IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エコシンフォニー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-抗菌性消毒液 図1
  • 特開-抗菌性消毒液 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070580
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】抗菌性消毒液
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/44 20090101AFI20240516BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20240516BHJP
   A01N 37/44 20060101ALI20240516BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20240516BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A01N65/44
A61L2/18
A01N37/44
A01N61/00 D
A01P1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181169
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】522442685
【氏名又は名称】エコシンフォニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 哲也
【テーマコード(参考)】
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058AA29
4C058BB07
4C058JJ08
4H011AA02
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB19
4H011BB22
4H011DA13
4H011DG05
4H011DH11
(57)【要約】
【課題】人の手指が頻繁に接触する可能性がある部位に予め消毒液を噴霧しておき、当該部位において長時間に亘り抗菌作用を維持することができ、しかも手指の消毒に直接利用する場合においても人体への安全性に優れた抗菌性消毒液を提供する。
【解決手段】本発明に係る抗菌性消毒液は、孟宗竹抽出物と、ポリリジンとを含有し、上記ポリリジンは、上記孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppm含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孟宗竹抽出物と、ポリリジンとを含有し、
上記ポリリジンは、上記孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppm含有すること
を特徴とする抗菌性消毒液。
【請求項2】
アルコール類、水の何れか1以上を含む溶媒に、上記孟宗竹抽出物と、上記ポリリジンを溶解させてなること
を特徴とする請求項1記載の抗菌性消毒液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症蔓延時において、ドアノブや手すり等、人の手指が頻繁に接触する可能性のある部位に対して予め噴霧し、又は手指の消毒そのものにも適用する上で好適な抗菌性消毒液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の新型コロナウィルスを始めとする各種感染症の蔓延時には、特に屋外から建物や公共施設内に入る場合に、手指に付着したウィルスを除菌するために、消毒液を空中散布及び塗布により消毒を行う。またドアノブや手すり、壁面等のような人の手指が頻繁に接触する可能性がある部位に対して予め消毒液を塗布する。この消毒液については、アルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウムを希釈した消毒液が多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、これらアルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウムを希釈した消毒液は短時間における静菌効果は期待できるものの、その静菌効果を長時間に亘り持続させ続けることについては、未だ検証の半ばにある。特に人の手指が頻繁に接触する可能性がある部位に予め消毒液を噴霧しておき、当該部位において長時間に亘り抗菌作用を維持させたい場合において優位性を発揮する消毒液は今まで特段提案されていないのが現状であった。
【0004】
また、従来のアルコール消毒液は、同時に手指の脱脂を行う。また、アルコールには脱水作用もあるため、頻繁に使用してしまうと、皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪うことにもなる。その結果、手指が荒れてしまい、また手指を保護するために良い働きをする常在菌まで死滅させてしまうという問題点がある。アルコール消毒液は、刺激が強い為、加湿器などを利用して空間に噴霧できないという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-81610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、人の手指が頻繁に接触する可能性がある部位に予め消毒液を噴霧しておき、当該部位において長時間に亘り抗菌作用を維持することができ、しかも手指の消毒に直接利用する場合においても人体への安全性に優れた抗菌性消毒液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る抗菌性消毒液は、孟宗竹抽出物と、ポリリジンとを含有し、上記ポリリジンは、上記孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppm含有することを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る抗菌性消毒液は、第1発明において、アルコール類、水の何れか1以上を含む溶媒に、上記孟宗竹抽出物と、上記ポリリジンを溶解させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成からなる本発明によれば、除菌効果を発現すると共に、経時変化しにくい日持ち向上剤として食品添加物認可されている孟宗竹抽出物をポリリジンと混合することにより、持続的な抗菌性、抗菌性を維持することが可能となる。
【0010】
これに加えて、ポリリジンによる付着物質としての作用により、孟宗竹抽出物をドアノブや手すり、壁面や天井等に噴霧したときにこれを長期に亘る付着を維持することが可能となる。
【0011】
また、孟宗竹抽出物、ポリリジンという、何れも安全な食品添加物として認可されている成分で構成されていることから、極めて人体に対して安全な消毒液を構成することができ、消毒した手指が荒れてしまうのを防止できる。また人体に対して安全な本発明を適用した抗菌性消毒液によれば、空中散布や加湿器などを利用して室内等の空間に噴霧する利用形態も採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の効果を検証するための実験例について説明するための図である。
図2図2は、噴霧時から24時間後、72時間後の抗菌性を発揮する領域の面積について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態における抗菌性消毒液について詳細に説明する。
【0014】
本発明を適用した抗菌性消毒液は、孟宗竹抽出物と、ポリリジンとを含有し、ポリリジンは、上記孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppm含有させてなる。
【0015】
このとき、孟宗竹抽出物の有効濃度が仮に1000ppmである場合は、これに対してポリリジンが200~600ppmの範囲で含有されることとなる。また、孟宗竹抽出物の有効濃度が仮に1500ppmであれば、ポリリジンが450~900ppmの範囲で含有されることとなる。更に孟宗竹抽出物の有効濃度が仮に2000ppmであれば、ポリリジンが600~1200ppmの範囲で含有されることとなる。
【0016】
本発明を適用した抗菌性消毒液は、アルコール、水等の溶媒に、孟宗竹抽出物とポリリジンが上述の如き含有比率の下で含有してなる。
【0017】
なお、以下でいう抗菌とは、あらゆる菌以外に、あらゆるウィルスを不活性化することも含む。
【0018】
孟宗竹抽出物
孟宗竹抽出物(モウソウチク抽出物)は、竹の表皮および竹茹を粉末状に加工してエタノールにより抽出したものをいう。この孟宗竹抽出物には、抗菌成分として、2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノンが含まれており、ウィルスを不活性化する機能を備える。孟宗竹抽出物は、日本において食品の日持ち向上剤として食品添加物認可されており、安全な抗菌剤として認められている。孟宗竹抽出物エキスは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウィルス類のほぼ全てに対して抗菌効果を発揮する。
【0019】
抗菌性消毒液全体に対して、孟宗竹抽出物が有効濃度で800ppm以上とすることで、消毒作用をより強くすることができる。一方で孟宗竹抽出物が有効濃度で2000ppmを超えてしまうと、除菌効果が飽和するばかりか、原料コストの上昇のデメリットも生じる。このため、孟宗竹抽出物は、有効濃度で800~2000ppmとすることが望ましい。
【0020】
ポリリジン
ポリリジンは、正式にはε-ポリ-L-リジンと呼ばれ、必須アミノ酸のL-リジンのε位のアミノ基とα位のカルボキシル基がアミド結合により、通常約25~30個連なった低分子天然ホモポリマーである。ポリリジンは、広いpH範囲において優れた抗菌効果(ウィルス不活性化効力)を示し、熱安全性に優れ、水への溶解性も高いという特徴がある。ポリリジンは、グラム陽性菌(セレウス菌等)、グラム陰性菌(大腸菌等)、酵母など広範囲の微生物、特に食中毒原因菌に対しても、優れた増殖抑制効果を発揮する。
【0021】
ポリリジンは、枯草菌をはじめとする耐熱性菌に対しても、優れた増殖抑制効果を発揮する。ポリリジンは、食品の腐敗に大きな影響を及ぼす乳酸菌に対しても強い増殖抑制効果を発揮する。更に、このポリリジンは、厚生労働省告示の食品添加物であり、天然の発酵物であるので、食品保存料としても安全性が高く、食品添加物の中で用途制限がない添加物であることから、人体への安全性が極めて高いという特徴がある。
【0022】
ポリリジンの含有量が孟宗竹抽出物1000ppm当たり200ppm未満の場合、ポリリジンによる抗菌作用が弱すぎて、グラム陰性菌は除菌できるものの、雑菌の発生については抑制することができない。一方で、ポリリジンの含有量が孟宗竹抽出物1000ppm当たり600ppmを超える場合、除菌効果が飽和するばかりか、ポリリジンを含む溶液が乾燥した際に粉末が残存してしまう。このため、ポリリジンの含有量は、孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppmとする。
【0023】
このように、孟宗竹抽出物、及びポリリジンは、何れも安全な食品添加物として認可されているものであり、これらを抗菌剤として組み合わせることにより、極めて人体に対して安全な消毒液を構成することができる。
【0024】
特に噴霧材として使用する場合、孟宗竹抽出物、及びポリリジンは、何れも安全な成分の組み合わせで構成でき、極めて人体に対して安全な消毒液を構成することができ、消毒した手指が荒れてしまうのを防止できる。また人体に対して安全な本発明を適用した抗菌性消毒液によれば、空中散布や加湿器などを利用して室内等の空間に噴霧する利用形態も採用できる。
【0025】
これに加えて、ポリリジンによる付着物質としての作用により、孟宗竹抽出物をドアノブや手すり、壁面や天井等に噴霧したときにこれを長期に亘る付着を維持することが可能となる。
【0026】
なお、本発明は、水やアルコール等の溶媒による希釈前の孟宗竹抽出物とポリリジンとからなる液体として構成してもよいことは勿論である。かかる場合においても、ポリリジンの含有量は、孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppmとする。
【実施例0027】
以下、本発明を適用した抗菌性消毒液の実施例について説明をする。本実施例においては、孟宗竹抽出物、ポリリジンを含有させた抗菌性消毒液の付着の維持効果を確認するために、以下の表1に示す実験的検証を行った。
【0028】
【表1】
【0029】
この実験的検証では、孟宗竹抽出物にポリリジンを混合し、更に水、アルコールにより希釈することで表1に示す本発明例1~7、比較例1~2を作製した。ポリリジンは、ポリリジン(JNC製50%デキストリン粉末:ε-ポリリジン臭素酸塩50%、デキストリン50%含有)を使用した。孟宗竹抽出物は、タケックスラボ社製のTAKEXを使用した。また溶媒は、エタノール51重量%、水49重量%からなる1lの溶媒に、孟宗竹抽出物1mlを溶解させることで、孟宗竹抽出物の有効濃度を1000ppmとする。このような孟宗竹抽出物の有効濃度に対して、ポリリジンを表1に示す有効濃度にて添加することで、上述した本発明例1~7、比較例1~2を作製した。
【0030】
このようにして作製した本発明例1~7、比較例1~2を噴霧器に充填し、実験体に噴霧した。噴霧器は、いわゆる霧吹きのようなノズルを介して液体を霧状に噴霧することが可能なものである。また、比較用として、上述した有効濃度1000ppmからなる孟宗竹抽出物の溶液についてポリリジンを添加しない比較用溶液を作製し、同様に噴霧器に充填して実験体に噴霧した。この比較用溶液を充填する噴霧器は、本発明例1~7、比較例1~2を充填する噴霧器と同一性能のものを使用した。
【0031】
実験体は、透明性のポリカーボネート製のプラスチック板を例えば図1に示すように底面1に対して略鉛直方向に向けて立設させる。この立設させた実験体2に対して、30cm離間させた位置から、比較用溶液を充填した噴霧器3により噴霧し、噴霧時から24時間後、及び72時間後に、抗菌性能試験を行った。この抗菌性能試験は、グラム陽性菌、グラム陰性菌を含む汎用の一般雑菌を実験体2に対して定着化させて固定化し、これに対して噴霧器3により噴霧し、その抗菌性を試薬による染色の範囲を目視により確認する方法に基づいて行った。具体的には、生物発光法を用いて一般生菌数を数値化することで、その生菌が発生している領域、発生していない領域を特定し、そこから抗菌性を発揮する領域を特定した。
【0032】
先ず比較用溶液について噴霧時から24時間後、72時間後の抗菌性を発揮する領域の面積を図2に示すように計測する。この比較用溶液の抗菌性を発揮する領域の面積を面積A1という。
【0033】
これに対して、作製した本発明例1~7、比較例1~2についても同様に噴霧器に充填し、立設させた実験体2に対して30cm離間させた位置から比較用溶液を充填した噴霧器3により噴霧し、噴霧時から24時間後、及び72時間後に、抗菌性能試験を行った。本発明例1~7、比較例1~2について抗菌性を発揮する領域の面積を面積A2という。
【0034】
このようにして測定した面積A2について、面積A2/面積A1を算出することで、面積A1に対する倍率を求める。この倍率が24時間後において2倍以上になっているものを〇とし、2倍未満のものを×とする。同様にこの倍率が72時間後において4倍以上になっているものを〇とし、4倍未満のものを×とする。また72時間後においてこの倍率が5倍以上になるものを◎としている。
【0035】
上述した実験的検証の結果、本発明例1~7は、何れも孟宗竹抽出物1000ppm当たり200~600ppmであることから、噴霧時から24時間後、72時間後、共に抗菌性消毒液の付着効果が良好であった。特に本発明例4~6は、72時間後の消毒液の付着効果が特に良好であった。これに対して、比較例1は、ポリリジンの含有量が、孟宗竹抽出物1000ppm当たり200ppm未満であるため、噴霧時から24時間後、72時間後、共に抗菌性消毒液の付着効果が低下していた。また、比較例2は、ポリリジンの含有量が孟宗竹抽出物1000ppm当たり600ppm超であるため、効果が飽和するとともに、ポリリジンの原料のコストが高くなってしまうという経済的理由により噴霧時から24時間後、72時間後の検証は行っていない。
【符号の説明】
【0036】
1 底面
2 実験体
3 噴霧器


図1
図2