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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070582
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ユーティリティビークル
(51)【国際特許分類】
   B60K 31/00 20060101AFI20240516BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20240516BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B60K31/00 Z
B60W30/14
B60K28/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181171
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】別所 弘樹
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
3D244
【Fターム(参考)】
3D037FA31
3D037FB01
3D241BA08
3D241BA10
3D241BA60
3D241CD15
3D241DB02B
3D244AA01
3D244AA12
3D244AA24
3D244AC26
(57)【要約】
【課題】特定者によって設定された車速制限が、特定者以外によって変更されることが禁止される構造を有するユーティリティビークルを提供する。
【解決手段】ユーティリティビークルは、走行車体を対地支持する走行装置11、12と、走行車体に搭載された動力ユニットと、動力ユニットからの動力を走行動力として走行装置11、12に伝達する動力伝達装置20と、走行動力の速度である車速を変更する変速操作具18と、車速の上限値を設定する車速制限操作具34と、車速制限操作具に対する操作を禁止する車速制限操作禁止ユニット35とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体を対地支持する走行装置と、
前記走行車体に搭載された動力ユニットと、
前記動力ユニットからの動力を走行動力として前記走行装置に伝達する動力伝達装置と、
前記走行動力の速度である車速を変更する変速操作具と、
前記車速の上限値を設定する車速制限操作具と、
前記車速制限操作具に対する操作を選択的に禁止する車速制限操作禁止ユニットと、
を備えたユーティリティビークル。
【請求項2】
前記車速制限操作禁止ユニットは、前記走行車体を構成する部材に対して前記車速制限操作具を着脱する着脱機構として構成されている請求項1に記載のユーティリティビークル。
【請求項3】
前記車速制限操作具によって設定された前記上限値を示す車速上限値表示部が設けられ、前記車速制限操作具の前記走行車体からの取り外し後においても、前記車速上限値表示部は前記走行車体に保持される請求項2に記載のユーティリティビークル。
【請求項4】
前記車速上限値表示部は、前記車速制限操作具の操作に機械的に連動する車速上限値指針を有する請求項3に記載のユーティリティビークル。
【請求項5】
前記車速制限操作具は、ダイヤル式操作具である請求項1から4のいずれか一項に記載のユーティリティビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速制限操作具を備えたユーティリティビークルに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーティリティビークルは道路だけでなくオフロードも走行するため、運転者のスキルや走行目的によって、適正な車速範囲で運転することが重要である。特許文献1には、車速やエンジン回転数などの車両パラメータを運転者毎に設定できるシステムを備えた車両が開示されている。イグニッションキーなどに組み込まれたトランスミッタが識別コードをシステムコントローラに送信すると、識別コードに対応する車両パラメータが設定される。例えば、特定のイグニッションキーを用いて車両を運転する場合、この車両は、このイグニッションキーによって規定される車速に制限される。
【0003】
特許文献2には、運転者のスキルレベルに関連付けて、最高速度が制限される車両が開示されている。この制限された最高速度は、運転者により修正することができる。また、車両が予め定められた領域の外又は内に位置していることをGPS装置が検出すると、エンジン停止または車速制限が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7822514号公報
【特許文献2】米国公開特許第2021/0206263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2による車両では、車速の制限が、自動的に、あるいは運転者の操作によって行われる。しかしながら、車両管理者などの特定者によって制限された車速が特定者以外によって変更されることを禁止する仕組みは、考慮されていない。このような実情の鑑み、本発明の目的は、特定者によって設定された車速制限が、特定者以外によって変更されることが禁止される構造を有するユーティリティビークルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるユーティリティビークルは、走行車体と、前記走行車体を対地支持する走行装置と、前記走行車体に搭載された動力ユニットと、前記動力ユニットからの動力を走行動力として前記走行装置に伝達する動力伝達装置と、前記走行動力の速度である車速を変更する変速操作具と、前記車速の上限値を設定する車速制限操作具と、前記車速制限操作具に対する操作を選択的に禁止する車速制限操作禁止ユニットとを備える。
【0007】
この構成によれば、車速の上限値である上限車速は車速制限操作具の操作によって設定できるが、この車速制限操作具に対する操作は、車速制限操作禁止ユニットによって禁止することができる。したがって、特定者が上限車速を設定した後に、特定者以外の人によって設定上限車速が変更されることを望まない場合には、特定者は、車速制限操作禁止ユニットを用いて車速制限操作具による上限車速の変更操作を禁止することができる。また、特定者以外の人によって設定上限車速が変更されてもよい場合には、車速制限操作禁止ユニットを車速操作許可状態にしておくことで、特定者以外の人が、車速制限操作具を用いて上限車速の変更することは可能となる。
【0008】
本発明では、前記車速制限操作禁止ユニットは、走行車体を構成する部材に対して前記車速制限操作具を着脱する着脱機構として構成可能である。この構成では、特定者が上限車速を設定した後に、車速制限操作禁止ユニットの着脱機構を利用して、車速制限操作具を走行車体から取り外すことができる。つまり、車速の上限値の設定及び変更を行うために用いられる車速制限操作具が、前記走行車体から取り除かれるので、車速制限操作具による上限車速の変更操作は、不可能となる。この形態では、車速制限操作禁止ユニットが走行車体を構成する部材に装着された状態が、車速制限操作禁止ユニットの車速操作許可状態であり、車速制限操作禁止ユニットが走行車体を構成する部材から取り外された状態が、車速制限操作禁止ユニットの車速操作禁止状態である。
【0009】
本発明では、前記車速制限操作具によって設定された前記上限値を示す車速上限値表示部が設けられ、前記車速制限操作具の前記走行車体からの取り外し後においても、前記車速上限値表示部は前記走行車体に保持される。この構成では、車速制限操作具による上限車速の設定操作が、車速上限値表示部によって容易になるだけなく、車速制限操作具を走行車体から取り外されても、その時点で設定されている車速上限値が車速上限値表示部に表示されるので、運転者は、車速上限値を容易に知ることができ、好都合である。
【0010】
前記車速上限値表示部として、車速制限操作具の操作に応答して電子表示制御される表示デバイスが用いられてもよいが、前記車速制限操作具の操作に機械的に連動する車速上限値指針を有する構成が、コスト的に有利である。また、そのような構成は、振動や風雨に対する強靭性も高く、オフロード車などでは、有利である。
【0011】
前記車速制限操作具として、ダイヤル操作式やスライド操作式が採用可能であるが、操作性や省スペースの点から、前記車速制限操作具は、ダイヤル式操作具であると好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ユーティリティビークルの側面図である。
図2】ユーティリティビークルの平面図である。
図3】運転部における操作パネル周辺の正面図である。
図4】副変速レバーと車速制限操作具と車速制限操作禁止ユニットとを模式的に示す模式図である。
図5】車速制限操作具と車速制限操作禁止ユニットとを模式的に示す模式断面図である。
図6】ユーティリティビークルの制御系を示す機能ブロック図である。
図7】別実施形態でのユーティリティビークルの制御系を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さに基づく位置関係を示す。
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1図2とに示すユーティリティビークルの一例は、荷の運搬やレクリエーション等の多様な目的に使用可能な車両として構成されている。なお、本願発明によるユーティリティビークルには、全地形対応車(ATV)、バギー、オフロード車、農作業車、土木作業車も含まれている。
【0015】
図示されたユーティリティビークルには、駆動可能且つ操向操作可能な左右一対の前車輪11と、駆動可能な左右一対の後車輪12とが、走行装置として備えられている。走行車体1は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12により走行可能である。走行車体1の中央部には、操縦者が搭乗して運転操作を行う運転部13が備えられている。走行車体1の後部には、荷を積載可能な荷台14が備えられている。走行車体1における荷台14よりも下方領域で、走行車体1に動力ユニット2が搭載されている。動力ユニット2からの動力を走行動力として走行装置に伝達する動力伝達装置20も走行車体1に搭載されている。
【0016】
運転部13は、枠状のロプスフレーム15で囲まれて保護されている。運転部13には、操縦者が着座する運転座席16が備えられている。また、運転部13における運転座席16の前方には、各種操作具や表示デバイスが組み付けられているフロントパネル3と、左右の前車輪11の操向操作用のステアリングハンドル17とが設けられている。ステアリングハンドル17の下方に位置するフロアには変速操作具18としてのアクセルペダルが設けられている。
【0017】
この実施形態では、動力ユニット2は、電動モータ2mを中核部材として構成されているが、別実施形態として、ガソリンエンジンなどの内燃機関2e(図7参照)を中核部材として構成する動力ユニット2が採用されてもよい。
【0018】
図2に示すように、動力ユニット2からの動力が入力される動力伝達装置20には、ギヤ伝動機構21、後輪差動機構22、前輪差動機構23、などが含まれる。この実施形態でのギヤ伝動機構21には、高低変速クラッチにより高速段と低速段との選択が可能である副変速装置24が含まれている。
【0019】
図3に示すように、フロントパネル3には、液晶パネルやLEDランプを有するメータパネル31、副変速装置24の変速段を切り替える副変速レバー32、車速制限操作具34、などが組み付けられている。副変速レバー32は、フロントパネル3に形成された略H字状の変速操作経路33に沿って変位可能である。
【0020】
変速操作経路33の4つの経路端部は、図4に示すように、前進低速位置33a、前進高速位置33b、後進低速位置33c、後進高速位置33dとして用いられる。前進低速位置33aと前進高速位置33bとの間の中間位置は前進中立位置であり、後進低速位置33cと後進高速位置33dとの間の中間位置は後進中立位置であり、前進中立位置と後進中立位置とは横操作経路で接続されている。つまり、この実施形態では、副変速レバー32は、前進と後進とを切り替える前後進切換レバーとしても用いられている。もちろん、別実施形態として、前後進切換レバーと副変速レバー32とを個別に構成することも可能である。
【0021】
この実施形態では、車速の上限値を設定する車速制限操作具34は、円形のダイヤル式操作具として構成されている。図4図5とに模式的に示すように、車速制限操作具34は、前記走行車体1の部材としてのフロントパネル3に着脱自在に取り付けられた車速制限操作禁止ユニット35に固定されている。つまり、車速制限操作具34は、車速制限操作禁止ユニット35を介して、間接的にフロントパネル3に取り付けられている。車速制限操作禁止ユニット35を着脱可能にするフロントパネル3の該当箇所は、車速制限操作禁止ユニット35を受け入れるソケット状に形成されている。さらに、走行車体1を構成する部材(フロントパネル3)に対して、車速制限操作具34と一体的に車速制限操作禁止ユニット35が着脱できるように、車速制限操作禁止ユニット35は、フロントパネル3に対する着脱機構として機能する。フロントパネル3に装着された車速制限操作禁止ユニット35が確実に固定されるように、車速制限操作禁止ユニット35は、フロントパネル3に対して着脱可能に係合する係合部を有する。
【0022】
図4に示すように、車速制限操作具34の周囲には、弧状の車速上限値表示部36が設けられている。車速上限値表示部36には、車速を示す弧状目盛りが形成されているとともに、この弧状目盛りの上方を車速制限操作具34の操作に機械的に連動する車速上限値指針37が備えられている。車速制限操作具34と車速上限値指針37とを連動連結する連動リンクは、車速制限操作禁止ユニット35の取り外し時に分離できるように2部材構成となっている。
【0023】
図6は、ユーティリティビークルの変速制御系の一例を示す機能ブロック図である。この変速制御系は、動力制御ユニット4と変速制御ユニット5とを備えている。動力制御ユニット4は、この実施形態では、モータ制御ユニットとして構成され、変速制御ユニット5からの動力制御指令(モータ速度指令)に基づいて、インバータ(非図示)に動力制御信号を与え、電動モータ2mの速度を制御する。
【0024】
変速制御ユニット5は、入出力処理部50、動力管理部51、変速管理部52、車速制限管理部53を備えている。入出力処理部50は、車速制限操作具34の操作量に基づく車速制限指令や変速操作具18の操作量に基づく変速指令(車速指令)などを入力して、変速制御ユニット5の各機能部に与える。車速制限指令は、車速制限操作禁止ユニット35に組み込まれた車速制限操作具34の操作量を検出する操作検出器35aから送られてくる。また、入出力処理部50は、変速制御ユニット5の各機能部が生成した変速制御信号や動力制御指令を動力制御ユニット4に与える。
【0025】
動力管理部51は、変速操作具18を通じての変速指令、変速管理部52からの電動モータ2mの回転速度に関する指令などに基づいて、動力制御指令を生成して、動力制御ユニット4に与える。変速管理部52は、変速指令に基づいて、演算された目標車速から、電動モータ2mの回転速度と動力伝達装置20の変速比などを演算し、動力管理部51には電動モータ2mの回転速度に関する指令を与え、動力伝達装置20には、変速制御指令を与える。
【0026】
車速制限管理部53は、車速制限操作具34に対する操作を通じて操作検出器35aで生成された車速制御指令に基づいて、車速制限指令を生成し、変速管理部52に与える。車速制限管理部53は、入力された車速制限指令(制限車速)を記録する機能を有する。新たに車速制限指令が入力されると、記録されている以前の車速制限指令は新しく入力された車速制限指令で書き換えられる。
【0027】
車速制限操作禁止ユニット35をフロントパネル3から取り外すことで、車速制限操作具34もフロントパネル3から取り外される。これにより、車速制限操作具34を用いて、車速制御指令の書き換えは不能となり、その時点で記録されている車速制御指令(制限車速)に基づく車速制限指令が維持される。車速制御指令を書き換えて、新たな車速制限指令を生成するためには、車速制限操作具34とともに車速制限操作禁止ユニット35をフロントパネル3に装着し、車速制限操作具34を操作し、新たな車速制限指令を車速制限管理部53に送る必要がある。
【0028】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、車速制限操作具34及び車速制限操作禁止ユニット35は、フロントパネル3に配置されていたが、その他の箇所、例えば、ステアリングハンドル17や運転座席16などに配置されてもよい。また、車速制限操作具34の操作量を検出する操作検出器35aは、走行車体1側に残されるような構成であってもよい。さらに、操作検出器35aは、有線により、変速制御ユニット5に接続されるのではなく、無線により接続されてもよい。
【0029】
(2)上述した実施形態では、動力ユニット2には、電動モータ2mが用いられたが、図7に示すように、内燃機関2eが用いられてもよい。その場合、動力制御ユニット4は、よく知られたエンジン制御ユニットとして構成される。内燃機関2eは、電動モータ2mとは異なり、回転方向の切り替えは不能であり、効率のよい回転数領域も電動モータ2mのように広くない。このため、動力伝達装置20には無段変速装置25又は多段変速装置が備えられ、ギヤ伝動機構21には前後進切換装置が備えられる。
【0030】
(3)上述した実施形態では、車速制限操作具34と車速制限操作禁止ユニット35とは、別体で構成されていたが、車速制限操作具34と車速制限操作禁止ユニット35とは、一体構成されてもよい。
【0031】
(4)上述した実施形態では、走行装置は、左右一対の前車輪11と左右一対の後車輪12車輪とから構成されていたが、三輪タイプや二輪タイプで構成してもよい。
【0032】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、広義のユーティリティビークル全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 :走行車体
2 :動力ユニット
2e :内燃機関
2m :電動モータ
4 :動力制御ユニット
17 :ステアリングハンドル
18 :変速操作具
20 :動力伝達装置
21 :ギヤ伝動機構
22 :後輪差動機構
23 :前輪差動機構
24 :副変速装置
25 :無段変速装置
32 :副変速レバー
33 :変速操作経路
33a :前進低速位置
33b :前進高速位置
33c :後進低速位置
33d :後進高速位置
34 :車速制限操作具
35 :車速制限操作禁止ユニット
35a :操作検出器
36 :車速上限値表示部
37 :車速上限値指針
5 :変速制御ユニット
50 :入出力処理部
51 :動力管理部
52 :変速管理部
53 :車速制限管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7