(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070527
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】蒸溜装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/32 20060101AFI20240516BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20240516BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B01D3/32 B
E04H5/02 Z
B01D3/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181079
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】593167768
【氏名又は名称】大阪油化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186026
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 研自
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 哲平
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076BB04
4D076CA04
4D076CA05
4D076CA19
4D076CD22
4D076DA08
4D076DA10
4D076DA25
4D076EA03X
4D076EA10X
4D076EA12X
4D076EA14X
4D076JA02
4D076JA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置の特性上、鉛直方向に沿って高い構造物とならざるを得ず、高い構造物に対して高さ方向に沿って構成体を取り付けることで組み立てられる蒸溜装置を、安全且つ容易に、しかも所望の場所に従来に比べて短期間且つ低コストで設置して稼働することを可能とする。
【解決手段】蒸留装置は、鉛直方向に沿って配置される長尺な構造体であって運搬時横倒しにされ、設置場所において起立した状態で設置される支持構造体2と、運搬時の横荷重に耐える強度をもって前記支持構造体の長手方向に沿って取り付けられ、蒸溜対象物を蒸溜するための蒸溜手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って配置される長尺な構造体であって運搬時横倒しにされ、設置場所において起立した状態で設置される支持構造体と、
運搬時の横荷重に耐える強度をもって前記支持構造体の長手方向に沿って取り付けられ、蒸溜対象物を蒸溜するための蒸溜手段と、
を備える蒸溜装置。
【請求項2】
前記支持構造体は、当該支持構造体が起立した状態において底面に水平に配置される構造物を有し、
前記構造物は、当該構造物と交差する方向に沿って配置され且つ前記構造物の外周面を板状部材で覆い、前記板状部材を前記設置場所の設置面に埋設されたアンカーボルトに締結することで固定される請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項3】
前記蒸溜手段は、前記蒸溜対象物を収容する蒸溜塔を備え、
前記蒸溜塔は、前記支持構造体の平面内において一方の角部側に偏った位置に配置される請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項4】
前記支持構造体は、その長手方向に沿って予め定められた長さ毎に、当該支持構造体を長手方向と交差する方向に沿って仕切る仕切り部材を備える請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項5】
前記蒸溜手段は、前記蒸溜対象物を収容する蒸溜釜を備え、
前記蒸溜釜は、前記仕切り部材により仕切られた第一層の天井部に配置される請求項4に記載の蒸溜装置。
【請求項6】
前記蒸溜釜は、その外周が前記支持構造体又は前記仕切部材に連結されて固定されるとともに、前記支持構造体に吊り下げられる請求項5に記載の蒸溜装置。
【請求項7】
前記蒸溜手段は、コンデンサー部を備え、
前記コンデンサー部は、前記仕切り部材によって仕切られた最上層に前記支持構造体の長手方向と交差する方向に沿って配置される請求項4に記載の蒸溜装置。
【請求項8】
前記コンデンサー部は、前記支持構造体の長手方向と交差する対角線方向に沿って配置される請求項7に記載の蒸溜装置。
【請求項9】
前記支持構造体は、その最外側の角部にコンテナのコーナー金具を備えている請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項10】
前記支持構造体が設置される設置場所には、ボイラー設備、冷却水設備、真空ポンプユニット及びコンプレッサーのうち、少なくとも1つ以上が配備される請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項11】
前記支持構造体は、作業員が昇降する昇降手段のみを備えた昇降専用の支持構造体を含む請求項1に記載の蒸溜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置を容易とした蒸溜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸溜装置(プラント)は、当該蒸溜装置で蒸溜する蒸溜対象物質の化学的性質や温度特性、あるいは蒸溜装置に求められる蒸溜精度、蒸溜精製物の取得に要する時間、蒸溜精製物の歩留まり、単位時間あたりに蒸溜可能な蒸溜対象物質の量など、様々な要因によって、蒸溜窯の容積、気液接触部やコンデンサー部の長さや外径などが個別に設計され、所望の設置場所において施工されて完成する。
【0003】
ところで、蒸溜装置(プラント)の高さは、数メートルから数十メートルにも及ぶため、施工に対しては、高所作業が避けられず、作業員の安全を確保しつつ、蒸溜装置構造体の組み立てや、蒸溜窯、気液接触部やコンデンサー部の取り付け作業などを行う必要があり、高度な専門知識並びに熟練を必要とするとともに、設計・施工から完成して稼働するまでに非常に長い期間を要し、製造費用も高額とならざるを得ないという技術的課題を有していた。
【0004】
なお、本出願人は、精密蒸溜精製装置として、特許文献1等に開示されたものを既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、装置の特性上、鉛直方向に沿って高い構造物とならざるを得ず、高い構造物に対して高さ方向に沿って構成体を取り付けることで組み立てられる蒸溜装置を、安全且つ容易に、しかも所望の場所に従来に比べて短期間且つ低コストで設置して稼働することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、鉛直方向に沿って配置される長尺な構造体であって運搬時横倒しにされ、設置場所において起立した状態で設置される支持構造体と、
運搬時の横荷重に耐える強度をもって前記支持構造体の長手方向に沿って取り付けられ、蒸溜対象物を蒸溜するための蒸溜手段と、
を備える蒸溜装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記支持構造体は、当該支持構造体が起立した状態において底面に水平に配置される構造物を有し、
前記構造物は、当該構造物と交差する方向に沿って配置され且つ前記構造物の外周面を板状部材で覆い、前記板状部材を前記設置場所の設置面に埋設されたアンカーボルトに締結することで固定される請求項1に記載の蒸溜装置である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記蒸溜手段は、前記蒸溜対象物を収容する蒸溜塔を備え、
前記蒸溜塔は、前記支持構造体の平面内において一方の角部側に偏った位置に配置される請求項1に記載の蒸溜装置である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、前記支持構造体は、その長手方向に沿って予め定められた長さ毎に、当該支持構造体を長手方向と交差する方向に沿って仕切る仕切り部材を備える請求項1に記載の蒸溜装置である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、前記蒸溜手段は、前記蒸溜対象物を収容する蒸溜釜を備え、
前記蒸溜釜は、前記仕切り部材により仕切られた第一層の天井部に配置される請求項4に記載の蒸溜装置である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、前記蒸溜釜は、その外周が前記支持構造体又は前記仕切部材に連結されて固定されるとともに、前記支持構造体に吊り下げられる請求項5に記載の蒸溜装置である。
【0013】
請求項7に記載された発明は、前記蒸溜手段は、コンデンサー部を備え、
前記コンデンサー部は、前記仕切り部材によって仕切られた最上層に前記支持構造体の長手方向と交差する方向に沿って配置される請求項4に記載の蒸溜装置である。
【0014】
請求項8に記載された発明は、前記コンデンサー部は、前記支持構造体の長手方向と交差する対角線方向に沿って配置される請求項7に記載の蒸溜装置である。
【0015】
請求項9に記載された発明は、前記支持構造体は、その最外側の角部にコンテナのコーナー金具を備えている請求項1に記載の蒸溜装置である。
【0016】
請求項10に記載された発明は、前記支持構造体が設置される設置場所には、ボイラー設備、冷却水設備、真空ポンプユニット及びコンプレッサーのうち、少なくとも1つ以上が配備される請求項1に記載の蒸溜装置である。
【0017】
請求項11に記載された発明は、前記支持構造体は、作業員が昇降する昇降手段のみを備えた昇降専用の支持構造体を含む請求項1に記載の蒸溜装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置の特性上、鉛直方向に沿って高い構造物とならざるを得ず、高い構造物に対して高さ方向に沿って構成体を取り付けることで組み立てられる蒸溜装置を、安全且つ容易に、しかも所望の場所に従来に比べて短期間且つ低コストで設置して稼働することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本実施の形態1に係る蒸溜装置を示す正面構成図である。
【
図2】
図2は本実施の形態1に係る蒸溜装置を示す側面構成図である。
【
図3】
図3は本実施の形態1に係る蒸溜装置を示す斜視構成図である。
【
図6】
図6は支持構造体の連結部を示す構成図である。
【
図7】
図7は支持構造体の他の連結部を示す構成図である。
【
図8】
図8は蒸溜装置の設置場所を示す平面構成図である。
【
図9】
図9は支持構造体の固定構造を示す平面構成図である。
【
図14】
図14は蒸溜装置の1階部分を示す平面構成図である。
【
図15】
図15は蒸溜装置の2階部分を示す平面構成図である。
【
図16】
図16は蒸溜装置の3階部分を示す平面構成図である。
【
図17】
図17は蒸溜装置の4階部分を示す平面構成図である。
【
図18】
図18は蒸溜装置の5階部分を示す平面構成図である。
【
図19】
図19は本実施の形態1に係る蒸溜装置の配管を示す構成図である。
【
図20】
図20は本実施の形態1に係る蒸溜装置の運搬状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図1乃至
図3は本発明の実施の形態1に係るバッチ式の蒸溜装置の全体を示す構成図であり、
図1は蒸溜装置を示す正面構成図、
図2は蒸溜装置を示す側面構成図、
図3は蒸溜装置を示す斜視構成図である。
【0022】
本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、
図1乃至
図3に示すように、設置場所である工場等の敷地内において、蒸溜手段の一例としての蒸溜塔を鉄骨などからなる支持構造体2で支持するよう構成されている。ただし、本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、設置場所である工場等の敷地内において施工され設置されるものではなく、設置場所とは異なる蒸溜装置1を製造する専用の製造工場において製造された後、トレーラー等の運搬手段により運搬されて、設置場所である工場の敷地内に設置(敷設)されるものである。
【0023】
本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、
図1乃至
図3に示すように、複数(図示例では、3つ)の蒸溜装置1
1~1
3を一方向に沿って配列し、隣接する蒸溜装置1
1~1
3同士を互いに一体的に連結して構成されている。また、蒸溜装置1
1~1
3の配列方向に沿った一端部(図中、右端部)には、蒸溜装置1
1~1
3と同じサイズに形成され作業員が昇降する昇降用の階段を備えた支持構造体2
4が隣接するよう一体的に連結されている。なお、蒸溜装置1としては、複数の蒸溜装置1
1~1
3を備えたものに限定されるものではなく、単一の蒸溜装置1からなるものであっても良いことは勿論である。
【0024】
各蒸溜装置11~13は、同様に構成されている。各蒸溜装置11~13の支持構造体2は、ISO規格に適合したコンテナと同等のサイズに設定されている。本実施の形態1に係る支持構造体2は、例えば、ISO規格の40フィートのコンテナに沿ったものである。
【0025】
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)では、輸送インフラの共通化を図り、輸送作業の効率化を担保するため、コンテナを規格化しており、ISO規格のコンテナは、その外寸(外形寸法)がコンテナを製造したメーカーにかかわらず同一の寸法となっている。ISO規格のコンテナには、20フィート、40フィートなど、複数サイズのものが用意されている。なお、本実施の形態1に係る支持構造体2は、ISO規格に適合したコンテナと同等の外寸を有するものであれば良い。
【0026】
支持構造体2は、外寸が40フィートのコンテナと同じ縦Lが2591mm、横Wが2438mm、高さHが12192mmに設定されている。なお、支持構造体2は、40フィートの規格に適合したものに限定されるものではなく、20フィート等の他の規格に適合したものであっても良い。また、支持構造体2は、ISO規格以外にJIS規格等に適合したものであっても良く、トレーラー等の運搬手段によって運搬可能なものであれば、必ずしもISO規格やJIS規格等に適合しないサイズのものであっても良い。
【0027】
支持構造体2は、
図4に示すように、鉛直方向に沿って起立した状態で平面矩形状の領域の各角部に配置される4本の支柱部材3~6と、4本の支柱部材3~6のうち、水平面内において縦方向に沿って隣接する支柱部材3,5及び支柱部材4,6を互いに連結する縦梁部材7,8と、4本の支柱部材3~6のうち、水平面内において横方向に沿って隣接する支柱部材3,4及び支柱部材5,6を互いに連結する横梁部材9,10とを備えている。これらの支柱部材3~6、縦梁部材7,8及び横梁部材9,10としては、例えば、断面形状がH字形状に形成されたH形鋼11からなるものが用いられる。H形鋼11は、
図5に示すように、周知のとおり、互いに平行に配置された平板状の2つのフランジ12,13をその幅方向に沿った中央において同じく平板状のウエブ14で一体的に連結して断面H形状に形成した形鋼である。
【0028】
ただし、これらの支柱部材3~6、縦梁部材7,8及び横梁部材9,10は、H形鋼からなるものに限定されるものではなく、断面矩形状の角筒形状に形成された鋼材(コラムフレーム)やL形鋼などからなるものであっても良い。
【0029】
各支柱部材3~6は、ISO規格の40フィートのコンテナに準じて、全長12192mmを長手方向に沿って複数の部材に分割したもの、あるいは全長12192mmに設定された単一の部材からなるものなど何れでも良い。本実施の形態1では、各支柱部材3~6として、長手方向(高さ方向)に沿って複数(図示例では、5つ)の部材31~35,41~45,51~55,61~65に分割したものを用いている。
【0030】
また、4本の支柱部材3~6は、ISO規格の40フィートのコンテナに準じて、縦方向及び横方向に沿って縦2591mm、横2438mmの間隔(距離)を隔ててそれぞれ配置されている。4本の支柱部材3~6を水平面内において縦方向に互いに連結する縦梁部材7,8は、ISO規格の40フィートのコンテナに準じて、縦方向の長さが縦2591mmに対応した長さにそれぞれ設定されている。また、4本の支柱部材3~6を水平面内において横方向に互いに連結する横梁部材9,10は、ISO規格の40フィートのコンテナに準じて、横方向の長さが横2438mmに対応した長さ(縦梁部材7,8との連結部の長さを含む)にそれぞれ設定されている。
【0031】
支柱部材3~6として用いられるH形鋼11は、例えば、2つのフランジ12,13が縦方向に沿って位置し、ウエブ14が横方向に沿って位置するよう配置される。このようにH形鋼11を配置することにより、
図6に示すように、隣接する支持構造体2のH形鋼11のフランジ12,13同士をボルト15及びナット16によって締結することで、隣接する支持構造体2を互いに連結することが可能となる。
【0032】
支柱部材3~6等を構成する鋼材として、
図7に示すように、断面矩形状の角柱からなるコラムフレーム17を用いた場合には、コラムフレーム17同士を連結する際に、ボルト15及びナット16による締結作業を行うための開口部であるハンドホール18を設ける必要があるため、強度が低下したり、ハンドホール18を閉塞する図示しない仕舞蓋から雨水等が侵入して腐食の原因となる。
【0033】
縦梁部材7,8及び横梁部材9,10として用いられるH形鋼11は、
図5に示すように、例えば、2つのフランジ12,13が水平方向に沿って位置し、ウエブ14が鉛直方向に沿って位置するよう配置される。
【0034】
4本の支柱部材3~6、縦梁部材7,8及び横梁部材9,10は、溶接あるいはボルト止め等の手段により互いに接合されて支持構造体2を形成している。
【0035】
支持構造体2は、
図4に示すように、その長手方向(高さ方向)に沿って予め定められた長さ毎に、支持構造体3の長手方向と交差する方向に沿って仕切る仕切り部材20~24を備えている。仕切り部材20~24は、1枚の鋼板や断面コ字形状に形成された鋼材を適宜敷き詰めることによって構成されている。その結果、支持構造体2は、その長手方向(高さ方向)に沿って仕切り部材20~24により複数の層(階)に仕切られている。ここでは、便宜上、支持構造体2の第1層目を1階、第2層目を2階というように建物の階数に準じて呼ぶこととする。図示の実施の形態1では、支持構造体2は第1層から第5層まであり、5階が最上階となっている。なお、各階の仕切り部材20~24は、下の階の天井部を構成すると同時に、上の階の床部を兼ねている。このとき、1階の仕切り部材20は、1階の床部を構成しており、5階の仕切り部材24は、4階の天井部及び5階の床部を構成している。
【0036】
支持構造体2は、
図1及び
図2に示すように、各階の支柱部材3
1~3
5,4
1~4
5,5
1~5
5,6
1~6
5の上端部と下端部が対角線状に配置された鉄筋等からなる筋交い部材25、26によって互いに連結されている。筋交い部材25,26の両端は、各階の床部及び天井部に位置する支柱部材3
1~3
5,4
1~4
5,5
1~5
5,6
1~6
5の角部に溶接等の手段により取り付けられた小さな矩形状の連結板27,28に溶接あるいはボルトによる締結等の手段により固定されている。また、各階に配置される筋交い部材25,26は、その向きが交互に位置するよう配置されている。なお、各階に配置される筋交い部材25,26は、1本のみではなく、必要に応じて互いに交差するよう2本の筋交い部材を配置しても良い。
【0037】
本実施の形態1に係る支持構造体2は、第1層目である1階の高さが2550mm、第2層目である2階から第4層目である4階の高さが2400mm、第5層目である5階の高さが2442mmとなっている。なお、各層の高さは、すべて等しく設定しても良いし、すべて異なるように設定しても良い。
【0038】
本実施の形態1に係る支持構造体2では、後述するように、第1層目である1階に蒸溜手段の1つである蒸溜釜51が配置されるとともに、作業員の作業性などを考慮して高さが2550mmとやや高く設定されている。
【0039】
本実施の形態1に係る支持構造体2は、蒸溜装置11~13が設置される設置場所である工場等の敷地内において、次のようにして設置される。
【0040】
まず、設置場所である工場等の敷地30には、
図8に示すように、蒸溜装置1
1~1
3が設置される領域31に所定の面積及び所定の厚さにわたりコンクリート32が打設される。また、設置領域31には、
図2に示すように、薬剤の漏洩などに備えて漏洩防止壁33が当該設置領域31を囲むように所定の高さにわたり設けられる。また、漏洩防止壁33の一部には、当該漏洩防止壁33によって囲まれた平面矩形状の領域からなり、水を貯留する貯水槽33aが設置されている。
【0041】
コンクリート32が打設された設置領域31には、
図9及び
図10に示すように、支持構造体2の底面に位置する横梁部材9,10の長手方向に沿った両端部に、当該横梁部材9,10と交差する方向に沿って両側に位置するよう2本のアンカーボルト34,35がコンクリート32中にそれぞれ埋設されている。
【0042】
支持構造体2は、
図9に示すように、支持構造体2の底面に位置する構造物の一例としての横梁部材9,10が2本のアンカーボルト34,35の間に位置するように、クレーン等によって吊り下げられた状態で設置領域31に設置される。支持構造体2の底面に位置する横梁部材9,10には、当該横梁部材9,10と交差するように、且つ横梁部材9,10の外周面を覆うように板状部材の一例としてのベースプレート37が配置される。
【0043】
ベースプレート37は、
図10に示すように、横梁部材9,10の外周面を覆うよう鋼板を断面コ字形状に折り曲げるとともに、当該鋼板の両端部を水平方向に沿って延在するように折り曲げられている。ベースプレート37の両側壁38,39と水平方向に沿って延在する底壁40,41との間は、当該ベースプレート37の幅方向に沿った両端部にそれぞれ配置された側面略三角形状の補強板部42,43によって連結されている。ベースプレート37の底壁40,41には、設置領域31に埋設された2本のアンカーボルト34,35に対応した位置に挿通孔が開口されている。
【0044】
支持構造体2は、
図9に示すように、設置領域31の予め定められた位置に起立した状態で配置され、底面に位置する横梁部材9,10の外周面をベースプレート37によって覆った状態で、ベースプレート37の底壁40,41が2本のアンカーボルト34,35にそれぞれ挿通されてナット34a,35a(
図10参照)により締結され固定される。また、横梁部材9,10とベースプレート37は、
図10に示すように、フランジ12がボルト44及びナット45によって締結され連結固定される。
【0045】
なお、図示の実施の形態では、支持構造体2の横梁部材9,10のみをベースプレート37によって締結固定するように構成したが、支持構造体2の縦梁部材7,8を含めてベースプレート37によって締結固定するように構成しても良い。
【0046】
上記の如く構成される支持構造体2には、
図1及び
図2に示すように、工場等の設置領域31に設置される以前に、蒸溜装置1の製造工場にて蒸溜対象物を蒸溜するための蒸溜手段の一例としての蒸溜塔50が、運搬時の横荷重に耐える強度をもって支持構造体2の長手方向に沿って取り付けられる。
【0047】
本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、
図11に示すように、蒸溜塔50を構成する部材として、蒸溜対象物を収容するバッチ式の蒸溜釜51と、蒸溜釜51の上部に連続して設けられる長尺な気液分離部(充填塔)52と、気液分離部52の上端に連続して設けられ蒸溜精製物を分配する分配部53と、分配部53の上端に連続して水平方向に沿って設けられるコンデンサー(熱交換器)部54と、分配部53で分配された蒸溜精製物を収容する単一又は複数の受器55~57(
図19参照)とを備えている。
【0048】
蒸溜釜51は、
図11に示すように、蒸溜対象物を収容するチタンや、ニッケル、あるいはステンレスや銅等の熱伝導性に優れた金属などからなる丸底の中空円筒形状の部材である。蒸溜釜51には、外部から供給される熱源としての加熱蒸気等を通すことによって蒸溜対象物を加熱する螺旋状の加熱管58が内蔵されている。また、蒸溜釜51の外壁は、中空の空間59を有する二重構造となっている。蒸溜釜51の中空の空間59には、外部から加熱蒸気が供給されて、当該蒸溜釜51を外部から加熱するよう構成されている。ただし、蒸溜釜51を加熱する加熱手段としては、加熱管58や中空の空間59を介して外部から供給される加熱蒸気等に限らず、蒸溜釜51を加熱することが可能な手段であれば任意であり、例えば、蒸溜釜51が電磁誘導作用によって加熱可能な材料からなるものであれば、電磁誘導作用などによって蒸溜釜51を加熱するものであっても良い。
【0049】
蒸溜釜51は、例えば、400L等の容量を有するものが用いられる。ただし、蒸溜釜51の容量は、400Lに限定されるものではなく、これよりも多くても少なくても良いことは勿論である。
【0050】
蒸溜釜51は、ある程度大きな容量を有するとともにチタンやステンレス等の金属からなるため、蒸溜手段を構成する部材のうち最も重量が大きい部材である。そして、蒸溜装置1を製造工場にて組み立てて製造する際に、蒸溜釜51を運搬時の横揺れ等による横荷重に耐える強度をもって支持構造体2に取り付ける必要がある。
【0051】
本実施の形態1では、蒸溜釜51には、
図12に示すように、その外周面にフランジ等からなる取付部材510が一体又は別体として設けられている。蒸溜釜51は、取付部材510を介して支持構造体2の2階の仕切り部材21にボルト512a及びナット512bを用いた締結等の手段によって、運搬時の横荷重に耐える強度をもって固定した状態で取り付けられている。
【0052】
また、蒸溜釜51は、必要に応じて、その上端部に設けられたフック部513を介して鋼鉄製の支持ワイヤー514によって吊り下げた状態で支持されている。支持ワイヤー514の上端部は、支持構造体2の支柱部材3あるいは仕切り部材22等に連結されている。
【0053】
蒸溜釜51は、
図13及び
図14に示すように、平面矩形状の支持構造体2の中央部ではなく、中央部よりも一端部寄りに偏って位置に連結されている。蒸溜釜51は、4本の支柱部材3~6のうち、1つの支柱部材3に近接し、且つ縦梁部材と横梁部材から等しい間隔を隔てた位置に配置されている。また、蒸溜釜51の上部には、気化した蒸溜対象物を蒸溜塔へと送る開口部511が、平面円形状の蒸溜釜51の中心ではなく、中心から1つの支柱部材3寄りに偏った位置に開口されている。
【0054】
蒸溜釜51の上端部には、
図11に示すように、気液分離部(充填塔)52が連結された状態で固定されている。気液分離部(充填塔)52は、蒸溜釜51の中心ではなく、中心から1つの支柱部材3よりに偏った位置に開口された開口部511に連結されている。そのため、気液分離部(充填塔)52は、
図15~
図18に示すように、支持構造体2の2階から5階にわたり支柱部材3に近接した位置において当該支柱部材3に沿って配置されている。気液分離部(充填塔)52は、その中間位置が支持構造体2の仕切り部材に設けられた挿通孔に挿通されることで固定されており、運搬時の横荷重に耐える強度をもって取り付けられている。
【0055】
気液分離部(充填塔)52の上部には、相対的に短い分配部53とコンデンサー(熱交換器)部54が順次連結されている。コンデンサー(熱交換器)部54は、支持構造体2の最上階において水平方向に沿って折り曲げた状態で配置されている。
【0056】
更に説明すると、コンデンサー(熱交換器)部54は、支持構造体2の最上階において支柱部材3から支柱部材6へ向けて対角線上に配置されている。その結果、支持構造体2の設置面の面積を不必要に増大させることなく、しかも限られた高さの支持構造体2の内部にコンデンサー(熱交換器)部54を配置することが可能となっている。
【0057】
また、複数の受器55~57は、支持構造体2の2階部分にその上端部が仕切り部材に固定されるとともに、その下端部が仕切り部材に固定されることで、運搬時の横荷重に耐える強度をもって支持構造体2に取り付けられている。
【0058】
複数の受器55~57は、分配部53に製品抽出ラインを構成する二重配管58aを介してそれぞれ接続されている。製品抽出ラインを構成する二重配管58aは、その下端部が分岐しており、各受器55~57に個別に連通している。また、各受器55~57は、分岐した二重配管58aにそれぞれ設けられた複数のバルブ59a~61を介して個別に分配部53と連通するように構成されている。二重配管58aの外部配管には、後述する温水設備から所要温度の温水が供給される。
【0059】
図19は本実施の形態1に係る蒸溜装置の配管系を示す構成図である。
【0060】
本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、
図19に示すように、蒸溜釜51を備えている。蒸溜釜51の上部には、
図11に示すように、当該蒸溜釜51の内部に蒸溜対象物を投入する投入口62が開口されているとともに、当該蒸溜釜51の内部の圧力を検知する圧力計63が取り付けられている。蒸溜釜51の投入口62には、両端部にバルブを備えた供給管64が接続されている。供給管64の先端には、
図19に示すように、原料吸入口65が設けられている。
【0061】
また、蒸溜釜51の上部には、蒸溜塔50の最下部(底部)に位置する当該蒸溜釜51の内部の差圧を検知するボトムマノメーター66へ通じる配管67が接続されているとともに、当該配管67に沿って蒸溜釜51の内部の温水を戻す温水戻りライン68が連結されている。
【0062】
また、蒸溜釜51の底部には、一連の蒸溜工程が終了した後に、当該蒸溜釜51の内部に残留した残留物を取り出す残留物取出口69が開口されている。同じく蒸溜釜51の底部には、当該蒸溜釜51の底部の温度を検知する第1の温度センサ70が配置されている。
【0063】
蒸溜釜51の上部に連続するよう配置された充填塔52には、予め定められた高さ毎に当該充填塔の温度を検知する第2~第5の温度センサ71~74がそれぞれ配置されている。
【0064】
分配器53には、充填塔52を通過することにより蒸溜された蒸溜生成物を受器に収容する二重配管からなる製品流出ライン58aが接続されている。製品流出ライン58aの先端は、各受器55~57に接続されている。分配器53には、当該分配器53の温度を検知する第6の温度センサ75が配置されている。
【0065】
各受器76~78の底部には、製品としての蒸溜生成物を取り出す製品抜出口76~78がそれぞれ開口されている。また、各受器55~57の二重構造に形成された外壁部には、温水設備から温水が供給されるように構成されている。
【0066】
また、分配器53の上端部には、蒸溜塔50の最上部(頂部)に位置する当該分配器53の内部の差圧を検知するトップマノメーター80へ通じる配管81が接続されているとともに、当該分配器53の上端部の温度を検知する第7の温度センサ82が配置されている。
【0067】
さらに、コンデンサー部54には、冷却水入口83と冷却水出口84がそれぞれ開口されている。また、コンデンサー部54の上端部には、真空ユニット95~97へと繋がる配管86が接続されているとともに、当該コンデンサー部54の上端部の温度を検知する第8の温度センサ87が配置されている。
【0068】
蒸溜装置1の付帯設備としては、
図14に示すように、各蒸溜装置1
1~1
3の蒸溜釜51等へ加熱蒸気を供給するボイラー設備91~93と、各蒸溜装置1
1~1
3のコンデンサー部54に冷却水を供給する冷却水設備94と、各蒸溜装置1
1~1
3のコンデンサー部54に接続された真空ポンプユニット95~97と、各蒸溜装置1
1~1
3へ圧縮空気を供給するコンプレッサー98等が配置されている。
【0069】
これらの蒸溜装置1の付帯設備は、
図14に示すように、蒸溜装置1の設置場所に個別に配置しても良いが、
図3に示すように、支持構造体2と同様に構成され、水平方向に配置された支持構造体2
5の内部に纏めて配置するように構成しても良い。
【0070】
<蒸溜装置の作用>
ところで、本実施の形態1に係る蒸溜装置では、次のようにして、装置の特性上、鉛直方向に沿って高い構造物とならざるを得ず、高い構造物に対して高さ方向に沿って構成体を取り付けることで組み立てられる蒸溜装置を、安全且つ容易に、しかも所望の場所に従来に比べて短期間且つ低コストで設置して稼働することが可能となっている。
【0071】
すなわち、本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、図示しない工場等の敷地に設置される以前に、
図19に示すように、蒸溜釜51の容量、蒸溜塔50の外径や高さ、受器55~57の容量や数等が予め決定されて設計される。
【0072】
そして、本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、
図1乃至
図3に示すように、ISO規格のコンテナに準じたサイズの支持構造体2をベースとして当該蒸溜装置1を製造する工場にて組み立てられ製造される。
【0073】
支持構造体2は、
図1乃至
図4に示すように、H形鋼11等からなる支柱部材3~6や縦梁部材7,8及び横梁部材9,10などを溶接等の手段により互いに連結することにより、長尺な直方体形状の枠体として組み立てられる。支持構造体2の各階の床面には、仕切り部材20~24が配置されて仕切られる。また、支持構造体2の各階の支柱部材3~6は、筋交い部材によって互いに連結されて強度が向上される。
【0074】
次に、上記の如く組み立てられた支持構造体2に対して、
図1乃至
図4に示すように、蒸溜装置1を構成する蒸溜釜51、気液分離部(充填塔)52、分配部53、コンデンサー(熱交換器)部54及び複数の受器55~57が、運搬時の横荷重に耐える強度をもって順次取り付けられて、蒸溜装置1が組み立てられ製造される。
【0075】
蒸溜装置1の付帯設備は、高所での作業を必要とせず、現地にて個別に配備しても良いが、支持構造体2と同様に構成され、水平方向に配置された支持構造体25の内部に纏めて配置することで組み立てられる。
【0076】
上記の如く蒸溜装置に専用の工場で予め組み立てられて製造された蒸留装置1は、
図20に示すように、図示しないクレーン等を用いてトレーラー100の荷台に載置されて固定され、蒸溜装置1の設置場所である工場へと輸送される。
【0077】
設置場所である工場等の敷地へと輸送された蒸留装置1は、
図8~
図10に示すように、予めコンクリートが打設された設置場所へと図示しないクレーン等により吊り下げた状態で、支持構造体2を起立させて当該支持構造体2の横梁部材7,8が設置場所へと配置される。
【0078】
その後、支持構造体2の横梁部材7,8は、ベースプレートを介してアンカーボルトにナットを用いて締結することで設置場所に固定される。また、隣接する蒸溜装置1の支持構造体2同士が互いに連結される。また、端部に位置する蒸溜装置1の支持構造体2には、当該支持構造体2と同様に構成され、作業員が昇降する螺旋状の階段が取り付けられた支持構造体24が連結された状態で固定される。
【0079】
さらに、蒸溜装置1は、支持構造体2に取り付けられた蒸溜塔50の各部材に所要の配管等を接続するとともに、各種の配線を接続することで完成される。
【0080】
このように、本実施の形態1に係る蒸溜装置1は、装置の特性上、鉛直方向に沿って高い支持構造体2を備えた構造物とならざるを得ず、支持構造体2に対して高さ方向に沿って蒸溜塔50を取り付けることで組み立てられる蒸溜装置1を、現地での高所における組み立て作業を行うことなく、安全且つ容易に、しかも所望の場所に従来に比べて短期間且つ低コストで設置して稼働することが可能となる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、蒸溜装置としてバッチ式の蒸溜装置について説明したが、これに限定されるものではなく、連続式の蒸溜装置においても同様に適用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
1…蒸溜装置
2…支持構造体
3~6…支柱部材
7~8…縦梁部材
9~10…横梁部材
50…蒸溜塔
51…蒸溜釜
52…気液分離部
53…分配部
54…コンデンサー部