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特開2024-70574レシプロ式の圧縮機ユニット及び圧縮機ユニットの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070574
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】レシプロ式の圧縮機ユニット及び圧縮機ユニットの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240516BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F04B39/00 104C
F04B39/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181160
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢司
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB05
3H003AC04
3H003BC02
3H003CA01
3H003CB01
3H003CD01
(57)【要約】
【課題】ボイルオフガスを扱う圧縮機ユニットに好ましいシール構造を実現する。
【解決手段】圧縮機ユニットは、ピストンロッド33とシリンダ部との間をシールするロッドパッキン部36と、ロッドパッキン部36にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部66と、を備える。ロッドパッキン部36は、パッキンリング部41と、パッキンリング部41を通してリークした水素ガスをリークガス排出部66に流入させる排出通路52と、排出通路52よりもクランク機構側において、水素ガスにより、ピストンロッド33との間の隙間50にガスシールを形成するガスシール部54と、ガスシール部54と排出通路52との間に配置されるパッキンリング部43と、を備える。ガスシール部54内における水素ガスの圧力は、リークガス排出部66内における水素ガスの圧力よりも高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、
吸込流路の水素ガスを圧縮する圧縮ステージと、
前記圧縮ステージを駆動するクランク機構と、
を備え、
前記圧縮ステージは、
シリンダ部と、
ピストンと、
前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキン部と、
前記シリンダ部と前記クランク機構のケースとを繋ぐアダプタ部と、
前記アダプタ部内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
前記ロッドパッキン部にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部と、
前記ロッドパッキン部に水素ガスを供給する水素ガス供給部と、
を備え、
前記ロッドパッキン部は、
前記ピストンロッドに接触してシールする少なくとも1つのパッキンリング部と、
前記リークガス排出部に接続されており、前記シリンダ部で圧縮するガスの一部であって前記パッキンリング部を通してリークした水素ガスを前記リークガス排出部に流入させる排出通路と、
前記排出通路よりも前記クランク機構側において、前記水素ガス供給部からの水素ガスの供給により、前記ピストンロッドとの間の隙間にガスシールを形成するガスシール部と、
前記ガスシール部と前記排出通路との間に配置される少なくとも1つの他のパッキンリング部と、
を備え、
前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い、圧縮機ユニット。
【請求項2】
前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記アダプタ部内における窒素ガスの圧力よりも高い、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項3】
前記圧縮ステージは、水素ガスを供給可能な他の水素ガス供給部をさらに備え、
前記アダプタ部が、その内部を圧縮室側の空間と前記クランク機構側の空間とに仕切る仕切り部を備え、
前記他の水素ガス供給部は前記圧縮室側の空間に水素ガスを供給し、
前記窒素ガス供給部は前記クランク機構側の空間に窒素ガスを供給し、
前記圧縮室側の空間における水素ガスの温度は、前記クランク機構側の空間における窒素ガスの液化温度よりも高い、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項4】
前記圧縮ステージは、
前記ガスシール部内における水素ガスの圧力P1と、前記アダプタ部の圧縮室側の空間における水素ガスの圧力P2と、前記クランク機構側の空間における窒素ガスの圧力P3との間において、圧力P1>圧力P2>圧力P3の関係が成立するように、前記水素ガス供給部、前記他の水素ガス供給部および前記窒素ガス供給部の少なくとも1つの圧力を調整する圧力調整手段をさらに備える、請求項3に記載の圧縮機ユニット。
【請求項5】
前記アダプタ部は、
前記クランク機構側の空間を形成する外周壁に窒素ガスの供給口と排出口が設けられ、
前記排出口の圧力が所定の圧力以上になると、窒素ガスを放出可能な放出側圧力調整手段をさらに備え、
前記圧縮ステージは、
前記ガスシール部における水素ガスの圧力P1と、前記アダプタ部の圧縮室側の空間における水素ガスの圧力P2と、前記クランク室側の空間内の圧力P3との間において、圧力P1>圧力P3>圧力P2の関係が成立するように、前記水素ガス供給部、前記他の水素ガス供給部および前記窒素ガス供給部の少なくとも1つの圧力を調整する供給側圧力調整手段をさらに備える、請求項3に記載の圧縮機ユニット。
【請求項6】
前記リークガス排出部は、前記吸込流路と接続されて、リークした水素ガスを前記吸込流路に戻し、
前記圧縮ステージは、前記水素ガス供給部と吐出流路とを繋ぎ、前記圧縮ステージから吐出された水素ガスの一部を前記ガスシール部に送る、送りラインをさらに備える、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項7】
液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、
吸込流路の水素ガスを圧縮する圧縮ステージと、
前記圧縮ステージを駆動するクランク機構と、
を備え、
前記圧縮ステージは、
シリンダ部と、
ピストンと、
前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキン部と、
前記シリンダ部と前記クランク機構のケースとを繋ぐアダプタ部と、
前記アダプタ部内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
前記アダプタ部内部の他の部分に水素ガスを供給する水素ガス供給部と、
前記ロッドパッキン部にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部と、
を備え、
前記ロッドパッキン部は、
前記ピストンロッドに接触してシールする少なくとも1つのパッキンリング部と、
前記リークガス排出部に接続されており、前記シリンダ部で圧縮するガスの一部であって前記パッキンリング部を通してリークした水素ガスを前記リークガス排出部に流入させる排出通路と、
前記排出通路よりも前記クランク機構側に配置される少なくとも1つの他のパッキンリング部と、
を備え、
前記アダプタ部が、内部を複数の空間に仕切る少なくとも1つの仕切り部を備え、
前記水素ガス供給部が、前記アダプタ部内部における最も圧縮室側に位置する空間に水素ガスを供給し、
前記窒素ガス供給部が、前記アダプタ部内部における、前記最も圧縮室側に位置する空間よりも前記クランク機構側に位置する少なくとも1つの空間に窒素ガスを供給し、
前記最も圧縮室側の空間における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い、圧縮機ユニット。
【請求項8】
前記圧縮ステージは、
前記ロッドパッキン部に水素ガスを供給する別の水素ガス供給部をさらに備え、
前記ロッドパッキン部は、
前記排出通路よりも前記クランク機構側に前記別の水素ガス供給部からの水素ガスの供給により、前記ピストンロッドとの間の隙間にガスシールを形成するガスシール部をさらに備え、
前記少なくとも1つの他のパッキンリング部の一部が、前記ガスシール部と前記排出通路との間に存在し、
前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い、請求項7に記載の圧縮機ユニット。
【請求項9】
前記アダプタ部が、内部を3つの空間に仕切る2つの仕切り部を備え、
前記水素ガス供給部が、前記アダプタ部内部における最も圧縮室側に位置する空間に水素ガスを供給し、前記窒素ガス供給部が前記アダプタ部内部における最もクランク機構側に位置する空間に窒素ガスを供給し、
前記アダプタ部の中間室には、当該中間室の内部のガスを外部へ排出するベント排出部が設けられ、
前記最も圧縮室側の空間における水素ガスの圧力、および、前記最もクランク機構側に位置する空間における窒素ガスの圧力は、前記中間室の内部の圧力よりも高くなるように設定されている、請求項7に記載の圧縮機ユニット。
【請求項10】
前記リークガス排出部は、前記吸込流路と接続されて、リークした水素ガスを前記吸込流路に戻し、
前記圧縮ステージは、前記別の水素ガス供給部と吐出流路とを繋ぎ、前記圧縮ステージから吐出された水素ガスの一部を前記ガスシール部に送る、送りラインをさらに備える
請求項8に記載の圧縮機ユニット。
【請求項11】
前記窒素ガス供給部による前記アダプタ部内部への窒素ガスの供給は、前記圧縮ステージの運転中のみならず、前記圧縮ステージの停止中にも行う、請求項1または7に記載の圧縮機ユニットの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロ式の圧縮機ユニット及び圧縮機ユニットの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。また、液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)を圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。特にLH2から発生したボイルオフガスは非常に低温である。このため、圧縮機がそのままボイルオフガスを吸入する構成を採用すると、極低温に適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-172870号公報
【特許文献2】特開平7-119634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では次のような問題が指摘されている。「近年、新たなエネルギー源として、水素が注目されている。エネルギー源として水素を利用する場合にも、天然ガスのように、貯蔵および輸送時には、液化した状態とすることが想定されている。しかし、水素は、液化温度が空気の液化温度よりも低いという特性を有する。そのため、天然ガス等を対象とした往復動圧縮機といった設備をそのまま水素に適用すると、極低温の液体水素に起因する不具合が生じる可能性がある。例えば、液体水素が供給される装置の周辺に液化空気を生じさせてしまう。」
このため特許文献1では、往復動圧縮機に対する種々の構造が提案されている。例えば、往復動圧縮機は、ピストン駆動部と容器部との間に配置されて、ピストンロッドを収容する中間筒部を備える。中間筒部には、ピストン駆動部側から順に第1中間室、第2中間室及びロッドパッキン室が形成されている。第1中間室の内部圧力は、第2中間室及びロッドパッキン室の内部圧力よりも高い。ロッドパッキン室には常温の水素ガスが充填される。第1中間室には窒素ガスが充填される。ベントは第2中間室に対応する位置に設けられる。
【0005】
このような構造により、圧縮部からピストン駆動部への水素ガスの漏れを抑制することが可能であることや、極低温のガスの漏れを抑制することによりピストン駆動部を確実に動作させることが開示されている。
【0006】
しかしながら、第1中間室の内部圧力を第2中間室及びロッドパッキン室の内部圧力よりも高くしたとしても、第1中間室の窒素ガスがロッドパッキン室に流入してしまう虞がある。そして、窒素ガスが極低温の水素ガス(圧縮機の吸込ガス)に接触してしまった場合には、窒素ガスが液化してしまう可能性がある。
【0007】
ところで、特許文献2に開示される往復動圧縮機では、次のような構成が開示されている。「吐出流路7より分岐した被圧縮ガスを、ガス冷却器23にて冷却して、パッキンケース10内の冷却流路28の吐出流路側部分28aを介して冷却室22に導き、これによりピストン棒1を直接的に冷却し、その後この被圧縮ガスをパッキンケース10内の冷却流路28の吸込流路側部分28bを介して吸込流路5に戻すようなっている。」
特許文献2では、ピストン棒1を冷却することを目的としているいため、滞りなく冷却室22を被圧縮ガスが流通している。このような構造は、窒素ガスと極低温の水素ガス(圧縮機の吸込ガス)との接触を回避するという目的においては、必ずしも適当とは言えない。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液化水素のボイルオフガスを扱うレシプロ式の圧縮機ユニットに好ましいシール構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、吸込流路の水素ガスを圧縮する圧縮ステージと、前記圧縮ステージを駆動するクランク機構と、を備える。前記圧縮ステージは、シリンダ部と、ピストンと、前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキン部と、前記シリンダ部と前記クランク機構のケースとを繋ぐアダプタ部と、前記アダプタ部内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、前記ロッドパッキン部にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部と、前記ロッドパッキン部に水素ガスを供給する水素ガス供給部と、を備える。前記ロッドパッキン部は、前記ピストンロッドに接触してシールする少なくとも1つのパッキンリング部と、前記リークガス排出部に接続されており、前記シリンダ部で圧縮するガスの一部であって前記パッキンリング部を通してリークした水素ガスを前記リークガス排出部に流入させる排出通路と、前記排出通路よりも前記クランク機構側において、前記水素ガス供給部からの水素ガスの供給により、前記ピストンロッドとの間の隙間にガスシールを形成するガスシール部と、前記ガスシール部と前記排出通路との間に配置される少なくとも1つの他のパッキンリング部と、を備える。前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い。
【0010】
本発明に係る圧縮機ユニットでは、ロッドパッキン部に排出通路が設けられ、この排出通路がリークガス排出部に接続されているので、パッキンリング部を通してリークした水素ガスを排出通路及びリークガス排出部を通過して外部へ排出する。また、ロッドパッキン部に、排出通路よりもクランクケース側に水素ガスによるガスシール部を設け、当該ガスシール部内における水素ガスの圧力をリークガス排出部内の圧力よりも高くする。これにより、シリンダ部で圧縮する低温ガスである液化水素のボイルオフガス(吸込ガス)が当該ガスシール部を超えて、アダプタ部側、クランクケース側へ侵入することを防止することができ、それにより、窒素ガスの液化を防止できる。
【0011】
また、ロッドパッキン部のガスシールでは、水素ガスを利用するため、シリンダ部内へシールガスが漏洩した場合でも、違う種類のガスをシールガスとして利用した場合に比べて、吸込ガス(水素ガス)により冷却された際に生じる液化などの不測の事態を防止できる。
【0012】
前記圧縮機ユニットにおいて、前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記アダプタ部内における窒素ガスの圧力よりも高くてもよい。
【0013】
この態様では、ロッドパッキン部に設けられたガスシール部内での水素ガスの圧力が、アダプタ部内での窒素ガスの圧力よりも高いため、アダプタ部へ供給している窒素ガスが、ロッドパッキン部に設けられたガスシール部を乗り越えてしまうことを防止できる。したがって、シリンダ部で圧縮する低温ガスである液化水素のボイルオフガス(吸込ガス)のリークしたガスと、窒素ガスとが直接的に接触してしまうことがより確実に防止される。
【0014】
前記圧縮ステージは、水素ガスを供給可能な他の水素ガス供給部をさらに備えてもよい。この場合において、前記アダプタ部が、その内部を圧縮室側の空間と前記クランク機構側の空間とに仕切る仕切り部を備えてもよく、また、前記他の水素ガス供給部は前記圧縮室側の空間に水素ガスを供給し、前記窒素ガス供給部は前記クランク機構側の空間に窒素ガスを供給し、前記圧縮室側の空間における水素ガスの温度は、前記クランク機構側の空間における窒素ガスの液化温度よりも高くてもよい。
【0015】
この態様では、アダプタ部が仕切り部を備えるため、低温ボイルオフガス(吸込ガス)と窒素ガスとの接触をより確実に防止することができる。他の水素ガス供給部によって供給される圧縮室側の空間における水素ガスの温度が、クランク機構側の空間における窒素ガスの液化温度よりも高いため、窒素ガスの液化を防止できる。
【0016】
前記圧縮ステージは、前記ガスシール部内における水素ガスの圧力P1と、前記アダプタ部の圧縮室側の空間における水素ガスの圧力P2と、前記クランク機構側の空間における窒素ガスの圧力P3との間において、圧力P1>圧力P2>圧力P3の関係が成立するように、前記水素ガス供給部、前記他の水素ガス供給部および前記窒素ガス供給部の少なくとも1つの圧力を調整する圧力調整手段をさらに備えてもよい。
【0017】
この態様では、窒素ガスがクランク機構側の空間から圧縮室側の空間に流入しないため、窒素ガスがロッドパッキン部内に流入することはない。したがって、窒素ガスの液化を防止できる。
【0018】
前記アダプタ部は、前記クランク機構側の空間を形成する外周壁に窒素ガスの供給口と排出口が設けられ、前記排出口の圧力が所定の圧力以上になると、窒素ガスを放出可能な放出側圧力調整手段をさらに備えてもよい。この場合、前記圧縮ステージは、前記ガスシール部における水素ガスの圧力P1と、前記アダプタ部の圧縮室側の空間における水素ガスの圧力P2と、前記クランク室側の空間内の圧力P3との間において、圧力P1>圧力P3>圧力P2の関係が成立するように、前記水素ガス供給部、前記他の水素ガス供給部および前記窒素ガス供給部の少なくとも1つの圧力を調整する供給側圧力調整手段をさらに備えてもよい。
【0019】
この態様では、可燃性ガスである水素ガスがクランクケース側へ漏洩することをより積極的に防ぐことができる。
【0020】
前記リークガス排出部は、前記吸込流路と接続されて、リークした水素ガスを前記吸込流路に戻してもよい。この場合において、前記圧縮ステージは、前記水素ガス供給部と吐出流路とを繋ぎ、前記圧縮ステージから吐出された水素ガスの一部を前記ガスシール部に送る、送りラインをさらに備えてもよい。
【0021】
この態様では、リークした水素ガスを回収することができる。また、ガスシールのための水素ガスを別に用意しなくてもよい。
【0022】
本発明に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、吸込流路の水素ガスを圧縮する圧縮ステージと、前記圧縮ステージを駆動するクランク機構と、を備える。前記圧縮ステージは、シリンダ部と、ピストンと、前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキン部と、前記シリンダ部と前記クランク機構のケースとを繋ぐアダプタ部と、前記アダプタ部内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、前記アダプタ部内部の他の部分に水素ガスを供給する水素ガス供給部と、前記ロッドパッキン部にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部と、を備える。前記ロッドパッキン部は、前記ピストンロッドに接触してシールする少なくとも1つのパッキンリング部と、前記リークガス排出部に接続されており、前記シリンダ部で圧縮するガスの一部であって前記パッキンリング部を通してリークした水素ガスを前記リークガス排出部に流入させる排出通路と、前記排出通路よりも前記クランク機構側に配置される少なくとも1つの他のパッキンリング部と、を備える。前記アダプタ部は、内部を複数の空間に仕切る少なくとも1つの仕切り部を備え、前記水素ガス供給部は、前記アダプタ部内部における最も圧縮室側に位置する空間に水素ガスを供給し、前記窒素ガス供給部は、前記アダプタ部内部における、前記最も圧縮室側に位置する空間よりも前記クランク機構側に位置する少なくとも1つの空間に窒素ガスを供給し、前記最も圧縮室側の空間における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い。
【0023】
本発明に係る圧縮機ユニットでは、水素ガス供給部によって供給される、アダプタ部内部における最も圧縮室側に位置する空間での水素ガスの圧力が、リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高い。このため、ロッドパッキン部にリークした水素ガスが、アダプタ部における最も圧縮室側の空間に侵入することを防止できる。これにより、低温ガスである液化水素のボイルオフガスが、窒素ガスに直接的に接触してしまうことが防止され、窒素ガスの液化を防止できる。
【0024】
前記圧縮ステージは、前記ロッドパッキン部に水素ガスを供給する別の水素ガス供給部をさらに備えてもよい。この場合、前記ロッドパッキン部は、前記排出通路よりも前記クランク機構側に前記別の水素ガス供給部からの水素ガスの供給により、前記ピストンロッドとの間の隙間にガスシールを形成するガスシール部をさらに備えてもよい。また、前記少なくとも1つの他のパッキンリング部の一部が、前記ガスシール部と前記排出通路との間に存在し、前記ガスシール部内における水素ガスの圧力は、前記リークガス排出部内における水素ガスの圧力よりも高くてもよい。
【0025】
この態様では、ガスシール部により、シリンダ部内からのリークガスを防止することができる。
【0026】
前記アダプタ部は、内部を3つの空間に仕切る2つの仕切り部を備えてもよい。この場合、前記水素ガス供給部は、前記アダプタ部内部における最も圧縮室側に位置する空間に水素ガスを供給し、前記窒素ガス供給部は、前記アダプタ部内部における最もクランク機構側に位置する空間に窒素ガスを供給し、前記アダプタ部の中間室には、当該中間室の内部のガスを外部へ排出するベント排出部が設けられてもよい。また、前記最も圧縮室側の空間における水素ガスの圧力、および、前記最もクランク機構側に位置する空間における窒素ガスの圧力は、前記中間室の内部の圧力よりも高くなるように設定されていてもよい。
【0027】
この態様では、窒素ガスが最もクランク機構側に位置する空間から中間室にリークしたとしても、この窒素ガスが最も圧縮室側の空間に伝わりにくくなるため、シリンダ部への窒素の混入をより確実に防ぐことができる。
【0028】
前記リークガス排出部は、前記吸込流路と接続されて、リークした水素ガスを前記吸込流路に戻してもよい。この場合、前記圧縮ステージは、前記別の水素ガス供給部と吐出流路とを繋ぎ、前記圧縮ステージから吐出された水素ガスの一部を前記ガスシール部に送る、送りラインをさらに備えてもよい。
【0029】
この態様では、リークした水素ガスを回収することができる。また、ガスシールのための水素ガスを別に用意しなくても良い。
【0030】
前記窒素ガス供給部による前記アダプタ部内部への窒素ガスの供給は、前記圧縮ステージの運転中のみならず、前記圧縮ステージの停止中にも行ってもよい。
【0031】
この態様では、前記圧縮ステージの構成品である、シリンダ部、ピストン、ピストンロッドは、運転中に低温となり、圧縮機ユニットが停止しても、すぐに常温に戻るのではなく、長時間低温のままの状態がつづく。一方、窒素ガスの供給を停止した場合には、アダプタ部のクランク機構側の空間に大気が侵入することがある。ピストンロッドが低温の状態のままで、クランク機構側の空間に大気が侵入した場合には、ピストンロッドに結露が発生する虞がある。その場合、内部部品の発錆や、ピストンロッドの表面に結露が付着することによってパッキンリングがシール機能を損なう原因となる。しかし、圧縮ステージの運転中のみならず、停止中においても窒素ガスの供給が行われるため、内部部品の発錆やシール機能の低下を防ぐことできる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、液化水素のボイルオフガスを扱うレシプロ式の圧縮機ユニットに好ましいシール構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図2】前記圧縮機ユニットに設けられた圧縮ステージを概略的に示す図である。
図3】前記圧縮ステージに設けられたロッドパッキン部の構成を示す図である。
図4】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
図5】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図6】第2実施形態に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図7】第3実施形態に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図8】第3実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図9】第3実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
図10】第3実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
本実施形態に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、回収した水素ガスを圧縮して需要先に供給するように構成されている。水素ガスであるボイルオフガスは約-253℃である。需要先としては、エンジン、発電設備又はボイラの少なくとも1つが含まれるが、それらに加えて、例えば、ガス燃焼設備、フレア設備、ベント等のガスをエネルギー源として活用する設備以外の設備が含まれていてもよい。また、圧縮機ユニットから吐出された水素ガスは必ずしも直接的に需要先に供給される必要はなく、例えばボンベ等に充填された後に、当該ボンベの運搬や当該ボンベに接続されたガス配管などの種々の手段で需要先に供給されてもよい。
【0036】
図1に示すように、圧縮機ユニット10は、水素ガスを圧縮するための圧縮ステージ12と、圧縮ステージ12を駆動するクランク機構14と、を備えている。圧縮機ユニット10は、圧縮ステージ12で圧縮された水素ガスをさらに圧縮する第2圧縮ステージ16を備えている。すなわち、圧縮ステージ12で圧縮された水素ガスは吐出流路18に吐出され、第2圧縮ステージ16は、この吐出流路18に設けられている。第2圧縮ステージ16で圧縮された水素ガスは需要先20に供給される。
【0037】
圧縮ステージ12は、吸込流路21を介して液体水素貯槽23に接続されている。したがって、液体水素貯槽23内で発生した液化ガスのボイルオフガスは吸込流路21を通して圧縮ステージ12に吸入される。
【0038】
クランク機構14は、これら圧縮ステージ12及び第2圧縮ステージ16を一括して駆動する。なおこの構成に限られるものではなく、例えば、第2圧縮ステージ16が省略され、クランク機構14が1つの圧縮ステージ12のみを駆動する構成であってもよい。また、圧縮機ユニット10は第2圧縮ステージ16の後続に1又は2以上の圧縮ステージが設けられてもよい。
【0039】
圧縮機ユニット10は、圧縮ステージ12から吐出された水素ガスを吸込流路21に戻すためのスピルバック部25と、第2圧縮ステージ16から吐出された水素ガスを吸込流路21に戻すための第2スピルバック部27と、を備えている。
【0040】
スピルバック部25は、スピルバック流路25aと、スピルバック流路25aに配置された開度調整可能な弁からなるスピルバック弁25bと、を有する。スピルバック流路25aの一端部は、吐出流路18における第2圧縮ステージ16よりも上流側の部分に接続され、他端部は、吸込流路21に接続されている。スピルバック弁25bが制御されることにより、第2圧縮ステージ16に吸入される水素ガスの圧力及び流量が調整される。なお、スピルバック部25を省略することが可能である。
【0041】
第2スピルバック部27は、第2スピルバック流路27aと、第2スピルバック流路27aに配置された開度調整可能な弁からなる第2スピルバック弁27bと、を有する。第2スピルバック流路27aの一端部は、吐出流路18における第2圧縮ステージ16よりも下流側の部分に接続され、他端部は、吸込流路21に接続されている。第2スピルバック弁27bが制御されることにより、需要先20に供給される水素ガスの圧力及び流量が調整される。なお、圧縮機ユニット10の停止時における吸込流路21と吐出流路18との間の均圧を主たる目的とする場合は、第2スピルバック弁27bとして手動弁やON-OFF弁が採用されてもよい。
【0042】
図2に示すように、圧縮ステージ12は、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。すなわち、圧縮ステージ12は、シリンダ部31と、シリンダ部31内に配置されたピストン32と、ピストン32に接続されたピストンロッド33と、を備えている。ピストンロッド33はクランク機構14に接続される。シリンダ部31内でピストン32が往復移動することにより、圧縮室34内で水素ガスが圧縮される。
【0043】
なお、図2では、ダブルアクティング構造の圧縮ステージ12を示しているが、圧縮ステージ12は、シングルアクティング構造が採用されてもよい。また、圧縮ステージ12は必ずしも1つのシリンダで構成される必要はなく、並列の複数の圧縮段により構成されていてもよい。すなわち、圧縮ステージ12は、並列に接続された複数のシリンダ部31内においてそれぞれピストン32により水素ガスが圧縮されて昇圧される構成とされてもよい。
【0044】
圧縮ステージ12は、シリンダ部31に設けられたロッドパッキン部36と、シリンダ部31に隣接するように配置されてシリンダ部31に接続されたアダプタ部37と、クランク機構14の一部であるクランクシャフトを収容するクランクケース38と、を備えている。
【0045】
アダプタ部37は、筒状に形成されており、アダプタ部37内の空間にピストンロッド33が配置されている。アダプタ部37の長手方向の一端は、シリンダ部31に接続されている。アダプタ部37の長手方向の他端部は、クランクケース38に接続されている。この他端部には、アダプタ部37の内部空間とクランクケース38内の空間とを隔てる隔壁40が設けられている。
【0046】
ロッドパッキン部36は、シリンダ部31の一部であるリアヘッド31aに固定されており、圧縮室34内の水素ガスが、リアヘッド31aとピストンロッド33との間を通して、シリンダ部31内から漏れ出すのを防止するために設けられている。リアヘッド31aには、ピストンロッド33が貫通する図略の貫通孔が設けられており、ロッドパッキン部36は、この貫通孔内に収容されている。
【0047】
図3に示すように、ロッドパッキン部36は、少なくとも1つのパッキンリング部(第1パッキンリング部41)と、第1パッキンリング部41を収容するケース部(第1ケース部42)と、少なくとも1つの他のパッキンリング部(第2パッキンリング部43)と、第2パッキンリング部43を収容する他のケース部(第2ケース部44)と、少なくとも1つのさらに他のパッキンリング部(第3パッキンリング部45)と、第3パッキンリング部45を収容する更に他のケース部(第3ケース部46)と、を有する。第2パッキンリング部43及び第2ケース部44は、第1パッキンリング部41及び第1ケース部42に対して圧縮室34とは反対側(クランク機構14側)に配置され、第3パッキンリング部45及び第3ケース部46は、第2パッキンリング部43及び第2ケース部44に対して圧縮室34とは反対側(クランク機構14側)に配置されている。
【0048】
なお、図3は、複数の第1ケース部42のそれぞれに複数の第1パッキンリング部41が設けられるとともに、1つの第2ケース部44に複数の第2パッキンリング部43が設けられ、1つの第3ケース部46に複数の第3パッキンリング部45が設けられた構成を示しているが、この構成に限られるものではない。例えば、各ケース部42,44,46に1つのパッキンリング部41,43,45が設けられる構成でもよい。各ケース部42,44,46に複数のパッキンリング部41,43,45が配置されることにより、シール性をより向上することができ、高圧の圧縮ステージにより好適なものとなる。
【0049】
第1ケース部42、第2ケース部44及び第3ケース部46は、ピストンロッド33の延びる方向に並べられており、リアヘッド31aの貫通孔内に配置されている。この状態で、第1ケース部42、第2ケース部44及び第3ケース部46は、フランジ部47によってクランク機構14側からリアヘッド31aに取り付けられている。
【0050】
第1ケース部42、第2ケース部44及び第3ケース部46のそれぞれには、ピストンロッド33を貫通させる貫通孔が形成されており、この第1ケース部42、第2ケース部44及び第3ケース部46において貫通孔を区画する周縁部とピストンロッド33の外周面との間には、それぞれ隙間50が形成されている。
【0051】
パッキンリング部41,43,45は、ピストンロッド33の延びる方向に並んでおり、ピストンロッド33を囲むように配置されている。パッキンリング部41,43,45は、高圧の水素ガスによってピストンロッド33の外周面に密着するように変形する。なお、パッキンリング部41,43,45は、高圧の水素ガスの圧力がかからない状態でも、ピストンロッド33の外周面に密着する大きさに形成されていてもよく、あるいはスプリングによって押し付けられることによって外周面に密着するように構成されてもよい。
【0052】
ロッドパッキン部36には、第1パッキンリング部41と第2パッキンリング部43との間を通過するように、排出通路52が設けられている。排出通路52は、第1パッキンリング部41を通過して第2パッキンリング部43側にリークした水素ガスを後述するリークガス排出部66に流入させるための通路であり、第2ケース部44とピストンロッド33の外周面との間の隙間50に開口している。排出通路52は、後述のリークガス排出部66に接続されており、第2ケース部44とピストンロッド33の外周面との間の隙間50に漏れ出た水素ガスを後述のリークガス排出部66に流入させる。
【0053】
またロッドパッキン部36には、ガスシール部54が設けられている。ガスシール部54は、後述の第1水素ガス供給部58(図2参照)からの水素ガスにより、ピストンロッド33の外周面と第3ケース部46との間の隙間50にガスシール54aを形成するものである。ガスシール部54は、第3ケース部46に形成されるとともに後述の第1水素ガス供給部58の水素流路58aに接続される導入路54bを有している。第3パッキンリング部45は、ガスシール54aに対して第2パッキンリング部43及び第1パッキンリング部41とは反対側に位置している。また、ガスシール54aは、排出通路52よりもアダプタ部37側(第1空間37a側)に位置している。
【0054】
図2に示すように、アダプタ部37は、内部の空間を圧縮室34側の空間(第1空間37a)と、クランク機構14側の空間(第2空間37b)とに仕切る仕切り部56を備えている。ピストンロッド33はこの仕切り部56も貫通している。仕切り部56におけるピストンロッド33を貫通させる貫通孔の周縁部には、シール部56aが設けられている。
【0055】
圧縮ステージ12は、ロッドパッキン部36に水素ガスを供給する水素ガス供給部(第1水素ガス供給部58)と、アダプタ部37内の第1空間37aに水素ガスを供給する他の水素ガス供給部(第2水素ガス供給部59)と、アダプタ部37内の第2空間37bに窒素ガスを供給する窒素ガス供給部60と、を備えている。
【0056】
第1水素ガス供給部58は、水素ガス源61に接続された水素流路58aを有しており、この水素流路58aを通してロッドパッキン部36におけるガスシール部54に、水素ガス源61からの水素ガスを供給するよう構成されている。第1水素ガス供給部58は、両側にパッキンリング部が存在する隙間50(つまり、第1パッキンリング部41と第2パッキンリング部43との間の隙間50)に水素ガスを供給する。水素ガス源61は、常温の水素ガスを収容している。
【0057】
第2水素ガス供給部59は、水素流路58aに接続された第2水素流路59aを有している。第2水素流路59aは、アダプタ部37において第1空間37aを形成する外周壁に形成された供給口に接続されている。第2水素ガス供給部59は、水素ガス源61からの水素ガスを第2水素流路59aを通してアダプタ部37内の第1空間37aに供給する。このため、第1空間37aにおける水素ガスの温度は、第2空間37bにおける窒素ガスの液化温度よりも高いと言える。
【0058】
窒素ガス供給部60は、窒素ガス源62に接続された窒素流路60aを有している。窒素流路60aは、アダプタ部37において第2空間37bを形成する外周壁に形成された供給口に接続されている。窒素ガス供給部60は、この窒素流路60aを通して窒素ガス源62からの窒素ガスをアダプタ部37内の第2空間37bに供給する。窒素ガス源62は、常温の窒素ガスを収容している。
【0059】
水素流路58aには、水素流路58aを流れる水素ガスの圧力を調整するバルブである第1水素バルブ58bが設けられ、第2水素ガス供給部59の第2水素流路59aには、第2水素流路59aを流れる水素ガスの圧力を調整するバルブである第2水素バルブ59bが設けられ、窒素流路60aには、窒素流路60aを流れる窒素ガスの圧力を調整するバルブである窒素バルブ60bが設けられている。
【0060】
第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bは、第1水素ガス供給部58によって供給する水素ガスの圧力、第2水素ガス供給部59によって供給する水素ガスの圧力および窒素ガス供給部60によって供給する窒素ガスの圧力の少なくとも1つを調整する圧力調整手段63を構成する。例えば、ガスシール部54内における水素ガスの圧力を圧力P1とし、アダプタ部37内の第1空間37aにおける水素ガスの圧力を圧力P2とし、アダプタ部37内の第2空間37bにおける窒素ガスの圧力を圧力P3としたときに、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bの少なくとも1つは、圧力P1>圧力P2>圧力P3の関係が成立するように調整される。すなわち、窒素ガスが導入される第2空間37b内の圧力よりも、常温の水素ガスが導入される第1空間37a内の圧力の方が高くなるため、第2空間37b内の窒素ガスが第1空間37aに侵入することが防止される。また、第1空間37a内の圧力よりもガスシール部54内の圧力の方が高くなるため、窒素ガスが仮に第1空間37a内に侵入することがあったとしても、この窒素ガスがロッドパッキン部36内に侵入することが防止される。
【0061】
圧縮ステージ12は、ロッドパッキン部36からリークガス(水素ガス)を排出させるリークガス排出部66と、第1空間37a内の水素ガスを排出させる第1排出部67と、第2空間37b内の窒素ガスを排出させる第2排出部68と、を備えている。
【0062】
リークガス排出部66は、ロッドパッキン部36に設けられた排出通路52(図3)に連通するようにロッドパッキン部36に接続された管部材によって構成されている。リークガス排出部66は、圧縮ステージ12の圧縮室34に水素ガスを流入させるための吸込流路21に接続されている。排出通路52がリークガス排出部66に連通していることにより、圧縮室34からリークして第1パッキンリング部41を通過した水素ガスが、排出通路52及びリークガス排出部66を通して吸込流路21に戻すことができる。リークガス排出部66には、ロッドパッキン部36に向けて水素ガスが流れることを防止する逆止弁69が設けられている。なお、リークガス排出部66は、圧縮ステージ12の吸込流路21に接続されるのではなく、ベント70に接続されてもよい。また、第2圧縮ステージ16においても、圧縮ステージ12と同様に、ロッドパッキン部に設けられた排出通路に連通するようにリークガス排出部が設けられてもよい。当該リークガス排出部は吸込流路21に接続される。
【0063】
第1排出部67は、第1空間37aに開口するようにアダプタ部37に接続されている。すなわち、第1排出部67の一端は、アダプタ部37において第1空間37aを形成する外周壁に形成された排出口に接続されている。また第1排出部67の他端は、圧縮ステージ12の吸込流路21に接続されている。したがって、第1空間37a内の水素ガスは、吸込流路21を通して圧縮室34に戻すことができる。なお、第1排出部67は、圧縮ステージ12の吸込流路21に接続されるのではなく、ベント70に接続されてもよい。
【0064】
第2排出部68は、第2空間37bに開口するようにアダプタ部37に接続されている。すなわち、第2排出部68の一端は、アダプタ部37において第2空間37bを形成する外周壁に形成された排出口に接続され、第2排出部68の他端は、ベント70に接続されている。なお、第2排出部68は、第2空間37b内で生じたドレンを回収する役割を兼ねてもよく、この場合、第2排出部68にはドレンポット等が設けられてもよい。
【0065】
第2排出部68には、開閉バルブ68aが設けられている。開閉バルブ68aは、アダプタ部37における窒素ガスの排出口における圧力が所定の圧力以上の圧力になると窒素ガスを放出する放出側圧力調整手段を構成する。したがって、アダプタ部37内の第2空間37bの圧力が所定圧力以上になると、開閉バルブ68aが開くことにより、第2空間37b内の窒素ガスは、ベント70に放出される。すなわち、開閉バルブ68aは、リリーフ弁によって構成されていてもよい。
【0066】
ここで、圧縮機ユニット10を停止させる際の動作について説明する。図4に示すように、圧縮機ユニット10では、クランク機構14が作動するとピストン32が作動し、ボイルオフガスである水素ガスが吸込流路21から圧縮室34内に吸入され、水素ガスの圧縮が行われる(ステップST11)。
【0067】
クランク機構14が駆動されている間は、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bが開けられている。このため、第1水素ガス供給部58により水素ガスがガスシール部54に供給され、また、第2水素ガス供給部59により水素ガスがアダプタ部37内の第1空間37aに供給され、また、窒素ガス供給部60により窒素ガスがアダプタ部37内の第1空間37aに供給されている(ステップST12)。このとき、圧力P1(ガスシール部54内における水素ガスの圧力)>圧力P2(アダプタ部37内の第1空間37aにおける水素ガスの圧力)>圧力P3(アダプタ部37内の第2空間37bにおける窒素ガスの圧力)の関係が成立している。したがって、窒素ガスが第2空間37bから第1空間37aに侵入することが防止される。また、仮に窒素ガスが第1空間37a内に侵入することがあったとしても、窒素ガスがロッドパッキン部36内に侵入することが防止される。
【0068】
圧縮機ユニット10を停止させるための指令を受信すると、圧縮機ユニット10は運転を停止する(ステップST13)。このとき、窒素ガス供給部60による窒素ガスの供給は継続する。すなわち、アダプタ部37内部への窒素ガスの供給は、圧縮ステージ12の運転中のみならず、圧縮ステージ12の停止中にも行われる。すなわち、アダプタ部37のクランク機構14側の空間の排出口に接続された図外の排出配管は、大気に開放されている場合が多い。このため、窒素ガスの供給を停止した場合には、アダプタ部37のクランク機構14側の空間に大気が侵入することがある。このため、圧縮ステージ12の停止中において大気が第2空間37bに侵入することを防止すべく、窒素ガスの供給を継続する。
【0069】
圧縮ステージ12の停止中において、窒素ガス供給部60による窒素ガスの供給を停止するか否かの判定を行う(ステップST14)。すなわち、圧縮ステージ12が低温にある間は窒素ガスの供給を継続する一方で、常温に戻った場合には結露の問題が生じ無くなるため、圧縮ステージ12の所定の場所の温度が、所定の温度(例えばピストンロッド33において結露が生じないと推定される温度)に戻ったか否かの判定を行う。そして、ステップST14の判定がYESになると、窒素ガス供給部60による窒素ガスの供給を停止する(ステップST15)。なお、窒素ガスを供給している間は水素ガスの供給を継続しても、停止させてもよい。また、圧縮機ユニット10の停止中の窒素ガスの供給は常時行ってもよいが、その場合でもメンテナンス時等は止めてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態では、ロッドパッキン部36に排出通路52が設けられ、この排出通路52がリークガス排出部66に接続されているので、第1パッキンリング部41を通過してリークした水素ガスを排出通路52及びリークガス排出部66を通してロッドパッキン部36及びアダプタ部37の外部へ排出する。また、ロッドパッキン部36に、排出通路52よりもクランクケース38側に水素ガスによるガスシール部54を設け、当該ガスシール部54内における水素ガスの圧力をリークガス排出部66内の圧力よりも高くする。これにより、シリンダ部31で圧縮する低温ガスである液化水素のボイルオフガス(吸込ガス)が当該ガスシール部54を超えて、アダプタ部37側、クランクケース38側へ侵入することを防止することができ、それにより、窒素ガスの液化を防止できる。
【0071】
また、ロッドパッキン部36のガスシール54aでは、水素ガスを利用するため、シリンダ部31内へシールガスが漏洩した場合でも、違う種類のガスをシールガスとして利用した場合に比べて、吸込ガス(水素ガス)により冷却された際に生じる液化などの不測の事態を防止できる。
【0072】
また、本実施形態では、ロッドパッキン部36に設けられたガスシール部54内での水素ガスの圧力が、アダプタ部37内での窒素ガスの圧力よりも高い。このため、アダプタ部37へ供給している窒素ガスが、ロッドパッキン部36に設けられたガスシール部54を乗り越えてしまうことを防止できる。したがって、シリンダ部31で圧縮する低温ガスである液化水素のボイルオフガス(吸込ガス)のリークしたガスと、窒素ガスとが直接的に接触してしまうことがより確実に防止される。
【0073】
また、本実施形態では、アダプタ部37内の空間が仕切り部56によって第1空間37aと第2空間37bとに仕切られるだけでなく、第2水素ガス供給部59によって供給される第1空間37aにおける水素ガスの温度が、第2空間37bにおける窒素ガスの液化温度よりも高い。このため、窒素ガスの液化を防止できる。
【0074】
また、本実施形態では、圧力P1>圧力P2>圧力P3の関係が成立するように、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bの少なくとも1つが調節される。このため、窒素ガスが第2空間37bから第1空間37aに流入しないため、窒素ガスがロッドパッキン部36内に流入することはない。したがって、窒素ガスの液化を防止できる。
【0075】
また、第2空間37b内の圧力が過剰にならない限り、第2排出部68の開閉バルブ68aが閉じられており、アダプタ部37の第2空間37b内に窒素ガスを保持するように構成されている。これにより、常時パージするものに比べ、窒素ガスの消費量を削減できる。
【0076】
また、圧縮ステージ12の構成品である、シリンダ部31、ピストン32、ピストンロッド33は、運転中に低温となり、圧縮機ユニット10が停止しても、すぐに常温に戻るのではなく、長時間低温のままの状態がつづく。一方、窒素ガスの供給を停止した場合には、アダプタ部37の第2空間37bに大気が侵入することがある。ピストンロッド33が低温の状態のままで、第2空間37bに大気が侵入した場合には、ピストンロッド33に結露が発生する虞がある。その場合、内部部品の発錆や、ピストンロッド33の表面に結露が付着することによってパッキンリング部41,43,45がシール機能を損なう原因となる。しかし、圧縮ステージ12の運転中のみならず、停止中においても窒素ガスの供給が行われるため、内部部品の発錆やシール機能の低下を防ぐことできる。
【0077】
なお、本実施形態では、アダプタ部37内が仕切り部56によって第1空間37aと第2空間37bとに仕切られ、第1空間37aに水素ガスを供給する第2水素ガス供給部59が設けられているが、これに限られない。例えば、図5に示すように、仕切り部56及び第2水素ガス供給部59が省略され、窒素ガス供給部60により、アダプタ部37内の空間に窒素ガスが供給されるように構成されてもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、ガスシール部54内における水素ガスの圧力が、アダプタ部37内における窒素ガスの圧力よりも高くなるように調整されているが、これに限られない。例えば、第1空間37a内の水素ガスの圧力P2が第2空間37b内の窒素ガスの圧力P3よりも高いのであれば、ガスシール部54内における水素ガスの圧力P1が、アダプタ部37内における窒素ガスの圧力P3と同等または以下であってもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、圧力P1>圧力P2>圧力P3の関係が成立するように、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bの少なくとも1つが調節される。しかし、これに限られるものではなく、圧力P1>圧力P3>圧力P2の関係が成立するように、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bの少なくとも1つが調節されてもよい。すなわち、第1水素バルブ58b、第2水素バルブ59b及び窒素バルブ60bは、圧力P1>圧力P3>圧力P2の関係が成立するように、第1水素ガス供給部58、第2水素ガス供給部59および窒素ガス供給部60の少なくとも1つの圧力を調整する供給側圧力調整手段を構成してもよい。この場合、可燃性ガスである水素ガスがクランクケース38側へ漏洩することをより積極的に防ぐことができる。すなわち、第1空間37a内の圧力よりも第2空間37b内の圧力の方が高くなるため、第1空間37a内の水素ガスがクランクケース38側に漏れ出ることを防止できる。
【0080】
この場合でも、第2空間37b内の圧力が過剰にならない限り、第2排出部68の開閉バルブ68aが閉じられている。このため、アダプタ部37の第2空間37b内に窒素ガスを保持することができるため、常時パージするものに比べ、窒素ガスの消費量を削減できる。
【0081】
本実施形態では、第1空間37a内の水素ガスを排出させる第1排出部67と、第2空間37b内の窒素ガスを排出させる第2排出部68と、が設けられているが、第1排出部67及び第2排出部68が省略されていてもよい。すなわち、第1空間37aが密閉構造となっていて、第1空間37aに流入した水素ガスが排出されない構成とされて、第1空間37a内の圧力が所定圧力に保持される構造であってもよい。また、第2空間37bが密閉構造となっていて、第2空間37b内の窒素ガスが排出されない構成とされて、第2空間37b内の圧力が所定圧力に保持される構造であってもよい。この場合でも、上述した圧力関係が保持されるように圧力調整手段63が調整される。この構成は、後述する第2実施形態、第3実施形態及びその変形例にも適用することができる。
【0082】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
第2実施形態では、第1水素ガス供給部58の水素流路58aと吐出流路18とを繋ぐ送りライン72が設けられている。すなわち、第1実施形態では、水素流路58aが水素ガス源61に接続されているが、第2実施形態では、水素流路58aが、送りライン72を介して吐出流路18に接続されている。送りライン72により、圧縮ステージ12から吐出流路18に吐出された水素ガスの一部をガスシール部54に送ることができる。また、ロッドパッキン部36からリークガスを回収するリークガス排出部66は、圧縮ステージ12の吸込流路21に接続されている。ただし、リークガス排出部66は、ベント70に接続されてもよい。
【0084】
したがって、リークした水素ガスを回収することができる。また、ガスシール54aのための水素ガスを別に用意しなくてもよい。
【0085】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0086】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
第3実施形態では、ロッドパッキン部36に水素ガスを供給する第1水素ガス供給部58が省略されており、ロッドパッキン部36においてガスシール部54が省略されている。すなわち、第3実施形態では、アダプタ部37内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部60と、アダプタ部37内部の他の部分に水素ガスを供給する水素ガス供給部74と、ロッドパッキン部36にリークした水素ガスを外部へ排出するリークガス排出部66と、を備えている。水素ガス供給部74は、アダプタ部37内部における最も圧縮室側に位置する空間(第1空間37a)に水素ガスを供給する。窒素ガス供給部60は、アダプタ部37内部における、第1空間37aよりもクランク機構側に位置する少なくとも1つの空間(第2空間37b)に窒素ガスを供給する。なお、図7では、1つの仕切り部56が設けられた構成を示しているので1つの第2空間37bが形成されているが、例えば2つの仕切り部56が設けられて2つの第2空間37bが形成されてもよい。この場合、2つの第2空間37bにそれぞれ窒素ガスが供給される。
【0088】
水素ガス供給部74の水素流路74aには、水素流路74aを流れる水素ガスの圧力を調整するバルブである水素バルブ74bが設けられている。水素バルブ74bは、第1空間37a内における水素ガスの圧力が、リークガス排出部66内における水素ガスの圧力よりも高くなるように調整される。これにより、圧縮室34内の水素ガスがロッドパッキン部36にリークしたとしても、この水素ガスがアダプタ内に侵入することを防止できる。
【0089】
したがって、本実施形態では、水素ガス供給部74によって供給される、アダプタ部37内の第1空間37aでの水素ガスの圧力が、リークガス排出部66内における水素ガスの圧力よりも高い。このため、ロッドパッキン部36にリークした水素ガスが、アダプタ部37における最も圧縮室側の空間(第1空間37a)に侵入することを防止できる。これにより、低温ガスである液化水素のボイルオフガスが、窒素ガスに直接的に接触してしまうことが防止され、窒素ガスの液化を防止できる。
【0090】
なお、第3実施形態において、図8に示すように、圧縮ステージ12は、ロッドパッキン部36に水素ガスを供給する別の水素ガス供給部76を備えていてもよい。この別の水素ガス供給部76は、ロッドパッキン部36に繋がる別流路76aを有しており、この別流路76aを通して供給される水素ガスにより、排出通路52よりもクランク機構14側において、ピストンロッド33の外周面と第3ケース部46との間の隙間50にガスシール54aが形成される。
【0091】
別流路76aには、開度調整可能なバルブからなる別バルブ76bが設けられている。別バルブ76bは、ガスシール部54内における水素ガスの圧力が、リークガス排出部66内における水素ガスの圧力よりも高くなるように調整される。すなわち、ガスシール部54によって形成されるガスシール54aの圧力が、ガスシール54aよりも圧縮室34側に位置する排出通路52内の圧力よりも高くなる。したがって、水素ガスが圧縮室34内からリークした後、第1パッキンリング部41を通過することがあったとしても、ガスシール54aを通過することを防止できる。
【0092】
第3実施形態において、図9に示すように、水素ガス供給部74の水素流路74aと吐出流路18とを繋ぐ送りライン72が設けられていてもよい。送りライン72により、圧縮ステージ12から吐出流路18に吐出された水素ガスの一部をガスシール部54に送ることができる。
【0093】
図10に示すように、アダプタ部37内の空間が2つの仕切り部56によって3つの空間に仕切られていてもよい。水素ガス供給部74は、アダプタ部37内における最も圧縮室34側に位置する空間(第1空間37a)に水素ガスを供給する。水素ガス供給部74には、開度調整可能なバルブからなる水素バルブ74bが設けられている。
【0094】
また、図10の形態では、ロッドパッキン部36に水素ガスを供給する別の水素ガス供給部76が設けられている。別の水素ガス供給部76には、開度調整可能なバルブからなる別バルブ76bが設けられている。
【0095】
窒素ガス供給部60は、アダプタ部37内における最もクランク機構14側に位置する空間(第2空間37b)に窒素ガスを供給する。窒素ガス供給部60には、開度調整可能なバルブからなる窒素バルブ60bが設けられている。第1空間37aと第2空間37bとの間の中間室37cには、当該中間室37cの内部のガスを外部へ排出するベント排出部77が設けられている。ベント排出部77には、中間室37c内の圧力が所定圧力を超えると開くバルブ77aが設けられている。
【0096】
また、水素バルブ74b及び窒素バルブ60bの少なくとも一方は、第1空間37a内の水素ガスの圧力及び第2空間37b内における窒素ガスの圧力が、中間室37c内部の圧力よりも高くなるように調整される。したがって、窒素ガスが中間室37cに流入することがあったとしても、当該窒素ガスが第1空間37a内に侵入することを防止できる。
【0097】
本実施形態では、窒素ガスが最もクランク機構側に位置する空間から中間室37cにリークしたとしても、この窒素ガスが最も圧縮室側の空間に伝わりにくくなるため、シリンダ部31への窒素の混入をより確実に防ぐことができる。
【0098】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0099】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 :圧縮機ユニット
12 :圧縮ステージ
14 :クランク機構
18 :吐出流路
20 :需要先
21 :吸込流路
23 :液体水素貯槽
31 :シリンダ部
32 :ピストン
33 :ピストンロッド
34 :圧縮室
36 :ロッドパッキン部
37 :アダプタ部
37a :第1空間
37b :第2空間
37c :中間室
38 :クランクケース
41 :第1パッキンリング部
43 :第2パッキンリング部
45 :第3パッキンリング部
50 :隙間
52 :排出通路
54 :ガスシール部
54a :ガスシール
56 :仕切り部
58 :第1水素ガス供給部
59 :第2水素ガス供給部
60 :窒素ガス供給部
63 :圧力調整手段
66 :リークガス排出部
70 :ベント
72 :送りライン
74 :水素ガス供給部
76 :水素ガス供給部
77 :ベント排出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10