(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070559
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】柱基礎構造の設計方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20240516BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240516BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/30 H
E04B1/58 511Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181129
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】徳山 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽司
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA46
2E125AB12
2E125AC04
2E125AC07
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG43
2E125BA32
(57)【要約】
【課題】施工性の良い非埋込み型の柱脚構造を採用しつつ、柱脚部において鉄筋コンクリート部分で力を負担し易い新規な柱基礎構造の設計方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る柱基礎構造は、鉄筋コンクリート造の基礎と、前記基礎の上に設置される鉄骨鉄筋コンクリート造の柱と、を有し、前記柱は、外周面にスタッドが設けられた鉄骨柱と、前記基礎の上に設置され、前記鉄骨柱を支持する支持材と、前記鉄骨柱及び前記支持材を被覆する鉄筋コンクリートと、を有する。本開示に係る柱基礎構造の設計方法は、前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達する力を決定する力決定ステップと、前記力に応じて、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に前記スタッドを配置するスタッド配置ステップとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の基礎と、
前記基礎の上に設置される鉄骨鉄筋コンクリート造の柱と、
を有する柱基礎構造の設計方法であって、
前記柱は、
外周面にスタッドが設けられた鉄骨柱と、
前記基礎の上に設置され、前記鉄骨柱を支持する支持材と、
前記鉄骨柱及び前記支持材を被覆する鉄筋コンクリートと
を有しており、
前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達する力を決定する力決定ステップと、
前記力に応じて、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に前記スタッドを配置するスタッド配置ステップと
を有する柱基礎構造の設計方法。
【請求項2】
請求項1に記載の柱基礎構造の設計方法であって、
前記力を前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達するのに必要とされる前記スタッドの必要本数が算出され、
前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記必要本数の前記スタッドが配置される
ことを特徴とする柱基礎構造の設計方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の柱基礎構造の設計方法であって、
前記鉄骨柱の下端の位置を設定する位置設定ステップと、
前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記力に応じた前記スタッドを配置できない場合に、前記下端の位置を再設定する再設定ステップと、
を有する柱基礎構造の設計方法。
【請求項4】
請求項3に記載の柱基礎構造の設計方法であって、
前記力を前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達するのに必要とされる前記スタッドの必要本数が算出され、
前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記必要本数の前記スタッドを配置できない場合に、前記再設定ステップが行われる
ことを特徴とする柱基礎構造の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱基礎構造の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱脚構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-167074号公報
【特許文献2】特開2001-040768号公報
【特許文献3】特開2003-184172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、鉄筋コンクリート部分で負担するせん断耐力を大きく確保するために、柱脚部(ベースプレートの近傍)の鉄筋コンクリートの外形寸法を大きくすることが記載されている。但し、この構造では、柱脚部の鉄筋コンクリートの外形が大きくなってしまう。
特許文献2,3では、埋込み型柱脚構造と比べて施工性の良い非埋込み型柱脚構造を採用することが記載されている。但し、特許文献2,3記載の構造では、鉄骨柱が柱脚部まで延びているため、柱脚部において鉄骨柱の外側の鉄筋コンクリート部分で力(曲げモーメント等)を負担することが難しい。
【0005】
本発明は、施工性の良い非埋込み型の柱脚構造を採用しつつ、柱脚部において鉄筋コンクリート部分で力を負担し易い新規な柱基礎構造の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明は、鉄筋コンクリート造の基礎と、前記基礎の上に設置される鉄骨鉄筋コンクリート造の柱と、を有する柱基礎構造の設計方法であって、前記柱は、外周面にスタッドが設けられた鉄骨柱と、前記基礎の上に設置され、前記鉄骨柱を支持する支持材と、前記鉄骨柱及び前記支持材を被覆する鉄筋コンクリートとを有しており、前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達する力を決定する力決定ステップと、前記力に応じて、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に前記スタッドを配置するスタッド配置ステップとを有する柱基礎構造の設計方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非埋込み型の柱脚構造を採用しつつ、柱脚部において鉄筋コンクリート部分で力を負担し易くした柱基礎構造を設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の柱基礎構造1の説明図である。
【
図2】
図2は、点線内の鉄筋を不図示とした説明図である。
【
図3】
図3Aは、
図1のA-A断面図であり、SRC構造部72の断面図である。
図3Bは、
図1のB-B断面図であり、RC構造部71の断面図である。
【
図4】
図4は、変形例の補強材62の説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の柱基礎構造1における曲げモーメント分布図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の柱基礎構造1の施工方法のフロー図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の柱基礎構造1の設計方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
態様1の柱基礎構造の設計方法は、鉄筋コンクリート造の基礎と、前記基礎の上に設置される鉄骨鉄筋コンクリート造の柱と、を有する柱基礎構造の設計方法であって、前記柱は、外周面にスタッドが設けられた鉄骨柱と、前記基礎の上に設置され、前記鉄骨柱を支持する支持材と、前記鉄骨柱及び前記支持材を被覆する鉄筋コンクリートとを有しており、前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達する力を決定する力決定ステップと、前記力に応じて、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に前記スタッドを配置するスタッド配置ステップとを有する柱基礎構造の設計方法である。このような柱基礎構造の設計方法によれば、非埋込み型の柱脚構造を採用しつつ、柱脚部において鉄筋コンクリートで力を負担し易くするように、柱基礎構造のスタッドを設計できる。
【0011】
態様2の柱基礎構造は、態様1の柱基礎構造の設計方法であって、前記力を前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達するのに必要とされる前記スタッドの必要本数が算出され、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記必要本数の前記スタッドが配置される。これにより、柱脚部において鉄筋コンクリートで力を負担し易くするように柱基礎構造のスタッドを設計できる。
【0012】
態様3の柱基礎構造は、態様1又は2の柱基礎構造の設計方法であって、前記鉄骨柱の下端の位置を設定する位置設定ステップと、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記力に応じた前記スタッドを配置できない場合に、前記下端の位置を再設定する再設定ステップと、を有する柱基礎構造の設計方法である。これにより、柱脚部において鉄筋コンクリートで力を負担し易くするように柱基礎構造の鉄骨柱を設計できる。
【0013】
態様4の柱基礎構造は、態様3の柱基礎構造の設計方法であって、前記力を前記鉄骨柱から前記鉄筋コンクリートに伝達するのに必要とされる前記スタッドの必要本数が算出され、前記鉄筋コンクリートに被覆される前記鉄骨柱の前記外周面に、前記必要本数の前記スタッドを配置できない場合に、前記再設定ステップが行われる。これにより、柱脚部において鉄筋コンクリートで力を負担し易くするように柱基礎構造の鉄骨柱を設計できる。
【0014】
===実施形態===
<構成>
図1は、本実施形態の柱基礎構造1の説明図である。
図2は、
図1の鉄筋コンクリート50を不図示とした説明図である。
図3Aは、
図1のA-A断面図であり、SRC構造部72の断面図である。
図3Bは、
図1のB-B断面図であり、RC構造部71の断面図である。
【0015】
柱基礎構造1は、基礎10と、柱30とを有する構造体である。本実施形態の柱基礎構造1は、例えば、地下階の無い中高層の建築物に適用される。なお、低層建築物であれば露出型の柱脚構造を採用することができるが、本実施形態の柱基礎構造1は、露出型の柱脚構造を採用することが困難な比較的高層の建築物に適用されることが想定されている。但し、本実施形態の柱基礎構造1は、低層の建築物に適用されても良いし、地下階を有する建築物に適用されても良い。
【0016】
基礎10は、鉄筋コンクリート造(RC造)により構成されている。図中に示すように、基礎10は、梁主筋12と梁補強筋13とで構成される鉄筋コンクリート造の基礎梁11を有する。基礎10(基礎梁11)には、梁主筋12と梁補強筋13とが基礎コンクリートに埋設されているともに、アンカーボルト15が設置されている。アンカーボルト15の下端は基礎10に埋設されるとともに、上端は基礎10の上面より上側に突出している。アンカーボルト15の上端には、ナットが取り付けられており、上下からナットを締結することによってベースプレート21が固定される。基礎10とベースプレート21との間には無収縮性グラウト材22(充填材)が充填されている。
【0017】
柱30は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)により構成されている。本実施形態の柱30は、基礎10よりも上に設置される。つまり、本実施形態では、非埋め込み型の柱脚構造が採用されている。鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30が基礎10よりも上に設置されることによって、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30が基礎10に埋め込まれた埋込み型の構造と比べて、施工性を向上させることができる。
【0018】
鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30は、鉄骨柱31と、支持材41と、鉄筋コンクリート50とを有する。また、柱30は、下から順に、RC構造部71と、SRC構造部72と、S構造部73とを有する。RC構造部71は、支持材41と、支持材41を被覆する鉄筋コンクリート50とにより構成された鉄筋コンクリート造の構造部である。SRC構造部72は、鉄骨柱31と、鉄骨柱31を被覆する鉄筋コンクリート50とにより構成された鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の構造部である。S構造部73は、主に鉄骨柱31により構成された鉄骨造の構造部である。
【0019】
鉄骨柱31は、柱30を構成するための柱材である。鉄骨柱31は、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30(SRC構造部72)を構成する柱材である。ここでは、鉄骨柱31の下部が鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30(SRC構造部72)を構成する。図中の鉄骨柱31の下部は、コンクリート充填鋼管構造(CFT造:Concrete Filled Steel Tube)で構成されており、鋼管にコンクリートを充填した構造である。鉄骨柱31のうち、コンクリートで充填された部位(鉄骨柱31の下部)がCFT構造部31Aとなる。ここでは、鉄骨柱31のうち、鉄筋コンクリート50で被覆される部位がCFT構造部31Aとなる。つまり、鉄骨柱31のCFT構造部31Aの上端は、鉄筋コンクリート50の上端とほぼ同じ高さである。但し、鉄骨柱31のCFT構造部31Aの上端が鉄筋コンクリート50の上端よりも上に位置していても良い。CFT造の鉄骨柱31を構成する鋼管(管状部材)は、ここでは角形であるが、円形でも良い。なお、鉄骨柱31は、CFT造でなくても良い。また、鉄骨柱31は、鋼管(管状部材)で無くても良く、例えばウェブとフランジで形成された鉄骨により構成されても良い。
【0020】
鉄骨柱31の下端は、基礎10の上面よりも上に位置している。つまり、本実施形態では、鉄骨柱31は、基礎10よりも上に設置される。このため、鉄骨柱31を基礎10に埋め込む埋込み型の柱脚構造と比べて、施工が容易になる。
【0021】
鉄骨柱31の下端には、中間プレート61が固定されている。なお、鉄骨柱31の下端と中間プレート61の上面は溶接によって接合されている。中間プレート61については後述する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、鉄骨柱31の上端31B(継ぎ目;ジョイント部分)は、2階の梁90よりも上側に配置されており、鉄骨柱31の上端31Bから鋼管内にコンクリートを充填することが可能である。鉄骨柱31の上端31Bの位置は、これに限られるものではない。鉄骨柱31のCFT構造部31Aの上端(鉄筋コンクリート50の上端)と鉄骨柱31の上端31Bとの間には、柱梁接合部311が設けられている。柱梁接合部311において、2階の梁90が鉄骨柱31に接合される。
【0023】
鉄骨柱31の外周面には、スタッド32が設けられている。スタッド32は、鉄骨柱31の外周面のうち、鉄筋コンクリート50で被覆される部位に設けられる。つまり、スタッド32は、鉄骨柱31のうちの下部に設けられる。ここでは、スタッド32は、鉄骨柱31のうちのCFT構造部31Aに設けられる。スタッド32は、鉄骨柱31の外周面から外側に突出している。言い換えると、スタッド32は、鉄骨柱31の外周面から鉄筋コンクリート50の側に突出している。
スタッド32は、鉄骨柱31と鉄筋コンクリート50との一体性を高める部材である。スタッド32が鉄骨柱31の外周に設けられることによって、鉄骨柱31で負担する力(せん断力や曲げモーメント)をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達でき、この結果、柱脚部において主に鉄筋コンクリート50に力を負担させることができる。スタッド32の配置については、後述する。
【0024】
支持材41は、基礎10の上に設置され、鉄骨柱31を支持する部材である。ここでは、支持材41は、H形鋼で構成されている。鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30の完成後の段階では、柱30にかかる力を支持材41(ここではH形鋼)が負担することは想定されていない。このため、支持材41は、鉄筋コンクリート50の打設前(仮組のとき)に地震などによって鉄骨柱31が崩れない程度の強度で鉄骨柱31を支持できれば良い。つまり、支持材41は、仮設のための部材である。したがって、支持材41は、H形鋼でなくても良く、例えばアングルのような耐力の弱い部材で構成することも可能である。但し、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱30の完成後の段階においても、支持材41が柱30にかかる力の一部を負担して、支持材41がH型柱として機能しても良い。支持材41の下端は、ベースプレート21に固定されている。なお、支持材41の下端とベースプレート21の上面は溶接によって接合されている。支持材41の上端には、中間プレート61が固定されている。なお、支持材41の上端と中間プレート61の下面は溶接によって接合されている。支持材41が中間プレート61を介さずに鉄骨柱31を支持しても良い。
【0025】
支持材41の断面積は、鉄骨柱31の断面積よりも小さい。これにより、支持材41を被覆する鉄筋コンクリート50(RC構造部71における鉄筋コンクリート50)の断面積が、鉄骨柱31を被覆する鉄筋コンクリート50(SRC構造部72における鉄筋コンクリート50)の断面積よりも大きくなり、柱脚部において鉄筋コンクリート50に力を負担させ易い構造になる。なお、既に説明した通り、本実施形態の柱基礎構造1は、鉄骨柱31で負担する力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達することによって、柱脚部において鉄筋コンクリート50に力を負担させ、柱30にかかる力(せん断力や曲げモーメント)を支持材41に負担させない構成であるため、支持材41の断面積を小さく設定することが可能な構造である。本実施形態では、支持材41の断面積が鉄骨柱31の断面積よりも小さいため、柱30を構成する資材のコストを低減させることも可能である。
【0026】
鉄筋コンクリート50は、鉄骨柱31と支持材41とを被覆する。鉄筋コンクリート50は、根巻き型の柱脚部の根巻きコンクリートを構成する。鉄筋コンクリート50には、柱主筋52と柱補強筋53(帯筋)とが埋設されている。鉄筋コンクリート50のうち、支持材41を被覆する部位がRC構造部71となり、鉄骨柱31を被覆する部位がSRC構造部72となる。鉄筋コンクリート50の上端は、2階の梁90の下端よりも下側である。RC構造部71における鉄筋コンクリート50の外形と、SRC構造部72における鉄筋コンクリート50の外形は、ほぼ同じである。これにより、鉄筋コンクリート50をストレート状に構成することができ、RC構造部71とSRC構造部72との間に段差を無くすことできるため、柱30の意匠性を向上させることができる。
【0027】
中間プレート61は、鉄骨柱31と支持材41とを連結する板状の部材である。ここでは、中間プレート61は鋼板で構成されている。なお、柱30のうち、中間プレート61から下の部位がRC構造部71となり、中間プレート61から上側の部位がSRC構造部72になる。中間プレート61は、基礎10の上面よりも上側に設置されることになる。ここでは、中間プレート61は、基礎10と梁90との間に配置されている。中間プレート61が設置される高さについては、後述する。
【0028】
中間プレート61を設けずに鉄骨柱31と支持材41とを直接連結することによって、支持材41が中間プレート61を介さずに鉄骨柱31を支持しても良い。但し、中間プレート61を介在させることによって、断面形状の異なる鉄骨柱31と支持材41とを連結することが容易になり、支持材41で鉄骨柱31を支持し易い構造になる。また、鋼管で構成された鉄骨柱31と中間プレート61とを連結することによって、鉄骨柱31と中間プレート61とで囲まれた空間にコンクリートを充填することが可能になる。
【0029】
中間プレート61の変形を抑制するため、補強材62が設けられている。補強材62は、板状の部材であり、上下方向に平行に配置されている。補強材62は、鋼管で構成された鉄骨柱31の内側に配置されており、鉄骨柱31と中間プレート61とで囲まれた空間(コンクリートが充填される空間)の底部に配置されている。補強材62は、中間プレート61の上面に配置されており、板状の補強材62の下縁によって、中間プレート61の中央部が支持材41からの力によって上側に凸になるように変形することを抑制する。
【0030】
図3Aには、補強材62が設けられた部位におけるSRC構造部72の断面図が示されている。板状の補強材62は、中間プレート61を挟んで支持材41のウェブ及びフランジの少なくとも一方の上側に配置されている。ここでは、
図3Aに示すように補強材62は支持材41のウェブに沿って配置されており、中間プレート61を挟んで支持材41のウェブの上側に配置されている。これにより、中間プレート61の変形を抑制する効果を高めることができる。
【0031】
補強材62の配置は、
図3Aに示す配置に限られるものではない。
図4は、変形例の補強材62の説明図である。
図4に示すように、十字状に板状の補強材62が配置されても良い。なお、
図4に示す配置においても、板状の補強材62は、H形鋼で構成された支持材41のウェブに沿って配置されている。これにより、中間プレート61の変形を抑制する効果を高めることができる。
なお、補強材62は、支持材41のウェブの上側に配置されていなくても良い。例えば、2枚の平行な補強材62が、H形鋼で構成された支持材41の一対のフランジの上側にそれぞれ配置されていても良い。但し、補強材62は、中間プレート61の中央部が上側に凸になる変形を抑制するものであるため、中間プレート61の中央部の上側に配置されることが望ましい。
補強材62は、柱30に設けられていなくても良い。但し、補強材62を設けることによって、コンクリートの打設前に中間プレート61が変形することを抑制することができる。
【0032】
図5は、本実施形態の柱基礎構造1における曲げモーメント分布図である。
【0033】
図中の太線で示す台形は、柱30にかかる曲げモーメントの分布を示している。ここでは、柱脚部が剛比(部材の剛性の比率)の大きい鉄筋コンクリート造(RC造)の基礎梁11にあることにより、曲げモーメント分布図の反曲点の位置が2階の梁90よりも上方となり、柱30の曲げモーメント分布形状は、1階から2階にかかる台形分布となっている。
【0034】
図中の砂地ハッチングに示す三角形(逆三角形)は、SRC構造部72における鉄骨柱31(鉄骨柱31のうちの鉄筋コンクリート50で被覆される部位;ここではCFT構造部31A)の負担分の曲げモーメントを示している。SRC構造部72の上端では、柱30にかかる曲げモーメントを鉄骨柱31が全て負担する。SRC構造部72の鉄骨柱31が負担する曲げモーメントは、下側ほど減少する。つまり、SRC構造部72では、下側ほど、鉄骨柱31が負担する曲げモーメントが減少し、鉄筋コンクリート50が負担する曲げモーメントが増加する。言い換えると、SRC構造部72では、下側ほど、柱30が負担する力に対する鉄骨柱31の負担する力の割合が減少する。本実施形態では、鉄骨柱31の下端では、鉄骨柱31が負担する力がほぼゼロになり、柱30にかかる曲げモーメントを鉄筋コンクリート50が全て負担する。このため、本実施形態では、支持材41は、柱30にかかる力を負担しない構造となる。したがって、支持材41は、鉄筋コンクリート50の打設前(仮組のとき)に地震などによって鉄骨柱31が崩れない程度の強度で鉄骨柱31を支持できれば良く、仮設部材とすることができる。
【0035】
ところで、SRC構造部72の下側ほど、鉄骨柱31が負担する力が減少し、鉄筋コンクリート50が負担する力が増加するということは、鉄骨柱31で負担する力(SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担する力)が鉄筋コンクリート50に伝達されていることを意味する。鉄骨柱31で負担する力はスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達されるため、図中の砂地ハッチングに示す三角形の斜辺の傾きは、スタッド32の数や密度によって決まることになる(それぞれのスタッド32の軸部にかかるせん断力を通じて、SRC構造部72の鉄骨柱31にかかる力が、鉄筋コンクリート50に伝達されることになる)。スタッド32の数が少なくなり、若しくはスタッド32の密度が低くなると、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達できる力が小さくなるため、図中の三角形の斜辺の傾きが緩やかになる。すなわち、スタッド32の数が少なくなり、若しくはスタッド32の密度が低くなる状況下において、鉄骨柱31の下端で鉄骨柱31の負担する力をゼロにするためには(柱30にかかる力を鉄筋コンクリート50で全て負担するためには)、SRC構造部72を長くして、鉄骨柱31の下端の位置を下げる必要が生じる。このように、本実施形態では、鉄骨柱31の下端で鉄骨柱31が負担する力がゼロになるように、鉄骨柱31にスタッド32の配置を設計したり、SRC構造部72の長さを設計したりする必要がある。このスタッド32の配置等の設計方法については後述する。
【0036】
<施工方法>
図6は、本実施形態の柱基礎構造1の施工方法のフロー図である。
【0037】
まず、基礎10の構築が行われる(S001;基礎構築ステップ)。本実施形態の基礎10は鉄筋コンクリート造(RC造)であるため、S001では、梁主筋12や梁補強筋13の配筋、型枠の設置及びコンクリートの打設などが行われる。また、S001では、アンカーボルト15も設置される。また、S001では、柱主筋52等も設置されても良い。基礎10が完成すると、基礎10の上面にフラットな面が形成され、車両や資材の搬入・設置が容易になる。
【0038】
次に、支持材41が基礎10の上に設置される(S002;支持材設置ステップ)。支持材41の下端には予めベースプレート21が固定されており、ナットを締結することによってアンカーボルト15にベースプレート21が固定され、基礎10とベースプレート21との間に無収縮性グラウト材22が充填される。なお、支持材41の上端に予め中間プレート61も固定されていても良い(更に、後述するように、中間プレート61の上面に補強材62が固定されていても良い)。
【0039】
次に、鉄骨部材の設置(建て方)が行われる(S003)。このとき、中間プレート61の上に鉄骨柱31が配置され、中間プレート61の上面と鉄骨柱31の下端との間が溶接によって接合され、鉄骨柱31が中間プレート61を介して支持材41に支持される(鉄骨柱支持ステップ)。なお、鉄骨柱31の下端が中間プレート61の上面に溶接されることによって、鉄骨柱31の底部に、鉄骨柱31と中間プレート61とで囲まれた空間(後述するS004でコンクリートが充填される空間)が形成されることになる。
【0040】
【0041】
図7Aに示すように、補強材62が中間プレート61の上面に溶接されており、中間プレート61の上の補強材62が鉄骨柱31(鋼管)の内側に配置されるように、鉄骨柱31が中間プレート61の上に配置され、中間プレート61の上面と鉄骨柱31の下端との間が溶接によって接合される。若しくは、
図7Bに示すように、補強材62が鉄骨柱31(鋼管)の内側で鉄骨柱31に予め溶接された状態で、鉄骨柱31が中間プレート61の上に配置され、中間プレート61の上面と鉄骨柱31の下端との間が溶接によって接合される。
図7Aの補強材62の設置方法の場合、補強材62は、中間プレート61に直接固定されており、中間プレート61の変形を抑制し易い構造となる。一方、
図7Bの補強材62の設置方法の場合、補強材62は中間プレート61に直接固定されないものの、補強材62の下端が中間プレート61の直上に配置されるため、板状の補強材62の下縁によって、中間プレート61の変形(上側に凸になるような変形)を抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、鉄骨柱31が基礎10よりも上に位置している。このため、鉄骨柱31を基礎10に埋め込む埋込み型の構造と比べて、施工性を向上させることができる。なお、本実施形態では、鉄骨柱31の下端が基礎10よりも上に位置しているが、支持材41によって基礎10に対して鉄骨柱31を支持することができるため、鉄骨柱31を容易に設置することができる。また、鉄骨柱31を含む鉄骨部材の組み立て作業(建て方作業)では、基礎10のフラットな面に搬入したクレーンを用いて鉄骨建て方を行うことが可能である。このような理由からも、本実施形態では施工性を向上させることができる。
【0043】
鉄骨柱31の下端が中間プレート61の上面に溶接され、鉄骨柱31が支持材41に支持された後、鉄骨柱31の内部にコンクリートが充填される(S004;コンクリート充填ステップ)。鉄骨柱31の内部にコンクリートを投入すると、鉄骨柱31と中間プレート61とで囲まれた空間の底部からコンクリートが充填されることになる。本実施形態では、少なくとも鉄筋コンクリート50の上端となる高さまで、鉄骨柱31の内部にコンクリートが充填される。鋼管で構成された鉄骨柱31の内部にコンクリートが充填されることによって、鉄骨柱31の下部がCFT構造部31A(Concrete Filled Steel Tube)となる。
【0044】
本実施形態では、鉄骨柱31の上端31B(継ぎ目;ジョイント部分;
図1参照)から鉄骨柱31の内部にコンクリートを充填することが可能である。また、コンクリートの充填前に鉄骨柱31の上端31Bと上の鉄骨柱31との間が溶接される場合であっても、鉄骨柱31にコンクリート充填用の穴を設ければ、鉄骨柱31の内部にコンクリートを充填することが可能である。また、コンクリートの投入口(鉄骨柱31の上端31Bやコンクリート充填用の穴)からカメラを挿入することによって、鉄骨柱31の底部をカメラで確認しながらコンクリートの充填の様子を観察しても良い。
【0045】
鉄骨柱31にコンクリートが充填された後(言い換えると、鉄骨柱31の下部にCFT構造部31Aが形成された後)、鉄骨柱31及び支持材41を被覆するように鉄筋コンクリート50を打設する(S005;コンクリート打設ステップ)。なお、鉄筋コンクリート50の柱主筋52や柱補強筋53の配筋、型枠の設置などの作業はS001~S004の作業工程の間、若しくはS004の作業後に行われる。鉄骨柱31及び支持材41を被覆するようにコンクリートを打設することによって、鉄筋コンクリート50が形成され、これにより、本実施形態の柱基礎構造1が完成する。
【0046】
<設計方法>
図8は、本実施形態の柱基礎構造1の設計方法のフロー図である。なお、図中に示す各処理は、コンピューターのプロセッサーが設計プログラムを実行することにより実現される。また、以下の説明において、各種の設定(例えばSRC構造部72の長さや、スタッドの径や間隔などの設定)は、設計プログラムを実行するコンピューターに設定値を入力することによって行われる。コンピューターへの設定値の入力は、入力装置(キーボードなど)によって行われても良いし、他の計算処理プログラムから受け渡されても良い。
【0047】
まず、SRC構造部72の長さが設定される(S101)。既に説明した通り、SRC構造部72は、鉄骨柱31と鉄筋コンクリート50とにより構成された鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の構造部である。S101において、SRC構造部72における鉄骨柱31(鉄筋コンクリート50に被覆される鉄骨柱31)の各種寸法が設定され、鉄骨柱31の下端の位置などが設定される(下端位置設定ステップ)。S101における設定では、鉄骨柱31の下端の位置は、基礎10の上端(上面)と2階の梁90の下端との中間の位置(階高の半分の高さの位置)に設定される。なお、S101では、鉄骨柱31を構成する鋼管の幅などの寸法の設定も行われても良い。S101において、スタッド32が配置される鉄骨柱31の外周面の寸法(上下方向及び水平方向の寸法)が規定されるとともに、当該外周面の面積が規定されることになる。
【0048】
次に、柱30にかかる外力が決定される(S102)。例えば、柱基礎構造1を採用した建築物に対する構造計算が行われることによって、柱30にかかる外力として、曲げモーメントやせん断力が決定される。ここでは、S102において、
図5の太線の台形に示すように柱30にかかる曲げモーメントが決定されるとともに、柱30にかかるせん断力も決定される。また、S102では、
図5の砂地ハッチングの三角形(逆三角形)に示すように、SRC構造部72における鉄骨柱31(鉄筋コンクリート50に被覆される鉄骨柱31)が負担する力が決定される。既に説明した通り、SRC構造部72の上端では、柱30にかかる力を鉄骨柱31が全て負担しており、S102では、SRC構造部72の上端で柱30(鉄骨柱31)にかかる力が決定されることになる(例えば、S102において、
図5の砂地ハッチングの逆三角形の上辺の長さが決定されることになる)。このS102の処理では、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力(曲げモーメントやせん断力)が決定されることになる(力決定ステップ)。
【0049】
次に、スタッド32の径が設定される(S103)。スタッド32の径が設定されることによって、スタッド1本当たりのせん断耐力(スタッド耐力)が設定されることになる。なお、日本建築学会・各種合成構造設計指針より、1本当たりのせん断耐力qsは次式の通りである。
【0050】
【0051】
次の表に示すように、スタッド32の径が設定されると、スタッド1本当たりのせん断耐力qsを決定することができる。
【0052】
【0053】
次に、スタッド32の本数が算出される(S104)。ここでは、S102で決定した外力と、S104で設定したスタッド1本当たりのせん断耐力(スタッド耐力)とに基づいて、必要とされるスタッド32の本数(必要本数)が算出される。例えば、S102で決定したせん断力(単位:N)をS104で設定したスタッド耐力(単位:N/本)で除算することによって、スタッド32の必要本数(単位:本)が算出される。このS104の処理では、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力(曲げモーメントやせん断力)を伝達するのに必要となるスタッド32の本数(必要本数)が算出されることになる。
【0054】
次に、スタッド32の間隔が設定される(S105)。ここでは、柱30の軸方向(上下方向)におけるスタッド32の間隔を「ピッチ」と呼び、ピッチに直交する方向(水平方向)におけるスタッド32の間隔を「ゲージ」と呼ぶ。ピッチ及びゲージには、それぞれ制限がある。スタッド32の径(軸径)をdとしたとき、ピッチは、7.5×d以上かつ60cm以下に制限されている。また、ゲージは、5×d以上に制限されている。このように制限された範囲内にピッチ及びゲージが収まるように、スタッド32の間隔が設定されることになる。なお、S105において、鉄骨柱31の外周面のスタッド32の密度が規定されることになる。S105では、鉄骨柱31の外周面でのスタッド32の配置パターン(配置ルール)が設定されることになる。
【0055】
次に、SRC構造部72における鉄骨柱31の外周面にスタッド32を配置可能か否かが判断される(S106)。既に説明した通り、S101において、鉄骨柱31のスタッド32が設けられる外周面の寸法(上下方向及び水平方向の寸法)が設定されており、S104においてスタッド32の必要本数が求められており、S105においてスタッド32の間隔(密度)が設定されている。そして、S106の処理として、S101で設定した鉄骨柱31の外周面に、S104で求めた必要本数のスタッド32を、S105で設定した間隔で配置可能か否かが判断されることになる。言い換えると、S106の処理では、鉄骨柱31の外周面に、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力(曲げモーメントやせん断力)を伝達するのに必要な本数のスタッド32を配置可能か否かが判断されることになる。
【0056】
SRC構造部72における鉄骨柱31の外周面にスタッド32を配置できない場合(S106でNO)、SRC構造部72の長さが再設定されることになる(S107;再設定ステップ)。具体的には、SRC構造部72における鉄骨柱31の上下方向の寸法が長くなるように、つまり、鉄骨柱31の下端の位置が下がるように、鉄骨柱31の寸法が再設定される。なお、SRC構造部72における鉄骨柱31の上下方向の寸法を長くし、鉄骨柱31の下端の位置を下げることによって、鉄骨柱31の外周面に配置可能なスタッド32の本数を増加することができ、これにより、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達できる力を増加させることができる。そして、S106の判断がYESになるまで、S102~S107の処理が繰り返される。
【0057】
SRC構造部72における鉄骨柱31の外周面にスタッド32を配置可能である場合(S106でYES)、各処理で設定した設定値が保存され(S108)、処理を終了する。これにより、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力に応じたスタッド32の配置が決定されることになる(スタッド配置ステップ)。なお、S108で保存される設定値には、S101又はS107で設定された鉄骨柱31の下端の位置や、スタッド32の配置に関する設定値(S103で設定したスタッド32の径や、S105で設定されたスタッド32の間隔(ピッチ及びゲージ)など)が含まれる。
【0058】
ところで、既に説明した通り、本実施形態の柱基礎構造1は、SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担していた力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達させることによって、SRC構造部72の下側ほど、鉄骨柱31が負担する力が減少し、鉄筋コンクリート50が負担する力が増加する。このような柱基礎構造1について、上記の設計方法では、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達する力を決定し(S102;力決定ステップ)、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達する力に応じて、鉄筋コンクリート50に被覆される鉄骨柱31の外周面にスタッド32を配置することを行う(スタッド配置ステップ)。これにより、SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担していた力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達させることができるように、柱基礎構造1のスタッド32を設計することができる。つまり、上記の設計方法によれば、鉄骨柱31の下端では鉄骨柱31が負担する力がほぼゼロになり、柱30にかかる力を鉄筋コンクリート50が全て負担するように、柱基礎構造1のスタッド32を設計することができる。
【0059】
また、上記の設計方法では、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力を伝達するのに必要とされるスタッド32の必要本数が算出され(S104)、このように算出された必要本数のスタッド32が鉄骨柱31(鉄筋コンクリート50に被覆される鉄骨柱31)の外周面に配置されることになる。これにより、SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担していた力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達させることができるように、柱基礎構造1のスタッド32を設計することができる。
【0060】
また、上記の設計方法では、鉄骨柱31の下端の位置が設定されるとともに(S101;下端位置設定ステップ)、鉄筋コンクリート50に被覆される鉄骨柱31の外周面に、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力に応じたスタッド32を配置できない場合に(S106でNO)、鉄骨柱31の下端の位置が再設定されることになる(S107;再設定ステップ)。これにより、SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担していた力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達させることができるように、柱基礎構造1の鉄骨柱31を設計することができる。
なお、
図8に示す設計方法では、柱基礎構造1のスタッド32の設計とともに、鉄骨柱31の設計が行われることになる。但し、SRC構造部72の長さが十分に確保されている状況であれば(必要本数のスタッド32を配置できる程度に鉄骨柱31の下端が下側に配置されている状況であれば)、柱基礎構造1のスタッド32の設計だけを行う設計方法で良く、鉄骨柱31の再設定は不要になる。
【0061】
上記の設計方法では、鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達すべき力を伝達するのに必要とされるスタッド32の必要本数が算出され(S104)、このように算出された必要本数のスタッド32を鉄骨柱31の外周面に配置できない場合に(S106でNO)、鉄骨柱31の下端の位置が再設定されることになる(S107;再設定ステップ)。これにより、SRC構造部72の上端で鉄骨柱31が負担していた力をスタッド32を介して鉄筋コンクリート50に伝達させることができるように、柱基礎構造1の鉄骨柱31を設計することができる。
【0062】
なお、前述のS106では、S101で設定した鉄骨柱31の外周面に、S104で求めた必要本数のスタッド32を、S105で設定した間隔で配置可能か否かが判断されている。但し、必要本数のスタッド32を鉄骨柱31の外周面に配置可能か否かの判断は、これに限られるものではない。例えば、S101で設定した鉄骨柱31の外周面にS105で設定した間隔でスタッド32を配置した場合におけるスタッド32の本数(配置可能本数)を算出し、この配置可能本数とS104で求めたスタッド32の必要本数とを比較することによって、SRC構造部72における鉄骨柱31の外周面にスタッド32を配置可能か否かが判断されても良い。この場合、配置可能本数が必要本数以上であれば、S106の判断はYESになり、配置可能本数が必要本数未満であれば、S106の判断はNOになる。
【0063】
また、前述の設計方法では、必要本数のスタッド32を鉄骨柱31の外周面に配置可能か否かを判断しているが、スタッド32や鉄骨柱31の再設定の要否判断は、これに限られるものではない。例えば、S102で決定した力(せん断力又は曲げモーメント)と、鉄骨柱31の外周面に配置したスタッド32が鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達できる力とを比較することによって、スタッド32や鉄骨柱31の再設定の要否判断が行われても良い。例えば、S101で設定した鉄骨柱31の外周面にS105で設定した間隔でスタッド32を配置した場合におけるスタッド32の本数(配置可能本数)を算出し、この配置可能本数のスタッド32を鉄骨柱31の外周面に配置したときに鉄骨柱31から鉄筋コンクリート50に伝達できる力を算出し、このように算出された力がS102で決定した力(せん断力又は曲げモーメント)より大きければ、S106の判断をYESとし、小さければS106の判断をNOとしても良い。
【0064】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 柱基礎構造、10 基礎、11 基礎梁、
12 梁主筋、13 梁補強筋、
15 アンカーボルト、21 ベースプレート、22 無収縮性グラウト材、
30 柱、31 鉄骨柱、
31A CFT構造部、31B 上端、311 柱梁接合部、
32 スタッド、41 支持材、
50 鉄筋コンクリート、52 柱主筋、53 柱補強筋、
61 中間プレート、62 補強材、
71 RC構造部、72 SRC構造部、73 S構造部、
90 梁