(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070533
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240516BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181087
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温見 寿範
(72)【発明者】
【氏名】大貫 宏和
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA08
2G001GA06
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001JA13
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】X線照射装置から照射されるX線の強度の変化に応じて、X線画像内における濃度を適切に補正する。
【解決手段】X線検査装置1は、撮影部(X線撮影装置10)と、補正部(画像処理装置20)と、を備える。撮影部は、X線100を照射するX線照射部11と、X線照射部11に対向して配置されるX線検出部12と、被写体2がX線照射部11とX線検出部12との間の撮影領域101を通過するように、X線照射部11およびX線検出部12に対して被写体2を所定のスキャン方向に相対的に移動させる搬送部14と、撮影領域101内であって、撮影領域101を通過する被写体2と重ならない位置に配置され、スキャン方向に移動しない基準片3と、を有し、X線画像には、スキャン撮影された被写体2と、常時撮影された基準片3が写っており、補正部は、X線画像中の基準片3の濃度に基づいて、X線画像中の被写体2の濃度を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体にX線を照射することにより、前記被写体をスキャン撮影したX線画像を生成する撮影部と、
前記X線画像を補正する補正部と、
を備え、
前記撮影部は、
X線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部に対向して配置されるX線検出部と、
前記被写体が前記X線照射部と前記X線検出部との間の撮影領域を通過するように、前記X線照射部および前記X線検出部に対して前記被写体を所定のスキャン方向に相対的に移動させる搬送部と、
前記撮影領域内であって、前記撮影領域を通過する前記被写体と重ならない位置に配置され、前記スキャン方向に移動しない基準片と、
を有し、
前記X線画像には、スキャン撮影された前記被写体と、常時撮影された前記基準片が写っており、
前記補正部は、前記X線画像中の前記基準片の濃度に基づいて、前記X線画像中の前記被写体の濃度を補正する、X線検査装置。
【請求項2】
前記撮影部による1回のスキャン撮影動作により撮影された前記X線画像には、前記基準片が前記スキャン方向に延びるように連続的に写っており、
前記補正部は、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記基準片の濃度変化に基づいて、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記被写体の濃度を補正する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記基準片を予め撮影した基準X線画像中の前記基準片の濃度である基準濃度と、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記基準片の濃度との比較結果に基づいて、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記被写体の濃度を補正する、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記基準片は、所定の厚みを有する板状の金属部材であり、
前記基準片の厚み方向に対して直交する面が、前記X線照射部から照射される前記X線に対して垂直となる姿勢で、前記基準片が固定的に配置される、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、複数のX線画像を連結することにより、長尺のX線画像を生成する際に、互いに隣接するX線画像の重複する領域の濃淡に基づいて、X線画像内の濃度を補正することが開示されている。
【0003】
また、従来、税関等において、コンテナ貨物等の被写体のX線画像を撮影するために、大型のX線検査装置が用いられている。このようなX線検査装置には、平面状にX線を放射するX線照射装置が設けられている。また、X線検査装置には、X線照射装置に対向するように、X線検出装置が設けられている。また、被写体は、自動搬送装置に搭載される。そして、被写体を所定のスキャン方向に移動させながら、被写体にX線を照射することにより、被写体をスキャン撮影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-224170号公報
【特許文献2】特開2015-159886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スキャン撮影されたX線画像は一般にグレースケール画像として記録される。グレースケール画像の濃度は、ピクセルごとに数値化されている。グレースケール画像の各ピクセルに対応する濃度値は、検出されたX線の強度に対応している。
【0006】
上記のようなスキャン撮影は、被写体を移動させるため、例えば、数十秒程度の撮影時間を要する。X線照射装置の性能によっては、撮影時間内において、X線照射装置から照射されるX線の強度が一定とならず変化してしまう場合がある。例えば、同一のX線透過条件を持つ被写体をスキャン撮影する場合、X線照射装置から照射されるX線の強度が変化すると、本来は一定であるべきグレースケール画像の濃度値が変化してしまう。
【0007】
従来のスキャン撮影では、上記のような実態があるため、実際の被写体と、スキャン撮影により得られたグレースケール画像における濃度値との間に、再現性や一致性が保証されていなかった。そのため、例えば、スキャン撮影により得られたグレースケール画像等に対して画像識別技術や画像処理技術を適用しようとしても、同一の被写体に対して再現性のある正しい処理が行われない不具合が生じるおそれがあった。
【0008】
そこで、本開示の目的は、X線照射装置から照射されるX線の強度の変化に応じて、X線画像内における濃度を適切に補正することが可能なX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のX線検査装置は、
被写体にX線を照射することにより、前記被写体をスキャン撮影したX線画像を生成する撮影部と、
前記X線画像を補正する補正部と、
を備え、
前記撮影部は、
X線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部に対向して配置されるX線検出部と、
前記被写体が前記X線照射部と前記X線検出部との間の撮影領域を通過するように、前記X線照射部および前記X線検出部に対して前記被写体を所定のスキャン方向に相対的に移動させる搬送部と、
前記撮影領域内であって、前記撮影領域を通過する前記被写体と重ならない位置に配置され、前記スキャン方向に移動しない基準片と、
を有し、
前記X線画像には、スキャン撮影された前記被写体と、常時撮影された前記基準片が写っており、
前記補正部は、前記X線画像中の前記基準片の濃度に基づいて、前記X線画像中の前記被写体の濃度を補正する。
【0010】
前記撮影部による1回のスキャン撮影動作により撮影された前記X線画像には、前記基準片が前記スキャン方向に延びるように連続的に写っており、
前記補正部は、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記基準片の濃度変化に基づいて、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記被写体の濃度を補正してもよい。
【0011】
前記補正部は、前記基準片を予め撮影した基準X線画像中の前記基準片の濃度である基準濃度と、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記基準片の濃度との比較結果に基づいて、前記X線画像中の前記スキャン方向における前記被写体の濃度を補正してもよい。
【0012】
前記基準片は、所定の厚みを有する板状の金属部材であり、
前記基準片の厚み方向に対して直交する面が、前記X線照射部から照射される前記X線に対して垂直となる姿勢で、前記基準片が固定的に配置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、X線照射装置から照射されるX線の強度の変化に応じて、X線画像内における濃度を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るX線検査装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るスキャン撮影を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るX線画像を説明するための概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る設置当初のX線照射強度と基準X線画像の関係を説明する概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る経年劣化発生時のX線照射強度とX線画像の関係を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るX線検査方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る補正済X線画像の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。本実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
[1.X線検査装置の全体構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るX線検査装置1の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るX線検査装置1を示す概略図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るX線検査装置1は、検査対象をスキャン撮影したX線画像を撮影するための装置である。X線検査装置1は、例えば、税関等に設置され、輸出入検査を受ける貨物を検査するための大型のX線検査装置であってもよい。ただし、X線検査装置1は、かかる例に限定されず、X線画像を用いて検査対象を検査するための装置であれば、他の各種の検査装置にも適用可能である。
【0018】
図1に示すように、X線検査装置1は、X線撮影装置10と、画像処理装置20とを備える。X線撮影装置10と画像処理装置20は、有線もしくは無線のネットワークまたは配線などを介して、相互に通信可能に接続されている。
【0019】
X線撮影装置10は、本開示の撮影部の一例である。X線撮影装置10は、X線100を用いて検査対象および基準対象を撮影する。X線撮影装置10は、検査対象である被写体2を、X線100を用いてスキャン撮影する。また、X線撮影装置10は、基準対象である基準片3を常時撮影する。これにより、X線撮影装置10は、被写体2および基準片3が写っているX線画像を生成する。
【0020】
画像処理装置20は、本開示の補正部の一例である。画像処理装置20は、X線画像に対する各種の画像処理と、各種の演算処理を実行する情報処理装置である。画像処理装置20は、X線撮影装置10から取得したX線画像中の基準片3の濃度に基づいて、X線画像中の被写体2の濃度を補正する。
【0021】
X線画像の補正に先立って、X線撮影装置10は、X線100を用いて基準片3の常時撮影を行い、基準片3が写っている基準X線画像を生成する。具体的には、X線検査装置1を設置した当初に、基準片3の常時撮影を行い、基準片3が写っている基準X線画像を生成する。
【0022】
X線撮影装置10は、常時撮影により得られた基準X線画像を画像処理装置20に出力する。画像処理装置20は、X線撮影装置10から取得した基準X線画像中の基準片3の濃度に基づいて、基準濃度を決定する。ここで決定した基準濃度は、以後、永続的に使用することが好ましい。
【0023】
ただし、基準濃度の決定方法はこれに限定されるものではない。例えば、被写体2をスキャン撮影した際のX線画像中の基準片3の濃度に基づいて、基準濃度を決定してもよい。すなわち、被写体2のスキャン撮影を実行する度に、毎回、X線画像中の基準片3の濃度から基準濃度を決定してもよい。
【0024】
次いで、画像処理装置20は、被写体2および基準片3のX線画像を解析することにより、X線画像中のスキャン方向(X方向)における被写体2および基準片3の濃度値を求める。
【0025】
その後、画像処理装置20は、基準濃度と、X線画像中のスキャン方向(X方向)における基準片3の濃度との比較結果に基づいて、X線画像中のスキャン方向(X方向)における被写体2の濃度を補正した補正済X線画像を生成する。
【0026】
以上のようなX線撮影装置10と画像処理装置20を備えたX線検査装置1により、1回のスキャン撮影の開始から終了までの間に、照射されるX線100の強度が変化することによって生じるX線画像内における濃度の変化を補正することが可能となる。これにより、補正済X線画像に対して画像識別技術や画像処理技術を適用する際に、再現性のある処理を行うことが可能となる。
【0027】
特に、本実施形態では、事前に決定した基準濃度を用いて、X線画像の被写体2の濃度を補正する。これにより、X線撮影装置10の経年劣化によって、照射されるX線100の強度が変化した場合であっても、X線画像内における被写体2の濃度の変化を適切に補正することが可能となる。したがって、例えば、過去に撮影した被写体2と同一の被写体2をスキャン撮影した場合に、当該被写体2を同一の濃度で表した補正済X線画像を生成することが可能となる。すなわち、実際の被写体2と、補正済X線画像に写っている被写体2との間の再現性や一致性が保証される。このため、補正済X線画像に対して画像識別技術や画像処理技術を適用する際に、再現性の高い正しい処理を行うことが可能となる。
【0028】
[2.被写体について]
次に、本実施形態に係るX線検査装置1による検査対象である被写体2について説明する。
【0029】
図1に示すように、被写体2は、X線検査装置1による検査対象である。被写体2は、例えば、運送用のコンテナおよびコンテナを搭載した車両である。なお、コンテナには、種々の内容物が収容されている。
【0030】
なお、コンテナに収容されている内容物は、運送対象となる物品であればよく、例えば、製品、部品、材料、機械設備または食料品など、各種の物品であってよい。
【0031】
[3.X線撮影装置について]
次に、
図1、
図2、
図3を参照して、本実施形態に係るX線撮影装置10の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るスキャン撮影を説明するための概略図である。
図3は、本実施形態に係るX線画像を説明するための概略図である。
【0032】
X線撮影装置10(「撮影部」に相当する。)は、
図2A、
図2B、
図2Cに示すように、被写体2を所定のスキャン方向(X方向)に移動させながら、被写体2にX線100を照射する。これにより、X線撮影装置10は、被写体2をスキャン撮影したX線画像(
図3A、
図3B、
図3C)を生成することができる。
【0033】
図1に示すように、X線撮影装置10は、基準片3と、X線照射部11と、X線検出部12と、X線画像生成部13と、搬送部14と、コントローラ15と、を備える。
【0034】
X線照射部11とX線検出部12は、所定の間隔を空けて対向配置される。
図1の例では、X線照射部11とX線検出部12は、左右方向に対向配置されている。
【0035】
X線照射部11は、X線100を発生させるX線源と、X線100の照射装置(X線照射装置)を備える。X線照射部11は、X線検出部12に向けて所定方向(YZ方向)にX線100を平面状に照射する。なお、本実施形態では、平面状に照射されたX線100は、面内においてその強度が均一となる。
【0036】
X線照射部11によって照射されたX線100は、撮影対象物(被写体2および基準片3)を通過して、X線検出部12に向かう。X線検出部12は、例えば、X線検出用のラインセンサなどで構成される。X線検出部12は、X線照射部11から照射されて撮影対象物を通過したX線100を検出する。X線検出部12は、検出したX線100を表す撮影信号を出力する。
【0037】
X線画像生成部13は、X線検出部12により検出されたX線100の撮影信号に基づいて、撮影対象物のX線画像を生成する。X線画像生成部13は、例えば、AD変換素子と、画像メモリとを備える。AD変換素子は、X線検出部12から出力された撮影信号をAD変換する。画像メモリは、AD変換された撮影信号を画素毎に記憶する。
【0038】
搬送部14は、ベルトコンベヤや台車などで構成される。搬送部14には、被写体2が搭載される。搬送部14は、被写体2がX線照射部11とX線検出部12との間の撮影領域101を通過するように、被写体2をスキャン方向(X方向)に移動させる。このように、本実施形態では、搬送部14が被写体2を移動させる場合について示している。
【0039】
ただし、搬送部14は、被写体2を移動させずともよい。この場合、搬送部14は、X線照射部11およびX線検出部12を移動させればよい。すなわち、搬送部14は、被写体2がX線照射部11とX線検出部12との間の撮影領域101を通過するように、X線照射部11およびX線検出部12に対して被写体2をスキャン方向に相対的に移動させればよい。
【0040】
撮影領域101は、X線100を用いて被写体2を撮影するための領域である。撮影領域101は、X線照射部11とX線検出部12との間の領域である。撮影領域101は、X線照射部11から平面状に放射されるX線100の照射領域を含む領域である。
【0041】
図1に示すように、基準片3は、所定の厚み3dを有する板状の金属部材である。具体的な材質は、金属であれば特に限定されないが、例えば、経年変化(サビ等)が生じにくく、かつ、安価に入手可能な材質であることが好ましい。これにより、経年変化によって、X線100の透過度合いが変化することを抑制することができる。
【0042】
また、基準片3は、撮影領域101内であって、撮影領域101を通過する被写体2と重ならない位置に固定的に配置される。具体的には、X線照射部11およびX線検出部12に対する、基準片3の相対的な位置が変化しないように基準片3を配置すればよい。例えば、基準片3をX線検出部12に対して、ねじ止め、接着、溶接等の任意の方法で固定すればよい。また、被写体2と重ならない位置とは、X線100の照射領域(撮影領域101)のうちで、X線照射部11と基準片3とを結ぶ仮想直線(X線100の照射軌跡)が被写体2と重ならないような位置である。
【0043】
例えば、
図1に示すように、X線照射部11からX線検出部12に向けて放射状にX線100を照射する場合、当該X線100の上部側は、被写体2に対して照射されることなく、基準片3に対して直接的に照射される。このような場合に、基準片3は、被写体2と重ならない位置に配置されているといえる。
【0044】
また、基準片3は、厚み3d方向に対して直交する面3sが、X線照射部11から面3sに照射されるX線100に対して垂直となる姿勢で固定的に配置される。すなわち、基準片3は、スキャン撮影の実行中に、スキャン方向(X方向)に移動せず、常時撮影される。そのため、スキャン撮影中は常時、基準片3に対してX線100が継続的に照射される。これにより、基準片3に対するX線撮影時の、X線100の強度の変化以外の撮影条件を常に一定に保つことが可能となる。そのため、被写体2の濃度を補正する際の精度を高く維持することが可能となる。
【0045】
コントローラ15は、上記のX線照射部11、X線検出部12、X線画像生成部13、および、搬送部14など、X線撮影装置10の各部を制御する。
【0046】
かかる構成のX線撮影装置10により、基準片3をスキャン方向に移動させずに、被写体2をスキャン方向に移動させながら、X線100を用いてX線100が照射される撮影領域101内の撮影対象物(被写体2および基準片3)を撮影することができる。このようなX線撮影装置10によるスキャン撮影について、以下に説明する。
【0047】
X線撮影装置10は、
図2に示すように、搬送部14に被写体2を載置した状態で、搬送部14を動作させる。これにより、被写体2は、X線照射部11とX線検出部12に対して、スキャン方向(X方向)に相対移動して、X線照射部11とX線検出部12との間を通過する。このとき、
図1に示すように、X線照射部11は、撮影領域101に向けてX線100を照射する。X線検出部12は、X線照射部11から照射されたX線100のうち、被写体2を通過したX線100と、基準片3を通過したX線100と、被写体2および基準片3の双方を通過しなかったX線100を検出する。X線画像生成部13は、X線検出部12により検出されたX線100に基づいて、
図3に示すように、被写体2および基準片3が写ったX線画像を生成する。
【0048】
ここで、本実施形態では、上記したように、スキャン撮影において、基準片3はスキャン方向に移動しない。そのため、1回のスキャン撮影により撮影されたX線画像には、
図3に示すように、基準片3がスキャン方向に延びるように連続的に写ることとなる。1回のスキャン撮影の開始から終了までの間に、照射されるX線100の強度が変化した場合、
図3B、
図3Cに示すように、X線画像中の基準片3の濃度が変化することとなる。
【0049】
また、X線画像には、被写体2を側面方向(Z方向)からスキャン撮影したX線画像が生成される。当該X線画像は、被写体2および基準片3がXY平面に投影された二次元画像であり、被写体2および基準片3を横方向から透視した画像に相当する。
【0050】
なお、X線画像の撮影方向は、横方向の例に限定されない。例えば、X線画像は、被写体2および基準片3を上面側もしくは下面側から撮影した上面方向(Y方向)の画像であってもよい。あるいは、X線画像は、被写体2および基準片3を正面側もしくは背面側から撮影した正面方向(X方向)の画像であってもよい。また、複数の方向から被写体2または基準片3を撮影した複数のX線画像を生成してもよい。
【0051】
また、X線撮影装置10は、基準片3のみを常時撮影した基準X線画像(後述する
図5B参照。)を生成することもできる。基準X線画像は、基準片3の基準濃度を得るための基準となるX線画像である。X線検査装置1を設置した当初に、基準片3の常時撮影を行い、基準片3が写っている基準X線画像を生成する。これにより、X線検査装置1を設置した当初における基準片3の特徴が正確に現れた基準X線画像を得ることができる。この基準X線画像と基準濃度の詳細については後述する。
【0052】
ここで、本実施形態に係るX線撮影装置10により撮影されたX線画像の仕様の例について説明する。
【0053】
本実施形態に係るX線画像は、例えば、撮影された撮影対象物を白黒の濃淡で表現したグレースケール画像である。グレースケール画像は、色情報は含まず、明るさ情報のみを含んでいる。グレースケール画像は、例えば、1画素の濃度値(画素値)を8ビットで表現した画像であってよい。この8ビットのグレースケール画像の階調は、256階調(濃度値:0~255)である。濃度値0が黒を表し、濃度値255が白を表す。一般的な256階調のグレースケール画像を用いれば、本実施形態の特徴的な画像処理を好適に実現できる。ただし、X線画像の階調は、256階調以外であってもよい。
【0054】
[4.画像処理装置の構成]
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る画像処理装置20(「補正部」に相当する。)の構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る画像処理装置20の構成を示すブロック図である。
【0055】
[4.1.画像処理装置のハードウェア構成]
まず、本実施形態に係る画像処理装置20のハードウェア構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る画像処理装置20のハードウェア構成の一例も示してある。
【0056】
図4に示すように、画像処理装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、入力装置25と、出力装置26と、バス27とを備える。
【0057】
プロセッサ21は、コンピュータに搭載される演算処理装置である。プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されるが、その他のマイクロプロセッサで構成されてもよい。また、プロセッサ21は、1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。プロセッサ21は、メモリ22または他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行する。これにより、画像処理装置20における各種の処理が実行される。
【0058】
プログラムは、コンピュータにより実行される命令を含むコンピュータプログラムである。なお、プログラムは、例えば、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、画像処理装置20に提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(non transitory computer readable medium)を介して、画像処理装置20に提供されてもよい。画像処理装置20にプログラムをインストールすることにより、画像処理装置20は、当該プログラムにより定められた各種の機能を実現可能になる。
【0059】
メモリ22は、プログラムおよびその他の各種データを記憶する記憶媒体である。メモリ22は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを有する。ROMは、プロセッサ21が使用するプログラム、およびプログラムを動作させるためのデータ等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサ21により実行される処理に用いられる変数、演算パラメータ、演算結果等のデータを一時記憶する揮発性メモリである。ROMに記憶されたプログラムは、RAMに読み出され、CPUなどのプロセッサ21により実行される。
【0060】
ストレージ23は、各種の情報、データを保存するための記憶装置である。ストレージ23は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、光ディスクなどの記録媒体と、当該記録媒体からデータを読み出す、または当該記録媒体に書き込むドライブとを有する。ストレージ23は、メモリ22と比べて大容量のデータを保存することができる。ストレージ23は、画像処理装置20に内蔵される内部ストレージであってもよいし、画像処理装置20の外部入出力用端子を介して接続される外部ストレージであってもよい。また、ストレージ23は、通信ネットワークを介して接続されるオンラインストレージであってもよい。
【0061】
通信装置24は、画像処理装置20に対して有線または無線により接続された外部装置と通信するためのデバイスである。通信装置24は、予め定められたプロトコルに従って、外部装置と通信接続を確立させて、外部装置との間で各種の情報、データを送信および受信する。
【0062】
入力装置25は、ユーザが画像処理装置20に情報を入力するために用いられる装置である。入力装置25は、例えば、タッチセンサ、キーボード、キーパッド、マウス、リモートコントローラ、ボタン、スイッチまたはダイヤルなどを含む。入力装置25は、マイクロフォン、音声認識モジュールなどの音声入力用の入力装置を含んでもよい。また、入力装置25は、画像処理装置20を遠隔操作するためのユーザ入力をリモートデバイスから受信する遠隔制御モジュールを含んでもよい。入力装置25は、ユーザによる入力操作を受け付けると、当該入力操作に応じた入力信号をプロセッサ21に送信する。
【0063】
出力装置26は、画像処理装置20の外部に情報、データを出力するための装置である。出力装置26は、テキスト、図形、画像等の情報を表示する表示装置と、音声を出力する音声出力装置とを含む。表示装置は、表示画面を有するディスプレイと、画像表示モジュールとを備える。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)、またはブラウン管(CRT)などであってもよい。また、表示装置は、表示画面にタッチセンサが設けられたタッチパネルであってもよい。音声出力装置は、スピーカと、音声出力モジュールとを備える。
【0064】
バス27は、上記のプロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、通信装置24、入力装置25および出力装置26を相互に接続する。これにより、これらのデバイス間で各種の情報、データを送信および受信することができる。
【0065】
[4.2.画像処理装置の機能構成]
次いで、
図4、
図5、
図6を参照して、本実施形態に係る画像処理装置20の機能構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る設置当初のX線照射強度と基準X線画像の関係を説明する概略図である。
図6は、本実施形態に係る経年劣化発生時のX線照射強度とX線画像の関係を説明する概略図である。
【0066】
図4に示すように、画像処理装置20は、基準濃度決定部30と、比較部31と、出力画像生成部32と、基準濃度記憶部40とを備える。画像処理装置20のプロセッサ21がプログラムに基づいて演算処理を実行することにより、これら画像処理装置20の各機能部が実現される。
【0067】
(1)基準濃度決定部30と基準濃度記憶部40
基準濃度決定部30は、基準濃度を決定し、当該決定した基準濃度を基準濃度記憶部40に記憶させる。
【0068】
基準濃度記憶部40は、本開示の基準濃度を記憶する記憶部の一例である。基準濃度記憶部40に記憶された基準濃度は、X線検査装置1を設置した当初に常時撮影を行って得た基準X線画像中の基準片3の濃度である。基準濃度と、検査対象のX線画像中のスキャン方向(X方向)における基準片3の濃度との比較結果に基づいて、X線画像中のスキャン方向(X方向)における被写体2の濃度を補正することが可能となる。
【0069】
具体的には、まず、上記X線撮影装置10により、X線検査装置1を設置した当初に、基準片3のみを常時撮影し、基準片3が写った基準X線画像(
図5B)を生成する。X線撮影装置10は、基準X線画像を画像処理装置20に出力する。
【0070】
画像処理装置20の基準濃度決定部30は、X線撮影装置10から基準X線画像を取得する。以下では、X線照射部11から照射されたX線100の強度をIとする。また、X線照射部11から照射されたX線100が基準片3を通過して減衰した後のX線100の強度をI’とする。すなわち、強度I’は、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度である。
【0071】
例えば、基準X線画像を得るための1回の撮影において、
図5Aに示すように、X線照射部11から照射されたX線100の強度Iが変化したとする。この場合、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度I’も変化する。
【0072】
基準濃度決定部30は、基準X線画像(
図5B)中の基準片3が写っている領域の中から、基準とするピクセルを選択する。そして、基準濃度決定部30は、選択したピクセルの濃度値を基準濃度P’
0として、基準濃度記憶部40に記憶させる。
【0073】
また、以下では、上記選択された基準のピクセルに対応した、X線照射部11から照射されたX線100の強度をI0とする。また、上記選択された基準のピクセルに対応した、X線照射部11から照射されたX線100が基準片3を通過して減衰した後のX線100の強度をI’0とする。すなわち、強度I’0は、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度である。このときの、強度I0と強度I’0との関係は、次の式(1)の関係がある。
【0074】
I’0=I0exp(-μ0d0)・・・(1)
μ0 :基準片3の吸収係数
d0 :基準片3の厚み
【0075】
また、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度I’0と、X線画像中の基準片3の濃度値(画素値)P’0との関係は、次の式(2)の関係がある。
【0076】
P’0=KI’0・・・(2)
K :検出された強度のX線を8ビットのグレースケール画像に変換するための変換係数
【0077】
なお、グレースケール画像を、1画素の濃度値(画素値)を16ビットで表現した画像とする場合には、上記「K」を、検出された強度のX線100を16ビットのグレースケール画像に変換するための変換係数とすることができる。
【0078】
理想状態として、1回の撮影中において、X線照射部11から照射されたX線100の強度Iが変化せずに、強度I0で一定であった場合、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度I’0で一定となる。このような理想状態では、X線画像中の基準片3が写っている領域の全域において、基準片3の濃度値が、基準濃度P’0で一定となる。
【0079】
そこで、X線画像中の基準片3が写っている領域の全域において、基準片3の濃度値を、基準濃度P’0に補正することで、X線照射部11から照射されたX線100の強度I0が1回の撮影中に変化しない理想状態を再現することが可能となる。
【0080】
以下では、上記の理想状態において、X線照射部11から照射されたX線100が被写体2を通過して減衰した後の位置(x,y)におけるX線100の強度をi’0(x,y)とする。すなわち、強度i’0(x,y)は、被写体2を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度である。このときの、強度I0と強度i’0(x,y)との関係は、次の式(3)の関係がある。
【0081】
i’0(x,y)=I0exp(-μ(x,y)d(x,y))・・・(3)
μ(x,y) :位置(x,y)における被写体2の吸収係数
d(x,y) :位置(x,y)における被写体2の厚み
【0082】
また、以下では、上記の理想状態において、被写体2を通過した後にX線検出部12によって検出される位置(x,y)におけるX線100の強度をi’0(x,y)とする。また、上記の理想状態において、X線画像中の位置(x,y)における被写体2の濃度値をp’0(x,y)とする。このときの強度i’0(x,y)と、濃度値p’0(x,y)との関係は、次の式(4)の関係がある。
【0083】
p’0(x,y)=Ki’0(x,y)・・・(4)
K :検出された強度のX線を8ビットのグレースケール画像に変換するための変換係数
【0084】
上記のようにして、基準濃度決定部30は、事前に基準片3の基準濃度P’0を決定しておく。そして、基準濃度決定部30は、決定した基準濃度P’0を基準濃度記憶部40に予め記憶しておく。これにより、画像処理装置20は、基準濃度P’0を用いて、X線画像中の被写体2の濃度を適切に補正することが可能となる。
【0085】
(2)比較部31
画像処理装置20がX線撮影装置10から検査対象である被写体2、および、基準対象である基準片3のX線画像(
図6B参照)を取得したとする。例えば、
図6Aに示すように、1回のスキャン撮影において、X線照射部11から照射されたX線100の強度I(x)が大きく変化する場合がある。
【0086】
また、X線撮影装置10に経年劣化が発生していると、
図6Aに示すように、X線照射部11から照射されたX線100の強度I(x)が、上記した設置当初のX線100の強度I
0と比較して、1回のスキャン撮影の全域で弱くなる場合がある。
【0087】
この場合、X線照射部11から照射されたX線100が基準片3を通過して減衰した後のX線100の強度I’(x)も、上記した設置当初の基準片3の通過後のX線100の強度I’0と比較して、1回のスキャン撮影の全域で弱くなる。このときの、強度I(x)と強度I’(x)との関係は、次の式(5)の関係がある。
【0088】
I’(x)=I(x)exp(-μ0d0)・・・(5)
μ0 :基準片3の吸収係数
d0 :基準片3の厚み
【0089】
また、上記の場合において、基準片3を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度I’(x)と、X線画像中の位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)との関係は、次の式(2)の関係がある。
【0090】
P’(x)=KI’(x)・・・(6)
K :検出された強度のX線を8ビットのグレースケール画像に変換するための変換係数
【0091】
以下では、上記の場合において、X線照射部11から照射されたX線100が被写体2を通過して減衰した後の位置(x,y)におけるX線100の強度をi’(x,y)とする。すなわち、強度i’(x,y)は、被写体2を通過した後にX線検出部12によって検出されるX線100の強度である。このときの、強度I(x)と強度i’(x,y)との関係は、次の式(7)の関係がある。
【0092】
i’(x,y)=I(x)exp(-μ(x,y)d(x,y))・・・(7)
μ(x,y) :位置(x,y)における被写体2の吸収係数
d(x,y) :位置(x,y)における被写体2の厚み
【0093】
また、以下では、上記の場合において、被写体2を通過した後にX線検出部12によって検出される位置(x,y)におけるX線100の強度をi’(x,y)とする。また、上記の場合において、X線画像中の位置(x,y)における被写体2の濃度値をp’(x,y)とする。このときの強度i’(x,y)と、濃度値p’(x,y)との関係は、次の式(8)の関係がある。
【0094】
p’(x,y)=Ki’(x,y)・・・(8)
K :検出された強度のX線を8ビットのグレースケール画像に変換するための変換係数
【0095】
ここで、上記した式(1)、式(3)、式(5)、式(7)の関係を用いて、以下の式(9)の関係が成り立つことが分かる。
【0096】
i’0(x,y)/i’(x,y)=I0exp(-μ(x,y)d(x,y))/I(x)exp(-μ(x,y)d(x,y))=I0exp(-μ0d0)/I(x)exp(-μ0d0)=I’0/I’(x)・・・(9)
【0097】
そして、上記式(9)から、以下の式(10)の関係が成り立つことが分かる。
【0098】
i’0(x,y)=i’(x,y)I’0/I’(x)・・・(10)
【0099】
式(10)における、I’0/I’(x)は、検査時の位置(x)における基準片3の通過後のX線100の強度I’(x)に対する、理想状態における基準片3の通過後のX線100の強度I’0の比率を示している。そして、上記式(10)では、上記の比率を、検査時における被写体2の通過後のX線100の強度i’(x,y)に乗算することによって、理想状態における基準片3の通過後のX線100の強度I’(x)が求められることを示している。
【0100】
さらに、上記式(10)に対して、上記した式(2)、式(4)、式(6)、式(8)の関係を適応すると、以下の式(11)の関係が成り立つことが分かる。
【0101】
p’0(x,y)=p’(x,y)P’0/P’(x)・・・(11)
【0102】
式(11)における、P’0/P’(x)は、検査時のX線画像中の位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)に対する、基準片3の基準濃度P’0の比率を示している。そして、上記式(11)では、上記の比率を、X線画像中の位置(x,y)における被写体2の濃度値p’(x,y)に乗算することによって、理想状態の位置(x,y)における被写体2の濃度値p’0(x,y)が求められることを示している。
【0103】
比較部31は、スキャン方向(X方向)の位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)を抽出する。次に、比較部31は、抽出した位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)に対する、基準片3の基準濃度P’0の比率を導出する。次に、比較部31は、導出した比率を、位置(x)におけるX線画像中の濃度値に乗算することで、位置(x)におけるX線画像中の濃度値を補正する。
【0104】
そして、比較部31は、上記の一連の処理を、スキャン方向(X方向)における全ての位置、すなわち、スキャン撮影の開始位置に対応する位置(x)から、スキャン撮影の終了位置に対応する位置(x)までの全域について行う。
【0105】
(3)出力画像生成部32
出力画像生成部32は、上記したようにして比較部31によって補正されたX線画像中の濃度値に基づいて、補正済X線画像(
図8参照)を生成する。出力画像生成部32により生成された補正済X線画像は、画像処理装置20の出力装置26の表示部(ディスプレイ等)に表示される。
【0106】
[5.X線検査方法]
次に、
図7を参照して、本実施形態に係るX線検査装置1を用いたX線検査方法について詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係るX線検査方法を示すフローチャートである。
【0107】
図7に示すように、検査対象の被写体2の検査(S40~S100)に先立ち、S10~S30では、基準片3の基準濃度P’
0を決定して、基準濃度記憶部40に予め記憶しておく処理が実行される。
【0108】
まず、X線検査装置1のX線撮影装置10は、X線100を用いて基準片3のみを常時撮影して、基準X線画像(
図5B参照。)を生成する(S10)。基準X線画像は、X線検査装置1を設置した当初に生成することが好ましい。また、X線撮影装置10は、撮影した基準X線画像を画像処理装置20に出力する。
【0109】
次いで、画像処理装置20は、S10で撮影された基準X線画像を解析して、基準片3の基準濃度P’
0を決定する(S20)。具体的には、基準濃度決定部30は、基準X線画像(
図5B)中の基準片3が写っている領域の中から、基準とするピクセルを選択する。そして、基準濃度決定部30は、選択したピクセルの濃度値を基準濃度P’
0として決定する。
【0110】
そして、基準濃度決定部30は、決定した基準濃度P’0を基準濃度記憶部40に記憶させる(S30)。
【0111】
以上のS10~S30により、基準片3を予め常時撮影した基準X線画像中の基準片3の濃度である基準濃度P’0を決定、記憶される。これにより、以降の検査対象の被写体2の検査(S40~S100)において、基準濃度記憶部40に予め記憶された基準濃度P’0に基づいて、X線画像中の被写体2の濃度を補正することが可能になる。
【0112】
続いて、S40~S100では、検査対象の被写体2を検査する処理が実行される。
【0113】
まず、X線撮影装置10は、検査対象である被写体2を、X線100を用いてスキャン撮影する(S40)。この際、X線撮影装置10は、基準片3をスキャン方向に移動させずに、被写体2をスキャン方向に移動させながら、スキャン撮影する。
【0114】
そして、X線撮影装置10は、被写体2および基準片3が写っているX線画像を生成する(S50)。X線撮影装置10は、スキャン撮影した被写体2、および、常時撮影した基準片3のX線画像を画像処理装置20に出力する。
【0115】
次いで、画像処理装置20の比較部31は、スキャン方向(X方向)の位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)を抽出する(S60)。
【0116】
次に、比較部31は、抽出した位置(x)における基準片3の濃度値P’(x)に対する、基準片3の基準濃度P’0の比率を導出する(S70)。
【0117】
次に、比較部31は、導出した比率を、位置(x)におけるX線画像中の濃度値に乗算することで、位置(x)におけるX線画像中の濃度値を補正する(S80)。
【0118】
そして、比較部31は、スキャン方向(X方向)における全ての位置に対して、上記のS60~S80の一連の処理を繰り返し実行する(S90)。
【0119】
スキャン方向(X方向)における全ての位置に対して、上記のS60~S80の一連の処理が実行されると(S90のYES)、出力画像生成部32は、補正済X線画像(
図8参照)を生成する(S100)。具体的には、出力画像生成部32は、比較部31によって補正されたX線画像中の濃度値に基づいて、補正済X線画像を生成する。また、出力画像生成部32により生成された補正済X線画像は、画像処理装置20の出力装置26の表示部(ディスプレイ等)に表示される。
【0120】
なお、被写体2のスキャン撮影を実行する度に、毎回、X線画像中の基準片3の濃度から基準濃度P’0を決定する場合には、画像処理装置20は、上記S10~S30の各処理を、S50において生成したX線画像に対して実行する。
【0121】
図8は、本実施形態に係る補正済X線画像の具体例を示す説明図である。
図8に示すように、補正済X線画像では、1回のスキャン撮影中において、X線照射部11から照射されたX線100の強度Iが強度I
0で一定である理想状態の場合を示している。そのため、
図8に示すように、補正済X線画像中の全ての領域で、基準片3の濃度は、予め決定された基準濃度P’
0に補正(変換)されることとなる。また、補正済X線画像中の被写体2の濃度は、X線照射部11から照射されたX線100の強度Iが強度I
0で一定である理想状態の場合の濃度値に補正(変換)されている。
【0122】
これにより、1回のスキャン撮影の開始から終了までの間に、照射されるX線100の強度が変化することによって生じるX線画像内における濃度の変化を補正することが可能となる。特に、事前に決定した基準濃度P’0を用いて、補正済X線画像を生成することにより、経年劣化によって照射されるX線100の強度が変化した場合についても、X線画像内における濃度の変化を補正することが可能となる。
【0123】
例えば、過去に撮影した被写体2と同一の被写体2のスキャン撮影した場合に、同一の補正済X線画像を生成することが可能となる。すなわち、被写体2と補正済X線画像との間の再現性や一致性が保証されるため、補正済X線画像に対して画像識別技術や画像処理技術を適用する際に、再現性の高い正しい処理を行うことが可能となる。
【0124】
[6.まとめ]
以上、本実施形態に係るX線検査装置1について詳細に説明した。本実施形態によれば、X線検査装置1は、被写体2にX線100を照射することにより、被写体2をスキャン撮影したX線画像を生成する撮影部(X線撮影装置10)と、X線画像を補正する補正部(画像処理装置20)と、を備える。撮影部は、X線100を照射するX線照射部11を有する。また、撮影部は、X線照射部11に対向して配置されるX線検出部12を有する。また、撮影部は、被写体2がX線照射部11とX線検出部12との間の撮影領域101を通過するように、X線照射部11およびX線検出部12に対して被写体2を前記スキャン方向に相対的に移動させる搬送部14を有する。また、撮影部は、撮影領域101内であって、撮影領域101を通過する被写体2と重ならない位置に配置され、スキャン方向に移動しない基準片3を有する。X線画像には、スキャン撮影された被写体2と、常時撮影された基準片3が写っている。また、補正部は、X線画像中の基準片3の濃度に基づいて、X線画像中の被写体2の濃度を補正する。これにより、X線照射部11から照射されるX線100の強度が変化する場合であっても、当該X線100の強度変化によって生じるX線画像内の被写体2の濃度の変化を補正することができる。よって、X線照射部11から照射されるX線100の強度の変化に応じて、X線画像内における被写体2の濃度を適切に補正することができる。
【0125】
また、本実施形態によれば、撮影部による1回のスキャン撮影動作により撮影されたX線画像には、基準片3がスキャン方向に延びるように連続的に写っている。補正部は、X線画像中のスキャン方向における基準片3の濃度変化に基づいて、X線画像中のスキャン方向における被写体2の濃度を補正することが好ましい。これにより、1回のスキャン撮影動作中に、X線照射部11から照射されるX線100の強度が変化する場合であっても、当該X線100の強度変化によって生じるX線画像内の被写体2の濃度の変化を適切に補正することができる。
【0126】
さらに、本実施形態によれば、補正部は、基準片3を予め撮影した基準X線画像中の基準片3の濃度である基準濃度P’0と、X線画像中のスキャン方向における基準片3の濃度との比較を行うことが好ましい。そして、補正部は、比較結果に基づいて、X線画像中のスキャン方向における被写体2の濃度を補正することが好ましい。これにより、X線照射部11の経年劣化などが原因で、照射されるX線100の強度が変化した場合であっても、X線画像内の被写体2の濃度の変化を適切に補正することが可能となる。
【0127】
また、本実施形態によれば、基準片3は、所定の厚み3dを有する板状の金属部材であることが好ましい。また、基準片3の厚み3d方向に対して直交する面3sが、X線照射部11から面3sに照射されるX線100に対して垂直となる姿勢で、基準片3が固定的に配置されることが好ましい。これにより、基準片3に対するスキャン撮影時の、X線100の強度の変化以外の撮影条件を常に一定に保つことが可能となる。そのため、被写体2の濃度を補正する際の精度を高く維持することが可能となる。
【0128】
また、本実施形態によれば、基準片3に関する数値データを収集して経年的な変化を監視することが可能となる。基準片3に関する数値データとは、具体的には、上記P’(x)およびI’(x)とすることができる。例えば、P’(x)、または、I’(x)の経年的な変化を監視することで、X線照射部11およびX線検出部12の劣化状態や動作状態の悪化を判定および予想することが可能となる。すなわち、P’(x)、または、I’(x)の経年的な変化を監視することで、X線照射部11およびX線検出部12の交換時期を判定および予想することが可能となる。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0130】
なお、上述した本実施形態に係る画像処理装置20等の各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組合せのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納されてもよい。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行されてもよい。
【0131】
上記各装置の各機能を実現するためのプログラムを作成し、上記各装置のコンピュータにインストールすることが可能である。プロセッサが、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、上記各機能の処理が実行される。このとき、複数のプロセッサによりプログラムを分担して実行してもよいし、1つのプロセッサでプログラムを実行してもよい。また、通信ネットワークにより相互に接続された複数のコンピュータを用いるクラウドコンピューティングにより、上記各装置の各機能を実現してもよい。
【0132】
なお、プログラムは、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、各装置のコンピュータに提供されて、インストールされてもよい。あるいは、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(non-transitory computer readable medium)に格納され、当該記録媒体を介して各装置のコンピュータに提供されて、インストールされてもよい。
【0133】
また、本実施形態によれば、上記各装置の各機能の処理を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、当該プログラムが格納された、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体を提供することもできる。非一時的な記録媒体は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のディスク型記録媒体であってもよいし、または、フラッシュメモリ、USBメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 X線検査装置
2 被写体
3 基準片
3d 厚み
3s 面
10 X線撮影装置(撮影部)
11 X線照射部
12 X線検出部
14 搬送部
20 画像処理装置(補正部)
100 X線
101 撮影領域