
9:発電機
10:圧縮機
12:圧縮機ロータ
13:ロータ軸
14:動翼列
15:静翼列
16:圧縮機ケーシング
17:吸気量調節機(IGV)
17v:ベーン
17d:駆動器
20:燃焼器
30:タービン
32:タービンロータ
33:ロータ軸
34:動翼列
35:静翼列
36:タービンケーシング
40:回転数計
41:出力計
42:吸気温度計
43:吸気圧力計
44:ケーシング温度計
45:ケーシング内圧力計
46:燃料流量計
47:上流側排気ガス温度計
47a:第一測温部
47b:第二測温部
47c:シース管
48:下流側排気ガス温度計
50:温度信号処理装置
51:信号処理部
52:温度偏差演算部
53:偏差異常判断部
54:大小比較器
55s:短時間変化率演算部
55l:長時間変化率演算部
56a:短時間第一温度変化率演算部
57a:遅延器
58a:差分器
56b:短時間第二温度変化率演算部
57b:遅延器
58b:差分器
60s:短時間変化率異常判断部
60l:長時間変化率異常判断部
61a:第一差分器
62a:第一大小比較器
63a:第一アンド回路
61b:第二差分器
62b:第二大小比較器
63b:第二アンド回路
64:第三大小比較器
65:変化率選択器
66:変化率比較器
67:第三アンド回路
68:レンジ異常判断部
69:選択部
70s:短時間代表変化率演算部
70l:長時間代表変化率演算部
71:最大変化率及び最小変化率抽出部
72:最大変化率及び最小変化率除去部
73:平均変化率演算部
90:制御装置
SY:温度測定システムSY
A:空気
F:燃料
EG:排気ガス
Rb:大領域
Rs:小領域
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向