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特開2024-70545振動検出装置、振動検出方法、振幅測定装置及び振幅測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070545
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】振動検出装置、振動検出方法、振幅測定装置及び振幅測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181106
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】520073704
【氏名又は名称】株式会社常盤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】澤田 長宏
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中の被加工物の振動を安定的に検出できる振動検出装置及び振動検出方法を提供する。また、ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中の被加工物の振幅を安定的に検出できる振幅測定装置及び振幅測定方法を提供する。
【解決手段】本装置21は、加工槽4内に貯留された加工液中で被加工物Wを切断加工するワイヤカット加工機1に用いられる振動検出装置21である。本装置は、内部に防水空間Sを形成するケース22を備え、防水空間内には、ケースの底板24上に加速度センサ23が設けられており、底板が加工液中の被加工物の表面に密着するようにケースが加工液中に浸された状態で、加速度センサにより加工液中の被加工物の振動を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するワイヤカット加工機に用いられる振動検出装置であって、
内部に防水空間を形成するケースを備え、
前記防水空間内には、前記ケースの底板上に加速度センサが設けられており、
前記底板が加工液中の前記被加工物の表面に密着するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記加速度センサにより加工液中の前記被加工物の振動を検出することを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
前記防水空間内には、前記加速度センサの検出値を増幅するアンプ及び前記アンプで増幅された検出値をAD変換するAD変換器が設けられている請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記ケースには、前記防水空間に連なり且つ上端部が加工液の液面より上方に配置されるパイプが設けられており、
前記パイプには、前記加速度センサの検出値をコンピュータへ送信するための通信ケーブルが通されている請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記ケースは金属製である請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動検出装置を用いる振動検出方法であって、
前記底板が加工液中の前記被加工物の表面に密着するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記加速度センサにより加工液中の前記被加工物の振動を検出することを特徴とする振動検出方法。
【請求項6】
加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するワイヤカット加工機に用いられる振幅測定装置であって、
内部に防水空間を形成するケースと、
前記防水空間内に設けられるダイヤルゲージと、
前記防水空間内にエアを供給するエア供給機構と、を備え、
前記ケースには、前記ダイヤルゲージの測定子が突出する開口が形成されているとともに、前記ダイヤルゲージの表示部を目視するための透視部が設けられており、
前記エア供給機構により前記防水空間内にエアが供給されるとともに、前記ダイヤルゲージの測定子が加工液中の前記被加工物の表面に当接するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記ダイヤルゲージの測定子により加工液中の前記被加工物の振幅を測定することを特徴とする振幅測定装置。
【請求項7】
前記エア供給機構は、エアポンプと、前記エアポンプから圧送されるエアを溜めてから前記防水空間内に供給するためのタンクと、を有する請求項6に記載の振幅測定装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の振幅測定装置を用いる振幅測定方法であって、
前記エア供給機構により前記防水空間内にエアが供給されるとともに、前記ダイヤルゲージの測定子が加工液中の前記被加工物の表面に当接するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記ダイヤルゲージの測定子により加工液中の前記被加工物の振幅を測定することを特徴とする振幅測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動検出装置、振動検出方法、振幅測定装置及び振幅測定方法に関し、更に詳しくは、加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するワイヤカット加工機に用いられる振動検出装置、振動検出方法、振幅測定装置及び振幅測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤカット加工機として、加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するものが一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤカット加工機では、ワイヤに通した電流と被加工物(金属)との間の放電により被加工物が切断加工される。しかし、被加工物が比較的薄い場合や被加工物が片持ち状態で支持される場合などでは、加工液中の被加工物が振動するため、ワイヤと被加工物が接触してワイヤの切断が発生してしまい生産効率が低下することがある。
【0003】
そこで、加工液中の被加工物の振動あるいは振幅を解析することでワイヤの切断が発生する加工条件を判定することが鋭意研究されている。しかしながら、現状では、加工液中の被加工物の振動を安定的に検出する技術が確立されていない。これは、振動を検出する加速度センサを取り付ける際、被加工物は加工液中にあり、そのまま取り付けることができないためである。それに加え、ワイヤと被加工物との間の放電から強い電気的ノイズが発生し、加速度センサの振動の検出に影響を与えるためである。
【0004】
さらに、現状では、加工液中の被加工物の振幅を安定的に測定する技術が確立されていない。これは、振幅を測定するダイヤルゲージを取り付ける際、被加工物は加工液中にあり、そのまま取り付けることができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-64804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中の被加工物の振動を安定的に検出することができる振動検出装置及びこれを用いる振動検出方法を提供することを第1の目的とする。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中の被加工物の振幅を安定的に測定することができる振幅測定装置及びこれを用いる振幅測定方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するワイヤカット加工機に用いられる振動検出装置であって、
内部に防水空間を形成するケースを備え、
前記防水空間内には、前記ケースの底板上に加速度センサが設けられており、
前記底板が加工液中の前記被加工物の表面に密着するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記加速度センサにより加工液中の前記被加工物の振動を検出することを特徴とする振動検出装置。
2.前記防水空間内には、前記加速度センサの検出値を増幅するアンプ及び前記アンプで増幅された検出値をAD変換するAD変換器が設けられている上記1.に記載の振動検出装置。
3.前記ケースには、前記防水空間に連なり且つ上端部が加工液の液面より上方に配置されるパイプが設けられており、
前記パイプには、前記加速度センサの検出値をコンピュータへ送信するための通信ケーブルが通されている上記1.に記載の振動検出装置。
4.前記ケースは金属製である上記1.に記載の振動検出装置。
5.上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の振動検出装置を用いる振動検出方法であって、
前記底板が加工液中の前記被加工物の表面に密着するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記加速度センサにより加工液中の前記被加工物の振動を検出することを特徴とする振動検出方法。
6.加工槽内に貯留された加工液中で被加工物を切断加工するワイヤカット加工機に用いられる振幅測定装置であって、
内部に防水空間を形成するケースと、
前記防水空間内に設けられるダイヤルゲージと、
前記防水空間内にエアを供給するエア供給機構と、を備え、
前記ケースには、前記ダイヤルゲージの測定子が突出する開口が形成されているとともに、前記ダイヤルゲージの表示部を目視するための透視部が設けられており、
前記エア供給機構により前記防水空間内にエアが供給されるとともに、前記ダイヤルゲージの測定子が加工液中の前記被加工物の表面に当接するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記ダイヤルゲージの測定子により加工液中の前記被加工物の振幅を測定することを特徴とする振幅測定装置。
7.前記エア供給機構は、エアポンプと、前記エアポンプから圧送されるエアを溜めてから前記防水空間内に供給するためのタンクと、を有する上記6.に記載の振幅測定装置。
8.上記6.又は7.に記載の振幅測定装置を用いる振幅測定方法であって、
前記エア供給機構により前記防水空間内にエアが供給されるとともに、前記ダイヤルゲージの測定子が加工液中の前記被加工物の表面に当接するように前記ケースが加工液中に浸された状態で、前記ダイヤルゲージの測定子により加工液中の前記被加工物の振幅を測定することを特徴とする振幅測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の振動検出装置及び振動検出方法によれば、底板が加工液中の被加工物の表面に密着するようにケースが加工液中に浸された状態で、加速度センサにより加工液中の被加工物の振動を検出する。これにより、ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中で加速度センサが電気的ノイズの影響を受け難く被加工物の振動を安定的に検出することができる。
本発明の振幅測定装置及び振幅測定方法によれば、エア供給機構により防水空間内にエアが供給されるとともに、ダイヤルゲージの測定子が加工液中の被加工物の表面に当接するようにケースが加工液中に浸された状態で、ダイヤルゲージの測定子により加工液中の被加工物の振幅を測定する。これにより、ワイヤカット加工機の加工槽の加工液中で被加工物の振幅を安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
図1】実施形態に係る振動検出装置を備えるワイヤカット加工機の側面図である。
図2】振動検出装置の斜視図である。
図3】振動検出装置の断面図である。
図4】振動検出装置のブロック図である。
図5】他の形態に係る振動検出装置の断面図である。
図6】実施形態に係る振幅測定装置を備えるワイヤカット加工機の側面図である。
図7】振幅測定装置の斜視図である。
図8】振幅測定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0012】
<振動検出装置>
本実施形態に係る振動検出装置21は、図1及び図2に示すように、加工槽4内に貯留された加工液L(例えば、水、油など)中で被加工物Wを切断加工するワイヤカット加工機1(「ワイヤ放電加工機」とも称される。)に用いられる。なお、本実施形態では、被加工物Wとして、ワーク支持台5上で片持ち支持(一端側が固定端とされ且つ他端側が自由端とされる支持)される薄板を例示する。
【0013】
ワイヤカット加工機1は、加工槽4と、加工槽4内で被加工物Wを支持するワーク支持台5と、加工槽4及びワーク支持台5を水平方向であるX軸方向及びY軸方向に移動させる移動機構6と、ワイヤ7が張設される上ガイド8及び下ガイド9と、を備えている。移動機構6は、第1スライド機構11と、第1スライド機構11によりベッド13上でX軸方向に移動されるサドル14と、第2スライド機構12と、第2スライド機構12によりサドル14上でY軸方向に移動されるテーブル15と、を備えている。テーブル15上に加工槽4及びワーク支持台5が取り付けられている。上ガイド8は、被加工物Wのテーパ加工を可能とするように、図示しない移動機構により水平方向であるU軸方向及びV軸方向に移動される。なお、第1及び第2スライド機構11、12は、モータにより作動されるボールネジ機構で構成されている。
【0014】
振動検出装置21は、図2及び図3に示すように、内部に防水空間Sを形成するケース22を備えている。ケース22は、底板24と、底板24と対向する天板25と、底板24及び天板25の間に配置される側板26と、を備えている。側板26は筒状に形成されている。これら各板24~26で囲まれて防水空間Sが形成されている。また、ケース22は、底板24との間で被加工物Wを挟持する挟持板27を備えている。挟持板27は、ワーク支持台5上に載置される。各板24~27は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製である。即ち、ケース22は金属製である。また、底板24と側板26はボルト28により締結されており、両者24、26の間にガスケット又はOリングなどのシール部材29が設けられている。さらに、天板25と側板26はボルト28により締結されており、両者25、26の間にガスケット又はOリングなどのシール部材29が設けられている。さらに、底板24と挟持板27は、被加工物Wを挟んでボルト28により締結されている。
【0015】
なお、ケース22としては、挟持板27を備えず、図示しない公知のクランプ器具などにより底板24とワーク支持台5の間で被加工物Wを挟持するものを採用してもよい(図5参照)。また、ケース22としては、底板24と側板26あるいは天板25と側板26が一体形成されたものを採用してもよい。さらに、ケース22としては、合成樹脂製のものを採用してもよい。この場合、ケース22に電気的ノイズを遮蔽する遮蔽シート、遮蔽膜などを設けることが好ましい。
【0016】
防水空間S内には、ケース22の底板24上に加速度センサ23が設けられている。加速度センサ23は、加工液L中の被加工物Wの振動を検知して振動に比例した電気信号(検出値)を出力する。また、加速度センサ23は、その検出面が底板24の表面に密着するように底板24上にネジ止め、接着などにより取り付けられている。なお、加速度センサ23としては、例えば、圧電型、サーボ型、ひずみゲージ式、半導体式加速度センサなどを用いることができる。
【0017】
防水空間S内には、加速度センサ23の検出値を増幅するアンプ31が設けられている。また、防水空間S内には、アンプ31で増幅されたアナログ信号をデジタル信号にAD変換するAD変換器32が設けられている。アンプ31及びAD変換器32は、底板24上に支持部33により支持された基板34に設けられている(図4参照)。基板34と加速度センサ23は通信ケーブル60を介して連絡されている。
【0018】
ケース22には、防水空間Sに連なり且つ上端部が加工液Lの液面より上方に配置されるパイプ36が設けられている(図1参照)。パイプ36内には、加速度センサ23の検出値(具体的にAD変換器32でAD変換された検出値)をコンピュータ37へ送信するための通信ケーブル38が通されている。通信ケーブル38は、一端側が基板34に接続されており、他端側がコンピュータ37と接続可能とされている。なお、コンピュータ37としては、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット型携帯端末、スマートフォンなどを用いることができる。さらに、通信ケーブル38としては、例えば、USBケーブルなどを用いることができる。
【0019】
パイプ36は、天板25にネジ止めにより接続される第1パイプ36aと、第1パイプ36aの外周にバンド39により縛り付けられる第2パイプ36bと、を備えている。第1パイプ36aは硬質材料(例えば、金属、硬質樹脂など)により形成されている。また、第1パイプ36aと天板25の取付孔との間には防水シール(図示省略)が設けられている。さらに、第2パイプ36bは軟質材料(例えば、軟質樹脂、ゴムなど)により形成されている。ただし、パイプ36としては、2つのパイプ36a、36bからなる以外に、1つのパイプ又は3つ以上のパイプからなるものを採用してもよい。
【0020】
次に、上記構成の振動検出装置21を用いる振動検出方法について説明する。先ず、図示しない公知のクランプ器具などにより被加工物W及び振動検出装置21を加工槽4内のワーク支持台5上に固定する。その後、加工槽4内を加工液Lで満たすと、ケース22及びケース22の底板24が密着する被加工物Wが加工槽4内の加工液L中に浸された水没状態とされる(図1参照)。この水没状態において、ワイヤカット加工機1は、移動機構6によりワーク支持台5をX軸方向及びY軸方向に移動させることで、加工液L中の被加工物W(金属)とワイヤ7に通した電流との間の放電により被加工物Wを切断加工する。
【0021】
ワイヤカット加工機1の加工中において、振動検出装置21では、ケース22の防水空間S内の加速度センサ23により加工液L中の被加工物Wの振動(例えば、10kHz未満の低周波数の振動)が検出され、その検出値がアンプ31により増幅されてからAD変換器32によりAD変換され、通信ケーブル38を介してコンピュータ37に送られる。そして、コンピュータ37においては、FFT(fast Fourier transform)などの信号処理方式により振動解析が行われる。
【0022】
ここで、ワイヤカット加工機1の加工条件(例えば、被加工物Wの厚さ、加工スピードなど)によっては、加工液L中の被加工物Wの振動によりワイヤ7と被加工物Wが接触してワイヤ7の切断が発生してしまうことがある。これに対して、上記の振動解析によって、ワイヤ7の押し・引きを高い時間分解能で計測することで、ワイヤ7の切断が発生する加工条件(即ちワイヤ7の切断予兆)を判定することが可能となる。その結果、薄板である被加工物Wの加工にあたって経験のないオペレータでもワイヤカット加工の適切な加工スピードを設定し、作業効率を最大化することが可能となる。
【0023】
以上より、本実施形態の振動検出装置21によれば、内部に防水空間Sを形成するケース22を備え、防水空間S内には、ケース22の底板24上に加速度センサ23が設けられている。そして、底板24が加工液中の被加工物Wの表面に密着するようにケース22が加工液L中に浸された状態で、加速度センサ23により加工液L中の被加工物Wの振動を検出する。これにより、ワイヤカット加工機1の加工槽4の加工液L中で加速度センサ23が電気的ノイズの影響を受け難く被加工物Wの振動を安定的に検出することができる。
【0024】
また、本実施形態では、防水空間S内には、加速度センサ23の検出値を増幅するアンプ31及びアンプ31で増幅された検出値をAD変換するAD変換器32が設けられている。これにより、加速度センサ23の近傍にアンプ31及びAD変換器32が配置されるため、これら23、31、32の信号経路が電気的ノイズの影響を受け難くできる。
【0025】
また、本実施形態では、ケース22には、防水空間Sに連なり且つ上端部が加工液Lの液面より上方に配置されるパイプ36が設けられており、パイプ36には、加速度センサ23の検出値をコンピュータ37へ送信するための通信ケーブル38が通されている。これにより、加速度センサ23の検出値をコンピュータ37へ安定的に送信することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、ケース22は金属製である。これにより、簡易且つ安価な構造のケース22により加速度センサ23が電気的ノイズの影響を受け難くできる。
【0027】
<振幅測定装置>
本実施形態に係る振幅測定装置41は、図6及び図7に示すように、加工槽4内に貯留された加工液L(例えば、水、油など)中で被加工物Wを切断加工するワイヤカット加工機1(ワイヤ放電加工機とも称される。)に用いられる。なお、本実施形態では、被加工物W及びワイヤカット加工機1として、上記の振動検出装置21で説明したものを採用し、それらの詳説は省略する。
【0028】
振幅測定装置41は、図7及び図8に示すように、内部に防水空間Sを形成するケース42と、防水空間S内に設けられるダイヤルゲージ43と、防水空間S内にエアを供給するエア供給機構44と、を備えている。
【0029】
ケース42は、底板46と、底板46と対向する天板47と、底板46及び天板47の間に配置される側板48と、を備えている。側板48は筒状に形成されている。これら各板46~48で囲まれて防水空間Sが形成されている。また、各板46~48は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製である。即ち、ケース42は金属製である。また、底板46と側板48はボルト49により締結されている。さらに、天板47と側板48はボルト50により締結されている。
【0030】
ケース42(具体的に底板46)には、ダイヤルゲージ43の測定子55が防水空間Sの外側に突出する開口51が形成されている。また、ケース42(具体的に天板47)には、ダイヤルゲージ43の表示部56を目視するための透視部52が設けられている。透視部52は、天板47に形成された透視孔47aと、透視孔47aを覆う透明又は半透明の覆い部材54と、により構成されている。また、覆い部材54は、ボルト50により天板47に取り付けられている。さらに、ケース42には、ワーク支持台5上に振幅測定装置41を固定するための公知のスタンド53が設けられている(図7参照)。
【0031】
なお、ケース42としては、底板46と側板48との間及び天板47と側板48の間にガスケット又はOリングなどのシール部材を設けたものを採用してもよい。また、ケース42としては、底板46と側板48あるいは天板47と側板48が一体形成されたものを採用してもよい。さらに、ケース42としては、合成樹脂製のものを採用してもよい。
【0032】
ダイヤルゲージ43は、測定子55と、測定子55の測定値を表示する表示部56と、を有している。また、ダイヤルゲージ43は、測定子55がケース42の開口51から突出し且つ表示部56が透視部52に臨むようにケース42に取り付けられている。なお、ダイヤルゲージ43としては、例えば、テコ式、スピンドル式ダイヤルゲージを用いることができる。さらに、ダイヤルゲージ43としては、例えば、アナログ式、デジタル式の表示部56を有するものを用いることができる。
【0033】
エア供給機構44は、ケース42の開口51からの防水空間S内への加工液Lの侵入を抑制し且つダイヤルゲージ43の測定子55による測定を阻害しないように防水空間S内にエアを供給する。エア供給機構44は、エアポンプ57と、エアポンプ57から圧送されるエアを溜めてから防水空間S内に供給するためのタンク58と、を有している。タンク58とケース42の防水空間Sはエアチューブ59で連絡されている。エアチューブ59の先端部(即ちエア噴射口)は、防水空間S内で開口51に指向するようにケース42に取り付けられている。
【0034】
次に、上記構成の振幅測定装置41を用いる振幅測定方法について説明する。先ず、図示しない公知のクランプ器具などにより被加工物W及び振幅測定装置41を加工槽4内のワーク支持台5上に固定する。このとき、振幅測定装置41は、ダイヤルゲージ43の測定子55が被加工物Wの表面に当接するように配置される。さらに、エア供給機構44により防水空間S内にエアが供給される(図8中に破線矢印で示す。)。その後、加工槽4内を加工液Lで満たすと、ケース42及びダイヤルゲージ43の測定子55が当接する被加工物Wが加工槽4内の加工液L中に浸された水没状態とされる(図6参照)。この水没状態において、ワイヤカット加工機1は、移動機構6によりワーク支持台5をX軸方向及びY軸方向に移動させることで、加工液L中の被加工物W(金属)とワイヤ7に通した電流との間の放電により被加工物Wを切断加工する。
【0035】
ワイヤカット加工機1の加工中において、振幅測定装置41では、ダイヤルゲージ43の測定子55により加工液L中の被加工物Wの振幅(即ち変位)が測定され、その測定値がダイヤルゲージ43の表示部56に表示される。オペレータは、ケース42の透視部52を介して表示部56に表示された振幅の測定値を読み取る。
【0036】
ここで、ワイヤカット加工機1の加工条件(例えば、被加工物Wの厚さ、加工スピードなど)によっては、加工液L中の被加工物Wの振動によりワイヤ7と被加工物Wが接触してワイヤ7の切断が発生してしまうことがある。これに対して、上記のオペレータによる振幅(異常振幅)の読み取りにより、ワイヤ7の切断が発生する加工条件(即ちワイヤ7の切断予兆)を判定することが可能となる。その結果、薄板である被加工物Wの加工にあたって経験のないオペレータでもワイヤカット加工の適切な加工スピードを設定し、作業効率を最大化することが可能となる。
【0037】
以上より、本実施形態の振幅測定装置41によれば、内部に防水空間Sを形成するケース42と、防水空間S内に設けられるダイヤルゲージ43と、防水空間S内にエアを供給するエア供給機構44と、を備え、ケース42には、ダイヤルゲージ43の測定子55が突出する開口51が形成されているとともに、ダイヤルゲージ43の表示部56を目視するための透視部52が設けられている。そして、エア供給機構44により防水空間S内にエアが供給されるとともに、ダイヤルゲージ43の測定子55が加工液L中の被加工物Wの表面に当接するようにケース42が加工液L中に浸された状態で、ダイヤルゲージ43の測定子55により加工液L中の被加工物Wの振幅を測定する。これにより、ワイヤカット加工機1の加工槽4の加工液L中で被加工物Wの振幅を安定的に測定することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、エア供給機構44は、エアポンプ57と、エアポンプ57から圧送されるエアを溜めてから防水空間S内に供給するためのタンク58と、を有する。これにより、ダイヤルゲージ43の測定子55による測定を阻害することなくケース42の防水空間S内で効果的な防水性を発揮するようにエアを供給できる。
【0039】
尚、本発明においては、実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。すなわち、上記実施形態では、ケース22、42の全体を加工液L中に水没させる形態を例示したが、これに限定されず、例えば、ケース22、42の上部が加工液Lの液面より浮上するようにケース22、42を加工液L中に水没させる形態としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ケース22の防水空間S内にアンプ31及びAD変換器32を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、ケース22の外部にアンプ31及びAD変換器32を備える形態としてもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、通信ケーブル38(有線)により加速度センサ23の検出値をコンピュータ37へ送信する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、無線により加速度センサ23の検出値をコンピュータ37へ送信する形態としてもよい。
【0042】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ワイヤカット加工機におけるワイヤの切断予兆を図るための技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0044】
1;ワイヤカット加工機、4;加工槽、21;振動検出装置、22;ケース、23;加速度センサ、24;底板、31;アンプ、32;AD変換器、36;パイプ、37;コンピュータ、38;通信ケーブル、41;振幅測定装置、42;ケース、43;ダイヤルゲージ、44;エア供給機構、51;開口、52;透視部、55;測定子、56;表示部、57;エアポンプ、58;タンク、L;加工液、S;防水空間、W;被加工物。
図1
図2
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図8