(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070583
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240516BHJP
B60K 20/02 20060101ALI20240516BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B60L15/20 K
B60K20/02 D
B60K20/02 Z
B60L15/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181172
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】永冨 達也
【テーマコード(参考)】
3D040
5H125
【Fターム(参考)】
3D040AA01
3D040AA23
3D040AA25
3D040AB10
3D040AC07
3D040AC36
3D040AC63
3D040AC66
3D040AE19
3D040AF07
3D040AF26
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125DD14
5H125EE42
5H125FF28
(57)【要約】
【課題】電動作業車において電動モータは回転方向を切替えるための操作を簡素化すること。
【解決手段】回転駆動する電動モータと、電動モータの駆動に基づいて対地走行する走行装置と、電動モータの回転速度を変速し、変速後の動力を走行装置へ伝達する変速装置と、電動モータの回転方向、及び、変速装置の変速レベルを変更するための人為操作を受け付ける単一の操作部31と、操作部31の操作に基づいて電動モータ及び変速装置に対する制御信号を出力する制御装置と、が備えられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する電動モータと、
前記電動モータの駆動に基づいて対地走行する走行装置と、
前記電動モータの回転速度を変速し、変速後の動力を前記走行装置へ伝達する変速装置と、
前記電動モータの回転方向、及び、前記変速装置の変速レベルを変更するための人為操作を受け付ける単一の操作部と、
前記操作部の操作に基づいて前記電動モータ及び前記変速装置に対する制御信号を出力する制御装置と、が備えられている電動作業車。
【請求項2】
前記操作部に、前後方向及び左右方向に操作可能な単一のレバーが備えられ、
前記制御装置は、前記レバーが左右に操作されると前記電動モータの前記回転方向を切替え、前記レバーが前後に操作されると前記変速装置の前記変速レベルを変更する請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記操作部に、前記レバーが操作される際に前記レバーを前後方向に案内する第一溝部と、前記レバーが操作される際に前記レバーを左右方向に案内する第二溝部と、が備えられ、
前記第二溝部は、前記第一溝部と交差する請求項2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記第一溝部と前記第二溝部とが交差する位置は、前記レバーの中立位置であって、
前記制御装置は、前記レバーが前記中立位置に位置すると前記走行装置に対する前記動力の伝達を行わず、前記レバーが前記第一溝部に沿って前記中立位置よりも前側または後側に位置すると前記走行装置を前進させる前記回転方向に前記電動モータを制御可能に構成され、前記レバーが前記第一溝部に沿わずに前記中立位置よりも右側または左側に位置すると前記走行装置を後進させる前記回転方向に前記電動モータを制御可能に構成されている請求項3に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記操作部に、前記レバーを前記中立位置に付勢する付勢機構が備えられている請求項4に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記第二溝部は、前記第一溝部における前後中央部分と交差する請求項3または4に記載の電動作業車。
【請求項7】
前記第二溝部の左右一端部が、前記第一溝部と交差する請求項3または4に記載の電動作業車。
【請求項8】
前記操作部に、前記第二溝部の前記左右一端部と反対側の左右他端部と交差するとともに前記レバーが操作される際に前記レバーを前後方向に案内する第三溝部が備えられている請求項7に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車において、エンジンの動力を変速するための手段として、オペレータは操作部を操作して変速装置の変速レベルを変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業車において、オペレータが操作部を操作すると、変速レベルを変更するだけではなく、作業車の進行方向を前進側と後進側との何れかに切り替え可能である。近年、エンジンに代わる駆動源として電動モータが用いられることが多くなっている。電動モータは回転方向を正転側と逆転側とに切り替え可能である。しかし、従来の操作部は、変速装置に対する操作を可能な構成であるに過ぎない。このため、電動モータを駆動源とする作業車に従来の操作部の構成を採用すると、電動モータの回転方向を切り替えるためには、別の操作具を要する。
【0005】
本発明の目的は、電動作業車において電動モータの回転方向を切替えるための操作を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動作業車は、回転駆動する電動モータと、前記電動モータの駆動に基づいて対地走行する走行装置と、前記電動モータの回転速度を変速し、変速後の動力を前記走行装置へ伝達する変速装置と、前記電動モータの回転方向、及び、前記変速装置の変速レベルを変更するための人為操作を受け付ける単一の操作部と、前記操作部の操作に基づいて前記電動モータ及び前記変速装置に対する制御信号を出力する制御装置と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、オペレータが単一の操作部を操作すれば、電動モータの回転方向と、変速装置の変速レベルと、の両方の変更が可能である。このため、電動モータの回転方向を切り替えるための別の操作具が無くても、オペレータは作業車を前進させるか後進させるかの切り替えを可能である。これにより、電動作業車において電動モータの回転方向を切り替えるための操作が簡素化される。
【0008】
本発明において、前記操作部に、前後方向及び左右方向に操作可能な単一のレバーが備えられ、前記制御装置は、前記レバーが左右に操作されると前記電動モータの前記回転方向を切替え、前記レバーが前後に操作されると前記変速装置の前記変速レベルを変更すると好適である。
【0009】
本構成であれば、オペレータがレバーを前後に操作することによって変速レベルが切り替わり、オペレータがレバーを左右に操作することによって作業車を前進させるか後進させるかが切り替わる。これにより、オペレータはレバーを直感的に操作できる。
【0010】
本発明において、前記操作部に、前記レバーが操作される際に前記レバーを前後方向に案内する第一溝部と、前記レバーが操作される際に前記レバーを左右方向に案内する第二溝部と、が備えられ、前記第二溝部は、前記第一溝部と交差すると好適である。
【0011】
本構成であれば、オペレータがレバーを前後に操作する際に、レバーは第一溝部に沿って動く。また、オペレータがレバーを左右に操作する際に、レバーは第二溝部に沿って動く。これにより、オペレータはレバーを前後と左右との夫々に確実に操作できる。つまり、本構成であれば、オペレータの手元が狂って意図せずに前進と後進とが切り替わったり、意図せずに変速レベルが切り替わったりする虞が軽減される。
【0012】
本発明において、前記第一溝部と前記第二溝部とが交差する位置は、前記レバーの中立位置であって、前記制御装置は、前記レバーが前記中立位置に位置すると前記走行装置に対する前記動力の伝達を行わず、前記レバーが前記第一溝部に沿って前記中立位置よりも前側または後側に位置すると前記走行装置を前進させる前記回転方向に前記電動モータを制御可能に構成され、前記レバーが前記第一溝部に沿わずに前記中立位置よりも右側または左側に位置すると前記走行装置を後進させる前記回転方向に前記電動モータを制御可能に構成されていると好適である。
【0013】
本構成であれば、オペレータが中立位置からレバーを前後方向に動かすと、電動作業車が前進し、オペレータが中立位置からレバーを左右方向に動かすと、電動作業車が後進する。レバーの位置が中立位置である場合には、電動作業車は停止している。つまり、オペレータは、中立位置を起点としてレバーを前後方向または左右方向へ操作することによって、電動作業車を前進または後進させることを可能である。
【0014】
本発明において、前記操作部に、前記レバーを前記中立位置に付勢する付勢機構が備えられていると好適である。
【0015】
本構成であれば、オペレータがレバーを中立位置へ戻す際に、レバーは付勢機構によって中立位置へ戻る。これにより、付勢機構が備えられない構成と比較して、オペレータがレバーを中立位置へ戻す際にレバーの位置調整を行わなくて済み、オペレータの負担が軽減される。
【0016】
本発明において、前記第二溝部は、前記第一溝部における前後中央部分と交差すると好適である。
【0017】
本構成であれば、オペレータが第一溝部における前後中央部分から左右方向へレバーを操作すると、作業車を前進させるか後進させるかが切り替わる。これにより、オペレータはレバーを直感的に操作できる。
【0018】
本発明において、前記第二溝部の左右一端部が、前記第一溝部と交差すると好適である。
【0019】
本構成であれば、オペレータが第一溝部から左右一方向へレバーを操作すると、作業車を前進させるか後進させるかが切り替わる。これにより、オペレータはレバーを直感的に操作できる。
【0020】
本発明において、前記操作部に、前記第二溝部の前記左右一端部と反対側の左右他端部と交差するとともに前記レバーが操作される際に前記レバーを前後方向に案内する第三溝部が備えられていると好適である。
【0021】
本構成によると、オペレータが第一溝部から左右方向へレバーを操作すると、レバーは第三溝部へ案内される。そして、オペレータが第三溝部に沿ってレバーを前後方向に操作すると、電動作業車が後進する際の変速レベルが切り替わる。つまり、まずはオペレータが第二溝部に沿ってレバーを左右方向に操作することによって作業車を前進させるか後進させるかが切り替わり、その後、オペレータがレバーを前後に操作することによって変速レベルが切り替わる。これにより、オペレータはレバーを直感的に操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】運転部における操作パネル周辺の模式図である。
【
図4】電動作業車の制御の構成を示すブロック図である。
【
図5】変速操作部において変速レバーを案内する変速操作溝部を示す図である。
【
図6】変速操作部において変速レバーを案内する変速操作溝部を示す図である。
【
図7】変速操作部において変速レバーを案内する変速操作溝部を示す図である。
【
図8】変速操作部において変速レバーを案内する変速操作溝部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さに基づく位置関係を示す。
【0024】
以下、本発明の一例である実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1と
図2とに示すユーティリティビークルの一例は、荷の運搬やレクリエーション等の多様な目的に使用可能な車両として構成されている。なお、本願発明によるユーティリティビークルには、全地形対応車(ATV)、バギー、オフロード車、農作業車、土木作業車も含まれている。
【0025】
図示されたユーティリティビークルには、駆動可能且つ操向操作可能な左右一対の前車輪11と、駆動可能な左右一対の後車輪12と、が備えられている。走行車体1は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12により走行可能である。走行車体1の中央部には、操縦者が搭乗して運転操作を行う運転部13が備えられている。走行車体1の後部には、荷を積載可能な荷台14が備えられている。走行車体1における荷台14よりも下方領域で、走行車体1に動力ユニット2が搭載されている。動力ユニット2は、回転駆動可能な電動モータ2mを中核部材として構成されている。
【0026】
動力伝達装置20が走行車体1に搭載されている。動力伝達装置20は、動力ユニット2からの動力を走行動力として左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12に伝達する。このように、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12は、電動モータ2mの回転駆動に基づいて対地走行する。左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12は、本発明の『走行装置』に相当する。
【0027】
運転部13は、枠状のロプスフレーム15で囲まれて保護されている。運転部13には、操縦者が着座する運転座席16が備えられている。また、運転部13における運転座席16の前方には、各種操作具や表示デバイスが組み付けられているフロントパネル3と、左右の前車輪11の操向操作用のステアリングハンドル17とが設けられている。ステアリングハンドル17の下方に位置するフロアにはアクセルペダル18が設けられている。
【0028】
動力ユニット2からの動力が入力される動力伝達装置20には、ギヤ伝動機構21、後輪差動機構22、前輪差動機構23、などが含まれる。この実施形態でのギヤ伝動機構21に変速装置24が含まれている。変速装置24は、高低変速クラッチによって、変速レベルを高速段と低速段とに選択できる。つまり、変速装置24は、電動モータ2mの回転速度を変速し、変速後の動力を左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12へ伝達する。
【0029】
フロントパネル3には、液晶パネルやLEDランプを有するメータパネル30、単一の変速操作部31、車速制限操作具34、などが組み付けられている。変速操作部31は、変速装置24の変速レベルを切り替えるための人為操作を受け付ける。変速操作部31に、単一の変速レバー32と、変速操作溝部33と、付勢機構32aと、が備えられている。変速操作溝部33は、フロントパネル3において略H字状に形成されている。変速レバー32は、略H字状の変速操作溝部33に沿って変位可能である。変速レバー32は、前後方向及び左右方向に操作可能に構成されている。また、付勢機構32aは、変速レバー32を後述の中立位置に位置するように付勢する。付勢機構32aは、板バネやコイルバネやトーションバネであっても良いし、ゴムであっても良いし、バネとゴムとの少なくとも一方を含む複合体であっても良い。変速操作部31は、本発明の『単一の操作具』に相当する。変速レバー32は、本発明の『単一のレバー』に相当する。
【0030】
車速制限操作具34は車速の上限値を設定する、車速制限操作具34は円形のダイヤル式操作具である。車速制限操作具34の周囲には、弧状の車速上限値表示部36が設けられている。車速上限値表示部36には、車速を示す弧状目盛りが形成されているとともに、この弧状目盛りの上方を車速制限操作具34の操作に機械的に連動する車速上限値指針37が備えられている。
【0031】
〔モータの制御に係る構成〕
図4に示すように、電動モータ2mの制御構成に、制御装置40と、インバータ41と、が備えられている。制御装置40は、電動作業車の制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として構成されている。制御装置40は、電動モータ2mの駆動と変速装置24の変速レベルとを制御する。変速レバー32は制御装置40と接続されている。また、アクセルペダル18も制御装置40と接続されている。
【0032】
走行用バッテリ装置42は、例えばリチウムイオンバッテリである。図示はしないが、走行用バッテリ装置42は、低電圧の小型の単位電池(セル)を多数積層した状態で構成されている。走行用バッテリ装置42の出力電圧は、例えば250ボルトである。単位電池(セル)は収納ケースによって収納されている。これら単位電池(セル)は、当該収納ケースによって密閉されている。
【0033】
制御装置40は、不図示の信号用ハーネスを介してインバータ41と接続されている。制御装置40は、アクセルペダル18の指令に応じて、インバータ41に指令信号を出力する。インバータ41は、制御装置40の指令信号に応じて、走行用バッテリ装置42から電動モータ2mに供給される電力(電圧値、周波数、及び、電流値等)を調整して電動モータ2mの出力を制御する。
【0034】
制御装置40は、不図示の信号用ハーネスを介して変速装置24と接続されている。制御装置40は、変速レバー32の指令に応じて、変速装置24に指令信号を出力する。変速装置24は、制御装置40の指令信号に応じて、変速段を高速段と低速段との何れかに設定する。
【0035】
本実施形態では、変速レバー32は、前進と後進とを切り替える前後進切換レバーとしても用いられている。変速操作溝部33に、前進操作用溝部33Fと、後進操作用溝部33Rと、中間溝部33Mと、が形成されている。前進操作用溝部33Fと後進操作用溝部33Rとの夫々は左右に並び、変速レバー32が操作される際に変速レバー32を前後方向に案内する。中間溝部33Mは、前進操作用溝部33Fと後進操作用溝部33Rとの間に位置し、前進操作用溝部33Fと後進操作用溝部33Rとの夫々に対して連通する。
【0036】
つまり、中間溝部33Mは、前進操作用溝部33Fと後進操作用溝部33Rとの夫々と交差する。中間溝部33Mは、変速レバー32が操作される際に変速レバー32を左右方向に案内する。中間溝部33Mの左右一端部が、前進操作用溝部33Fと交差する。また、後進操作用溝部33Rは、中間溝部33Mの当該左右一端部と反対側の左右他端部と交差するとともに変速レバー32が操作される際に変速レバー32を前後方向に案内する。前進操作用溝部33Fは本発明の『第一溝部』に相当する。中間溝部33Mは本発明の『第二溝部』に相当する。後進操作用溝部33Rは本発明の『第三溝部』に相当する。
【0037】
前進操作用溝部33Fの両端部は、前進低速位置33a及び前進高速位置33bとして用いられる。また、後進操作用溝部33Rの両端部は、後進低速位置33c及び後進高速位置33dとして用いられる。前進低速位置33aと前進高速位置33bとの間の中間位置は前進中立位置33eである。後進低速位置33cと後進高速位置33dとの間の中間位置は後進中立位置33fである。前進中立位置33eと後進中立位置33fとは中間溝部33Mで接続されている。換言すると、中間溝部33Mは、前進操作用溝部33Fと後進操作用溝部33Rとの夫々における前後中央部分と交差する。
【0038】
本実施形態では、変速操作部31に付勢機構32a(
図4)が備えられている。
図5と、後述の
図6~
図8と、に付勢機構32aの付勢範囲BRがハッチング線で示されている。付勢範囲BRは、前進操作用溝部33Fにおける前後中央領域と、後進操作用溝部33Rにおける前後中央領域と、中間溝部33Mと、に亘る。変速レバー32が付勢範囲BRに位置する状態で、オペレータが変速レバー32を操作しなければ、変速レバー32は付勢機構32aの付勢力によって前進中立位置33eに位置する。即ち、前進操作用溝部33Fと中間溝部33Mとが交差する位置は、変速レバー32の中立位置である。オペレータは、付勢機構32aの付勢力に抗して、変速レバー32を前進低速位置33aと前進高速位置33bと後進低速位置33cと後進高速位置33dとの何れかに位置するように操作する。
【0039】
変速レバー32が前進中立位置33eに位置している場合、制御装置40は、アクセルペダル18が操作されている場合であっても、電動モータ2mを駆動させない。このとき、インバータ41は、電動モータ2mへ電力を供給しない。変速レバー32が後進中立位置33fに位置している場合も同じである。つまり、制御装置40は、変速レバー32が前進中立位置33eと後進中立位置33fとの何れかに位置すると左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12に対する動力の伝達を行わない。
【0040】
変速レバー32が前進低速位置33aと前進高速位置33bとの何れかに位置している場合、制御装置40は、アクセルペダル18の操作に応じて、インバータ41に正転用の指令信号を出力する。インバータ41は、制御装置40の指令信号に応じて、電動モータ2mを正転制御する。つまり、変速レバー32が前進操作用溝部33Fに沿って前進中立位置33eよりも前側または後側に位置すると、制御装置40は、アクセルペダル18の操作に応じて、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12を前進させる回転方向に電動モータ2mを制御する。このように、変速レバー32が前進操作用溝部33Fに沿って前進中立位置33eよりも前側または後側に位置すると、制御装置40は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12を前進させる回転方向に電動モータ2mを制御可能に構成されている。
【0041】
変速レバー32が後進低速位置33cと後進高速位置33dとの何れかに位置している場合、制御装置40は、アクセルペダル18の操作に応じて、インバータ41に逆転用の指令信号を出力する。そしてインバータ41は、制御装置40からの逆転用の指令信号に応じて、電動モータ2mを逆転制御する。この構成を換言すれば、変速レバー32が前進操作用溝部33Fに沿わずに中立位置よりも左側に位置すると、制御装置40は、アクセルペダル18の操作に応じて、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12を後進させる回転方向に電動モータ2mを制御する。このように、変速レバー32が前進操作用溝部33Fに沿わずに中立位置よりも左側に位置すると、制御装置40は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12を後進させる回転方向に電動モータ2mを制御可能に構成されている。
【0042】
つまり、制御装置40は、変速レバー32が左右に操作されると電動モータ2mの回転方向を切替え、変速レバー32が前後に操作されると変速装置24の変速レベルを変更する。この構成によって、本実施形態では、動力ユニット2には、前進走行と後進走行とを切り替えるための逆転機構は備えられていない。換言すると、前進走行と後進走行との夫々で電動モータ2mの回転方向が切り替わる。このように、変速レバー32は、電動モータ2mの回転方向、及び、変速装置24の変速レベルを変更するための人為操作を受け付ける。そして制御装置40は、アクセルペダル18が操作されると、変速レバー32の操作に基づいて電動モータ2m及び変速装置24に対する制御信号を出力する。このように、本実施形態であれば、電動モータ2mを駆動源とする作業車において、電動モータ2mにおける回転方向の切り替えと、変速装置24における変速レベルの切り替えと、が単一の変速操作部31、即ち単一の変速レバー32によって可能である。
【0043】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0044】
(1)
図5に示す後進操作用溝部33Rが前進操作用溝部33Fに対して左側に位置するが、後進操作用溝部33Rが前進操作用溝部33Fに対して右側に位置する構成であっても良い。つまり、変速レバー32が前進操作用溝部33Fに沿わずに中立位置よりも右側または左側に位置すると、制御装置40は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12を後進させる回転方向に電動モータ2mを制御可能な構成であっても良い。
【0045】
(2)
図5に示す変速操作溝部33に代えて、
図6に示す変速操作溝部51を備える構成であっても良い。
図6に示す例では、前進操作用溝部51F(第一溝部)が前後方向に沿って延び、後進操作用溝部51R(第三溝部)が前後方向に沿って延びている。前進操作用溝部51Fの前後両端部は、前進低速位置51a及び前進高速位置51bとして用いられる。後進操作用溝部51Rの前後両端部は、後進低速位置51c及び後進高速位置51dとして用いられる。後進低速位置51cが後進高速位置51dよりも上側に位置する。前進低速位置51aと前進高速位置51bとの間の中間位置が前進後進中立位置51eである。前進後進中立位置51eと後進低速位置51cとに亘って中間溝部51M(第二溝部)が位置する。中間溝部51Mは前進操作用溝部51Fと後進操作用溝部51Rとの夫々に対して連通する。前進操作用溝部51Fにおいて前進後進中立位置51eを中心として上下の予め設定された範囲、かつ、中間溝部51Mにおいて前進後進中立位置51eよりも左側に予め設定された範囲は、付勢機構32aによる付勢範囲BRである。なお、後進操作用溝部51Rが前進操作用溝部51Fに対して左側に位置するが、後進操作用溝部51Rが前進操作用溝部51Fに対して右側に位置する構成であっても良い。
【0046】
(3)
図5に示す変速操作溝部33に代えて、
図7に示す変速操作溝部52を備える構成であっても良い。
図7に示す例では、前進操作用溝部52F(第一溝部)が前後方向に沿って延び、後進操作用溝部52R(第二溝部)が左右方向に沿って延びている。前進操作用溝部52Fと後進操作用溝部52Rとが十字に交差する。前進操作用溝部52Fの前後両端部は、前進低速位置52a及び前進高速位置52bとして用いられる。後進操作用溝部52Rの左右両端部は、後進低速位置52c及び後進高速位置52dとして用いられる。前進低速位置52aと前進高速位置52bとの間の中間位置、かつ、後進低速位置52cと後進高速位置52dとの間の中間位置が、前進操作用溝部52Fと後進操作用溝部52Rとが十字に交差する位置、即ち前進後進中立位置52eである。前進操作用溝部52Fにおいて前進後進中立位置52eを中心として上下の予め設定された範囲、かつ、後進操作用溝部52Rにおいて前進後進中立位置52eを中心として左右の予め設定された範囲は、付勢機構32aによる付勢範囲BRである。
【0047】
(4)
図5に示す変速操作溝部33に代えて、
図8に示す変速操作溝部53を備える構成であっても良い。
図8に示す例では、前進操作用溝部53F(第一溝部)が前後方向に沿って延び、後進操作用溝部53R(第三溝部)が前後方向に沿って延びている。前進操作用溝部53Fの前後両端部は、前進低速位置53a及び前進高速位置53bとして用いられる。前進低速位置53aが前進高速位置53bよりも下側に位置する。後進操作用溝部53Rの前後両端部は、後進低速位置53c及び後進高速位置53dとして用いられる。後進低速位置53cが後進高速位置53dよりも上側に位置する。前進低速位置53aと後進低速位置53cとに亘って中間溝部53M(第二溝部)が位置する。中間溝部53Mは前進操作用溝部53Fと後進操作用溝部53Rとの夫々に対して連通する。中間溝部53Mは横方向に延び、中間溝部53Mの左右中央領域に前進後進中立位置53eが存在する。中間溝部53Mにおいて前進後進中立位置53eを中心として左右の予め設定された範囲は、付勢機構32aによる付勢範囲BRである。なお、後進操作用溝部51Rが前進操作用溝部51Fに対して左側に位置するが、後進操作用溝部51Rが前進操作用溝部51Fに対して右側に位置する構成であっても良い。
【0048】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電動作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
2m :電動モータ
11 :前車輪(走行装置)
12 :後車輪(走行装置)
24 :変速装置
31 :変速操作部(単一の操作部)
32 :変速レバー(単一のレバー)
32a :付勢機構
33F :前進操作用溝部(第一溝部)
33M :中間溝部(第二溝部)
33R :後進操作用溝部(第三溝部)
33e :前進中立位置(中立位置)
40 :制御装置
51F :前進操作用溝部(第一溝部)
51M :中間溝部(第二溝部)
51R :後進操作用溝部(第三溝部)
51e :前進後進中立位置(中立位置)
52F :前進操作用溝部(第一溝部)
52R :後進操作用溝部(第二溝部)
52e :前進後進中立位置(中立位置)
53F :前進操作用溝部(第一溝部)
53M :中間溝部(第二溝部)
53R :後進操作用溝部(第三溝部)