(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007056
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】導電性ゴム
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240111BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240111BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L83/04
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108242
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒林 正士
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC00W
4J002AC00X
4J002BD121
4J002CP031
4J002DA036
4J002DA066
4J002DA076
4J002DC006
4J002DD047
4J002DD048
4J002EK007
4J002EK008
4J002EZ007
4J002EZ008
4J002FA036
4J002FA056
4J002FA116
4J002FD016
4J002FD110
4J002FD116
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD150
4J002GQ00
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】電気抵抗率が低く且つ圧縮永久ひずみが小さい導電性ゴムを提供する。
【解決手段】導電性ゴムは、ポリマーに導電材が配合された架橋済みの導電性マトリクスゴムと、前記導電性マトリクスゴムに分散した架橋済みの粒状ゴムとを含有する。導電性ゴムは、電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であり且つ試験時間を70時間とした常温での圧縮永久ひずみが10%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーに導電材が配合された架橋済みの導電性マトリクスゴムと、前記導電性マトリクスゴムに分散した架橋済みの粒状ゴムと、を含有する導電性ゴムであって、
電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であり且つ試験時間を70時間とした常温での圧縮永久ひずみが10%以下である導電性ゴム。
【請求項2】
請求項1に記載された導電性ゴムにおいて、
前記粒状ゴムの含有量が15体積%以上75体積%以下である導電性ゴム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された導電性ゴムにおいて、
前記導電性マトリクスゴムの前記ポリマーがシリコーンゴムを含む導電性ゴム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された導電性ゴムにおいて、
前記導電性マトリクスゴムの前記導電材がカーボンブラックを含む導電性ゴム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された導電性ゴムにおいて、
前記導電性マトリクスゴム及び前記粒状ゴムが同一架橋系である導電性ゴム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された導電性ゴムにおいて、
前記粒状ゴムが廃棄ゴムを含む導電性ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
電極、可撓性配線、導電性ゴムロール、導電性ゴムマット等において、導電性ゴムが使用されている。例えば、特許文献1には、加硫粒状ゴム、ポリオレフィン、及びカーボンブラックを含有する導電性エラストマー組成物が開示されている。特許文献2には、粉砕されたゴムチップと、結合剤のウレタン樹脂と、導電性カーボンブラックとを含有するゴムチップ組成物が開示されている。特許文献3には、架橋シリコーンゴムと、シリコーンゴム以外の未架橋有機ゴムと、導電性付与剤と、導電性付与剤とを含有する導電性ゴム組成物が開示されている。特許文献4には、電子写真機器用導電性ロールの軸体の外周に配置された導電性ゴム弾性体層であって、極性ゴムと、非極性ゴムと、分散剤とを含有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-293241号公報
【特許文献2】特開平2-261843号公報
【特許文献3】特許第3718905号公報
【特許文献4】特許第6343579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電性ゴムにおいて、電気抵抗率を低くして高導電性を得るには、カーボンブラック等の導電材の配合量を多くすればよい。しかしながら、その場合、加工性が悪くなるので、その改善のためにオイルを大量に配合する必要がある。ところが、オイルを大量に配合すると、今度は圧縮永久ひずみが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、電気抵抗率が低く且つ圧縮永久ひずみが小さい導電性ゴムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマーに導電材が配合された架橋済みの導電性マトリクスゴムと、前記導電性マトリクスゴムに分散した架橋済みの粒状ゴムとを含有する導電性ゴムであって、電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であり且つ試験時間を70時間とした常温での圧縮永久ひずみが10%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、架橋済みの導電性マトリクスゴムに架橋済みの粒状ゴムが分散していることにより、電気抵抗率を低くし且つ圧縮永久ひずみを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係る導電性ゴムは、架橋済みの導電性マトリクスゴムと、その導電性マトリクスゴムに分散した架橋済みの粒状ゴムとを含有する。
【0010】
導電性マトリクスゴムは、ベースの第1ポリマーに、導電材及び第1架橋剤を含むゴム配合剤が配合され、それが加熱及び加圧されて第1ポリマーが第1架橋剤で架橋した架橋済みゴムである。導電性ゴムにおける導電性マトリクスゴムの含有量は、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、好ましくは25体積%以上85体積%以下である。
【0011】
第1ポリマーとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。第1ポリマーは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、シリコーンゴムを含むことがより好ましい。導電性マトリクスゴムにおける第1ポリマーの含有量は、例えば50質量%以上70質量%以下である。
【0012】
導電材としては、例えば、炭素系導電材、金属系導電材等が挙げられる。炭素系導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの粒子状炭素系導電材;カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、炭素繊維などの繊維状炭素系導電材等が挙げられる。金属系導電材としては、例えば、金、銀、銅、その他の金属、及びそれらの合金の金属粒子が挙げられる。導電材は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、粒子状炭素系導電材を含むことがより好ましい。導電性マトリクスゴムにおける導電材の含有量は、例えば20質量%以上40質量%以下である。
【0013】
第1架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、スズ塩、白金族金属系化合物等が挙げられる。第1架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、有機過酸化物を含むことがより好ましい。
【0014】
なお、導電材及び第1架橋剤以外のゴム配合剤としては、例えば、シリコーンオイルなどのオイル類、シリカ等が挙げられる。
【0015】
粒状ゴムは、ベースの第2ポリマーに第2架橋剤が配合され、その後、加熱及び加圧されて第2ポリマーが第2架橋剤で架橋した塊状ゴムが粉砕された粒状の架橋済みゴムである。
【0016】
第2ポリマーとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。第2ポリマーは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、シリコーンゴムを含むことがより好ましい。第2ポリマーは、同様の観点から、第1ポリマーと同種のポリマーであることが好ましい。したがって、第1及び第2ポリマーは、いずれもシリコーンゴムであることが好ましい。なお、この場合、第1ポリマーのシリコーンゴムと第2ポリマーのシリコーンゴムとは、同一ポリマーであっても、同一ポリマーでなくても、どちらでもよい。
【0017】
第2架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、スズ塩、白金族金属系化合物等が挙げられる。第2架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。第2架橋剤は、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、第1架橋剤と同種の架橋剤であることが好ましい。つまり、導電性マトリクスゴム及び粒状ゴムが同一架橋系であることが好ましい。したがって、第1及び第2架橋剤は、いずれも有機過酸化物であることが好ましい。なお、この場合、第1架橋剤の有機過酸化物と第2架橋剤の有機過酸化物とは、同一物質であっても、同一物質でなくても、どちらでもよい。
【0018】
なお、粒状ゴムには、導電材が配合されていてもよく、また、他のゴム配合剤が配合されていてもよい。
【0019】
粒状ゴムは、資源の再利用の観点から、使用済みゴム製品から回収された廃棄ゴムを含むことが好ましい。
【0020】
粒状ゴムの粒径は、例えば125μm以上2mm以下である。粒状ゴムは、JIS Z8801-1:2019に規定される目開き1mmのふるいを透過する大きさであることが好ましい。
【0021】
導電性ゴムにおける粒状ゴムの含有量は、低電気抵抗率及び低圧縮永久ひずみを得る観点から、好ましくは15体積%以上75体積%以下である。
【0022】
実施形態に係る導電性ゴムは、第1ポリマーに、導電材及び第1架橋剤を含むゴム配合剤とともに粒状ゴムを配合して混練することにより未架橋ゴム組成物を調製し、その未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して第1ポリマーを第1架橋剤で架橋させることにより得ることができる。
【0023】
以上の構成の実施形態に係る導電性ゴムによれば、架橋済みの導電性マトリクスゴムに架橋済みの粒状ゴムが分散していることにより、電気抵抗率を低くし且つ圧縮永久ひずみを小さくすることができる。
【0024】
実施形態に係る導電性ゴムの電気抵抗率は、1.0×103Ω・cm以下であり、好ましくは5.0×102Ω・cm以下、より好ましくは1.0×102Ω・cm以下である。この電気抵抗率は、後述の実施例に示す方法により求められるものである。
【0025】
実施形態に係る導電性ゴムの試験時間を70時間とした常温での圧縮永久ひずみは、10%以下であり、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。この圧縮永久ひずみは、JIS K6262:2013に基づいて、試験時間を70時間及び試験温度を常温(23±2℃)として測定されるものである。
【0026】
実施形態に係る導電性ゴムは、例えば、電極、可撓性配線、導電性ゴムロール、導電性ゴムマット等の導電性ゴム製品を形成する材料として用いることができる。
【実施例0027】
(導電性ゴム)
以下の実施例1乃至5及び比較例の導電性ゴムを作製した。それぞれの構成は、表1にも示す。
【0028】
<実施例1>
導電性マトリクスゴムの形成材料として、導電材のカーボンブラックが配合された未架橋シリコーンゴムである市販の導電性コンパウンド(KE-3601SB-U 信越化学工業社製)及びPO(有機過酸化物)架橋剤(C-8 信越化学工業社製)を準備した。
【0029】
架橋済みの粒状ゴムとして、導電材を含有していないシリコーンゴム製品の廃棄ゴムをカッターミルを用いて粉砕し、それをJIS Z8801-1:2019に規定される目開き1mmのふるいにかけて透過したものを準備した。
【0030】
導電性コンパウンド及び粒状ゴムを、それぞれ80体積%及び20体積%となるように混合するとともに、PO架橋剤を、導電性コンパウンド100質量部に対して5質量部配合した未架橋ゴム組成物を調製した。この未架橋ゴム組成物を用いてプレス成形することにより、縦130mm、横110mm、及び厚さ2mmのシート状の導電性ゴムを作製し、これを実施例1とした。
【0031】
<実施例2乃至5>
導電性コンパウンド及び粒状ゴムの混合割合を、60体積%及び40体積%、50体積%及び50体積%、40体積%及び60体積%、並びに30体積%及び70体積%としたことを除いて実施例1と同様にシート状の導電性ゴムを作製し、それぞれ実施例2乃至5とした。
【0032】
<比較例>
導電性コンパウンドのみを用いたことを除いて実施例1と同様にシート状の導電性ゴムを作製し、それぞれ比較例とした。
【0033】
【0034】
(試験方法及び試験結果)
<電気抵抗率>
実施例1乃至5及び比較例のそれぞれについて、シート状の導電性ゴムの試験片上に一対の細長い電極を平行に配置した。その電極間に電圧を変量しながら印加し、そのとき電極間に流れる電流を測定した。電流と電圧との関係を二次近似式で表し、その二次近似式における電圧5V時の傾きを抵抗値とした。そして、その抵抗値に、一対の電極間の面積を乗じるとともに厚さで除したものを電気抵抗率とした。その結果を表1に示す。
【0035】
<圧縮永久ひずみ>
実施例1乃至5及び比較例のそれぞれについて、導電性ゴムの1mm角の試験片を切り出し、JIS K6262:2013に基づいて、試験時間を70時間、圧縮率を25%、及び試験温度を常温(23±2℃)として圧縮永久ひずみを測定した。その結果を表1に示す。