(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070585
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】エレベータ通信システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240516BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240516BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20240516BHJP
G10L 13/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 T
B66B3/00 P
G10L15/00 200C
G10L13/00 100G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181175
(22)【出願日】2022-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 一朗
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA03
3F303CA05
3F303CB30
3F303DB27
3F303EA01
3F304EA35
3F304ED01
3F304ED07
3F304ED17
(57)【要約】
【課題】簡潔な構成でもって、乗りかご内の様々な言語の乗客(人)と、外部の複数の場所で通話可能であるエレベータ通信システムを提供する。
【解決手段】エレベータ通信システムは、エレベータを制御する制御装置と、エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置とを備える。制御装置は、かご通話装置と乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、移動可能な移動通話装置が乗りかごの内部にあることを検知する検知部とを備える。通信部は、移動通話装置が乗りかごの内部にあることを検知部が検知した場合に、外部通話装置の通信相手をかご通話装置から移動通話装置へと切り替える。移動通話装置は、移動通話装置と外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを制御する制御装置と、
前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、
移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、
前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の通信相手を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、
前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備えたエレベータ通信システム。
【請求項2】
前記移動通話装置は、自律移動体に設けられた請求項1に記載のエレベータ通信システム。
【請求項3】
前記移動通話装置は、携帯端末装置に設けられた請求項1に記載のエレベータ通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、予め設定された音声アナウンスを前記かご通話装置に再生させる音声アナウンス部をさらに備え、
前記音声アナウンス部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記音声アナウンスの出力先を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、
前記翻訳部は、前記音声アナウンスの言語を翻訳する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベータ通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗りかご内に設けられた非常呼びボタンの押下により、乗りかご内の乗客が監視センターのオペレーターと通話可能なエレベータの遠隔監視システムにおいて、乗りかご内の乗客の言語を認識する言語認識手段と、この言語認識手段によって認識された乗客の言語を監視センターのオペレーターが使う言語に翻訳する翻訳手段と、この翻訳手段によって翻訳された乗客の音声をオペレーター端末に音声出力し、オペレーターが発した音声を翻訳手段によって乗客が使う言語に逆翻訳して乗りかご内に音声出力する音声通話制御手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるようなエレベータ通信システムにおいては、監視センターに翻訳手段を設けているため、乗りかご内の乗客の言語を認識する必要があり、処理が複雑化してしまう。また、翻訳手段が設けられていない場所、例えば、エレベータが設置された建物の管理人室との通話は翻訳することができない。管理人室との通話も翻訳するためには、監視センターとは別に管理人室にも翻訳手段を設けなければならない。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、簡潔な構成でもって、乗りかご内にいる様々な言語の乗客と、外部の複数の場所で通話可能であるエレベータ通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータ通信システムは、エレベータを制御する制御装置と、前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、前記制御装置は、前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の通信相手を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベータ通信システムによれば、簡潔な構成でもって、乗りかご内にいる様々な言語の乗客と、外部の複数の場所で通話可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るエレベータ通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係るエレベータ通信システムの構成例を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態1に係るエレベータ通信システムの動作の一例を示すフロー図である。
【
図4】実施の形態1に係るエレベータ制御装置の機能を実現する構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係るエレベータ通信システムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1から
図4を参照しながら、本開示の実施の形態1について説明する。
図1はエレベータ通信システムの構成を示すブロック図である。
図2はエレベータ通信システムの構成例を模式的に示す図である。
図3はエレベータ通信システムの動作の一例を示すフロー図である。
図4はエレベータ制御装置の機能を実現する構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
この実施の形態に係るエレベータ通信システムは、建物に設置されたエレベータの乗りかご10の内部と外部との間で通話(非常通話)が可能なものである。
図1に示すようにエレベータは、乗りかご10とエレベータ制御装置40とを備えている。乗りかご10は、建物に設けられた図示しない昇降路内を昇降可能である。エレベータ制御装置40は、乗りかご10の昇降を含むエレベータの運転に係る動作全般を制御する。
【0012】
乗りかご10の内部には、かご通話装置11が設置されている。かご通話装置11は、乗りかご10の内部にいる人が外部と通話を行うためのものである。このため、かご通話装置11には、図示しないマイク及びスピーカが備えられている。かご通話装置11は、具体的に例えばインターホンである。かご通話装置11は、エレベータ制御装置40と通信可能に接続されている。
【0013】
当該エレベータが設けられた建物の外部には、遠隔監視センター20が設けられている。遠隔監視センター20は、当該エレベータを遠隔から監視するためのものである。遠隔監視センター20には、センター通話装置21が設けられている。センター通話装置21は、遠隔監視センター20にいるオペレーター(監視員)が乗りかご10の内部にいる人等と通話を行うためのものである。このため、センター通話装置21には、図示しないマイク及びスピーカが備えられている。
【0014】
センター通話装置21は、エレベータ制御装置40と通信ネットワーク60を介して通信可能に接続されている。通信ネットワーク60は、例えば、公衆電話回線網、IP通信網402等を利用して構成されている。IP通信網は、通信プロトコルとしてIP(Internet Protocol)を用いた通信網である。なお、センター通話装置21とエレベータ制御装置40とは、通信ネットワーク60を介さずに専用の通信回線により接続されていてもよい。
【0015】
当該エレベータが設けられた建物には、管理人室30が設けられている。管理人室30には、当該エレベータを含む当該建物の設備を管理する管理人が駐在している。管理人室30には、管理人通話装置31が設けられている。管理人通話装置31は、管理人室30にいる管理人が乗りかご10の内部にいる人等と通話を行うためのものである。このため、管理人通話装置31には、図示しないマイク及びスピーカが備えられている。管理人通話装置31は、エレベータ制御装置40と通信可能に接続されている。
【0016】
センター通話装置21及び管理人通話装置31は、乗りかご10の外部に設けられた外部通話装置の例である。なお、外部通話装置は、センター通話装置21及び管理人通話装置31の両方である必要はなく、いずれか一方のみであってもよい。
【0017】
乗りかご10の内部には、検知装置12が設けられている。検知装置12は、移動通話装置50を検知するためのものである。移動通話装置50は、移動通話部51を備えている。移動通話部51は、外部通話装置であるセンター通話装置21及び管理人通話装置31と通話する機能を有している。移動通話部51は、図示しないマイク及びスピーカを備えている。移動通話装置50は、エレベータ制御装置40と通信可能である。移動通話装置50とエレベータ制御装置40との間の通信には、無線通信が用いられる。
【0018】
移動通話装置50は、専用装置でもよいし、例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等の汎用の携帯端末装置に設けられてもよい。また、
図2に示すように、移動通話装置50は、移動ロボットのような自律移動体70に設けられていてもよい。移動通話装置50が携帯端末装置に設けられている場合、移動通話装置50は、当該携帯端末装置を所持する人とともに移動することができる。移動通話装置50が自律移動体70に設けられている場合、移動通話装置50は、自律して移動可能である。このように、移動通話装置50は移動可能であり、したがって、移動通話装置50は、乗りかご10の内部だけでなく乗りかご10の外部にも存在し得る。
【0019】
この実施の形態に係るエレベータ通信システムは、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知可能である。乗りかご10の内部にある移動通話装置50の検知は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)を利用して行うことができる。この場合、移動通話装置50はRFIDタグの機能を有している。そして、検知装置12は、移動通話装置50のRFIDタグを読み取り可能なRFIDリーダである。
【0020】
他に例えば、乗りかご10の内部にある移動通話装置50の検知は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の既存の無線通信技術を利用して行うこともできる。この場合、移動通話装置50及び検知装置12は、通信ノードとして機能する。そして、検知装置12の通信可能範囲が、乗りかご10の内部になるように設定される。また、この場合には、前述した移動通話装置50とエレベータ制御装置40との間の通信を検知装置12を介して行うようにしてもよい。
【0021】
検知装置12は、乗りかご10の内部を撮影するカメラであってもよい。この場合、検知装置12であるカメラが撮影した画像を処理することで、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知できる。具体的に例えば、移動通話装置50が自律移動体70に設けられている場合、自律移動体70の表面に当該自律移動体70を特定可能な表示、例えば、文字、図形、二次元コード等を予め設けておき、検知装置12であるカメラが撮影した画像中に前述した表示があるか否かを判定することで、移動通話装置50が乗りかご10の内部にあるか否かを判定できる。
【0022】
エレベータ制御装置40は、通信部41、切替部42及び検知部43を備えている。通信部41は、かご通話装置11と外部通話装置であるセンター通話装置21及び管理人通話装置31との間での音声通話を仲介し、これらの通話装置の間で音声通話データを通信させる。すなわち、通信部41は、かご通話装置11のマイクに入力された音声通話データを、外部通話装置に送信する。そして、外部通話装置のスピーカは、エレベータ制御装置40の通信部41から送信された音声通話データを出力する。また、外部通話装置は、当該外部通話装置のマイクに入力された音声通話データを、エレベータ制御装置40に送信する。エレベータ制御装置40の通信部41は、外部通話装置から送信された音声通話データを受信する。そして、かご通話装置11のスピーカは、通信部41が受信した音声通話データを出力する。
【0023】
検知部43は、乗りかご10の検知装置12の出力に基づいて、移動通話装置50が乗りかご10の内部にあることを検知する。この実施の形態に係るエレベータ通信システムは、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知可能である。例えば、検知にRFIDを利用する場合、検知部43は、RFIDリーダである検知装置12が移動通話装置50のRFIDタグを読み取っているか否かを判定することで、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知する。また、検知に無線通信技術を利用する場合、検知部43は、検知装置12が移動通話装置50と通信できるか否かを判定することで、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知する。検知装置12がカメラである場合、検知部43は、前述したように、検知装置12が撮影した画像を処理することで、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知する。
【0024】
切替部42は、外部通話装置の通信相手すなわち通信部41の接続先を、かご通話装置11と移動通話装置50のいずれにするのかを切り替える。切替部42は、外部通話装置の通信相手の切り替えを、検知部43の検知結果に基づいて行う。すなわち、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知していない場合、切替部42は、外部通話装置の通信相手をかご通話装置11にする。したがって、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知していないときには、通信部41は、かご通話装置11と外部通話装置との間での音声通話を仲介し、これらの通話装置の間で音声通話データを通信させる。
【0025】
そして、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知すると、切替部42は、外部通話装置の通信相手をかご通話装置11から移動通話装置50に切り替える。したがって、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知した場合、通信部41は、外部通話装置の通信相手を移動通話装置50に切り替える。これにより、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知している間は、通信部41は、外部通話装置と移動通話装置50との間での音声通話を仲介し、これらの通話装置の間で音声通話データを通信させる。
【0026】
この場合、通信部41は、移動通話部51のマイクに入力された音声通話データを、外部通話装置に送信する。そして、外部通話装置のスピーカは、エレベータ制御装置40の通信部41から送信された音声通話データを出力する。また、外部通話装置は、当該外部通話装置のマイクに入力された音声通話データを、エレベータ制御装置40に送信する。エレベータ制御装置40の通信部41は、外部通話装置から送信された音声通話データを受信する。そして、移動通話部51のスピーカは、通信部41が受信した音声通話データを出力する。
【0027】
移動通話装置50は、翻訳部52をさらに備えている。翻訳部52は、移動通話装置50と外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する。この翻訳には既知の手法を用いることができる。ここで、移動通話装置50を使用している話者は、乗りかご10内の乗客である。移動通話装置50の話者は第1言語を使用しているとする。また、外部通話装置を使用している話者は、遠隔監視センター20のオペレーター又は管理人室30の管理人である。外部通話装置の話者は第2言語を使用しているとする。第2言語は、第1言語とは異なる言語である。第1言語及び第2言語は、翻訳部52に予め設定しておくとよい。
【0028】
この場合、翻訳部52は、移動通話部51のマイクに入力された音声通話データを第1言語から第2言語に翻訳する。通信部41は、翻訳部52により第2言語に翻訳された音声通話データを、外部通話装置に送信する。そして、外部通話装置のスピーカは、第2言語に翻訳音声通話データを出力する。また、外部通話装置は、当該外部通話装置のマイクに入力された音声通話データを、エレベータ制御装置40に送信する。エレベータ制御装置40の通信部41は、外部通話装置から送信された音声通話データを受信する。移動通話装置の翻訳部52は、通信部41が受信した音声通話データを第2言語から第1言語に翻訳する。そして、移動通話部51のスピーカは、翻訳部52により第1言語に翻訳された音声通話データを出力する。
【0029】
以上のように構成されたエレベータ通信システムにおいて、外国人乗客は移動翻訳装置50を所持して乗りかご10に乗る。移動翻訳装置50は、事前にマニュアル操作又は自動で使用言語を設定できる。設定された使用言語は、前述した第1言語に相当する。乗客が乗りかご10内に閉じ込められる等の非常時において、例えば、乗りかご10内に設けられた図示しない非常呼びボタンを乗客が押下すると、移動翻訳装置50を所持していない乗客の場合には、かご通話装置11とセンター通話装置21又は管理人通話装置31とを使用して非常通話が行なわれる。
【0030】
一方、移動翻訳装置50を所持している乗客の場合には、検知部43が乗りかご10の内部にある移動翻訳装置50を検知し、切替部42が通信部41の接続先を移動翻訳装置50に切り替える。このため、乗りかご10内の乗客は移動通話装置50を使用して、遠隔監視センター20又は管理人室30と非常通話を行う。この際、移動通話装置50の翻訳部52により、移動通話部51での使用言語は事前に設定した言語に翻訳される。したがって、乗りかご10内の乗客は事前に設定した言語で非常通話を行うことができる。
【0031】
このようにして、この実施の形態に係るエレベータ通信システムによれば、遠隔監視センター20及び管理人室30の両方に翻訳装置を設けることなく、乗りかご10内の乗客は、自身が普段使用する言語で遠隔監視センター20及び管理人室30の両方と通話できる。このため、簡潔な構成でもって、乗りかご10内にいる様々な言語の乗客と、外部の複数の場所で通話できる。すなわち、エレベータ設備の簡単な改造で、乗りかご10内の乗客が任意の言語で遠隔監視センター20のオペレーター、及び、管理人室30の管理人と適切に意思疎通が可能である。また、それぞれの乗客は自身が使用する移動通話装置50に、自身が使用する言語を予め設定しておけば、言語の種類を認識する処理を必要とすることなく、精度よく翻訳が可能である。さらに、かご通話装置11と移動通話装置50とを切り替えて使用することで、多重音声にならず明瞭に聞き取ることができる。
【0032】
なお、通話に使用される移動通話装置50の数は1つに限られない。乗りかご10内に2つ以上の移動通話装置50が検知部43により検知された場合、切替部42は、通信部41の接続先を2つ以上の移動通話装置50にしてもよい。この場合、それぞれの移動通話装置50の翻訳部52に設定された前述の第1言語は、異なっていてもよい。このようにすることで、乗りかご10内に異なる言語の話者が乗り合わせた場合であっても、それぞれの乗客が所持する移動通話装置50、あるいは、自律移動体70に設けられた移動通話装置50により、それぞれの乗客の使用言語で通話を行うことができる。
【0033】
図1に示すように、エレベータ制御装置40は、音声アナウンス部44をさらに備えている。音声アナウンス部44は、予め設定された音声アナウンスをかご通話装置11のスピーカで再生させる。予め設定される音声アナウンスとして、具体的に例えば、エレベータの以上が検出された際の「故障信号を検出しました。保守会社に通報中です」等を挙げることができる。
【0034】
切替部42は、検知部43の検知結果に基づいて、音声アナウンスの出力先を、かご通話装置11と移動通話装置50のいずれにするのかを切り替える。すなわち、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知していない場合、切替部42は、音声アナウンスの出力先をかご通話装置11にする。したがって、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知していないときには、音声アナウンス部44は、音声アナウンスをかご通話装置11のスピーカで再生させる。
【0035】
そして、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知すると、切替部42は、音声アナウンスの出力先をかご通話装置11から移動通話装置50に切り替える。したがって、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知した場合、音声アナウンス部44は、音声アナウンスの出力先を移動通話装置50に切り替える。これにより、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知している間は、音声アナウンス部44は、音声アナウンスを移動通話装置50のスピーカで再生させる。
【0036】
この際、移動通話装置50の翻訳部52は、音声アナウンスの言語を翻訳する。そして、移動通話部51のスピーカは、翻訳部52により翻訳された音声アナウンスを再生する。したがって、乗りかご10内の乗客は事前に設定した言語の音声アナウンスを聞くことができる。このようにして、任意の言語による音声アナウンスを乗りかご10内で再生することができる。
【0037】
次に、以上のように構成されたエレベータ通信システムの動作例を
図3のフロー図を参照しながら説明する。まず、ステップS11において、エレベータ制御装置40の切替部42は、検知装置12及び検知部43による検知状況を確認する。続くステップS12において、切替部42は、ステップS11で確認した検知状況が、乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知しているものであるか否かを判定する。乗りかご10の内部にある移動通話装置50が検知されていない場合、エレベータ制御装置40は次にステップS13の処理を行う。ステップS13においては、切替部42は、外部通話装置であるセンター通話装置21又は管理人通話装置31が通信する通話装置に、かご通話装置11を選択する。
【0038】
一方、ステップS12で乗りかご10の内部にある移動通話装置50が検知されている場合、エレベータ制御装置40は次にステップS14の処理を行う。ステップS14においては、切替部42は、外部通話装置であるセンター通話装置21又は管理人通話装置31が通信する通話装置に、移動通話装置50を選択する。
【0039】
ステップS13及びS14の後、エレベータ制御装置40は次にステップS15の処理を行う。ステップS15においては、通信部41は、ステップS13又はS14で選択された通話装置と外部通話装置との間で、音声通話を行わせる。あるいは、音声アナウンス部44は、ステップS13又はS14で選択された通話装置で音声アナウンスを再生させる。ステップS15の処理が完了すると、一連の動作は終了となる。
【0040】
なお、切替部42は、通信部41の接続先をかご通話装置11と移動通話装置50の両方にすることが可能であってもよい。例えば、乗りかご10内に移動通話装置50を所持した乗客と移動通話装置50を所持していない乗客とが乗り合わせている場合には、通信部41の接続先をかご通話装置11と移動通話装置50の両方にすることで、移動通話装置50を所持した乗客は、自身が所持する移動通話装置50を用いて通話し、同時に、移動通話装置50を所持していない乗客は、かご通話装置11を用いて通話できる。
【0041】
乗りかご10内に移動通話装置50を所持した乗客と移動通話装置50を所持していない乗客とが乗り合わせていることの判定は、例えば、乗りかご10内の乗客数を検出し、乗客数が乗りかご10内にあることが検知された移動通話装置50の数よりも多いか否かを判定することで行うことができる。乗りかご10内の乗客数の検出は、例えば、カメラにより乗りかご10内を撮影したり、秤装置により乗りかご10内の重量を検出したりすることで行うことができる。
【0042】
また、移動翻訳装置50は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を備えていてもよい。この場合、移動翻訳装置50は、翻訳部52により翻訳された音声通話データ及び音声アナウンスの一方又は両方を表示装置に表示してもよい。このようにすることで、乗りかご10内で音声が聞き取り難い状況であったり、乗客が聴覚障がい者であったりした場合にも、通話内容、アナウンス内容を伝えることが可能である。
【0043】
なお、
図4は、この実施の形態におけるエレベータ制御装置40の機能を実現する構成の一例を示す図である。エレベータ制御装置40の機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ101及びメモリ102を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア103であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア103として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ101及びメモリ102を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア103として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ101及びメモリ102をさらに備えている。
【0044】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア103である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ101及び少なくとも1つのメモリ102を備える場合、エレベータ制御装置40の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0045】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ102には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0046】
このようにして、エレベータ制御装置40の処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、エレベータ制御装置40の各機能を実現することができる。なお、エレベータ制御装置40の処理回路が少なくともプロセッサ101及びメモリ102を備える場合、エレベータ制御装置40においてメモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101が実行し、エレベータ制御装置40のハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、エレベータ制御装置40が備える各部の機能が実現される。
【符号の説明】
【0047】
10 乗りかご
11 かご通話装置
12 検知装置
20 遠隔監視センター
21 センター通話装置
30 管理人室
31 管理人通話装置
40 エレベータ制御装置
41 通信部
42 切替部
43 検知部
44 音声アナウンス部
50 移動通話装置
51 移動通話部
52 翻訳部
60 通信ネットワーク
70 自律移動体
101 プロセッサ
102 メモリ
103 専用ハードウェア
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを制御する制御装置と、
前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、
移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、
前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の音声通話相手を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、
前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備えたエレベータ通信システム。
【請求項2】
前記移動通話装置は、自律移動体に設けられた請求項1に記載のエレベータ通信システム。
【請求項3】
前記移動通話装置は、携帯端末装置に設けられた請求項1に記載のエレベータ通信システム。
【請求項4】
エレベータを制御する制御装置と、
前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、
移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、
前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の通信相手を前記かご通話装置及び前記移動通話装置の両方にし、
前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備えたエレベータ通信システム。
【請求項5】
前記移動通話装置は、自律移動体に設けられた請求項4に記載のエレベータ通信システム。
【請求項6】
前記移動通話装置は、携帯端末装置に設けられた請求項4に記載のエレベータ通信システム。
【請求項7】
前記制御装置は、予め設定された音声アナウンスを前記かご通話装置に再生させる音声アナウンス部をさらに備え、
前記音声アナウンス部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記音声アナウンスの出力先を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、
前記翻訳部は、前記音声アナウンスの言語を翻訳する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエレベータ通信システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示に係るエレベータ通信システムは、エレベータを制御する制御装置と、前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、前記制御装置は、前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の音声通話相手を前記かご通話装置から前記移動通話装置へと切り替え、前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備える。
あるいは、本開示に係るエレベータ通信システムは、エレベータを制御する制御装置と、前記エレベータの乗りかごの内部に設けられたかご通話装置と、を備え、前記制御装置は、前記かご通話装置と前記乗りかごの外部に設けられた外部通話装置との間で音声通話データを通信させる通信部と、移動可能な移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを検知する検知部と、を備え、前記通信部は、前記移動通話装置が前記乗りかごの内部にあることを前記検知部が検知した場合に、前記外部通話装置の通信相手を前記かご通話装置及び前記移動通話装置の両方にし、前記移動通話装置は、前記移動通話装置と前記外部通話装置との間での音声通話で用いられている言語を翻訳する翻訳部を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
以上のように構成されたエレベータ通信システムにおいて、外国人乗客は移動通話装置50を所持して乗りかご10に乗る。移動通話装置50は、事前にマニュアル操作又は自動で使用言語を設定できる。設定された使用言語は、前述した第1言語に相当する。乗客が乗りかご10内に閉じ込められる等の非常時において、例えば、乗りかご10内に設けられた図示しない非常呼びボタンを乗客が押下すると、移動通話装置50を所持していない乗客の場合には、かご通話装置11とセンター通話装置21又は管理人通話装置31とを使用して非常通話が行なわれる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
一方、移動通話装置50を所持している乗客の場合には、検知部43が乗りかご10の内部にある移動通話装置50を検知し、切替部42が通信部41の接続先を移動通話装置50に切り替える。このため、乗りかご10内の乗客は移動通話装置50を使用して、遠隔監視センター20又は管理人室30と非常通話を行う。この際、移動通話装置50の翻訳部52により、移動通話部51での使用言語は事前に設定した言語に翻訳される。したがって、乗りかご10内の乗客は事前に設定した言語で非常通話を行うことができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
また、移動通話装置50は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を備えていてもよい。この場合、移動通話装置50は、翻訳部52により翻訳された音声通話データ及び音声アナウンスの一方又は両方を表示装置に表示してもよい。このようにすることで、乗りかご10内で音声が聞き取り難い状況であったり、乗客が聴覚障がい者であったりした場合にも、通話内容、アナウンス内容を伝えることが可能である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】