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特開2024-70609容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070609
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20240516BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20240516BHJP
   A23G 9/50 20060101ALI20240516BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20240516BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20240516BHJP
   A23G 9/52 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C12G3/04
A23G9/34
A23G9/50
A23L29/20
A23L29/30
A23G9/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181218
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井上 明大
【テーマコード(参考)】
4B014
4B041
4B115
【Fターム(参考)】
4B014GB21
4B014GE12
4B014GG07
4B014GG16
4B014GK03
4B014GK08
4B014GL03
4B014GP01
4B014GP12
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE08
4B041LK12
4B041LK30
4B041LP10
4B041LP16
4B115LH01
4B115LH11
4B115LP01
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】炭酸ガスの噴出により氷塊が破砕される容器詰めシャーベット状飲料用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の容器詰めシャーベット状飲料用組成物は、次の成分(a)~(b);(a)炭酸ガス、(b)糖アルコール、および増粘安定剤の中から選ばれる1種または2種、を含み、アルコール濃度が10v/v%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘安定剤の中から選ばれる1種または2種、
を含み、アルコール濃度が10v/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
常温で流通されるように構成された、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
炭酸ガス圧が1.2ガスボリューム以上、2.6ガスボリューム以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記アルコール濃度が1.0v/v%以上である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
成分(b)の含有量が、前記容器詰めシャーベット状飲料用組成物全体に対して、0.5w/v%以上、30w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
成分(b)の前記糖アルコールが、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、およびラクチトールの中から選ばれる1種または2種以上を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記容器が非可撓性材料からなる、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
エキス分が20w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
果汁を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項10】
容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法であって、
次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘多糖類の中から選ばれる1種または2種、
を混合する工程と、
アルコール濃度が10v/v%以下となるように調製する工程と、を順不同に有する、容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用組成物を凍結し、半解凍状態で飲用する飲料の開発が進められている。かかる飲料用組成物は容器詰めされた状態で、常温で流通され、その後各家庭などにおいて容器ごと凍結される。そして、飲用に際し、容器を外側から手で押圧する等して、氷塊を崩し、もみほぐすことによって、均一な半解凍状態いわゆるシャーベット状にでき、良好な氷冷感やシャリシャリ感等といった嗜好性が得られることで知られる。
【0003】
特許文献1には、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのプラスチック製の容器に充填されたシャーベット状飲料用組成物を凍結した後、容器内から取り出す際のシャーベット状飲料の出し易さに着目し、溶出性を向上させる点から、アルコール度数を1.5~8.5%とし、Brixを9.0~25.0にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-171332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1に記載されるような従来の容器詰めシャーベット状飲料用組成物は、凍結後、容器を外側から手で押圧する等して氷塊を崩すことで飲用されることに着目し、新たな観点から鋭意検討を行った。その結果、炭酸ガスと、糖アルコールおよび増粘多糖類と、アルコールを組み合わせることで、凍結した容器詰めシャーベット状飲料用組成物の氷塊を開封した際に生じる炭酸ガスの発泡による力で破砕できることを見出した。
すなわち、本発明は、凍結した容器詰めシャーベット状飲料用組成物を容器の外側から力を加えることなく、開封時の炭酸ガスの発泡による自然な力により氷塊を破砕しシャーベット状が得られる新たな容器詰めシャーベット状飲料用組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法が提供される。
【0007】
[1] 次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘安定剤の中から選ばれる1種または2種、
を含み、アルコール濃度が10v/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[2] [1]に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
常温で流通されるように構成された、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[3] [1]または[2]に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
炭酸ガス圧が1.2ガスボリューム以上、2.6ガスボリューム以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記アルコール濃度が1.0v/v%以上である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
成分(b)の含有量が、前記容器詰めシャーベット状飲料用組成物全体に対して、0.5w/v%以上、30w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
成分(b)の前記糖アルコールが、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、およびラクチトールの中から選ばれる1種または2種以上を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記容器が非可撓性材料からなる、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
エキス分が20w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
果汁を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[10] 容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法であって、
次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘多糖類の中から選ばれる1種または2種、
を混合する工程と、
アルコール濃度が10v/v%以下となるように調製する工程と、を順不同に有する、容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭酸ガスの噴出により氷塊が破砕される容器詰めシャーベット状飲料用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
<容器詰めシャーベット状飲料用組成物>
本実施形態の容器詰めシャーベット状飲料用組成物(以下、単に「飲料用組成物」とも称して説明する)は、次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘多糖類の中から選ばれる1種または2種、
を含み、アルコール濃度が10v/v%以下である。
【0011】
本実施形態の飲料用組成物によれば、上記成分(a)~(b)を含み、かつアルコール濃度を10v/v%以下とすることにより、当該飲料用組成物を凍結した後、容器の外側から手でもみほぐすことなく、炭酸ガスの発泡により、開封とともに氷塊を破砕することができる。より詳細には、開栓による内圧変化により炭酸ガスが急激に発泡する力を利用して、凍結した当該飲料用組成物を粉砕することができる。
かかるメカニズムの詳細は明らかではないが、アルコール、糖アルコールおよび増粘多糖類がそれぞれ有する不凍作用をバランスよく得られることで、本実施形態の飲料用組成物を硬くなりすぎない程度に凍結できるため、開封によって氷塊に溶け込んだ炭酸ガスが発泡しはじめ、その発泡圧により氷塊が破砕できると推測される。
また、炭酸ガスは氷塊全体に亘って存在するため、本実施形態の飲料用組成物においては、氷塊全体をより均一に微細に破壊でき、より良好な口当たりのシャーベットが得られると考えられる。
【0012】
本実施形態の飲料用組成物は、例えば、常温で流通され、その後、消費者等が冷凍庫に保存することで凍結される。凍結された状態で開封すると、炭酸ガスが発生し、氷塊が破砕され、シャーベット状にして飲用することができる。冷凍方法は、特に限定されず、通常の家庭用冷凍庫であっても、業務用冷凍庫であってもよい。例えば、-18~-24℃で、18~48時間、冷凍することが好適である。
本実施形態の飲料用組成物は、ストレートに飲用されてもよく、水や炭酸水等で希釈されてから飲用されてもよいが、嗜好性を高める点からそのまま飲用されることが好適である。
また、本実施形態の飲料用組成物は凍結された状態では容器内で攪拌されたり移動することができないため、開封時に炭酸ガスが噴出しすぎることが抑制される。
【0013】
[アルコール]
本実施形態においてアルコールとは、特に断りがない限りエチルアルコール(エタノール)のことをいう。
アルコールは、特に制限されず、通常酒類に用いられるものを使用することができるが、例えば、醸造用アルコール;ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、およびコルン等のスピリッツ類;リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0014】
アルコール濃度は10v/v%以下である。これにより、アルコールが有する不凍作用を保持し、開封時に氷塊を破砕しやすくなる。また、開封後、希釈などせずそのまま飲用しやすくなり、シャーベット状態をより感じやすくできる。
一方、アルコール濃度は好ましくは1.0v/v%以上であり、より好ましくは2.5v/v%以上であり、さらに好ましくは3.5v/v%以上である。これにより、アルコールによる不凍作用を高め、開封により良好なシャーベット状態が得られやすくなる。また、飲料の嗜好性を高めることができる。
なお、アルコール濃度は、アルコール度数とも呼ばれ、例えば、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)に記載の方法によって測定することができる。
【0015】
[(a)炭酸ガス]
炭酸ガスは、本実施形態の飲料用組成物の氷塊を破砕するとともに、飲用した際に炭酸ガスによる刺激が感じられ飲料の嗜好性を向上できる点から用いられる。
本実施形態の飲料用組成物は、炭酸ガス圧が1.2ガスボリューム以上であり、1.5ガスボリューム以上であることが好ましく、2.0ガスボリューム以上であることがより好ましい。これにより、氷塊を微細に破砕しやすくなる。
一方、容器の耐圧性に適応し、炭酸ガス抜けを抑制する観点から、炭酸ガス圧が2.6ガスボリューム以下であることが好ましく、2.4ガスボリューム以下であることがより好ましい。
【0016】
炭酸ガスの圧入方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0017】
飲料用組成物中のガスボリュームは公知の方法で測定できる。例えば、市販の測定器(京都電子工業社製ガスボリューム測定装置GVA-500B)等を用いて測定できる。より具体的には、本実施形態の飲料用組成物を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで得ることができる。
なお、本実施形態のガスボリューム(炭酸ガス圧力)は、1気圧、20℃において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0018】
[(b)糖アルコールおよび増粘多糖類]
成分(b)は、糖アルコールおよび増粘多糖類の中から選ばれる1種または2種であり、氷状に硬く凍結させることを抑制するために用いられる。
【0019】
上記糖アルコールとしては、グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、およびラクチトールの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
上記増粘安定剤としては、アラビアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラヤガム、ガティガム、タラガム、寒天、およびゼラチンの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
糖アルコールおよび増粘安定剤は、併用してもよく、いずれか一方としてもよいが、氷塊破砕効果を安定して得る点から糖アルコールを含むことが好ましく、さらに嗜好性を良好にする点からグリセロールを含むことがより好ましい。
【0020】
成分(b)の含有量の下限は、本実施形態の飲料用組成物全体に対して、凍結をほぐしやすくする点から0.5w/v%以上であることが好ましく、1.0w/v%以上であることがより好ましく、1.5w/v%以上であることがさらに好ましい。またアルコール濃度が低めの場合、不凍効果を得つつシャリシャリ感を得る点からは4w/v%以上であることがより好ましく、やわらかいシャーベット状態を得る点からは、6w/v%以上であることがさらに好ましく、10w/v%以上であることがことさらに好ましい。
一方、成分(b)の含有量の上限は、本実施形態の飲料用組成物全体に対して、液状化を抑制し、シャーベット感を保持する点から、30w/v%以下であることが好ましく、やわらかいシャーベット状態を得る点からは、25w/v%以下であることがより好ましく、シャリシャリ感を得る点からは15w/v%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本実施形態において、アルコール濃度(v/v%)をx、成分(b)の含有量(w/v%)をyとしたとき、9.5-1.5x≦yであることが好ましい。これにより、過剰なアルコールまたは過剰なグリセロールによる過度な不凍作用を抑制し、シャーベット状態がより安定的に得られやすくなる。
また、アルコール濃度(v/v%)をx、成分(b)の含有量(w/v%)をyとしたとき、y≦26-2xであることが好ましい。これにより、アルコールとグリセロールによる不凍作用がバランスよく得られ、シャーベット状態がより得られやすくなる。
【0022】
本実施形態の飲料用組成物は、本発明の効果が得られる限りにおいて、種々の成分を含んでもよく、例えば、糖類、果汁、酸味料、香料、pH調整剤、各種栄養成分、着色料、希釈剤、および酸化防止剤等を含んでもよい。
【0023】
(糖類)
糖類としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、液糖、乳糖、麦芽糖、および糖アルコール等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。なかでも液糖を含むことが好ましい。
上記液糖としては、特に限定されないが、例えば、異性化糖、転化糖、水あめ、蜂蜜、およびオリゴ糖などの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられ、より好ましくは、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、および高果糖液糖が挙げられる。なお、本実施形態の飲料組成物は、高甘味度甘味料を含まないものとしてもよい。
【0024】
(果汁)
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁等の柑橘類果汁;ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等のソフトフルーツ果汁が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
なかでも、氷冷感との相性がよく、よりおいしく飲用する点から、柑橘類果汁を含むことが好ましく、レモン果汁であることがより好ましい。
【0025】
なお、果汁とは、果物・果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりする等して得られる液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、果汁は、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁等いずれであってもよい。
【0026】
(酸味料)
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸またはそれらの塩類等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
(香料)
上記の香料としては、天然香料および合成香料が挙げられ、好ましくは、柑橘類果実風味を呈する香料、その他果実風味を呈する香料が挙げられる。柑橘類としては、上述した柑橘類を想起させるものであれば特に限定されない。
【0028】
[エキス分]
本実施形態の飲料用組成物は、適度に氷結し液状化を抑制する点から、エキス分が20w/v%以下であることが好ましく、15w/v%以下であることがより好ましく、12w/v%以下であることがさらに好ましく、シャリシャリ感を得る点からは9w/v%以下であることがことさらに好ましい。
一方、エキス分の下限値は特に限定されないが、氷塊が硬過ぎないようにする点から、0.4w/v%以上であることが好ましく、1.0w/v%以上であることがより好ましく、2.0w/v%以上であることがさらに好ましい。
エキス分とは、温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
なお、アルコール飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重(日本酒度)及びアルコール度を測定して算出することができる。
【0029】
[クエン酸酸度]
本実施形態の飲料用組成物は、過度な酸味を抑制し、飲料としての飲みやすさ、良好な食感と甘味のバランスを得る点から、クエン酸酸度が0.80g/100ml以下であることが好ましく、0.75g/100ml以下であることがより好ましい。
一方、クエン酸酸度は、適度な酸味による飲みやすさ等を得る点から、0.20g/100ml以上であることが好ましく、0.35g/100ml以上であることがより好ましい。
【0030】
クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0031】
[柑橘風味]
本実施形態の飲料用組成物は、氷冷感を向上させ、おいしさを向上する点から、柑橘類風味を呈することが好ましい。柑橘類風味は、上述した柑橘類果汁や柑橘類フレーバーなどを用いることによって得られる。
また、柑橘類の具体例としては、柑橘類果汁と同様の柑橘類が挙げられる。なかでも、氷冷感と良好な甘味とのバランスが良好な点から、レモン風味であることが好ましい。
【0032】
[容器]
本実施形態の飲料用組成物は、加熱殺菌され、容器に詰められ密閉された状態で流通、販売される。容器詰めされることで、保存・流通がしやすくなる。
容器としては、飲料を密閉でき、炭酸ガスに対する耐圧性があるものであれば、その材料、形状等は特に限定されないが、例えば、以下のものを用いることができる。
【0033】
容器を構成する材料としては、例えば、合成樹脂フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ガラス、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料または積層材料等が挙げられ、耐圧性を得る点から、非可撓性材料であることが好ましい。また、容器の形状としては、たとえば、ボトル状、缶状のもの等が挙げられる。
具体的には、例えば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶が挙げられる。また、容器はキャップ状、または栓状の蓋つきであってもよく、蓋無しの使い切りタイプであってもよい。
なかでも、凍結による膨張・変形に対する強度、取扱性等の観点からは、容器はアルミ缶、スチール缶であることが好ましく、またさらに、取り出しやすさ等の点からフルオープンエンド缶であることが好ましい。
また、シャーベット状が得られやすくなる点からは、ペットボトルであることが好ましい。通常、ペットボトルは開口部が徐々に狭くなる形状であるため、開栓した際に、炭酸ガスの発泡による液膨脹の際、容器からの圧が氷塊により加わりやすくなるとともに、氷塊が粉砕されながら吹き上がるため、よりシャーベット状に変化しやすい。
【0034】
容器の容量としては、特に限定されないが、取扱い性等の点から、好ましくは100mL~800mL、より好ましくは150mL~500mLである。また、凍結後シャーベット状飲料として飲み切る点からは、100mL~350mLがより好ましい。
【0035】
容器詰めされた飲料用組成物は、必要に応じて、加熱滅菌処理される。加熱殺菌の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌等の方法を採用することができる。
【0036】
<容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法>
本実施形態の容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法は、
次の成分(a)~(b);
(a)炭酸ガス、
(b)糖アルコール、および増粘多糖類の中から選ばれる1種または2種、
を混合する工程と、
アルコール濃度が10v/v%以下となるように調製する工程と、を順不同に有する。
これにより、炭酸ガスの噴出により良好なシャーベット状態が得られる容器詰めシャーベット状飲料用組成物が得られる。
混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。また、容器詰め方法も特に限定されず公知の方法を用いることができる。
なお、飲料用組成物に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料用組成物と同様である。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(1)容器詰め飲料用組成物の準備
飲料用組成物の原料として、醸造用アルコール、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、グリセロール、香料(柑橘系フレーバー)を準備した。
容器は、サイズ204径、350ml容量、アルミ製のフルオープン缶(東洋製罐社製)とした。
各表に記載の値となるように各原料を混合して飲料用組成物を調製し、その後、用意した容器(缶)に充填し、各表に記載の炭酸ガス圧となるように炭酸ガスを封入し、容器詰めした。これを5点用意した。
【0040】
(2)官能評価
容器詰め飲料用組成物を-20℃の冷凍庫で24時間保存し、凍結させた後、訓練した識別能力のある技術者による官能試験を実施した。
具体的には、5名の技術者が各容器詰め飲料用組成物を開封し、炭酸ガスの発泡が収めった後直ちに、金属製のスプーンを飲料用組成物に刺し込み、氷塊の破砕の程度について以下の基準にしたがい5段階で評価した。各評価の平均値を算出し、結果とした。
【0041】
・評価基準「氷塊の破砕の程度」
5:完全に凍結していて、スプーンが刺せなかった(氷塊が破砕できなかった)
4:シャリシャリとした凍結で、スプーンが刺せる理想の状態(氷塊が破砕できた)
3:半凍結状態、スプーンがスムーズに刺せる、柔らかいシャーベット状態(氷塊が容易に破砕できた)
2:わずかにのみ凍結しており、液体に近い状態(氷塊が破砕され、わずかに残っていた)
1:未凍結の液体状態(氷塊が破砕され溶けていた)
【0042】
(3)実施例および比較例
[実験1]炭酸ガスの有無
表1に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)の官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[実験2]グリセロール濃度の変動(アルコール濃度0、3、6、9%)
表2~3に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)の官能評価を行った。結果を表2~3にそれぞれ示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
[実験3]果汁の配合
表6に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)の官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0050】
【表6】