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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070541
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】超音波測定装置及び流体測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/667 20220101AFI20240516BHJP
【FI】
G01F1/667 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181100
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】日野 遥
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】森田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】黒田 峻
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 智子
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA09
(57)【要約】
【課題】超音波振動が伝播する距離を長くしても高い信号強度を得やすい超音波測定装置を提供する。
【解決手段】配管に取り付けて使用される超音波測定装置であって、前記配管上に互いに離間して設けられ、超音波振動の送受信を相互に行う一対の超音波振動子と、前記各超音波振動子と前記配管との間に介在するよう設けられて超音波振動を伝達する、一対の整合部材とを備え、前記各整合部材は、前記配管の表面に密着する、前記管軸方向に対して略平行な密着面と、前記超音波振動子が取り付けられる、前記管軸方向に対して傾斜した振動子取付面とを有しており、前記管軸方向に対して直交する断面視において、前記振動子取付面の長さが前記密着面の長さよりも大きい形状をなしている超音波測定装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に取り付けて使用される超音波測定装置であって、
前記配管上に互いに離間して設けられ、超音波振動の送受信を相互に行う一対の超音波振動子と、
前記各超音波振動子と前記配管との間に介在するよう設けられて超音波振動を伝達する一対の整合部材とを備え、
前記各整合部材は、
前記配管の表面に密着する、前記管軸方向に対して略平行な密着面と、
前記超音波振動子が取り付けられる、前記管軸方向に対して傾斜した振動子取付面とを有しており、
前記管軸方向に対して直交する断面視において、前記振動子取付面の長さが前記密着面の長さよりも大きい形状をなしている超音波測定装置。
【請求項2】
前記各整合部材における前記配管の表面に対向する対向面に、前記配管の表面に向かって突出する凸部が設けられており、当該凸部の先端面により前記密着面が形成されている請求項1に記載の超音波測定装置。
【請求項3】
前記凸部の先端面が平面状に形成されている請求項1又は2に記載の超音波測定装置。
【請求項4】
前記振動子取付面と前記密着面とがなす角が30°以上60°以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項5】
前記各整合部材が弾性材料からなるものである請求項1~4のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項6】
前記一対の超音波振動子と前記一対の整合部材を内部に収容して保持するとともに、前記配管の側周面を把持して前記配管に取り付くケーシングを更に有する請求項1~5のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項7】
前記ケーシングが導電性材料からなる部材により構成されたものである請求項6に記載の超音波測定装置。
【請求項8】
前記ケーシングの一側面には、前記ケーシングを所定のベースに固定して取り付けるための取付部材が設けられており、当該取付部材が絶縁性材料からなるものである請求項6又は7に記載の超音波測定装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、
前記一対の超音波振動子及び前記一対の整合部材を前記管軸方向に沿って離して保持するとともに、前記管軸方向に直交する一方向に開口する本体部材と、
前記管軸方向に回転軸が延伸する第1ヒンジ機構を介して本体部材に連結され、当該第1ヒンジ機構の回転軸を中心に回転して前記本体部材の開口を開閉する蓋部材と、
前記本体部材の開口に蓋をした状態で前記蓋部材を固定するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記管軸方向に回転軸が延伸する第2ヒンジ機構を介して前記本体部材又は前記蓋部材の一方に連結された鉤状部材と、前記本体部材又は前記蓋部材の他方に形成され、前記鉤状部材が係合する凹部とを含んで構成されている請求項6~8のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項10】
前記ケーシングは、前記整合部材が設置される設置面を有しており、
当該設置面は、対向する前記整合部材の被設置面に対して凹んだ曲面状を成している請求項6~9のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波測定装置を用いて配管を流れる流体を測定する方法であって、
前記各整合部材の前記密着面を前記配管の表面に押し当てるように前記超音波測定装置を前記配管に取付けて前記流体を測定する流体測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定装置及びこれを用いた流体測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波測定装置としては、例えば特許文献1に示すように、信号送信用の超音波振動子と信号受信用の超音波振動子とが測定対象である流体が流れる配管を挟んで設置されるものが知られている。このものでは、各超音波振動子は、配管に対して角度を持って設置されるとともに、測定対象の音響インピーダンスが考慮された弾性材料からなる整合部材を介して固定されている。そして各超音波振動子は、送信用の超音波振動子から出た超音波振動が、配管及び流体で屈折して最短距離で受信用の超音波振動子に込むような位置関係で設置されている。
【0003】
このような構成の場合、送信用の超音波振動子と受信用の超音波振動子との間の距離が短いため、高い信号強度を得ることができるというメリットがあるものの、流体を通過する距離が短いため分解能が低下し、測定精度が低下するというデメリットがある。
【0004】
一方、超音波振動が配管内で反射するような位置関係で各超音波振動子を設置すれば、超音波振動が伝播する距離を長くできるため分解能を高くすることができる。しかしながらこの場合には、受信した超音波振動の強度が低くなるため外乱の影響が大きくなり、測定精度が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-048471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した問題を解決すべくなされたものであり、超音波振動が伝播する距離を長くしても高い信号強度を得やすい超音波測定装置を提供することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る超音波測定装置は、配管に取り付けて使用される超音波測定装置であって、前記配管上に互いに離間して設けられ、超音波振動の送受信を相互に行う一対の超音波振動子と、前記各超音波振動子と前記配管との間に介在するよう設けられて超音波振動を伝達する一対の整合部材とを備え、前記各整合部材は、前記配管の表面に密着する、前記管軸方向に対して略平行な密着面と、前記超音波振動子が取り付けられる、前記管軸方向に対して傾斜した振動子取付面とを有しており、前記管軸方向に対して直交する断面視において、前記振動子取付面の長さが前記密着面の長さよりも大きい形状をなしていることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、断面視において振動子取付面が密着面よりも長くなるように整合部材を形成しているので、配管サイズに対して大きなサイズの超音波振動子を適用することができ、また超音波振動子と配管との間で超音波振動を効率よく伝えることができる。これにより、一対の超音波振動子間で強い強度の超音波振動を伝播させることができ、超音波振動が伝播する距離を長くしても高い信号強度を得やすくでき、測定精度を向上できる。
【0009】
つまり、一対の超音波振動子間で十分な強度の超音波を伝えるためには、超音波振動子の音響放射面を例えば直径約10mm以上に設定する必要があるが、例えば直径3~7mm程度の小径配管を測定する場合に、この配管径に合わせて整合部材の振動子取付面のサイズを小さくし、使用する超音波振動子のサイズを小さくすると、十分な強度の超音波を伝えることが難しくなる。一方で、このような小径配管を測定する場合に、整合部材の振動子取付面を配管径に対して大きくするとともに密着面も同様に大きくすると、整合部材内で超音波振動が逃げてしまい、超音波振動を効率よく超音波振動子に伝えることが難しくなる。上記した本発明の構成であれば、振動子取付面が密着面よりも長くなるように整合部材を形成しているので、小径配管であっても配管サイズに対して大きなサイズの超音波振動子を適用することができ、さらに密着面を振動子取付面よりも小さくしているので、整合部材内で逃げてしまう超音波振動を低減し、また超音波振動子と配管との間で超音波振動を効率よく伝えることができる。
【0010】
前記超音波測定装置は、前記各整合部材における前記配管の表面に対向する対向面に前記配管の表面に向かって突出する凸部が設けられており、当該凸部の先端面により前記密着面が形成されているのが好ましい。
このように構成すれば、整合部材の対向面から配管に向かって突出する凸部を形成し、その先端面を配管に密着させるようにしているので、凹凸のない一様に平坦な対向面を押し当てて密着させる場合に比べて配管と整合部材との間の接触面積を小さくでき、接触面にかかる押し付け圧力を高くすることができる。これにより、送信側においては整合部材から配管に超音波振動を効率よく伝達でき、受信側においても配管から整合部材に効率よく超音波振動を伝達できるようになる。これにより、一対の超音波振動子間でより強い強度の超音波振動を伝播させることができ、超音波振動が伝播する距離を長くしてもより高い信号強度を得やすくできる。
またこのような凸部を有する形状とすることで、管軸方向に対して直交する断面視において、整合部材の左右の両側面を押し付け方向に対して真っすぐとなるように形成できる。これにより、例えばケーシングの内壁等で整合部材の両側面を挟んで固定しやすくなり、配管に対して整合部材を真っすぐに押し当てやすくなる。
【0011】
またこの場合、前記凸部の先端面が平面状に形成されているのが好ましい。
整合部材の密着面である凸部の先端面を平面状にすることで、配管の表面形状に沿った曲面状等にする場合に比べて、配管に対して効率よく押し付け圧力を伝えることができる。
【0012】
本発明の効果を顕著に奏する前記超音波測定装置の態様としては、前記一対の超音波振動子が、一方の前記超音波振動子から発信されて前記配管内で複数回反射した超音波振動を他方の前記超音波振動子で受信する位置関係となるように配置されているものが挙げられる。
本発明の超音波測定装置によれば、このように超音波振動が配管内で複数回反射しても、整合部材と配管との間で効率よく超音波振動を伝達させることで、高い信号強度を得ることができる。さらに、配管内で超音波振動を複数回反射させることで、超音波振動が伝播する距離を長くできるため分解能を高くできる。
【0013】
一対の超音波振動子間でより効率よく超音波振動子を伝達するには、前記振動子取付面と前記密着面とがなす角が30°以上60°以下であるのが好ましく、約45°であるのが特に好ましい。
【0014】
また前記超音波測定装置は、前記各整合部材が弾性材料からなるものであるのが好ましい。
このようにすれば、整合部材の密着面を配管の表面に押し当てると、この密着面は弾性変形してより広い面積で配管に密着することができる。これにより、超音波振動子と配管との間でより効率よく超音波振動を伝達することができる。
【0015】
前記超音波測定装置の具体的態様としては、前記一対の超音波振動子と前記一対の整合部材を内部に収容して保持するとともに、前記配管の側周面を把持して前記配管に取り付くケーシングを更に有するものが挙げられる。
【0016】
また前記ケーシングが導電性材料からなる部材により構成されたものであるのが好ましい。
このようにすれば、超音波振動が伝播する経路(具体的には、配管、超音波振動子及び整合部材)を導電性材料の部材で取り囲むようにすることで、空間から伝わる電気的なノイズを遮断し、微弱な超音波信号であっても精度よく測定することができる。
【0017】
また、前記ケーシングの一側面には、前記ケーシングを所定のベースに固定して取り付けるための取付部材が設けられており、当該取付部材が絶縁性材料からなるものであるのが好ましい。
このようにすれば、超音波測定装置を配管に取付けるとともに、例えば金属製の架台等の導電性のベースに取付けた際に、その取付け箇所から伝導する電気的なノイズを遮断することができる。
【0018】
さらに前記ケーシングは、前記一対の超音波振動子及び前記一対の整合部材を前記管軸方向に沿って離して保持するとともに、前記管軸方向に直交する一方向に開口する本体部材と、前記管軸方向に回転軸が延伸する第1ヒンジ機構を介して本体部材に連結され、当該第1ヒンジ機構の回転軸を中心に回転して前記本体部材の開口を開閉する蓋部材と、前記本体部材の開口に蓋をした状態で前記蓋部材を固定するロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記管軸方向に回転軸が延伸する第2ヒンジ機構を介して前記本体部材又は前記蓋部材の一方に連結された鉤状部材と、前記本体部材又は前記蓋部材の他方に形成され、前記鉤状部材が係合する凹部とを含んで構成されているのが好ましい。
このように構成すれば、本体部材と蓋部材との間に配管を挟み込み、鉤状部材により蓋部材を固定することで、超音波測定装置を配管に簡単に取り付けることができる。
【0019】
さらに前記ケーシングは、前記整合部材が設置される設置面を有しており、当該設置面は、対向する前記整合部材の被設置面に対して凹んだ曲面状を成しているのが好ましい。
このようにすれば、配管が整合部材に押し当てられると、整合部材には、被設置面が設置面に密着するように、設置面に向かって凸となるよう曲げモーメントが作用する。これにより、整合部材と配管とがより一層密着するようになり、超音波振動子と配管との間でさらに効率よく超音波振動を伝達することができる。
このように、ケーシングの設置面を曲面状に凹ませることで、整合部材の密着面を配管形状に合わせて予め曲面状に凹ませて形成する場合に比べて、超音波振動子と配管との間でより効率よく超音波振動を伝達することができる。これは、整合層の密着面を例えば凹曲面状にする場合には、整合部材を配管に押し付けた際に押し付け圧力が外側に逃げてしまうのに対して、ケーシングの設置面を凹曲面状にする場合には、整合部材を配管に押し付けた際に整合部材が変形することにより配管に対して外側から内側に向けて押し付け圧力がかかるためであると考えられる。
【0020】
また本発明の流量測定方法は、前記した超音波測定装置を用いて配管を流れる流体を測定する方法であって、前記各整合部材の前記密着面を前記配管の表面に押し当てるように前記超音波測定装置を前記配管に取付けて前記流体を測定することを特徴とする。
このような流体測定方法であれば、前記した超音波測定装置と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べた本発明によれば、超音波振動が伝播する距離を長くしても高い信号強度を得やすい超音波測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波測定装置の全体構成を示す図。
図2】同実施形態に係る超音波測定装置の内部構成を模式的に示す図。
図3】同実施形態の整合部材の構成を示す(a)斜視図、(b)管軸方向から視た平面図、及び(c)管軸方向に直交する方向から視た平面図。
図4】管軸方向に対して直交する断面視における同実施形態の配管、整合部材及び超音波振動子を模式的に示す図。
図5】被設置面に対して直交する断面視における配管及び整合部材を模式的に示す図。
図6】同実施形態の超音波測定装置のケーシングを開いた状態を示す図。
図7】同実施形態の超音波測定装置の配管への取り付け動作を説明する図。
図8】他の実施形態の整合部材の構成を示す図。
図9】他の実施形態の整合部材の構成を示す図。
図10】他の実施形態の整合部材の構成を示す図。
図11】他の実施形態に係る超音波測定装置の内部構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る超音波測定装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態の超音波測定装置100は、液体や気体等の流体が流れる配管Pの外側周面に取り付けられて当該配管P内を流れる流体の流量を測定する、所謂クランプオン式の超音波流量計である。
【0025】
具体的にこの超音波測定装置100は、図1及び図2に示すように、取り付けられる配管Pの管軸方向(又は流体が流れる方向)に沿って離間して配置された一対の超音波振動子1と、各超音波振動子1と配管Pとの間に介在するよう設けられて超音波振動を伝達する一対の整合部材2と、これら超音波振動子1と整合部材2を内部に収容して保持するとともに、配管Pに着脱可能に取り付くように構成されたケーシング3とを備える。この超音波測定装置100は、一対の超音波振動子1により交互に超音波信号を送受信し、2つの超音波信号の伝播時間の差に基づいて流量を測定する所謂伝播時間式のものである。以下、各部を説明する。
【0026】
超音波振動子1は、例えば概略円形状を成す音響放射面1sを通じて超音波振動を送受信するためのものであり、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の圧電素子を用いて構成されるものである。本実施形態の超音波振動子1は、配管Pの管軸方向に沿って上流側と下流側に1つずつ配置されており、一方の超音波振動子1から発信されて配管P内(例えば管壁)で反射した超音波振動を他方の超音波振動子1で受信する位置関係となるように配置されている。より具体的にこの一対の超音波振動子1は、管軸方向から視て、配管Pの周方向において互いに略同一位置に設けられている。
【0027】
整合部材2は、超音波振動子1と配管P間の音響インピーダンス差を小さくして超音波振動を効率よく伝達できるようにするものである。この一対の整合部材2は、各超音波振動子1にそれぞれ対応して設けられており、超音波振動子1が送信した超音波信号を配管Pに伝達するとともに、配管Pからの超音波信号を超音波振動子1に伝達するものである。整合部材2は、ケーシング3の内側面に設定された設置面3sに設置されている。
【0028】
具体的にこの整合部材2は、図3に示すように角柱状をなすものであり、その柱軸方向(高さ方向)が配管Pの管軸方向に直交するように設けられている。この整合部材2は、その全体がシリコン系の樹脂等の弾性材料(弾性変形可能な材料)により構成された樹脂成型品であり、1つの部品で構成されたものである。そしてこの整合部材2は、弾性変形して配管Pの表面に密着することで配管Pとの間で超音波振動を相互伝達する密着面22sと、超音波振動子1の音響放射面1sが面接触するように取り付けられて超音波振動子1との間で超音波振動を相互伝達する振動子取付面23と、ケーシング3の設置面3sに接触する被設置面25とをその側面に備えている。
【0029】
より具体的には、管軸方向に対して略平行であり配管Pの表面に対向する一側面(対向面21)に密着面22sが形成されており、管軸方向に対して傾斜した他の側面が振動子取付面23及び被設置面25となる。振動子取付面23と被設置面25は、互いに逆方向を向くように形成されており、振動子取付面23は管軸方向において外向き(すなわち、他方の整合部材2から離れる向き)に形成され、被設置面25は管軸方向において内向き(すなわち、他方の整合部材2に近づく向き)に形成されている。振動子取付面23は密着面22sに対して傾斜しており、振動子取付面23と密着面22sとがなす角は30°以上60°以下であり、より具体的には約45°である。同様に被設置面25も密着面22sに対して傾斜しており、被設置面25と密着面22sとがなす角は30°以上60°以下であり、より具体的には約45°である。また管軸方向から視た整合部材2の左右の両側面24は、密着面22s、振動子取付面23及び被設置面25に対して直交するように形成されている。なお本実施形態では、密着面22s、振動子取付面23、被設置面25及び両側面はいずれも、配管Pが押し当てられていない状態で平面形状をなすよう形成されている。
【0030】
しかして本実施形態の整合部材2は、図4に示すように、管軸方向に対して直交する断面視において、超音波振動子1側から配管P側に向かう先端に密着面22sが形成されており、振動子取付面23の長さが密着面22sの長さよりも大きい形状をなしている。本実施形態では、管軸方向に対して直交する任意の位置における断面(すなわち全ての断面)において、振動子取付面23の長さが密着面22sの長さよりも大きくなっている。
【0031】
より具体的にこの整合部材2は、配管Pの表面に向かって突出する凸部22がその対向面21の一部の領域に設けられている。この凸部22は、配管Pの管軸方向から視て、対向面21の中央領域を部分的に突出させることにより形成されており、その先端面は、平面視において管軸方向に沿って延びる矩形状をなしている。配管Pに取付けられてない状態において、凸部22の先端面は平面形状をなしており、当該先端面により密着面22sが形成されている。そしてこの凸部22の先端面は、配管Pの表面に押し当てられると、配管Pの表面形状に合わせて弾性変形して曲面形状となる。
【0032】
そして管軸方向に対して直交する断面視において、この整合部材2は、密着面22aの長さが、測定対象である配管Pの外径よりも小さく、かつ振動子取付面23の長さが配管Pの外径よりも長くなるように形成されている。さらに振動子取付面23に取付けられる超音波振動子1の音響放射面1sの直径は、密着面22aの長さよりも大きく、かつ配管Pの外径よりも大きくされている。
【0033】
また整合部材2の被設置面25が接触するケーシング3の設置面3sは、被設置面25に対して凹んだ凹曲面状を成している。より詳細には、図5(a)及び(b)に示すように、設置面3は、被設置面25に対して直交する断面視において、被設置面25に対して凹んだ曲線状(例えば部分円弧状)に形成されている。そのため図5(a)に示すように、配管Pが整合部材2に押し当てられていない状態では、被設置面25と、設置面3sとの間には弓型(あるいはD字型)の空隙が形成されている。そして図5(b)に示すように、配管Pが押し当てられると、整合部材2は、被設置面25が設置面3sに密着するように、設置面3sに向かって凸となるよう弾性変形する。これにより、密着面22sには応力がより集中しやすくなり、押し付け圧力がより一層強くなる。なおこの設置面3sは、管軸方向に対して傾斜しており、かつ被設置面25と略平行になるように形成されている。
【0034】
ケーシング3は、例えば直方体形状をなす長尺状のものであり、その長手方向が配管Pの管軸方向と一致するようにして配管Pに取り付けられる。具体的にこのケーシング3は、図6に示すように、一対の超音波振動子1及び一対の整合部材2を長手方向に沿って離して保持するとともに、当該長手方向に直交する一方向に開口する箱状をなす本体部材31と、本体部材31の開口に蓋をする板状をなす蓋部材32とを備えている。このケーシング3は、本体部材31と蓋部材32とで配管Pを挟み、その外側周面を把持することにより、配管Pに取り付くように構成されている。本体部材31は、整合部材2の密着面22sが蓋部材32の裏面に対向するように超音波振動子1と整合部材2を保持しており、本体部材31と蓋部材32とで配管Pを挟むと、整合部材2の密着面22sに配管Pが押し付けられ、密着面22sが弾性変形するようにしている。
【0035】
蓋部材32は、長手方向に回転軸が延伸する第1ヒンジ機構34aを介して本体部材31に連結されており、この第1ヒンジ機構34aの回転軸を中心に回転することで本体部材31の開口を開閉できるようにされている。
【0036】
そしてこのケーシング3は、本体部材31の開口に蓋をした状態で蓋部材32の動きをロックするロック機構33をさらに備えている。このロック機構33は、本体部材31に基端部が連結され、先端部が鉤状に折り曲げられた鉤状部材331と、蓋部材32の上面に形成された、鉤状部材331の先端部が係合する凹部332とから構成されている。具体的にこの鉤状部材331は、長手方向に回転軸が延伸する第2ヒンジ機構34bを介して本体部材31に回転自在に連結されている。この第2ヒンジ機構34bは、長手方向から視て、本体部材31の開口を挟んで第1ヒンジ機構34aと反対側に設けられている。
【0037】
本実施形態のケーシング3の配管Pへの取り付け動作を、図7を用いて説明する。まず図7(a)に示すように、蓋部材32を開放した状態で整合部材2の密着面22sを配管Pに当てるようにしてセットする。そして図7(b)に示すように、第1ヒンジ機構34aにより蓋部材32を回転させて本体部材31の開口に蓋をする。すると、蓋部材32により配管Pが整合部材2の密着面22sに押し当てられ、密着面22sが弾性変形する。そして図7(c)に示すように、第2ヒンジ機構34bにより鉤状部材331を回転させて、蓋部材32の凹部332に係合させる。これにより、配管Pへのケーシング3の取り付けが完了する。
【0038】
また本実施形態のケーシング3は、導電性樹脂等の導電性材料からなる部材を用いて構成されている。本実施形態では、本体部材31と蓋部材32と鉤状部材331がいずれも導電性材料により構成されている。
【0039】
さらに本実施形態では、ケーシング3の一側面(例えば底面)に、ケーシング3を所定のベースに固定して取り付けるための板状をなす取付部材4が取り付けられている。この取付部材4は絶縁性樹脂等の絶縁性材料により構成されている。
【0040】
このように構成した本実施形態の超音波測定装置100によれば、断面視において振動子取付面23が密着面22sよりも長くなるように整合部材2を形成しているので、配管Pサイズに対して大きなサイズの超音波振動子1を適用することができる。しかも整合部材2の対向面21から配管Pに向かって突出する凸部22を形成し、その先端面を配管Pに密着させるようにしているので、凹凸のない一様に平坦な対向面21を押し当てて密着させる場合に比べて配管Pと整合部材2との間の接触面積を小さくでき、接触面にかかる押し付け圧力を高くすることができる。これにより、送信側においては整合部材2から配管Pに超音波振動を効率よく伝達でき、受信側においても配管Pから整合部材2に効率よく超音波振動を伝達できるようになる。これにより、一対の超音波振動子1間で強い強度の超音波振動を伝播させることができ、超音波振動が伝播する距離を長くしても高い信号強度を得やすくできる。
【0041】
さらに、一対の超音波振動子1を、一方の超音波振動子1から発信されて配管P内で反射した超音波振動を他方の超音波振動子1で受信する位置関係となるように配置しているので、超音波振動が伝播する距離を長くして高い分解能を得ることができる。
【0042】
またケーシング3の全体を導電性材料で構成するとともに、ベースに取付けられる取付部材4を絶縁性材料で構成しているので、空間から伝わる電気的なノイズやベースから伝導する電気的なノイズを遮断し、超音波信号を精度よく測定することができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば前記実施形態では、整合部材2の凸部22の先端面は、配管Pに取付けられてない状態において平面形状をなすように形成されていたがこれに限らない。他の実施形態では、図8に示すように、整合部材2の凸部22の先端面は、配管Pに取付けられてない状態において、例えば配管Pの表面に沿って凹んだ曲面形状をなすように形成されていてもよい。
【0044】
また他の実施形態では、配管Pに対向する整合部材2の対向面21には凸部22が形成されていなくてもよい。例えば図9に示すように、管軸方向に対して直交する断面視において、整合部材2が台形状となるように形成されていてもよい。あるいは図10に示すような多角(六角)形状であってもよい。この場合であっても超音波振動子1側から配管P側に向かう先端に密着面22sが形成されており、振動子取付面23の長さが密着面22sの長さよりも大きい形状をなしていれば本発明の効果を奏することができる。
【0045】
また他の実施形態の整合部材2は、密着面22aの長さが、測定対象である配管Pの外径と同様又はこれよりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0046】
また前記実施形態の整合部材2は、管軸方向に対して直交する全ての断面において、振動子取付面23の長さが密着面22sの長さよりも大きくなるように形成されていたがこれに限らない。整合部材2は、管軸方向に対して直交する少なくとも一部の断面において振動子取付面23の長さが密着面22sの長さよりも大きくなるように形成されていれば、本発明の効果を奏することができる。
【0047】
さらに他の実施形態では、図11に示すように、一対の超音波振動子1を配管Pの流路を挟んで対向するように配置し、一対の超音波振動子1を配管Pの流路を挟んで対向するように配置するともに、一方の超音波振動子1から発信され、反射することなく配管P及び流体を透過した超音波振動を他方の超音波振動子1で受信するようにしてもよい。
【0048】
また前記実施形態のケーシング3は、本体部材31にヒンジ機構を介して連結された蓋部材32と鉤状部材331により配管Pを挟み込むようにしていたがこれに限らない。他の実施形態では、例えば、配管Pを間に挟み込んだ本体部材31と蓋部材32とをネジ止めする等して固定することで、超音波測定装置100を配管Pに取付けるようにしてもよい。
【0049】
また前記実施形態の超音波測定装置100は、配管Pを流れる流体の流量を測定する超音波流量計であったがこれに限らない。他の実施形態の超音波測定装置100は、配管Pを流れる流体の濃度を測定する超音波濃度計であってもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0051】
100・・・超音波測定装置
1 ・・・超音波振動子
2 ・・・整合部材
22s・・・密着面
23 ・・・振動子取付面
P ・・・配管
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11