(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070610
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】警報システムおよび警報システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G08B25/00 520C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181219
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 康介
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA11
5C087AA32
5C087BB18
5C087BB76
5C087DD07
5C087DD08
5C087EE02
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087GG08
5C087GG35
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することが可能な警報システムを提供する。
【解決手段】この警報システム100は、それぞれ無線通信可能な警報器1である、親機2と複数の子機3とを備える。複数の子機3の各々は、自機において報知事象が発生した場合、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器1への報知事象に対応する報知信号51の送信と、を行い、他の子機3からの報知信号51を受信した場合、周囲報知を行うことなく報知信号51を中継送信するように構成されている。親機2は、いずれかの子機3から報知信号51を受信すると、報知事象に対応した所定の対応動作を行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備え、
前記複数の子機の各々は、
自機において報知事象が発生した場合、前記報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の前記警報器への前記報知事象に対応する報知信号の送信と、を行い、
他の前記子機からの前記報知信号を受信した場合、前記周囲報知を行うことなく前記報知信号を中継送信するように構成され、
前記親機は、いずれかの前記子機から前記報知信号を受信すると、前記報知事象に対応した所定の対応動作を行うように構成されている、警報システム。
【請求項2】
前記親機は、いずれかの前記子機から前記報知信号を受信すると、前記対応動作とは別に、前記報知信号に対応した応答信号を送信し、
前記複数の子機の各々は、
自機において前記報知事象が発生した場合、前記応答信号の受信を含む送信状態終了条件が満たされると、前記報知信号の送信状態を終了し、
他の前記子機の前記報知信号に対する前記応答信号を受信した場合、前記応答信号を中継送信するように構成されている、請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
前記複数の子機の各々は、
他の前記子機から前記報知信号または前記応答信号を受信した場合、互いに異なる値に設定された待機時間の経過後に中継送信を行うように構成され、
他の前記子機から前記報知信号を受信してから前記待機時間が経過する前に、前記報知信号に基づく前記応答信号を受信した場合、前記報知信号の中継送信を中止するように構成されている、請求項2に記載の警報システム。
【請求項4】
前記複数の子機の各々は、
受信した信号に中継履歴情報を追記して中継送信を行い、
受信した信号の前記中継履歴情報に自機が含まれる場合、中継送信を行わないように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項5】
前記親機および前記複数の子機の各々は、警報対象となる異常を検知するセンサを備え、
前記報知事象は、前記センサにより異常を検知したこと、および、報知対象となる故障が発生したこと、を含み、
前記親機の前記対応動作は、前記報知事象毎に設定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項6】
前記親機は、自機において前記報知事象が発生した場合、前記複数の子機に対して前記報知信号の送信を行うことなく、前記報知事象に対応した前記対応動作を行うように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項7】
前記親機の前記対応動作は、前記周囲報知と、予め設定された外部機器への信号出力と、の少なくとも一方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項8】
それぞれ無線通信可能な警報器である親機と、複数の子機とによる警報システムの動作方法であって、
前記複数の子機のうち、報知事象が発生した前記子機が、前記報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の前記警報器への前記報知事象に対応する報知信号の送信と、を行うステップと、
前記報知信号を受信した他の前記子機が、前記周囲報知を行うことなく前記報知信号を中継送信するステップと、
いずれかの前記子機から前記報知信号を受信した前記親機により、前記報知事象に対応した所定の対応動作を行うステップと、を備える、警報システムの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、警報システムおよび警報システムの動作方法に関し、特に、複数台の警報器で構成された警報システムおよび警報システムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の警報器で構成された警報システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、火災を検知する無線端末と、無線端末からの無線信号を中継する中継装置と、無線端末および/または中継装置からの無線信号を受信する受信装置と、受信装置から伝送線を介して入力された情報に基づき、警報表示や警報音の出力等の処理を実行する受信機と、を備えた通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたシステムでは、火災を検知する無線端末を複数設置する場合に、専用の中継装置が必要となり、システムの構成が複雑化するとともに、その結果としてシステムが高コストになってしまうという問題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することが可能な警報システムおよび警報システムの動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による警報システムは、それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備え、複数の子機の各々は、自機において報知事象が発生した場合、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器への報知事象に対応する報知信号の送信と、を行い、他の子機からの報知信号を受信した場合、周囲報知を行うことなく報知信号を中継送信するように構成され、親機は、いずれかの子機から報知信号を受信すると、報知事象に対応した所定の対応動作を行うように構成されている。なお、本明細書において、「周囲報知」とは、自機の周囲に存在する人に対して行う報知動作であり、たとえば光学的(発光)または音響的(鳴動)な報知であって、人が直接感知できない通信による報知を含まない概念である。「報知信号の送信」は、他の警報器に対する情報送信であって、人が直接感知できない電磁波等を用いた無線通信手段による情報送信を意味する。
【0008】
この発明の第1の局面による警報システムでは、上記のように、複数の子機の各々は、自機において報知事象が発生した場合、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器への報知事象に対応する報知信号の送信と、を行い、他の子機からの報知信号を受信した場合、周囲報知を行うことなく報知信号を中継送信するように構成され、親機は、いずれかの子機から報知信号を受信すると、報知事象に対応した所定の対応動作を行うように構成されている。これにより、いずれかの子機において報知事象が発生し、報知信号が送信された場合に、その子機と親機とが直接通信できない場合でも、別の子機が中継送信を行うことにより、報知信号を親機へ到達させることができる。そして、いずれかの子機と親機との通信における中継送信を行うのは、警報器である他の子機のため、信号を中継するための専用の中継装置を設ける必要がない。そのため、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することができる。その結果、警報システムの低コスト化を図ることができる。また、いずれかの子機が中継送信を行う場合、その子機は周囲報知を行わないので、実際には報知する必要がない子機まで連動して周囲報知を行うことを回避できる。その結果、報知事象が発生した箇所の特定が容易になり、さらに、必要な報知を、報知が必要な対象者だけ(報知事象が発生した子機の周囲にいる人だけ)に適切に報知を行うことができる。
【0009】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、親機は、いずれかの子機から報知信号を受信すると、対応動作とは別に、報知信号に対応した応答信号を送信し、複数の子機の各々は、自機において報知事象が発生した場合、応答信号の受信を含む送信状態終了条件が満たされると、報知信号の送信状態を終了し、他の子機の報知信号に対する応答信号を受信した場合、応答信号を中継送信するように構成されている。このように構成すれば、子機から親機への報知信号の送信だけでなく、親機からいずれかの子機への応答信号の送信についても、他の子機が中継送信を行うことにより、通信不良を回避することができる。そして、報知信号の送信元となる子機が、親機からの応答信号を受信することによって報知信号の送信状態を終了するので、たとえば応答信号の受信に関わらず一定時間の間報知信号の送信状態を継続する構成と比べて、応答信号の受信時点以降の信号送信を行わずに済む結果、信号送信の回数を低減できる。
【0010】
この場合、好ましくは、複数の子機の各々は、他の子機から報知信号または応答信号を受信した場合、互いに異なる値に設定された待機時間の経過後に中継送信を行うように構成され、他の子機から報知信号を受信してから待機時間が経過する前に、報知信号に基づく応答信号を受信した場合、報知信号の中継送信を中止するように構成されている。このように構成すれば、複数の子機の各々が中継送信を行う場合に、異なる待機時間によって送信タイミングをずらすことができるので、中継送信が同時に行われることに起因する輻輳の発生を回避できる。そして、報知信号を受信してから待機時間の経過前に応答信号を受信した場合に、その報知信号の中継送信が中止されるので、警報システム全体での通信回数を低減できる。
【0011】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、複数の子機の各々は、受信した信号に中継履歴情報を追記して中継送信を行い、受信した信号の中継履歴情報に自機が含まれる場合、中継送信を行わないように構成されている。このように構成すれば、いずれかの子機(子機Aとする)が中継送信を行った場合に、その信号を受信した他の子機による中継送信を子機Aが受信して、再度中継送信を実行するという、中継送信の繰り返しが発生することを抑制できる。これにより、不必要な中継送信の実行を回避できる。
【0012】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、親機および複数の子機の各々は、警報対象となる異常を検知するセンサを備え、報知事象は、センサにより異常を検知したこと、および、報知対象となる故障が発生したこと、を含み、親機の対応動作は、報知事象毎に設定されている。このように構成すれば、報知事象として、異常の警報だけでなく、報知対象となる故障の発生についても、親機へ通知可能であるとともに、報知が必要な対象者だけ(報知事象が発生した子機の周囲にいる人だけ)に適切に報知を行うことができる。そして、報知信号を受け取った親機により、報知事象に応じてそれぞれ適切な対応動作を実行することができる。
【0013】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、親機は、自機において報知事象が発生した場合、複数の子機に対して報知信号の送信を行うことなく、報知事象に対応した対応動作を行うように構成されている。このように構成すれば、親機だけに報知事象が発生した場合に、報知事象が発生した箇所の特定が容易になるとともに、不必要な通信が発生することを回避できる。
【0014】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、親機の対応動作は、周囲報知と、予め設定された外部機器への信号出力と、の少なくとも一方を含む。このように構成すれば、いずれかの子機において報知事象が発生した場合に、その子機から報知信号を受信した親機が、親機の周囲の施設管理者等に対して周囲報知を行ったり、上位の管理装置、施設の集中管理室、電気やガスの制御機器などの外部機器に対する信号出力による連係動作を行ったりすることができる。
【0015】
この発明の第2の局面による警報システムの動作方法は、それぞれ無線通信可能な警報器である親機と、複数の子機とによる警報システムの動作方法であって、複数の子機のうち、報知事象が発生した子機が、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器への報知事象に対応する報知信号の送信と、を行うステップと、報知信号を受信した他の子機が、周囲報知を行うことなく報知信号を中継送信するステップと、いずれかの子機から報知信号を受信した親機により、報知事象に対応した所定の対応動作を行うステップと、を備える。
【0016】
この発明の第2の局面による警報システムの動作方法では、上記第1の局面と同様に、いずれかの子機と親機とが直接通信できない場合でも、別の子機が中継送信を行うことにより、報知信号を親機へ到達させることができる。中継送信を行うのは、警報器である他の子機のため、信号を中継するための専用の中継装置を設ける必要がない。そのため、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することができる。その結果、警報システムの低コスト化を図ることができる。また、いずれかの子機が中継送信を行う場合、その子機は報知信号に応じた周囲報知を行わないので、実際には報知する必要がない子機まで連動して周囲報知を行うことを回避できる。その結果、必要な報知を、報知が必要な対象者だけ(報知事象が発生した子機の周囲にいる人だけ)に適切に報知を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態による警報システムを示した模式図である。
【
図2】警報システムのネットワーク構成の1つ目の例を示した模式図である。
【
図3】警報システムのネットワーク構成の2つ目の例を示した模式図である。
【
図4】警報システムのネットワーク構成の3つ目の例を示した模式図である。
【
図5】警報システムのネットワーク構成の4つ目の例を示した模式図である。
【
図6】親機の構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】子機の構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】子機と親機の間の通信でやりとりされる送信データの構成を説明するための図である。
【
図9】中継送信による通信ステータスの追記を説明するための図である。
【
図10】子機において報知事象が発生した時の動作を説明するための模式図である。
【
図11】親機において報知事象が発生した時の動作を説明するための模式図である。
【
図12】各子機の定期通信を説明するための流れを示したタイムチャートである。
【
図13】子機による点検処理の動作を説明するための説明図である。
【
図14】親機による点検処理の動作を説明するための説明図である。
【
図15】中継通信を含む報知事象発生時の通信動作の流れを示したタイムチャートである。
【
図16】警報システムの動作を示したフロー図である。
【
図17】
図16の中継送信の処理(サブルーチン)を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1~
図14を参照して、一実施形態による警報システム100の構成について説明する。
【0021】
(警報システムの構成)
図1に示すように、警報システム100は、警報システム100の設置環境における異常を検知し、異常を検知した場合に警報を行うシステムである。
【0022】
警報システム100は、3つ以上の警報器1を備えている。3つ以上の警報器1は、親機2と、複数の子機3とにより構成されている。
図1では、1つの親機2と、3つの子機3との、合計4つの警報器1を備えた警報システム100の例を示している。以下では、3つの子機3について、「子機A」、「子機B」、「子機C」と区別する。
【0023】
それぞれの警報器1は、所定の異常を検知し、異常を検知した場合に周囲に対して報知を行う機能を有する。それぞれの警報器1は、たとえば、ガス警報器である。この場合、所定の異常は、検知対象ガスの発生(漏洩を含む)である。
【0024】
それぞれの警報器1は、無線通信機能を有している。個々の警報器1は、通信可能な範囲に存在する他の警報器1と、双方向の無線通信が可能である。複数の子機3の各々は、異常を検知した場合など、予め設定された報知事象が発生すると、所定の報知動作を行うとともに、他の警報器1(親機2および他の子機3)に対して報知事象に対応した信号を送信する。親機2は、複数の子機3のいずれかから報知事象に対応した信号を受信した場合、報知事象に対応した対応動作を実行する。
【0025】
親機2は、対応動作として、報知事象に対応した報知動作を行うことができる。親機2は、他の子機3とは異なる機能として、外部機器200との有線または無線による通信機能を有する。親機2は、対応動作として、報知事象に対応した信号を、外部機器200に対して送信することができる。外部機器200は、警報システム100の外部の機器である。外部機器200は、たとえば警報システム100が設置された施設における、上位コンピュータ、集中管理装置、保安装置、ガスメータまたはガス開閉器などでありうる。
【0026】
親機2およびそれぞれの子機3は、設置場所や周囲に存在する障害物の有無などに起因して、他の全ての警報器1と無線通信可能であるとは限らない。
【0027】
警報システム100における各警報器1の間で通信可能なネットワークの形態は様々である。
図2では、親機2および3つの子機3が、いずれも、相互に通信可能な例を示す。
図3では、3つの子機3のうち子機Aが、親機2とは直接通信できない。この場合、子機Aは、子機Bまたは子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図4では、3つの子機3のうち子機Cのみが、親機2と直接通信可能である。この場合、子機Aおよび子機Bは、少なくとも子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図5では、子機Aと子機B、子機Bと子機C、子機Cと親機2とが直接通信可能であり、他の経路では通信できない。この場合、子機Aは、子機Bおよび子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図2~
図5は、警報システム100において成立しうるネットワーク形態の一例であり、警報システム100では、
図2~
図5に示した以外のネットワーク形態もありうる。
【0028】
そこで、親機2、および複数の子機3の各々は、信号送信する場合には他の全ての警報器1(親機2および他の子機3)に対して信号送信を実行するように構成されている。そして、複数の子機3の各々は、他の警報器1(親機2または他の子機3)から信号を受信した場合には、受信した信号を、他の全ての警報器1(親機2および他の子機3)に対して送信する中継送信を行うように構成されている。警報システム100では、複数の子機3の各々が、少なくとも親機2と、直接にまたは他の子機3を中継して、通信することが可能なように構成されている。
【0029】
(親機および子機の構成)
図6は親機2の構成を示すブロック図であり、
図7は子機3の構成を示すブロック図である。本実施形態では、3つの子機3は、いずれも同一構成を有する。
【0030】
〈親機〉
図6に示すように、親機2は、検知部21、報知部22、通信部23、操作受付部24、制御部25、記憶部26、電源部27、および筐体28を主として備える。検知部21、報知部22、通信部23、操作受付部24、制御部25、記憶部26および電源部27は、筐体28内に収容されている。
【0031】
検知部21は、警報対象となる異常を検知するセンサを備える。本実施形態では、センサは、予め決められた検知対象ガスを検知するガスセンサGSである。検知対象ガスは、特に限定されないが、たとえばメタンガス、プロパンガスなどの燃料ガス(可燃性ガス)である。ガスセンサGSは、たとえば半導体式センサまたはMEMSセンサである。ガスセンサGSは、特許請求の範囲の「センサ」の一例である。
【0032】
報知部22は、スピーカ22aおよびランプ22bを含んでいる。報知部22は、自機の周囲に対して、報知を行うように構成されている。スピーカ22aは、ブザー音、音声メッセージなどの報知音声を出力する。ランプ22bは、光出力(発光)によって報知を行う。ランプ22bは、発光色や、点灯、点滅などの発光パターンによって、報知を行う。
【0033】
通信部23は、アンテナと、信号の送信回路および信号の受信回路を含んだ無線通信モジュールとを含む。無線通信の通信方式、無線周波数などは特に限定されない。
【0034】
操作受付部24は、ユーザからの操作入力を受け付け、入力に応じた信号を制御部25に出力する。操作受付部24は、1つ以上のスイッチを含む。スイッチは、たとえば押しボタン式のスイッチである。たとえば警報時に操作受付部24が入力(押下)されると、制御部25が警報の停止(一時停止)の処理を行う。たとえば警報を行っていない状態(通常時)に操作受付部24が入力(押下)されると、制御部25が警報器1の点検処理を行う。
【0035】
制御部25は、CPUなどのプロセッサを含んでいる。制御部25は、記憶部26に記憶されたプログラム26aを実行することにより、警報器1を親機2として動作させるための制御を行う。また、制御部25は、時間計測を行う機能を有する。制御部25は、検知部21のガスセンサGSから出力信号を取得し、報知条件を満たしたか否かの判定を行う。報知条件は、たとえば、ガスセンサGSの出力信号が所定の閾値以上となることである。制御部25は、報知条件を満たしたと判定した場合、報知部22により自機の周囲に向けた周囲報知を実行する処理を行う。周囲報知は、スピーカ22aによる報知音の鳴動およびランプ22bの点灯(発光)のいずれかまたは両方によって行われる。
【0036】
制御部25は、親機2の動作として、複数の子機3の各々から信号を取得し、取得した信号に対応した対応動作を実行する制御を行う。子機3から取得される信号には、所定の報知事象が発生したことを示す報知信号51(
図1参照)、通信点検の動作により送信される信号、警報器1の有効期限切れを示す信号、などがある。また、制御部25は、親機2の動作として、子機3から受信した信号に対応して、応答信号52(
図1参照)を送信する制御を行う。制御部25は、対応動作として、報知部22による報知を実行する処理、および、外部機器200(
図1参照)への信号出力を実行する処理、の少なくとも一方を行う。
【0037】
報知事象は、センサにより異常を検知したことを含む。つまり、報知事象は、検知対象ガスの検知、すなわちガスセンサGSの出力信号が報知条件を満たしたこと、を含む。また、報知事象は、報知対象となる故障が発生したことを含む、つまり、報知事象は、制御部35の点検動作によって子機3の故障(または故障が疑われる異常)が検出されたことを含む。報知事象は、他の事象を含んでいてもよく、たとえば子機3に対して予め設定された使用期限を超過したことを含み得る。報知事象に対する親機2の対応動作は、報知事象毎に設定されている。
【0038】
記憶部26には、制御部25が制御処理を行うためのプログラム26aが記憶されている。記憶部26は、たとえば半導体記憶素子からなる。記憶部26には、報知条件を満たしたか否かの判定閾値が予め記憶されている。記憶部26には、それぞれの子機3から受信した信号に含まれる情報が記憶される。
【0039】
電源部27は、警報器1の各部への電力供給を行う。電源部27は、警報器1の外部の電力供給源に電源ケーブルを介して接続可能である。電力供給源は、たとえば警報システム100が設置されている施設の商用電源である。
【0040】
〈子機〉
図7に示すように、子機3は、ガスセンサGSを備えた検知部31、スピーカ32aおよびランプ32bを含む報知部32、通信部33、操作受付部34、制御部35、記憶部36、電源部37、および筐体38を主として備える。
図6および
図7から分かるように、親機2と各子機3とは、記憶部26に記憶されたプログラム36aを除いて、実質的に同一構成を有するので、子機3の説明を省略する。
【0041】
子機3の制御部35は、記憶部36に記憶されたプログラム36aを実行することにより、警報器1を子機3として動作させるための制御を行う。
【0042】
制御部35は、所定の報知事象が発生した場合に、報知部32により報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知を実行する制御を行う。周囲報知は、スピーカ32aによる報知音の鳴動およびランプ32bの点灯(発光)いずれかまたは両方によって行われる。報知事象は、上記の通り、センサにより異常を検知したこと、自機に故障(または故障が疑われる異常)が検出されたことを含む。制御部35は、所定の報知事象が発生した場合に、親機2に対して報知信号51を送信する制御を行う。
【0043】
また、制御部35は、時間計測を行う機能を有する。制御部35は、稼働中、所定の第1時間間隔毎に、通信部33により親機2に対して通信(以下、定期通信という)を行う制御を実行する。第1時間間隔は、複数の子機3に対して互いに異なる値が設定されている。そのため、複数の子機3は、互いに異なるタイミングで、親機2に対する定期通信を行う。これにより、各子機3から送信された信号が輻輳することを回避できる。
【0044】
(信号の内容)
次に、親機2とそれぞれの子機3との間の通信により送信される信号の内容について説明する。
図8に示すように、送信される信号は、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43、および通信ステータス44を含む送信データ40によって構成される。
【0045】
通信コマンド41は、その信号の種別と、通信相手との各情報を含む。信号の種別は、子機3から親機2への信号(報知信号51など)か、親機2から子機3への信号(応答信号52)かを示す情報である。通信相手は、信号の発信元または送信先を識別する情報である。信号の種別が子機3から親機2への信号である場合、通信相手は、発信元が子機A、子機B、子機Cのいずれであるかを特定する情報である。信号の種別が親機2から子機3への信号である場合、通信相手は、送信先が子機A、子機B、子機Cのいずれであるかを特定する情報である。
【0046】
状態フラグ42は、その信号の内容を識別する情報である。状態フラグ42は、警報、故障、使用期限、点検、および定期通信のいずれかのフラグを含む。状態フラグ42の内容によって、送信される信号が、警報の報知信号であるか、故障の報知信号であるか、使用期限超過を示す信号であるか、通信強度の点検中を示す信号であるか、上記のいずれにも該当しない定期通信であるか、が識別される。状態フラグ42は、上記の5種のフラグ以外の種類のフラグを含み得る。
【0047】
通信回数43は、各子機3における信号の送信回数の累積値を示す。通信回数43は、子機Aの送信回数、子機Bの送信回数、子機Cの送信回数、の3つの情報を含む、各々の子機3(たとえば子機A)は、信号を送信する際に、通信回数43における該当する項目(子機Aの送信回数)の送信回数を1ずつ加算する。通信回数43により、子機3毎の、時系列の送信履歴を把握できる。
【0048】
通信ステータス44は、その信号の発信元から送信先までの送信履歴を示す情報である。すなわち、通信ステータス44は、その信号を中継した子機3および中継順を識別する情報を含む。また、通信ステータス44は、その信号を受信した警報器1(親機2または子機3)における通信強度(信号の受信強度)の情報を含む。通信ステータス44は、特許請求の範囲の「中継履歴情報」の一例である。
【0049】
通信強度は、通信部23(33)によって受信した信号の強度を示す情報であり、本実施形態では、「弱」、「中」、「強」の3段階で定義される。通信強度は、数値情報でもよい。通信ステータス44は、送信または中継する警報器1を特定する識別情報と、受信強度の情報とを、送信/中継回数毎に含む。本実施形態では、親機2と子機3との通信には、最初の送信と、最大2回の中継送信とが含まれるため、送信/中継回数は最大3回である。
【0050】
複数の子機3の各々は、他の子機3から信号を受信した場合に、受信した信号における通信ステータス44に情報を追記して中継送信を行うように構成されている。
【0051】
図9を参照して、通信ステータス44の追記を説明する。
図9の左側に、通信経路と、機器間の通信強度の例を示す。
図9の右側は、送信時の通信ステータス44の具体例を示す。
図9では、送信または中継の識別情報と、受信強度と、をそれぞれ列で示し、送信/中継回数をそれぞれ行で示した表形式で通信ステータス44を示している。
図9に示すように、子機Aから子機C、子機Cから子機B、子機Bから親機2という送信経路で通信が行われる場合、発信元である子機Aが、通信ステータス44の1回目の情報エリア(太線枠部参照)に、子機Aを示す識別情報を記録して送信する。
【0052】
子機Aから信号を受信した子機Cは、通信ステータス44の1回目の情報エリアに、子機Aからの信号の受信強度を追記するとともに、通信ステータス44の2回目の情報エリア(太線枠部参照)に、子機Cを示す識別情報を追記して中継送信する。
【0053】
同様に、子機Cから信号を受信した子機Bは、通信ステータス44の2回目の情報エリアに、子機Cからの信号の受信強度を追記するとともに、通信ステータス44の3回目の情報エリアに、子機Bを示す識別情報を追記して中継送信する。
【0054】
子機Bから信号を受信した親機2は、通信ステータス44の3回目の情報エリアに、子機Bからの信号の受信強度を追記する。
【0055】
この結果、通信ステータス44は、子機Aから子機C、子機Cから子機B、子機Bから親機2という送信経路で通信が行われたこと、子機Aと子機Cとの間の受信強度が「強」、子機Cと子機Bとの間の受信強度が「中」、子機Bと親機2との間の受信強度が「強」、であったことを示す履歴情報を含む。通信ステータス44によって、いずれかの子機3と親機2との間の通信経路とその通信経路における通信強度が把握可能である。つまり、通信経路とは、いずれかの子機3と親機2との間での通信が、どの順番でどの警報器1を経由して行われたかを特定する情報である。
【0056】
(報知動作)
次に、親機2および子機3において報知事象が発生した場合の報知動作について説明する。
【0057】
〈子機の報知動作〉
本実施形態では、複数の子機3の各々は、自機において報知事象が発生した場合、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器1(親機2および他の子機3)への報知事象に対応する報知信号51の送信と、を行うように構成されている。
【0058】
図10に示すように、複数の子機3のうち、子機Aにおいて報知事象が発生したと仮定する。この場合、子機Aは、報知事象の周囲報知と、報知事象に対応する報知信号51の送信と、を行う。たとえば報知事象が検知対象ガスの検知に基づく警報の場合、子機Aは、スピーカ32aによりガス漏れ検知の報知メッセージを音声出力(鳴動)するとともに、警報の状態フラグ42を有する報知信号51を送信する。子機3(ここでは子機A)は、自機以外の他の警報器1(親機2および他の子機3)に対して、報知信号51を一斉に(つまり、同一のタイミングで)送信する。子機Aは、報知事象がなくなる(ガスセンサGSの出力信号が閾値を下回る)場合、または操作受付部34により報知停止の操作入力を受け付けた場合に、周囲報知を停止する。なお、周囲報知の開始と、報知信号51の送信とは、必ずしも同時に行われなくてもよく、時間的にずれていてもよい。たとえば、周囲報知は、報知事象が発生したタイミングで開始され、報知信号51の送信は、報知事象が発生した後の最初の通信タイミングで実行されうる。
【0059】
子機3から送信された報知信号51は、他の子機3によって、中継される。この際、本実施形態では、複数の子機3の各々は、他の子機3からの報知信号51を受信した場合、周囲報知することなく報知信号51を中継送信するように構成されている。つまり、いずれかの子機3において報知事象が発生した場合、周囲報知を実行するのは報知事象が発生した子機3だけであり、他の子機3は、周囲報知せずに中継送信を行う。そのため、
図10の例では、複数の子機3のうち、子機Bおよび子機Cは、他の子機Aからの報知信号51を受信した場合、周囲報知することなく報知信号51を中継送信する。
【0060】
親機2は、いずれかの子機3から報知信号51を受信すると、報知事象に対応した所定の対応動作を行う。親機2の対応動作は、報知事象の周囲報知と、予め設定された外部機器200への信号出力と、の少なくとも一方を含む。
【0061】
また、親機2は、いずれかの子機3から報知信号51を受信すると、対応動作とは別に、報知信号51に対応した応答信号52を送信する。
図10の場合、親機2は、受信した信号の通信コマンド41に記録された発信元(子機A)に対して、応答信号52の送信を行う。このように、報知事象が発生した子機3から親機2に対する通信は、子機3からの報知信号51の送信と、報知信号51を受信した親機2からの応答信号52の送信と、を単位として行われる。
【0062】
中継送信は、応答信号52についても同様に実行される。すなわち、複数の子機3の各々は、他の子機3の報知信号51に対する応答信号52を受信した場合、応答信号52を中継送信するように構成されている。したがって、応答信号52を受信した子機Bおよび子機Cは、受信した応答信号52の通信コマンド41を参照し、他の子機Aに対する応答信号52である場合、応答信号52を中継送信する。
【0063】
複数の子機3の各々は、他の子機3から報知信号51または応答信号52を受信した場合、互いに異なる値に設定された待機時間の経過後に中継送信を行うように構成されている。このため、あるタイミングで報知信号51または応答信号52が送信されたとき、その信号の中継送信がタイミングをずらして順番に行われる。
【0064】
なお、
図10では説明のため、報知信号51および応答信号52が全ての子機3により中継されて送信先に到達するように図示しているが、
図2~
図5に示したネットワーク形態に応じて、通信可能な子機3からのみ中継される他、信号の送信先へ直接送信されうる。
【0065】
〈親機の報知動作〉
親機2は、自機において報知事象が発生した場合、複数の子機3に対して報知信号51の送信を行うことなく、報知事象に対応した対応動作を行うように構成されている。
【0066】
図11に示すように、親機2において報知事象が発生したと仮定する。この場合、親機2は、子機3に対する信号送信を行うことなく、報知事象に対応する対応動作を行う。たとえば報知事象が検知対象ガスの検知に基づく警報の場合、親機2は、周囲報知として、スピーカ22aによりガス漏れ検知の報知メッセージを出力する。さらに、親機2は、外部機器200(
図1参照)へ警報情報を含む信号を出力する。親機2は、報知事象がなくなる場合、または操作受付部24により報知停止の操作入力を受け付けた場合に、周囲報知を停止する。
【0067】
一例として、たとえば外部機器200が、警報システム100が設置されている施設のガス制御装置である場合、親機2から出力された警報情報に連動して、ガス制御装置がガス供給を停止するといった動作を行うことができる。外部機器200が、警報システム100が設置されている施設の集中管理室のコンピュータである場合、親機2から出力された警報情報に連動して、コンピュータが集中管理室のスタッフに対する報知動作を行うことができる。
【0068】
(信号送信の時間間隔)
複数の子機3の各々は、定期通信による信号送信、および、警報以外の報知事象が発生した場合の報知信号51の送信を、所定の第1時間間隔で周期的に行う。一方、複数の子機3の各々は、警報および点検の報知事象が発生した場合の報知信号51の送信を、第1時間間隔よりも短い第2時間間隔毎に行う。
【0069】
〈第1時間間隔での信号送信〉
図12は、定期通信による通信タイミングを示したタイムチャートである。複数の子機3の各々には、互いに異なる第1時間間隔の値が設定されている。そのため、複数の子機3の各々の定期通信の通信タイミングは、時間的にずれている。なお、
図12では説明のため、親機2および全ての子機3(子機A~子機C)が相互通信可能な例を示す。それぞれの子機3から信号を受信した際に、親機2は応答信号52を送信するが、
図12では便宜的に、親機2からの信号(応答信号52)の送信については図示を省略している。
【0070】
子機Aの第1時間間隔をT1a、子機Bの第1時間間隔をT1b、子機Cの第1時間間隔をT1cとすると、T1a<T1b<T1cである。T1a、T1b、T1cは、それぞれ、たとえば11秒、12秒、13秒である。
【0071】
報知信号51と、定期通信の信号との違いは、状態フラグ42のフラグ値である。警報以外の報知事象が発生した場合の報知信号51の送信は、この定期通信のタイミングで実行される。つまり、状態フラグ42のフラグ値が、報知事象に応じて変更される。つまり、複数の子機3の各々は、自機において警報以外の報知事象(故障など)が発生した場合、第1時間間隔毎に1回の頻度で、報知信号51の送信を行う。
【0072】
〈第2時間間隔での信号送信〉
一方、複数の子機3の各々は、自機において警報の報知事象が発生した場合、第2時間間隔毎に報知信号51の送信を行う、報知信号51の送信状態となる。
【0073】
複数の子機3の各々は、報知信号51の送信状態では、報知信号51の送信と、一定時間(第2時間間隔)の応答信号52の受信待機とを、所定回数繰り返す。つまり、報知信号51の送信後、応答信号52の受信を所定時間待ち、所定時間内に応答信号52の受信ができなかった場合、報知信号51を再送信する、という送信・受信待機が所定回数繰り返される。報知信号51の送信と、待機後の再送信との間の時間間隔が、第2時間間隔である。
【0074】
複数の子機3の各々は、応答信号52の受信を含む送信終了条件が満たされると、報知信号51の送信状態を終了するように構成されている。送信状態終了条件は、応答信号52の受信と、送信・受信待機を繰り返し、所定回数内に応答信号52を受信できなかったこと(待機回数の上限に到達したこと)とを含む。
【0075】
そのため、
図10に示した例では、報知信号51の送信元である子機Aは、報知信号51に対する応答信号52の受信に応じて、報知信号51の送信状態を終了する。
図10において、受信待機の間に応答信号52が受信されなかった場合、子機Aは、報知信号51を再送信する。また、子機Aは、応答信号52を受信せずに待機回数の上限に達した場合、報知信号51の送信状態を終了する。待機回数の上限は、特に限定されないが、たとえば10回である。
【0076】
複数の子機3の各々には、同一の第2時間間隔の値が設定されている。第2時間間隔をT2(図示せず)とすると、T2は、いずれの第1時間間隔T1a、T1b、T1cよりも小さい値である。T2は、たとえば1秒である。複数の子機3の各々は、警報の報知事象が発生した場合、送信した報知信号51に対する応答信号52を受信するか、または待機回数が上限に達するまで、第2時間間隔T2での報知信号51の送信状態を継続する。通信時間間隔を短くすることにより、親機2への迅速な報知が可能となる。
【0077】
〈点検処理〉
なお、
図13に示すように、複数の子機3の各々は、自機の操作受付部34に対して点検開始を指示する操作入力が行われた場合、自機の点検処理を実行するとともに、親機2に対して点検信号の送信を実施する。
【0078】
点検信号の送信データ40では、状態フラグ42に点検フラグが設定される。
図13に示すように、点検信号を受信した親機2は、状態フラグ42に点検フラグを設定した応答信号52を送信する。応答信号52を受信した子機3は、応答信号52の通信ステータス44において、親機2から自機に到達するまでの通信経路(中継回数および中継機)における、通信強度を取得する。子機3は、点検結果として、応答信号52の通信ステータス44に記録された通信強度の情報に基づいて、自機と親機2との通信強度を報知する。なお、
図13に示すように、親機2は、子機3(
図13では子機A)からの点検信号の通信ステータス44から、子機3から親機2に到達するまでの通信経路(中継回数および中継機)における通信強度を取得し、取得した通信強度を報知してもよい。
【0079】
図13に示した子機3の点検時には、上記の警報時の報知信号51の送信動作と同様に、子機3は、点検信号の送信状態となる。子機3は、点検信号の送信と、応答信号52の受信待機とを、第2時間間隔T2で所定回数繰り返す。送信状態終了条件が満たされることにより、子機3は点検信号の送信状態を終了する。子機3の点検時の通信時間間隔を、第1時間間隔T1より短い時間間隔、例えば、警報の報知事象が発生した場合と同じ通信時間間隔である第2時間間隔T2にすることにより、点検結果を報知するまでのユーザの待ち時間を短くできる。
【0080】
一方、
図14に示すように、親機2の操作受付部24に対して点検開始を指示する操作入力が行われた場合、親機2は、自機の点検処理を実行するとともに、点検開始後、各子機3との定期通信で取得される信号(
図12参照)の通信ステータス44に記録された通信強度の情報に基づいて、各子機3との通信強度をそれぞれ取得する。そして、親機2は、取得した各子機3とのそれぞれの通信強度に基づいて、親機2と子機3との間の通信強度の報知を行う。
【0081】
このように、いずれかの子機3に対して点検の操作入力が行われる場合(
図13参照)では、操作入力が行われた子機3と親機2との間で通信強度の点検が行われるのに対して、親機2に対して点検の操作入力が行われる場合(
図14参照)では、それぞれの子機3と親機2との間の各通信強度の点検が行われる。
【0082】
親機2は、たとえば、取得した各子機3とのそれぞれの通信強度のうち、最も低い強度であった1つの子機3との通信強度を、報知する。これにより、報知された通信強度(最も低い強度)が必要十分に高い場合(たとえば「強」、または「中」)には、ユーザは、警報システム100の通信強度の点検を行う必要がないと判断できる。報知された通信強度(最も低い強度)が低い場合(たとえば「低」)には、ユーザは、警報システム100の通信強度の点検を行うべきと判断できる。その場合には、個々の子機3に対する点検動作を実行することで、子機3毎の個別の通信強度を点検できる。なお、親機2は、取得した各子機3とのそれぞれの通信強度を、別々に報知してもよい。
【0083】
(中継送信の要否判定)
子機3が信号を受信した際に、中継送信が行われない場合がある。それぞれの子機3は、親機2または他の子機3から信号を受信した場合において、下記の条件に基づいて、中継送信の要否判定を行う。それぞれの子機3は、第1から第4の条件が満たされた場合に、中継送信を行う。以下は、中継送信を行うための条件である。
第1の条件は、自機が発信元でないことである。
第2の条件は、受信した信号が自機により中継済みでないことである。
第3の条件は、信号を受信してから予め設定された待機時間が経過したことである。
第4の条件は、受信した信号に対する親機2からの応答信号52を受信していないことである。
【0084】
第1の条件の充足は、受信した信号の通信コマンド41(
図8参照)に基づき判断される。第2の条件の充足は、上記の通り、信号の通信ステータス44(
図9参照)に基づき判断される。第3の条件の充足は、制御部35が信号を受信した時点からの経過時間をカウントし、予め設定された待機時間と経過時間との比較に基づき判断される。待機時間は、複数の子機3の各々について互いに異なる値が設定されている。第4の条件の充足は、信号の受信後、待機時間中に、その信号に基づく応答信号52を受信したか否かに基づき判断される。
【0085】
第1の条件により、信号の発信元である子機3自身が、他の子機3によって中継された信号を再送信することが回避される。
【0086】
第2の条件により、2つの子機3の間で中継送信を行い合うといった中継送信のループが回避される。このように、複数の子機3の各々は、第2の条件により、受信した信号の通信ステータス44に自機が含まれる場合、中継送信を行わないように構成されている。
【0087】
第3の条件により、複数の子機3の中継送信が同時に実行されることが回避される。第4の条件により、既に親機2に対して信号が正常に到達している場合に、不必要な中継送信を行うことが回避される。このように、複数の子機3の各々は、第3および第4の条件により、他の子機3から報知信号51を受信してから待機時間が経過する前に、報知信号51に基づく応答信号52を受信した場合、報知信号51の中継送信を中止するように構成されている。
【0088】
親機2は、いずれかの子機3から信号を受信した場合、自機が発信元でない場合に、応答信号52の送信を行う。これにより、応答信号52の発信元である親機2自身が、他の子機3によって中継された応答信号52に応じて応答信号52を送信することが回避される。
【0089】
〈中継要否判定の具体例〉
中継要否判定の具体例を、
図15を参照して説明する。
図15では、子機Aが子機Bおよび子機Cと通信可能かつ親機2とは通信不可能、子機Bおよび子機Cが相互通信および親機2と通信可能である場合に、子機Aにおいて警報の報知事象が発生したときの例を示す。通信不可能であっても、信号の送信自体は行われているため、送信先に到達しない信号については点線の矢印で示し、送信先に到達する信号を実線の矢印で示す。
【0090】
子機Aにおいて報知事象が発生したとき、子機Aが周囲報知および報知信号51の送信を行う。子機Aは報知信号51の送信状態となる。報知信号51を受信した子機Bおよび子機Cは、経過時間のカウントを開始する。各々の子機3において、待機時間が経過するまでは、第3の条件に基づき中継送信が行われない。子機Bの待機時間T3bは、子機Cの待機時間T3cよりも短いとする。待機時間T3bの経過後、子機Bは、中継送信を行う。子機Bから中継送信された報知信号51は、子機A、子機Cおよび親機2により受信される。
【0091】
子機Bからの報知信号51を受信した子機Aは、その報知信号51の発信元が自機である(第1の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。子機Bからの報知信号51を受信した子機Cは、第3の条件に基づき、経過時間のカウントを開始する。なお、子機Cが子機Aから直接受信した報知信号51と、子機Bから受信した中継による報知信号51とは、通信ステータス44の内容が異なる。そのため、子機Cは、それぞれの信号に対して、中継送信の要否判定を別個に行う。
【0092】
子機Bからの報知信号51を受信した親機2は、報知事象に応じた対応動作を実行するとともに、応答信号52を送信する。応答信号52は、子機Bおよび子機Cにより受信される(点線で示すように、
図15の例では子機Aには到達しない)。
【0093】
応答信号52を受信した子機Bおよび子機Cは、それぞれ、第3の条件に基づき、応答信号52の中継要否判定のための待機時間T3b、T3cのカウントを開始する。応答信号52の通信コマンド41の内容から、子機Aの報知信号51に対する応答であることが分かる。そのため、子機Cは、応答信号52の受信タイミングが待機時間T3cの経過前である場合、子機Aから直接受信した報知信号51に対して、第4の条件に基づいて中継不要と判断する。同様に、子機Cは、子機Bから受信した(中継された)報知信号51についても、第4の条件に基づいて中継不要と判断する。
【0094】
応答信号52は、子機Bの待機時間T3bの経過後、子機Bによって中継送信されることにより、子機Aに受信される。子機Aは、応答信号52の受信に応じて、報知信号51の送信状態を終了する。上記の通り、この応答信号52の受信が、報知信号51の送信後の受信待機中であれば、送信状態の終了に伴い、第2時間間隔T2の経過後の報知信号51の再送信は実行されない。その後、子機Cの待機時間T3cの経過後、子機Cからも応答信号52が中継送信されるが、子機Aでは、既に子機Bから応答信号52が受信されているため(既に送信状態が終了しているため)特段の処理が行われない。
【0095】
以上のように中継要否判定が行われることによって、より少ない通信回数で、子機3と親機2との間の通信を行うことが可能である。
【0096】
また、たとえば子機Bにおいて報知事象が発生した場合には、子機Bからの報知信号51の受信に応じて、子機Aと子機Cとが、中継要否判定を行う。子機Aは、待機時間T3aの経過後に中継送信を行う。各待機時間の長さは、T3a<T3b<T3cである。T3a、T3b、T3cは、それぞれ、たとえば32ミリ秒、66ミリ秒、100ミリ秒である。
【0097】
(警報システムの通信動作)
次に、
図16を参照して、本実施形態の警報システム100の通信動作を説明する。親機2の通信動作は、制御部25により制御される。複数の子機3の各々の通信動作は、各々の制御部35により制御される。ここでは、複数の子機3のうち、子機Aが通信を行う場合について説明する。
【0098】
ステップS1において、子機Aの制御部35は、通信タイミングであるか否かを判断する。子機Aの制御部35は、前回の通信処理から、第1時間間隔(定期通信、警報以外の報知)または第2時間間隔(警報、点検)が経過した場合に、通信タイミングであると判断して、ステップS2に処理を進める。通信タイミングでない場合、子機Aの制御部35は、ステップS3に処理を進める。
【0099】
ステップS2において、子機Aの制御部35は、通信処理を実行する。具体的には、子機Aの制御部35は、送信する送信データ40を作成し、作成した送信データ40を送信する。
【0100】
送信データ40の通信コマンド41には、信号の種別として子機3から親機2への信号を示す値、通信相手として発信元が子機Aであることを示す値が設定される。通信回数43は、現時点における累計値が設定される。通信ステータス44には、送信元が子機Aである値が設定される。
【0101】
このとき、報知事象として警報が発生している場合、送信データ40の状態フラグ42に警報フラグが設定される。これにより、警報を示す報知信号51が送信される。報知事象として故障が発生している場合、送信データ40の状態フラグ42に故障フラグが設定される。これにより、故障を示す報知信号51が送信される。なお、点検時の通信である場合、状態フラグ42に点検フラグが設定される。この他、報知事象が発生しておらず、警報器1の使用期限が到達している場合、状態フラグ42に使用期限を示すフラグが設定される。
【0102】
子機Aの制御部35は、信号送信後、ステップS3に進み、警報中か否かを判断する。すなわち、ガスセンサGSの出力信号が警報レベルの閾値以上であるか否かを判断する。警報中である場合、子機Aの制御部35は、ステップS1に処理を戻す。これにより、警報中は、通信タイミングが到来する度に、警報を示す報知信号51が子機Aから送信される。また、警報中の間、通信タイミングが第2時間間隔に設定される(報知信号51の送信状態になる)。
【0103】
ステップS3で警報中でない場合、子機Aの制御部35は、ステップS4に処理を進め、点検中か否かを判断する。点検中でない場合、子機Aの制御部35は、ステップS1に処理を戻す。警報中でも点検中でもない場合、通信タイミングが第1時間間隔に設定される。点検中である場合、子機Aの制御部35は、ステップS5に処理を進める。また、点検中の間、通信タイミングが第2時間間隔に設定される。
【0104】
ステップS5において、子機Aの制御部35は、通信が成功したか、または点検処理がタイムアウトしたかを判断する。すなわち、制御部35は、親機2からの応答信号52を受信した場合、通信が成功したと判断する。制御部35は、点検処理が開始してから、予め設定された時間が経過した場合、点検処理がタイムアウトしたと判断する。点検処理のタイムアウト前であり、かつ通信が成功していない場合、子機Aの制御部35は、ステップS1に処理を戻す。
【0105】
点検による通信が成功したか、または点検処理がタイムアウトした場合、子機Aの制御部35は、ステップS6において点検結果を報知する。点検結果は、ランプ22bの点灯および/またはスピーカ22aによる音声出力により報知される。
【0106】
子機Aは、ステップS1~S6を繰り返すことにより、通信タイミング毎に親機2との間で通信を行う。
【0107】
子機Aが通信を行う場合には、子機Bおよび子機Cは、中継送信を実行することになる。子機Bの制御部35は、ステップS11において、他の子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、子機Bの制御部35は、ステップS11の判断を繰り返す。他の子機3から信号を受信した場合、子機Bの制御部35は、ステップS12に処理を進める。
【0108】
子機Bの制御部35は、ステップS12において、中継送信処理を行う。
図17に示すように、まず、ステップS41において、子機Bの制御部35は、中継要否判定を行い、中継が不要と判定した場合(ステップS41でNo)には中継送信を行わない。子機Bの制御部35は、中継が必要と判定した場合(ステップS41でYes)には、ステップS42において中継送信を行う。
図16の例で子機Aから信号を受信した場合、子機Bの制御部35は、中継が必要と判断して、待機時間T3bの経過後にステップS42に処理を進めることになる。なお、待機時間T3bの経過前に親機2からの応答信号52(後述するステップS32)を受信した場合には、中継不要と判断される。ステップS42では、子機Bの制御部35は、受信した送信データ40のうち、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43の値はそのままとし、通信ステータス44に、中継履歴の情報と通信強度(受信強度)の情報とを追加記録して、中継送信を行う。
【0109】
同様に、子機Cの制御部35は、
図16のステップS21において、他の子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、子機Cの制御部35は、ステップS21の判断を繰り返す。他の子機3から信号を受信した場合、子機Cの制御部35は、ステップS22に処理を進める。
【0110】
子機Cの制御部35は、ステップS22において、中継送信処理を行う。
図17に示すように、子機Cの制御部35は、ステップS41において中継要否判定を行い、中継が不要と判定した場合(ステップS41でNo)には中継送信を行わない。子機Cの制御部35は、中継が必要と判定した場合(ステップS41でYes)には、ステップS42において中継送信を行う。
図16の例で子機Aから信号を受信した場合、子機Cの制御部35は、中継が必要と判断して、待機時間T3cの経過後にステップS42に処理を進めることになる。なお、待機時間T3cの経過前に親機2からの応答信号52(後述するステップS32)を受信した場合には、中継不要と判断される。ステップS42では、子機Cの制御部35は、受信した送信データ40のうち、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43の値はそのままとし、通信ステータス44に、中継履歴の情報と通信強度(受信強度)の情報とを追加記録して、中継送信を行う。
【0111】
親機2の制御部25は、ステップS31において、いずれかの子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、親機2の制御部25は、ステップS33に処理を進める。
【0112】
ステップS31において、いずれかの子機3から信号を受信した場合、親機2の制御部25は、ステップS32において、応答信号52の送信を行う。
【0113】
具体的には、親機2の制御部25は、送信する送信データ40を作成し、作成した送信データ40を応答信号52として送信する。
【0114】
親機2の制御部25は、応答信号52の通信コマンド41に、信号の種別として、親機2から子機3への信号(応答信号52)を示す値を設定し、通信相手として、受信した信号の発信元(この例では子機A)を示す値を設定する。また、親機2の制御部25は、応答信号52の状態フラグ42に、受信した信号の状態フラグ42と同じフラグを設定する。そのため、受信した信号が子機Aからの警報の報知信号51であれば、通信相手が子機Aで、状態フラグ42に警報フラグが設定されることにより、子機Aからの警報の報知信号51に対する応答信号52が作成される。通信ステータス44には、送信元が親機2である値が設定される。
【0115】
親機2の制御部25は、信号送信後、ステップS33に進み、親機2自身が警報中であるか否かを判断する。親機2自身が警報中である場合、親機2の制御部25は、ステップS31に処理を戻す。このため、親機2の警報中は、点検結果の報知が行われず、警報に対する対応動作が実行される。
【0116】
ステップS33で警報中でない場合、親機2の制御部25は、ステップS34に処理を進め、受信した信号の状態フラグ42に点検フラグが設定されていたか否かを判断する。状態フラグ42が点検フラグでない場合、親機2の制御部25は、ステップS31に処理を戻す。
【0117】
ステップS34で状態フラグ42が点検フラグである場合、親機2の制御部25は、ステップS35に処理を進め、点検結果を報知する。点検結果の報知は、受信した信号の通信ステータス44の通信強度の情報に基づいて行われる。
【0118】
親機2の制御部25は、点検結果を報知すると、処理をステップS31に戻す。なお、ステップS31~S35の各子機3との通信の処理と並行して、制御部25は、外部出力処理を実行する。外部出力処理では、親機2の制御部25は、外部機器200に対して、現時点の状況を示すデータを含む信号を出力する。信号出力する情報には、各子機3の報知事象に対応した情報(警報中、点検中、故障中、使用期限到達)と、親機2の報知事象に対応した情報(警報中、点検中、故障中、使用期限到達)とが含まれうる。以上のようにして、警報システム100における通信処理が行われる。
【0119】
図16の子機Aにおいて示した信号の送信に関わる処理と、子機Bおよび子機Cにおいて示した信号の受信に対応する処理とは、各々の子機3において、それぞれ並行して実施される。すなわち、子機Aは、自機の信号送信に関してステップS1~S6の処理を実施する一方で、他の子機3からの信号受信に関してステップS11およびS12と同様の処理を実施している。
【0120】
子機Bおよび子機Cも、他の子機3からの信号受信に関してステップS11(S21)およびS12(S22)の処理を実施するとともに、自機の信号送信に関してステップS1~S6と同様の処理を実施している。
【0121】
また、
図16では、通信処理のみを説明しているため、たとえば警報が発生した場合の周囲報知の処理については記載していない。子機A~子機Cおよび親機2は、それぞれ、自機におけるガスセンサGSの出力信号を監視し、ガスセンサGSの出力信号が閾値以上となった場合には、スピーカ22a(32a)および/またはランプ22b(32b)による周囲報知の処理を行う。
【0122】
(警報システムの使用態様)
次に、本実施形態の警報システム100の使用態様の例について説明する。
図1の例では、親機2および複数の子機3の各々は、連続した空間60の複数箇所に互いに離れて設置されている。空間60は、たとえば比較的多数の人員を収容可能なホール、オフィス、会議場、作業場、厨房といった広い空間である。空間60は、個々の独立した部屋として区画されておらず、全体として1つの部屋となっている。
【0123】
そして、親機2および複数の子機3の各々は、空間60のそれぞれ設置位置における警報対象となる事象を検知するように構成されている。
図1の例では、子機A、子機B、子機Cおよび親機2は、それぞれ異なる設置位置61a、61b、61cおよび61dに設置されている。外部機器200は、空間60の外部に設置されている。
【0124】
空間60が大きく、空間60に各種の設備や設置物が存在する場合、親機2と各子機3との間の直接通信が困難になる場合がある。そのため、警報システム100では、中継送信によって、親機2と各子機3との間の通信状態が確保されている。
【0125】
本実施形態では、設置位置61a~61dのいずれかで報知事象(たとえばガス漏れ)が発生すると、その位置に設けられた警報器1が警報の周囲報知を行うが、他の警報器1は周囲報知をしない。この場合、空間60内に存在する人は、報知している警報器1の位置(警報の発生源)が容易に把握できるので、警報の発生源からなるべく遠ざかるように退避経路を探索することが可能である。特にガス漏れなど視認できない異常が発生した場合には、視覚的には異常の発生源が特定できないが、警報の発生源が特定できるので、警報の発生源に近付いてしまうことを容易に回避できる。
【0126】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0127】
本実施形態の警報システム100および警報システム100の動作方法では、上記のように、複数の子機3の各々は、自機において報知事象が発生した場合、報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知と、他の警報器1(親機2および他の子機3)への報知事象に対応する報知信号51の送信と、を行い、他の子機3からの報知信号51を受信した場合、周囲報知を行うことなく報知信号51を中継送信し、親機2は、いずれかの子機3から報知信号51を受信すると、報知事象に対応した所定の対応動作を行う。これにより、いずれかの子機3において報知事象が発生し、報知信号51が送信された場合に、その子機3と親機2とが直接通信できない場合でも、別の子機3が中継送信を行うことにより、報知信号51を親機2へ到達させることができる。そして、いずれかの子機3と親機2との通信における中継送信を行うのは、警報器である他の子機3のため、信号を中継するための専用の中継装置を設ける必要がない。そのため、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システム100において、通信不良を回避しつつシステム構成を簡素化することができる。その結果、警報システム100の低コスト化を図ることができる。また、いずれかの子機3が中継送信を行う場合、その子機3は報知信号51に応じた周囲報知を行わないので、実際には報知する必要がない子機3まで連動して周囲報知を行うことを回避できる。その結果、報知事象が発生した箇所の特定が容易になり、さらに、必要な報知を、報知が必要な対象者だけ(報知事象が発生した子機3の周囲にいる人だけ)に適切に報知を行うことができる。
【0128】
また、本実施形態では、上記のように、親機2は、いずれかの子機3から報知信号51を受信すると、対応動作とは別に、報知信号51に対応した応答信号52を送信し、複数の子機3の各々は、自機において警報の報知事象が発生した場合、応答信号52の受信を含む送信状態終了条件が満たされると、報知信号51の送信状態を終了し、他の子機3の報知信号51に対する応答信号52を受信した場合、応答信号52を中継送信するように構成されている。これにより、子機3から親機2への報知信号51の送信だけでなく、親機2からいずれかの子機3への応答信号52の送信についても、他の子機3が中継送信を行うことにより、通信不良を回避することができる。そして、報知信号51の送信元となる子機3が、親機2からの応答信号52を受信することによって報知信号51の送信状態を終了するので、たとえば応答信52号の受信に関わらず一定時間の間、報知信号51の送信状態を継続する構成と比べて、応答信号52の受信時点以降の信号送信を行わずに済む結果、信号送信の回数を低減できる。
【0129】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、他の子機3から報知信号51または応答信号52を受信した場合、互いに異なる値に設定された待機時間(T3a、T3b、T3c)の経過後に中継送信を行うように構成され、他の子機3から報知信号51を受信してから待機時間(T3a、T3b、T3c)が経過する前に、報知信号51に基づく応答信号52を受信した場合、報知信号51の中継送信を中止するように構成されている。このように構成すれば、複数の子機3の各々が中継送信を行う場合に、異なる待機時間によって送信タイミングをずらすことができるので、中継送信が同時に行われることに起因する輻輳の発生を回避できる。そして、報知信号51を受信してから待機時間の経過前に応答信号52を受信した場合に、その報知信号51の中継送信が中止されるので、警報システム100の全体での通信回数を低減できる。
【0130】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、受信した信号に通信ステータス44を追記して中継送信を行い、受信した信号の通信ステータス44に自機が含まれる場合、中継送信を行わないように構成されている。このように構成すれば、いずれかの子機3(子機Aとする)が中継送信を行った場合に、その信号を受信した他の子機3による中継送信を子機Aが受信して、再度中継送信を実行するという、中継送信の繰り返しが発生することを抑制できる。これにより、不必要な中継送信の実行を回避できる。
【0131】
また、本実施形態では、上記のように、親機2および複数の子機3の各々は、警報対象となる異常を検知するセンサ(ガスセンサGS)を備え、報知事象は、センサ(ガスセンサGS)により異常を検知したこと、および、報知対象となる故障が発生したこと、を含み、親機2の対応動作は、報知事象毎に設定されている。このように構成すれば、報知事象として、異常の警報だけでなく、報知対象となる故障の発生についても、親機2へ通知可能であるとともに、報知が必要な対象者だけ(報知事象が発生した子機3の周囲にいる人だけ)に適切に報知を行うことができる。そして、報知信号51を受け取った親機2により、報知事象に応じてそれぞれ適切な対応動作を実行することができる。
【0132】
また、本実施形態では、上記のように、親機2は、自機において報知事象が発生した場合、複数の子機3に対して報知信号51の送信を行うことなく、報知事象に対応した対応動作を行うように構成されている。このように構成すれば、親機2だけに報知事象が発生した場合に、報知事象が発生した箇所の特定が容易になるとともに、不必要な通信が発生することを回避できる。
【0133】
また、本実施形態では、上記のように、親機2の対応動作は、周囲報知と、予め設定された外部機器200への信号出力と、の少なくとも一方を含む。このように構成すれば、いずれかの子機3において報知事象が発生した場合に、その子機3から報知信号51を受信した親機2が、親機2の周囲の施設管理者等に対して周囲報知を行ったり、上位の管理装置、施設の集中管理室、電気やガスの制御機器などの外部機器200に対する信号出力による連係動作を行ったりすることができる。
【0134】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0135】
たとえば、上記実施形態では、警報器1が、ガス警報器である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器1が、ガス警報器以外の他の警報器であってもよい。たとえば、警報器1は、火災警報器(火災報知器)でもよい。この場合、火災を検知するためのセンサは、煙センサや熱センサでありうる。
【0136】
また、上記実施形態では、警報器1(親機2、子機3)が、単一の筐体(28、38)内に検知部(21、31)などの各部を収容した構成となっている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば警報器1を、報知部、制御部、通信部を収容する本体と、本体とは別個に設けられ、本体と接続された検知部(検知部筐体)とから構成してもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、親機2が報知信号51に対応する応答信号52を送信する例を示したが、本発明はこれに限られない。親機2は報知信号51に対応する応答信号52を送信しなくてもよい。この場合、子機3はタイムアウトによって報知信号51の送信を終了すればよい。
【0138】
また、上記実施形態では、各々の子機3が、他の子機3から報知信号51を受信してから待機時間が経過するまでに応答信号52を受信した場合に、中継送信を中止する例を示したが、本発明はこれに限られない。各々の子機3は、応答信号52の受信の有無に関わらず、待機時間の経過後に中継送信を行ってもよい。また、各々の子機3は、待機時間なしで即時に中継送信を行ってもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、各々の子機3が、受信した信号に通信ステータス44を追記して中継送信を行い、受信した信号の通信ステータス44に自機が含まれる場合、中継送信を行わない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、中継送信する際に、信号に通信ステータス44を追記しなくてもよい。たとえば各々の子機3が、中継送信した信号の送信データ40の内容を記憶しておき、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43が過去に送信した信号とすべて一致する信号を受信した場合(すなわち、同一の信号を既に中継送信している場合)に中継送信を行わないようにしてもよい。また、中継送信済みか否かを判断することなく、受信した全ての信号を中継送信してもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、報知信号51を受信した場合の親機2の対応動作が報知事象毎に設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。親機2の対応動作が報知事象に関わらず同じであってもよい。
【0141】
また、上記実施形態では、親機2および複数の子機3の各々が、連続した空間60の複数箇所に互いに離れて設置され、それぞれ設置位置(61a、61b、61c、61d)における警報対象となる事象を検知する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、親機2および複数の子機3の各々が、別個の部屋、別個の建物など、繋がっておらずに離散的に設けられた複数の空間に別個に設置されていてもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、親機2は、自機において報知事象が発生した場合、複数の子機3に対して報知信号51の送信を行わない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、親機2から複数の子機3に対して報知信号51の送信を行ってもよい。たとえば複数の子機3の各々は、自機おいて報知事象が発生したことを報知する周囲報知とは別個に、親機2からの報知信号51に基づいて、親機2において報知事象が発生したことを示す周囲報知を実行するように構成されていてもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、親機2および複数の子機3は、それぞれ、操作入力を受け付けるスイッチである操作受付部(24、34)を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、操作受付部は、無線信号による操作を受け付けてもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、親機2は、いずれかの子機3から信号を受信した場合、自機が発信元でない場合に、応答信号52の送信を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、親機2は、信号の受信強度に応じて、応答信号52の送信を行うように構成されていてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、複数の子機3の各々が、自機において警報の報知事象が発生した場合、報知信号51の送信状態となり、応答信号52の受信を含む送信状態終了条件が満たされると、報知信号51の送信状態を終了する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の子機3の各々は、警報以外の報知事象が発生した場合においても、報知信号51の送信状態となるように構成されてもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 警報器
2 親機
3 子機
44 通信ステータス(中継履歴情報)
51 報知信号
52 応答信号
60 空間
100 警報システム
200 外部機器
GS ガスセンサ(センサ)
T3a、T3b、T3c 待機時間